【実施例】
【0023】
図1は、本発明のベッド上及び室内の見守りシステムを適用した、室内1の状態を示した模式説明図である。なお、同図では、説明のために、ベッド2上での状況、ベッドサイドでの状況、フロア4内での状況を同時に図示している。たとえば、ベッド2には、見守りの対象者P1が就寝中の状態が示されている。また、見守りの対象者P2がベッドサイド3の床に転落し、起きられない状態が示されている。さらにフロア4内に、見守りの対象者(あるいは来訪者)P3が立っている状態が示されている。
【0024】
さらに、同図には、この室内1に備えられた対象者状況の検知手段10としての、人感センサ11と3次元距離検知手段12(
図2(d))とが天井面5のほぼ中央位置に設置された状態が示されている。そして、これらの装置の検知動作範囲(センシング領域)が略円錐形状のイメージで模式的に図示されている。
【0025】
図2(a),(b)は、
図1に示した室内1内でのベッド2の配置例を示した平面レイアウト図である。同図(c)は、室内1内の天井面5に設置された対象者状況の検知手段10の検知動作範囲(センシング領域)を模式的に示した正面図である。
図2(a),(b)に示したように、ベッド2は、室内1の中央部あるいは隅部で、頭部側が壁近くに配置されている。
【0026】
図3各図は、上述した
図2(a)のベッド2の配置例におけるセンシング領域の設定例について説明した概念図である。たとえば
図2(a)のようにベッドが配置された場合、ベッドの平面積に相当する領域をベッド領域2Aと設定する。さらに、そのベッド領域2Aの周囲には、ベッドサイド領域3Aとして認識される幅1m程度のコ字形をなしたセンシング領域が設定されている。それ以外の室内全体をフロア領域4Aとして、各センシング領域において、後述する3次元距離検知手段による対象者の高さ方向データhの算定、状況判断が行われる。
【0027】
このように、室内1は、ベッド2の平面寸法(たとえば幅0.9m×長さ2.2m)をベッド領域2A、その周囲を囲むようにベッドサイド領域3A、さらにその外側のフロア4全面を網羅するフロア領域4Aの3つのセンシング領域に区分されている。そして、それぞれのセンシング領域において、後述するように、対象者状況の検知手段としての3次元距離検知手段によって得られた対象者の位置(高さ)データが領域内の基準高さと比較され、その占める比率が算定され、その結果をもとに、対象者の状況(たとえば起床状態、転倒・転落、または室内1内への来訪者の存在の可能性までも考慮した状況)判断を行い、それぞれの状況に応じた通報を、適切な通報手段により、必要な(登録された)相手に行うことができる。
【0028】
[対象者状況の検知手段]
室内1の天井面5のほぼ中央位置には、
図2(c),(d)に示したように、ドーム状ケース13が取り付けられ、その内部に、対象者の状況の検知手段10としての人感センサ11と3次元距離検知手段12とが収容されている。人感センサ11としては、室内1内の見守り領域での動作物体を認識可能な赤外線センサが用いられている。赤外線センサは人の動きを検知して反応するため、ベッド2上で人(対象者)が寝ていて、まったく動きがない状態では対象者を検知できないが、寝返りをうったような場合にその動作を検知し、3次元距離検知手段12を動作させるトリガーとしての機能を果たすことができる。この3次元距離検知手段12としては、撮像領域内での多点合焦が可能なマルチフォーカス機能を有するCCDカメラが用いられている。
【0029】
3次元距離検知手段とその検知動作、解析手法について、その構成例と動作、検出結果の演算手順について簡単に説明する。本実施例では、3次元距離検知手段12として、1台のマルチフォーカスCCDカメラ(以下、検知カメラ12と記す。)が天井のドーム状ケース13内に収容されている(
図2(d))。この検知カメラ12は、レンズが真下を向いて設置され、その撮像範囲(センシング領域)は室内1内全体を撮影できるレンズ群とカメラ12内の光学センサの画素面とで適正に設定されている。そして、後述するデータ処理手段20(
図4)におけるデータ処理段階では、
図3に示したように、ベッド2領域2A、ベッドサイド領域3A、その周囲のマスキング処理がなされる。各対象領域のフォーカスエリアは縦横方向に細分割され、個々のフォーカスエリアに対応してフォーカスモジュールが設けられ、すべてのフォーカスエリアにおいて合焦データが得られるようになっている。このとき各フォーカスエリアでは、たとえばベッド領域2Aでは、検知カメラ12の真下位置とベッド2の四隅までの範囲の各点での距離の差による歪みを解消した平面が基準高さ面として初期値設定される。同様に、ベッドサイド領域3Aでもベッドの四隅とベッドサイド3範囲の四隅とに囲まれた各点での距離の差による歪みを解消した面が基準高さ面とされる。フロア領域4A内でもフロアの四隅とカメラの真下の間の範囲を撮像した際の各点での距離の差による歪みを補正した基準高さ面が設定されている。
【0030】
検知カメラ12としては、数cm程度での精度誤差で距離検出可能な装置であれば、上述した多点合焦のCCDカメラの他、ステレオ方式カメラなど、受動的計測手法からなる各種の3次元距離センサを用いることができる。また、能動的計測手法として検知用水平ビーム(超音波、赤外線等)を壁面側からベッドおよびフロアに向けて発し、ビームを遮断する対象者Pの存在とその位置(高さ)を検知し、その検知高さと比較用基準高さ面との比較を行い、対象者Pの状況判断を行うこともできる。
【0031】
次に、本システムの概略構成について、
図4を参照して説明する。上述したように、対象者の行動、動作は対象者状況の検知手段で把握される。これらのうち、3次元距離検知撮像手段である検知カメラ12において、分割領域で各対象点での合焦が行われ,距離が求められるが、各画素で得られた距離データは、データ処理手段20の距離データの高さ方向データh算定部において、鉛直高さ換算され、ベッド領域2A、ベッドサイド領域3A、フロア領域4Aの各領域における対象者の高さ方向データhが各領域の平面形状に対応した2次元データとして集積される。次いで、領域内高さ比率演算部で、各領域内で対象者を撮像した高さ(合焦位置)と、状況判断のために設定された比較基準高さとの比較を行い、領域内でその比較結果による領域(縦横画素数)の比率演算を行う。その結果をもとに、対象者状況認識部において、対象者がベッド2上に起床(着座)しているか、あるいは離床したか、転落という危機的状態にあるかを即時に認識できる。その結果は、結果出力手段30によって、看護師、ヘルパー、あるいは家族に通報される。その手段としては、音声伝達部によるスピーカーなどの開放性の音響機器での通報、画面表示部による遠隔モニターへの画像機器での通報、端末通信部による施設内PHS、外部携帯電話等の通信機器への通報など、状況に応じた通報が可能である。
【0032】
以下、本ベッド上及び室内1内の見守りシステムによるベッド上〜フロア内での対象者の状況認識手法について、
図5,
図6のフローチャートおよび
図7〜
図10の見守り対象者の状況例を参照して説明する。
(初期設定)
各見守り領域(ベッド領域2A、ベッドサイド領域3A、フロア領域4A)において、3次元距離検知手段12で、対象とする領域に見守り対象者がいない状態での3次元距離データを計測し、各領域での各画素での高さ方向データhを初期値として登録する(ステップ100、以下S100と記す)。
(システムの起動)
人感センサ11で室内1での対象者Pの動きを常時観察する。そのシステムの起動としては、対象者Pとしての介助、介護を要する者が、看護師、介護士、付き添い家族等(以下、介護者と記す。)の介助によってベッドに横になった状態で、介護者がベッドを離れる際に手動でシステムONとしたり、人感センサ11で対象者Pがベッド上に横になったことが確認された場合に、システムが自動的に起動するように設定することもできる。その場合、介護者等が離室して、その後ベッド上に寝た対象者のトリガーとなる動きを、人感センサ11が最初に検知した時点から、見守りモードを開始することができる(S110,S120)。
【0033】
本実施例では、この自動的に見守りモードが起動するまでの予備状態として、見守りモードがスタートするための初期高さ値として、
図7に示したようにH
0を設定し、対象者P1がベッド2上に寝ている状態が確認できるようにしている。その初期高さH
0としては寝具の厚みを考慮しても確実に対象者P1が寝ている状態として、0.2m程度に設定することが好ましい。この初期高さH
0がベッド領域2AのS%以上(
図7のベッド平面に相当するマトリクスで黒点表示された範囲)であることが確認された状態で、寝ている状況として判断する。さらに、この初期高さH
0に対して、具体的な対象者の状況判断を行うための基準データとして、
図8に示したように、ベッド2上の対象者が動く範囲、状況を想定して、複数の比較基準高さHi(i:表1に示すように、状態に応じた添え字を用いて各比較基準高さを区別する。)を設定している。
【0034】
(比較用基準高さHi)
見守り対象者Pがベッド上、ベッドサイド、病室内等のフロアでどのような状態にあるかを判断するために、本発明では、対象者の状態を判断する基準面からの高さを、比較基準高さHpi(p:場所,i:状況)と定義し、それぞれの状態に応じた比較基準高さHpiを以下の表のように設定した。表1の具体的な数値(設定値)は、複数の対象者の寝た状態、座った状態、立った状態から得られた計測データから設定したものである。なお、後述する判断手法2で適用する高さ調整値Hiは、対象者の身体情報に基づいて、比較基準高さHpiとは別個に設定されるものである。
【0035】
[表1]
【0036】
以下の(1)〜(3)までの見守り機能による対象者等の状況判断手法について、
図5(全体フロー),
図6(判断手法1)、
図11(判断手法2)を参照して説明する。
見守りモード開始後は、人感センサ11で対象者Pの動きを認識した場合に、3次元距離検知手段としての検知カメラ12を起動して、対象とする空間を撮像し、対象者P等の3次元距離計測を行う。そして各領域内で集積された細分された各測定点での高さ方向データhと、比較用基準高さHpiとの差を検出する(S130,S140)。その結果から、以下の(1)〜(3)の見守り機能による対象者等の状況判断を行う。なお、
図6に示したように、これらの状況判断はベッド領域2A、ベッドサイド領域3A、フロア領域4Aの各領域で並行して進められる(S200,S300,S400)以下、個々の領域での状況判断手順について説明する。
【0037】
[見守り機能による対象者等の状況判断(判断手法1)]
(1)ベッド領域2Aでの就寝、起床の判断(
図6:(S200、S210),
図7,
図8各図の状況)
まず、上述したように、初期段階として、対象者P1が
図7に示したように、初期高さH
0がベッド領域2AのS%以上であることが確認されている間は、センサ等による巡回探索のような連続的な状況判断はなされない(S200)。ここで、対象者が動作したと確認された場合には、ベッド領域で、高さ方向の距離に着目し、高さ方向データhが表1の比較基準高さHb(設定値として、例えば0.5mに設定すれば、寝返りや布団の跳ね上がりなど0.5m未満の高さの変化の影響を受けないため、誤った状況判断を回避できる。)を超えた比率がX%を超えた場合、見守りの対象者P1がベッド2で起床したと状況認識を行える。たとえば、
図8(a),(b)に示した状態では、高さ方向データhは比較基準高さHb以下であり、対象者P1はベッド2上で横になっている状況判断がなされる。また、
図8(c)は対象者P1がベッド2のリクライニング2aを起こした着座状態を示している。
図8(d)は対象者P1がベッド2の縁に座った状態を示している。これらの状況で3次元距離計測によって得られた高さ方向データh(各図のマトリクスで黒点表示された領域)が比較基準高さHbをX%以上超えた比率の状態にあり、ベッド2上に起床し、着座した状態と判断される。そして、必要に応じて、スピーカー、携帯電話、情報表示装置などによって、対象者P1が起床し、着座したことの通報を行う(S210,S250)。
【0038】
(2)ベッドサイド領域3Aでの判断(ベッドから離床した状態)(
図6:(ステップ300),
図9(a)の状況)
対象者P1がベッド2上にいないと判断された場合には、ベッドサイド領域3A(
図3(b))での状況判断がなされる。得られた高さ方向データhと、床面からの比較基準高さHs1,Hs2との比較が行われる。高さ方向データhがベッドサイド3での比較基準高さHs1(たとえば1.0m)で領域比率がZ%を超えた場合、
図9(a)に示したように、対象者P2がベッドサイド3に立っていると判断でき、その状態(ベッドサイド3からの離床)を通報する(S310,S350)。一方、ベッドサイド領域で高さ方向データhがベッドサイド3での比較基準高さHs2(たとえば0.2m)の領域比率がY%を超えた場合、
図9(b)に示したように、対象者P2がベッド2からベッドサイド3の床に転落し、床上に倒れていると判断し、対象者P2が危機的状況にあることを通報する(S320,S360)。
【0039】
(3)フロア領域4Aでの判断(
図6:(ステップ400),
図10(a),(b))
(3-1) 対象者がフロア領域に居ることが確認された場合には、対象者P1がベッド2上で寝ているかを確認する。ベッドに寝ていないと判断された場合(S410:No)には、フロア領域4A(
図3(c))での状況判断がなされる。具体的には高さ方向データhと、床面からの比較基準高さHf1,Hf2との比較が行われる。高さ方向データhがフロア内4での比較基準高さHf1(たとえば1.0m)で領域比率がZ%を超えた場合、
図10(a)に示したように、対象者P3がベッドから離れてフロアに立っていると判断でき、その状態(フロア在室して歩行中)を通報する(S420,S460)。一方、状況の図示はないが、フロア領域4Aで高さ方向データhが比較基準高さHf2(たとえば0.2m)の領域比率がY%を超えた場合、
図9(b)と類似した状況が発生したと判断される。すなわち、対象者P3がフロアを歩行中に転倒し、起き上がれない状態にあると判断し、対象者P3が危機的状況にあることを通報する(S440,S470)。
【0040】
(3-2) 対象者P1がベッド2で睡眠している状態(初期高さH
0がベッド領域2AのS%以上が確認された状態)で、さらに対象者P3が検知された場合には、フロア領域4A(
図3(c))で、高さ方向データhと比較基準高さHf1との比較が行われる。対象者P3の高さ方向データhが比較基準高さHf1の範囲にある割合がZ%を超えた場合、
図10(b)に示したように、対象者P1がベッド2で横になっている状態で、フロア4内に来訪者P3が訪れた状況が確認される(S410,S430)。その際、来訪者P3の身元が不明な場合にはフロア4内への進入情報を通報すると同時に、警備員などの関係者に知らせる(S450)。
【0041】
[見守り機能による対象者等の状況判断手法2]
この状況判断手法2の特徴は、対象者の身体情報をもとにして設定した、比較基準高さの調整値と、しきい値表(表2)を参照した状況判断を行う点にある。
具体的には、表2に示したように、対象者の体重(W)、身長(Ta)(病院や介護施設等の施設では、定期的に身体測定データをとっているので、その保有データを利用できる。)をもとに、体重が重く背が高い人の場合と、軽く背が小さい人の場合等、身体的特徴を考慮して、比較基準高さの調整値H1、H2を設け、表1に示した比較基準高さHpiに対して高さ調整を行う。さらに対象者Pの領域比率の判断のためのしきい値も変化させている。一般に、体重と身長は正の相関にあるが、小柄ながら太っている人はセンサが状況変化を捉えにくいので、高めのしきい値を設定し、逆に背の高い人は動きが大きく現れがちなので、低めのしきい値に設定することが実情にあう。これにより、個人の身体的特徴を考慮した判定をして、状況判断の信頼性を向上させることができる。
【0042】
[表2]
【0043】
したがって、上表に示したように、高さ調整値として本実施例では、H1,H2が設定され、領域比率の判断においては、ベッド領域でのしきい値Xi(%)として、しきい値X1,X2,X3(X1>X2>X3)にレベル分けされた状況判断がなされる。同様にしきい値Yi,Zi(%)も設定される。
【0044】
[見守り機能による対象者等の状況判断(判断手法2)]
以下、上述した調整値、しきい値を用いた状況判断について、
図11を参照して説明する。
(1)ベッド領域での就寝、起床の判断(
図11:(S200、S210),
図7,
図8各図の状況)
まず、上述したように、初期段階として、対象者が
図7に示したように、初期高さH
0がベッド領域2AのS%以上であることが確認されている間は、具体的な状況判断はなされない(S200)。ここで、対象者が動作したと確認された場合には、ベッド領域で、高さ方向の距離に着目し、高さ方向データhが表1の比較基準高さHb+Hiと比較される。その場合、太った体形の対象者では、判断手法1で設定した固定値に比べ、より正確な高さ判断および、領域比率の判定を行うことができる。具体的には、
図8(c)、(d)に示したように、対象者P1がベッド2のリクライニング2aを起こした着座し、あるいはベッド2の縁に座った状態の場合にその対象者の体形情報を考慮した調整値、しきい値を適用し、高さ方向データhが比較基準高さ(Hb+Hi)をXi%を超えた領域比率の状態が確認され、ベッド2上に起床し、着座した状態と判断される。そして、必要に応じて、スピーカー、携帯電話、情報表示装置などによって、対象者P1が起床し、着座したことの通報を行う(S210,S250)。
【0045】
(2)ベッドサイド領域での判断(ベッドから離床した状態)(
図11:(ステップ300),
図9(a)の状況)
対象者P1がベッド2上にいないと判断された場合には、ベッドサイド領域3A(
図3(b))での状況判断がなされる。得られた高さ方向データhと、床面からの比較基準高さHs1+Hi,Hs2+Hiとの比較が行われる。高さ方向データhがベッドサイド3での比較基準高さHs1+Hi(対象者の身体情報を考慮した値)で領域比率がZi%を超えた場合、
図9(a)に示したように、対象者P2がベッドサイド3が床に立っていると判断でき、その状態(ベッドサイド3からの離床)を通報する(S310,S350)。一方、ベッドサイド領域で高さ方向データhがベッドサイド3での比較基準高さHs2+Hiの領域比率がYi%を超えた場合、
図9(b)に示したように、対象者P2がベッド2からベッドサイド3の床に転落し、床上に倒れていると判断し、対象者P2が危機的状況にあることを通報する(S320,S360)。
【0046】
(3)フロア領域での判断(
図11:(ステップ400))
(3-1) 対象者がフロア領域に居ることが確認された場合、対象者P1がベッド2上で寝ているかを確認する。ベッドに寝ていないと判断された場合(S410:No)には、フロア領域4A(
図3(c))での状況判断がなされる。具体的には高さ方向データhと、床面からの比較基準高さHf1+Hi,Hf2+Hiとの比較が行われる。高さ方向データhがフロア内4での比較基準高さHf1+Hiで領域比率がZi%を超えた場合、
図10(a)に示したように、対象者P3がベッドから離れてフロアに立っていると判断でき、その状態(フロア在室して歩行中)を通報する(S420,S460)。一方、状況の図示はないが、フロア領域で高さ方向データhが比較基準高さHf2+Hiの領域比率がYi%を超えた場合、類似した状況である、
図9(b)に示したように、対象者P3がフロアを歩行中に転倒し、起き上がれない状態にあると判断し、対象者P3が危機的状況にあることを通報する(S440,S470)。
【0047】
(3-2) 対象者P1がベッド2で睡眠している状態(初期高さH
0がベッド領域2AのS%以上が確認された状態)で、さらに対象者P3が検知された場合には、フロア領域4A(
図3(c))で、高さ方向データhと比較基準高さHf1+Hiとの比較が行われる。対象者P3の高さ方向データhが比較基準高さHf1+Hiの範囲にある割合がZi%を超えた場合、
図10(b)に示したように、対象者P1がベッド2で横になっている状態で、フロア4内に来訪者P3が訪れた状況が確認される(S410,S430)。その際、来訪者P3の身元が不明な場合にはフロア4内への進入情報を通報すると同時に、警備員などの関係者に知らせる(S450)。
【0048】
図12は、上述の判断手法2において、対象者の身体情報をもとにした比較基準高さの調整値、しきい値表(表2)を利用して対象者の動きの認識を行うのに加え、対象者の行動情報を加味してその判断を行い、対象者への対応決定を、より高い信頼性で行えるようにした判断手法のブロック図である。
【0049】
たとえば、表3に示したように、対象者の歩行速度WSpにより、しきい値(Ki)のランク分けを行う他、対象者が立った状態からベッドに横になる(入床する)場合、その逆の離床する場合にかかる時間等から、特定の対象者が所定動作を行うのにかかる所要時間、言い替えるとその動作の保持時間(=行動所要時間(ActT))を基準値(Tm1)と比較することで、それを対象者の行動情報として取得できる。これらの動作での保持時間(動作速度)に着目し、対象者は、今、ゆっくりながらベッドから起き上がろうとしているのか?、動けないでいるのか?という判断を、しきい値(TMi)と関数等で関連づけ、その関数をもとに判断することもできる。これにより、実際の場面を確認することなく、対応すべき状況の判断が行える。判断の利便性、信頼性を向上させることができる。
【0050】
[表3]
【0051】
その他の判断手法として、居室、病室で利用される車いすの形状情報(高さ方向座標、平面占有面積、着座時、空席時の容積等)取得しておくことで、各種の介助の先取り情報を得ることができる。すなわち、介助者がなく、一人で車いすでベッドサイドに戻ってきた病人が検知されたら、その場合には、ベッドへの入床は介助者が必要なことを意味し、対象者がナースコールをする前に自動的にナースコールが発信される。逆にベッドサイドに車いすがあり、対象者が離床動作を起こしたことが検知された場合にも自動的にナースコールが発信され、介助者がベッドサイドに来てくれて、ベッドから車いすへの乗り移りを介助することができる。
【0052】
次に、上述した見守りシステムを利用した照明制御手法について、
図13を参照して説明する。病室等は、蛍光灯等の全体照明の他に各ベッド上に個別にダウンライトが設けられている場合がある。そのダウンライトと全体照明とを、ベッドの利用者の入床、睡眠、起き上がり、離床の状況取得情報をもとに調光する制御手法を例に説明する。たとえば、夜間の消灯時間中に、対象者がベッド上に起き上がると、上述の状況判断で、ベッド上に座った状態が検知される。その場合に、そのダウンライト照度の最も明るい状態の10%の明るさに調光(以下、この状態を10%調光と記す。)して点灯する。この程度の明るさで対象者は身の回りが確認できる。たとえば対象者が離床することが確認できたら、照明を40%の明るさに増す。また、出入り口までの全体照明も所定照度で点灯し、移動時の室内の明るさを確保する。室外に出た場合には、全体照明は暗くすることもできる。そして、病室外のトイレに行って戻ってきたら、室内の全体照明を40%調光まで戻し、ベッドサイドまでの移動の間の明るさを確保する。そしてベッドサイドに座り、さらにベッドに横になった(入床)したことが確認されたら、照明を10%調光まで落とし、徐々に調光率を落として、入眠が確認されたら、消灯する。
【0053】
また、対象者が離床する前に、介護士等が入ってきた時は、その時点で40%調光として介護士の作業が行い易い明るさ環境とする。調光変化率は、
図13に示したように、離床時には、次の行動に移る場合に対応して比較的早い変化率を設定し、入床してしばらくの間は、身の回りを動作のための明るさを確保する意味で徐々に暗くしていくことが好ましい。
【0054】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。