特許第5648950号(P5648950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5648950-鋼管コンクリート複合管 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648950
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】鋼管コンクリート複合管
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/14 20060101AFI20141211BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20141211BHJP
   B28B 21/58 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   F16L9/14
   E21D9/06 311A
   B28B21/58
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2009-275035(P2009-275035)
(22)【出願日】2009年12月3日
(65)【公開番号】特開2011-117525(P2011-117525A)
(43)【公開日】2011年6月16日
【審査請求日】2012年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】勝田 雅道
(72)【発明者】
【氏名】井川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】野本 禎久
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴信
(72)【発明者】
【氏名】窪田 充
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−175336(JP,A)
【文献】 特開2000−145365(JP,A)
【文献】 特開平11−062473(JP,A)
【文献】 特開2001−295580(JP,A)
【文献】 特開2000−015380(JP,A)
【文献】 特開2000−120939(JP,A)
【文献】 特開平11−090578(JP,A)
【文献】 特開2001−280074(JP,A)
【文献】 特開2003−013690(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3139900(JP,U)
【文献】 特開2004−100354(JP,A)
【文献】 特開2001−303888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/00 − 11/18
E21D 9/06
B28B 21/56 − 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻鋼管の内面に膨張コンクリート層を所望の厚さに打設し、該膨張コンクリートの固化時に発生する膨張を前記鋼管により拘束することによってプレストレスが付与されているとともに、一端に前記外殻鋼管の端部をコンクリート層部分より長くした連結用カラーを一体に備えるとともに、他端に前記カラー内に挿入できる大きさの連結用差込し口を備えてなる鋼管コンクリート複合管において、
前記外殻鋼管の前記差し口部外殻部分及び連結用カラーを含む全体を、同一鋼管材料を加工することによって一体成形するとともに、前記外殻鋼管のカラー部分から前記コンクリート層の該カラー側端部外周に至る部分を、前記連結用カラー部分の継ぎ手としての強度及び前記膨張コンクリート層の端面に位置する端面補強プレートの溶接に耐える厚さ厚肉部とし、その他の部分を前記溶接に耐える厚さより薄い厚さに形成したことを特徴としてなる鋼管コンクリート複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外殻鋼管の内面に膨張コンクリートからなるコンクリート層を備え、膨張コンクリートの膨張を外殻鋼管によって拘束することによりプレストレスを付与させた鋼管コンリート複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻鋼管の内面にコンクリート層をライニングした複合管が知られており、そのコンクリート層に膨張コンクリートを使用し、外周面の外殻鋼管によって膨張コンクリートの膨張を拘束させることにより、複合管全体にプレストレスを付与したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この主の従来の複合管にあって、推進工法に使用するものは、図2に示すように、一端に連結用差し口外殻3を設けるとともに、他端に、外殻鋼管1の先端をコンクリート層2の端部より延長させた連結用カラー部4を設け、互いに接合しようとする複合管の一方のカラー部4内に他方の連結用差し口外殻3を挿入することによって互いに連結するようにしている。
【0004】
また、連結用カラー部4内のコンクリート層端面及び連結用差し口外殻3の端面にはリング状の端面補強プレート5及び端面補強プレート6が内面に溶接されて固定され、端面補強プレート5と端面補強プレート6によって膨張コンクリートによるコンクリート層2の軸方向の膨張を拘束し、これによって軸方向のプレストレスが付与されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−175336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の複合管は、その耐荷力を外殻鋼管の引張強度と膨張コンクリートによるプレストレス及びその引張強度に依存しており、耐圧力を高めるためには膨張コンクリートの膨張率を高めることが必要であるが、これを拘束するために外殻鋼管の厚さを大きくする必要があった。
【0007】
また、膨張コンクリートによる膨張に対して必要な拘束力を得るためには、端面補強プレートと外殻鋼管との溶接部分に所定の強度が必要であった。このため、外殻鋼管に一定以上の厚さが要求されている。
【0008】
これらの理由から、外柄鋼管の肉厚が決定され、全長に亘って均一な厚さの外殻鋼管が使用されていた。
【0009】
しかし、近年は膨張コンクリートの膨張度合調整が可能となり、複合管の耐圧力も、設置する地中深さによって必要な値が異なり、常に高い耐圧力が要求されるものではない。にもかかわらず、耐圧力が低くてもよい場合においても、上述の如き理由から、外殻鋼管全体の肉厚が均一で、その厚さがカラーに合わせた大きいものが使用されており、このため外殻鋼管の必要厚さが、カラー厚さより小さい場合であっても製造コストが高くならざるを得ないという問題があった。
【0010】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、外殻鋼管全体の厚さを大きくすることなく、比較的低い耐圧力のものが、従来に比べて廉価にて製造できる鋼管コンクリート複合管の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための本発明の特徴は、外殻鋼管の内面に膨張コンクリート層を所望の厚さに打設し、該膨張コンクリートの固化時に発生する膨張を前記鋼管により拘束することによってプレストレスが付与されているとともに、一端に前記外殻鋼管の端部をコンクリート層部分より長くした連結用カラーを一体に備えるとともに、他端に前記カラー内に挿入できる大きさの連結用差込し口を備えてなる鋼管コンクリート複合管において、 前記外殻鋼管の前記差し口部外殻部分及び連結用カラーを含む全体を、同一鋼管材料を加工することによって一体成形するとともに、前記外殻鋼管のカラー部分から前記コンクリート層の該カラー側端部外周に至る部分を、前記連結用カラー部分の継ぎ手としての強度及び前記膨張コンクリート層の端面に位置する端面補強プレートの溶接に耐える厚さ厚肉部とし、その他の部分を前記溶接に耐える厚さより薄い厚さに形成したことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋼管コンクリート複合管は、外殻鋼管の内面に膨張コンクリート層を所望の厚さに打設し、該膨張コンクリートの固化時に発生する膨張を前記鋼管により拘束することによってプレストレスが付与されているとともに、一端に前記外殻鋼管の端部をコンクリート層部分より長くした連結用カラーを一体に備えるとともに、他端に前記カラー内に挿入できる大きさの連結用差し口外殻を備えてなる鋼管コンクリート複合管において、前記外殻鋼管の前記差し口部外殻部分及び連結用カラーを含む全体を、同一鋼管材料を加工することによって一体成形したことにより、連結用差し口外殻部分の溶接が不要となり、このため、従来のように溶接に必要な肉厚の本体部分及び連結用差し口外殻部外郭の肉厚を、溶接に必要な厚さより薄いものとすることができ、設計耐圧力に見合う剛性管として充分な強度の薄肉構造とすることができ、これより必要な機能を損なうことなく、材料コストが削減でき、従来に比べて廉価にて提供できる。
【0013】
また、本発明において、前記連結用カラー部分の継ぎ手としての強度及び前記膨張コンクリート層の端面に位置する端面補強プレートの溶接に耐える厚さ厚肉部とし、その他の部分を前記溶接に耐える厚さより薄い厚さに形成したことにより、カラー部分の強度を継ぎ手として必要な強度とし、且つ、その内面に溶接によって一体化させる必要のある端面補強プレートの溶接に耐える厚さに形成することができ、比較的短尺の複合管の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る複合管の一例を示す部分縦断面図である。
図2】従来の複合管の一例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を図示した実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明による複合管の一例を示しており、図中符号10は外殻鋼管であり、11は外殻鋼管10の内面に打設した膨張コンクリートからなるコンクリート層である。外殻鋼管10は、胴部を構成している外殻鋼管本体部16と差し口外郭部20とから構成され、全体が同一の鋼管を加工することにより溶接部分を無くした一体に形成している。
【0017】
連結用カラー12は、外殻鋼管10を、コンクリート層11の端面より長く延長した形状となっており、その内部にはコンクリート層11の端面に接したドーナツ板状の端面補強プレート13が溶接されている。
【0018】
この外殻鋼管10は、コンクリート層11の連結用カラー側端部外周からカラー先端部に至る部分を、他の部分より肉厚を大きくした厚肉部14となっており、その厚肉部14の長さの約半分が連結用カラー12となっている。端部補強プレート13は、その厚肉部14の多内周面に溶接によって一体化されている。この厚肉部以外の部分は、溶接に耐える厚さより薄い厚さに形成されている。
【0019】
端部補強プレート13の背面と、外郭鋼管内面との間には斜材15が介在され、端部補強プレート13の連結状態を強固にしている。この斜材15の外殻鋼板側の端部が肉厚部14の内面に溶接されている。
【0020】
厚肉部14の厚さは、連結用カラー12部分の継ぎ手としての強度及びコンクリート層11の端面に位置する端面補強プレート13の溶接に耐える厚さに形成している。
【0021】
厚肉部14は、図1に示すように、外殻鋼管本体部16部分を、厚肉部14部分を残して、引き抜き加工や絞り加工によって肉薄に成形することによって外殻鋼管本体部16と一体に形成している。
【0022】
連結用カラー12とは反対側の端部には、連結用差し口外殻20が一体に突設されている。この連結用差し口外殻20は、図1中仮線にて示すように連結用カラー12内に止水用パッキン32を介在させて挿入できる大きさの径に形成されている。この連結用差し口外殻20の端部は、中心方向側に曲げられて内向フランジ状の端面補強部21が一体に形成されている。
【0023】
この連結用差し口外殻20は、図1に示すように、外殻鋼管本体部16の端部と一体に形成した先細りのテーパ部23を介し、その先端側に一体に形成されている。
【0024】
このコンクリート層11内には、その円弧状の内周面側に偏せた位置に外殻鋼管10の円周方向に向けたリング状の周方向鉄筋30及び外殻鋼管10の長さ方向に向けた縦筋31とからなる鉄筋籠が埋設されている。
【0025】
このように構成される複合管は、その外殻鋼管が全体が溶接によって連結する部分のない形状に一体に形成されるとともに、前記連結用カラー部分の継ぎ手としての強度及び前記膨張コンクリート層の端面に位置する端面補強プレートの溶接に耐える厚さ厚肉部とし、その他の部分を前記溶接に耐える厚さより薄い厚さに形成し、その肉厚部以外の部分を接のために必要とされる厚さより薄い厚さに形成していることにより、従来に比べて少ない材料で、必要な設計強度に応じたものが形成でき、全体の製造コストを削減できる。
【0026】
また、コンクリート層の端部外周からカラー部先端に至る部分を厚肉部としているため、斜材の溶接や端面補強プレートの溶接部分、更には複合管相互を連結するための継ぎ手であるカラーを構成する部分のみを、溶接及びカラー強度に必要な厚肉にすることができ、それらの機能を満たし、且つ、他の部分をこれより薄肉に形成することによって、材料コストが削減でき、設計耐圧力に見合う剛性管を従来に比べて廉価にて提供できる。
【符号の説明】
【0027】
10 外殻鋼管
11 コンクリート層
12 連結用カラー
13 端面補強プレート
14 厚肉部
15 斜材
16 外殻鋼管本体部
20 連結用差し口外殻
21 端面補強部
23 テーパ部
30 周方向鉄筋
31 縦筋
32 止水用パッキン
図1
図2