(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、
図11及び
図12に示すごとく、上下の外壁材91・92の接合部である横目地部93において、局所的に緑色の藻95が発生して汚れるという事象が確認された。この事象を検証したところ、外壁材91の裏面91bに発生した結露水90が、外壁材91・92の隙間94に浸入し、この隙間94内において滞留、或いは、外壁材92の表面92aに流出し、その水によって藻95が発生することが原因の一つと考えられた。なお、
図12においては、外壁材91・92の表面91a・92a(室外側の外装面)が現れており、各外壁材91・92は、留付具96・96によって胴縁などの躯体側に留め付け固定されるものとなっている。
【0006】
或いは、別の事象では、同様に、横目地部において局所的に色のついた汚れが確認されることがあったが、この汚れは、施工途中において外壁材の裏面に雨水が降りかかることによって、外壁材の汚れや、胴縁から染み出た色素によるものであった。例えば、緑色を呈する防蟻剤が胴縁に施されていたケースでは、施工途中において胴縁が雨にぬれた際に、緑色がかった汚れが外壁材の表面に発生するという事象が確認された。
【0007】
本発明の発明者らは、このような外壁材の裏面側から表面側への水の流れ、及び、表面側での横目地部の汚れの発生に着目したものであるが、従来は、特許文献1にも開示されるように、外壁材の表面側から裏面側への雨水などの浸入についてのみ着目したものであった。
【0008】
特に、
図11に示されるように、上側の外壁材91の裏合抉部91Aと、下側の外壁材92の表合抉部92Aによって、合抉接合がなされる場合には、隙間94が狭く形成されるため、毛細管現象によって隙間94へ結露水などが浸入しやすい状況となることが懸念される。また、特許文献1に開示されるような構成においても、外壁材の裏面側の結露水などが上下の外壁材の隙間に滞留し、凍害などによって外壁材が劣化し易い状況となってしまうことが懸念される。
【0009】
以上の問題は、全ての施工において発生するものではないが、施工地域や、施工途中の天候など、さまざまな条件が重なるなどすると、問題が発生する可能性が高まることが懸念されるため、この可能性を低減するための新たな方策が求められることになる。
【0010】
そこで、本発明は、以上の問題に鑑み、外壁材の横目地部における裏面側での水の浸入を防止するための新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1に記載のごとく、上下に隣り合う上側外壁材と、下側外壁材の接合構造であって、前記上側外壁材の下部に設けた裏合抉部と、前記下側外壁材の上部に設けた表合抉部にて合抉接合され、前記裏合抉部と前記表合抉部には、それぞれ留付具の爪部を係止させるための下方向凸部、上方向凸部が設けられ、前記下方向凸部と前記上方向凸部の裏側において、前記下方向凸部と前記上方向凸部の間に空間
が形成され、前記下方向凸部の下面と前記上方向凸部の上面がそれぞれ水平に形成されており、前記下側外壁材の前記上方向凸部の上面の一部が裏側に向かって下がることで前記空間が形成される、建物外壁材の接合構造とする。
【0014】
また、請求項
2に記載のごとく、前記空間を形成するために、前記上方向凸部の裏側面最上点と、前記下方向凸部の裏側面最下点との距離を、前記上方向凸部と前記下方向凸部の間に形成される隙間の距離よりも大きく確保するものであって、前記上方向凸部の裏側面最上点の上下位置が、前記上方向凸部の最上点の上下位置よりも低い位置に設定される、
こととするものである。
【0015】
また、請求項
3に記載のごとく、
上下に隣り合う上側外壁材と、下側外壁材の接合構造であって、前記上側外壁材の下部に設けた裏合抉部と、前記下側外壁材の上部に設けた表合抉部にて合抉接合され、前記裏合抉部と前記表合抉部には、それぞれ留付具の爪部を係止させるための下方向凸部、上方向凸部が設けられ、前記下方向凸部と前記上方向凸部の裏側において、前記下方向凸部と前記上方向凸部の間に空間が形成され、前記空間を形成するために、前記上方向凸部の裏側面最上点と、前記下方向凸部の裏側面最下点との距離を、上方向凸部と下方向凸部の間に形成される隙間の距離よりも大きく確保するものであって、前記上方向凸部の裏側面最上点の外壁厚み方向位置が、前記下方向凸部の裏側面最下点の外壁厚み方向位置よりも、表側の位置に設定される、こととするものである。
【0016】
また、請求項
4に記載のごとく、
上下に隣り合う上側外壁材と、下側外壁材の接合構造であって、前記上側外壁材の下部に設けた裏合抉部と、前記下側外壁材の上部に設けた表合抉部にて合抉接合され、前記裏合抉部と前記表合抉部には、それぞれ留付具の爪部を係止させるための下方向凸部、上方向凸部が設けられ、前記下方向凸部と前記上方向凸部の裏側において、前記下方向凸部と前記上方向凸部の間に空間が形成され、前記空間を形成するために、前記上方向凸部の裏側面最上点と、前記下方向凸部の裏側面最下点との距離を、前記上方向凸部と下方向凸部の間に形成される隙間の距離よりも大きく確保するものであって、前記下側外壁材の裏側面が、前記上側外壁材の裏側面よりも表側に配置されることによって、前記上方向凸部の裏側面最上点の外壁厚み方向位置が、前記下方向凸部の裏側面最下点の外壁厚み方向位置よりも、表側の位置に設定される、こととするものである。
【0017】
また、請求項
5に記載のごとく、
上下に隣り合う上側外壁材と、下側外壁材の接合構造であって、前記上側外壁材の下部に設けた裏合抉部と、前記下側外壁材の上部に設けた表合抉部にて合抉接合され、前記裏合抉部と前記表合抉部には、それぞれ留付具の爪部を係止させるための下方向凸部、上方向凸部が設けられ、前記下方向凸部と前記上方向凸部の裏側において、前記下方向凸部と前記上方向凸部の間に空間が形成され、前記空間を形成するために、前記爪部には、前記下方向凸部を下側から支えるための上側挿入部と、前記上方向凸部の上方であって上側挿入部の下方に配置される下側挿入部が設けられる、こととするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
即ち、施工後において結露などによって外壁材の裏側面を水滴が流れ落ちる状況や、施工途中において雨水などが外壁材の裏側面に降りかかり水滴となって流れ落ちる状況が生じた場合においても、下方向凸部と上方向凸部の間の隙間内への水滴の浸入は防がれることから、この水滴が隙間に入った状態で滞留することや、或いは、下側外壁材の表側面へと染み出して汚れが生じるといった不具合の発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至
図10は、本発明の各実施例について示すものである。
これらの実施例に開示されるように、本発明は、
上下に隣り合う上側外壁材と、下側外壁材の接合構造であって、
前記上側外壁材の下部に設けた裏合抉部と、前記下側外壁材の上部に設けた表合抉部にて合抉接合され、
前記裏合抉部と前記表合抉部には、それぞれ留付具の爪部を係止させるための下方向凸部、上方向凸部が設けられ、
前記下方向凸部と前記上方向凸部の裏側において、前記下方向凸部と前記上方向凸部の間に空間を形成する、建物外壁材の接合構造とするものである。
なお、「下方向凸部と上方向凸部の裏側」とは、それぞれ、上側外壁材と下側外壁材の裏側面の側の部位をいうものである。
【0022】
また、前記空間は、前記上側外壁材の裏側面を伝って流れ落ちる水滴が、前記空間を跨いでしまうことを防げるように構成されるものとする。
【0023】
これにより、施工後において結露などによって外壁材の裏側面を水滴が流れ落ちる状況や、施工途中において雨水などが外壁材の裏側面に降りかかり水滴となって流れ落ちる状況が生じた場合においても、下方向凸部と上方向凸部の間の隙間内への水滴の浸入は防がれることから、この水滴が隙間に入った状態で滞留することや、或いは、下側外壁材の表側面へと染み出して汚れが生じるといった不具合の発生を防止できる。
以下、実施例を用いて詳細について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1(a)(b)、及び、
図2に示すごとく、本実施例1では、上下に隣り合う上側外壁材10と、下側外壁材20の接合構造であって、上側外壁材10の下部に設けた裏合抉部11と、下側外壁材20の上部に設けた表合抉部21にて合抉接合され、裏合抉部11と表合抉部21には、それぞれ留付具30の爪部31を係止させるための下方向凸部12、上方向凸部22が設けられ、前記下方向凸部12と前記上方向凸部22の裏側において、下方向凸部12と上方向凸部22の間に空間Mを形成するために、上方向凸部22の裏側面最上点20dと、下方向凸部12の裏側面最下点10dとの距離H(
図2)を、上方向凸部22と下方向凸部12の間に形成される隙間Sの距離Hs(
図2)よりも大きく確保するものであって、上方向凸部22の裏側面最上点20dの上下位置P20が、上方向凸部22の最上点の上下位置P22よりも低い位置に設定される、こととするものである。
【0025】
また、
図3(a)に示すごとく、前記空間Mは、前記上側外壁材10の裏側面10bを伝って流れ落ちる水滴Wが、前記空間Mを跨いでしまうことを防げるように構成されるものとする。
【0026】
以下詳細について説明すると、
図1(a)に示すごとく、上側外壁材10は、表側面10aと裏側面10bを有する板状の部材であって、裏側面10bを切欠くことによって、裏合抉部11が形成されている。
【0027】
また、
図1(a)に示すごとく、裏合抉部11は、裏側面10bと、裏側面10bの最も低い位置にある裏側面最下点10dから表側に伸びる裏側下面11dと、裏側下面11dの表側端部から表側方向斜め上に伸びる傾斜面11kと、傾斜面11kの表側端部から表側に伸びる天面11fと、天面11fの表側端部から下方に伸びる縦壁面11hと、縦壁面11hの最下点から表側面最下点10mに伸びる表側下面11vと、を有して構成されている。
【0028】
また、
図1(a)に示すごとく、裏合抉部11において、裏側面10bと、裏側下面11dと、傾斜面11kの三つの面によって、下側に凸の形状をなす下方向凸部12が形成されている。この下方向凸部12は、
図1(b)に示すごとく、上側外壁材10の横幅方向(
図1の紙面と直交する方向)の数箇所において、留付具30の爪部31に係止されることとしている。
【0029】
また、
図1(a)に示すごとく、下側外壁材20は、表側面20aと裏側面20bを有する板状の部材であって、表側面20aを切欠くことによって、表合抉部21が形成されている。
【0030】
また、
図1(a)に示すごとく、表合抉部21は、裏側面20bと、裏側面最上点20dから表側方向斜め上に伸びる裏側傾斜面21zと、裏側傾斜面21zの表側最上点21yから表側に伸びる裏側上面21dと、裏側上面21dの表側端部から表側方向斜め下に伸びる傾斜面21kと、傾斜面21kの表側端部から下方に伸びる縦壁面21hと、縦壁面21hの最下点から表側面最上点20mに伸びる表側上面21vと、を有して構成されている。また、縦壁面21hには、下側外壁材20の表側から表側上面21vに浸入した水を止水するための止水材21m(止水用フォームメルトなど)が設けられる。
【0031】
また、
図1(a)に示すごとく、表合抉部21において、裏側面20bと、裏側傾斜面21zと、裏側上面21dと、傾斜面21kの四つの面によって、上側に凸の形状をなす上方向凸部22が形成されている。この上方向凸部22は、
図1(b)に示すごとく、下側外壁材20の横幅方向(
図1の紙面と直交する方向)の数箇所において、留付具30の爪部31に係止されることとしている。
【0032】
また、
図1(b)に示すごとく、上側外壁材10の傾斜面11kと、下側外壁材20の傾斜面21kには、それぞれ、留付具30の爪部31の傾斜面部32・33に対向するようになっており、上側外壁材10、下側外壁材20の面外方向へのズレが規制されるようになっている。また、留付具30は、その固定板部37が図示せぬ胴縁や柱などの躯体に対して固定されることとしている。
【0033】
また、
図1(a)、及び、
図2に示すごとく、下側外壁材20の上方向凸部22における裏側面20bの最上部、つまりは、裏側傾斜面21zと裏側面20bの境界部に位置する点は、裏側面最上点20dとして特定される。また、この裏側面最上点20dの上下位置P20は、裏側上面21dよりも、低い位置に設定されるようになっている。本実施例1では、裏側上面21dの上下位置P22が、上方向凸部22の最上点に位置することとしており、これにより、裏側面最上点20dが上方向凸部22の最上点よりも低い位置に設定されるようになっている。
【0034】
また、
図1(a)、及び、
図2に示すごとく、本実施例1では、裏側傾斜面21zによって、裏側面最上点20dの上下位置P20が、上方向凸部22の最上点の上下位置P22よりも低い位置に設定されることにより、下方向凸部12と上方向凸部22の間に空間Mが形成されるようになっている。また、上方向凸部22と下方向凸部12の間に形成される隙間Sの距離Hs(
図2)は、裏側下面11dと裏側上面21dの間の距離であって、
図1(b)に示すごとく、隙間Sに挿入される留付具30の爪部31の水平面部34の上下位置によって規定されることになる。
【0035】
以上のようにして、
図2に示すごとく、上方向凸部22の裏側面最上点20dと、下方向凸部12の裏側面最下点10dとの距離Hを、上方向凸部22と下方向凸部12の間に形成される隙間Sの距離Hsよりも大きく確保できるようになっている。
【0036】
そして、
図3(a)に示すごとく、空間Mが存在することによって、上側外壁材10の裏側面10bを伝う水滴Wが、上側外壁材10の裏側下面11dと下側外壁材20の裏側上面21dの間の隙間Sに浸入することを防止することができる。
【0037】
仮に、
図3(b)に示すごとく、空間M(
図3(a))が存在せず、上方向凸部22Bの裏側面最上点20Bdが、下方向凸部12Bの裏側面最下点10Bdに近接する構成である場合には、裏側面10Bbを伝って裏側面最下点10Bdに到達した水滴Wは、裏側面最下点10Bdと裏側面最上点20Bdの間の隙間SBを一時的に跨ぐ状況となり、さらに、毛細管現象によって、隙間SB内へと浸入することになる。そして、隙間SB内へと浸入した水滴Wは、表側上面21Bvに滞留して外壁材の劣化(凍害など)に影響を与えることや、或いは、下側外壁材20Bの表側面20Baへと染み出し、この染み出した水分によって藻が繁殖するなどして、汚れYが生じることになる。
【0038】
一方、
図3(a)に示すごとく、空間Mが存在することによれば、上方向凸部22の裏側面最上点20dが、下方向凸部12の裏側面最下点10dから離された構成となるため、裏側面最下点10dに到達した水滴Wは、裏側面最下点10dと裏側面最上点20dの間の隙間Sを跨ぐことができず、裏側面最下点10dにおいて次第に大きな水滴となって、自重により下に落下などすることとなって、隙間S内への水滴Wの浸入が防がれることになる。
【0039】
以上のようにして、
図3(a)に示すごとく、施工後において結露などによって外壁材(上側外壁材10)の裏側面10bを水滴Wが流れ落ちる状況や、施工途中において雨水などが外壁材(上側外壁材10)の裏側面10bに降りかかり水滴Wとなって流れ落ちる状況が生じた場合においても、隙間S内への水滴Wの浸入は防がれることから、この水滴Wが表側上面21vに滞留することや、或いは、下側外壁材20の表側面20aへと染み出して汚れが生じるといった不具合の発生を防止できることになる。
【0040】
また、
図2に示すように、以上の構成では、上方向凸部22の裏側面最上点20dと、下方向凸部12の裏側面最下点10dとの距離Hを、上方向凸部22と下方向凸部12の間に形成される隙間Sの距離Hsよりも大きく確保するために、裏側傾斜面21zによって、裏側面最上点20dの上下位置P20が、上方向凸部22の最上点の上下位置P22よりも低い位置に設定することとしたが、このほかの形態を採用してもよい。
【実施例2】
【0041】
図4(a)(b)、及び、
図5に示すごとく、本実施例2では、上下に隣り合う上側外壁材10と、下側外壁材220の接合構造であって、上側外壁材10の下部に設けた裏合抉部11と、下側外壁材220の上部に設けた表合抉部221にて合抉接合され、裏合抉部11と表合抉部221には、それぞれ留付具230の爪部231を係止させるための下方向凸部12、上方向凸部222が設けられ、前記下方向凸部12と前記上方向凸部222の裏側において、下方向凸部12と上方向凸部222の間に空間M4を形成するために、上方向凸部222の裏側面最上点220dと、下方向凸部12の裏側面最下点10dとの距離H2を、上方向凸部222と下方向凸部12の間に形成される隙間S2の距離H2sよりも大きく確保するものであって、下側外壁材220の裏側面220bが、上側外壁材10の裏側面10bよりも表側に配置されることによって、上方向凸部222の裏側面最上点220dの外壁厚み方向位置P220が、下方向凸部12の裏側面最下点10dの外壁厚み方向位置P110よりも、表側の位置に設定される、こととするものである。
【0042】
また、
図6(a)に示すごとく、前記空間M4は、前記上側外壁材10の裏側面10bを伝って流れ落ちる水滴Wが、前記空間M4を跨いでしまうことを防げるように構成されるものとする。
【0043】
以下詳細について説明すると、本実施例2では、
図4(a)に示すごとく、上側外壁材10については、実施例1と同様とする一方で、下側外壁材220については、実施例1と異なる上方向凸部222を形成する構成としている。
【0044】
具体的には、
図4(a)に示すごとく、表合抉部221は、下側外壁材220の裏側面220bと、裏側面220bの最も高い位置にある裏側面最上点220dから表側に伸びる裏側上面221dと、裏側上面221dの表側端部から表側方向斜め下に伸びる傾斜面221kと、傾斜面221kの表側端部から下方に伸びる縦壁面221hと、縦壁面221hの最下点から表側面最上点220mに伸びる表側上面221vと、を有して構成されている。また、縦壁面221hには、下側外壁材220の表側から表側上面221vに浸入する水を止水するための止水材221m(止水用フォームメルトなど)が設けられる。
【0045】
また、
図4(a)に示すごとく、表合抉部221において、裏側面220bと、裏側傾斜面221zと、裏側上面221dと、傾斜面221kの四つの面によって、上側に凸の形状をなす上方向凸部222が形成されている。この上方向凸部222は、
図4(b)に示すごとく、下側外壁材220の横幅方向(
図4の紙面と直交する方向)の数箇所において、留付具230の爪部231に係止されることとしている。
【0046】
さらに、
図4(b)に示すごとく、留付具230において、下側外壁材220の裏側面220bに当着する凸部235を設けることとし、下側外壁材220が上側外壁材10と比較して室外側に押し出される構成としており、下側外壁材220の裏側面220bは、上側外壁材10の裏側面10bよりも室外側に配置されるようになっている。
【0047】
そして、
図5に示すごとく、本実施例2では、上方向凸部222の裏側面最上点220dの外壁厚み方向位置P220が、下方向凸部12の裏側面最下点10dの外壁厚み方向位置P110よりも、表側の位置に設定されることにより、下方向凸部12と上方向凸部222の間に空間M4が形成されるようになっている。また、上方向凸部222と下方向凸部12の間に形成される隙間S2の距離H2sは、本実施例では、裏側下面11dと裏側上面221dの間の距離であって、
図4(b)に示すごとく、隙間S2に挿入される留付具230の爪部231の水平面部234の上下位置によって規定されることになる。
【0048】
このようにして、
図5に示すごとく、上方向凸部222の裏側面最上点220dと、下方向凸部12の裏側面最下点10dとの距離H2を、上方向凸部222と下方向凸部12の間に形成される隙間S2の距離H2sよりも大きく確保できるようになっている。
【0049】
そして、
図6(a)に示すごとく、空間M4が存在することによって、上側外壁材10の裏側面10bを伝う水滴Wが、上側外壁材10の裏側下面11dと下側外壁材220の裏側上面221dの間の隙間S2に浸入することを防止することができる。
【0050】
仮に、
図6(b)に示すごとく、空間M4(
図6(a))が存在せず、上方向凸部222Bの裏側面最上点20Bdが、下方向凸部12Bの裏側面最下点10Bdに近接する構成である場合には、裏側面10Bbを伝って裏側面最下点10Bdに到達した水滴Wは、裏側面最下点10Bdと裏側面最上点20Bdの間の隙間SBを一時的に跨ぐ状況となり、さらに、毛細管現象によって、隙間SB内へと浸入することになる。そして、隙間SB内へと浸入した水滴Wは、表側上面21Bvに滞留して外壁材の劣化(凍害など)に影響を与えることや、或いは、下側外壁材20Bの表側面20Baへと染み出し、この染み出した水分によって藻が繁殖するなどして、汚れYが生じることになる。
【0051】
一方、
図6(a)に示すごとく、空間M4が存在することによれば、上方向凸部222の裏側面最上点220dが、下方向凸部12の裏側面最下点10dから離された構成となるため、裏側面最下点10dに到達した水滴Wは、裏側面最下点10dと裏側面最上点220dの間の隙間S2を跨ぐことができず、裏側面最下点10dにおいて次第に大きな水滴となって、自重により下に落下などすることとなって、隙間S2内への水滴Wの浸入が防がれることになる。
【0052】
以上のようにして、
図6(a)に示すごとく、施工後において結露などによって外壁材(上側外壁材10)の裏側面10bを水滴Wが流れ落ちる状況や、施工途中において雨水などが外壁材(上側外壁材10)の裏側面10bに降りかかり水滴Wとなって流れ落ちる状況が生じた場合においても、隙間S2内への水滴Wの浸入は防がれることから、この水滴Wが表側上面221vに滞留することや、或いは、下側外壁材220の表側面220aへと染み出して汚れが生じるといった不具合の発生を防止できることになる。
【0053】
なお、
図4(a)に示すごとく、本実施例2では、実施例1と同様に上方向凸部222に裏側傾斜面221zが形成されて、空間M4が形成されることとした。このように、本実施例2においては、実施例1の構成を組み合わせて実施することとしてもよい。
【0054】
また、
図7に示すごとく、実施例1の形態を併用せずに、単純に、下側外壁材の裏側面が上側外壁材の裏側面よりも表側(下側外壁材の表側面側)となるように配置することによっても、距離H2aを隙間S2の距離H2sよりも大きく確保することができ、これによって、隙間H2sへの水の浸入を防止することが可能となる。
【実施例3】
【0055】
図8(a)(b)、及び、
図9に示すごとく、本実施例3では、上下に隣り合う上側外壁材10と、下側外壁材320の接合構造であって、上側外壁材10の下部に設けた裏合抉部11と、下側外壁材320の上部に設けた表合抉部321にて合抉接合され、裏合抉部11と表合抉部321には、それぞれ留付具330の爪部331を係止させるための下方向凸部12、上方向凸部322が設けられ、前記下方向凸部12と前記上方向凸部322の裏側において、下方向凸部12と上方向凸部322の間に空間M5を形成するために、爪部331には、下方向凸部12を下側から支えるための上側挿入部335と、上方向凸部322の上方であって上側挿入部335の下方に配置される下側挿入部336が設けられる、こととするものである。
【0056】
また、
図10(a)に示すごとく、前記空間M5は、前記上側外壁材10の裏側面10bを伝って流れ落ちる水滴Wが、前記空間M5を跨いでしまうことを防げるように構成されるものとする。
【0057】
以下詳細について説明すると、
図8(a)に示すごとく、上側外壁材10は、表側面10aと裏側面10bを有する板状の部材であって、裏側面10bを切欠くことによって、裏合抉部11が形成されている。
【0058】
また、
図8(a)に示すごとく、裏合抉部11は、裏側面10bと、裏側面10bの最も低い位置にある裏側面最下点10dから表側に伸びる裏側下面11dと、裏側下面11dの表側端部から表側方向斜め上に伸びる傾斜面11kと、傾斜面11kの表側端部から表側に伸びる天面11fと、天面11fの表側端部から下方に伸びる縦壁面11hと、縦壁面11hの最下点から表側面最下点10mに伸びる表側下面11vと、を有して構成されている。
【0059】
また、
図8(a)に示すごとく、裏合抉部11において、裏側面10bと、裏側下面11dと、傾斜面11kの三つの面によって、下側に凸の形状をなす下方向凸部12が形成されている。この下方向凸部12は、
図8(b)に示すごとく、上側外壁材10の横幅方向(
図8の紙面と直交する方向)の数箇所において、留付具330の爪部331に係止されることとしている。
【0060】
また、
図8(a)に示すごとく、下側外壁材320は、表側面320aと裏側面320bを有する板状の部材であって、表側面320aを切欠くことによって、表合抉部321が形成されている。
【0061】
また、
図8(a)に示すごとく、表合抉部321は、裏側面320bと、裏側面320bの最も高い位置にある裏側面最上点320dから表側方向斜め上に伸びる裏側傾斜面321zと、裏側傾斜面321zの表側最上点321yから表側に伸びる裏側上面321dと、裏側上面321dの表側端部から表側方向斜め下に伸びる傾斜面321kと、傾斜面321kの表側端部から下方に伸びる縦壁面321hと、縦壁面321hの最下点から表側面最上点320mに伸びる表側上面321vと、を有して構成されている。また、縦壁面321hには、下側外壁材320の表側から表側上面321vに浸入した水を止水するための止水材321m(止水用フォームメルトなど)が設けられる。
【0062】
また、
図8(a)に示すごとく、表合抉部321において、裏側面320bと、裏側傾斜面321zと、裏側上面321dと、傾斜面321kの四つの面によって、上側に凸の形状をなす上方向凸部322が形成されている。この上方向凸部322は、
図8(b)に示すごとく、下側外壁材320の横幅方向(
図8の紙面と直交する方向)の数箇所において、留付具330の爪部331に係止されることとしている。
【0063】
また、
図8(a)(b)に示すごとく、留付具330の爪部331には、下方向凸部12を下側から支えるための上側挿入部335が設けられている。この上側挿入部335は、留付具330の固定板部337から室外側へと延出される略水平の板状部によって形成され、この板状部によって、下方向凸部12の裏側下面11dが支えられるようになっている。なお、固定板部337は、図示せぬ胴縁などの躯体側に固定されるものである。
【0064】
また、
図8(a)(b)に示すごとく、上側挿入部335の室外側端には、傾斜面部332が斜め上方室外側に向けて設けられており、この傾斜面部332が上側外壁材10の傾斜面11kに対向することで、上側外壁材10の面外方向へのズレが規制されるようになっている。
【0065】
また、
図8(a)(b)に示すごとく、留付具330の爪部331には、上方向凸部322の上方であって上側挿入部335の下方に配置される下側挿入部336が設けられている。この下側挿入部336は、留付具330の固定板部337から室外側へと延出される略水平の板状部によって形成され、この板状部によって、上方向凸部322の裏側上面321dが覆い被されるようになっている。
【0066】
また、
図8(a)(b)に示すごとく、上側挿入部335の室外側端部には、傾斜面部333が斜め下方室外側に向けて設けられており、この傾斜面部333が下側外壁材320の傾斜面321kに対向することで、下側外壁材320の面外方向へのズレが規制されるようになっている。
【0067】
また、
図9に示すごとく、留付具330において、上側挿入部335と下側挿入部336は、上下幅Hdだけ離れるように設けられており、上側挿入部335と下側挿入部336の間に、上下幅Hdを有する空間M5が形成されるようになっている。
【0068】
そして、
図10(a)に示すごとく、空間M5が存在することによって、上側外壁材10の裏側面10bを伝う水滴Wが、上側外壁材10の裏側下面11dと下側外壁材320の裏側上面321dの間の隙間S3に浸入することを防止することができる。
【0069】
仮に、
図10(b)に示すごとく、空間M5(
図10(a))が存在せず、上方向凸部22Bの裏側面最上点20Bdが、下方向凸部12Bの裏側面最下点10Bdに近接する構成である場合には、裏側面10Bbを伝って裏側面最下点10Bdに到達した水滴Wは、裏側面最下点10Bdと裏側面最上点20Bdの間の隙間SBを一時的に跨ぐ状況となり、さらに、毛細管現象によって、隙間SB内へと浸入することになる。そして、隙間SB内へと浸入した水滴Wは、表側上面21Bvに滞留して外壁材の劣化(凍害など)に影響を与えることや、或いは、下側外壁材20Bの表側面20Baへと染み出し、この染み出した水分によって藻が繁殖するなどして、汚れYが生じることになる。
【0070】
一方、
図10(a)に示すごとく、空間M5が存在することによれば、上方向凸部322の裏側面最上点320dが、下方向凸部12の裏側面最下点10dから離された構成となるため、裏側面最下点10dに到達した水滴Wは、裏側面最下点10dと裏側面最上点120dの間の隙間S3を跨ぐことができず、裏側面最下点10dにおいて次第に大きな水滴となって、自重により下に落下などすることとなって、隙間S3内への水滴Wの浸入が防がれることになる。
【0071】
以上のようにして、
図10(a)に示すごとく、施工後において結露などによって外壁材(上側外壁材10)の裏側面10bを水滴Wが流れ落ちる状況や、施工途中において雨水などが外壁材(上側外壁材10)の裏側面10bに降りかかり水滴Wとなって流れ落ちる状況が生じた場合においても、隙間S3内への水滴Wの浸入は防がれることから、この水滴Wが表側上面321vに滞留することや、或いは、下側外壁材320の表側面320aへと染み出して汚れが生じるといった不具合の発生を防止できることになる。
【0072】
なお、
図8(b)の留付具330の爪部331の構成については、上側挿入部335や下側挿入部336を固定板部337の一部を折り曲げる板金加工によって設けることとする他、複数部材を組み合わせて構成することとしてもよい。
【0073】
また、
図8(a)の上方向凸部322の形状から判るように、この上方向凸部322は、実施例1の上方向凸部22(
図1(a)参照)と同様の構成とするものであって、このように、実施例3は実施例1の構成と組み合わせて実施することや、実施例2とも組み合わせて実施することも可能である。