(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648959
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】軟弱地盤の圧密改良方法及び圧密改良地盤
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
E02D3/10 103
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-285865(P2010-285865)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2012-132225(P2012-132225A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 省三
(72)【発明者】
【氏名】松本 歩
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−336064(JP,A)
【文献】
特開昭47−044912(JP,A)
【文献】
特開昭64−010813(JP,A)
【文献】
特開平04−203011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤中に複数のドレーン材をその長さ方向を水平方向に向けて埋設し、前記ドレーン材を通して前記軟弱地盤中の排水を行う軟弱地盤の圧密改良方法において、
心材の両面に透水材を貼り付けることにより内部に長手方向に向けた複数の通水路が形成され、横断面の幅方向長さが厚み方向長さより長く形成されていて、厚み方向に曲げ易く、幅方向には撓み難いドレーン材を使用し、
該ドレーン材の幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設することを特徴としてなる軟弱地盤の圧密改良方法。
【請求項2】
前記ドレーン材を、前記軟弱地盤の地盤深さ方向に間隔を置いて平行配置に埋設する請求項1に記載の軟弱地盤の圧密改良方法。
【請求項3】
軟弱地盤中に複数のドレーン材をその長さ方向を水平方向に向けて埋設し、前記ドレーン材を通して前記軟弱地盤中より排水を行うことにより圧密された圧密改良地盤において、
心材の両面に透水材を貼り付けることにより内部に長手方向に向けた複数の通水路が形成され、横断面の幅方向長さが厚み方向長さより長く形成されていて、厚み方向に曲げ易く、幅方向には撓み難いドレーン材を、その幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設させたことを特徴としてなる圧密改良地盤。
【請求項4】
前記ドレーン材は、前記軟弱地盤の地盤深さ方向に間隔を置いて平行配置に埋設させた請求項3に記載の改良地盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に浚渫土からなる軟弱土を貯留させた軟弱土処理場や埋立地の軟弱地盤中の水平方向にドレーン材を設置し、該ドレーン材を通して軟弱地盤の排水を行う軟弱地盤の圧密改良方法及び圧密改良地盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の軟弱地盤の圧密改良方法においては、浚渫土からなる軟弱土処理場や埋立地の軟弱地盤中に複数のドレーン材をその長さ方向を水平方向に向けて埋設し、このドレーン材内に負圧を生じさせてドレーン材を通して軟弱地盤より排水を行うことにより地盤改良を行う方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この方法では、例えば
図7に示すように、ドレーン材横断面が幅方向長さに比して厚み方向長さが十分に小さい偏平矩形状のドレーン材100,100...を、その厚み方向を地盤深さ方向に向けて軟弱地盤101内に埋設するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−203011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述した従来の技術では、軟弱地盤101中でその土圧を受けてドレーン材100,100が地盤深さ方向で撓み易く、
図8に示すように、各地点a,bにおけるドレーン材100,100間の地盤深さ方向の間隔を一定とすることが困難であり、その為各地点において均一に圧密沈下がなされず、圧密による地盤改良効果も各地点によってばらつきが生じる虞があり、その結果一部に地盤改良効果の低い箇所が生じる虞があるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、ドレーン材の撓みを抑えて各ドレーン材間の間隔を一定に保つことができ、改良地盤の各地点において均一且つ高い地盤改良効果を得ることができる軟弱地盤の圧密改良方法及び圧密改良地盤の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の軟弱地盤の圧密改良方法の特徴は、軟弱地盤中に複数のドレーン材をその長さ方向を水平方向に向けて埋設し、前記ドレーン材を通して前記軟弱地盤中の排水を行う軟弱地盤の圧密改良方法において、
心材の両面に透水材を貼り付けることにより内部に長手方向に向けた複数の通水路が形成され、横断面の幅方向長さが厚み方向長さより長く形成され
ていて、厚み方向に曲げ易く、幅方向には撓み難いドレーン材を使用し、該ドレーン材の幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設することにある。
【0008】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ドレーン材を、前記軟弱地盤の地盤深さ方向に間隔を置いて平行配置に埋設することにある。
【0009】
請求項3に記載の圧密改良地盤の特徴は、軟弱地盤中に複数のドレーン材をその長さ方向を水平方向に向けて埋設し、前記ドレーン材を通して前記軟弱地盤中より排水を行うことにより圧密された圧密改良地盤において、
心材の両面に透水材を貼り付けることにより内部に長手方向に向けた複数の通水路が形成され、横断面の幅方向長さが厚み方向長さより長く形成され
ていて、厚み方向に曲げ易く、幅方向には撓み難いドレーン材を、その幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設させたことにある。
【0010】
請求項4に記載の発明の特徴は、前記ドレーン材は、前記軟弱地盤の地盤深さ方向に間隔を置いて平行配置に埋設させたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述したように、
心材の両面に透水材を貼り付けることにより内部に長手方向に向けた複数の通水路が形成され、横断面の幅方向長さが厚み方向長さより長く形成され
ていて、厚み方向に曲げ易く、幅方向には撓み難いドレーン材を使用し、該ドレーン材の幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設することにより、ドレーン材が軟弱地盤から受ける地盤深さ方向の圧力を軽減することがで
きるとともに、ドレーン材が地盤深さ方向で撓み
難く、安定した圧密沈下を促進することができる。
【0012】
また、本発明において、前記ドレーン材を、前記軟弱地盤の地盤深さ方向に間隔を置いて平行配置に埋設することにより、軟弱地盤の地盤深さ方向における各ドレーン材間の間隔を一定に維持することができ、どの位置にあっても均一且つ高い地盤改良効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る圧密改良地盤を示す縦断面図である。
【
図3】
図1中のドレーン材の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る軟弱地盤の圧密改良方法のドレーン材設置行程の概略を示す側面図である。
【
図5】同上のドレーン材設置行程の他の例の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る改良地盤の実施の態様を
図1〜
図3に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は改良地盤である。
【0015】
この改良地盤1は、浚渫土等を堆積させた層厚の薄い軟弱地盤内に複数のドレーン材2,2...をその長さ方向を水平方向に向けて埋設し、各ドレーン材2,2...を通して軟弱地盤より排水を行い圧密することにより形成されている。
【0016】
ドレーン材2には、例えば
図3に示す幅方向長さが厚み方向長さに比して長い矩形状のプラスチックドレーン等を使用でき、このプラスチックドレーンは、断面方形波状の心材3の両面に布状の透水材4,4を貼り付けることにより、内部に長手方向に向けた複数の通水路5,5...が形成され、透水材4を透過して外部の水が通水路5,5...内に流れ込むようになっている。尚、ドレーン材の厚みとは、ドレーンリールに巻き取られた際のドレーン材2のリール半径方向の長さをいい、ドレーン材の幅とは、ドレーンリールに巻き取られた際のドレーン材2のリール幅方向の長さをいうものとする。
【0017】
心材の形状については、上述した断面方形波状の他、断面波形状、三角波状、鋸刃状その他の形状であってもよい。
【0018】
このドレーン材2は、幅方向長さが厚み方向長さに比して長く形成されているため厚み方向に曲げ易く、ドレーン材を厚み方向に曲げてリール等に巻き取ることができる。一方、幅方向には撓み難いようになっている。
【0019】
各ドレーン材2,2...は、
図2に示すように、その長さ方向を水平方向に向けるとともに、地盤深さ方向にそれぞれ間隔を置いて平行配置に設置されている。
【0020】
また、各ドレーン材2は、その横断面の幅方向を地盤の上下方向、即ち地盤深さ方向でドレーン材2が撓み難い方向に向けて埋設されている。尚、地盤の上下方向とは、地盤深さ方向と一致する方向の他、斜め上下方向も含むものとする。
【0021】
このように構成された圧密改良地盤1では、各ドレーン材2,2...がその幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設されているため、厚み方向を地盤深さ方向に向けた場合に比べて地盤深さ方向の土圧に対する面積を小さくでき、各ドレーン材2,2...は、軟弱地盤から受ける地盤深さ方向の抵抗が小さくなり地盤深さ方向で撓み難くなる。
【0022】
これにより各ドレーン材2,2...の地盤深さ方向の実際の設置位置と計画設置位置との間にずれが少なく、また、各ドレーン材間の距離も一定に保つことができるので、軟弱地盤の各地点における圧密沈下量を均一にすることができる。
【0023】
次に、上述の如く改良地盤を施工するための本発明に係る軟弱地盤の圧密改良方法について説明する。図中符号10は軟弱地盤である。尚、上述の実施例と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
まず、浚渫土等を堆積させた層厚の薄い軟弱地盤10内にドレーン材2,2...をその長さ方向を水平方向に向けて設置する。
【0025】
ドレーン材2,2...を設置するには、例えば、
図4に示すように、ドレーン材2を巻き取ったリール11を搭載した作業船12を軟弱地盤10上の水面に浮かべ、その作業船12下の軟弱地盤10中にドレーン材2を埋設するためのガイド部材13を挿入し、その状態で作業船12を移動させるとともにガイド部材13の進行方向後側よりドレーン材2を繰り出すことにより軟弱地盤10中に長さ方向を水平方向に向けてドレーン材2を埋設する。
【0026】
その際、ドレーン材2は方向転換手段14により曲げ及び捩りが加えられ、長さ方向を水平方向に向けるとともに、ドレーン材横断面の幅方向を地盤の上下方向に向けてドレーン材2がガイド部材13より繰り出されるようになっている。
【0027】
また、ガイド部材13のドレーン材繰り出し部の軟弱地盤10に対する挿入位置を変えて上述のようにドレーン材2を埋設することにより軟弱地盤10の地盤深さ方向に間隔を隔ててドレーン材を多段配置に設置することができる。
【0028】
但し、ドレーン材2を設置する手段は、上記の実施例に限定されず、例えば
図5に示すように、ドレーンリール11,11...を、回転軸を岸20に対して垂直に向けた状態で設置しておき、処理場に投入した軟弱土が一定厚さに達する毎に、ドレーンリール11からドレーン材2,2...を軟弱地盤10上に引き出して敷設し、更にその上に軟弱土を投入することによりドレーン材2,2...を埋設するようにしてもよい。
【0029】
この場合、各ドレーン材2,2...がその横断面の幅方向を地盤の上下方向に向けた状態を維持するため、各ドレーン材間を連結して互いに倒れないように支え合うようにする等、埋設方向を維持するための手段を用いることが好ましい。
【0030】
ドレーン材2,2...の設置が完了した後、
図6に示すように、各ドレーン材2,2...を、排水用ホース31を介して真空ポンプ等の排水手段32に接続し、この排水手段32を動作させて埋設したドレーン材2,2...内に負圧を生じさせ、ドレーン材2,2を通して軟弱地盤10の排水を行い当該地盤の圧密沈下を促進させる。
【0031】
以上の工程により地盤改良がなされた改良地盤は、各ドレーン材2,2...がその幅方向を地盤の上下方向に向けて埋設されているため、各ドレーン材2,2...が地盤深さ方向で撓み難く、ドレーン材を埋設する際や圧密による地盤沈下時においても地盤深さ方向の撓みが生じ難いので各ドレーン材間の距離も一定に保つことができ、軟弱地盤の各地点における圧密沈下量を均一にすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 改良地盤
2 ドレーン材
3 心材
4 透水材
5 通水路
10 軟弱地盤
11 ドレーンリール
12 作業船
13 ガイド部材
14 ひねり手段
20 岸