(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の第1〜第6の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
又、以下に示す第1〜第6の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、高速動画像の撮像装置、高速現象をブレなく撮像するための静止画の撮像装置等の種々の固体撮像装置に適用可能である。又、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでなく、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る固体撮像装置(2次元イメージセンサ)は、
図1に示すように、画素アレイ部1と周辺回路部(2,3,4,5,6)とを同一の半導体チップ上に集積化している。画素アレイ部1には、2次元マトリクス状に多数の画素X
ij(i=1〜m;j=1〜n:m,nはそれぞれ整数である。)が配列されており、例えば、方形状の撮像領域を構成している。画素アレイ部1の下辺部には、画素行X
11〜X
1m;……;X
i1〜X
im;……;X
(n-2)1〜X
(n-2)m;X
(n-1)1〜X
(n-1)m;X
n1〜X
nm方向に沿って水平シフトレジスタ2が設けられ、画素アレイ部の左辺部には画素列X
11,……,X
i1,……,X
(n-2)1,X
(n-1)1,X
n1;X
12,……,X
i2,……,X
(n-2)2,X
(n-1)2,X
n2;X
13,……,X
i3,……,X
(n-2)3,X
(n-1)3,X
n3;……;X
1j,……,X
ij,……,X
(n-2)j,X
(n-1)j,X
nj;……;X
1m,……,X
im,……,X
(n-2)m,X
(n-1)m,X
nm方向に沿って垂直シフトレジスタ3が設けられている。垂直シフトレジスタ3及び水平シフトレジスタ2には、タイミング発生回路4が接続されている。
【0014】
これらのタイミング発生回路4及び水平シフトレジスタ2及び垂直シフトレジスタ3によって画素アレイ部1内の単位画素X
ijが順次走査され、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行される。即ち、本発明の第1の実施の形態に係る固体撮像装置では、画素アレイ部1を各画素行X
11〜X
1m;……;X
i1〜X
im;……;X
(n-2)1〜X
(n-2)m;X
(n-1)1〜X
(n-1)m;X
n1〜X
nm単位で垂直方向に走査することにより、各画素行X
11〜X
1m;……;X
i1〜X
im;……;X
(n-2)1〜X
(n-2)m;X
(n-1)1〜X
(n-1)m;X
n1〜X
nmの画素信号を各画素列X
11,……,X
i1,……,X
(n-2)1,X
(n-1)1,X
n1;X
12,……,X
i2,……,X
(n-2)2,X
(n-1)2,X
n2;X
13,……,X
i3,……,X
(n-2)3,X
(n-1)3,X
n3;……;X
1j,……,X
ij,……,X
(n-2)j,X
(n-1)j,X
nj;……;X
1m,……,X
im,……,X
(n-2)m,X
(n-1)m,X
nm毎に設けられた垂直信号線によって画素信号を読み出す構成となっている。各垂直信号線から読み出された画素信号は、信号処理回路5のノイズキャンセル回路CDS
1〜CDS
mにおいて信号処理された後、アンプ6を介して、撮像信号V
2として図示を省略した外部回路に出力される。
【0015】
第1の実施の形態に係る固体撮像装置のそれぞれの画素X
11〜X
1m;……;X
i1〜X
im;……;X
(n-2)1〜X
(n-2)m;X
(n-1)1〜X
(n-1)m;X
n1〜X
nmとして機能する半導体素子の断面構造の一例を
図2(a)に示す。
【0016】
図2(a)に示すように、画素X
ijとしての半導体素子は、第1導電型(p型)の半導体からなる基体領域21と、基体領域21の上部に埋め込まれ、光を入射する第2導電型(n型)の電荷生成埋込領域(カソード領域)23と、基体領域21の上部の一部に電荷生成埋込領域(カソード領域)23と離間して埋め込まれ、信号電荷を移動させる場の方向を深さ方向として定義して、電荷生成埋込領域23のポテンシャル谷(電子井戸)の底よりもポテンシャル谷の底の深さが深く(
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)参照。)、電荷生成埋込領域23が生成した電荷を蓄積する第2導電型(n
+型)の蓄積領域24と、基体領域21の上部の一部に蓄積領域24と離間して埋め込まれ、蓄積領域24が蓄積した電荷を受け入れる第2導電型(n
+型)の読み出し領域29と、基体領域21の上部の、電荷生成埋込領域23と蓄積領域24との間の一部から、蓄積領域24と読み出し領域29との間に渡って配置される第2導電型(n型)で、蓄積領域24より低不純物密度のキャパシタ形成領域25とを備える。電子はポテンシャルの高い方向に向かって移動し、正孔はポテンシャルの低い方向に向かって移動する。よって、「信号電荷を移動させる場の方向」とは、電子に対しては電気力線とは反対の方向を意味し、正孔に対しては電気力線の方向を意味する。電荷生成埋込領域23、蓄積領域24、読み出し領域29を囲むように、基体領域21より高不純物密度の第1導電型のウェル(pウェル)22が形成されている。蓄積領域24の下方には、上方から見た平面パターンがキャパシタ形成領域25と一致するように、ブロック層28が形成されている。
図2(a)では「第1導電型の基体領域」として、第1導電型(p型)の基体領域21を用いる場合を例示しているが、基体領域21の代わりに、第1導電型の半導体基板上に、半導体基板よりも低不純物密度の第1導電型のシリコンエピタキシャル成長層を形成して、エピタキシャル成長層を第1導電型の半導体からなる基体領域21として採用しても良く、第2導電型(n型)の半導体基板上に、第1導電型(p型)のシリコンエピタキシャル成長層を形成して、エピタキシャル成長層を第1導電型の半導体からなる基体領域21として採用しても良い。第2導電型(n型)の半導体基板上に、pn接合を形成するように、第1導電型(p型)のエピタキシャル成長層を形成すれば、長い波長の場合光が、第2導電型の半導体基板深くまで浸入するが、第2導電型の半導体基板で発生した光によるキャリアは、pn接合のビルトインポテンシャルによる電位障壁のため第1導電型のエピタキシャル成長層まで入って来られないので、第2導電型の半導体基板深くで発生したキャリアを積極的に捨てることができる。これによって、深い位置で発生したキャリアが拡散で戻ってきて、隣の画素に漏れ込むのを防ぐことが可能になる。これは特に、RGBのカラーフィルタが搭載された単板カラーのイメージセンサの場合に、色の混合を起こさないようにできる効果を奏する。
【0017】
ブロック層28は、第1の実施の形態に係る固体撮像装置が受光する波長が長い場合において、基体領域21の深くで発生した電子が表面に拡散によって戻ってくる場合、その一部が、蓄積領域24に取り込まれるのをブロックすることができる。このため、例えば近赤外光など、使用する光の波長が長い場合であっても、転送ゲート電極31の電位制御による発生電子の蓄積領域24への転送の変調特性に対する、基体領域21の深くで発生した電子が表面に拡散によって戻ってくる影響を抑制することが可能である。
【0018】
電荷生成埋込領域(カソード領域)23と、電荷生成埋込領域(カソード領域)23の直下の基体領域(アノード領域)21とで第1の埋め込みフォトダイオード(以下において、単に「フォトダイオード」という。)D1を構成している。蓄積領域(カソード領域)24と、蓄積領域24の直下の基体領域(アノード領域)21とで第2の埋め込みフォトダイオード(以下において「電荷蓄積ダイオード」という。)D2を構成している。
【0019】
ウェル22の一部から電荷生成埋込領域23の上部に渡り、p
+型の第1のピニング層26が、蓄積領域24の上部にp
+型の第2のピニング層27が配置されている。第1のピニング層26及び第2のピニング層27は、ダーク時の表面でのキャリアの生成を抑制する層であり、ダーク電流削減のために好ましい層として用いている。
【0020】
基体領域21の上にはゲート絶縁膜33が形成されている。ゲート絶縁膜33としては、シリコン酸化膜(SiO
2膜)が好適であるが、シリコン酸化膜以外の種々の絶縁膜を用いた絶縁ゲート型トランジスタ(MISトランジスタ)の絶縁ゲート構造をなしても良い。例えば、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜(Si
3N
4膜)/シリコン酸化膜の3層積層膜からなるONO膜でも良い。更には、ストロンチウム(Sr)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、イットリウム(Y)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)のいずれか1つの元素を少なくとも含む酸化物、又はこれらの元素を含むシリコン窒化物等がゲート絶縁膜33として使用可能である。
【0021】
ゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33上には、電荷生成埋込領域23と蓄積領域24との間に形成される転送チャネルの電位を制御して、電荷生成埋込領域23から、電荷生成埋込領域23が生成した電子を蓄積領域24へ電荷を転送し、グローバル電子シャッタの動作をさせる転送ゲート電極(電子シャッタ用ゲート電極)31と、蓄積領域24と読み出し領域29との間に形成される転送チャネルの電位を制御して、蓄積領域24から読み出し領域29へ電荷を転送する読み出しゲート電極32が配置されている。ゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33とゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33上の転送ゲート電極31とで、電荷生成埋込領域23と蓄積領域24との間の基体領域21の上部に形成されるチャネルの電位を制御して、電荷生成埋込領域23から蓄積領域24へ電荷を排出する第1の電位制御手段(31,33)を構成している。又、ゲート絶縁膜(読み出しゲート絶縁膜)33とゲート絶縁膜(読み出しゲート絶縁膜)33上の読み出しゲート電極32とで、蓄積領域24と読み出し領域29との間の基体領域21の上部に形成されるチャネルの電位を制御して、蓄積領域24から読み出し領域29へ電荷を転送する第2の電位制御手段(32,33)を構成している。
【0022】
転送ゲート電極31の下方の蓄積領域24側の一部には、基体領域21の上部にキャパシタ形成領域25が配置されており、この転送ゲート電極31がキャパシタ形成領域25に対向する部分とキャパシタ形成領域25とが、ゲート絶縁膜33を隔てて平行平板構造を構成する領域は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)を構成している。キャパシタ形成領域25は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の領域から、読み出しゲート電極32の下方に位置する基体領域21の上部に渡って配置されており、読み出しゲート電極32、ゲート絶縁膜33、キャパシタ形成領域25とで、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)と同様に、第2のMOSキャパシタ(32,33,25)を構成している。
【0023】
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)は、
図2(a)の断面図において、電荷生成埋込領域23、蓄積領域24、キャパシタ形成領域25、読み出し領域29を含む水平面で切った断面におけるポテンシャル図であり、電荷(電子)を黒丸で示している。
図2(a)に対応して、
図2(b)の中央の電位障壁(電子シャッタ用電位障壁)の左側に、電荷生成埋込領域23の伝導帯端のポテンシャル谷(第1のポテンシャル谷)PW1を示す。一方、第1のポテンシャル谷PW1の右側に電位障壁(電子シャッタ用電位障壁)を隔てて、蓄積領域24の伝導帯端のポテンシャル谷(第2のポテンシャル谷)PW2を示す。
【0024】
第1の実施の形態に係る固体撮像装置の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、転送、蓄積等の処理をされる信号電荷が電子である場合を例示的に説明している。このため、
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)に示すポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)が、電位(ポテンシャル)の正方向として表現しており、下方向がフォトダイオードが生成した信号電荷を移動させる場の方向である。したがって、第1導電型をn型、第2導電型をp型として、電気的な極性を反対とする場合においては、処理される信号電荷が正孔となるが、正孔に対しては、半導体素子内の電位障壁、ポテンシャル谷、ポテンシャル井戸等を示すポテンシャル形状等は、図の下方向(深さ方向)を、電位の負方向として表現される。しかし、信号電荷が正孔の場合も、ポテンシャル(電位)的には逆となるが、
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)の下方向がフォトダイオードが生成した信号電荷(正孔)を移動させる場の方向である。
【0025】
第1のポテンシャル谷PW1と、第2のポテンシャル谷PW2との間には、頂部とこの頂部の右側でこの頂部より低い肩部とで段差を付けた、段差状の電位障壁(電子シャッタ用電位障壁)を形成している。即ち、電子シャッタ用電位障壁は、第2のポテンシャル谷PW2側の、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)に相当する部分が第1のポテンシャル谷PW1側の頂部より深くなり、段差状(ステップ状)の肩部をなしている。第1のポテンシャル谷PW1側の、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の左側のキャパシタ形成領域25がない領域の転送ゲート電極31の直下に相当する部分が肩部より高い頂部をなしている。よって、第1のポテンシャル谷PW1と、第2のポテンシャル谷PW2との間に設けられる段差状の電位障壁(電子シャッタ用電位障壁)は、転送ゲート電極31直下の基体領域21の伝導帯端のポテンシャル分布に相当し、転送ゲート電極31に与えられる制御信号GSの電圧によって、定性的な頂部と肩部の相対的な段差関係を維持したまま、その頂部の高さを変化させる。
【0026】
更に、第2のポテンシャル谷PW2の右側に、読み出し領域29のポテンシャル井戸を示す。読み出し領域29のポテンシャル井戸において、右上がりのハッチングをした部分が電子が充満したポテンシャルレベルで、この右上がりのハッチングをした部分の上端がフェルミレベルの位置である。よって、右上がりのハッチングをした部分の上端の位置が、読み出し領域29がなすポテンシャル井戸の底の位置に相当する。第2のポテンシャル谷PW2と、読み出し領域29のポテンシャル井戸との間の電位障壁(読み出し用電位障壁)は、読み出しゲート電極32直下の基体領域21の伝導帯端のポテンシャル分布に相当する。第1の実施の形態に係る固体撮像装置は、制御信号GSが全画素の転送ゲート電極(電子シャッタ用ゲート電極)31のそれぞれに同時に与えられ、それぞれの電荷生成埋込領域23が生成した電子をそれぞれの蓄積領域24へ電荷をそれぞれ転送し、グローバル電子シャッタの動作をする。
【0027】
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)に示すように、電荷生成埋込領域23の完全空乏化したときの第1のポテンシャル谷PW1の深さが、蓄積領域24の完全空乏化したときの第2のポテンシャル谷PW2の深さよりも浅くなるようにするためには、例えば、電荷生成埋込領域23の不純物密度よりも蓄積領域24の不純物密度が高くなるように、それぞれの不純物密度を選べば良い。電荷生成埋込領域23の不純物密度よりも蓄積領域24の不純物密度を高く設定する方法は、公知の種々の方法が採用可能である。
【0028】
第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との間の電子シャッタ用電位障壁の頂部の高さ、第2のポテンシャル谷PW2と読み出し領域29のポテンシャル井戸との間の読み出し用電位障壁の高さは、それぞれ転送ゲート電極31、読み出しゲート電極32にそれぞれ印加される制御信号GS、制御信号TXとしての電圧によって変化する。
【0029】
図2(a)に示すように、画素X
ijの読み出し領域29には、読み出し用バッファアンプを構成する信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TA
ijのゲート電極が接続されている。信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TA
ijのドレイン電極は電源VDDに接続され、ソース電極は画素選択用のスイッチングトランジスタTS
ijのドレイン電極に接続されている。画素選択用のスイッチングトランジスタTS
ijのソース電極は、垂直信号線B
jに接続され、ゲート電極には水平ラインの選択用制御信号S(i)が垂直シフトレジスタ3から与えられる。選択用制御信号S(i)をハイ(H)レベルにすることにより、スイッチングトランジスタTS
ijが導通し、信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TA
ijで増幅された読み出し領域29の電位に対応する電流が垂直信号線B
jに流れる。更に、読み出し領域29には、読み出し用バッファアンプを構成するリセットトランジスタTR
ijのソース電極が接続されている。リセットトランジスタTR
ijのドレイン電極は電源VDDに接続され、ゲート電極にはリセット信号R(i)が与えられる。リセット信号R(i)をハイ(H)レベルにして、読み出し領域29に蓄積された電荷を吐き出し、読み出し領域29をリセットする。
【0030】
<固体撮像装置の動作>
本発明の第1の実施の形態に係る固体撮像装置(2次元イメージセンサ)の動作を、
図4に示したタイミングチャートと、
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)を用いて説明する。
図2(b)、
図2(c)、
図3(d)、
図3(e)は、それぞれ
図4に示した時刻t
1,t
2,t
3,t
4に対応するポテンシャル図となっている。
【0031】
(イ)先ず、
図4に示す時刻t
1において、転送ゲート電極31に制御信号GSとして低い電圧(0V、又は−1V程度の負電圧)を与えると、
図2(b)に示すように、電荷生成埋込領域23と蓄積領域24との間に、電子に対する段差状の電子シャッタ用電位障壁が形成され、電荷生成埋込領域23で発生した電子(電荷)は、蓄積領域24に転送されずに、電荷生成埋込領域23内に蓄積される。制御信号GSは、全画素同時に入力され、グローバル電子シャッタとして動作する。
【0032】
(ロ)次に、時刻t
2において、転送ゲート電極31に制御信号GSとして高い電圧(正の電圧)を与えると、
図2(c)に示すように電荷生成埋込領域23と蓄積領域24との間の電子シャッタ用電位障壁の頂部の位置が、頂部と肩部の相対的な段差関係を維持したまま、信号電荷を移動させる場の方向にシフトする。即ち、
図2(c)は、図の下方向を電位(ポテンシャル)の正方向として表現した電子に対するポテンシャル図であるので、電子シャッタ用電位障壁の頂部の電子に対する電位が上がる(なお、第1導電型をn型、第2導電型をp型として、信号電荷が正孔となる場合であれば、
図2(c)は、図の上方向が電位(ポテンシャル)の正方向として表現されるので、電子シャッタ用電位障壁の頂部の正孔に対する電位は下がる。)。時刻t
1における第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との間の電子シャッタ用電位障壁は段差部を有するので、時刻t
2において、
図2(c)に示すように頂部の位置の信号電荷(電子)を移動させる場の方向に沿った移動(電位の正方向への移動)に伴い、蓄積領域24に隣接する第1のMOSキャパシタ(31,33,25)に相当する肩部の高さが第2のポテンシャル谷PW2より、信号電荷を移動させる場の方向に深くなり(電子に対する電位が上がり)、この深くなった部分が信号電荷(電子)に対する井戸状のポテンシャル分布の形状となる。なお、
図2(c)では、
図2(b)に示した形状に比して、肩部側がより深い形状となり、頂部と肩部との差が大きを状況を図示しているが、この場合も、定性的には、頂部と肩部の相対的な段差関係は維持されている。このため、電荷生成埋込領域23で発生した電子は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)がなすポテンシャル井戸に転送される。井戸状のポテンシャル分布形状に、第2のポテンシャル谷PW2が連続して形成されているので、信号電荷量が多い場合であっても、電子は第1のMOSキャパシタ(31,33,25)がなすポテンシャル井戸から溢れて、直接、蓄積領域24がなすポテンシャル谷に蓄積されるので、電荷生成埋込領域23がなすポテンシャル谷側に信号電荷が残存することが防げる。よって、電荷蓄積ダイオードD2の容量を大きく設計すれば、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の容量を小さくできる。
【0033】
(ハ)時刻t
3において、転送ゲート電極31に制御信号GSとして低い電圧(0V、又は−1V程度の負電圧)を与えると、
図3(d)に示すように、電荷生成埋込領域23と蓄積領域24との間において、再び頂部と肩部の相対的な段差関係を維持したまま、電子シャッタ用電位障壁の頂部の高さが、電位障壁の高さを高くする方向に上昇し、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)がなすポテンシャル井戸に蓄積されていた電子を含めて、すべての電子が蓄積領域24に転送される。第1のMOSキャパシタ(31,33,25)がなすポテンシャル井戸を介することにより、第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との電位差が小さい場合においても、完全に電荷を蓄積領域24に転送できる。このとき、読み出しゲート電極32には、制御信号TX(i)として、低い電圧(0V、又は−1V程度の負電圧)を与えられており、
図3(d)に示すように蓄積領域24と読み出し領域29との間に電子に対する読み出し用電位障壁が形成され、蓄積領域24に蓄積された電子は、読み出し領域29に転送されない。
【0034】
(ニ)時刻t
4において、画素X
11〜X
1mの読み出しゲート電極32に制御信号TX(i)として高い電圧(正の電圧)を与えると、
図3(e)に示すように、蓄積領域24と読み出し領域29との間の読み出し用電位障壁の高さが減少、若しくは消滅し、蓄積領域24から読み出し領域29への信号電荷が転送される。この様に、信号電荷を移動させる場の方向を深さ方向として、第1のポテンシャル谷PW1と、第1のポテンシャル谷PW1の空乏化電位より深い空乏化電位の第2のポテンシャル谷PW2と間に、第2のポテンシャル谷PW2側がその左の頂部より深い肩部をなす段差状の電子シャッタ用電位障壁を設け、この電子シャッタ用電位障壁の頂部を上下させることにより、電荷の完全転送が実現できる。又、信号電荷が十分に小さい場合には、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)のみで一時的に蓄積できるため、界面準位による信号電荷の捕獲を回避できる。よって、信号電荷の小さい画素において問題となる残像を効果的に抑制することができる。
【0035】
図4に示す蓄積時間T
sにおいては、電荷生成埋込領域23への露光による電荷の蓄積と同時に、垂直シフトレジスタ3からの出力によって選択された1行分の画素信号に対し、画素内での電荷転送と同期して、蓄積領域24に蓄積された電荷の読み出し動作が行われる。制御信号GSの立ち上がりの時刻からフレーム周期T
fが経過すると、次の制御信号GSが入力され、直前のフレームにおいて電荷生成埋込領域23に蓄積された電荷を蓄積領域24に転送する。
【0036】
読み出し動作は、1水平ライン毎に、対応するカラムのノイズキャンセル回路CDS
jに読み出し領域29の蓄積した信号電荷に依存したレベルを読み出し、ノイズキャンセル回路CDS
1〜CDS
mにおいてノイズキャンセルを行った後、水平走査を行う。先ず、リセット信号R(i)のパルスを与えて、読み出し領域29をリセットしたときの電圧をf
Rパルスによってノイズキャンセル回路CDS
jがリセット電圧V
Rとしてサンプルし、記憶する。リセット電圧V
Rは、読み出し領域29をリセットした際に重畳するリセットノイズ(kTCノイズ)と呼ばれるランダムノイズ成分と、増幅トランジスタの閾値電圧のばらつきによって画素単位で発生する固定パターンノイズ成分を含んでいる。次いで、制御信号TX(i)を与えて、電荷生成埋込領域23から蓄積領域24を経て読み出し領域29に信号電荷の転送を行う。読み出し領域29は微小な容量であるため、信号電荷により読み出し領域29の電圧が変化する。このときのソースフォロア出力を信号電圧V
Sとしてノイズキャンセル回路CDS
1〜CDS
mがサンプルし、記憶する。
【0037】
信号電圧V
Sとリセット電圧V
Rの差ΔVは次式(1)となる:
ΔV=V
R−V
S
=V
R−(V
R−G
SFG
CN
SIG)
=G
SFG
CN
SIG …(1)
ここで、G
SFはソースフォロアのゲイン、G
Cは電荷電圧変換ゲインであり、次式(2)で表される:
G
C=q/C
FD …(2)
qは電気素量、C
FDは読み出し領域29の容量である。式(1)より、リセット電圧V
Rに含まれるノイズ成分は相関二重サンプリング(CDS)によりキャンセルされるため、信号電荷に比例した電圧のみを取り出すことができる。
【0038】
以上のように、第1の実施の形態に係る固体撮像装置は、画素としての半導体素子において、先ず、転送ゲート電極31に制御信号GSを与えることによって、電荷生成埋込領域23に蓄積された電荷を蓄積領域24に転送し、次いで、読み出しゲート電極32に制御信号TXを与えることによって蓄積領域24に蓄積された電荷を読み出し領域29に転送する2段転送の動作をする。
【0039】
第1の実施の形態に係る固体撮像装置は、第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との間に、頂部と肩部とからなる段差状の電子シャッタ用電位障壁を形成する。したがって、第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との電位差が小さい場合であっても、電子シャッタ用電位障壁の段差部に相当する第1のMOSキャパシタ(31,33,25)に信号電荷を蓄積できるので、信号電荷が電荷生成埋込領域23に残存することなく、蓄積領域24に完全転送される。又、信号電荷量が多い場合であっても、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)が電荷を蓄積することにより、信号電荷が電荷生成埋込領域23に残存することなく、電荷を蓄積領域24に完全転送することができる。
【0040】
<半導体素子及び固体撮像装置の製造方法>
次に、
図2(a)に示した本発明の第1の実施の形態に係る半導体素子及び固体撮像装置の製造方法を、半導体素子(画素)に着目しながら、
図5〜
図6を用いて説明する。尚、以下に述べる半導体素子及び固体撮像装置の製造方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である:
(イ)先ず、30〜0.65Ωcm程度(不純物密度4×10
14cm
-3程度以上、3×10
16cm
-3程度以下)の(100)面を主表面とするp型半導体基板を基体領域21として用意する。このp型の基体領域21の主表面に150nm程度の熱酸化膜(SiO
2膜)を形成後、フォトレジスト膜を塗布(スピンコート)し、これをフォトリソグラフィ技術によりパターニングしてpウェル形成領域を開口する。次に、pウェル形成領域に熱酸化膜を通して10
12〜10
13cm
-2程度のドーズ量でボロンイオン(
11B
+)をイオン注入する。次に、熱酸化膜のウェル形成領域の部分をエッチング除去する。又、フォトレジスト膜も除去し、所定の清浄化工程を終えてから、約1200℃でイオン注入されたボロンを熱拡散して、ウェル(pウェル)22を形成する(
図5(a)参照。)。このとき周辺回路部及びそれぞれの画素X
ijの内部に配置される読み出し用バッファアンプにも、同時にウェル(pウェル)22が形成される。又、周辺回路部には、同様にしてnウェル(図示省略。)も形成される。更に、基体領域21の主表面の熱酸化膜をすべて除去(剥離)してから、再び膜厚100nm程度のパッド酸化膜(SiO
2膜)を基体領域21の主表面に熱酸化法で形成する。その後、CVD法を用いて膜厚200nm程度の窒化膜(Si
3N
4膜)を成長させる。この窒化膜の上にフォトリソグラフィ技術によりパターニングされたフォトレジスト膜を形成し、これをマスクに反応性イオンエッチング(RIE)を行って、選択酸化(LOCOS)用の窒化膜のマスクを形成する。
【0041】
(ロ)次に、図示を省略するが、窒化膜を除去してから、素子形成領域に膜厚が数10nmのダミー酸化膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術により、周辺回路のウェル22をフォトレジスト膜で被覆してからpMOSのゲートしきい値電圧制御(V
th制御)用の不純物をイオン注入する。次に、フォトレジスト膜を除去してからウェル22以外の領域上に、フォトリソグラフィ技術により、フォトレジスト膜のパターンを形成し、続いて周辺回路及び読み出し用バッファアンプのウェル22と同時に、ウェル22にnMOSのゲートしきい値電圧制御用の不純物をイオン注入する。その後、フォトレジスト膜を除去する。更に、V
th制御イオン注入イオン注入時の保護膜として使用されたダミー酸化膜を剥離する。
【0042】
(ハ)次に、基体領域21の表面を熱酸化し、酸化膜(SiO
2膜)からなるゲート絶縁膜71を形成する。そして、
図5(a)に示すように、ゲート絶縁膜71上にフォトレジスト膜51を被覆し、フォトリソグラフィ技術を用いて、第2導電型のキャパシタ形成領域25及びブロック層28の領域の上方を開口するように、フォトレジスト膜51に窓部を形成する。フォトレジスト膜51をマスクとして、基体領域21の表面の第2導電型のキャパシタ形成予定領域に対し、活性化後に不純物密度n
3となるドーズ量で砒素イオン(
75As
+)をイオン注入し、続いて、キャパシタ形成予定領域の下方のブロック層予定領域に対し、活性化後に不純物密度p
2となるドーズ量でホウ素イオン(
11B
+)をイオン注入する。
図5(a)には破線でキャパシタ形成予定領域25p、ブロック層予定領域28pを示した。その後、フォトレジスト膜51を除去後、活性化アニールをすれば、
図5(b)に示すように、キャパシタ形成領域25とブロック層28とが、平面パターン上、同一水平位置に形成される。この様にキャパシタ形成領域25とブロック層28とを同一のマスクによりイオン注入して形成するので、フォトレジスト膜の枚数を減らすことができ、又、マスクずれによる性能のばらつきを低減できる。
【0043】
(ニ)次に、図示を省略するが、ゲート絶縁膜71の全面の上にCVD法によりポリシリコン膜を200〜400nm程度堆積し、更に、フォトレジスト膜をポリシリコン膜上に塗布する。そして、フォトリソグラフィ技術によりパターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして、RIE等によりポリシリコン膜をエッチングし、転送ゲート電極31の中央部がキャパシタ形成領域25の端部に重なるように、転送ゲート電極31のパターンを形成する。その後、
図5(b)に示すように、転送ゲート電極31の形成に用いたフォトレジスト膜を除去する。
【0044】
(ホ)次に、基体領域21の上にフォトレジスト膜52を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて、電荷生成埋込領域の領域を開口するように、フォトレジスト膜52に窓部を形成する。そして、
図5(c)に示すようにフォトレジスト膜52、転送ゲート電極31をマスクとして、基体領域21の表面の電荷生成埋込予定領域に対し、砒素イオン(
75As
+)を活性化後に不純物密度n
1となるドーズ量でイオン注入する。
図5(c)には、破線で電荷生成埋込予定領域23pを示した。転送ゲート電極31に関しては、砒素イオン(
75As
+)が自己整合的にイオン注入されるので、転送ゲート電極31にも砒素イオン(
75As
+)がイオン注入される。同時に、周辺回路及び読み出し用バッファアンプのpウェルに設けられるnMOSトランジスタにも同様に、ポリシリコンゲート電極をマスクとして、自己整合的に砒素イオン(
75As
+)をイオン注入する。このとき、図示を省略した周辺回路のpウェル等の上のポリシリコンゲート電極にも砒素イオン(
75As
+)がイオン注入される。その後、フォトレジスト膜52を除去し、転送ゲート電極31の側面にスペーサ35を形成し、必要な活性化アニールを追加すれば、
図6(d)に示すように、不純物密度n
1の電荷生成埋込領域23が形成される。
【0045】
(ヘ)次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、基体領域21の上にフォトレジスト膜53を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて、蓄積領域を開口するように、フォトレジスト膜53に窓部を形成する。そして、
図6(e)に示すようにフォトレジスト膜53、転送ゲート電極31及びスペーサ35をマスクとして、基体領域21の蓄積領域予定領域に対し、砒素イオン(
75As
+)を活性化後に不純物密度n
2となるドーズ量でイオン注入する。
図6(e)には破線で蓄積領域予定領域24pを示した。転送ゲート電極31に関しては、自己整合的に砒素イオン(
75As
+)がイオン注入されるので、転送ゲート電極31にも砒素イオン(
75As
+)がイオン注入される。同時に、必要に応じて、周辺回路及び電圧読み出し用バッファアンプのpウェルに設けられるnMOSトランジスタにも同様に、ポリシリコンゲート電極をマスクとして、自己整合的にイオン注入する。このとき、図示を省略した周辺回路のpウェルに設けられるnMOSトランジスタの上のポリシリコンゲート電極にも砒素イオン(
75As
+)がイオン注入される。その後、フォトレジスト膜53を除去する。
【0046】
(ト)次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、基体領域21の上に他のフォトレジスト膜54を被覆する。そして、
図6(f)に示すようにフォトレジスト膜54、転送ゲート電極31及びスペーサ35をマスクとして、自己整合的に、基体領域21にホウ素イオン(
11B
+)を活性化後に不純物密度p
1となるドーズ量でイオン注入する。
図6には破線で第1のピニング層予定領域26p、第2のピニング層予定領域27pを示した。同時に、必要に応じて、周辺回路及び電圧読み出し用バッファアンプのnウェルにも同様に、ポリシリコンゲート電極をマスクとして、自己整合的にイオン注入する。このとき、必要に応じて、図示を省略した周辺回路のnウェル上に設けられるnMOSトランジスタのポリシリコンゲート電極にもホウ素イオン(
11B
+)がイオン注入される。その後、新たなフォトレジスト膜を除去して、基体領域21を活性化熱処理(アニール)すれば、基体領域21には、
図2(a)に示すように、n型の電荷生成埋込領域23、第1のピニング層26、電荷生成埋込領域23より不純物密度が高いn
+型の蓄積領域24、第2のピニング層27、n
+型の読み出し領域29が形成される。同様に、図示を省略した周辺回路のウェル22等にn型ソース/ドレイン領域が形成される。このとき、転送ゲート電極31及び読み出しゲート電極32に注入された燐(
31P
+)、砒素(
75As
+)及びホウ素(
11B
+)も活性化されるので、転送ゲート電極31及び読み出しゲート電極32が低抵抗化する。
【0047】
(チ)次に、
図6(f)に続く図の図示を省略するが、各画素を接続する垂直信号線や水平走査線、或いは周辺回路の各トランジスタ間を接続する金属配線層やゲート電極を形成するポリシリコン膜間の絶縁のため、層間絶縁膜を堆積させる(
図2(a)参照。)。この層間絶縁膜は、CVD法により堆積された膜厚0.5μm程度の酸化膜(CVD−SiO
2)と、この酸化膜(CVD−SiO
2)の上に、CVD法により堆積された膜厚0.5μm程度のPSG膜又はBPSG膜の2層構造から構成された複合膜等種々の誘電体膜が使用可能である。CVD法で堆積後、熱処理することにより、この複合膜の上層のBPSG膜は、リフローされて層間絶縁膜の表面が平坦化される。この上部に、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングされたフォトレジスト膜をマスクにして、RIE若しくはECRイオンエッチング等により層間絶縁膜をエッチングし、金属配線層とトランジスタを接続するコンタクト孔を形成する。その後、このコンタクト孔を形成に用いたフォトレジスト膜を除去する。次に、スパッタリング法又は電子ビーム真空蒸着法等によりシリコン等を含有するアルミニウム合金膜(Al−Si,Al−Cu−Si)を形成する。この上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト膜のマスクを形成し、このマスクを用いて、RIEにより、アルミニウム合金膜をパターニングするという一連の処理を順次繰り返し、各画素を接続する垂直信号線や水平走査線、或いは周辺回路の各トランジスタ間を接続する金属配線層等を形成する。更に、金属配線層等の上に他の層間絶縁膜を堆積させ、フォトリソグラフィ技術を用いて、各画素の基体領域の直上に開口部42を有する金属膜を形成し、遮光膜41とする(
図2(a)参照。)。そして、機械的損傷防止と、水分や不純物の浸入の防止を目的とした膜厚1μm程度のパッシベーション膜を遮光膜の上にCVD法により積層すれば、本発明の第1の実施の形態に係る固体撮像装置が完成する。パッシベーション膜にはPSG膜や窒化膜等が利用される。
【0048】
基体領域21は、不純物密度5×10
12cm
-3程度以上、5×10
16cm
-3程度以下程度が好ましい。電荷生成埋込領域23の不純物密度は、1×10
17cm
-3程度以上、8×10
18cm
-3程度以下、好ましくは2×10
17cm
-3程度以上、1×10
18cm
-3程度以下、代表的には、例えば8×10
17cm
-3程度の比較的空乏化が容易な値が採用可能であり、その厚さは0.1〜3μm程度、好ましくは0.1〜0.3μm程度とすることが可能である。一方、蓄積領域24の不純物密度は、1×10
17cm
-3程度以上、8×10
18cm
-3程度以下、好ましくは4×10
17cm
-3程度以上、2×10
18cm
-3程度以下、代表的には、例えば3×10
19cm
-3程度の値が採用可能であり、その厚さは0.1〜3μm程度、好ましくは0.1〜1.3μm程度とすることが可能である。蓄積領域24の不純物密度は、電荷生成埋込領域23の不純物密度の1.2〜5倍、好ましくは1.5〜2.5倍程度に設定しておけば、蓄積領域24がなすポテンシャル谷の底の電位が、電荷生成埋込領域23がなすポテンシャル谷の底の電位よりも適度に深くなる。
【0049】
ゲート絶縁膜33を熱酸化膜で形成する場合は、熱酸化膜の厚さは、150nm程度以上、1000nm程度以下、好ましくは200nm程度以上、400nm程度以下とすれば良い。ゲート絶縁膜33を熱酸化膜以外の誘電体膜とする場合は、熱酸化膜の比誘電率ε
r(1MHzでε
r=3.8)で換算した等価な厚さとすれば良い。例えば、比誘電率ε
r=4.4であるCVD酸化膜を用いるのであれば上記厚さを4.4/3.8=1.16倍した厚さを、比誘電率ε
r=7であるシリコン窒化物(Si
3N
4)膜を用いるのであれば上記厚さを7/3.8=1.84倍した厚さを採用すれば良い。但し、標準的なCMOS技術で形成される酸化膜(SiO
2膜)を用いるのが好ましく、CMOS技術におけるフィールド酸化膜を用いるのが製造工程の簡略化に適している。
図2(a)に示すように、遮光膜41の開口部42は、光電荷の発生が、フォトダイオードD1を構成している電荷生成埋込領域23の直下の基体領域21で生じるように選択的に設けられている。
図2(a)では、ゲート絶縁膜33のみを示しているが、遮光膜41は、図示を省略した多層配線構造をなす複数の層間絶縁膜の内のいずれかの上部に設けられたアルミニウム(Al)等の金属薄膜で構成すれば良い。
【0050】
本発明の第1の実施の形態に係る半導体素子及び固体撮像装置の製造方法によれば、キャパシタ形成領域25を形成後、転送ゲート電極31の側面にスペーサ35を形成して、スペーサ35を介して
図6(e)に示すようにイオン注入し、n
+型の蓄積領域24を形成しているので、蓄積領域24の端部に不純物密度が高いディップ部が形成されるのを防ぎ、リーク電流の発生を抑制することが可能になる。又、蓄積領域24の端部にディップ部が形成されるのを防ぐことが可能なので、例えば、
図2(c)に示すように、時刻t
2において、井戸状のポテンシャル分布形状に第2のポテンシャル谷PW2が単調に連続して形成されるようにするのが容易となるので、信号電荷量が多い場合であっても、電子は第1のMOSキャパシタ(31,33,25)がなすポテンシャル井戸から溢れて、直接、且つスムーズに蓄積領域24がなすポテンシャル谷に蓄積されるようになり、電荷生成埋込領域23がなすポテンシャル谷側に信号電荷が残存することが防げる。又、電荷蓄積ダイオードD2の容量を大きくし、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の容量を小さくする設計も容易になる。
【0051】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る固体撮像装置に用いる半導体素子は、転送ゲート電極31と、ゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33を介して、転送ゲート電極31の下方の一部に配置された第2導電型のキャパシタ形成領域25により、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)を構成したが、第2導電型(n型)で、電荷生成埋込領域23より低不純物密度の共通埋込領域63を、
図11(a)に示すように基体領域21の上部に転送ゲート電極31の下方の全面に配置した場合であっても、段差付きの電子シャッタ用電位障壁を転送ゲート電極31の下方に形成できる。
【0052】
即ち、第2の実施の形態に係る固体撮像装置に用いる半導体素子においては、
図11(a)に示すように、基体領域21の上部に、電荷生成埋込領域23の上部から読み出しゲート電極32の下方に渡って設けられた共通埋込領域63に対して、基体領域21の上部に、ウェル(pウェル)22の一部から、電荷生成埋込領域23の上部を含み、転送ゲート電極31の下方の一部に渡って第1導電型(p型)で、基体領域21よりも高不純物密度の段差分布形成領域62を設けることにより、共通埋込領域63と段差分布形成領域62とで、階段ポテンシャル形成手段を構成している。そして、この階段ポテンシャル形成手段が、転送ゲート電極31の下方に段差付きの電子シャッタ用電位障壁を形成している。
【0053】
転送ゲート電極31の下方の全面に、共通埋込領域63が配置されているが、段差分布形成領域62に占有された領域を除いて、転送ゲート電極31、ゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33及び共通埋込領域63で第1のMOSキャパシタ(31,33,63)を構成している。同様に、読み出しゲート電極32の下方の全面に、共通埋込領域63が配置されており、読み出しゲート電極32、ゲート絶縁膜(読み出しゲート絶縁膜)33及び共通埋込領域63で第2のMOSキャパシタ(32,33,63)を構成している。他の構成は、
図2(a)に示した半導体素子と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0054】
第2の実施の形態に係る半導体素子では、
図11(b)に示すように、第1の実施の形態と同様の電位分布が得られ、電荷蓄積ダイオードD2の容量を大きく設計することで、第1のMOSキャパシタ(31,33,63)の容量を小さく設計できる。又、第2の実施の形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、転送、蓄積等の処理をされる信号電荷が電子処理をされる信号電荷が電子である場合について説明しており、
図11(b)に示すポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)を、電位(ポテンシャル)の正方向として表現している。
【0055】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体素子では、n型半導体の不純物密度の差違による第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との電位差を有するが、p型半導体の不純物密度の差違によって第1のポテンシャル谷PW1と第2のポテンシャル谷PW2との電位差を有するようにしても良い。
【0056】
第3の実施の形態に係る半導体素子は、
図12(a)に示すように、基体領域21とキャパシタ形成領域25とで、階段ポテンシャル形成手段を構成しているが、第1のピニング層26の不純物密度p
1を、第2のピニング層27の不純物密度p
3より高くすることで、
図12(b)に示すような第1の実施の形態と同様の、第1のポテンシャル谷PW1及び第2のポテンシャル谷PW2の電位分布を得ることができる。この場合には、電荷生成埋込領域23cと蓄積領域24cとを同じ不純物密度(n
1)で形成することができるので、電荷生成埋込領域23cと蓄積領域24cとを、同一のマスクによってイオン注入することができる。
【0057】
又、第3の実施の形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、転送、蓄積等の処理をされる信号電荷が電子である場合について説明しており、
図12(b)に示すポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)を、電位(ポテンシャル)の正方向として表現している。
【0058】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る半導体素子は、
図11(a)に示したような、転送ゲート電極31の下方の第2導電型の共通埋込領域63を形成せずに、
図13(a)に示すような構造にして、
図13(b)に示すような、頂部と肩部とからなる段差状の電子シャッタ用電位障壁を、第1の実施の形態と同様に有する。
【0059】
第4の実施の形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、転送、蓄積等の処理をされる信号電荷が電子である場合について説明しており、
図13(b)に示すポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)を、電位(ポテンシャル)の正方向として表現している。
【0060】
基体領域21の上部に、ウェル22の一部から、電荷生成埋込領域23の上部を含み、転送ゲート電極31の下方の一部に渡って、第1導電型で基体領域21よりも高不純物密度p
3の段差分布形成領域62が設けられている。即ち、基体領域21と段差分布形成領域62とで、階段ポテンシャル形成手段を構成している。段差分布形成領域62を設けることにより、第1の実施の形態と同様に、フォトダイオードD1側に頂部を、電荷蓄積ダイオードD2側に肩部を有して、転送ゲート電極31の直下に段差状の電子シャッタ用電位障壁ができる。このため、一度蓄積領域24に転送された電荷は、電荷生成埋込領域23へ逆流することはなく、第4の実施の形態に係る半導体素子は、
図2(a)に示した第1の実施の形態に係る半導体層と同じように完全電荷転送を容易にすることができる。
【0061】
蓄積領域24の下方のブロック層28(不純物密度p
2)は、転送ゲート電極31及び読み出しゲート電極32の形成後、転送ゲート電極31及び読み出しゲート電極32をマスクとして、自己整合的にイオン注入を行うことにより形成しても良い。この様に、ブロック層28を自己整合により形成する場合には、イオン注入に用いるマスク枚数を減らすことができるため、半導体素子の製造コストを下げることができる。更に、ブロック層28を蓄積領域24のイオン注入に用いたマスクと同一のマスクを用いて、注入条件を調整してイオン注入することによっても、マスク枚数を減らすことができる。又、マスクずれにより、ポテンシャル分布が設計時に意図した分布からずれ、転送不良が発生するのを防ぐことができ、製造歩留まりを向上させることができる。
【0062】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る固体撮像装置(2次元イメージセンサ)の全体構成は、
図1にしたブロック図と同一であるため、重複した説明を省略する。第5の実施の形態に係る固体撮像装置では、非常に明るい光を受けた場合の対策として、それぞれの画素X
11〜X
1m;X
21〜X
2m;…;X
n1〜X
nm内の半導体素子の構造として、
図7(a)に示すように、オーバーフロー用埋込領域60及び排出領域20を設けた構造について説明する。
【0063】
図7(a)に示すように、オーバーフロー用埋込領域60は、電荷生成埋込領域23aと離間し、排出領域20と接して基体領域21の上部に埋め込まれている。
図7(b)は、
図7(a)において、排出領域20、オーバーフロー用埋込領域60、電荷生成埋込領域23a、蓄積領域24、読み出し領域29を水平面で切った断面におけるポテンシャル図である。第1のポテンシャル谷PW1とオーバーフロー用埋込領域60との間には、電子に対する障壁の高さの低いオーバーフロー用電位障壁が形成されている。第5の実施の形態に係る固体撮像装置に用いる半導体素子は、
図7(b)に示すように、生成した信号電荷が過剰になった場合は、過剰分を電子に対する障壁の高さの低いオーバーフロー用電位障壁を介してオーバーフローさせ、排出領域20に排出することができるので、ブルーミングを抑制するために有効である。第2のポテンシャル谷PW2と読み出し領域29のポテンシャル井戸との間の読み出し用電位障壁の高さは、読み出しゲート電極32に印加される制御信号TXの電圧によって変化する。
【0064】
第5の実施の形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、転送、蓄積等の処理をされる信号電荷が電子である場合について例示的に説明しており、
図7(b)に示すポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)を、電位(ポテンシャル)の正方向として表現している。
【0065】
転送ゲート電極31の下方の蓄積領域24側の一部には、基体領域21の上部に第2導電型のキャパシタ形成領域25が配置されており、基体領域21とキャパシタ形成領域25とで、階段ポテンシャル形成手段を構成している。この転送ゲート電極31がキャパシタ形成領域25に対向する部分とキャパシタ形成領域25とがゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33を隔てて平行平板構造を構成する領域は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)を構成している。キャパシタ形成領域25は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の領域から、読み出しゲート電極32の下方に位置する基体領域21の上部に渡って配置されており、読み出しゲート電極32、ゲート絶縁膜(読み出しゲート絶縁膜)33、キャパシタ形成領域25とで、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)と同様に、第2のMOSキャパシタ(32,33,25)を構成している。第1のポテンシャル谷PW1と、第2のポテンシャル谷PW2との間の段差状の電子シャッタ用電位障壁は、転送ゲート電極31に与えられる制御信号GSの電圧によって、頂部と肩部の段差関係を定性的に維持したまま、その頂部の高さを変化させる。
図7に示した半導体素子の他の断面構造は
図2(a)に示した構造と基本的には同様であるので、重複した説明を省略する。
【0066】
第5の実施の形態に係る固体撮像装置は、転送ゲート電極31に与えられる制御信号GSによって、転送ゲート電極31の下方に段差状の電子シャッタ用電位障壁を形成し、頂部と肩部の段差関係を定性的に維持したまま、その頂部の高さを変化させることで、第1のポテンシャル谷PW1と、第1のポテンシャル谷PW1より深い第2のポテンシャル谷PW2との電位差が小さくても電荷の完全転送を実現でき、十分な蓄積電子数を確保できる。
【0067】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る固体撮像装置のそれぞれの画素X
11〜X
1m;X
21〜X
2m;…;X
n1〜X
nm内の半導体素子の断面構造を
図8(a)に示す。
図8(a)に示すように、第6の実施の形態に係る半導体素子は、基体領域21の上部に電荷生成埋込領域23bと離間して設けられた排出領域20と、電荷生成埋込領域23bと排出領域20との間の上方のゲート絶縁膜(排出ゲート絶縁膜)33上に設けられた排出ゲート電極34を備える点で第1の実施の形態と異なる。
【0068】
図8(a)において、排出ゲート電極34は、電荷生成埋込領域23bと排出領域20との間に形成される転送チャネルの電位を制御して、電荷生成埋込領域23から排出領域20へ信号電荷を吐き出し、電子シャッタの機能をなす。
【0069】
転送ゲート電極31の下方の蓄積領域24側の一部には、基体領域21の上部に第2導電型のキャパシタ形成領域25が配置されており、基体領域21とキャパシタ形成領域25とで、階段ポテンシャル形成手段を構成している。この転送ゲート電極31がキャパシタ形成領域25に対向する部分とキャパシタ形成領域25とが、ゲート絶縁膜(転送ゲート絶縁膜)33を隔てて平行平板構造を構成する領域は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)を構成している。キャパシタ形成領域25は、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の領域から、読み出しゲート電極32の下方に位置する基体領域21の上部に渡って配置されており、読み出しゲート電極32、ゲート絶縁膜(読み出しゲート絶縁膜)33、キャパシタ形成領域25とで、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)と同様に、第2のMOSキャパシタ(32,33,25)を構成している。他の構成は、
図2(a)に示した半導体素子と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
【0070】
図8(b)及び
図8(c)は、
図8(a)において、排出領域20、電荷生成埋込領域23b、蓄積領域24、読み出し領域29を通る水平面で切った断面におけるポテンシャル図である。第1のポテンシャル谷PW1と、第2のポテンシャル谷PW2との間の段差状の電子シャッタ用電位障壁が形成され、転送ゲート電極31に与えられる制御信号GSの電圧によって頂部と肩部の段差関係を定性的に維持したまま、電子に対する電位障壁の頂部の高さを変化させる。第1のポテンシャル谷PW1と排出領域20との間には、排出用電位障壁が形成されている。排出用電位障壁の電子に対する電位障壁の高さは、排出ゲート電極34に印加される制御信号TXDとしての電圧によって変化する。
図8(c)に示すように、排出ゲート電極34に制御信号TXDとして正の電圧を印加したとき、排出用電位障壁の電子に対する電位障壁の高さを下げ、電荷生成埋込領域23bから排出領域20に電荷を排出し、シャッタ時間を制御する動作を行わせることができる。第2のポテンシャル谷PW2と読み出し領域29のポテンシャル井戸との間の読み出し用電位障壁の高さは、読み出しゲート電極32に印加される制御信号TXの電圧によって変化する。
【0071】
第6の実施の形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、転送、蓄積等の処理をされる信号電荷が電子である場合について例示的に説明しており、
図8(b)及び
図8(c)に示すポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)を、電位(ポテンシャル)の正方向として表現している。
【0072】
第1及び第5の実施の形態において、シャッタ時間T
SHは、制御信号GSの立ち下がりの時刻から次に入力される制御信号GSの立ち上がりの時刻までの時間であるが、第6の実施の形態に係る固体撮像装置は、半導体素子にフォトダイオードD1の初期化機能を有しており、信号電荷の流れの方向を排出ゲート電極34と転送ゲート電極31で制御できるため、排出ゲート電極34に与えられる制御信号TXDのパルスのタイミングを変化させることによって、シャッタ時間T
SHを制御できる。又、第6の実施の形態に係る半導体素子は、第1及び第5の実施の形態と同様に、フォトダイオードが生成した信号電荷を移動させる場の方向を深さ方向として、第1のポテンシャル谷PW1と、第1のポテンシャル谷PW1より深い第2のポテンシャル谷PW2との間に、段差状の電子シャッタ用電位障壁を形成し、頂部と肩部の段差関係を定性的に維持したまま、電子に対する電位障壁の頂部の高さを変化させることで、電荷の完全転送を実現できる。
【0073】
例えば、
図9に示すように、シャッタ時間T
SHは、制御信号TDXのタイミングを変化させることによって、制御信号TXDの立ち下がりの時刻から次の制御信号GSの立ち上がりの時刻までの蓄積時間T
S1からT
S2に変化させることができる。
【0074】
シャッタ時間T
SH=T
S2の間、全画素X
11〜X
1m;X
21〜X
2m;…;X
n1〜X
nmの電荷生成埋込領域23に蓄積された電荷は、次のフレーム周期T
fにおいて、先ず、制御信号GSが全画素同時に与えられ蓄積領域24に転送される。蓄積領域24に蓄積された電荷は、1行目の画素X
11〜X
1mから順に読み出される。
【0075】
図9に示すように、読み出し動作は、先ず、垂直シフトレジスタ3から水平ラインの選択用制御信号S(1)が与えられ、選択用制御信号S(1)をハイ(H)レベルにすることにより、スイッチングトランジスタTS
ijが導通し、信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)TA
ijで増幅された読み出し領域29の電位に対応する電流が垂直信号線B
jに流れる。このとき、リセット信号R(1)はハイ(H)レベルになっているので、読み出し領域29に蓄積された電荷は吐き出され、読み出し領域29はリセットされる。次いで読み出しゲート電極32に制御信号TXが与えられ、蓄積領域24に蓄積されている電荷は、読み出し領域29へ転送される。読み出し領域29へ転送された電荷は、読み出し用バッファアンプを介して垂直信号線B
jから読み出される。これらの動作をn行目まで繰り返す。
【0076】
<シミュレーション>
図10(a)は、
図8(a)に断面図を示す第6の実施の形態の半導体素子の平面構造の一例である。
図10(b)は、
図8(a)及び
図10(a)に示すような半導体素子のシミュレーションモデルを用いて、水平方向(X方向)電位分布をシミュレーションし、転送ゲート電極31に印加する制御信号GSによってプロットしたものである。
【0077】
図10(b)に示すように、フォトダイオードD1がなす第1のポテンシャル谷PW1と、電荷蓄積ダイオードD2がなす第2のポテンシャル谷PW2との間には、GS=−2Vにおいて、第1の電位制御手段(31,33)に相当する部分(X方向の位置が約3.5〜5.0μm)に段差状の電子シャッタ用電位障壁が形成されることが確認できる。段差状の電子シャッタ用電位障壁は、転送ゲート電極31に与えられる制御信号GS=−2V、−1V,0V,1V,2Vの電圧によって頂部と肩部の段差関係を定性的に維持したまま、電子に対する電位障壁の頂部の高さを変化することが確認できる。GS=−1Vにすると、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)に相当する箇所の電位が0.4V程度上昇する。制御信号を接地電位GG=0Vにすると、段差状の電子シャッタ用電位障壁は段差部を有したまま減少し、GS=1Vにすると、電子シャッタ用電位障壁は完全に消滅し、第1の電位制御手段(31,33)に相当する箇所の電位分布は、頂部と肩部の段差関係を定性的に維持したまま、GS=1V,2Vと順に、電子に対する電位障壁の高さが低くなっている。フォトダイオードD1がなす第1のポテンシャル谷PW1とその左側の排出領域20との間には、排出用電位障壁が形成されていることが確認できる。排出用電位障壁の高さは、排出ゲート電極34に印加される制御信号TXDとしての電圧によって変化する。電荷蓄積ダイオードD2がなす第2のポテンシャル谷PW2と読み出し領域29のポテンシャル井戸との間には読み出し用電位障壁が形成されていることが確認できる。読み出し用電位障壁の高さは、読み出しゲート電極32に印加される制御信号TXの電圧によって変化する。
【0078】
図10(c)は、
図10(b)に一点鎖線で示す位置において、第1のMOSキャパシタ(31,33,25)の深さ方向(
図10(a)の奥行き方向:Z方向)の電位分布を示している。
図10(c)から、界面準位がピニングされた状態になっていることがわかる。電荷転送時の制御信号GS=2V時にも、信号電荷である電子を移動させる場の方向を深さ方向として、界面準位よりも深いところに最大電位があり、埋め込み型のMOSキャパシタとして機能することがわかる。このシミュレーションの埋め込みMOSキャパシタの飽和電荷密度は制御信号GS=2Vのときに300e
-/μm
2程度であり、表面トラップに対して十分に大きい飽和電荷量を確保できる。尚、この飽和電荷密度は、不純物密度等の調整により1桁程度まで大きくすることも可能である。
【0079】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1〜第6の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0080】
既に述べた第1〜第6の実施の形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明したが、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。第1〜第6の実施の形態の説明では、転送、蓄積等の処理がされる信号電荷を電子とし、ポテンシャル図において、図の下方向(深さ方向)が、電位(ポテンシャル)の正方向としたが、電気的な極性を反対とする場合においては、処理をされる電荷は正孔となるため、半導体素子内の電位障壁、ポテンシャル谷、ポテンシャル井戸等を示すポテンシャル形状は、図の下方向(深さ方向)が、電位の負方向として表現される。
【0081】
又、既に述べた第1及び第5の実施の形態の説明においては、2次元固体撮像装置(エリアセンサ)を例示的に説明したが、本発明の半導体素子は2次元固体撮像装置の画素のみに用いられるように限定して解釈するべきではない。例えば、
図1に示した2次元マトリクスにおいて、j=m=1とした1次元固体撮像装置(ラインセンサ)の画素として複数の半導体素子を1次元に配列しても良いことは、上記開示の内容から、容易に理解できるはずである。
【0082】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。