【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例が図面にしたがって説明される。
図1〜
図6は実施例1を示す。なお、各図において靴のアッパーは図示されていない。
【0028】
本実施例は例えばバレーボール用の靴である。
図1に示すソールはアウトソール1、ミッドソール2および強化プレート3が接着ないし溶着により互いに一体に積層されている。
【0029】
図6に示すアウトソール1はゴムの発泡体または非発泡体で形成され、前記ミッドソール2および強化プレート3よりも床面との摩擦力が大きい。前記アウトソール1は床面に接地する接地面1sと、後述する防滑部材1bを形成する前端の巻上部とを有する。
【0030】
前記ミッドソール2はアウトソール1の上方Zに配置され、足裏の全域を覆う。前記ミッドソール2は例えばEVAのような熱可塑性の樹脂成分を有する発泡体で主に形成され、着地の衝撃を緩衝する。なお、
図1に示すように、ミッドソール2の一部がゴム様の弾性を有する緩衝材29などを有していてもよい。
【0031】
前記ミッドソール2の上には、図示しないインソール(中底)が接着される。また、前記インソールの更に上にはソックライナー(中敷き)が図示しないアッパー内に装着される。なお、アッパーとは足の甲を覆って包むものである。
【0032】
図3および
図6において、前記強化プレート3は熱可塑性の樹脂成分を有する非発泡体で形成され、前記アウトソール1のヤング率およびミッドソール2のヤング率よりも大きいヤング率を有する。
なお、前記強化プレート3の好ましいヤング率の値は20〜500Mpaで、より好ましくは40〜200Mpaである。
【0033】
前記強化プレート3は前記アウトソール1と前記ミッドソール2との間に配置されている。本実施例の場合、強化プレート3はアウトソール1の上面1aとミッドソール2の下面2bとの間で挟まれている。なお、ミッドソール2が上下に2層で積層されている場合、上下のミッドソール2の間に前記強化プレート3が配置されていてもよく、したがって、強化プレート3はアウトソール1とミッドソール2との間に配置されていればよい。
【0034】
図5において、B1は母趾、B2は第2趾、B5は小趾を示す。B11,B21およびB51は各々それらの末節骨を示し、B13,B23およびB53は各々それらの基節骨を示し、B14,B24およびB54はそれらの中足骨を示す。
【0035】
前記強化プレート3は、基板部3a、前方巻上部3b、連結バー3c、外縁部30、内側部31およびシャンク部32がループ状に一体に形成されている。この強化プレート3は母趾B1および小趾B5を含む足趾を真上から覆っていない。
【0036】
前記基板部3aは、母趾B1および小趾B5の基節骨B13,B53の骨頭よりも後方Bから足の先端よりも前方Fに延びる。前記強化プレート3の前部3fは湾曲しており、内側Meから外側Laに向かって連なって延びる。
なお、骨頭とは各骨における前方の関節に近い部位で若干太く膨らんだ部位をいい、遠位骨頭とも呼ばれている。一方、骨底とは各骨における後方の関節に近い部位で若干太く膨らんだ部位をいい、近位骨頭とも呼ばれている。
【0037】
図6に示すように、前記前方巻上部3bは前記基板部3aの前記前部3fに一体に連なり、前記ミッドソール2の前端よりも前方Fまで延びると共に前記前部3fから前記ミッドソール2の前端部2eの上面2aよりも上方Zに突出する。更に、前記前方巻上部3bは、上方Zに巻き上がり、
図1に示すように、前記母趾B1の前方Fを覆う。すなわち、前方巻上部3bはミッドソール2の前端よりも斜め上方の前方に向かってミッドソール2に沿って延び、三日月状ないし半月状に前記ミッドソール2の前端の上面2aから突出する。
なお、前記前方巻上部3bにおけるミッドソール2から上方Zに突出している部分には網点が施されている。
【0038】
本実施例の場合、
図1および
図6に示すように、前記前方巻上部3bは、アウトソール1を構成する前記防滑部材1bにより前記前方巻上部3bの下端から上端までが覆われている。なお、前記前方巻上部3bおよび防滑部材1bは図示しないアッパーの爪先部分を覆う。
【0039】
しかし、本発明においては、
図2の前記前方巻上部3bの前面3sの少なくとも一部が、前記強化プレート3よりも床面との摩擦力が大きい
図1の防滑部材1bで覆われていればよい。たとえば防滑部材1bはアウトソール1とは別体であってもよい。また、防滑部材1bに小さな貫通孔や切り欠きが設けられて、前方から前記前方巻上部3bの一部が視認できるようにしてもよい。
【0040】
図6に示すように、前記前方巻上部3bは前記ミッドソール2の前端部2eにおいて前記ミッドソール2の前記上面2aよりも0.3cm〜3.0cm上方に突出しているのが好ましい。突出量ΔHは0.4cm〜2.0cmであることがより好ましい。
【0041】
前記母趾B1の末節骨B11を覆う前記前方巻上部3bの上端の位置は前記母趾B1の末節骨B11の骨底の上面F11よりも下方に設定されているのが好ましい。
【0042】
図5に示すように、本実施例の場合、前記基板部3aは母趾B1および小趾B5の中足趾節間関節MPよりも後方Bまで連続して延びている。更に、前記基板部3aが足の内側Meおよび外側Laにおいてリスフラン関節Rよりも後方Bまで延びている。
【0043】
前記基板部3aは外縁部30、外巻上部30b、内側部31およびシャンク部32を一体に備える。
【0044】
図2の前記外縁部30は前記前部3fから前記ミッドソール2の外縁2lを覆うように後方Bに向かって延びる。前記外巻上部30bは前記外縁部30から上方Zに巻き上る。前記内側部31は前記ミッドソール2の内縁2mから離間し、かつ、前記前部3fから前記内縁2mに沿って
図5の母趾球BOよりも後方Bに延び前記母趾B1の少なくとも一部を覆う。
【0045】
こうして、前記強化プレート3の基板部3aは、前部3f、前方巻上部3bから外縁部30および内側部31を介してシャンク部32まで連なったループ状に形成されている。なお、シャンク部32は、周知のように、アーチを強化する。
【0046】
前記強化プレート3は前記基板部3aの内側Meと外側Laとを連結する連結バー3cを更に一体に備える。前記連結バー3cの内側端3mは外側端3lよりも後方Bに配置されている。したがって、前記連結バー3cは外側Laに向かって延びるに従い前方Fに延びる。
【0047】
ループ状の強化プレート3には、前記連結バー3cにより2つの貫通孔H1、H2が形成される。
前記連結バー3cは第2趾B2から小趾B5のMP関節MPが大きく伸展しすぎるのを抑制するだろう。
【0048】
つぎに、バレーボールのスパイク時等のジャンプのメカニズムについて説明する。
【0049】
たとえば、右利きの選手の場合、両足が接地した状態から、両膝の屈曲後、膝の屈伸に伴い、MP関節が伸展し、まず、右足が宙に浮き、続いて左足が宙に浮き上がる。
【0050】
図7Aは床反力Fzとジャンプ効率ΣFz(Jump Efficiency)との関係のテスト結果を示し、
図7Bは前記ジャンプ効率ΣFzとジャンプ高さとの関係のテスト結果を示す。
【0051】
図7Aの網点を施した前記ジャンプ効率ΣFz、つまり、床反力Fzが最大となった後、足が完全に床から離れるまでの力積ΣFzは、
図7Bに示すように、ジャンプ高さと強い相関関係があると推測される。
【0052】
ここで、足が離地する瞬間には、通常MP関節が伸展したまま、その前方の爪先で床面を蹴る。この離地する間際に、爪先に力が入り易く、床面を蹴り易くすれば、前記力積ΣFzは、網点で示す主領域α1に、斜線で示す付加領域α2を加えたような大きさとなる。したがって、ジャンプ高さが大きくなるだろう。
【0053】
更に前記離地の間際に、伸展していたMP関節が屈曲すれば、前記付加領域α2が更に大きくなり、更に、ジャンプ高さが大きくなるだろう。
【0054】
図8は実施例2を示す。
この例においては、前方巻上部3bの上部がアウトソール1の巻上部である防滑部材1bから露出している。この例では、前記露出している前方巻上部3bが大きく、スパイク時のジャンプ高さは更に増大するだろう。
【0055】
なお、本実施例2を用いて、ジャンプ高さの増加についてテストしたところ、ジャンプ高さが従来に比べ約2.5cm増大した。
【0056】
図9A〜9Cは更に他の例を示す。
図9Aの例では連結バー3cが設けられていない。
図9Bの例では強化プレート3の前部3fが半月状に形成されている。
図9Cの例では強化プレート3は前部3fからシャンク部32までに開孔が形成されていない。
【0057】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
【0058】
たとえば、
図5の強化プレート3は前方巻上部3bから母趾B1および小趾B5の基節骨B13,B53の骨頭よりも後方Bまで設けられ、前記骨頭よりも後方Bの部分を有していなくてもよい。
あるいは、強化プレート3は前方巻上部3bから母趾B1および小趾B5の中足骨B14,B54の骨頭よりも後方Bまで設けられ、前記骨頭よりも後方Bの部分を有していないU字状であってもよい。
これらの場合、前記シャンク部32から前方Fに向かって外縁部30および内側部31を設け、当該外縁部30および内側部31の前端部が前記強化プレート3の基板部3aの後端部と足の長軸方向の一部において重なるのが好ましい。
また、強化プレート3はミッドソール2の二次成型時にミッドソール2に一体に形成されてもよい。
本構造は左足または右足についてのみ設けられてもよいが、左右の両足について設けられてもよい。
【0059】
したがって、そのような変更および修正は、本発明の範囲のものと解釈される。