特許第5648987号(P5648987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5648987-歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648987
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20141211BHJP
   A61C 17/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   A61C19/00 C
   A61C17/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2008-68743(P2008-68743)
(22)【出願日】2008年3月18日
(65)【公開番号】特開2009-219723(P2009-219723A)
(43)【公開日】2009年10月1日
【審査請求日】2011年3月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好幸
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−299811(JP,A)
【文献】 特開2002−224146(JP,A)
【文献】 特開2006−181147(JP,A)
【文献】 特開2003−169815(JP,A)
【文献】 実開平02−042611(JP,U)
【文献】 特開2007−009873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧源から供給される圧力水を歯科診療用の通常圧に減圧し、電磁弁を介してインスツルメントや給水等に供給する歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置の水回路において、前記水回路中の残留水を空気と共に吸引して水排出管に排出する吸引回路を前記水回路に設けるとともに、当該吸引回路は、吸引を制御する電磁弁と、水回路内の残留水を空気と共に吸引する吸引手段と、吸引した空気と残留水とを分離する気液分離器とから構成し、かつ前記水回路の吸引回路を構成する電磁弁および気液分離器を歯科診療ユニット内に設けるとともに、吸引手段を歯科診療ユニット外に設けることにより構成したことを特徴とする歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置。
【請求項2】
水圧源から供給される圧力水を歯科診療用の通常圧に減圧し、電磁弁を介してインスツルメントや給水等に供給する歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置の水回路において、前記水回路中の残留水を空気と共に吸引して水排出管に排出する吸引回路を前記水回路に設けるとともに、当該吸引回路は、吸引を制御する電磁弁と、水回路内の残留水を空気と共に吸引する吸引手段と、吸引した空気と残留水とを分離する気液分離器とから構成し、かつ前記水回路の吸引回路を構成する電磁弁を歯科診療ユニット内に設け、気液分離器および吸引手段を歯科診療ユニット外に設けることにより構成したことを特徴とする歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置。
【請求項3】
前記水回路中に、電磁弁をまたぐバイパス回路を設けると共に、該バイパス回路に逆止弁を設けて残留水の吸引を可能にしたことを特徴とする請求項1または2記載の歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置。
【請求項4】
前記水回路の水圧源側に設けられた開閉弁と減圧弁との間に大気を吸入する逆止弁を設けて水圧源側の残留水を吸引可能にしたことを特徴とする請求項1または2記載の歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科診療ユニットの水回路中に残留した水を排出する歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から歯科診療ユニットに備えられたインスツルメントには一定の通常圧力に調整された圧力水が供給されている。この圧力水は診療が終了しても水回路内に残留しているため翌日の診療開始までの間に細菌が繁殖して不衛生になるという問題があり、毎日の診療前にハンドピースを含む全ての歯科治療器具から残留水を排出する洗浄、即ちフラッシングをする必要があった。特に休診日の翌日などは念入りにフラッシングをしなければならなかった。
【0003】
また従来のフラッシングは例えば、残留水を排出するためにインスツルメント、コップ給水、鉢洗い、などの全ての回路から一定圧の水を一斉に排出する方法がとられていたが、この方法では流量が不足するために排出圧力が低下し、十分な排出ができないという問題がある。また流量不足にならないように各回路から順番に排出する方法では全部の回路から排出するのに多大な時間がかかるという問題がある。またフラッシングしても必ずしも管路の先端が開口しない部分については排水しきれないことになる。その他の方法として、インスツルメントをユニット本体や専用ホルダに保持させ、バキューム/排唾用インスツルメントの吸引力を利用して残留水を排出する方法もあるが、この場合は準備や片付けに時間がかかるという問題がある。しかるにこの残留水排出に関連する従来の技術としては、例えば次に掲げる特許文献1から5の発明が公知となっている。
【0004】
特許文献1の発明は、歯科用スピットンにインスツルメントの係止部を設け、インスツルメント内の水回路洗浄時、あるいは空気タービンの注油後におけるならし回転時等において、インスツルメントを係止部に係止してインスツルメントの出口から水を放出し、その水をスピットンに排出するものである。
【0005】
特許文献2の発明は、水回路切替制御部および操作スイッチに、より管径が大きい水回路と管半径の小さい水回路の区分け並びに、区分けに対応する殺菌水、洗浄水、乾燥空気の切り替えを時系列的に順次行って、各水回路の滅菌、洗浄および乾燥作業の効率化を図ると共に、水回路の酸化による腐食や劣化を防止するものである。
【0006】
特許文献3の発明は、ハンドピース用のインスツルメントホースを接続するための中継金具からハンドピースに至る吸引水供給管路にろ過フィルタと、このろ過フィルタの出口側に逆止弁を設け、圧縮空気供給管路に設けた分岐回路を、ハンドピースと逆止弁との間の吸引水供給管路に連通させる空気回路を設け、水圧源からろ過フィルタに至る吸引水供給管路内に発生した細菌をろ過フィルタにより捕集しつつハンドピース先端の水噴射ノズルを経て放水し、かつ逆止弁からハンドピース先端に至る水管路に残留した水を、空気圧源から送られる圧縮空気によって除去することを可能にしたものである。
【0007】
特許文献4の発明は、ハンドピースを駆動する圧縮空気供給管路および吸引水供給管路と、圧縮空気供給管路とハンドピースとに接続した圧縮空気供給用弁群および吸引水供給管路とハンドピースとに接続した吸引水供給用弁群とを構成する弁ブロックとを備え、フットコントローラによってハンドピースの速度制御および注水制御を行う水回路清浄装置である。
【0008】
特許文献5の発明は、歯科用空気ユニットの送水用各種装置と給水用装置および、送水を伴うハンドピース等の送水用各種器具の水回路開閉弁入り口を、総て直列に接続した水供給用の幹線管路を設け、同管路内に常時清浄な水を充填しておき、また残留水の排水は、幹線回路にブランチされた各種装置または器具で個々に実施し、処理時間の短縮を行うものである。
【0009】
しかしながら、前記従来の特許文献1から5は、いずれも本願発明における水回路に吸引回路を設け、水回路中の残留水を空気と共に吸引して短時間に排出する構成とは異なるものである。また本願発明の水回路に吸引回路を設けて残留水を短時間に排出する構成は今まで開発されていなかった。
【特許文献1】特開平8−33655号公報
【特許文献2】特開2000−245753号公報
【特許文献3】特開2002−253583号公報
【特許文献4】特開2002−191620号公報
【特許文献5】特開2004−180782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、歯科診療ユニットにおける水回路内の残留水を簡単な手段で如何に確実かつ短時間に排出するかという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置の請求項1は、水圧源から供給される圧力水を歯科診療用の通常圧に減圧し、電磁弁を介してインスツルメントや給水等に供給する歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置の水回路において、前記水回路中の残留水を空気と共に吸引して水排出管に排出する吸引回路を前記水回路に設けるとともに、当該吸引回路は、吸引を制御する電磁弁と、水回路内の残留水を空気と共に吸引する吸引手段と、吸引した空気と残留水とを分離する気液分離器とから構成し、かつ前記水回路の吸引回路を構成する電磁弁および気液分離器を歯科診療ユニット内に設けるとともに、吸引手段を歯科診療ユニット外に設けることにより構成したことを特徴とするとともに、請求項2は、水圧源から供給される圧力水を歯科診療用の通常圧に減圧し、電磁弁を介してインスツルメントや給水等に供給する歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置の水回路において、前記水回路中の残留水を空気と共に吸引して水排出管に排出する吸引回路を前記水回路に設けるとともに、当該吸引回路は、吸引を制御する電磁弁と、水回路内の残留水を空気と共に吸引する吸引手段と、吸引した空気と残留水とを分離する気液分離器とから構成し、かつ前記水回路の吸引回路を構成する電磁弁を歯科診療ユニット内に設け、気液分離器および吸引手段を歯科診療ユニット外に設けることにより構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯科診療ユニットの吸引式流体排出装置は、請求項1または2により、空気を吸引して残留水を排出する方法であるので、水回路内から水分を完全に除去し、気液分離器によって水分を分離し水排出管に排出し、空気は大気中に放出することが可能である。吸引手段は医院の機械室等に配置したセントラルバキュームが使用でき、複数の歯科診療ユニット全体の吸引手段として使用可能であり、強力な空気の吸引力により短時間で残留水を排出することができる。また、流体排出装置を備える歯科診療ユニットの構成が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
歯科診療ユニットの水回路内から残留水を如何に完全かつ短時間に排出するかという目的を、水回路に吸引回路を設けて空気と共に残留水を吸引し水排出管に排出することで実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1を示す歯科診療ユニットの水回路に対して吸引回路を設けた回路図である。
図1に示すように本発明に係る歯科診療ユニットの水回路1は、水圧源2側の開閉弁3と、開閉弁3を経て供給された圧力水を歯科診療に必要な通常圧に減圧する減圧弁4と、減圧された通常圧の圧力水を制御してエアタービンハンドピース22やマイクロモータハンドピース23などのインスツルメント24に供給する各制御弁5と、通常圧に減圧された圧力水を給水6に供給する電磁弁7と、この電磁弁7をまたぐバイパス回路8と、このバイパス回路8に設けられた逆止弁9と、鉢洗い10に圧力水を供給する電磁弁11と、この電磁弁11をまたぐバイパス回路12と、このバイパス回路12に設けられた逆止弁13とからなる。また水圧源2側の開閉弁3と減圧弁4との間には大気の吸入を可能にする逆止弁14が設けられている。
【0015】
この水回路1に対して、本発明は水回路1中の残留水を吸引して排出する吸引回路15を設けたものである。本実施例の吸引回路15は、吸引を制御する電磁弁16および吸引した空気と残留水を分離する気液分理器17とが歯科診療ユニット内に設けられ、吸引手段18、例えば吸引ブロワは歯科診療ユニット外、例えば医院の機械室などに設置して複数の歯科診療ユニット全体の吸引手段として作動させる。なお気液分離器17の水排出管19はスピットン20の水排出管21に連結している。
【0016】
本実施例の吸引式流体排出装置は、水回路1内の残留水を排出するに際して、まず水圧源2側の開閉弁3を閉止し、続いて吸引手段18を作動させると同時に水回路1内に設けられた全ての制御弁5、7、11、16を電気的制御にて開放する。これにより各インスツルメント24の出口、コップ給水6や鉢洗い10の出口および逆止弁14から空気を吸入し、吸入した空気と共に残留水を吸引して気液分離器17に導入し、気液分離器17にて水と空気に分離する。分離された水は水排出管19および水排出管19に接続されたスピットン20の水排出管21を経て排出される。また分離された空気は吸引手段18に吸引されて大気中に放出される。なお、水回路1中に電磁弁が設けられている場合は、その弁をまたぐバイパス回路8または12に設けられた逆止弁9または13を経て吸引が可能になる。
【0017】
以上説明したように、本実施例の吸引式流体排出装置は、吸引回路15が歯科診療ユニットに設けられた電磁弁16および気液分離器17と、歯科診療ユニット外に設けられた吸引手段18とからなり、この吸引回路15を水回路1に接続したことにより、従来のように特別に残留水を排出するための準備をする必要がなく簡単で完全かつ短時間に残留水を排出することができる。また本発明は空気を吸引して残留水を排出する方法であるので、水回路1内から水分を完全に除去することができ、極めて衛生的である。
【実施例2】
【0018】
図2は本発明の実施例2を示す歯科診療ユニットの水回路に対して吸引回路を設けた回路図の変形例である。
本実施例では、前記実施例1において吸引回路15を構成する電磁弁16と気液分離器17を歯科診療ユニット内に設けたことに替えて、図2に示すように電磁弁16のみを歯科診療ユニット内に設け、気液分離器17および吸引手段18を歯科診療ユニット外に設けたことを異にするものであり、前記実施例1と同一部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
図2に示すように本実施例の吸引式流体排出装置は、吸引回路15を構成する電磁弁16のみを歯科診療ユニット内に設けて吸引回路の作動を歯科診療ユニット側にて操作することにより、歯科診療ユニット外、例えば医院の機械室などに設置した気液分離器17および吸引手段18を作動させるものであり、吸引手段18は複数の歯科診療ユニット全体の水回路1に対する吸引手段として作動し、吸引した全体の気液を集中的に分離することができる。
【0020】
本実施例の吸引式流体排出装置は、吸引回路15を構成する電磁弁16を歯科診療ユニットに設け、気液分離器および吸引手段を歯科診療ユニット外に設けた吸引回路15を水回路1に接続したことにより、歯科診療ユニット側には電磁弁だけを設けているので歯科診療ユニットの構成が簡単になり、また吸引および気液分離を集中的に行うことができるほか、前記実施例1と同様な作用・効果が得られる。
【0021】
以上の実施例1および2における吸引式流体排出装置は、水回路内の残留水を空気と共に排出することにより水回路内が乾燥状態になり雑菌の繁殖を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】歯科診療ユニットの水回路に対して吸引回路を設けた回路図である。 (実施例1)
図2】歯科診療ユニットの水回路に対して吸引回路を設けた回路図の変形例である。(実施例2)
【符号の説明】
【0023】
1 水回路
2 水圧源
3 開閉弁
4 減圧弁
5 各制御弁
6 給水
7、11、16 電磁弁
8、12 バイパス回路
9、13、14 逆止弁
10 鉢洗い
15 吸引回路
17 気液分離器
18 吸引手段
19、21 水排出管
20 スピットン
22 エアタービンハンドピース
23 マイクロモータハンドピース
24 インスツルメント
図1
図2