(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る光配向装置を示す正面図である。
図2は
図1の光照射器を拡大して示す図である。
図3は、偏光子ユニットの構成を示す図であり、
図3(A)は平面図、
図3(B)は側断面視図である。
光配向装置1は、
図1及び
図2に示すように、板状もしくは、帯状の光配向対象物(ワーク)Wの光配向膜に偏光光を照射して光配向する光照射装置である。
光配向装置1は、直下に偏光光を照射する光照射器2を備えている。光配向対象物Wの光配向にあっては、光配向対象物Wが、搬送機構(不図示)によって直動方向Xに沿って移送されて光照射器2の直下を通過し、この通過の際に偏光光に曝露されて光配向膜が配向される。本実施形態では、光配向対象物Wは平面視で矩形状に形成され、光配向対象物Wの短手方向が直動方向Xに一致するように移送されるようになっている。
【0014】
光照射器2は、下面に光出射開口部3Aを有する筐体3内に光源たるランプ4及び反射鏡5を備えるとともに、光出射開口部3Aに偏光子ユニット10を備えている。
筐体3は、光配向対象物Wから所定距離離れた上方位置で照射器設置架台(不図示)に支持されている。ランプ4は、放電灯であり、少なくとも光配向対象物Wの長手方向の長さと同等以上に延びる直管型(棒状)の紫外線ランプが用いられている。反射鏡5は、断面楕円形、かつランプ4の長手方向に沿って延びるシリンドリカル凹面反射鏡であり、ランプ4の光を集光して光出射開口部3Aから偏光子ユニット10に向けて照射する。
【0015】
光出射開口部3Aは、ランプ4の直下に形成された平面視で矩形状の開口部であり、長手方向がランプ4の長手方向に一致するように設けられている。
光出射開口部3Aには、例えば石英板等のフィルタ特性(波長選択特性)を有さない光透過部材で形成された板状の透明体6が設けられ、この透明体6によって光出射開口部3Aが塞がれる。
また、光出射開口部3Aの内側には、透過する光の波長を選択する波長選択フィルタ7が設けられ、この波長選択フィルタ7によって光照射器2は所望の波長の光を照射するようになっている。
これらの透明体6及び波長選択フィルタ7は本実施形態の光透過部材を構成している。なお、本実施形態では、波長選択フィルタ7を設けたが、ランプ4自体で所望の波長の光を出射できる場合には、波長選択フィルタ7を省略してもよい。
【0016】
偏光子ユニット10は、透明体6と光配向対象物Wの間に配置され、光配向対象物Wに照射される光を偏光する。この偏光光が光配向対象物Wの光配向膜に照射されることで、当該光配向膜が配向される。
偏光子ユニット10は、
図3に示すように、複数の単位偏光子ユニット12と、これら単位偏光子ユニット12を横並びに一列に整列するフレーム14とを備えている。フレーム14は、各単位偏光子ユニット12を連接配置する板状の枠体である。単位偏光子ユニット12は、略矩形板状に形成されたワイヤーグリッド偏光子(偏光子)16を備えている。
本実施形態では、各単位偏光子ユニット12は、ワイヤーグリッド偏光子16をワイヤー方向Aが直動方向Xと平行になるように支持し、このワイヤー方向Aと直交する方向と、ワイヤーグリッド偏光子16の配列方向Bとが一致するようになされている。
【0017】
ワイヤーグリッド偏光子16は、直線偏光子の一種であり、基板の表面にグリッドを形成したものである。上述の通り、ランプ4が棒状であることから、ワイヤーグリッド偏光子16には、さまざまな角度の光が入射するが、ワイヤーグリッド偏光子16は、斜めに入射する光であっても直線偏光化して透過する。
ワイヤーグリッド偏光子16は、その法線方向を回動軸にして面内で回動させて偏光軸C1の方向を微調整できるように単位偏光子ユニット12に支持されている。すなわち、複数のワイヤーグリッド偏光子16は、偏光軸C1の方向を微調整できるように互いに隙間を空けて配置されている。全ての単位偏光子ユニット12について、ワイヤーグリッド偏光子16の偏光軸C1が所定の照射基準方向に揃うように微調整されることで、偏光子ユニット10の長軸方向の全長に亘り偏光軸C1が高精度に揃えられた偏光光が得られ、高品位な光配向が可能となる。偏光軸C1が調整されたワイヤーグリッド偏光子16は、単位偏光子ユニット12の上端、及び下端がねじ(固定手段)19によってフレーム14に固定されることで、フレーム14に固定配置される。
【0018】
また、光配向装置1は、
図1及び
図2に示すように、ランプ4、反射鏡5、波長選択フィルタ7及び偏光子ユニット10を冷却する冷却ユニット20を備えている。この冷却ユニット20は、ランプ4及び反射鏡5を冷却するための熱源冷却経路30と、偏光子ユニット10を冷却するための偏光子冷却経路40とをそれぞれ独立して備えている。
熱源冷却経路30及び偏光子冷却経路40のそれぞれには、冷却風を送風する送風機21,21と、冷却風を冷却する冷却機22,22と、冷却風に含まれる塵埃等の異物を除去するフィルタ23,23が設けられている。送風機21は、冷却機22の上流側に配置してある。これにより、冷却機22で冷却された冷却風が送風機21の熱源で再加熱されることを防止できる。本実施の形態では、送風機21にブロアを、冷却機22に水冷式のラジエータを、フィルタ23にHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを用いているが、送風機21、冷却機22及びフィルタ23はこれらの構成に限定されるものではない。
【0019】
熱源冷却経路30においては、送風機21、冷却機22及びフィルタ23は、筐体3の外部に設けた冷却ユニットケース20A内に収容されている。本実施形態では、冷却ユニットケース20Aは、筐体3の上方に筐体3と離間して配置されているが、冷却ユニットケース20Aの配置位置はこれに限定されるものではない。冷却ユニットケース20A内にはチャンバ24が設けられ、送風機21の吹出口21Aとチャンバ24の入口24Aとがダクト25で接続されている。チャンバ24は入口24Aから下流側に向けて拡径し、チャンバ24内の上流側には冷却機22が、下流側にはフィルタ23が配置されている。チャンバ24の出口24Bと筐体3とはダクト26で接続され、送風機21の吸込口21Bと筐体3とはダクト27で接続されている。
【0020】
筐体3内には、ランプ4及び反射鏡5の側方を囲む隔壁31が、筐体3と隙間δ1を空けて設けられている。隔壁31は、下部にランプ4及び反射鏡5を下方に露出する開口31Aを有するとともに、上部に通風孔31Bを有している。
ダクト26は隔壁31の外側の隙間δ1に対応する位置の筐体3に接続され、ダクト27は隔壁31の内側の空間Rに対応する位置の筐体3に接続されている。
これら送風機21、ダクト25、チャンバ24(冷却機22,フィルタ23)、ダクト26、隔壁31の外側の隙間δ1、隔壁31の内側の空間R及びダクト27は熱源冷却経路30を構成している。
【0021】
熱源冷却経路30においては、送風機21から吹き出された冷却風(空気)は、ダクト25を介してチャンバ24内に流れ、冷却機22で冷却されるとともにフィルタ23で異物が除去される。このフィルタ23により、冷却風は、露点が−50°C〜−90°C以下程度になるように除湿されるとともに異物が除去されて低露点高清浄度空気(クリーンドライエアー)となる。クリーンドライエアーとなった冷却風は、ダクト26を介して筐体3内に供給される。
筐体3内では、冷却風は、隔壁31と筐体3との間の隙間δ1を通り、隔壁31と透明体6との間の隙間δ2を流れて、反射鏡5内と、反射鏡5の外側であって隔壁31内の空間Rとに流れ込み、ランプ4及び反射鏡5を冷却する。ランプ4及び反射鏡5を冷却して温度が高くなった冷却風は、反射鏡5の上部に形成された貫通孔5Aから、そして、反射鏡5の外側から隔壁31内の空間Rに流れ、ダクト27を介して送風機21に吸い込まれて、再び冷却される。このように、冷却風は熱源冷却経路30を循環している。
【0022】
偏光子冷却経路40においても、冷却ユニットケース20Aに、送風機21と、チャンバ24内に配置した冷却機22及びフィルタ23とが配置され、送風機21の吹出口21Aとチャンバ24の入口24Aとがダクト25で接続されている。
また、チャンバ24の出口24Bと筐体3とはダクト28で接続され、送風機21の吸込口21Bと筐体3とはダクト29で接続されている。
【0023】
ダクト28は、筐体3の光出射開口部3A、より詳細には偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って延在する延在部28Aと、延在部28Aから縮径する縮径部28Bとを備えている。縮径部28Bはチャンバ24の出口24Bに接続され、延在部28Aは筐体3に接続される。同様に、ダクト29は、筐体3の光出射開口部3A、より詳細には偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って延在する延在部29Aと、延在部29Aから縮径する縮径部29Bとを備えている。縮径部29Bは送風機21の吸込口21Bに接続され、延在部29Aは筐体3に接続される。延在部28A及び延在部29Aは板状の支持部材28C,29Cを介して筐体3に支持されている。
【0024】
偏光子ユニット10は、筐体3の外側において光出射開口部3Aに対向する位置に、透明体6と空間Sを空けて設けられ、フレーム14が偏光子ユニット固定台8に固定されている。筐体3と偏光子ユニット固定台8との間にダクト28,29が接続される。ダクト28は直動方向Xの一端側に接続され、ダクト29は直動方向Xの他端側に接続されている。
これら送風機21、ダクト25、チャンバ24(冷却機22,フィルタ23)、ダクト28、透明体6と偏光子ユニット10との間の空間S及びダクト29は偏光子冷却経路40を構成している。すなわち、この偏光子冷却経路40は、透明体6と偏光子ユニット10との間の空間Sを冷却する空間冷却経路を構成している。
【0025】
偏光子冷却経路40においては、送風機21から吹き出された冷却風は、ダクト25を介してチャンバ24内に流れ、冷却機22で冷却されるとともにフィルタ23で異物が除去されて、ダクト28を介して透明体6と偏光子ユニット10との間の空間Sに流れ込み、偏光子ユニット10を冷却する。このとき、空間Sに流れ込んだ冷却風は、ランプ4の長手方向に対して直交するように流れる。偏光子ユニット10を冷却して温度が高くなった冷却風は、ダクト29を介して送風機21に吸い込まれ、再び冷却される。このように、冷却風は偏光子冷却経路40を循環している。
【0026】
また、偏光子冷却経路40は、熱源冷却経路30と完全に独立しているため、熱源冷却経路30及び偏光子冷却経路40を流れる冷却風の温度をそれぞれ制御することで、ランプ4及び偏光子ユニット10を個別に冷却できる。
このとき、送風機21,21を個別に制御し、熱源冷却経路30の冷却風の風速を比較的遅く、偏光子冷却経路40の冷却風の風速を比較的早く設定することで、光源4を比較的高い温度で冷却し、偏光子ユニット10を比較的低い温度で冷却できる。これにより、ランプ4及び偏光子ユニット10を適切に冷却できる。
しかも、透明体6と偏光子ユニット10との間の空間Sに冷却風を供給するダクト28及び空間Sから冷却風を排出するダクト29は偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って延在するため、偏光子ユニット10全体に亘って略均等に冷却できる。
【0027】
ところで、光配向対象物Wの処理中(照射中)には配向膜からアウトガスが発生することがある。また、光配向装置1が配置される環境には、例えば紙粉等の異物も存在する。このアウトガス等の異物がワイヤーグリッド偏光子16に混入、または付着すると、ワイヤーグリッド偏光子16の偏光特性が変化し悪影響を及ぼす。
そこで、本実施形態では、光配向装置1は、透明体6と偏光子ユニット10間の空間Sを陽圧にする陽圧機構50を備えている。より具体的には、送風機21の吸込口21Bと筐体3とを接続するダクト29には、例えばダンパ等から構成される流量調節手段51が設けられている。この流量調節手段51を用いて空間Sの下流に位置するダクト29を流れる冷却風の流量を絞ることで、透明体6と偏光子ユニット10間の空間Sを陽圧に設定することができる。
【0028】
空間Sが陽圧になると、偏光子ユニット10の隙間から冷却風が外部に吹き出されることとなるので、偏光子ユニット10の隙間から異物が偏光子冷却経路40内に侵入することを防止できる。これにより、偏光子ユニット10に異物が付着、又は侵入することを確実に防止できる。
偏光子ユニット10の隙間としては、例えば偏光子ユニット10のフレーム14と偏光子ユニット固定台8との間の隙間や、複数のワイヤーグリッド偏光子16間の隙間等が挙げられる。したがって、これらの隙間を気密に塞ぐ手段を設けることなく、偏光子冷却経路40への異物の侵入を確実に防止できるので、光配向装置100の部品点数を削減し、製造工程を簡素化できる。
【0029】
また、ダクト29には、外部から空気を導入する導入口52が形成されている。この導入口52を介して、偏光子ユニット10の隙間から吹き出された分だけ外部から空気が導入されるので、偏光子冷却経路40内が負圧になり過ぎるのを防止でき、送風機21を効率良く運転できる。本実施形態では、導入口52を流量調節手段51の下流に設けているが、導入口52は冷却機22及びフィルタ23の上流であれば任意の位置に設けることができる。
これらの流量調節手段51及び導入口52は本実施形態の陽圧機構50を構成している。
【0030】
また、光配向装置1は、
図1及び
図2に示すように、エアーカーテンACを形成するエアーカーテン器具60を備えている。エアーカーテン器具60は、高圧のエアーが供給されるエアー供給ポート61と、供給されたエアーを吹き出すブローノズル62と、吹き出されたエアーを排気する排気ノズル63と、エアーを引き込む送風機(ブロア)64とを備えている。エアー供給ポート61に供給されるエアーは、露点が−50°C〜−90°C以下程度になるように除湿されるとともに異物が除去されて低露点高清浄度空気(クリーンドライエアー)である。なお、同等の低露点高清浄度であり、紫外線を透過すれば、クリーンドライエアー以外のガス、例えば窒素等の不活性ガスを使用してもよい。ブローノズル62に供給されるエアーは、光配向装置1を設置する工場の設備から供給されてもよいし、別途に設けたエアー生成手段(例えば、ボンベ)から供給するようにしてもよい。
【0031】
ブローノズル62は、ランプ4の長手方向に沿って延び、1つの吹出口62Aを備えている。この吹出口62Aは、筐体3の光出射開口部3Aの長手方向の長さに亘って、より詳細には偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って設けられている。また、吹出口62Aは、偏光子ユニット10と略平行にエアーを吹き出すように配置されている。
排気ノズル63は、ランプ4の長手方向に沿って延び、ブローノズル62に対向する1つの吸込口63Aを備えている。すなわち、吸込口63Aは、光出射開口部3A、より詳細には偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って設けられている。排気ノズル63の出口は送風機64とダクト65を介して接続されている。
本実施形態では、吹出口62A及び排気ノズル63を1つずつ設けたが、吹出口62A及び排気ノズル63を、筐体3の光出射開口部3Aの長手方向の長さに亘って、より詳細には偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って複数設けてもよい。これらのブローノズル62及び排気ノズル63は、筐体3に固定されてもよいし、筐体3を支持する照射器設置架台(不図示)に固定されてもよい。さらに、本実施の形態では、送風機64にブロアを用いているが、送風機21はこれらの構成に限定されるものではない。
【0032】
ブローノズル62に供給されたエアーは、光出射開口部3Aに亘って設けた吹出口62Aから、光出射開口部3Aの下方、より詳細には、偏光子ユニット10の下方を、ランプ4の長手方向に対して直交するように流れる。これにより、光出射開口部3Aの下方にエアーカーテンACが形成される。吹き出されたエアーは、排気ノズル63の吸込口63Aから吸い込まれて、ダクト65を介して送風機64に引き込まれ、送風機64から工場排気として排出される。
【0033】
このように、筐体3の光出射開口部3AにエアーカーテンACを形成するエアーカーテン器具60を設けることにより、光出射開口部3AにエアーカーテンACが形成されるので、光出射開口部3Aに設けた部材に異物が付着する前に異物を吹き飛ばすことができる。これにより、光出射開口部3Aに設けた部材の下面(光出射側の面)に異物が付着することを防止できる。また、ブローノズル62の吹出口62Aを光出射開口部3Aの長さに亘って設けたため、光出射開口部3Aの全体に亘ってエアーカーテンACが形成されるので、光出射開口部3Aに設けた部材に異物が付着することを確実に防止でき、光量の低下を防止できる。
さらに、エアーカーテン器具60は光出射開口部3A及びランプ4の短手方向にエアーカーテンACを形成しているので、光出射開口部3A及びランプ4の長手方向にエアーカーテンACを形成する場合に比べ、エアーの流量を少なくできる。したがって、エアーを供給する工場の設備の負担を軽減でき、また、別途に加圧手段を設ける必要がなくなり、さらには、送風機64の能力を低減でき、送風機64を小型化できる。
【0034】
特に、本実施形態では、光出射開口部3Aに偏光子ユニット10を備えている。この偏光子ユニット10に異物が付着すると、異物が付着した部分においては、紫外線の透過率が低下し、光配向対象物Wに照射する偏光光の照度が低下してしまう。本実施形態では、偏光子ユニット10の出口(光出射側)にエアーカーテン器具60を備えるため、偏光子ユニット10の下方にエアーカーテンACが形成されるので、偏光子ユニット10の下面に異物が付着することを防止し、偏光特性及び光量の低下を抑制できる。
また、偏光子ユニット10の下方にエアーの流れが形成されるので、このエアーの流れによっても、偏光子ユニット10をより効果的に冷却できる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、光照射器2の筐体3に反射鏡5とランプ4を収納し、筐体3の光出射開口部3Aにエアーカーテン器具60を備える構成とした。この構成により、光出射開口部3Aに設けた部材(本実施形態では、偏光子ユニット10)の下面に異物が付着することを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、エアーカーテン器具60は光出射開口部3Aの短手方向にエアーカーテンACを形成する構成とした。この構成により、エアーカーテンACの風が流れる長さを短くできるので、光出射開口部3Aの長手方向にエアーカーテンACを形成する場合に比べ、エアーの流量を少なくできる。
【0037】
また、本実施形態によれば、エアーカーテン器具60はランプ4の長手方向に直交してエアーカーテンACを形成する構成とした。この構成により、エアーカーテンACの風が流れる長さを短くできるので、ランプ4の長手方向にエアーカーテンACを形成する場合に比べ、エアーの流量を少なくできる。
【0038】
また、本実施形態によれば、筐体3の光出射開口部3Aに偏光子ユニット10を備え、偏光子ユニット10の光出射側にエアーカーテン器具60を備える構成とした。この構成により、光配向対象物Wと当該光配向対象物Wと対向する偏光子ユニット10との間にエアーカーテンACが形成されるので、偏光子ユニット10の下面に異物が付着することを抑制できる。
【0039】
<第2実施形態>
第1実施形態では、偏光子ユニット10を光配向対象物Wに対向して設けていたが、第2実施形態では、偏光子ユニット10の光出射側に透明体(光透過部材)70を備えている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、その説明を省略する。
図4は、第2実施形態に係る光配向装置100を示す正面図であり、偏光子ユニット10の周辺を拡大して示す図である。
光配向装置100は、光照射器2、偏光子ユニット10、冷却ユニット20を備えるとともに、
図4に示すように、透明体(光透過部材)70と、エアーカーテンACを形成するエアーカーテン器具160とを備えている。
【0040】
透明体70は、例えば石英板等のフィルタ特性(波長選択特性)を有さない板状の光透過部材である。この透明体70は、偏光子ユニット10の光出射側に設けられ、偏光子ユニット10が透明体70によってカバーされる。具体的には、偏光子ユニット固定台8には偏光子ユニット10の下方に平面視で矩形状の枠体8Aが形成され、この枠体8A内に透明体70が支持されている。これにより、偏光子ユニット固定台8には、偏光子ユニット10と透明体70とで仕切られた空間Tが形成される。
【0041】
エアーカーテン器具160は、高圧のエアーが供給されるエアー供給ポート61と、供給されたエアーを吹き出すブローノズル162とを備えている。エアー供給ポート61は偏光子ユニット固定台8に固定され、偏光子ユニット固定台8にブローノズル162が設けられている。
ブローノズル162は、一対のノズル本体162Aを備え、これら一対のノズル本体162Aは、透明体70の両側に配置され、ランプ4の長手方向に沿って延びている。一対のノズル本体162Aには、それぞれエアー供給ポート61が接続されている。
【0042】
また、ブローノズル162は、各ノズル本体162Aから透明体70の上方に延出する吹出ポート(吹出口)162Bと、各ノズル本体162Aから透明体70の下方に延出する吹出ポート(吹出口)162Cとを備えている。吹出ポート162B,162Cは、互いに対向し、筐体3の光出射開口部3Aの長手方向の長さに亘って、より詳細には透明体70の長手方向の長さに亘って設けられている。また、吹出ポート162B,162Cは、透明体70と略平行にエアーを吹き出すようにランプ4の長手方向に直交して延びている。
【0043】
さらに、ブローノズル162は、吹出ポート162Bから吹き出されたエアーが、ランプ4の長手方向に直交する方向において透明体70(偏光子ユニット10)の中間(本実施形態では、略中央)において合流するように構成されている。このとき、各エアー供給ポート61に同圧のエアーを供給するとともに、ブローノズル162内の経路を両側で同一にすることで、略中央で合流させることができる。
なお、本実施形態では、一対のノズル本体162Aのそれぞれにエアー供給ポート61を設けたが、一対のノズル本体162Aを連通させれば1つのエアー供給ポート61を設ければよい。また、各ノズル本体162Aに吹出ポート162B,162Cを1つずつ設けたが、吹出ポート162B,162Cを筐体3の光出射開口部3Aの長手方向の長さに亘って、より詳細には偏光子ユニット10の長手方向の長さに亘って複数設けてもよい。
【0044】
ブローノズル162に供給されたエアーは、光出射開口部3Aに亘って設けた吹出ポート162Bから、偏光子ユニット10と透明体70との間の空間Tを、ランプ4の長手方向に対して直交するように流れる。これにより、偏光子ユニット10の下方にエアーカーテンACが形成される。このように、偏光子ユニット10の下方にエアーの流れが形成されるので、このエアーの流れによっても、偏光子ユニット10をより効果的に冷却できる。
また、空間Tが陽圧になるので、透明体70と偏光子ユニット固定台8との隙間(以下、透明体70の隙間と言う。)からエアーが外部に吹き出されることとなるので、透明体70と偏光子ユニット固定台8との隙間から異物が空間T内に侵入することを防止できる。これにより、偏光子ユニット10に異物が付着、又は侵入することを確実に防止できる。このように、透明体70の隙間及び偏光子ユニット10の隙間を気密に塞ぐ手段を設けることなく、空間T及び偏光子冷却経路40への異物の侵入を確実に防止できる。その結果、光配向装置1の部品点数を削減し、製造工程を簡素化できる。
【0045】
ブローノズル162に供給されたエアーは、光出射開口部3Aに亘って設けた吹出ポート162Cから、透明体70の下方を、ランプ4の長手方向に対して直交するように流れる。これにより、透明体70の下方にエアーカーテンACが形成されるので、透明体70に異物が付着する前に異物を吹き飛ばすことができ、透明体70の下面(光出射側の面)に異物が付着することを防止できる。
また、吹出ポート162Bから吹き出されたエアーが透明体70の中間において合流するように構成されているため、エアーの流量を少なくできるので、エアーを供給する工場の設備の負担を軽減でき、また、別途に加圧手段を設ける必要がなくなる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、偏光子ユニット10の出口に光透過部材である透明体70を備えたため、偏光子ユニット10に異物が侵入又は付着することを抑制できる。また、透明体70の出口にエアーカーテン器具60を備えたため、光配向対象物Wと当該光配向対象物Wと対向する透明体70との間にエアーカーテンACが形成されるので、透明体70の下面に異物が付着することを抑制できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、筐体3の光出射開口部3Aに透明体70と偏光子ユニット10を出口側から順に備え、偏光子ユニット10の出口にエアーカーテン器具60を備える構成とした。この構成においても、偏光子ユニット10の出口に透明体70を備えるため、偏光子ユニット10に異物が侵入又は付着することを抑制できる。また、透明体70と偏光子ユニット10との間の空間TにエアーカーテンACが形成されるので、エアーカーテンACのエアーの流れにより、偏光子ユニット10をより効果的に冷却できる。また、空間TにエアーカーテンACを形成することにより、空間Tが陽圧になるので、透明体70の隙間から冷却風を外部に吹き出すことができるので、異物が空間T内に侵入することを防止できる。
なお、本実施形態では、空間TにエアーカーテンACを形成したが、空間TのエアーカーテンACは省略してもよい。
【0048】
<第3実施形態>
第2実施形態では、偏光子ユニット10を設けていたが、第3実施形態では、偏光子ユニット10を省略している。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して示し、その説明を省略する。
図5は、第3実施形態に係る光配向装置200を示す正面図である。
光配向装置200は、光照射器2、冷却ユニット220及びエアーカーテン器具60を備えている。冷却ユニット220は、偏光子冷却経路40を備えない以外、第1実施形態の冷却ユニット20と同様に構成されている。
【0049】
すなわち、光配向装置200は、筐体3の光出射開口部3Aに光透過部材である透明体6を備え、透明体6の出口にエアーカーテン器具60を備える構成とした。この構成により、光配向対象物Wと当該光配向対象物Wと対向する透明体6との間にエアーカーテンACが形成されるので、透明体6の下面に異物が付着することを抑制できる。
【0050】
但し、上述の実施形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば上述の第1及び第2実施形態では、偏光子冷却経路40において、送風機21の吸込口21Bと筐体3とを接続するダクト29に陽圧機構50を設けたが、
図6に示す光照射装置300のように、送風機21の吸込口21Bと筐体3とを単にダクト29で接続してもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、ブローノズル62からエアーを吹き出すとともに、排気ノズル63からエアーを排気することでエアーカーテンACを形成していたが、エアーカーテンACを形成する構成はこれに限定されるものではない。例えば、ブローノズル62からエアーを吹き出すことなく、排気ノズル63からエアーを排気することでエアーカーテンACを形成してもよい。また、
図7に示すように、ブローノズル62を省略し、排気ノズル63からエアーを排気することでエアーカーテンACを形成してもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、光源を、紫外線を放射するランプ4として説明したが、光源はこれに限定されるものではない。
また、上述の実施形態では、光透過部材として透明体6、波長選択フィルタ7及び透明体70を設けていたが、光透過部材はこれらに限定されるものではない。
【0053】
また、上述の実施形態では、複数のワイヤーグリッド偏光子16で偏光子ユニット10を構成していたが、ワイヤーグリッド偏光子16は1つであってもよい。
また、上述の実施形態では、偏光子としてワイヤーグリッド偏光子16を用いたが、偏光子は例えば蒸着膜を用いた偏光子であってもよい。
【0054】
また、上述の実施形態では、上流から送風機21、冷却機22、フィルタ23の順に配置していたが、これらの配置順は任意に変更可能である。
また、上述の実施形態では、熱源冷却経路30及び偏光子冷却経路40を流れる冷却風の温度を個別に制御するべく、送風機21,21を個別に制御したが、冷却機22,22での冷却温度を異なる温度に設定してもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、熱源冷却経路30及び偏光子冷却経路40を完全に独立させていたが、熱源冷却経路30及び偏光子冷却経路40の一部、例えば、送風機21、冷却機22、フィルタ23の少なくとも1つを共通化してもよい。
また、上述の実施形態では、熱源冷却経路30及び偏光子冷却経路40の冷却風を循環させていたが、冷却風は必ずしも循環させる必要はない。
【解決手段】光照射装置1は、光照射器2の筐体3に反射鏡5と光源4を収納し、筐体3の光出射開口部3Aにエアーカーテン器具60を備える構成とし、光出射開口部3Aに設ける部材に異物が付着することを抑制する。