【実施例】
【0041】
(単分散性、平均粒径の測定)
以下に述べる実施例および比較例の一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションをクロロホルム/ヘキサン混合溶媒(体積比:4/6、内水相と比重を同じくした)で10倍に希釈し、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(UPA−EX150、日機装株式会社)を用いて体積平均粒径および単分散性(CV値)を測定した。なお、CV値は(標準偏差/平均粒径)×100[%]である。
【0042】
実施例1
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相用の水分散相(W1)とした。50mLのビーカーにこれらの混合液を入れ、直径20mmのプローブをセットした超音波分散装置(UH−600S、株式会社エスエムテー)により、25℃にて15分間超音波を照射し(出力5.5)、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径220nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は33%であった。
【0043】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、実験用デッドエンド型マイクロチャネル乳化装置モジュールを使用して、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0044】
上記モジュールのマイクロチャネル基板はシリコン製であり、マイクロチャネル基板のテラス長、チャネル深さおよびチャネル幅はそれぞれ約60μm、約11μmおよび約16μmであった。上記マイクロチャネル基板にガラス板を圧着させてチャネルを形成し、このチャネルの出口側に外水相溶液(W2)である3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、チャネルの入口側から前記W1/Oエマルションを供給して、W1/O/W2エマルションを製造した。
【0045】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0046】
実施例2
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)1.08g、コレステロール(Chol)0.547gおよびオレイン酸(OA)0.389gを含むヘキサン54mLを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)18mLを内水相用の水分散相(W1)とした。150mLの容器にこれらの混合液を入れ、直径25mmのプローブをセットしたホモミキサー(ULTRA TURRAX T25 basic、IKA社)により、25℃にて24000rpmで10分間、プレ分散処理を行った。その後、このプレ分散液を、卓上湿式微粒化装置NV-200-D(吉田機械株式会社)を用いて、150MPaで10パス処理した。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径170nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は33%であった。
【0047】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、実験用デッドエンド型マイクロチャネル乳化装置モジュールを使用して、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0048】
上記モジュールのマイクロチャネル基板はシリコン製であり、マイクロチャネル基板のテラス長、チャネル深さおよびチャネル幅はそれぞれ約60μm、約11μmおよび約16μmであった。上記マイクロチャネル基板にガラス板を圧着させてチャネルを形成し、このチャネルの出口側に外水相溶液(W2)である3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、チャネルの入口側から前記W1/Oエマルションを供給して、W1/O/W2エマルションを製造した。
【0049】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0050】
実施例3
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(50mmol/L)のpHを9に変更し、超音波処理時間を5minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径320nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は42%であった。
【0051】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
外水相溶液(W2)である3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液(50mmol/L)のpHを9に変更した以外は実施例1と同様にして、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0052】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0053】
実施例4
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
超音波処理出力を3.0としたこと以外は、実施例3と同様にして、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径550nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は55%であった。
【0054】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
実施例3と同様にして、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0055】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0056】
実施例5
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
超音波処理出力を2.5としたこと、処理時間を3minとした以外は、実施例3と同様にして、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径880nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は69%であった。
【0057】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
実施例3と同様にして、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0058】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0059】
実施例6
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
カルセイン(0.4mM)を含む緩衝液(50mmol/L)をpHを6に調整したクエン酸緩衝液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径220nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は36%であった。
【0060】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
外水相溶液(W2)である3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液(50mmol/L)を3%のカゼインナトリウムを含むpHを6に調整したクエン酸緩衝液(50mmol/L)に変更した以外は実施例1と同様にして、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0061】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0062】
実施例7
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
リン脂質を「NC−50」からホスファチジルコリン含量が80%である卵黄レシチン「PL−100M」(キューピー株式会社)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径250nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は35%であった。
【0063】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
実施例1と同様にして、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0064】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0065】
実施例8
(一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造)
ホスファチジルコリン含量が95%である卵黄レシチン「COATSOME NC-50」(日油株式会社)0.3g、コレステロール(Chol)0.152gおよびオレイン酸(OA)0.108gを含むヘキサン15mLを有機溶媒相(O)とし、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)5mLを内水相用の水分散相(W1)とした。50mLのビーカーにこれらの混合液を入れ、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー、吉田機械興業社製)を用いて100MPaの圧力条件で乳化処理を行った。上記方法に従って測定したところ、この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションは平均粒径125nmの単分散W/Oエマルションであることが確認され、CV値は39%であった。
【0066】
(二次乳化工程によるW1/O/W2エマルションの製造)
続いて、上記一次乳化工程により得られたW1/Oエマルションを分散相とし、実験用デッドエンド型マイクロチャネル乳化装置モジュールを使用して、マイクロチャネル乳化法によるW1/O/W2エマルションの製造を行った。
【0067】
上記モジュールのマイクロチャネル基板はシリコン製であり、マイクロチャネル基板のテラス長、チャネル深さおよびチャネル幅はそれぞれ約60μm、約11μmおよび約16μmであった。上記マイクロチャネル基板にガラス板を圧着させてチャネルを形成し、このチャネルの出口側に外水相溶液(W2)である3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液(pH8、50mmol/L)を満たしておき、チャネルの入口側から前記W1/Oエマルションを供給して、W1/O/W2エマルションを製造した。
【0068】
(有機溶媒相の除去によるリポソームの製造)
次に、上記W1/O/W2エマルションを蓋のない開放ガラス製容器に移し替え、室温下で約20時間静置し、ヘキサンを揮発させた。微細なリポソーム粒子の懸濁液が得られ、この粒子内にはカルセインが含まれていることが確認された。
【0069】
実施例9
水分散相(W1)のトリス−塩酸緩衝液(50mmol/L)のpHを9に変更し、有機溶媒相(O)を酢酸エチル/ヘキサン=2/8(体積比)の混合物に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は261nmであり、CV値は41%であった。
【0070】
実施例10
水分散相(W1)のトリス−塩酸緩衝液(50mmol/L)のpHを9に変更し、有機溶媒相(O)をクロロホルム/ヘキサン=2/8(体積比)の混合物に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は300nmであり、CV値は35%であった。
【0071】
実施例11
水分散相(W1)のトリス−塩酸緩衝液(50mmol/L)のpHを9に変更し、有機溶媒相(O)をクロロホルム/ヘキサン=4/8(体積比)の混合物に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は310nmであり、CV値は50%であった。
【0072】
比較例1
一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造において、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液のpHを9に調整したものを使用し、超音波処理による乳化を超音波水槽(出力300W)中で緩やかに振とうすることにより行ない、W2に使用する3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液のpHを9に変更した以外は、実施例1と同様にして、リポソーム分散液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は1.6μmであり、CV値は40%であった。
【0073】
比較例2
一次乳化工程によるW1/Oエマルションの製造において、内水相用の水分散相(W1)として、カルセイン(0.4mM)を含むトリス−塩酸緩衝液のpHを9に調整したものを使用し、有機溶媒相(O)をクロロホルム/ヘキサン=2/8の混合物とし、リン脂質を「NC−50」からホスファチジルコリン含量が80%である卵黄レシチン「PL−100M」(キューピー株式会社)に変更し、W2に使用する3%のカゼインナトリウムを含むトリス−塩酸緩衝液のpHを9に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は920nmであった。また、この粒径分布としては約200nmにメインピークがあるものの、約1.2μmにもかなり大きなサブピークがあり、CV値も52%であった。
【0074】
実施例12
水分散相(W1)に、カルセイン(0.4mM)に代えて、シタラビン(4mM)を溶解させた以外は、実施例3と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は320nmであり、CV値は48%であった。また、最終的に得られたリポソーム粒子の平均粒子径は258nmであった。
【0075】
実施例13
水分散相(W1)に、カルセイン(0.4mM)に代えて、シタラビン(4mM)を溶解させた以外は、実施例4と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は607nmであり、CV値は30%であった。また、最終的に得られたリポソーム粒子の平均粒子径は581nmであった。
【0076】
比較例3
水分散相(W1)に、カルセイン(0.4mM)に代えて、シタラビン(4mM)を溶解させた以外は、比較例1と同様にして、リポソーム粒子の懸濁液を作製した。この一次乳化工程で得られたW1/Oエマルションの平均粒径は1820nmであり、CV値は51%であった。また、最終的に得られたリポソーム粒子の平均粒子径は1910nmであった。
【0077】
上記実施例および比較例で得られたリポソームの、カルセインまたはシタラビンの内包率を、下記の方法に従って測定した。結果は表1に示す通りであった。また、上記実施例により得られたリポソームは何れも単分散性の高いものであった。
【0078】
(カルセインの内包率の測定方法)
リポソーム水溶液(3mL)全体の蛍光強度(F
total)を分光光度計(U−3310、日本分光株式会社)により測定した。次に0.01M,CoCl
2トリス塩酸緩衝液30μLを加えて外水相に漏出したカルセインの蛍光をCo
2+により消光することで、ベシクル内の蛍光強度(F
in)を測定した。さらに、カルセインを加えないでサンプルと同じ条件でベシクルを作製し、脂質自身が発する蛍光(F
l)を測定した。内包率は下記式より算出した;
内包率E(%) = (F
in−F
l)/(F
total−F
l)×100
【0079】
(シタラビンの内包率の測定方法)
超遠心装置で固形分(リポソーム)を分離(デカント)し、上澄と固形分をそれぞれHPLCで定量した。HPLCカラムとしてVarian Polaris C18-A (3μm, 2x40 mm)を用いてアッセイされた。内包されていない当該化合物と内包されている当該化合物の絶対値から、シタラビンの内包率を算出した。
【0080】
(ミクロンサイズの粒子の数の観察方法)
上記実施例および比較例で得られたリポソーム分散液に残るミクロンサイズの粒子の数を、光学顕微鏡で観察することにより評価した。結果は表1および
図1〜5に示す通りであった。このとき、前述のW/O/Wエマルション由来の多胞リポソームが少しの割合、残存するので、より観察しやすくすることを目的として、多胞リポソームを減らして、単胞リポソームにするために、1日撹拌をし続けたものを用いて、評価した(多胞リポソームがばらばらにならないと(単胞リポソームにならないと)正確なミクロンサイズの粒子の数の差を比較できないため)。
【0081】
【表1】