(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ボックスカルバートなどの延長の長い構造物を築造すると、土留め壁が地下水の流れを阻害し、地下ダムのような現象が起こり、上流側では地下水の上昇、下流側では水位の低下が見られる。
【0003】
このような地下水の問題を解消するために、例えば特許文献1の技術が開示されている。この特許文献1の技術は、地下構造物よりも深い位置の透水層の地下水を通水させるのには好適であるが、地下構造物と同程度の深さの透水層の地下水を通水させるには装置が大掛かりであり、施工コストが上昇してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、簡易な構成(安価)で地下水を通水させる方法として、水平ボーリングで上流側、下流側それぞれの開削土留め壁(ソイルセメント連続壁やモルタル杭柱列壁)に通水孔を設けると同時に壁内に通水管を取り付けた施工方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した地下水対策では浅層部で通水を行う際、水平ボーリングなどで施工中の開削土留め壁に通水孔を設ける必要があり、躯体構築後の施工が不可能である。つまり、躯体構築前に大掛かりな工事を行う必要があることから、工期に影響を与えてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、工期に影響を与えにくい地下水集水構造および地下水通水構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、固化材と所定間隔で該固化材中に配設された鋼製芯材とからなる土留め壁が地中透水層を分断して構築され、該土留め壁内側の掘削側と前記地中透水層との間で地下水を集水させるための地下水集水構造であって、一面に開口部が形成された鋼製集水箱と、該鋼製集水箱の内部に配設されたスクリーン部と、該スクリーン部と連通するように前記鋼製集水箱に形成された第1連通孔と、を備えた集水装置を用い、前記鋼製集水箱は、前記開口部を前記地中透水層の深さ位置にあって前記土留め壁の内側に対向させつつ前記開口部の周縁部を前記土留め壁に固定され、前記鋼製集水箱の前記第1連通孔に通水管が連結可能とされて
おり、前記鋼製集水箱の上面に、前記土留め壁の前記固化材を切削するために用いる高圧噴射装置を挿通可能な第2連通孔が形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、構造物の躯体構築中または構築前に土留め壁の壁面に集水装置を設けることにより、その後の地下水通水構造の施工と構造物の躯体工事とを並行して作業することができる。したがって、躯体工事に影響を与えにくく、工期の短縮を図ることができる。
また、土留め壁の固化材の切削を、鋼製集水箱側から高圧噴射装置を挿入して行うことができる。したがって、鋼製集水箱に第2連通孔を形成するだけの簡易な構成で、容易にかつ所望の形状に固化材を切削することができる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、
請求項1に記載の地下水集水構造を用いた地下水通水構造であって、少なくとも前記第2連通孔から前記鋼製集水箱内に挿入された前記高圧噴射装置による高圧噴射によって、前記土留め壁の固化材部分が切削されて前記集水装置と前記地中透水層とが連通する切削穴が形成され、前記切削穴と前記鋼製集水箱内にフィルター材が充填されて、前記地中透水層と前記集水装置との間が通水可能となっていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載した発明によれば、
構造物の躯体構築中または構築後に土留め壁の切削をすることができるため、躯体工事に影響を与えにくく、工期の短縮を図ることができる。そして、土留め壁の固化材を切削する際に、鋼製集水箱側から高圧噴射装置を挿入して行うため、容易に固化材を切削することができる。
【0012】
請求項3に記載した発明は、
固化材と所定間隔で該固化材中に配設された鋼製芯材とからなる土留め壁が地中透水層を分断して構築され、該土留め壁内側の掘削側と前記地中透水層との間で地下水を集水させるための地下水集水構造を用いた地下水通水構造であって、前記地下水集水構造は、一面に開口部が形成された鋼製集水箱と、該鋼製集水箱の内部に配設されたスクリーン部と、該スクリーン部と連通するように前記鋼製集水箱に形成された第1連通孔と、を備えた集水装置を用い、前記鋼製集水箱は、前記開口部を前記地中透水層の深さ位置にあって前記土留め壁の内側に対向させつつ前記開口部の周縁部を前記土留め壁に固定され、前記鋼製集水箱の前記第1連通孔に通水管が連結可能とされており、少なくとも前記土留め壁内に形成された空洞からの高圧噴射によって、前記土留め壁の固化材部分が切削されて前記集水装置と前記地中透水層とが連通する切削穴が形成され、前記切削穴と前記鋼製集水箱内にフィルター材が充填されて、前記地中透水層と前記集水装置との間が通水可能となっていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、
構造物の躯体構築中または構築前に土留め壁の壁面に集水装置を設けることにより、その後の地下水通水構造の施工と構造物の躯体工事とを並行して作業することができる。したがって、躯体工事に影響を与えにくく、工期の短縮を図ることができる。
また、構造物の躯体構築中または構築後に土留め壁の切削をすることができるため、躯体工事に影響を与えにくく、工期の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地下水集水構造および地下水通水構造によれば、構造物の躯体構築中または構築前に、土留め壁の壁面に集水装置を設けることにより、その後の地下水通水構造の施工と構造物の躯体工事とを並行して作業することができる。したがって、躯体工事に影響を与えにくく、工期の短縮を図ることができる。また、構造物の躯体構築中または構築後に土留め壁の切削をすることができるため、これによっても工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態における地下水通水設備の施工手順を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態における地下水集水構造を示す概略側面図(フローチャートのS1の状態)である。
【
図4】
図2の集水装置を取り付ける状態を示す地下水集水構造の概略斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態における集水装置を表面側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態における集水装置を裏面側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態における地下水集水構造を示す概略側面図(フローチャートのS2の状態)である。
【
図8】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS3の状態)である。
【
図9】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS4の状態)である。
【
図11】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS5の状態)である。
【
図12】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS6の状態)である。
【
図13】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS7の状態)である。
【
図15】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS8の状態)である。
【
図17】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS9の状態)である。
【
図18】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略側面図(フローチャートのS10の状態)である。
【
図20】本発明の実施形態における地下水通水構造の施工手順を示す概略図(フローチャートのS11の状態)である。
【
図21】本発明の実施形態における地下水通水構造の別の態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の地下水集水構造から地下水通水構造を経て地下水通水設備に至る施工手順を示すフローチャートである。
図1のフローチャートおよび各工程の状態を示す図面に沿って地下水通水設備200(
図20参照)の施工手順を説明する。なお、以下の施工手順では、地中構造物1を構築する工事において、地中構造物1の両外側周囲に土留め壁13が地中透水層17を分断して地下水の流れを遮断する形態で施工され、地中構造物1が構築される土留め壁内側の掘削が完了した状態から説明をする。なお、本実施形態における地下水通水設備200は地下水通水構造100を包含し、地下水通水構造100は地下水集水構造10を包含する。
【0019】
まず、
図2〜
図4に示すように、ステップS1では、地下水集水構造10の集水装置11の鋼製集水箱21(後に詳述する)および鋼製集水箱21の上方および下方の所定範囲に土留め壁防護用の鉄板12を土留め壁13の壁面13aに取り付ける。以下詳細に説明する。
【0020】
土留め壁13は、固化材14と所定間隔で該固化材14中に配設された鋼製芯材15とで構成された地中連続壁である。地中透水層17は調査ボーリングによって予めその位置が想定されるものであり、また土留め壁13の内側を掘削するときには、実際に地中透水層17の位置が確認できる。したがって、掘削後にこの位置を確認して流水方向上流側および下流側にそれぞれ位置する土留め壁13の壁面13aにおける鋼製集水箱21の設置位置を決める。そして、鋼製集水箱21設置予定位置の上方では地上付近まで、下方では鋼製集水箱21の下端から2m程度まで、固化材14を鋼製芯材15,15のフランジ15aの面と略面一(少なくとも固化材14がフランジ面より突出しない)になるよう、鋼製集水箱21の設置予定位置を含めて一連で削り取る(土留め壁面平滑化工程)。
【0021】
次に、鋼製集水箱21を設置するが、この設置位置は、予め地下水の水位変動を見込んで、鋼製集水箱21の上端が地中透水層17の深さ位置に対応した位置であって最低地下水位よりも低い位置になるように決められている。そして、土留め壁13の隣り合う鋼製芯材15,15に、鋼製集水箱21の開口部22を土留め壁13の内側に向け、その周縁部を溶接固定する(集水装置設置工程)。
【0022】
続いて、鋼製集水箱21の上方および下方に土留め壁防護用の鉄板12を設置する。具体的には、上記の土留め壁面平滑化工程において切削された固化材14が露出している部分を塞ぐように鉄板12を取り付ける。鉄板12は、隣り合う鋼製芯材15,15のフランジ15a間に架け渡される幅寸法を有しており、鉄板12の側縁を鋼製芯材15,15のフランジ15aに溶接して固定する。なお、上下方向に配される鉄板12,12同士(鉄板12を複数枚に分割する場合)および鉄板12と鋼製集水箱21との間も溶接固定する。また、鉄板12を溶接固定する際に、鉄板12と固化材14との間に隙間ができてしまう場合には、モルタルで隙間を充填することが望ましい。
【0023】
ここで、集水装置11について説明する。
図5、
図6に示すように、集水装置11は、直方体形状で土留め壁13の内側(掘削側)と対向させることになる一面に開口部22が形成された鋼製集水箱21と、鋼製集水箱21の内部にその上端から下端に亘って配設されたスクリーン管(スクリーン部)23と、スクリーン管23内部と連通するように鋼製集水箱21の上面21aに形成された第1連通孔24と、土留め壁13の固化材14を切削するために用いる高圧ジェットノズル31(
図13参照)を挿通可能な第2連通孔25と、を備えている。なお、第1連通孔24は鋼製集水箱21の幅方向端部近傍に形成されており、第2連通孔25は鋼製集水箱21の幅方向略中央に形成されている。また、第1連通孔24は通水管33が接続可能に構成されており、第2連通孔25は高圧ジェットノズル31やそのロッド32を鋼製集水箱21内に挿通を容易にするためのガイド管34が接続可能に構成されている。また、第1連通孔24および第2連通孔25は、通水管33およびガイド管34をそれぞれ容易に接続できるように鋼製集水箱21の上面21aから上方に突出した継手管態様の円筒形状に形成されている。さらに、本実施形態のように鋼製集水箱21に第1連通孔24および第2連通孔25が形成されている場合、第2連通孔25を利用して挿通された高圧ジェットノズル31からのジェット噴射によりスクリーン管23が傷付かないように高圧ジェットノズル31が挿入される位置とスクリーン管23との間に鋼製のパイプ材で構成された防護部材26が2本設けられている。その他、土留め壁13に固定したときの鋼製集水箱21の地中構造物1側に向かう水平方向の幅は、地中構造物1が構築されたときに支障とならない幅つまり地中構造物1に接触しない程度の小さい幅に設定されている。ちなみにスクリーン管23は、巻き線スクリーン管を用いており、管内部と管外部との間で後述のフィルター材40を通過させずに地下水だけを通過させるものである。スクリーン管23を用いずに、網目のスクリーンを用いて鋼製集水箱21内を開口部22側に対して仕切ってスクリーン部を形成し、このスクリーン部内部と第1連通孔24とを連通させるようにしてもよい。
【0024】
続いて、
図7に示すように、ステップS2では、鋼製集水箱21の第1連通孔24に通水管33の竪管33aを接続し、第2連通孔25にガイド管34を接続する。なお、ガイド管34は地上付近まで立ち上げられている。以上のステップまでが、本実施形態における地下水集水構造10の説明である。本地下水集水構造10は、集水装置11の鋼製集水箱21が取付け固定された位置の固化材14が切削され、地中透水層17と集水装置11が連通した場合(詳細は後述する)に、集水機能を有するようになる。なお、本ステップは地中構造物1の躯体工事を開始する前に行うことを原則とするが、地下水集水構造10の設置に差し支えない範囲であれば躯体工事を着手していてもよい。
【0025】
続いて、
図8に示すように、ステップS3では、地中構造物1の躯体工事を開始するか、継続する。この後に説明する各工程は躯体工事と並行して行うことができる。
【0026】
続いて、
図9、
図10に示すように、ステップS4では、地上から地中透水層17の深さより若干下方まで土留め壁13の固化材14を削孔して削孔穴(縦穴形状の空洞)28を形成する(土留め壁削孔工程)。
【0027】
この削孔穴28は、地上に設置した削孔機29の削孔ロッドを用いて所定深さまで上方から下方に向かって削孔することで形成する。削孔穴28は、平面視で鋼製集水箱21に対向する位置に形成する。なお、削孔穴28は、予め後述の高圧噴射による切削穴37形成位置を決めていれば、土留め壁13構築時の固化材14の硬化前に該固化材14内に、切削穴37の上方位置まで円形パイプによる箱抜き型枠を埋設しておくことで削孔穴28を予め形成しておくこともできる。このようにすれば、削孔工程の短縮が図れる。さらには、後述の切削穴形成位置まで円形パイプによる箱抜き型枠を設置することで予め縦穴を形成して土留め壁13を構築するようにすれば、削孔工程を省略することができる。
【0028】
続いて、
図11に示すように、ステップS5では、上記土留め壁削孔工程の途中に、削孔穴28に曲がりなどが生じていないかなどの削孔精度を確認する(削孔精度確認工程)。
具体的には、削孔穴28内に孔内傾斜計35を挿入し、適切な箇所で孔曲がり測定を行うことで削孔精度を確認する。なお、円形パイプによる箱抜き型枠で予め縦穴(空洞)を形成したところにおいては、この削孔精度確認工程は省略できる。
【0029】
続いて、
図12に示すように、ステップS6では、削孔穴28を形成した後、削孔ロッドを地上まで引き上げる。その後、削孔穴28の穴壁保護のため削孔穴28の天端より1m程度下方まで口元管を挿入しておく。
【0030】
続いて、
図13、14に示すように、ステップS7では、公知の高圧ジェット噴射装置を用い、高圧噴射装置の高圧ジェットノズル31をその先端に有するロッド32を削孔穴28内に挿通させ、この削孔穴28から地中透水層17に向けて、またこの削孔穴28から鋼製集水箱21に向けて高圧ジェット噴射を行い、土留め壁13の外側に位置する地中透水層17と集水装置11(鋼製集水箱21)との間が連通するように固化材14を切削して切削穴37を形成する(土留め壁内部切削工程)。なお、地中透水層17側への切削は、ロッド32の先端を削孔穴28内の底部(鋼製集水箱21よりも下方位置になるようにする。)に至らしめた後、高圧ジェットノズル31から水ジェットを平面視で所定範囲回転させて噴射しながら所定位置上方(鋼製集水箱21よりも上方位置になるようにする。)まで引き上げていくことで行う。また、集水装置11側への切削は、地中透水層17側への切削途中に高圧ジェットノズル31を反対側に回転させて行われる。この際に注意しなければならないことは、鋼製集水箱21の開口部22内に切削範囲が納まるようにすることである。ところで、地中透水層17と集水装置11(鋼製集水箱21)との間の連通が、削孔穴28からの切削だけで済むようであれば、集水装置11の第2連通孔25は設けなくてもよい。
【0031】
高圧ジェット噴射では、例えば研磨材(けい砂)を水の中に混入して噴射する(アブレシブジェット)。研磨材を混入することで切削力を高めることができる。なお、削孔穴28から集水装置11側へのジェット噴射だけでは貫通しない場合は、第2連通孔25に接続されたガイド管34を利用し、該ガイド管34内に上述した高圧ジェットノズル31をその先端に有するロッド32を鋼製集水箱21内に挿通して集水装置11側から削孔穴28に向かい鋼製集水箱21の開口部22下端付近から上端付近に亘って高圧ジェット噴射を行い、固化材14を切削して削孔穴28と集水装置11との間を連通させて切削穴37を形成する。一方で、土留め壁13が薄い場合など、削孔穴28を土留め壁13内に形成せず、第2連通孔25、ガイド管34を利用した集水装置11側からのみの固化材14の切削によって地中透水層17に連通する切削穴37を形成してもよい。
【0032】
続いて、
図15、
図16に示すように、ステップS8では、上述した土留め壁内部切削工程で形成された切削穴37内を切削穴28やガイド管34を介してフラッシング(洗浄)する。具体的には、前工程で使用した高圧ジェットノズル31が形成されたロッド32を用いて、該高圧ジェットノズル31より空気を噴射することにより切削穴37内をフラッシングする。集水装置11側からのみ切削する場合は、ガイド管34を介してのフラッシングとなる。
【0033】
続いて、
図17に示すように、ステップS9では、上記土留め壁内部切削工程の後に、土留め壁13の固化材14に形成した切削穴37の切削状態を計測する(切削状態計測工程)。
具体的には、超音波測定器38を用い、該超音波測定器38の測定部39を、削孔穴28やガイド管34を利用して切削穴37内に挿入し、該切削穴37内で切削状態を計測する。あるいは、カメラを挿入して目視によることでもよい。
【0034】
続いて、
図18、19に示すように、ステップS10では、切削穴37の形成範囲内に地中透水層17の土砂がスクリーン管23の内部に流れ込まないよう、粒度調整した砂などのフィルター材40を投入する(フィルター材投入工程)。
フィルター材40の投入に先立ち削孔穴28にスクリーン管(スクリーン部)41を挿入する。スクリーン管41の上下方向の設置範囲は地中透水層17側への切削穴37形成範囲であり、その形成範囲より若干上方位置まで配置する。フィルター材40は削孔穴28からの投入で、鋼製集水箱21内にも充填される(スクリーン管23内部にはフィルター材40は充填されない。)が、鋼製集水箱21に接続されたガイド管34からも投入するようにすれば、切削穴37および鋼製集水箱21内へのフィルター材40充填がより確実になる。なお、集水装置11側からだけの切削の場合は、ガイド管34からだけのフィルター材40の投入となる。ところで、削孔穴28内のスクリーン管41は、切削穴37内のフィルター材40が目詰まりにより通水機能が衰えたときに、フラッシングするためのものなので、スクリーン管41内部は空洞に保っておく必要がある。スクリーン管41は、巻き線スクリーン管を用いており、管内部と管外部との間でフィルター材40を通過させずに水だけを通過させるものである。
【0035】
上述したステップS1〜S10の地下水通水構造設置工程を上流側および下流側の両方で同じ工程を行うことにより一対の地下水通水構造100,100を構築することができる。
【0036】
続いて、
図20に示すように、ステップS11では、上流側の集水装置11の通水管33(竪管33a)と、下流側の集水装置11の通水管(竪管33a)との間をサイホン方式により通水管33(横管33b)で連結する(通水管設置工程)ことで地下水通水設備200が完成する。
【0037】
このとき、竪管33aと横管33bとの連結箇所より上方に竪管33aが延伸しており、そこにバルブ42が設けられている。バルブ42は上流側および下流側の両方に設けられており、上流側のバルブを42aとし、下流側のバルブを42bとする。そして、通水管33に通水させるために、上流側の竪管33aに通水補助管43を連結して、バルブ42a,42bを共に開状態にする。通水補助管43から注水し、下流側のバルブ42bから水が溢れ出ることをもって通水管33(横管33b)に水が完全に充填されたものとし、この状態でバルブ42a,42bを閉状態にする。このように構成することで、以後サイホン効果により水が通水管33内を継続的に流れるようになる。なお、下流側から注水する場合は、上流側のバルブ42aから水が溢れ出ることをもって水が充填されたものとする。また、水は上流側や下流側のガイド管34や削孔穴28を利用して注水してもよい。また、
図20は、両側に図示した集水装置11は掘削側からの正面視の図示であり、集水装置11,11間に図示した地中構造物1は通水管33(横管33b)が通過する位置の断面図を図示している。
【0038】
本実施形態によれば、地中構造物1の躯体構築中(躯体構築の初期段階であれば、場合によっては集水装置11を取り付けることが可能である。)または構築前に土留め壁13の壁面13aに集水装置11を設けることにより、その後の地下水通水構造100の施工と地中構造物1の躯体工事とを並行して作業することができる。したがって、地中構造物1の躯体工事に影響を与えにくく、工期の短縮を図ることができる。また、躯体構築前に土留め壁13の壁面13aに集水装置11を取り付けるため、安全に作業することができる。また、地下水集水構造10を設置した後であって地中構造物1の躯体構築中または構築後に土留め壁13の切削をすることができるため、これによっても工期の短縮を図ることができる。さらに、地中構造物1の躯体構築中または構築後に土留め壁13の切削をする際に、地下水が多量に出水しても集水装置11を既に設けているため、出水リスクを軽減することができる。そして、鋼製集水箱21を土留め壁13の鋼製芯材15に溶接固定するだけでよいため、簡易な構成で施工コストの低減を図ることができる。
【0039】
また、鋼製集水箱21の上面21aに、土留め壁13の固化材14を切削するために用いる高圧ジェットノズル31を挿通可能な第2連通孔25を形成したため、土留め壁13の固化材14を切削する際に、鋼製集水箱21側から高圧ジェットノズル31を挿入して行うことができる。したがって、鋼製集水箱21に第2連通孔25を形成するだけの簡易な構成で容易に固化材14を切削することができる。
【0040】
また、削孔穴28の形成途中に、削孔精度を確認する削孔精度確認工程を備えることにより、所望の精度の削孔穴28を形成することができ、所望の地下水通水構造100を構築することができる。
【0041】
さらに、切削穴37を形成した後に、切削穴37の切削状態を計測する切削状態計測工程を備えることにより、土留め壁13の内部により高精度な切削穴37を形成することができ、所望の地下水通水構造100を構築することができる。
【0042】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0043】
例えば、本実施形態では、通水管33の横管33bが地中構造物1の上方を通過する場合の説明をしたが、
図21に示す地下水通水設備200のように、地中構造物1の下方を通過するように構成してもよい。このとき、第1連通孔24は鋼製集水箱21の下面に形成すればよい。このように構成した場合は、掘削に伴って、集水装置11の鋼製集水箱21から通水管33の竪管33aを立ち下げる工程を行い、床付けに達したら床付け面付近に上流側と下流側との間を通水管33の横管33bで連結する工程を先行して行う。その他の工程は、上述したように地中構造物の躯体工事と並行して行うことができるため、このように構成しても工期遅延にはならない。また、このように構成することで、上流側の集水装置11から自然に通水管33を通って下流側の集水装置11内に地下水が充填される。なお、このとき、ガイド管34が空気抜きとなる。その後、下流側の集水装置11の工事が完了すると自然に通水状態とすることができる。なお、本実施形態において第1連通孔24を鋼製集水箱21の下面に形成したが、鋼製集水箱21の上面であってもよい。第1連通孔24を上面に形成した場合は、通水竪管の一部に180度曲り管を用いて下方に導くようにすればよい。
【0044】
また、上記実施形態の地下水通水構造100の施工方法は、モルタル杭柱列壁で構成される土留め壁や、ソイルセメント連続壁で構成される土留め壁などに適用することができる。たとえば、鋼製芯材としての鉄筋籠をコンクリート壁内に配設した地中連続壁の場合でも、鋼製集水箱21を掘削側の地中連続壁の鉄筋に固定し、鋼製集水箱21の全周囲で掘削側の土留め壁面の所定範囲を鉄板12で覆うようにすれば、本発明を適用できる。