【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0039】
本発明に係るアワユキセンダングサの抽出物は以下のようにして製造した。
【0040】
1.アワユキセンダングサの抽出物の製造
(1)琉球大学構内にて自生するアワユキセンダングサから採取した種を培土を充填したセルポットに1粒〜5粒ずつ播種し、幼苗まで栽培してから圃場に定植、開花期まで栽培後、根以外の全草を採取した。
(2)全草を平型乾燥機により70℃にて約12時間乾燥させた後、粉砕機で0.5cm〜2.5cm程度に粉砕し、乾燥粉砕物を得た。
(3)乾燥粉砕物4kgを不織布製の袋に入れ、抽出槽に投入後、20Lの水を加えて加熱し、100℃で30分間保持後、抽出槽内の乾燥粉砕物を圧搾して抽出物(原液)を得た。
【0041】
また、本発明に係るテルミナリア・チェブラ果実の抽出物は、熱水抽出物の乾燥粉末(川村通商(株)製ミラボランタンニン)を用いた。
【0042】
また、本発明に係る木酢液は、ウバメガシ原木から紀州備長炭を製造する過程で得られる木酢液(みなべ川森林組合製)を用いた。
【0043】
2.試験用線虫の準備
ミニトマトのネコブセンチュウ被害根を採取し、水で十分洗浄後、被害根に付着した卵のうを医療用メスにて摘出した。摘出した卵のうは、水で湿らせたキムワイプの上に置き、これを少量の水をはったシャーレ内に設置して暗所室温にて静置した。数日毎に、シャーレ内の水に分離した線虫を線虫懸濁液としてパスツールピペットで三角フラスコに移し、パラフィルムなどで蓋をした。この線虫懸濁液は暗室下15℃条件にて冷蔵保管し、2週間以内に実験に供試した。
【0044】
3.試験用線虫懸濁液の密度調整
(1)三角フラスコ中で15℃に保存されている線虫の懸濁液をパスツールピペットを用いて遠沈管に入れ、遠心分離機を用いて、3000rpm条件で3分間遠心分離し、線虫を沈殿させた。
(2)パスツールピペットを用いて上澄みを取り除き、線虫の高密度懸濁液を得た。
(3)この高密度懸濁液をタッチミキサーでよく撹拌した後、ピペットマンを用いて0.1ml採取し、これをプレパラート上に広げた。
(4)光学顕微鏡(40倍)で観察しながら、カウンターを用いてプレパラート上の線虫をすべてカウントし、高密度懸濁液0.1mlあたりの線虫密度を求めた。
(5)必要に応じて蒸留水あるいは、高密度線虫懸濁液を加えて、線虫密度が0.1mlあたり130頭〜140頭の線虫懸濁液を調製した。
【0045】
4.線虫防除(不動化)試験
(1)リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬工業(株)製)、リン酸水素二ナトリウム12水和物(和光純薬工業(株)製)より、それぞれpH7.8のアルカリ性緩衝液とpH5.8の酸性緩衝液を調製した。中性条件としては蒸留水を用いた。
(2)
まず、本発明の参考例1に係る防除剤として、アワユキセンダングサの抽出物(原液)を0.5ml、木酢液を0.025ml秤取して試験管に入れ、ここへ蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液を3.975ml加えて撹拌、溶解させ、これらをそれぞれ
参考例1−ア(中性条件)、
参考例1−イ(アルカリ製条件)、
参考例1−ウ(酸性条件)とした。
(3)また、実施例
1に係る防除剤として、アワユキセンダングサの抽出物(原液)を0.5ml、木酢液を0.025ml、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を0.05g秤取して試験管に入れ、ここへ蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液をそれぞれ3.975ml加えて撹拌、溶解させ、これらをそれぞれ実施例
1−ア(中性条件)、実施例
1−イ(アルカリ製条件)、実施例
1−ウ(酸性条件)とした。
(4)また、実施例
2に係る防除剤として、アワユキセンダングサの抽出物(原液)を0.5ml、木酢液を0.025ml、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物を0.02g秤取して試験管に入れ、ここへ蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液をそれぞれ3.975ml加えて撹拌、溶解させ、これらをそれぞれ実施例
2−ア(中性条件)、実施例
2−イ(アルカリ性条件)、実施例
2−ウ(酸性条件)とした。
(5)一方、アワユキセンダングサの抽出物のみの検討として、比較例1では0.5ml、比較例2では0.125ml、比較例3では0.1mlのアワユキセンダングサの抽出物(原液)を秤取して試験管に入れ、ここへ蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液をそれぞれ比較例1では4ml、比較例2では4.375ml、比較例3では4.4ml加えて撹拌、溶解させ、これらをそれぞれ比較例1−ア(中性条件)、比較例1−イ(アルカリ製条件)、比較例1−ウ(酸性条件)などとした。なお、比較例3は、中性条件の比較例3−アのみ検討した。
(6)また、木酢液のみの検討として、比較例4では0.025ml、比較例5では0.017mlの木酢液を秤取して試験管に入れ、ここへ蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液をそれぞれ比較例4では4.475ml、比較例5では4.483ml加えて撹拌、溶解させ、これらをそれぞれ比較例4−ア(中性条件)、比較例4−イ(アルカリ製条件)、比較例4−ウ(酸性条件)などとした。
(7)また、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物のみの検討として、比較例6では0.05g、比較例7として0.02gのテルミナリア・チェブラ果実の抽出物を秤取して試験管に入れ、ここへ蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液をそれぞれ4.5ml加えて撹拌、溶解させ、これらをそれぞれ比較例6−ア(中性条件)、比較例6−イ(アルカリ製条件)、比較例6−ウ(酸性条件)などとした。
(8)また、比較例8として、蒸留水あるいは、アルカリ性緩衝液あるいは、酸性緩衝液のみをそれぞれ4.5ml入れ、これらをそれぞれ比較例8−ア(中性条件)、比較例8−イ(アルカリ製条件)、比較例8−ウ(酸性条件)などとした。(対照試験)
(9)各試験管にピペットマンを用いて上記の密度調整済み線虫懸濁液を0.5mlずつ加えてタッチミキサーでよく撹拌し、全液量が5.0mlで、その1mlあたりに線虫が130頭〜140頭存在する試験液を調整した。各試験液はパラフィルムで蓋をし、遮光下25℃条件にて静置した。
(10)各試験液はそれぞれ線虫を加えてから2時間後、6時間後、24時間後にタッチミキサーで撹拌し、ピペットマンを用いてその0.3mlをプレパラートに広げ、光学顕微鏡(40倍)にて観察し、動いている(生存)線虫と動かない(不動化)線虫の数をそれぞれカウントし、全線虫のうちの不動化した線虫の割合(不動化率)を求めた。なお、1回の測定においてこの操作を2回繰り返し、その平均値を各試験液の不動化率とした。
【0046】
5.試験結果
ネコブセンチュウにおける防除(不動化)試験結果は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0047】
参考例1のネコブセンチュウに対する防除効果について、中性条件のアと酸性条件のウは、試験開始2時間後から不動化率がそれぞれ約76%、約96%と比較的高かった。また、アルカリ条件のイは、2時間後に約14%、6時間後に30%と徐々に不動化率が向上し、24時間後に100%となった。このことから、アワユキセンダングサの抽出物10%と木酢液0.5%から構成される防除剤を用いることによって、アルカリ性の土壌環境下においては不動化効果がやや低いが、中性および酸性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後には多くのネコブセンチュウが不動化し、作物の根への寄生を効果的に抑制できることが示された。また、処理後のネコブセンチュウは
図1に示すように形態が通直になり、一部は原形質内に気泡が発生していた。
【0048】
また、実施例
1では、中性条件のアと酸性条件のウにおいて、いずれも試験開始2時間後から不動化率がそれぞれ約89%、約91%と高かった。また、アルカリ性条件のイは、2時間後は不動化率が約18%と低いが、6時間後に約83%まで向上した。このことから、アワユキセンダングサの抽出物10%と木酢液0.5%に加え、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物1%から構成される防除剤を用いることによって、中性および酸性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後、アルカリ性の土壌環境下においても6時間後には、高い割合でネコブセンチュウが不動化し、作物の根への寄生をさらに効果的に抑制できることが示された。また、処理後のネコブセンチュウはいずれも
図2に示すように形態が変形し、原形質が収縮していた。
【0049】
また、実施例
2では、中性条件のアにおいて、試験開始2時間後から不動化率が約92%と高かった。また、酸性条件のウも、2時間後に約63%、6時間後に67%、24時間後に89%まで向上した。また、アルカリ条件のイは、2時間後に22%、6時間後に55%と徐々に不動化率が向上し、24時間後にほぼ90%となった。このことから、アワユキセンダングサの抽出物10%と木酢液0.5%に加え、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物0.4%から構成される防除剤を用いることによって、中性および酸性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後、アルカリ性の土壌環境下においては6時間後には、少なくとも半数以上のネコブセンチュウが不動化し、作物の根への寄生を抑制できることが示された。また、処理後のネコブセンチュウはいずれも
図2に示すように形態が変形し、原形質が収縮していた。
【0050】
一方、比較例1では、中性条件のアと酸性条件のウにおいて、いずれも試験開始2時間後の不動化率が約3%、15%と低く、6時間後にそれぞれ100%、約97%まで向上した。しかし、アルカリ性条件のイは、2時間後で約6%、6時間後でも約8%と不動化率が低く、24時間後で約93%まで向上した。このことから、アワユキセンダングサの抽出物10%のみから構成される防除剤では、中性、酸性、アルカリ性、いずれのpHを有する土壌環境下においても、防除剤を処理してから2時間後までの不動化率が非常に低く、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が高いことが示された。
【0051】
また、比較例2では、中性条件のア、アルカリ性条件のイ、酸性条件のウにおいて、いずれも試験開始2時間後、6時間後ともほとんど不動化せず、24時間後でそれぞれ約90%以上に不動化率が向上した。このことから、アワユキセンダングサの抽出物2.5%のみから構成される防除剤では、中性、酸性、アルカリ性、いずれのpHを有する土壌環境下においても、6時間後までの不動化率が非常に低く、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が非常に高いことが示された。
【0052】
また、比較例3では、中性条件においてのみの検討ではあるが、試験開始24時間後までほとんど不動化しなかった。このことから、アワユキセンダングサの抽出物2%のみから構成される防除剤では、少なくとも中性の土壌環境下において、24時間後までほとんど不動化効果を発現せず、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が非常に高いことが示された。
【0053】
また、比較例4では、中性条件のアと酸性条件のウにおいて、いずれも試験開始2時間後から不動化率がそれぞれ100%、約98%と非常に高かった。しかし、アルカリ性条件のイは、24時間後でも約16%しか不動化しなかった。このことから、木酢液0.5%のみから構成される防除剤では、中性および酸性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後には高い防除効果を奏するが、特にアルカリ性の土壌環境下においては、24時間後までの不動化率が低く、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が高いことが示された。
【0054】
また、比較例5では、中性条件のアにおいて、試験開始2時間後で100%不動化し、酸性条件のウは、2時間後で約58%であった。しかし、アルカリ性条件のイは、24時間後でも約15%しか不動化しなかった。このことから、木酢液0.3%のみから構成される防除剤では、中性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後には高い防除効果を奏し、酸性の土壌環境下においても防除剤を処理してから2時間後に半数以上のネコブセンチュウが不動状態になり、防除効果を奏するといえるが、特にアルカリ性土壌環境下においては、24時間までの不動化率が低く、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が高いことが示された。
【0055】
また、比較例6では、中性条件のアにおいて、試験開始2時間後に約45%、6時間後に約70%、24時間後に97%と徐々に不動化率が向上した。しかし、アルカリ条件のイは、2時間後、6時間後とも約24%と不動化率は低く、24時間後に約71%まで向上した。また、酸性条件のウは、24時間でも約38%程度しか不動
化しなかった。このことから、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物1%のみから構成される防除剤では、中性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後には半数程度のネコブセンチュウが不動化状態になり、ある程度の防除効果を奏するといえるが、アルカリ性の土壌環境下においては6時間後まで、酸性の土壌環境下においては24時間後までの不動化率が低く、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が高いことが示された。しかし、処理後のネコブセンチュウはいずれも実施例
1および
2であるアワユキセンダングサの抽出物と木酢液とテルミナリア・チェブラ果実の抽出物から構成された防除剤で処理した場合と同様に、形態が変形し、原形質が収縮していたことから、この防除剤の不動化効果がテルミナリア・チェブラ果実の抽出物の効果に起因していることが示唆された。
【0056】
また、比較例7では、中性条件のアにおいて、試験開始2時間後は約48%が不動化し、24時間後に77%と徐々に不動化率が向上した。しかし、アルカリ性条件のイは、2時間後、6時間後でそれぞれ約12%、約19%と不動化率は低く、24時間後に約50%まで向上した。また、酸性条件のウは、24時間までまったく不動化しなかった。このことから、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物0.4%のみから構成される防除剤では、中性の土壌環境下においては、防除剤を処理してから2時間後に約半数のネコブセンチュウが不動化状態になり、ある程度の防除効果を奏するといえるが、アルカリ性の土壌環境下では、6時間までの不動化率が非常に低く、酸性の土壌環境下でも、24時間後までまったく不動化せず、ネコブセンチュウが植物の根に寄生する可能性が非常に高いといえる。しかし、処理後のネコブセンチュウはいずれも実施例
1および
2であるアワユキセンダングサの抽出物と木酢液とテルミナリア・チェブラ果実の抽出物から構成された防除剤で処理した場合と同様に、形態が変形し、原形質が収縮していたことから、この防除剤の不動化効果がテルミナリア・チェブラ果実の抽出物の効果に起因していることが示唆された。
【0057】
また、比較例8では、中性条件のア、アルカリ性条件のイ、酸性条件のウにおいて、いずれもほとんど不動化しなかった。このことから、用いたネコブセンチュウの活動性に異常がなく、かつ蒸留水、リン酸緩衝液自体のネコブセンチュウに対する影響はほとんどないことが示された。
【0058】
以上の結果から、アワユキセンダングサの抽出物と木酢液とテルミナリア・チェブラ果実の抽出物を有効成分とする防除剤を用いることによって、あらゆるpHを有する土壌環境においても、さらに迅速にネコブセンチュウを防除可能であるといえる。
【0059】
また、本発明における防除剤において、これを構成するアワユキセンダングサの抽出物の濃度は経済性を考慮すると、10%以下であることが望ましく、かつネコブセンチュウに対する迅速な防除効果および各種pHでの土壌環境への適応性能を考慮すると、2.5%以上であることが望ましいといえる。
【0060】
また、木酢液の濃度は、植物体への悪影響を考慮すると、1%以下にすることが望ましく、かつネコブセンチュウに対する迅速な防除効果および各種pHでの土壌環境への適応性能を考慮すると、0.5%以上であることが望ましいといえる。
【0061】
また、テルミナリア・チェブラ果実の抽出物の濃度は、植物体への悪影響を考慮すると、2%未満にすることが望ましく、かつネコブセンチュウに対する迅速な防除効果および各種pHでの土壌環境への適応性能を考慮すると、0.4%以上であることが望ましいといえる。