特許第5649151号(P5649151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5649151
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】屋内競技用の靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/42 20060101AFI20141211BHJP
   A43B 7/32 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   A43B13/42 101
   A43B7/32
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-511677(P2014-511677)
(86)(22)【出願日】2013年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2013058730
【審査請求日】2014年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100102060
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 喜信
(72)【発明者】
【氏名】坂本 賢志
(72)【発明者】
【氏名】坂田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 晴嗣
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−135824(JP,A)
【文献】 特開平02−102601(JP,A)
【文献】 特開2002−360305(JP,A)
【文献】 実開昭59−103605(JP,U)
【文献】 特開昭58−083901(JP,A)
【文献】 特許第4900846(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0307027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/42
A43B 13/41
A43B 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有するアウトソール1と、
前記アウトソール1の上方に配置されたミッドソール2と、
前記アウトソール1のヤング率およびミッドソール2のヤング率よりも大きいヤング率を有し、前記アウトソール1と前記ミッドソール2との間に配置された樹脂の強化プレート3とを備えた屋内競技用の靴において、
前記強化プレート3は、母趾B1の基節骨B13骨頭および小趾B5の基節骨B53骨頭よりも後方Bから足の先端よりも前方Fに延びると共に前記強化プレート3の前部3fにおいて内側Meから外側Laに向かって連なって延びる基板部3aと、前記基板部3aの前記前部3fから前記ミッドソール2の前端部2eの上面2aよりも上方Zに巻き上がり前記母趾B1の前方Fを覆う巻上部3bとが一体に連なって形成され、かつ、前記母趾B1および前記小趾B5を含む足趾を真上から覆わず、
前記巻上部3bの前面3sの少なくとも一部が、前記強化プレート3よりも床面との摩擦力が大きく、前記アウトソール1の一部を構成する防滑部材1bで覆われていることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1の靴において、前記巻上部3bが前記ミッドソール2の前端部2eにおいて前記ミッドソール2の前記上面2aよりも0.3cm〜3.0cm上方に突出している。
【請求項3】
請求項1の靴において、前記母趾B1の末節骨B11の前方Fを覆う前記巻上部3bの上端の位置が前記母趾B1の末節骨B11の骨底の上面よりも下方に設定されている。
【請求項4】
請求項1,2もしくは3の靴において、前記基板部3aが母趾B1および小趾B5の中足趾節間関節MPよりも後方Bまで連続して延びている。
【請求項5】
請求項4において、前記強化プレート3は前記基板部3aの内側Meと外側Laとを連結する連結バー3cを更に一体に備え、前記連結バー3cの内側端3mが外側端3lよりも後方Bに配置され、前記連結バー3cが外側Laに向かって延びるに従い前方Fに延びる。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の靴において、前記基板部3aが足の内側Meおよび外側Laにおいてリスフラン関節Rよりも後方Bまで延びている。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の靴において、前記防滑部材1bが前記巻上部3bの下端から上端までを覆う。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の靴において、前記基板部3aは、
前記前部3fから前記ミッドソール2の外縁2lを覆うように後方Bに向かって延びる外縁部30と、前記外縁部30から上方Zに巻き上る外巻上部30bと、前記ミッドソール2の内縁2mから離間し、かつ、前記前部3fから前記内縁2mに沿って母趾球BOよりも後方Bに延び前記母趾B1の少なくとも一部を覆う内側部31とを更に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばバレーボールのような屋内競技に適した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
バレーボールにおけるジャンプの大半は両足によるジャンプである。現在のバレーボール用シューズでは、中足部から第1中足の骨頭まで強化プレートを延長し、中足趾節間関節(MP関節)の過度な伸展(背屈)を抑制することにより、ジャンプにおける右足(右利き選手)の水平方向への蹴り出し力を効果的に床面に伝える構造を持つものが販売されている。
【0003】
この先行例はジャンプスピードを増大させるだろう。また、その構造はジャンプにおいては右利き選手で右足のみ効果を発揮するだろう。
【0004】
しかし、前記先行例はジャンプの高さに寄与の高い左足(右利き選手)に着目したものではなく、ジャンプの高さを今一つ増大させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US4,412,393 B(フロントページ)
【特許文献2】US4,453,996 B(フロントページ)
【特許文献3】US2010/0005684 A1(フロントページ)
【特許文献4】US2010/0307027 A1 (フロントページ)
【特許文献5】JP57−186509 Y(図2
【特許文献6】JP2002−360305 A(要約)
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は屋内競技において、両足でジャンプする際のジャンプの高さを増大させることのできる靴を提供することである。
【0007】
本発明は接地面を有するアウトソールと、
前記アウトソールの上方に配置されたミッドソールと、
前記アウトソールのヤング率およびミッドソールのヤング率よりも大きいヤング率を有し、前記アウトソールと前記ミッドソールとの間に配置された樹脂の強化プレートとを備えた屋内競技用の靴において、
前記強化プレートは、母趾および小趾の基節骨骨頭から足の先端よりも前方に延びると共に前記強化プレートの前部において内外に連なる基板部と、前記基板部の前記前部から前記ミッドソールの前端部の上面よりも上方に巻き上がり前記母趾の前方を覆う巻上部とが一体に連なって形成され、かつ、前記母趾および前記小趾を含む足趾を真上から覆わず、
前記巻上部の前面の少なくとも一部が、前記強化プレートよりも床面との摩擦力が大きい防滑部材で覆われていることを特徴とする。
【0008】
バレーボールのような屋内競技において、ジャンプの高さを大きくするには、床からソールに受ける反力がピークとなった時点から後の力積を大きくするのが望ましい。
【0009】
本発明の強化プレートは母趾および小趾の基節骨骨頭から足の先端よりも前方に延びていると共に、前記巻上部において基板部の前部からミッドソールの前端部の上面よりも上方に巻き上がっている。そのため、ジャンプの際に爪先が床面から離れる直前に、母趾のMP関節および趾節間関節の伸展(背屈)を抑え、母趾の屈曲(底屈)する力を前記強化プレートを介して最後まで床面に伝えることができるため、大きな力積を得ることができるだろう。したがって、ジャンプの高さを増大させることができるだろう。また、ジャンプ動作中に屈曲した前記強化プレートが復元することにより力積が増加し、ジャンプの高さを増大させることができるだろう。
【0010】
一方、バレーボールのような屋内競技においては、爪先の先端が床面に接した状態で、ボールをレシーブすることがある。このような場合、前記強化プレートの前面が完全に露出していると、強化プレートと床面との間に滑りが生じ易く、所期のプレー(動作)を実現できない。
【0011】
本発明の強化プレートの巻上部の前面の一部又は全部は防滑部材で覆われている。そのため、前記滑りを抑制し、所期のプレー(動作)を実現できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の実施例1にかかるソールを示す概略斜視図である。
図2図2は同ソールのうちのミッドソールと強化プレートとを示す底面側から見た斜視図である。
図3図3は同ソールの分解斜視図である。
図4図4は強化プレートの斜視図である。
図5図5は強化プレートと足の骨格との関係を示す平面図である。
図6図6はミッドソールおよびアウトソールを一部断面して示す強化プレートの内側面図である。
図7図7Aはジャンプ時の床面からの垂直反力とジャンプ効率との関係を示す特性図、図7Bはジャンプ効率とジャンプ高さとの関係を示す特性図である。
図8図8は実施例2にかかるソールを示す概略斜視図である。
図9図9A図9Bおよび図9Cは、それぞれ、他の実施例にかかる強化プレートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましくは、前記巻上部が前記ミッドソールの前端部において前記ミッドソールの前記上面よりも0.3cm〜3.0cm上方に突出している。
【0014】
巻上部の突出高さが0.3cm未満の場合には前記効果が不十分になり、一方、突出高さが3.0cmを超える場合には、靴の爪先の剛性が大きくなりすぎるだろう。
このような理由から、前記突出高さは、より好ましくは0.4cm〜2.0cm、最も好ましくは0.4cm〜1.5cmに設定される。
【0015】
好ましくは、前記母趾の末節骨の前方を覆う前記巻上部の上端の位置が前記母趾の末節骨の骨底の上面よりも下方に設定されている。
【0016】
この場合、爪先の剛性が大きくなりすぎるのを防止し得る。なお、前記末節骨を覆う前記巻上部には開孔(貫通孔)や切欠きがあってもよい。
【0017】
好ましくは、前記基板部が母趾および小趾の中足趾節間関節(MP関節)よりも後方まで連続して延びている。
【0018】
この場合、MP関節の過度の伸展を抑制し得ると共に、MP関節において屈曲した強化プレートの復元による力積の増加が期待できる。
【0019】
更に好ましくは、前記強化プレートは前記基板部の内側と外側とを連結する連結バーを更に一体に備え、前記連結バーの内側端が外側端よりも後方に配置され、前記連結バーが外側に向かって延びるに従い前方に延びる。
【0020】
この場合、前記連結バーは足のMP関節の配列と交差する方向に延びている。したがって、前記MP関節の過度の伸展を更に抑制し得る。
【0021】
好ましくは、前記基板部が足の内側および外側においてリスフラン関節よりも後方まで延びている。
【0022】
この場合、前記MP関節における足の伸展が更に抑制され、ジャンプ高さの増大が期待できる。
【0023】
好ましくは、前記防滑部材が前記巻上部の下端から上端までを覆う。この場合、樹脂の巻上部が床面に接触するおそれがなく、前記滑りを確実に抑制し得る。
但し、防滑部材は巻上部の全面を覆う必要はなく、防滑部材に開孔(貫通孔)を設けて強化プレートが前方から少し見えるようにしてもよい。
【0024】
好ましくは、前記基板部は、前記前部から前記ミッドソールの外縁を覆うように後方に向かって延びる外縁部と、前記外縁部から上方に巻き上る外巻上部と、前記ミッドソールの内縁から離間し、かつ、前記前部から前記内縁に沿って母趾球よりも後方に延び前記母趾の少なくとも一部を覆う内側部とを更に備える。
【0025】
この場合、母趾に沿って延びる基板部の内側部は、ジャンプの際に伸展した母趾のMP関節が屈曲するのを助け、そのため、ジャンプ高さを増大させる。
一方、ミッドソールの外縁に沿って延びる外縁部と外巻上部は小趾側の屈曲を助けるだけでなく、着地やレシーブなどの際に足が外側に振れ(ブレ)るのを抑制する。
【0026】
本発明は、添付の書類を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲のみによって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例が図面にしたがって説明される。
図1図6は実施例1を示す。なお、各図において靴のアッパーは図示されていない。
【0028】
本実施例は例えばバレーボール用の靴である。
図1に示すソールはアウトソール1、ミッドソール2および強化プレート3が接着ないし溶着により互いに一体に積層されている。
【0029】
図6に示すアウトソール1はゴムの発泡体または非発泡体で形成され、前記ミッドソール2および強化プレート3よりも床面との摩擦力が大きい。前記アウトソール1は床面に接地する接地面1sと、後述する防滑部材1bを形成する前端の巻上部とを有する。
【0030】
前記ミッドソール2はアウトソール1の上方Zに配置され、足裏の全域を覆う。前記ミッドソール2は例えばEVAのような熱可塑性の樹脂成分を有する発泡体で主に形成され、着地の衝撃を緩衝する。なお、図1に示すように、ミッドソール2の一部がゴム様の弾性を有する緩衝材29などを有していてもよい。
【0031】
前記ミッドソール2の上には、図示しないインソール(中底)が接着される。また、前記インソールの更に上にはソックライナー(中敷き)が図示しないアッパー内に装着される。なお、アッパーとは足の甲を覆って包むものである。
【0032】
図3および図6において、前記強化プレート3は熱可塑性の樹脂成分を有する非発泡体で形成され、前記アウトソール1のヤング率およびミッドソール2のヤング率よりも大きいヤング率を有する。
なお、前記強化プレート3の好ましいヤング率の値は20〜500Mpaで、より好ましくは40〜200Mpaである。
【0033】
前記強化プレート3は前記アウトソール1と前記ミッドソール2との間に配置されている。本実施例の場合、強化プレート3はアウトソール1の上面1aとミッドソール2の下面2bとの間で挟まれている。なお、ミッドソール2が上下に2層で積層されている場合、上下のミッドソール2の間に前記強化プレート3が配置されていてもよく、したがって、強化プレート3はアウトソール1とミッドソール2との間に配置されていればよい。
【0034】
図5において、B1は母趾、B2は第2趾、B5は小趾を示す。B11,B21およびB51は各々それらの末節骨を示し、B13,B23およびB53は各々それらの基節骨を示し、B14,B24およびB54はそれらの中足骨を示す。
【0035】
前記強化プレート3は、基板部3a、前方巻上部3b、連結バー3c、外縁部30、内側部31およびシャンク部32がループ状に一体に形成されている。この強化プレート3は母趾B1および小趾B5を含む足趾を真上から覆っていない。
【0036】
前記基板部3aは、母趾B1および小趾B5の基節骨B13,B53の骨頭よりも後方Bから足の先端よりも前方Fに延びる。前記強化プレート3の前部3fは湾曲しており、内側Meから外側Laに向かって連なって延びる。
なお、骨頭とは各骨における前方の関節に近い部位で若干太く膨らんだ部位をいい、遠位骨頭とも呼ばれている。一方、骨底とは各骨における後方の関節に近い部位で若干太く膨らんだ部位をいい、近位骨頭とも呼ばれている。
【0037】
図6に示すように、前記前方巻上部3bは前記基板部3aの前記前部3fに一体に連なり、前記ミッドソール2の前端よりも前方Fまで延びると共に前記前部3fから前記ミッドソール2の前端部2eの上面2aよりも上方Zに突出する。更に、前記前方巻上部3bは、上方Zに巻き上がり、図1に示すように、前記母趾B1の前方Fを覆う。すなわち、前方巻上部3bはミッドソール2の前端よりも斜め上方の前方に向かってミッドソール2に沿って延び、三日月状ないし半月状に前記ミッドソール2の前端の上面2aから突出する。
なお、前記前方巻上部3bにおけるミッドソール2から上方Zに突出している部分には網点が施されている。
【0038】
本実施例の場合、図1および図6に示すように、前記前方巻上部3bは、アウトソール1を構成する前記防滑部材1bにより前記前方巻上部3bの下端から上端までが覆われている。なお、前記前方巻上部3bおよび防滑部材1bは図示しないアッパーの爪先部分を覆う。
【0039】
しかし、本発明においては、図2の前記前方巻上部3bの前面3sの少なくとも一部が、前記強化プレート3よりも床面との摩擦力が大きい図1の防滑部材1bで覆われていればよい。たとえば防滑部材1bはアウトソール1とは別体であってもよい。また、防滑部材1bに小さな貫通孔や切り欠きが設けられて、前方から前記前方巻上部3bの一部が視認できるようにしてもよい。
【0040】
図6に示すように、前記前方巻上部3bは前記ミッドソール2の前端部2eにおいて前記ミッドソール2の前記上面2aよりも0.3cm〜3.0cm上方に突出しているのが好ましい。突出量ΔHは0.4cm〜2.0cmであることがより好ましい。
【0041】
前記母趾B1の末節骨B11を覆う前記前方巻上部3bの上端の位置は前記母趾B1の末節骨B11の骨底の上面F11よりも下方に設定されているのが好ましい。
【0042】
図5に示すように、本実施例の場合、前記基板部3aは母趾B1および小趾B5の中足趾節間関節MPよりも後方Bまで連続して延びている。更に、前記基板部3aが足の内側Meおよび外側Laにおいてリスフラン関節Rよりも後方Bまで延びている。
【0043】
前記基板部3aは外縁部30、外巻上部30b、内側部31およびシャンク部32を一体に備える。
【0044】
図2の前記外縁部30は前記前部3fから前記ミッドソール2の外縁2lを覆うように後方Bに向かって延びる。前記外巻上部30bは前記外縁部30から上方Zに巻き上る。前記内側部31は前記ミッドソール2の内縁2mから離間し、かつ、前記前部3fから前記内縁2mに沿って図5の母趾球BOよりも後方Bに延び前記母趾B1の少なくとも一部を覆う。
【0045】
こうして、前記強化プレート3の基板部3aは、前部3f、前方巻上部3bから外縁部30および内側部31を介してシャンク部32まで連なったループ状に形成されている。なお、シャンク部32は、周知のように、アーチを強化する。
【0046】
前記強化プレート3は前記基板部3aの内側Meと外側Laとを連結する連結バー3cを更に一体に備える。前記連結バー3cの内側端3mは外側端3lよりも後方Bに配置されている。したがって、前記連結バー3cは外側Laに向かって延びるに従い前方Fに延びる。
【0047】
ループ状の強化プレート3には、前記連結バー3cにより2つの貫通孔H1、H2が形成される。
前記連結バー3cは第2趾B2から小趾B5のMP関節MPが大きく伸展しすぎるのを抑制するだろう。
【0048】
つぎに、バレーボールのスパイク時等のジャンプのメカニズムについて説明する。
【0049】
たとえば、右利きの選手の場合、両足が接地した状態から、両膝の屈曲後、膝の屈伸に伴い、MP関節が伸展し、まず、右足が宙に浮き、続いて左足が宙に浮き上がる。
【0050】
図7Aは床反力Fzとジャンプ効率ΣFz(Jump Efficiency)との関係のテスト結果を示し、図7Bは前記ジャンプ効率ΣFzとジャンプ高さとの関係のテスト結果を示す。
【0051】
図7Aの網点を施した前記ジャンプ効率ΣFz、つまり、床反力Fzが最大となった後、足が完全に床から離れるまでの力積ΣFzは、図7Bに示すように、ジャンプ高さと強い相関関係があると推測される。
【0052】
ここで、足が離地する瞬間には、通常MP関節が伸展したまま、その前方の爪先で床面を蹴る。この離地する間際に、爪先に力が入り易く、床面を蹴り易くすれば、前記力積ΣFzは、網点で示す主領域α1に、斜線で示す付加領域α2を加えたような大きさとなる。したがって、ジャンプ高さが大きくなるだろう。
【0053】
更に前記離地の間際に、伸展していたMP関節が屈曲すれば、前記付加領域α2が更に大きくなり、更に、ジャンプ高さが大きくなるだろう。
【0054】
図8は実施例2を示す。
この例においては、前方巻上部3bの上部がアウトソール1の巻上部である防滑部材1bから露出している。この例では、前記露出している前方巻上部3bが大きく、スパイク時のジャンプ高さは更に増大するだろう。
【0055】
なお、本実施例2を用いて、ジャンプ高さの増加についてテストしたところ、ジャンプ高さが従来に比べ約2.5cm増大した。
【0056】
図9A〜9Cは更に他の例を示す。
図9Aの例では連結バー3cが設けられていない。
図9Bの例では強化プレート3の前部3fが半月状に形成されている。
図9Cの例では強化プレート3は前部3fからシャンク部32までに開孔が形成されていない。
【0057】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
【0058】
たとえば、図5の強化プレート3は前方巻上部3bから母趾B1および小趾B5の基節骨B13,B53の骨頭よりも後方Bまで設けられ、前記骨頭よりも後方Bの部分を有していなくてもよい。
あるいは、強化プレート3は前方巻上部3bから母趾B1および小趾B5の中足骨B14,B54の骨頭よりも後方Bまで設けられ、前記骨頭よりも後方Bの部分を有していないU字状であってもよい。
これらの場合、前記シャンク部32から前方Fに向かって外縁部30および内側部31を設け、当該外縁部30および内側部31の前端部が前記強化プレート3の基板部3aの後端部と足の長軸方向の一部において重なるのが好ましい。
また、強化プレート3はミッドソール2の二次成型時にミッドソール2に一体に形成されてもよい。
本構造は左足または右足についてのみ設けられてもよいが、左右の両足について設けられてもよい。
【0059】
したがって、そのような変更および修正は、本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明はバレーボールなどの屋内競技用の靴に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1:アウトソール 1a:上面 1b:防滑部材 1s:接地面
2:ミッドソール 2a:上面 2b:下面 2e:前端部 2l:外縁 2m:内縁
3:強化プレート 30:外縁部 30b:外巻上部 31:内側部 32:シャンク部 3a:基板部 3b:(前方)巻上部 3c:連結バー 3e:上端 3f:前部3s:前面 3l:外側端 3m:内側端
B1:母趾 B11:末節骨 B13:基節骨 B14:中足骨
B2:第2趾 B21:末節骨 B23:基節骨 B24:中足骨
B5:小趾 B51:末節骨 B53:基節骨 B54:中足骨
BO:母趾球
MP:中足趾節間関節 R:リスフラン関節
Me:内側 La:外側
F:前方 B:後方 Z:上方
ΔH:突出量
【要約】
接地面を有するアウトソールと、アウトソールの上方に配置されたミッドソールと、 アウトソールのヤング率およびミッドソールのヤング率よりも大きいヤング率を有し、アウトソールとミッドソールとの間に配置された樹脂の強化プレートとを備えた屋内競技用の靴において、強化プレートは、母趾および小趾の基節骨骨頭よりも後方から足の先端よりも前方に延びると共に強化プレートの前部において内側から外側に向かって連なって延びる基板部と基板部の前部からミッドソールの前端部の上面よりも上方Zに巻き上がり母趾の前方を覆う巻上部とが一体に連なって形成され、かつ、足趾を真上から覆わず、巻上部の前面の少なくとも一部が、強化プレートよりも床面との摩擦力が大きい防滑部材で覆われていることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9