特許第5649101号(P5649101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649101マイクロ波発生器において用いられる絶縁装置のシールディング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649101
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】マイクロ波発生器において用いられる絶縁装置のシールディング
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   A61B17/36 340
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-204062(P2009-204062)
(22)【出願日】2009年9月3日
(65)【公開番号】特開2010-57923(P2010-57923A)
(43)【公開日】2010年3月18日
【審査請求日】2012年8月23日
(31)【優先権主張番号】12/203,734
(32)【優先日】2008年9月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ. ベーンケ
(72)【発明者】
【氏名】トム イー. マクマニガル
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04229714(US,A)
【文献】 実開昭59−058933(JP,U)
【文献】 実開平05−008933(JP,U)
【文献】 特開昭56−161636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射妨害波を低減するシステムであって、該システムは、
マイクロ波エネルギーを基本周波数で供給するマイクロ波発生器であって、該マイクロ波発生器は、接地に接続された接地端子を含む、マイクロ波発生器と、
内側の伝導体と外側のシースとを含む同軸伝達ケーブルであって、該マイクロ波発生器とマイクロ波エネルギー送達デバイスとの間でマイクロ波エネルギーを伝達する同軸伝達ケーブルと、
該マイクロ波発生器と該同軸伝達ケーブルとの間に接続された絶縁装置であって、該絶縁装置は、該同軸伝達ケーブルを該マイクロ波発生器から電気的に絶縁するように構成され、該絶縁装置は、該マイクロ波発生器と該内側の伝導体との間に接続された第一の絶縁コンデンサーと、該マイクロ波発生器と該外側のシースとの間に接続された第二の絶縁コンデンサーとを含む、絶縁装置と
を備え、
該絶縁装置は、該マイクロ波発生器の該接地端子を該同軸伝達ケーブルに容量結合する、システム。
【請求項2】
前記絶縁装置は、前記マイクロ波発生器と前記同軸伝達ケーブルとを電気的に絶縁する一方で、該マイクロ波発生器と該同軸伝達ケーブルとの間にマイクロ波エネルギーをわたすように構成された絶縁回路基板をさらに含み、該絶縁回路基板は、前記第一の絶縁コンデンサーと前記第二の絶縁コンデンサーとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記絶縁装置は、
マイクロ波発生器接地基準に接続され、前記絶縁回路基板を収容するように構成された接地基準シールドと、
該接地基準シールドを少なくとも部分的に囲み、該接地基準シールドとの間に容量性関係を形成する患者基準シールドと
をさらに含み、
該接地基準シールドおよび該患者基準シールドは、コンデンサーを形成し、該マイクロ波発生器接地基準を前記同軸伝達ケーブルに容量結合するように構成された、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記絶縁装置は、前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間に絶縁障壁をさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間の前記容量結合が選択的に調整可能である、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間の前記容量結合が選択的に調整可能である、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記容量結合は、前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間の重なっている表面積と、該接地基準シールドと該患者基準シールドとの該重なっている部分の間のギャップと、前記絶縁障壁の誘電特性とのうちの一つを変化させることによって、選択的に調整される、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の詳細な説明)
(発明の分野)
(背景)
(1.技術分野)
本開示は、医療処置を実行するシステムおよび方法に関し、医療処置は、エネルギー源からマイクロ波エネルギー送達デバイスへのエネルギーの発生および安全な移送を含む。より具体的には、マイクロ波エネルギーの送達中に所望でない放射妨害波を低減する、絶縁装置を含むマイクロ波エネルギー送達システムが開示される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(2.関連技術の背景)
マイクロ波エネルギーを用いるマイクロ波送達システムおよび切除処置が、マイクロ波エネルギーを標的組織に安全に送達するように設計される。エネルギーを送達するために用いられる機器、エネルギー送達の動作または処置は、例えば、マイクロ波機器のためのFCC規制および規格、またはマイクロ波機器が他の電子機器に干渉しないことを確実にする電気電磁的両立性(EMC)規制および規格などの、多様な政府の規制または規格あるいは工業規制または規格によって規制され得る。工業規格は、例えば、発生器と患者との間の十分な電気的絶縁を提供することなどの、患者の安全に関係し得る。そのようなものとして、マイクロ波エネルギー発生および伝達デバイスは、特に、所望でないエネルギー送達を最小化し、低減するように設計される。
【0003】
電気外科発生器において患者の安全性を確実にするために用いられる一つの一般的な設計実施は、発生器と患者との間に絶縁障壁を作成することである。このことは、発生器出力を接地から絶縁することによって遂行される。絶縁障壁は、例えば、約60Hzにおいて、低インピーダンスを有する変圧器またはコンデンサーのような、多様な一般的に受け入れられた回路によって作成され得る。絶縁障壁を含む実施は、RF周波数でエネルギーを送達するシステムに対して一般的に有効であるが、マイクロ波周波数において信号にエネルギーを送達することは、マイクロ波発生器およびシステム設計者に対して新たな機会を提供する。
【0004】
マイクロ波発生器およびそれらのシステム設計者に対する一つのそのような機会は、マイクロ波発生器が稼動中にEMCに対するFCC規制に合格する必要があることである。基本周波数(すなわち、所望のマイクロ波信号の周波数帯)は、通例、Instrumental Scientific Medical(ISM)帯にあり、問題にはならない。その代わり、EMC問題は、典型的には、例えば、ISM帯を超える基本周波数の調波周波数のような、ISM帯の外側の周波数での意図されないエネルギー放出に関して生じる。
【0005】
基本周波数の調波は、マイクロ波発生器の信号発生器の生成物であり得るか、あるいはマイクロ波発生器回路および/またはマイクロ波エネルギー送達回路の中の多様な位置に誘導され得る。例えば、調波は、時として、絶縁障壁の生成物であり、絶縁障壁の生成物は、発生器を患者から絶縁し、患者の安全性を提供するように意図される。例えば、マイクロ波送達システムにおける絶縁障壁は、同軸シールドのフローティング(floating)(すなわち、同軸シールドを発生器の接地に取り付けない実施)を含み得る。マイクロ波エネルギーは、同軸ケーブルのシールドに沿って流れ得、同軸ケーブルがアンテナとして放射することをもたらし得る。このアンテナ効果は、発生器の調波を増幅させ得、一つ以上のEMV規格に不合格となることをもたらし得る。
【0006】
本開示は、マイクロ波エネルギーの送達中に所望でないEMCを低減する、絶縁装置を含むシステムを説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(概要)
本開示は、概して、医療処置中に所望でない放射妨害波を低減するシステムおよび絶縁装置に関する。より具体的には、本開示の一実施形態において、システムは、マイクロ波エネルギーを基本周波数で供給するマイクロ波発生器と、マイクロ波発生器とマイクロ波エネルギー送達デバイスとの間でマイクロ波エネルギーを伝達する同軸伝達ケーブルと、マイクロ波発生器と同軸伝達ケーブルとの間に接続された絶縁装置とを含む。絶縁装置は、同軸伝達ケーブルをマイクロ波発生器から電気的に絶縁し、マイクロ波発生器接地を同軸伝達ケーブルに容量結合するように構成される。
【0008】
絶縁装置は、マイクロ波発生器と同軸伝達ケーブルとを電気的に絶縁し、同時にそれらの間にマイクロ波エネルギーを送るように構成された絶縁回路基板をさらに含み得る。一実施形態において、接地基準シールドは、マイクロ波発生器接地基準に接続され得、絶縁回路基板を収容するように構成され得る。別の実施形態において、絶縁障壁は、接地基準シールドと患者基準シールドとの間に位置決めされ得る。
【0009】
さらに別の実施形態において、接地基準シールドおよび患者基準シールドは、コンデンサーを形成し得、マイクロ波発生器接地基準を同軸伝達ケーブルに容量結合し得る。接地基準シールドと患者基準シールドとの間の容量結合は、調整可能であり得る。接地基準シールドと患者基準シールドとの間の重なっている表面積を変化させることによって、接地基準シールドと患者基準シールドとの重なっている部分どうしの間のギャップ、または絶縁障壁の誘電特性は変化し得る。
【0010】
本開示に従ったさらに別の実施形態において、絶縁装置は、絶縁回路を有する絶縁回路基板、およびマイクロ波発生器と同軸伝達ケーブルとの間に絶縁を提供するシールド結合を含む。絶縁回路は、マイクロ波発生器と同軸伝達ケーブルとを容量結合する。絶縁回路基板は、マイクロ波発生器と同軸伝達ケーブルとの間にエネルギーを基本周波数で送る。シールド結合は、マイクロ波発生器の接地基準に接続された接地基準シールド、および同軸伝達ケーブルの外側のシースに接続された患者基準シールドを含む。シールド結合は、絶縁回路基板を収容するように構成される。接地基準シールドおよび患者基準シールドは、容量結合され、シールド結合コンデンサーを形成する。シールド結合コンデンサーは、同軸伝達ケーブルに対して接地基準を提供する。
【0011】
さらに別の実施形態において、絶縁装置は、接地基準シールドと患者基準シールドとの間に絶縁障壁を含み得る。接地基準シールドと患者基準シールドとの間の容量結合は、接地基準シールドと患者基準シールドとの間で重なっている表面積、接地基準シールドと患者基準シールドとの重なっている部分どうしの間のギャップ、または絶縁障壁の誘電特性を変化させることによって調整可能であり得る。
【0012】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
放射妨害波を低減するシステムであって、該システムは、
マイクロ波エネルギーを基本周波数で供給するマイクロ波発生器と、
該マイクロ波発生器とマイクロ波エネルギー送達デバイスとの間でマイクロ波エネルギーを伝達する同軸伝達ケーブルと、
該マイクロ波発生器と該同軸伝達ケーブルとの間に接続された絶縁装置であって、該絶縁装置は、該同軸伝達ケーブルを該マイクロ波発生器から電気的に絶縁するように構成された、絶縁装置と
を備え、
該絶縁装置は、該マイクロ波発生器接地を該同軸伝達ケーブルに容量結合する、システム。
(項目2)
前記絶縁装置は、前記マイクロ波発生器と前記同軸伝達ケーブルとを電気的に絶縁する一方で、該マイクロ波発生器と該同軸伝達ケーブルとの間にマイクロ波エネルギーをわたすように構成された絶縁回路基板をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目3)
前記絶縁装置は、
マイクロ波発生器接地基準に接続され、前記絶縁回路基板を収容するように構成された接地基準シールドと、
該接地基準シールドを少なくとも部分的に囲み、該接地基準シールドとの間に容量性関係を形成する患者基準シールドと
をさらに含み、
該接地基準シールドおよび該患者基準シールドは、コンデンサーを形成し、該マイクロ波発生器接地基準を前記同軸伝達ケーブルに容量結合するように構成された、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目4)
前記絶縁装置は、前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間に絶縁障壁をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目5)
前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間の前記容量結合が選択的に調整可能な、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目6)
前記容量結合は、前記接地基準シールドと前記患者基準シールドとの間の重なっている表面積と、該接地基準シールドと該患者基準シールドとの該重なっている部分の間のギャップと、前記絶縁障壁の誘電特性とのうちの一つを変化させることによって、選択的に調整される、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
【0013】
(開示の要旨)
(要旨)
放射妨害波を低減するシステムであって、システムは、マイクロ波エネルギーを基本周波数で供給するマイクロ波発生器と、マイクロ波発生器とマイクロ波エネルギー送達デバイスとの間にマイクロ波エネルギーを伝達する同軸伝達ケーブルと、マイクロ波発生器と同軸伝達ケーブルとの間に接続された絶縁装置を含む。絶縁装置は、同軸伝達ケーブルをマイクロ波発生器から電気的に絶縁し、マイクロ波発生器接地を同軸伝達ケーブルに容量結合するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の実施形態に従った、絶縁装置を含むマイクロ波エネルギー送達の機能ブロック図である。
図2A図2Aは、従来のマイクロ波エネルギー送達回路の電気接続図である。
図2B図2Bは、図2Aの単純化された電気接続図の多様な点における従来のマイクロ波エネルギー送達回路からの電気的波形の図である。
図3A図3Aは、本開示の絶縁装置を含むマイクロ波エネルギー送達回路の単純化された電気接続図である。
図3B図3Bは、図3Aの単純化された電気接続図の多様な点における電気的波形の図である。
図4図4は、本開示の実施形態に従った、絶縁装置の透視図である。
図5図5は、図4の絶縁装置の分解組立図である。
図6図6は、マイクロ波エネルギー送達回路における、図4の絶縁装置の電気接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態の説明)
(詳細な説明)
本開示の詳細な実施形態が、本明細書において説明される。しかしながら、開示された実施形態は、多様な形態において実施され得る開示の単なる例示に過ぎないことが理解されるべきである。したがって、本明細書で開示される具体的な構造的および機能的な詳細は、限定的なものとしてではなく、単に、特許請求の範囲のベースとして、そして当業者に対し本開示を、実質的に任意の適切に詳述された構造において多様に利用することを教示するための代表的なベースとして、解釈されるべきである。
【0016】
図1を参照すると、本開示の実施形態を利用している、マイクロ波発生器100、マイクロ波エネルギー送達デバイス110、同軸伝達ケーブル120、および絶縁装置200を含むマイクロ波エネルギー送達システムは、概して10のようなマイクロ波送達システムと呼ばれる。絶縁装置200は、マイクロ波発生器100とマイクロ波エネルギー送達デバイス110との間で接続される。本開示の一実施形態において、絶縁装置200は、マイクロ波発生器100の同軸コネクター100aおよび同軸伝達ケーブル120に接続する。絶縁装置200はまた、マイクロ波エネルギー伝達回路における他の多様な位置に配置され得る。
【0017】
マイクロ波エネルギー送達デバイス110は、図1に図示されるように、同軸伝達ケーブル120を含む(すなわち、同軸伝達ケーブル部分120は、マイクロ波エネルギー送達デバイス110に永続的に取り付けられる)。代替として、同軸伝達ケーブル部分120は、マイクロ波エネルギー送達デバイス110および絶縁装置200と分離され得る。さらに別の実施形態において、絶縁装置200は、(図示されていない)同軸伝達ケーブル部分を含み得る。
【0018】
さらに別の実施形態において、マイクロ波エネルギー伝達経路125は、絶縁装置200の伝達経路と、同軸伝達ケーブル120と、ハンドル116(アンテナ118に近位のマイクロ波エネルギー送達装置110の伝達部分)とを含む。マイクロ波エネルギー伝達経路125の長さは、マイクロ波発生器100によって発生するエネルギーの基本周波数の少なくとも一つのパラメーターに関係している。
【0019】
図1に図示されるように、マイクロ波エネルギー送達デバイスは、組織に貫入するように構成されたとがった先端を有する経皮デバイスを含む。絶縁装置200はまた、カテーテル挿入可能なマイクロ波エネルギー送達デバイス、皮膚表面治療マイクロ波エネルギー送達デバイス、および展開可能なマイクロ波エネルギー送達デバイスまたはマイクロ波エネルギーを組織180に送達するように構成された他の適切なデバイスとともに用いられ得る。
【0020】
図2Aは、本開示の絶縁装置のない、従来のマイクロ波エネルギー送達回路20の電気接続図である。回路20は、マイクロ波エネルギー源「VRF」、発生器絶縁デバイス130(すなわち、変圧器)、および電気負荷120(すなわち、(図示されていない)マイクロ波エネルギー送達デバイスに接続された同軸伝達ケーブル120)を含む。図2Aにおいて、そして本明細書で説明されるように、変圧器130は、適切な発生器絶縁デバイスの単なる例としてのみ示されている。発生器絶縁デバイス130は、直接の電気的接触なしに、例えば誘導結合、容量結合、またはアンテナ間アンテナのエネルギー移送(ワイヤレス)のような、第一の電気回路(マイクロ波エネルギー源VRF)から第二の電気回路(電気負荷120)にエネルギーを移送する、任意の適切なデバイスであり得る。
【0021】
図2Bは、図2Aの単純化された電気接続図の中の多様な点における電気的波形の図である。マイクロ波発生器は、最高最低振幅、位相および基本周波数の一般的特徴を有する発生器絶縁デバイス130の一次側「P」に印加される信号VRFを発生させる。VRFは、接地「G」で基準が取られ、発生器絶縁デバイス130を介して発生器絶縁デバイス130の二次側「S」に変形され、それによって第二の電気回路の「V1」および「V2」において信号を作成する。V1およびV2は、VRFの同じ基本周波数を有し、式:
VRF=(V1−V2)/IDEff
によって関係づけられ、この式で定数「IDEff」は、回路20におけるシステム損失を表す。V1およびV2のそれぞれの最高最低振幅は、VRFの最高最低振幅の約半分である。
【0022】
図2Aおよび図2Bに図示されるように、絶縁デバイス130の二次的Sに取り付けられた接地されていない同軸伝達ケーブル120は、内側の伝導体122上で電圧の半分を保持し、外側のシース124上で電圧の半分を保持する。外側のシース124に印加されるこの電圧信号V2は、エネルギーが同軸伝達ケーブル120から放射され、それによって望まれない過剰な放射を生成することをもたらし得る。加えて、外側のシース124上の信号V2を保持することは、結果として定在波の発生および基本周波数の望まれない調波の発生を生じ得る。そのようなものとして、図1のマイクロ波発生器100、伝達経路125またはマイクロ波エネルギー送達デバイス110は、FCCによって設定された放射制限に違反し得、また結果として外側のシース124と接触する材料または組織の所望でない加熱を生じ得る。
【0023】
図3Aは、本開示の一実施形態に従った、絶縁装置200を有するマイクロ波エネルギー送達回路30の電気接続図である。回路は、マイクロ波エネルギー源VRF、発生器絶縁デバイス130(すなわち、変圧器)、ならびに電気負荷120(すなわち、(図示されていない)マイクロ波エネルギー送達デバイスに接続された同軸伝達ケーブル120)および絶縁装置200を含む。絶縁装置200は、本明細書に説明され、概略図において「C1」として図示されるような本開示の特性を示す回路を含む。絶縁装置200内の回路C1の静電容量値および特性は、回路C1がマイクロ波発生器100の基本周波数において低インピーダンスを有し、低周波数において高インピーダンスを有するように、十分に寸法設定される。
【0024】
回路30の絶縁装置200によって、基本周波数におけるV2において二次側Sは、接地Gに容量結合される。図3Bは、VRFおよびV1の電気的波形の図である。V2は、接地電位Gにあり、したがって、図3Bに図示されていない。V1は、VRFに対して位相が180度ずれ、大きさは、式:
VRF=V1/IDEff
によって関係づけられ、この式で定数「IDEff」は、回路30におけるシステム損失を表す。そのようなものとして、V1の各々の最高最低振幅は、VRFの最高最低振幅にほぼ等しく、マイクロ波信号の大半は、同軸伝達ケーブル120の内側の伝導体122上で保持される。
【0025】
絶縁装置200は、同軸の外側のシース124に接地電位に対するAC基準点を提供し、そうして同軸伝達ケーブルの放射信号を低減する。V2は、接地電位Gに容量結合され、V2における電圧は、実質的にゼロである。
【0026】
図4および図5は、本開示の実施形態に従った、絶縁装置200の透視図である。絶縁装置200は、接地基準シールド240と、絶縁装置回路基板245と、シールドコネクター250と、発生器側コネクター265と、患者基準シールド270とを含む。
【0027】
接地基準シールド240は、一つ以上の部分に接続された上側シールド240aおよび下側シールド240bを含み得る。上側シールド240aおよび下側シールド240bは、患者基準シールド270と容量性関係を形成することが可能な適切な伝導性材料で形成され得る。接地基準シールド240と患者基準シールド270との間の容量性関係は、本明細書において以下でより詳細に説明される。
【0028】
上側シールド240aおよび下側シールド240bは、例えばピン、リベット、ファスナー、ねじまたはボルトのような、一つ以上の機械的コネクター240cによって、または例えば圧縮接続、ヒンジ接続、溶接接続またはプレスばめ接続のような、適切な接続によって接続され得る。代替として、上側シールド240aおよび下側シールド240bは、例えばある側にヒンジ接続、第二の側にロッキング機構またはコネクターというような、接続手段の組み合わせを有し得る。接地基準シールド240と患者基準シールド270とが両者の間で所望の容量性関係を形成する場合には、適切なアセンブリーが使用され得る。
【0029】
上側シールド240aおよび下側シールド240bは、互いに電気通信し合う。図4に図示されるように、機械的接続240cは、上側シールド240aと下側シールド240bとの間に適切な電気接続を提供し得る。別の実施形態において、上側シールド240aおよび下側シールド240bは、発生器側コネクター265を介して電気的に接続され得る。
【0030】
患者基準シールド270は、例えば、ねじ溝を付けられたシールドコネクター取り付けナット260のような適切なコネクターによって、シールドコネクター250に接続される。例えば、プレスばめ接続、スロットばめ接続、ロッキング接続または溶接接続のような、任意の他の適切な接続が用いられ得る。
【0031】
患者基準シールド270、シールドコネクター250および同軸伝達ケーブル220の外側のシース224は、互いに電気的な通信を行う。取り付けナット260は、患者基準シールド270とシールドコネクター250との間に適切な接続を提供し得る。同軸伝達ケーブル220の外側のシース224は、例えばねじ溝を付けられた接続またはプレスばめ接続のような適切な接続によって、シールドコネクター250に接続し得る。任意の他の適切な接続が、シールドコネクター250と、患者基準シールド270と、外側のシース224との間に適切な電気接続を提供する場合には、任意の他の適切な接続が用いられ得る。
【0032】
患者基準シールド270は、患者基準シールド270と接地基準シールド240との間に静電容量のギャップを形成する、接地基準シールド240の少なくとも一部分を少なくとも部分的に囲むように構成される。ギャップは、患者基準シールド270と接地基準シールド240との間に位置決めされる絶縁障壁275の厚さによって制御される。
【0033】
絶縁障壁275は、患者基準シールド270および/または接地基準シールド240の一つ以上の表面に隣接して配置されるか、またはそれらの上に形成される層(または積層板)として構成され得る。例えば、絶縁障壁275は、商標NOMEX(登録商標)の下でDuPontによって販売されている誘電性ペーパー(dielectric paper)のような誘電性ペーパーであり得る。誘電性ペーパーは、組み立ての前または組み立て中に、患者基準シールド270の内側の表面に印加され得るか、または隣接して位置決めされ得る。組み立ての後に、誘電性ペーパーは、患者基準シールド270の内側の表面と接地基準シールド240の外側の表面との間に、最小限の隔たりまたは間隔を提供する。
【0034】
絶縁障壁275は、例えば、RF−35 High Performance Laminateの製品ラインの下でTACONICによって販売されている有機セラミック積層板のような積層板であり得る。RF−35は、適切な剥離強度、低吸湿性、および低い散逸率を提供し、それによって周波数による位相のずれを最小化する。RF−35は、織布およびセラミックを含み得、絶縁装置の一つ以上の表面にコーティングされ得る。
【0035】
さらに別の実施形態において、絶縁障壁275は、空気であり得る。患者基準シールド270の内側の表面と接地基準シールド240の外側の表面との隔たりの距離は、所望の隔たりの距離を提供する(示されていない)複数の絶縁性オフセットによって維持され得る。
【0036】
絶縁装置200の多様な特性は、患者基準シールド270と接地基準シールド240との間の伝導性関係に依存する。微小な隔たりの距離によって隔てられた患者基準シールド270と接地基準シールド240とは、平行板コンデンサーを形成し、静電容量は、対向し合うシールド240、270の表面の面積および絶縁障壁275の透磁率に比例し、シールド240、270の間の距離に反比例する。
【0037】
平行板コンデンサーの静電容量は、
静電容量=(ε×A)/d
に等しく、この式で「ε」は、絶縁障壁275の透磁率であり、「A」は、対向し合うシールド240、270の面積であり、「d」は、シールド240、270の間の間隔である。
【0038】
そのようなものとして、所望の静電容量は、重なっている表面の面積と、絶縁障壁275の誘電特性と、二つの対向し合うシールド240、270の間のギャップとのうちの一つ以上を変化させることによって取得され得る。
【0039】
本開示のさらに別の実施形態において、絶縁装置200の静電容量は、調整可能であり得る。一実施形態において、(示されていない)ギャップ調整機構が、患者基準シールド270に対する接地基準シールド240の位置を変化させ、それによってそれらの間のギャップを増加または減少させ得る。(示されていない)ギャップ調整機構は、ギャップを動的にまたは手動で変え得る。マイクロ波発生器がエネルギー送達中に基本周波数を変化させる場合には、動的調整が必要であり得る。組み立て中に絶縁装置200を較正するために、手動の調整が用いられ得る。
【0040】
絶縁装置200の静電容量は、接地基準シールド240と患者基準シールド270との間の重なりを変化させることによって調整され得る。(示されていない)重なり調整機構は、シールド240、270を互いに対して動的にまたは手動でのいずれかで再位置決めし得る。
【0041】
絶縁装置200の静電容量は、絶縁障壁275の誘電特性を変えることによって、または絶縁障壁のために用いられる材料のタイプを変えることによって調整され得る。
【0042】
絶縁回路基板245は、絶縁装置200の接地基準シールド240の中に収容される。絶縁回路基板245は、上記で論じられたように、(示されていない)マイクロ波発生器と同軸伝達ケーブル220との間に絶縁を提供するように構成された回路を含み得る。
【0043】
図6は、図4の絶縁装置および図1のマイクロ波エネルギー送達システムの電気接続図である。発生器側コネクター265に接続された接地基準シールド240と、同軸シース224に接続された患者基準シールド270との隣接する表面は、シールド結合コンデンサー「SC1」を形成する。絶縁回路基板245は、第一および第二の絶縁コンデンサー「C1」および「C2」をそれぞれ含み、第一および第二の絶縁コンデンサー「C1」および「C2」は、本明細書において上記で論じられたように、マイクロ波発生器100と同軸伝達ケーブル220との間に電気的絶縁を提供する。
【0044】
使用に際して、マイクロ波信号は、発生器側コネクター265に供給される。マイクロ波発生器コネクター265の内側の伝導体265aは、第一の絶縁コンデンサーC1に接続する。マイクロ波発生器コネクター265の外側の伝導体265bは、第二の絶縁コンデンサーC2と、シールド結合コンデンサーSC1の接地基準シールド240とに接続する。マイクロ波エネルギー送達システムの基本周波数において、第一および第二の絶縁コンデンサーC1、C2は、短絡として考えられ、シールドコネクター250の内側の伝導体250aと外側の伝導体250bとのそれぞれに、そして同軸伝達ケーブル220の内側の伝導体222と外側のシース224に基本周波数の信号を送る。同軸伝達ケーブルの外側のシース224に接続された患者基準シールド270と、接地基準シールド240とは、シールド結合コンデンサーSC1を形成し、それによって同軸伝達ケーブル220の接地基準を提供する。
【0045】
本開示の範囲から逸脱することなく多様な変更が上記の構造において行われ得るので、上記の説明に含まれるすべての事柄は、例示的な意味で解釈され、限定的な意味では解釈されないことが意図されている。以下の特許請求の範囲によって規定されるように、本開示のいくつかの目的が達成され、他の有利な結果が獲得されることが理解される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6