(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649140
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】流動電解液電池用再結合器
(51)【国際特許分類】
H01M 12/08 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
H01M12/08 C
【請求項の数】34
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-534500(P2012-534500)
(86)(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公表番号】特表2013-508896(P2013-508896A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】AU2010001413
(87)【国際公開番号】WO2011047441
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年8月29日
(31)【優先権主張番号】2009905192
(32)【優先日】2009年10月23日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】511046922
【氏名又は名称】レッドフロー アールアンドディ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】REDFLOW R&D PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター、アレクサンダー ルドルフ
【審査官】
松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0113615(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0119365(US,A1)
【文献】
特開平02−010672(JP,A)
【文献】
特開昭60−257078(JP,A)
【文献】
特開昭59−101779(JP,A)
【文献】
特開平02−135671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 10/52
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン源と水素源を受容する反応チャンバを画定するハウジングと、
前記ハロゲン源と前記水素源からのハロゲン化水素の生成を触媒する前記反応チャンバ内の触媒と、
を備える流動電解液電池用再結合器であって、
前記反応チャンバ内の前記ハロゲン源、前記水素源、および前記ハロゲン化水素のすべてがガス状であることにより、前記触媒がいかなる液体流にも露出しない再結合器。
【請求項2】
前記ハロゲン源が臭素源であり、前記ハロゲン化水素が臭化水素である請求項1の再結合器。
【請求項3】
前記触媒が貴金属または貴金属合金である請求項1または2の再結合器。
【請求項4】
前記触媒がプラチナ触媒、ルテニウム触媒、パラジウム触媒、およびロジウム触媒から成る群より選択される請求項3の再結合器。
【請求項5】
前記触媒が基材上に支持される請求項1から4のいずれか一項の再結合器。
【請求項6】
前記基材が多孔質セラミック基材である請求項5の再結合器。
【請求項7】
前記基材が加熱素子を含む加熱管と熱連通する請求項5または6の再結合器。
【請求項8】
前記加熱素子により、触媒が最高250℃の作用温度を達成することができる請求項7の再結合器。
【請求項9】
臭素源の少なくとも一部が、臭素含有電解液を臭素蒸発器に露出させることによって生成される請求項2から8のいずれか一項の再結合器。
【請求項10】
前記臭素蒸発器が、臭素蒸気を通過させるために中空内部を有する長細管を備える請求項9の再結合器。
【請求項11】
前記臭素蒸発器が、前記臭素蒸発器の外部から内部へ臭素蒸気を通過させるために複数の開口部と開放された第1の端部とをさらに備える請求項10の再結合器。
【請求項12】
臭素蒸発器を構成する材料が、セラミック、ガラス、およびプラスチックから成る群より選択される請求項9の再結合器。
【請求項13】
前記臭素蒸発器がメッシュによって少なくとも部分的に包囲される請求項9から12のいずれか一項の再結合器。
【請求項14】
前記メッシュが多孔質セラミック、グラスファイバ、プラスチックファイバ、焼結プラスチックビーズ、またはグラスファイバソックスまたはセラミックスリーブ内に収容されたプラスチックビーズから形成される請求項13の再結合器。
【請求項15】
前記メッシュが前記グラスファイバソックスから構成されている請求項14の再結合器。
【請求項16】
前記臭素含有電解液が臭素富化電解液である請求項9から15のいずれか一項の再結合器。
【請求項17】
前記臭素富化電解液が前記臭素蒸発器を包囲するメッシュ上に導入される請求項16の再結合器。
【請求項18】
前記臭素富化電解液が臭素ポンプを介して供給される請求項16または17の再結合器。
【請求項19】
前記ハウジングが再結合器入口と再結合器出口をさらに備える請求項1から18のいずれか一項の再結合器。
【請求項20】
前記再結合器入口が臭素蒸発器の中空内部と流体連通する請求項19の再結合器。
【請求項21】
前記再結合器出口が電解液を亜鉛電解液タンクに戻す流体路と流体連通する請求項19の再結合器。
【請求項22】
前記再結合器入口の少なくとも一部が、前記反応チャンバへの液体流を阻止するように配向される請求項19の再結合器。
【請求項23】
前記再結合器入口の少なくとも一部が臭素蒸発器の長細管と略平行に延在する請求項22の再結合器。
【請求項24】
前記再結合器入口の少なくとも一部が、前記反応チャンバを通る反応物および生成物の流れの方向に略垂直な方向に延在する請求項22の再結合器。
【請求項25】
前記再結合器出口の少なくとも一部が、前記反応チャンバから液体流が出るのを阻止するように配向される請求項19の再結合器。
【請求項26】
前記再結合器出口の少なくとも一部が前記反応チャンバに対して垂直に立つ請求項25の再結合器。
【請求項27】
前記再結合器出口の開放端を通過する電解液流によって生成される圧力差により、臭素源と水素源が前記再結合器入口を通って前記反応チャンバ内に引き込まれ、前記ハロゲン化水素が前記再結合器出口を通って前記反応チャンバから引き出される請求項19から26のいずれか一項の再結合器。
【請求項28】
前記再結合器出口の前記開放端を通過する電解液流は、亜鉛電解液ポンプの作用によって達成される請求項27の再結合器。
【請求項29】
前記流動電解液電池が亜鉛臭素流動電解液電池である請求項1から28のいずれか一項の再結合器。
【請求項30】
流動電解液電池内の電解液流のpHを調節する方法であって、
(a)ハロゲン源と水素源を再結合器に導入するステップであって、前記再結合器が前記ハロゲン源と前記水素源からのハロゲン化水素の生成を触媒する触媒を備えるステップと、
(b)生成された前記ハロゲン化水素を移動させ、前記電解液流に導入することによって、前記流動電解液電池内の前記電解液流のpHを調節するステップと、
を備え、前記ハロゲン源および前記水素源を受容する反応チャンバ内の前記ハロゲン源、水素源、およびハロゲン化水素のすべてがガス状であることにより、前記触媒がいかなる液体流にも露出しない方法。
【請求項31】
前記ハロゲン源が臭素源である請求項30の方法。
【請求項32】
臭素含有電解液を臭素蒸発器に露出させて臭素蒸気を生成することによって、前記臭素源の少なくとも一部を前記再結合器に導入するステップをさらに備える請求項31の方法。
【請求項33】
前記臭素蒸気が、液体流が前記触媒に接触するのを阻止するように配向された再結合器入口を介して前記再結合器に流れ込む請求項32の方法。
【請求項34】
請求項1から29のいずれか一項の再結合器を使用する請求項30から33のいずれか一項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動電解液電池に関する。特に、限定はしないが、本発明は、流動電解液電池用の臭素錯体バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
スタンドアロン型電源システムで使用される電池は、一般的には鉛酸電池である。しかしながら、鉛酸電池は、性能と環境上の安全性の点で制限がある。たとえば、典型的な鉛酸電池は、高温気候の状況下、特に時折完全に放電される場合は、非常に寿命が短いことが多い。また、鉛が鉛酸電池の主要要素であり、製造や廃棄中に環境上の課題をもたらすことから、鉛酸電池は環境に有害である。
【0003】
亜鉛臭素電池、亜鉛塩素電池、バナジウム流電池などの流動電解液電池は、鉛酸電池の上記制限を克服する可能性を提供する。具体的には、流動電解液電池の動作寿命は重放電使用に影響を受けず、流動電解液電池のエネルギー対重量比は、鉛酸電池の最大6倍である。
【0004】
流動電解液電池は鉛酸電池と同様、個々の電池の電圧よりも高い総電圧を生成する多数の電池を備える。しかし、鉛酸電池と異なり、流動電解液電池中の電池は、電解液循環路を通じて液体接続される。
【0005】
図1は、従来技術によって知られている基本的な亜鉛臭素流動電解液電池100を示すフロー図である。亜鉛臭素電池100は、負電解液循環路105と独立した正電解液循環路110とを含む。負電解液循環路105は活性化学物質として亜鉛イオンを含み、正電解液循環路110は活性化学物質として臭素イオンを含む。亜鉛臭素電池100は、負電解液ポンプ115、正電解液ポンプ120、負亜鉛電解液(陽極液)タンク125、および正臭素電解液(陰極液)タンク130も備える。通常、錯化剤が臭素電解液に添加されて、元素臭素の反応度と蒸気圧とを低減させるポリ臭素錯体を生成する。
【0006】
高圧を達成するため、亜鉛臭素電池100は、双極構造で接続される多数の電池を備える。たとえば、電池135は、双極極板155と微孔セパレータ板165とを含む半電池140、145を備える。亜鉛臭素電池100は、コレクタ電極板160に正極端部を、別のコレクタ電極板150に負極端部を有する。
【0007】
半電池145などの充電中の正半電池内の化学反応は、以下の式で表すことができる。
2Br
−→Br
2+2e
− 式1
臭素は、このように正電解液循環路110と水力連通する反電池内に生成され、その後、正臭素電解液タンク130に貯蔵される。半電池140などの負半電池内の充電中の化学反応は、以下の式で表すことができる。
Zn
2+2e
−→Zn 式2
金属亜鉛層170は、このように負電解液循環路105と接するコレクタ電極板150上に生成される。半電池140、145内の放電中の化学反応は式1および式2の逆である。
水性電解液を採用するすべての電池は、水の電気分解により水素ガスと水酸化物イオンを生成する。水素がシステムから逃れることができる場合、電解液のpHは最終的に、固体析出物が沈殿できる地点まで上昇する結果、準最適な電池性能をもたらす。
【0008】
この効果に対抗するため、ガス状の水素分子を水素イオンとして循環する電解液流中に戻して大幅なpH上昇を防止する再結合器装置を使用することができる。再結合器はプラチナなどの貴金属触媒を採用して、水素ガスと臭素ガスの反応を促進させて臭化水素酸を生成することによってシステムを再酸性化する。再結合器は、電極スタック内で生成されるガスを受容し、ガス圧を監視および制御するガス取扱ユニットと流体連通する。
【0009】
再結合器を採用する際、そこに含まれる貴金属触媒が電解液流に入り得ないことを保証するため十分な注意を払わねばならない。触媒が電解液流に入ると、触媒が亜鉛電極上でめっきされて電池性能を低下させ水素イオンの損失を招く。さらに、触媒は通常、最適な連続性能を維持するため確実に乾燥させておくように、動作中は高温で保持される。その後、触媒が反応物のある状態で冷却させられる場合、たとえば電池が未使用である時、低速ではあるけれども臭化水素酸を生成し続ける。最終的に触媒は、触媒に損傷をもたらし得るこの酸性液体で飽和される結果、性能が劣化し、触媒材料が電解液流に流れ込む。
【0010】
従来技術による再結合器のさらなる問題は、水素イオンをシステムに戻す速度と効率が反応に対する水素の可用性によって制限されることである。上述したように、システム内の臭素は通常、蒸気圧を低下させるために適切な錯化剤で錯体化されることによって、システム内で低い臭素分圧を有する。しかしながら、このために、再結合器内で許容可能な反応速度を達成するには不十分な量の臭素となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来技術における上記欠点のうち少なくとも一つを克服または軽減する、あるいは商業上魅力的な代替物を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の形式では、唯一のまたは確実に最も広い形式である必要はないが、本発明は、
ハロゲン源と水素源を受容する反応チャンバを画定するハウジングと、
ハロゲン源と水素源からのハロゲン化水素の生成を触媒する反応チャンバ内の触媒と、を備える流動電解液電池用再結合器であって、
反応チャンバ内のハロゲン源、水素源、およびハロゲン化水素のほぼすべてがガス状である再結合器に帰する。
【0013】
ハロゲン源の一部は、ハロゲン含有電解液を蒸発器に露出させることによって生成することができる。
好ましくは、ハロゲン源は臭素源であり、ハロゲン化水素は臭化水素である。
【0014】
必要に応じて、臭素源の一部を、臭素含有電解液を臭素蒸発器に露出させることによって生成することができる。
好ましくは、臭素含有電解液は臭素富化電解液である。
【0015】
ハウジングは、再結合器入口と再結合器出口をさらに備えることができる。
好適には、反応チャンバ出口の開放端を通過する電解液流によって生成される圧力差により、臭素源と水素源は再結合器入口を通って反応チャンバ内に引き込まれ、ハロゲン化水素は再結合器出口を通って反応チャンバから引き出される。
【0016】
好ましくは、再結合器出口の開放端を通過する電解液流は亜鉛電解液ポンプを用いて達成される。
流動電解液電池は、亜鉛臭素または亜鉛塩素流動電解液電池などのハロゲン化亜鉛流動電解液電池である。
【0017】
第二の形式では、本発明は、
流動電解液電池内の電解液流のpHを調節する方法であって、
(a)ハロゲン源と水素源を再結合器に導入するステップであって、再結合器がハロゲン源と水素源からのハロゲン化水素の生成を触媒する触媒を備えるステップと、
(b)生成されたハロゲン化水素を除去し、電解液流に導入することによって、流動電解液電池内の電解液流のpHを調節するステップと、
を備え、反応チャンバ内のハロゲン源、水素源、およびハロゲン化水素のほぼすべてがガス状である方法に帰する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】基本的な従来技術による亜鉛臭素流動電解液電池を示す図である。
【
図2A】本発明の一実施形態にかかわる、再結合器を含むガス取扱ユニットの断面図である。
【
図2B】本発明一実施形態にかかわる、臭素蒸発器を中心とした、
図2Aに示されるガス取扱ユニットの別の断面図である。
【
図3】
図2Aに示される正電解液ポンプユニットの上平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は、亜鉛臭素流動電解液電池の正電解液循環路内での正電解液および錯体化臭素流を制御する制御機構を備える。本発明の要素は図面中、簡潔な輪郭で示されており、本明細書に鑑み当業者にとって自明な過剰な細部の開示で煩雑にならないように、本発明の実施形態の理解に必要な具体的な細部のみを示している。
【0020】
本特許明細書では、第1および第2、左右、前後、上下などの形容詞は、それらの形容詞によって説明される具体的な相対的位置または順序を必ずしも必要とせずに、ある要素または方法ステップと別の要素または方法ステップとを区別して定義するためにのみ使用される。「備える」や「含む」などの文言は、限定的な要素または方法ステップのセットを定義するために用いられていない。これらの文言は、本発明の特定の実施形態に含まれる最低限の要素または方法ステップのセットを定義しているだけである。
【0021】
図2Aに示されるように、ガス取扱ユニット200は、臭素電解液タンクおよび亜鉛電解液タンク(図示せず)からの蒸気をそれぞれ受け取る臭素電解液ガス空間205および亜鉛電解液ガス空間210を備える。臭素電解液ガス空間205には、メッシュ220に少なくとも部分的に収容される任意の臭素蒸発器コア215を備える臭素蒸発器が延在している。臭素蒸発器コア215は、図示される実施形態では、第1の開放端と、内部に形成される開口部225と、動作温度を最大約100℃まで加熱可能なコア内部の加熱素子とを有する長細管の形状を取る。
【0022】
臭素蒸発器コア215は、長時間高温を維持することができ、亜鉛臭素電池内の雰囲気によって大幅には劣化しないセラミック、ガラス、およびプラスチックなどの幅広い材料から形成することができる。一実施形態では、臭素蒸発器コア215は、均一に分布された開口部225を内部に有するプラスチック管の形状を取る。
【0023】
メッシュ220は、適切な大きさの表面積を呈する限り、グラスファイバ、プラスチックファイバ、焼結プラスチックビーズ、またはグラスファイバソックスまたはセラミック
スリーブ内に収容されたプラスチックビーズから形成することができる。図示される実施形態では、メッシュ220はグラスファイバソックスから形成される。
【0024】
図2Aに示されるガス取扱ユニット200とはわずかに異なる断面図である
図2Bに示されるように、高臭素濃度電解液の供給は、
図2Bに矢印で示されるように臭素供給ライン230を介してメッシュ220上に導入される。メッシュ220は臭素蒸発器コア215によって加熱することができ、大きな表面積を生成して該高臭素濃度電解液の蒸発速度を高める役割を果たす。その後、臭素富化蒸気は開口部225を通過して臭素蒸発器コア215の中空内部に至り、該中空内部とつながる蒸気ライン235に入る。よって、臭素蒸発器コア215は、電解液が蒸気ライン235、ひいては再結合器245に進入するのを防止するが、臭素富化蒸気を効率的に通過させる選択的な物理的障壁としての役割を果たす。蒸気ライン235は再結合器入口240と交差して、再結合器入口240とつながることによって、臭素富化蒸気を再結合器245に入れることができる。
【0025】
図3を参照すると、再結合器245は、内部の反応チャンバ255を画定するハウジング250を備える。反応チャンバ255は再結合器入口240および再結合器出口260とつながっている。反応チャンバ255は、基材270の表面上に配置された触媒265を含む。触媒265は、ガス状の臭素と水素の臭化水素への変換を触媒するのに有効な任意の材料から選択することができる。典型的には、触媒265は、プラチナ、ルテニウム、パラジウム、およびロジウムなどの貴金属および貴金属合金から選択される。好ましくは、触媒265は、基材270の表面に結合されるこれらの要素のうち1つまたはそれ以上の適切な組み合わせから形成される。
【0026】
基材270は触媒265を物理的に支持し、好ましくはアルミナ(Al
2O
3)、SiO
2、またはMgOなどのセラミック材料から製造される。好ましくは、基材270はアルミナから構成される。必須ではないが、基材270は多孔質であることが好ましく、そのためにより速い反応速度を有することで、触媒265を蒸着させるための大きな表面積を呈することになる。
【0027】
基材270は、加熱素子280を含む加熱管275を囲む。加熱管275は反応チャンバ255内の蒸気を透過させずに加熱素子280に損傷を及ぼし得る臭化水素/臭化水素酸の進入を阻止する。加熱管275は、上述したように蒸気を透過させず、Al
2O
3、SiO
2、およびMgOなどのガラスまたはセラミック等の妥当な熱伝導特性を有する材料で構成される。
【0028】
加熱素子280は、加熱管275内に位置して加熱管275の体積をほぼ満たし、加熱管275が130〜250℃の触媒温度を達成するのを可能にする。このように触媒265の加熱は、臭化水素酸の生成速度をさらに高めるだけでなく、触媒265を乾燥状態に保ち腐食性の液状の臭化水素酸で飽和される可能性を低減する。加熱素子280は電気コネクタ285を介して電源に接続される。加熱管275、ひいては加熱素子280および電気コネクタ285は、テフロン(登録商標)プラグの形状を取り得るプラグ300を通過して、反応チャンバ255の気密性を維持する。プラグ300は、Oリングなどのシール305を有する再結合器245に挿入して、封止係合を確保することができる。
【0029】
図2Aに戻ると、再結合器出口260は、再結合器入口240の反対側で再結合器245から現れるのが分かり、未反応の水素および臭素を最小量にするだけでなく、新たに生成された臭化水素/臭化水素酸を反応チャンバ255から出すことができる。再結合器出口260は下側領域にて亜鉛電解液ガス空間210で終わる吐出管290と接続する。上側領域で、吐出管290は1つまたはそれ以上の電解液流管295と交差しているのが分かり、流管295(
図2Aに矢印で示される)および吐出管290を介して亜鉛電解液タ
ンクに戻される電解液は、再結合器出口260を通って反応チャンバ255を出る生成物と混合させられる。電解液は亜鉛電解液ポンプ(図示せず)の作用により、吐出管290を通って亜鉛電解液タンクに戻される。
【0030】
上述した各種構成部分の役割を、亜鉛臭素電池の動作に関連して以下に説明する。使用時、亜鉛電解液ポンプは稼働中であるため、電極スタックまたは迂回管を通過した電解液は、電解液流管295を通って吐出管290に駆出されることによって、亜鉛電解液ガス空間210、その後、亜鉛電解液タンクに戻される。この地点で、重力の作用と同様にポンプの影響にもより、電解液は吐出管290を下り再結合器出口260と交差する地点を通過して流れ、亜鉛電解液タンクに戻される。この吐出管290を下る流れは圧力差を生み、つまり、再結合器出口260との接続領域における吐出管290の上側領域での圧力は、亜鉛電解液ガス空間210における下側領域での圧力よりも低い。この低圧領域は、再結合器出口260を出て吐出管290に入り、亜鉛臭素電池内の正確なpHバランスを維持するために亜鉛電解液タンクに戻されるように生成することのできるガス状含有物および少量の凝縮物を能動的に引き込む駆動力を生成する。
【0031】
吐出管290内で生成されるこの低圧駆動力は、再結合器出口260に沿って後方に伝達され、再結合器245、再結合器入口240を介して蒸気ライン235に入る。このようにして、臭素含有蒸気は臭素蒸発器コア215の開口部225を通って蒸気ライン235に引き込まれる。臭素電解液タンク内に存在する錯体剤のため、臭素電解液ガス空間205内の臭素の蒸気圧は特に高くない場合がある。これを補完し、十分な濃度の利用可能な臭素を再結合器245に提供するため、小量の高臭素濃度電解液流が上述したように臭素供給ライン230から臭素蒸発器コア215上に導入され、その後、気化して蒸気ライン235に入る。図示されていないが、臭素供給ライン230は、臭素ポンプを起点とし、そこからの臭素富化電解液供給を受け取る小さな迂回管の形を取る。
【0032】
説明する駆動力によって、臭素富化蒸気は該蒸気ライン235の開放端と臭素蒸発器コア215に設けられる開口部225とを介して蒸気ライン235に引き込まれる。その後、蒸気は再結合器入口240を通って移動し、再結合器245内の反応チャンバ255に入る。電極スタックでの反応により生成される水素ガスは水性電解液にはあまり溶けないため、亜鉛臭素電池全体に分布されるが、特に臭素および亜鉛のガス空間205および210内に蓄積されるガス状の形でほぼ例外なく存在する。水素ガスは、臭素蒸気に関して上述したように、臭素蒸発器コア215を介して再結合器に入ることができる。
【0033】
いったん反応チャンバ255内では、ガス状の水素および臭素は、加熱素子280を含む加熱管275によって加熱される基材270の表面に配置される触媒265と接触する。触媒265は水素と臭素の臭化水素への変換を加速させ、再結合器出口260内の濃縮蒸気内または吐出管290内の電解液内のいずれかの水性環境下で溶解した後、臭化水素酸を形成する。触媒265を高温に維持することは、触媒を乾燥した状態に保つのを助け、表面に腐食性液体が
蓄積する可能性を低減する。その後、触媒265の作用により形成された臭化水素は、上述したように再結合器出口260と吐出管290に引き込まれる。
【0034】
このように、亜鉛電解液ポンプが吐出管290において圧力勾配を生じさせるように動作する限り、一定流のガス状の水素および臭素が再結合器245に入り、一定流の臭化水素がそこから出て最終的に亜鉛電解液タンクへ放出される。亜鉛電解液ポンプが稼働していない時、駆動力が失われ、ガス状反応物はそれ以上反応チャンバ255に流れ込まない。これにより、加熱素子280の電源を切って電力を節約し、触媒265の継続的な湿潤と起こり得る腐食のリスクなしに動作上の安全性を向上させる。
【0035】
この設計は、反応物の再結合器への流れを停止することができない従来技術の再結合器を凌ぐ明らかな利点である。この反応物流は、電池が稼働していない時より低速で発生し続けるが、最終的に触媒と基材は臭化水素酸(HBr)で濡れて、微量の触媒を電解液回路へと戻させる可能性がある。従来技術による再結合器は、再結合器を出入りする
液体流を採用する。これが途切れない流路を形成することによって、使用される貴金属触媒の一部は分離されて、最後は全体の電解液循環路に入り、上述したように亜鉛電極上に蒸着するという問題を引き起こす。
【0036】
本明細書に記載の特定の実施形態の説明から、反応チャンバ255内の反応物および生成物のほぼすべてがガス状であるため、触媒265がいかなる
液体流にも露出しないことが認識される。さらに、たとえ
液体流がある程度存在したとしても、再結合器245は、重力がかかる
液体流に逆らって作用し、
液体流が再結合器出口260を介して出るのを阻止するように設計される。ガス流路のみが可能である。つまり、触媒265は
固体で、溶解されて、あるいはその他の形で液体流に担持されてのみ存在し得るため、触媒265の一部が分離され電解液循環流に導入される可能性が大幅に低減または排除される。
【0037】
したがって、一実施形態では、本発明は、臭素源と水素源を受容する反応チャンバを画定するハウジングと、臭素源と水素源からの臭化水素の生成を触媒する反応チャンバ内の触媒とを備え、
液体流の反応チャンバへの流入を阻止する流動電解液電池用再結合器を提供する。(臭素および/または電解液の)
液体流は、再結合器入口の配向、ガス形状を確保するため臭素を再結合器入口に進入させる臭素蒸発器の使用、および該触媒上での凝縮をほぼ防止する、加熱素子によって加熱される触媒用基材の組み合わせによって、反応チャンバに入るのを阻止される。ガス状成分を再結合器に進入させる駆動力も、反応物が十分迅速に再結合器および出口管を通過して、相当量の凝縮物が防止されることを保証する。
【0038】
再結合器入口の配向は、その長さの少なくとも一部が反応チャンバに入る液体流を阻止する限り、多数の位置のいずれか1つの位置を取ることができる。特定の配向は反応チャンバ自体の配向に左右される。一実施形態では、再結合器入口の少なくとも一部は、反応チャンバを通る反応物および生成物の流れの方向と略垂直に配向される。別の実施形態では、たとえば反応チャンバ自体が垂直に配向されている場合、再結合器入口の少なくとも一部は反応チャンバを通る反応物および生成物の流れの方向に略一致して延在する。
【0039】
従来技術による再結合器のさらなる欠点は、反応チャンバを通過し触媒に接触する十分な濃度の臭素を有さないことが多い点である。これにより、生成される臭化水素酸の量が制限される結果、電池内のpH管理が不十分になる。臭素富化電解液流と接触する臭素蒸発器コア215を提供することで、上述したように、この問題が克服され、電解液流が最適となるpH範囲内に維持されて電池効率と動作寿命を向上させる。
【0040】
最終的に、本発明は、反応物を再結合器245に引き込み、反応生成物を再結合器245から引き出す駆動力として亜鉛電解液ポンプを使用する点で従来技術を凌ぐ明らかな利点を提供する。この設計は、亜鉛臭素電池が稼働しておらず、亜鉛電解液ポンプの電源が切られている時、再結合器245に入る反応物流が有効に停止され、触媒265の近傍での腐食性臭化水素酸の反応生成物の蓄積が防止されることを意味する。これにより、触媒265の寿命が延び、触媒265のいずれかの部分が循環電解液路に入り込むリスクがさらに低減される。
【0041】
上記の本発明の各種実施形態の説明は、当業者に対する説明のために提供される。本発明は、包括的なものとする、あるいは単独の開示される実施形態に限定することを目的としたものではない。上述したように、本発明の多数の代替物または変形物は、上記教示を考察する当業者にとって自明であろう。したがって、いくつかの代替的な実施形態を具体
的に説明してきたが、当業者においてはその他の実施形態も自明であり、あるいは比較的容易に開発が行えるものである。したがって、本特許明細書は、ここに記載される本発明の代替物、修正物、および変形物、および上記本発明の精神および範囲に属するその他の実施形態をすべて包括することを意図する。