特許第5648997号(P5648997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5648997
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20141211BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20141211BHJP
   F16F 15/02 20060101ALN20141211BHJP
   F16F 15/03 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
   H02K41/02 C
   H02K41/03 A
   !F16F15/02 B
   !F16F15/03 G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-207577(P2010-207577)
(22)【出願日】2010年9月16日
(65)【公開番号】特開2012-65451(P2012-65451A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2013年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】柿内 隆司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−104089(JP,A)
【文献】 特開2003−211088(JP,A)
【文献】 特開2010−104091(JP,A)
【文献】 特開2001−124170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 41/03
F16F 15/02
F16F 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブと、このインナーチューブの軸心部に起立するロッドと、このロッドに軸方向に並べて保持される複数の永久磁石からなる界磁と、この界磁に対向する複数のコイルを保持するホルダとを備え、上記アウターチューブと上記インナーチューブを軸方向に相対変位させる推力を発生するリニアアクチュエータにおいて、
上記ホルダが上記アウターチューブに固定されてなり、上記コイルを保持する筒状のコイルホルダ部が上記ロッドと上記インナーチューブとの間に形成される筒状隙間内に出没し、その外周と上記インナーチューブとの間に所定の隙間を有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
上記アウターチューブにおける上記インナーチューブ挿入側端部内周に上記インナーチューブ外周に摺接する軸受を設け、
上記インナーチューブの先端部外周に上記アウターチューブ内周に摺接する軸受を設けることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
上記ロッドが基端を上記インナーチューブに固定されて上記ホルダを貫通し、先端に上記アウターチューブの内周に外周を摺接するロッドガイドを保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
上記インナーチューブの基端部にクレビスを設け、
上記アウターチューブは、相対向して配置され径方向に突出する一対の支持軸からなるトラニオンを備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアアクチュエータは、これまでに種々の提案がなされており、例えば、特許文献1には、車両の横揺れを減衰する制振用リニアアクチュエータの構成が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のリニアアクチュエータは、特許文献1の図1に示されるように、有底筒状のアウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入される有天筒状のインナーチューブと、上記アウターチューブの底部から起立して上記インナーチューブ内周に摺接するロッドとを備える。
【0004】
そして、上記インナーチューブは、上記アウターチューブの開口部内周に取り付けられる軸受と、上記ロッド外周に取り付けられる軸受とによって軸支される。
【0005】
また、上記リニアアクチュエータは、上記インナーチューブ外周に軸方向に並べて保持される複数の環状永久磁石からなる界磁と、上記アウターチューブ内周に保持されて上記界磁に対向する複数のコイルとを備えてなり、上記アウターチューブと上記インナーチューブを軸方向に相対変位させる推力を発生する。
【0006】
そして、上記リニアアクチュエータは、上記各コイルに流れる電流量を調整してリニアアクチュエータの推力と、推力発生方向を制御する制御手段を備え、インナーチューブをアウターチューブ内に適宜出没させて車両の横揺れを減衰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−106242号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のリニアアクチュエータは、機能上特に欠陥はないが、次のような不具合の改善が望まれている。
【0009】
即ち、上記従来のリニアアクチュエータにおける永久磁石は、インナーチューブ外周に保持されてなる。
【0010】
上記インナーチューブは、アウターチューブ内周及びロッド外周に取り付けられる軸受によって軸支されるため、径方向に作用する横力を受けて上記軸受を支点にして歪み、この歪みが永久磁石に伝わって永久磁石が破損する虞がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記不具合を解決することが可能なリニアアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段は、アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブと、このインナーチューブの軸心部に起立するロッドと、このロッドに軸方向に並べて保持される複数の永久磁石からなる界磁と、この界磁に対向する複数のコイルを保持するホルダとを備え、上記アウターチューブと上記インナーチューブを軸方向に相対変位させる推力を発生するリニアアクチュエータにおいて、上記ホルダが上記アウターチューブに固定されてなり、上記コイルを保持する筒状のコイルホルダ部が上記ロッドと上記インナーチューブとの間に形成される筒状隙間内に出没し、その外周と上記インナーチューブとの間に所定の隙間を有することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、当該横力を受けてインナーチューブが歪んだ場合においても、永久磁石を保持するロッドがインナーチューブの軸心部に起立して当該ロッドに上記歪みが作用しないため、永久磁石が破損することを防止することが可能となる。
【0014】
また、上記歪みがコイルを保持するホルダのコイルホルダ部にも作用せず、上記歪みによりコイルと永久磁石との間隔が変化したり、コイルと永久磁石が干渉したりすることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係るリニアアクチュエータの縦断面を拡大して示す原理図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るリニアアクチュエータの変更例の縦断面を示す原理図であり、リニアアクチュエータの取り付け方法を変更したものである。
図3】本発明の一実施の形態に係るリニアアクチュエータの他の変更例の縦断面を示す原理図であり、ホルダの取り付け方法を変更したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の一実施の形態を示すリニアアクチュエータについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0017】
上記リニアアクチュエータは、自動車や鉄道用車両等に設けられる制振用リニアアクチュエータである。
【0018】
図1に、本実施の形態に係るリニアアクチュエータについての原理図を示す。
【0019】
本実施の形態に係るリニアアクチュエータは、図1に示すように、アウターチューブ1と、このアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ2と、このインナーチューブ2の軸心部に起立するロッド3とを備える。
【0020】
そして、上記リニアアクチュエータは、上記ロッド3に軸方向に並べて保持される複数の永久磁石40からなる界磁4と、この界磁4に対向する複数のコイル50を保持するホルダ5とを備え、上記アウターチューブ1と上記インナーチューブ2を軸方向に相対変位させる推力を発生する。
【0021】
また、上記リニアアクチュエータにおいて上記ホルダ5が上記アウターチューブ1に固定されてなり、上記コイル50を保持する筒状のコイルホルダ部51が上記ロッド3と上記インナーチューブ2との間に形成される筒状隙間A内に出没し、その外周と上記インナーチューブ2との間に所定の隙間Bを有する。
【0022】
以下に上記リニアアクチュエータの各構成部品について詳細に説明する。
【0023】
上記アウターチューブ1及び上記インナーチューブ2は、リニアアクチュエータにおける外郭を成し、リニアアクチュエータの両端部に位置するアウターチューブ1の図1中右端及びインナーチューブ2の図1中左端に設けられるクレビスK1、K2を介して車体及び可動体にそれぞれ連結される。
【0024】
本実施の形態において、アウターチューブ1と、このアウターチューブ1に固定されてコイル50を保持するホルダ5が固定子であり、また、インナーチューブ2と、このインナーチューブ2の軸心部に起立するロッド3と、このロッド3の先端に保持されるロッドガイド6が可動子である。
【0025】
そして、リニアアクチュエータは、上記固定子及び上記可動子を相対移動させることにより、車体に入力される振動を減衰する。
【0026】
上記アウターチューブ1は、有底筒状に形成されてなり、詳しくは、図中左方に上記インナーチューブ1が摺動自在に挿入する開口を備えて筒状に形成される小径筒状部10と、この小径筒状部10の図中右側に同軸に延設される大径筒状部11と、この大径筒状部11の図中右側端にボルト固定されて外側に車体側のクレビスK1が固定される円盤状の底部12とを備えてなる。
【0027】
上記小径筒状部10と上記大径筒状部11は、等しい外径に形成されてなり、上記小径筒状部10の内径が上記大径筒状部11の内径よりも小径に形成されて、小径筒状部10及び大径筒状部11の内周側境界に環状の段部13が形成される。
【0028】
また、アウターチューブ1は、上記小径筒状部10のインナーチューブ挿入側端部内周、即ち、図中左端部内周にインナーチューブ2外周に摺接する環状の軸受14を備えてなる。
【0029】
上記アウターチューブ1内に出没するインナーチューブ2は、有天筒状に形成されてなり、詳しくは、筒状に形成されて図中右端部外周に上記アウターチューブ1内周に摺接する環状の軸受24を備える可動筒状部20と、この可動筒状部20の図中左側開口を塞ぎ外側に可動体側のクレビスK2が固定される天井部22とを備えてなる。
【0030】
上記構成を備えることにより、インナーチューブ2は、アウターチューブ1及びインナーチューブ2に取り付けられる両軸受14、24で軸支されて摺動するため、径方向に作用する横力に対して十分な剛性を確保しながらアウターチューブ1内に出没することが可能となる。
【0031】
上記インナーチューブ2の軸心部に起立するロッド3は、基端(図中左端)を上記インナーチューブ2の天井部22の中心に固定されてなり、アウターチューブ1内周に固定される略筒状のホルダ5の軸心部を軸方向に移動自在に貫通する。
【0032】
また、上記ロッド3は、中空に形成されて内部に軸方向に並べて保持される複数の永久磁石40からなる界磁4を収容する。
【0033】
上記構成を備えることにより、横力が作用してインナーチューブ2が歪んだ場合においてもこの歪みがロッド3に伝わらず、インナーチューブ2の歪みが永久磁石40に伝わって永久磁石40が破損することを防止することが可能となる。
【0034】
上記永久磁石40は、棒状に形成されて軸方向にN極とS極が現れるように着磁されてなり、隣り合う永久磁石40、40は、同極同士を対向させてロッド3内に軸方向に並べて収容される。そして、隣り合う永久磁石40、40の間には継鉄41が配設されてなる。
【0035】
尚、上記界磁4の構成は、上記の限りではなく、上記永久磁石40が環状に形成されて上記ロッド3の外周に保持されるとしても、内周と外周に分極する永久磁石40を用いるとしてもよく、ロッド3の軸方向に沿ってN極とS極が交互に現れるようになっていればよい。また、上記継鉄41は必ずしも設ける必要はない。
【0036】
また、上記ロッド3の先端(図中右端)には、アウターチューブ1の大径筒状部11内周に外周を摺接するロッドガイド6が固定されてなり、当該構成を備えることにより、インナーチューブ2の摺動に伴いロッド3がアウターチューブ1内を軸方向に移動する際、上記ロッド3の先端が径方向に振れること(横振れ)を防止することが可能となる。
【0037】
従って、上記ロッドガイド6は、リニアアクチュエータの伸縮の際、ロッド3が横振れしてホルダ5(永久磁石40がロッド3の外周に保持される場合には永久磁石40)に干渉することを避け、ロッド3内に収容される永久磁石40とガイド5に保持されるコイル50との間隔を一定に保つことが可能となる。
【0038】
つまり、リニアアクチュエータは、永久磁石40とコイル50との軸ずれを防止して、安定的に推力を発生することが可能となる。
【0039】
上記ロッド4が軸方向に移動自在に貫通するホルダ5は、界磁4に対向する複数のコイル50を内周に保持する筒状のコイルホルダ部51と、アウターチューブ1の段部13にボルトEを介して固定されるフランジ部52とを備えてなる。
【0040】
上記コイルホルダ部51は、ロッド3とインナーチューブ2との間に形成される筒状隙間A内に出没自在であり、当該筒状隙間A内に配置されたときのコイルホルダ部51の外周とインナーチューブ2内周との間に所定の隙間Bを有する。
【0041】
上記構成を備えることにより、インナーチューブ2に横力が作用して歪んだ場合においても、この歪みがコイルホルダ部51に伝わることを防止することが可能となる。
【0042】
従って、永久磁石40を保持するロッド3及びコイル50を保持するコイルホルダ部51の双方にインナーチューブ2の歪みが伝わらないため、永久磁石40とコイル50との間隔を一定にして、リニアアクチュエータが安定的な推力を発生することが可能となる。
【0043】
尚、コイルホルダ部51外周とインナーチューブ2内周との間に形成される隙間Bは、インナーチューブ2の歪みをコイルホルダ部51に伝えることを防ぐことが可能な範囲において適宜設定することが可能である。
【0044】
また、コイルホルダ部51に保持されるコイル50は、ロッド3のストローク範囲内において、ロッド3に保持される界磁4の軸方向長さ範囲内に位置して常に界磁4に対向してなり、リニアアクチュエータが推力発生不足となることを防止している。
【0045】
そして、リニアアクチュエータは、図示しないが、位置センサでコイル50と永久磁石40の相対位置を把握し、同じく図示しない制御手段で各コイル50の電流量を変更してリニアアクチュエータの推力と、推力の発生方向を制御する。
【0046】
尚、図中には、6個のコイル50を示すがこの限りではなく、コイル50の数は、リニアアクチュエータが発生する推力や通電方法に適した数に設定すればよい。
【0047】
ところで、上記リニアアクチュエータは、アウターチューブ1の底部12に吸排孔Cを備え、インナーチューブ2の可動筒状部20、ロッドガイド6及びホルダ5のフランジ部52に連通孔Dをそれぞれ備えてなる。
【0048】
上記構成を備えることにより、リニアアクチュエータが伸縮する際に、上記吸排孔Cを介してリニアアクチュエータ内に空気を給排し、上記連通孔Dを介してリニアアクチュエータ内の空気を移動させて、リニアアクチュエータの伸縮運動を円滑に行うことが可能となる。
【0049】
しかしながら、上記吸排孔C及び連通孔Dを設ける位置及び数量は、上記の限りではなく、リニアアクチュエータの伸縮を可能にして、その伸縮によるリニアアクチュエータ内部の体積変化を補償し得る限りにおいて適宜選択することが可能である。
【0050】
また、上記実施の形態において、リニアアクチュエータの両端にクレビスK1、K2を設け車体及び可動体にそれぞれ連結するとしたがこの限りではなく、図2に、リニアアクチュエータの取り付け方法を変更したリニアアクチュエータの変更例を示す。
【0051】
以下に、当該変更例に係るリニアアクチュエータについて説明するが、上記一実施の形態に係るリニアアクチュエータと同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
この変更例に係るリニアアクチュエータは、相対向して配置され径方向に突出する一対の支持軸8、8からなるトラニオンと、この支持軸8、8を挿嵌する軸挿入用孔70を有する一対のブラケット7、7とを備えて車体側に揺動可能に支持されるアウターチューブ1Aと、このアウターチューブ1Aの外周に取り付けられてクレビスK2を介して可動体側に連結されるインナーチューブ2とを備える。
【0053】
この場合において、リニアアクチュエータの両端をクレビスK1、K2を介して固定する一実施の形態(図1)と比較して、リニアアクチュエータの取り付け長を短くすることが可能となる。
【0054】
また、上述の一実施の形態において、ホルダ5のフランジ部52をアウターチューブ1の段部13にボルト固定するとしたが、ホルダ5の固定方法は適宜選択することが可能であり、図3に、ホルダの固定方法を変更したリニアアクチュエータの他の変更例を示す。尚、上述の一実施の形態に係るリニアアクチュエータと同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
他の変更例に係るリニアアクチュエータは、内周にコイル50を保持するコイルホルダ部51を有する筒状のホルダ5Bと、内周側に張り出す環状のストッパ部15を有するアウターチューブ1Bとを備えてなり、上記ストッパ部15とホルダ5の図中右端とをボルト固定するものである。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【符号の説明】
【0057】
A 筒状隙間
B 隙間
C 吸排孔
D 連通孔
K1、K2 クレビス
1 アウターチューブ
2 インナーチューブ
3 ロッド
4 界磁
5 ホルダ
6 ロッドガイド
10 小径筒状部
11 大径筒状部
12 底部
13 段部
14 軸受
20 可動筒状部
22 天井部
24 軸受
40 永久磁石
41 継鉄
50 コイル
51 コイルホルダ部
52 フランジ部
図1
図2
図3