(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
腫瘍血管新生は、悪性腫瘍の増殖と転移において重要な役割を果たしている。腫瘍が1 mm
3を超えて増殖する場合、腫瘍細胞が生存するために十分な血液を供給するには、既存の血管からの発芽による血管新生又は血管の分枝形成が必要である。腫瘍の増殖速度及び転移傾向は、血管新生因子レベル及び新生期の微小血管量と関係がある。1970年代初期にフォークマン(Folkman)によって「抗血管新生療法」仮説が提唱されて以来この分野では著しい進歩があり、抗癌戦略として腫瘍血管新生の阻害は広く受け入れられてきた。
【0003】
チロシンキナーゼ血管内皮増殖因子(VEGF)及びその受容体(VEGFR)は腫瘍血管新生において非常に重要な役割を果たし、この両者は腫瘍血管新生の阻害において重要な標的である。血管内皮増殖因子(VEGF)は、インビボで血管新生を促進する最初の因子である。VEGFと内皮細胞の血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)が結合すると、細胞増殖、細胞転移、血管透過性亢進、及び骨髄外への内皮細胞前駆体の移動などの血管新生の種々の反応を引き起こす。VEGFRファミリーは、VEGFR1(Flt-1)、VEGFR2(KDR/Flk-1)及びVEGFR3(Flt-4)から成る。血管新生の促進には、主にVEGFとVEGFR2(KDR/Flk-1)の結合が介在する。多数のヒト腫瘍は高レベルのVEGFRを発現する。現在のところ40を超える薬物が臨床試験されており、例えばVEGF及びその受容体(VEGFR)に対するモノクローナル抗体やVEGFRチロシンキナーゼに対する低分子量阻害薬がある。ジェネンテック社が10年以上にわたり開発したVEGFに対するモノクローナル抗体であるアバスチンは、2004年に販売承認された。結腸癌、肺癌及び乳癌に対する他の薬物と併用したアバスチンの効果は、抗VEGF薬として、アバスチンのメカニズムが実現可能であることを証明した。アバスチンは、抗癌標的としての抗血管新生メカニズムに対して優れた貢献をなした。
【0004】
近年における最も優れた低分子量VEGFR阻害薬には、ノバルティス社/シェーリング社により開発された結腸癌に対するVEGFR阻害薬タラニブ(PTK787)、及びアストラゼネカ社により開発された、再発性/難治性の非小細胞肺癌の治療に対するVEGFR及び上皮増殖因子受容体(EGFR)の二重標的阻害薬ザクティマ(ZD-6474)がある。VEGF阻害薬は、徐々に、優れた適用可能性のある新たな非毒性抗癌薬となっている。腫瘍増殖を阻害する従来の毒性のある薬と比較して、血管新生を標的とする薬は、より特異的かつより低毒性であり、また腫瘍の薬剤抵抗性の克服に有用であり、種々の腫瘍の治療に使用することができる。
【0005】
N−[4−(1−シアノシクロペンチル)フェニル]−2−(4−ピリジルメチル)アミノ−3−ピリジンカルボキサミド(以下、「化合物A」と称する。)は、新世代のチロシンキナーゼ阻害剤であり、本化合物は式(I)で表される:
【化1】
【0006】
前記の化合物は中国特許出願第02138671.4号に表示されており、この中国特許出願の内容は全体として本願明細書に援用される。化合物Aは、別の試験施設で行われたチロシンキナーゼ受容体の酵素レベルの試験において、VEGFR-2に対してIC
50値が約1 nMという非常に強い選択的阻害作用を有することが報告されている。さらに、Ret、VEGFR-1、PDGFR-β、c-kit。cSRCなどのキナーゼについても一定の選択的阻害活性があった。ヌードマウスに移植したヒト腫瘍の薬力学的研究により、ヌードマウスに移植した結腸癌Ls174tに対する化合物Aの有効性はPTK787より非常に優れており、また、オキサリプラチンと併用すると、毒性が増強することなく化合物Aの有効性が改善されることが見出された。単独使用か併用かに関わらず、化合物Aの有効性はPTK787より優れていた。また、ヌードマウスに移植した非小細胞肺癌A549に対する化合物Aの有効性はPTK787より非常に優れており、化合物Aの最大効力は、常用量におけるZD6474と同等であることも見出された。毒性面で、化合物Aは、ヌードマウスにおいて400 mg/kgの最大投与量で良好な耐容性が示された。
【0007】
しかしながら薬物を研究する間に、N−[4−(1−シアノシクロペンチル)フェニル]−2−(4−ピリジルメチル)アミノ−3−ピリジンカルボキサミドは、安定性や生物学的利用率などのいくつかの面で満足のいくものではないことがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.化合物Aの薬学的に許容される塩の調製
【実施例1】
【0015】
化合物A塩酸塩の調製
5.049 g(12.7 mmol)の化合物Aを120 mLのエタノールに懸濁し、23.89 mL(0.5322 mol/L)の塩酸標準溶液を滴下した後、この混合物を透明溶液が得られるまで加熱還流した(不溶物が存在する場合には、加熱濾過を行ってもよい)。室温(23℃)まで冷却後、溶液から結晶が沈殿した。得られた混合物を濾過し、濾過ケーキをエタノール(20 mL×2)で洗浄して真空乾燥オーブン(CaCl
2)に移した後、80℃で5時間、ポンプにより濾過し、化合物A塩酸塩3.619 g(収率65.7%)を得た。融解範囲:200〜202.5℃、水分含量5.1%、溶媒残量0.025%であった。
【実施例2】
【0016】
化合物A硫酸塩の調製
3.092 g(7.778 mmol)の化合物Aを120 mLのエタノールに懸濁し、14.89 mL(0.5234 mol/L)の硫酸標準溶液を滴下した後、この混合物を透明溶液が得られるまで加熱還流した(不溶物が存在する場合には、加熱濾過を行ってもよい)。この混合物を減圧下で100 mLまで濃縮した。室温(23℃)まで冷却後、溶液から結晶を沈殿させた。得られた混合物を濾過し、濾過ケーキをエタノール(8 mL×2)で洗浄して真空乾燥オーブン(CaCl
2)に移した後、80℃で5時間、ポンプにより濾過し、化合物A硫酸塩2.662 g(遊離塩基含有量に基づく収率57.7%)を得た。融解範囲:199.5〜230℃(完全には融解しない)。
【実施例3】
【0017】
化合物Aリン酸塩の調製
1.910 g(4.805 mmol)の化合物A、225 mLのエタノール及び9.29 mL(0.5008 mol/L)のリン酸標準液の混合物を加熱還流した。4時間後、固形物が完全に溶解した後、この混合物を室温(25℃)まで冷却して、溶液から結晶を沈殿させた。得られた混合物を濾過し、濾過ケーキをエタノール(5 mL×2)で洗浄して真空乾燥オーブン(CaCl
2)に移した後、80℃で6時間、ポンプにより濾過し、化合物Aリン酸塩1.150 g(遊離アルカリ含有量に基づく収率46.1%)を得た。融解範囲:205〜258℃(完全には融解しない)。
【実施例4】
【0018】
化合物Aメシル酸塩の調製
170 g(0.428 mol)の化合物A、42.5 g(0.442 mol)のメタンスルホン酸及び2.55 Lの95%イソプロパノール水溶液を5 L容反応ボトルに加えた。この混合物を完全に溶解させるため、窒素保護下暗所で撹拌加熱した。淡黄色透明溶液が得られ、これを熱いうちに濾過した。室温まで冷却後、溶液から結晶を沈殿させた。得られた結晶を濾取してイソプロパノールで洗浄し、真空乾燥させて、白色針状結晶180.2 g(0.365 mol)を得た。収率:85.4%。
2.52 Lの95%イソプロパノール水溶液中の化合物Aメタンスルホン酸塩180.2 gを、5 L容反応ボトルに加えた。この混合物を完全に溶解させるため、窒素保護下暗所で撹拌加熱し、熱いうちに濾過した。室温まで冷却後、溶液から結晶を沈殿させた。得られた結晶を濾取してイソプロパノールで洗浄し、真空乾燥させて、白色針状結晶161.5 gを得た。収率:85.4%、融解範囲:193.5〜195℃であった。
【実施例5】
【0019】
化合物Aクエン酸塩の調製
化合物Aの遊離塩基2.886 g、クエン酸0.552 g及びエタノール80 mLを混合し、無色透明溶液が得られるまで、ほぼ沸騰させて加熱した。室温まで冷却後、沈殿した結晶を濾取した。濾過ケーキをエタノール(3 mL×2)で洗浄し、真空乾燥オーブンで80℃、6時間濾過して、針状結晶2.283 gを得た。収率:79%、融解範囲:160.5〜162.0℃であった。
【実施例6】
【0020】
化合物Aマレイン酸塩の調製
化合物Aの遊離塩基2.508 g、マレイン酸0.351 g及びエタノール110 mLを混合し、透明淡黄色溶液が得られるまで加熱還流した。この溶液を煮沸し、活性炭を添加した。少量の綿状不溶物は加温濾過により除去した。濾液は約90 mLまで濃縮し、室温まで冷却した。淡黄色結晶性固体が沈殿するので濾過した。得られた濾過ケーキは、少量のエタノールで洗浄し、真空乾燥オーブンで80℃、6時間濾過して、淡黄色針状結晶1.009 gを得た。収率:40%、融解範囲:115〜160℃であった。
【実施例7】
【0021】
化合物Aコハク酸塩の調製
化合物Aの遊離塩基2.827 g、コハク酸0.401 g及びエタノール70 mLを混合し、加熱還流した。固形物は完全に溶解した。この溶液を煮沸し、活性炭を添加した。少量の綿状不溶物は加温濾過により除去した。濾液は約25 mLまで濃縮し、室温まで冷却した。白色結晶性固体が沈殿するので濾過した。得られた濾過ケーキは、少量のエタノールで洗浄し、真空乾燥オーブンで80℃、6時間濾過して、淡黄色針状結晶1.009 gを得た。収率:77%、融解範囲:117〜161.5℃であった。
【0022】
2.化合物Aの薬学的に許容される塩の特性
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
結論:安定性試験の結果によれば、塩酸塩とメシル酸塩の安定性が最も優れている。特に、メシル酸塩は最も安定である。
【0027】
3.化合物Aの薬学的に許容される塩の薬理活性研究
【0028】
受容体タンパク質チロシンキナーゼに対する化合物Aメシル酸塩の阻害作用
(方法)
ELISA法(Posnerら、J. Biol.
Chem. (1992) 267 (29), 20638-20647を参照):酵素標識用プレートを酵素反応基質であるポリ(Glu、Tyr)
4:1でコートした後、酵素、試料及びATPを添加した。基質のリン酸化は、抗リン酸化チロシンモノクローナル抗体(PY99)により測定した。次に、HRP標識ヤギ抗マウスIgGを添加し、基質のリン酸化の程度をOPD着色により測定した。同時に、チロシンキナーゼを含まない対照群及び対応するDMSO濃度の対照ウェルを設定した。反応を停止するために、ウェル当たり50 μlの2 M硫酸を添加した。データは可変波長マイクロプレート酵素標識機器VERSAmax(サニーベイル、カリフォルニア、米国)を用いて読み取り、OD490 nmで可視化反応を観察した。
阻害率(%)={1−(試料添加群のOD値−酵素不含対照ウェルのOD値)/(陰性対照群のOD値−酵素不含対照ウェルのOD値)}×100
【0029】
チロシンキナーゼタンパク質に対する薬物の相対的阻害率を測定した。50%阻害濃度IC
50は、異なる濃度での阻害率に従って、LOGIT法により算出した。上記の各実験は3回繰り返し、実験3回の平均IC
50値を阻害能力の最終指標とした。
【0030】
(結果)
8種類のチロシンキナーゼに対する、化合物Aメシル酸塩及び陽性対照化合物であるPTK787の阻害作用に関する結果を表5にまとめた。その結果は、化合物Aメシル酸塩は、分子レベルでKDR、Flt1、PDGFRβ、c-Kit及びc-Srcのキナーゼ活性を顕著に阻害し、IC
50値はそれぞれ2.43 nM、70.08 nM、537.31 nM、420.31
nM及び348.53 nMであることを示す。その一方、陽性対照化合物であるPTK787のKDR、Flt1、PDGFRβ及びc-Kitに対するIC
50値は、それぞれ33.30 nM、84.69 nM、416.51
nM及び606.11 nMである。結果は、さらに、化合物Aメシル酸塩が、血管内皮増殖因子受容体1及び2(Flt1/VEGFR1及びKDR/VEGFR2)のキナーゼ活性を強力に阻害することを示す。KDRキナーゼに対する化合物Aメシル酸塩の阻害作用はFlt1キナーゼに対するものより著しく強く、KDRキナーゼに対するIC
50値は、対照化合物のIC
50値より13.7倍低い。すなわち、KDRに対する化合物Aメシル酸塩の阻害作用は、PTK787より強力である。それと同時に、化合物Aメシル酸塩は、血小板由来増殖因子受容体β(PDGFRβ)や幹細胞増殖因子などの他の第三の受容体チロシンキナーゼに対しても無視できない阻害作用を有するが、その作用は血管内皮増殖因子受容体に対する阻害作用より弱い。濃度を10
4 nMに上げた場合、陽性対照化合物のPTK787は非受容体チロシンキナーゼc-Srcに対して阻害作用を示さないが、c-Srcに対する化合物Aメシル酸塩の阻害作用のIC
50は348.53 nMである。しかしながら、濃度を10
4 nMに上げた場合において、化合物Aメシル酸塩は、上皮増殖因子受容体のEGFR1及びErbB2、並びに線維芽細胞増殖因子受容体FGFR1などの他のファミリーのキナーゼのキナーゼ活性を阻害しない。さらに、KDRのキナーゼ活性に対する化合物Aメシル酸塩の阻害作用は、分子レベルで陽性対照化合物であるPTK787より強いが、Flt1、PDGFR及びc-Kitのチロシンキナーゼに対する両者の阻害は、同水準の範囲にある阻害力を有し、基本的に同じであることが結果より示される。選択性に関して、化合物Aメシル酸塩はPTK787より広域であり、非受容体チロシンキナーゼc-Srcのキナーゼ活性に対する阻害作用も有する。要約すると、化合物Aメシル酸塩は、KDRに対する顕著な選択的阻害作用と、Flt1、PDGFR、c-Kit、c-Srcなどに対する阻害作用を併せ持つチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0032】
ヌードマウスに移植したヒト結腸癌Ls174tに対する化合物Aメシル酸塩の有効性
(実験動物)
BALB/cA−ヌードマウス(雌、5〜6週令)は上海Slaccas実験動物有限責任会社より入手した。証明番号:SCXK (hu)
2004-0005、飼育環境:SPFグレード。
【0033】
(実験方法)
1週間の馴化飼育後、実験動物の皮下にヒト結腸癌Ls174t腫瘍組織を播種した。腫瘍が100〜300 mm
3に増殖したとき、第0日(d0)として実験動物を無作為に数群に分けた。化合物Aメシル酸塩の投与量は、それぞれ50
mg/kg、100 mg/kg及び200 mg/kgとした。PTK787は同じ用量で投与した。化合物Aメシル酸塩とPTK787のいずれとも、第0日(d0)から第13日(d13)まで合計14回、1日1回強制経口投与した。腫瘍の体積とマウスの体重を毎週2〜3回測定し、それらのデータを記録した。腫瘍体積(V)の計算式は以下のとおりである:
V = 1/2×a×b
2
ここでa及びbは、それぞれ長さ及び幅を表す。
【0034】
(結果)
酵素学及び細胞レベルの実験により、化合物Aメシル酸塩の主要な作用標的はVEGFR2/KDR(IC
50 = 2.43 ± 1.30 nM)であることが証明された。類似した作用標的を有する化合物であり、臨床試験が早期に行われているノバルティス社のPTK787(KDRに対するIC
50は33.30 ± 14.45 nM)を、試験における陽性対照化合物として選択した。化合物Aメシル酸塩及び参照化合物であるPTK787の予備試験に従い、50、100及び200 mg/kgの3用量を選択し、有効性の評価と比較は、同一用量及び同一投与計画のもとで行った。結果を表6に記載する。この結果より、化合物Aメシル酸塩は用量依存的にヒト結腸癌Ls174tの増殖を阻害し、そのT/C%は、200
mg/kgの用量で16.3%であることが示された。PTK787も200 mg/kgの用量でLs174tの増殖を阻害したが、そのT/C%はわずか60.2%であり、PTK787の有効性は化合物Aメシル酸塩より著しく劣ることが示された。Posnerらは、PTK787を75
mg/kgの用量で投与した場合、最大のT/C%が最大40%に達することを報告している(J. Biol. Chem. (1992) 267
(29), 20638-20647を参照)。しかし本発明者らの試験結果では、100 mg/kgの用量で投与したPTK787はなんら有意な作用を及ぼさず、T/C%は71.5%に過ぎないことが示された。比較すると、Posnerらの試験では薬物投与時の初期腫瘍体積は25〜100 mm
3であり、これは本発明者らの試験における初期腫瘍体積より少なくとも1.5〜6倍小さいこと、また薬物投与は28日以上継続され、これは本発明者らの薬物投与期間より長期であることが指摘される。さらに、Posnerらにより報告されたT/C%は、彼らが試験で得たものの中で最大のものであり、試験終了時の最終T/C%ではなかった。対照的に、本発明者らの試験における最大のT/C%は投与期間中の第10日に見出され、この時点で、100 mg/kg及び200 mg/kgのPTK787投与量に対するT/C%はそれぞれ60.7%及び45.8%であり、これらはPosnerらの試験における値に近かった。さらに、試験における有効性に影響する種々の因子が存在するので、比較は同一の系で行われるべきであるということが強調されるべきである。本試験におけるPTK787の有効性は文献と一致しないが、PTK787と化合物Aメシル酸塩の間の有効性の比較には影響は及ばない。表6より、結腸癌Ls174tに対する化合物Aメシル酸塩のED50は97.2
mg/kgである一方で、PTK787のED50は458.7 mg/kgであることが算出され、結腸癌Ls174tに対する化合物Aメシル酸塩の有効性は、PTK787より著しく優れることが示される。
【0035】
化合物Aメシル酸塩及びPTK787のいずれとも、400 mg/kgの用量で投与した場合、マウスにおける忍容性は認められたが、すなわち、明白な用量依存性はなかったが、有効性はそれほど増加しなかったことが注目されるべきである。この結果は、他の血管新生阻害剤であるSU11248の結果と類似していた。したがって、次の試験では、有効性を評価するための化合物Aメシル酸塩の投与量として、200、100及び50 mg/kgを選択した。
【0036】
試験計画に従い、前記の2つの化合物を引き続き14日間、それぞれ担癌マウスに投与した。得られた結果より、この2つの化合物はいずれも良好な耐容性を示し、マウスにおいて明白な体重減少はなかったことが示された。この2つの化合物の毒性は、本試験計画において、ほとんど相違しなかった。
【0037】
【表6】
d0:分割ケージ投与時間; dn:初回投与後14日
a P<0.01 対(対照群);
b P<0.01 対(化合物Aメシル酸塩200 mg/kg投与群)
【0038】
ヌードマウスに移植したヒト結腸癌HT-29に対する化合物Aメシル酸塩の有効性
(実験動物)
BALB/cA−ヌードマウス(雌、5〜6週令)は上海Slaccas実験動物有限責任会社より購入した。証明番号:SCXK (Hu)
2004-0005、飼育環境:SPFグレード。
【0039】
(実験方法)
1週間の馴化飼育後、実験動物の皮下にヒト結腸癌HT-29腫瘍組織を播種した。腫瘍が100〜300 mm
3に増殖したとき、実験動物を無作為に数群に分けた。化合物Aメシル酸塩の投与量は、それぞれ50 mg/kg、100 mg/kg及び200
mg/kgとし、PTK787の投与量は200 mg/kgとした。化合物Aメシル酸塩とPTK787のいずれとも、d0からd20まで合計21回、1日1回強制経口投与した。腫瘍の体積とマウスの体重を毎週2〜3回測定し、それらのデータを記録した。腫瘍体積(V)の計算式は以下のとおりである:
V = 1/2×a×b
2
ここでa及びbは、それぞれ長さ及び幅を表す。
【0040】
(結果)(表7参照)
結果より、化合物Aメシル酸塩は、明らかに用量依存的にヒト結腸癌HT-29の増殖を顕著に阻害したことが示される。PTK787の有効性も優れていたが、化合物Aメシル酸塩より劣っていた。200 mg/kgの投与量における化合物Aメシル酸塩及びPTK787のT/C%はそれぞれ25.5%及び56.5%であり、有意に相違した(P<0.01)。このことは、化合物Aメシル酸塩の効力がPTK787よりはるかに優れていたことを示す。さらに、この2つの化合物はいずれも耐容性が良好であり、毒性は同等であった。
【0041】
【表7】
d0:分割ケージ投与時間; dn:初回投与後21日
a P<0.01 対(対照群);
b P<0.01 対(化合物Aメシル酸塩200 mg/kg投与群)
【0042】
経口投与による化合物Aの生物学的利用率の研究
(実験動物)
雄性Sprague-Dawley(SD)ラット(体重:約250 g、実験動物適合証明:0006473)は上海Slaccas実験動物有限責任会社より購入した(証明番号:SCXK (hu) 2003-0003)。SDラットの関連適格性及び健康状態を最初に検査し、適格なものを上海マテリア・メディカ研究所においてクリーングレード・ラットチャンバーに入れた。
【0043】
(実験機器)
液体クロマトグラフィー質量分析解析システム(LC/MS/MS)には、アジレント1100シリーズバイナリーポンプ、オンライン脱気装置、オートサンプラー、カラムヒーター、及びサーモフィンガン社のTSQクァンタム(Quantum)三連四重極質量分析計が含まれる。システムの操作ソフトウェアは、エックスキャリバー(Xcalibur)及びケミステーション(Chemstation)(米国)である。他の実験機器には以下のものが含まれる:テクネ(Techne)窒素乾燥装置(ドイツ);−80℃超低温サンヨーフリーザー(日本);ビブラックス(Vibrax)VXR小型シェーカー(ドイツ);MS1タービンミキサー(ドイツ);92-2適時選択定温マグネチックスターラ(上海);メトラーAE240二重範囲電子分析天秤(0.01 mg/41 g、0.1 mg/205 g)(ドイツ);及びエッペンドルフ連続液体分注機(ドイツ)。
【0044】
(実験方法)
LC/MS/MSの分析条件
液体クロマトグラフィーの分析条件
クロマトグラフィーカラム:アジレントZorbax SB-C18カラム(50 mm×2.1 mm内径);カラム温度:25℃;移動相:A:水−アセトニトリル(2:98、v/v)、B:水−アセトニトリル(10:90、v/v)、A:25%+B:75%、一定グラジエント溶出;流速:0.25 mL/分;注入量:10 μL;分析時間:3分間。
【0045】
ラットによる実験
クリーングレードチャンバーの明暗サイクルは、12時間/12時間(昼間/夜間)で切り替えた。湿度及び温度はそれぞれ40〜60%及び20〜24℃とした。ラット4匹ごとを、36×24×19 cm
3のステンレス・ラットケージで飼育した。ラットには自由飲水させ、ラット専用餌を1日1回定期的に与えた。1週間の馴化飼育後にのみ、ラットを薬物動態学的な動物試験を行うために使用した。3匹のSDラットに対して、20 mg/kgの投与量で化合物Aを経口投与した。
【0046】
24 mgの化合物A粉末を正確に秤量して4 mLの水に溶解し、乳鉢に入れてすりつぶした。次に、8 mLの水で15 mL容の試験管に洗い込み、動物実験用の2 mg/mL懸濁液を得た。
【0047】
血液試料は投与前0時間、並びに投与後0.083、0.25、0.5、1.0、2、4、6及び8時間に採取した。250〜300 μLのラット血液試料を、各時間ポイントにおいて、エーテル吸入麻酔後、眼の後部静脈洞から採取した(麻酔の程度は高度に制御した。)。血液試料は、前もってヘパリンが加えられた試験管に採取した後、遠心分離し、血漿を得た。得られた血漿は50 μLずつ2分割し、分析するまで−70℃で保存した。異なる時間ポイントにおける血液試料中の化合物Aの濃度は、LC/MS/MS法を用いて分析した。使用したラットの安楽死は二酸化炭素ガスにより行った。
【0048】
各群の動物実験の薬物動態パラメータは、インナフェーズキネチカ(InnaPhase Kinetica、登録商標)ソフトウェア(米国)を用いて算出した。
【0049】
(実験結果)
【表8】
Cmax:血管外投与後の最高血漿中薬物濃度
Tmax:血管外投与後に最高血漿中薬物濃度に到達するのに要する時間
AUC
0→8h:血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(0〜8時間)
T
1/2:半減期
K
el:消失速度定数
MRT:単一分子のインビボ平均滞留時間
CL:血漿クリアランス
Vd:血漿中濃度に基づく見かけの分布容積
【0050】
化合物Aの4種の薬学的に許容される塩の経口投与における生物学的利用率の比較
(実験動物)
雄性Sprague-Dawley(SD)ラット(体重:約250 g、実験動物適合証明:0006473)は上海Slaccas実験動物有限責任会社より購入した(証明番号:SCXK (Hu) 2003-0003)。SDラットの関連適格性及び健康状態を最初に検査し、適格なものを上海マテリア・メディカ研究所においてラットのクリーングレードチャンバーに入れた。
【0051】
(実験機器)
液体クロマトグラフィー質量分析解析システム(LC/MS/MS)には、アジレント1100シリーズバイナリーポンプ、オンライン脱気装置、オートサンプラー、カラムヒーター、及びサーモフィンガン社のTSQクァンタム(Quantum)三連四重極質量分析計が含まれる。システムの操作ソフトウェアは、エックスキャリバー(Xcalibur)及びケミステーション(Chemstation)(米国)である。他の実験機器には以下のものが含まれる:テクネ(Techne)窒素乾燥装置(ドイツ);−80℃超低温サンヨーフリーザー(日本);ビブラックス(Vibrax)VXR小型シェーカー(ドイツ);MS1タービンミキサー(ドイツ);92-2適時選択定温マグネチックスターラ(上海);メトラーAE240二重範囲電子分析天秤(0.01 mg/41 g、0.1 mg/205 g)(ドイツ);及びエッペンドルフ連続液体分注機(ドイツ)。
【0052】
(実験方法)
LC/MS/MSの分析条件
液体クロマトグラフィーの分析条件
クロマトグラフィーカラム:アジレントZorbax SB-C18カラム(50 mm×2.1 mm内径);カラム温度:25℃;移動相:A:水−アセトニトリル(2:98、v/v)、B:水−アセトニトリル(10:90、v/v)、A:25%+B:75%、一定グラジエント溶出;流速:0.25 mL/分;注入量:10 μL;分析時間:3分間。
【0053】
ラットによる実験
クリーングレードチャンバーの明暗サイクルは、12時間/12時間(昼間/夜間)で切り替えた。湿度及び温度はそれぞれ40〜60%及び20〜24℃とした。ラット4匹ごとを、36×24×19 cm
3のステンレス・ラットケージで飼育した。ラットには自由飲水させ、ラット専用餌を1日1回定期的に与えた。ラットは、1週間の馴化飼育をした後にのみ、薬物動態研究を行うために使用した。12匹のSDラットを、各群3匹の4群に分割した。20 mg/kgの投与量で化合物Aを経口投与した。この4群に、それぞれ化合物Aの塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩及びメシル酸塩を20 mg/kgの用量で経口投与した。
【0054】
それぞれ24 mgの化合物Aの塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩及びメシル酸塩の粉末を正確に秤量し、4
mLの水に溶解して乳鉢に入れ、すりつぶした。次に、8 mLの水で15 mL容の試験管に洗い込み、動物実験用の2 mg/mL懸濁液を得た。
【0055】
血液試料は投与前0時間、並びに投与後0.083、0.25、0.5、1.0、2、4、6及び8時間に採取した。250〜300 μLの血液試料を、各時間ポイントにおいて、エーテル吸入麻酔後、眼の後部静脈洞から採取した(麻酔の程度は高度に制御した。)。血液は、ヘパリンを含む試験管に採取した後、遠心分離し、血漿を得た。得られた血漿は50 μLずつ2分割し、分析するまで−70℃で保存した。異なる時間ポイントにおける血液試料中の化合物Aの濃度は、LC/MS/MS法を用いて分析した。実験後、二酸化炭素ガスによりラットを安楽死させた。
【0056】
各群の動物実験の薬物動態パラメータは、インナフェーズキネチカ(InnaPhase Kinetica、登録商標)ソフトウェア(米国)を用いて算出した。
【0057】
(動物実験結果)
20 mg/kgの用量でラットに経口投与した化合物Aの塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩及びメシル酸塩の、異なる時間ポイントにおける血液中濃度を、それぞれ表9及び10に記載する。対応する血漿薬物濃度−時間曲線下面積を
図3に示し、薬物動態パラメータは表11及び12に記載する。
【0060】
【表11】
C
max:血管外投与後の最高血漿中薬物濃度
T
max:血管外投与後に最高血漿中薬物濃度に到達するのに要する時間
AUC
0→8h:血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(0〜8時間)
T
1/2:半減期
K
el:消失速度定数
MRT:単一分子のインビボ平均滞留時間
CL:血漿クリアランス
V
d:血漿中濃度に基づく見かけの分布容積
【0061】
【表12】
C
max:血管外投与後の最高血漿中薬物濃度
T
max:血管外投与後に最高血漿中薬物濃度に到達するのに要する時間
AUC
0→8h:血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(0〜8時間)
T
1/2:半減期
K
el:消失速度定数
MRT:単一分子のインビボ平均滞留時間
CL:血漿クリアランス
V
d:血漿中濃度に基づく見かけの分布容積
【0062】
【表13】
C
max:血管外投与後の最高血漿中薬物濃度
T
max:血管外投与後に最高血漿中薬物濃度に到達するのに要する時間
AUC
0→8h:血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(0〜8時間)
AUC
0®8 h Mol dose (ng・h/mL):1 mmol/kgの投与量における血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(0〜8時間)
Relative F:相対的生物学的利用率
【0063】
(結論)
実験例4において測定した化合物Aの生物学的利用率と比較して、本発明の化合物Aの塩は、特に化合物Aの塩酸塩及びメシル酸塩は、化合物Aの生物学的利用率が顕著に改善されたことが見出された。
4.製剤
【0064】
錠剤
処方:
化合物Aメシル酸塩 100 g
澱粉 20 g
2%澱粉スラリー 適当量
ステアリン酸マグネシウム 0.5 g
100錠
【0065】
製造工程:化合物Aの薬学的に許容される塩を100〜200メッシュ篩により篩過し、澱粉と混合した。2%澱粉スラリーを加えた後、混合物を顆粒化し、乾燥させ、さらにステアリン酸マグネシウムと混合した。得られた混合物を圧縮し、検定した。適格なものを包装した。
【0066】
カプセル
処方:
化合物Aメシル酸塩 50 g
澱粉 10
g
微結晶性セルロース 5 g
1%澱粉スラリー 適当量
ステアリン酸マグネシウム 0.25 g
100カプセル
製造工程:混合物を顆粒化し、カプセルに包み、検定し、さらに従来の方法により包装した。