(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649189
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】缶体の成形装置
(51)【国際特許分類】
B21D 22/28 20060101AFI20141211BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20141211BHJP
B21D 51/26 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
B21D22/28 L
B21D24/00 Z
B21D51/26 X
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-531015(P2011-531015)
(86)(22)【出願日】2009年10月1日
(65)【公表番号】特表2012-505082(P2012-505082A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】US2009005411
(87)【国際公開番号】WO2010042150
(87)【国際公開日】20100415
【審査請求日】2012年7月27日
(31)【優先権主張番号】12/287,479
(32)【優先日】2008年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503472234
【氏名又は名称】コンテナ・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ストッド・アール・ピーター
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05823040(US,A)
【文献】
特開昭63−112032(JP,A)
【文献】
特表2008−508104(JP,A)
【文献】
特表平08−509664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 21/26
B21D 22/28
B21D 24/00
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械プレスによってフラットな金属シート(170)からカップ形状の円形の缶体(15)を成形する装置であり、この缶体は中心パネル(16)を含み、この中心パネル(16)は、環状のパネルウォール(17、18)によって、実質的にU字形の断面形状を有する環状のカウンタシンク(19)に繋がれており、このカウンタシンク(19)は、傾斜した環状のチャックウォール(23、24)によって環状のクラウン(28)の内側ウォール部分(26)に繋がれている缶体の成形装置であって、
この缶体の成形装置は、環状のリテーナ(38)、ダイの中心ピストン(60)、環状のブランクドローダイ(48)、環状の外側圧力スリーブ(55)、環状の内側圧力スリーブ(80)とから構成され、
環状のリテーナ(38)は、プレスに連結するダイシュー(40)により支持され、
ダイの中心ピストン(60)は、前記リテーナ(38)によりその動きを支持され、このダイの中心ピストン(60)と前記リテーナ(38)により環状の第1の空気圧力チャンバ(89)が画定され、
環状のブランクドローダイ(48)は、前記リテーナ(38)に取り付けられかつダイの中心ポンチ(65)を支持する前記ダイの中心ピストン(60)を囲繞し、
前記リテーナ(38)は、前記ブランクドローダイ(48)の内側に配備される環状の外側圧力スリーブ(55)を支持し、この外側圧力スリーブ(55)は前記第1空気圧力チャンバ(89)の内部に環状のピストンを有し、
前記外側圧力スリーブ(55)と前記ダイの中心ピストン(60)とがその間に環状の第2の空気圧力チャンバ(84)を画定し、
環状の内側圧力スリーブ(80)は、前記外側圧力スリーブ(55)と前記ダイの中心ピストン(60)との間に配備されるとともに、前記第2空気圧力チャンバ(84)の内部に環状のピストン(82)を有する装置において、
前記ダイの中心ピストン(60)が空気溜めチャンバ(70)を画定し、
流路(76、135)が前記空気溜めチャンバ(70)に制御空気圧を供給し、
細長い複数個の空気流路(88)が、前記ダイの中心ピストン(60)の内部に円周方向に間隔配置されて、前記空気溜めチャンバ(70)から前記第2空気圧力チャンバ(84)へと軸方向に延び、
前記制御空気圧を前記空気溜めチャンバ(70)および前記空気流路(88)に作用させることにより、前記内側圧力スリーブ(80)に対して制御された空気バネ力を生成させることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記内側圧力スリーブ(80)は前記ダイの中心ポンチ(65)に対して軸方向に動き、装置の停止時に前記ダイの中心ポンチ(65)から軸方向に突き出る輪郭の環状ノーズ部分(140)を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記内側圧力スリーブ(80)の環状ノーズ部分(140)が前記ダイの中心ポンチ(65)から軸方向に突き出す長さを正確に選定するために、前記ダイの中心ポンチ(65)と前記内側圧力スリーブ(80)のピストン(82)との間に環状のスペーサ(68)が挿入されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記空気溜めチャンバ(70)が、空気流路(135)によって、前記外側圧力スリーブ(55)に対する前記第1空気圧力チャンバ(89)に連結され、かつ、同じ制御可能な空気圧が、前記リテーナ(38)内部のポート(92)から前記第1空気圧力チャンバ(89)と前記第2空気圧力チャンバ(84)に、前記空気溜めチャンバ(70)と前記ダイの中心ピストン内の前記空気流路(88)を介して供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記流路のうちの第1の流路(76)が、前記空気溜めチャンバ(70)と前記ダイの中心ピストン(60)内部の前記空気流路(88)に同じ制御可能な空気圧を供給するとともに、それよりかなり低い圧力空気が、前記リテーナ(38)内部のポート(92)から前記外側圧力スリーブ(55)のピストン(56)に対する前記第1空気圧力チャンバ(89)に供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ダイの中心ピストン(60)が前記環状のリテーナ(38)内を軸方向に動くことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シートまたはアルミニウムシートから缶体を
成形するための装置に関する。
これに関する方法および装置は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6に開示されている方法、および、装置または工具のようなもの
がある。これらの特許の開示内容は、本発明の詳細説明を補足するために、参照によって本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
このような工具アセンブリまたは装置においては、この装置を、上記の特許文献4および特許文献6に開示されているような単動機械プレスに使用するものとして構成して、例えば、上記の特許文献2および特許文献5に開示されているような複動機械プレスの使用を避けることが望ましいと認められてきた。単動の高速プレスは、構造がより簡単でより経済的であり、かつ運転および保守整備がより経済的であると共に、例えば、1.75インチ
(4.445cm)のストロークと毎分650ストロークの速度とにおいて、効率的かつ効果的に運転できる。また、当分野においては、複動プレスよりも遥かに多くの単動高速プレスが使用されている。
【0003】
また、この装置および工具アセンブリに内側の圧力スリーブおよび外側の圧力スリーブを組み込み、両スリーブを空気圧で操作することが望ましいと認められてきたが、その場合、円周方向に間隔配置され軸方向に延びるスプリングであって、例えば、特許文献6に開示されているようなスプリングによって内側の圧力スリーブを作動させること、あるいは、円周方向に間隔配置され軸方向に延びるピンであって、例えば、特許文献2に開示されているようなピンを用いることは避けることが望ましいとされている。ピンと、そのピンを作動させる単一ピストンとの軸方向の高速の往復動作によって好ましくない付加的な熱が発生し、圧縮スプリングを用いる内側の圧力スリーブに対して、調整可能でかつ正確に制御可能な軸方向の力を作り出すことが難しいのである。
【0004】
さらに、プレスの高速運転中に外側の圧力スリーブとダイのコアリングとの間の材料が薄くなることを避けるために、外側の圧力スリーブによって、正確に制御可能な一定の力をシート材料の上に印加することが望ましい。また、内側の圧力スリーブに対する正確に制御可能な空気圧も、金属シートを薄くすることなく缶体のカウンタシンク、パネルウォールおよび中心パネルを成形する間、缶体のチャックウォールを保持するために望ましい。さらに、当分野に存在する多くの単動高速プレスにおいて利用可能にするために、缶体製造用の工具アセンブリの垂直高さを最小化することが望ましく、かつ、水冷工具部品の使用を避けるように熱の発生を低く抑えてより高速で運転できることが望ましい。上記の特許文献を吟味すると、いずれの特許も、上記の望ましい特徴をすべて提供するものではないことが明らかになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,713,958号明細書
【特許文献2】米国特許第4,716,755号明細書
【特許文献3】米国特許第4,808,052号明細書
【特許文献4】米国特許第4,955,223号明細書
【特許文献5】米国特許第6,658,911号明細書
【特許文献6】米国特許第7,302,822号明細書
【特許文献7】米国特許第7,341,163号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0029269号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、缶体を高速製造するための改良型の方法と装置または工具とであって上記の望ましい特徴のすべてを備えた方法と装置または工具とに関する。本発明の工具アセンブリは、本出願人に関わる特許文献7および特許文献8に開示されているような缶体の製造用としても理想的に適している。この特許文献7および特許文献8の開示内容も参照によって本願に組み込まれる。本発明の方法と装置または工具アセンブリとは、特に、単動プレスにおける使用と、一様かつ正確な缶体の高速度での製造とに適しており、しかも、運転中の工具アセンブリの熱による変化を避けるために熱の発生が最低に抑えられている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示された一実施形態によれば、缶体は、環状の外側の圧力スリーブの内部に位置する環状の内側の圧力スリーブを含む工具アセンブリによって成形され、この両スリーブ共、対応する環状の空気ピストンチャンバの内部に一体型のピストンを有する。外側の圧力スリーブは、環状のブランクドローダイの内部に支持され、このブランクドローダイは、単動プレスの上部ダイシュー上に取り付けられる上部リテーナに固定される。このリテーナは、軸方向に相対的に可動に支持することができるダイの中心ピストンをも支持し、このダイの中心ピストンは、内側の圧力スリーブ内部のダイの中心ポンチを支持する。ダイの中心ピストンは、制御された圧力においてポートから空気供給される空気溜めチャンバを画定する中心部分を有する。この空気溜めチャンバは、円周方向に間隔配置される複数個の細長い空気流路によって、内側の圧力スリーブ用の空気ピストンチャンバに連結される。外側の圧力スリーブ用の空気ピストンチャンバには、空気が、上部リテーナにおける別個のポートから、制御されたかなり低い圧力において供給される。
【0008】
内側の圧力スリーブは、ダイの中心ピストンから直角に突き出る環状のノーズ部分を有しており、このノーズ部分が、ダイカットされた金属シートのディスクの内部においてカップの絞りを開始する。この金属シートのディスクは、外側の圧力スリーブと、反対側に固定されるダイのコアリングとの間に保持されている。このダイのコアリングは、プレスの固定された下部ダイシュー上に取り付けられる下部リテーナによって支持される。内側の圧力スリーブのノーズ部分およびダイのコアリングは、ディスクに環状のチャックウォールを成形する互いに適合する輪郭表面を有しており、ダイの中心ポンチが、内側の圧力スリーブと協働してカップの絞りを完成させる。この場合、ダイのコアリング内部に支持されるパネルポンチがカップに係合する。パネルポンチは、缶体の中心パネルと、さらに環状のパネルウォールおよび環状のカウンタシンクとを成形する外面の輪郭化された表面を有する。本発明の別の実施形態においては、外側の圧力スリーブ用の空気ピストンチャンバが、空気溜めチャンバまで延びる空気流路によって連結される。その結果、内側の圧力スリーブ用の空気ピストンチャンバと外側の圧力スリーブ用の空気ピストンチャンバとが、同じ制御可能な空気供給圧力を受け取ることになり、それによって、上部ダイシュー上の工具アセンブリを操作するために、異なる圧力の2つの異なる空気供給ラインを設ける必要性が回避される。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細説明、添付の図面、および請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に従って構成されかつ操作される工具アセンブリの軸方向断面図である。
【
図2】
図1に示す工具アセンブリであって本発明の変更形態または別の実施形態に従って構成される工具アセンブリの軸方向断面図である。
【
図3】
図1および2に示す工具アセンブリの一部分の拡大断面図であって、本発明に従って缶体を製造するための第1ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図12を参照すると、大きく拡大された缶体15が、約0.0082インチ
(約0.020828cm)の厚さの金属シートまたはアルミニウムシートから成形される。缶体15は、フラットな円形の中心パネル16を含み、この中心パネル16は、円錐台状またはテーパ状の環状のパネルウォール部分17とほぼ円筒状のパネルウォール部分18とによって、環状のカウンタシンク19に繋がれており、このカウンタシンク19は、傾斜したまたは円錐台状の内側のウォール部分21を有すると共に、一般的にU字形の断面形状を備えている。カウンタシンク19は、僅かに傾斜した環状の外側のウォール部分22を有し、この外側のウォール部分22は、環状の下部チャックウォール部分23と、曲線状の断面形状を有する環状の上部チャックウォール部分24とに繋がっている。チャックウォールの曲線状の上部ウォール部分24は、クラウン部分28の傾斜したまたは円錐台状の環状の内側のウォール部分26に繋がっており、このクラウン部分28は、下向きの曲線状の外側の周囲リップ部分29を有する。缶体15の断面形状または形体は、本出願人に関わる上記の特許文献8に、さらに具体的に開示されている。しかし、本発明の方法および装置は、異なる形体を有する缶体の製造にも適している場合があり得る。
【0012】
図1を参照すると、工具アセンブリ35は、単動機械プレスの上部ダイシュー40に取り付けられる環状の上部リテーナ38を含む。このリテーナ38は円筒状部分41を有しており、この円筒状部分41は、上部ダイシュー40の適合する相手側空洞部42の中に上向きに延び込むと共に、圧力空気チャンバ44を画定する。環状のブランクドローダイ48は外向きに突き出る上部のフランジ部分49を有しており、このフランジ部分49が、円周方向に間隔配置される1組のネジ51によってリテーナ38に固定される。ブランクドローダイ48の上部フランジ部分には、フラットな環状の磨きスペーサ52が固定され、上部リテーナ38に対するダイ48の軸方向の正確な間隔を提供する。
【0013】
環状の外側の圧力スリーブ55は、ブランクドローダイ48の内部に軸方向可動に支持され、半径方向のプラスチックの摩耗ピン57を有する一体型のピストン56を含む。ダイの中心ピストン60は、上部リテーナ38の内部に軸方向可動を支持することができる。このダイの中心ピストン60は下部部分62を含むが、この下部部分62は、中心の頭付きネジ66によってダイの中心ピストン60に取り外し可能に固定されるダイの中心ポンチ65を支持する。ダイの中心ポンチ65と、ダイの中心ピストン60の下部部分62の肩部との間には、フラットな環状の磨きスペーサ68を配置して、ダイの中心ピストン60に対するダイの中心ポンチの軸方向位置を正確に選定できるようにする。ダイの中心ピストン60の中心部分の内部には、円筒状の圧力空気溜めチャンバ70が形成され、頂部においてネジ付きプラグ71によって閉止される。この空気溜めチャンバ70は、リテーナ38の内部に形成されるポート74と、ダイの中心ピストン60の内部に形成される半径方向配列の流路76とを通して圧力空気を受け取る。
【0014】
環状の内側の圧力スリーブ80は、外側の圧力スリーブ55の内部に軸方向可動に支持され、一体型のピストン82を含む。この一体型ピストン82は、このピストン82と、ダイの中心ピストン60の下部部分62の半径方向の肩部86との間において軸方向に画定される環状の空気ピストンチャンバ84の内部に閉じ込められる。空気ピストンチャンバ84は、円周方向に間隔配置される複数個の空気流路88から圧力空気を受け取る。この空気流路88は、肩部86からダイの中心ピストン60内部の空気溜めチャンバ70に軸方向に延びている。内側の圧力スリーブ80のピストン82と、外側の圧力スリーブ55のピストン56と、ダイの中心ピストン60の上部部分とは、適切な2片の空気シールリングを備えている。外側の圧力スリーブ55のピストン56は、環状の空気圧力チャンバ89の内部に閉じ込められるが、この空気圧力チャンバ89は、ストップ端の肩部90まで延びており、環状の空気チャンバ91と繋がっている。チャンバ89および91は、リテーナ38におけるポート92から圧力空気を受け取る。
【0015】
工具アセンブリ35は、また、単動プレスの定置型下部ダイシュー95に取り付けられる環状の固定式下部リテーナ94をも含む。下部リテーナ94は、環状の上部部分99を有する固定式のダイのコアリング98を支持し、かつ、環状のカットエッジダイ105を閉じ込める環状の固定式リテーナ102をも支持する。リテーナ102にはフラットな環状の磨きスペーサ107が固定され、カットエッジダイ105を閉じ込めると共に、ダイのコアリング98の環状の上部部分99に対するカットエッジダイの軸方向の正確な位置決めを可能にする。カットエッジダイ105とダイのコアリング98の上部部分99との間には、環状の下部圧力スリーブ110が配置され、この下部圧力スリーブ110は一体型のピストン112を有し、この一体型ピストン112は、下部リテーナ94とダイのコアリング98との間に画定される環状の圧力空気チャンバ114の内部に軸方向可動に支持される。チャンバ114は、下部リテーナ94を含むポート(図示なし)から圧力空気を受け取る。
【0016】
円形のパネルポンチ118は、ダイのコアリング98の上部部分99の内部に閉じ込められ、パネルポンチのピストン122と共に軸方向に可動に固定される。このパネルポンチのピストン122は、ダイのコアリング98の内部に形成される段付きの円筒状の穿孔123の内部に支持される。パネルポンチ118とパネルポンチのピストン122との間には、フラットな環状の磨きスペーサ126が配置され、パネルポンチ118のピストン122上への軸方向の正確な位置決めを可能にする。下部圧力スリーブのピストン112とパネルポンチのピストン122とは、適切な2片の空気シールリングを備えており、摺動型の気密シールを形成する。パネルポンチのピストン122の中心部分の内部には、軸方向に延びる空気圧力流路127が形成され、横断流路128および環状チャンバ129から圧力空気を受け入れる。この流路127は、パネルポンチ118内部の中心開口131を通る上向きの圧力空気の噴流を生成する。この圧力空気の噴流は、
図12に示すように、外側の圧力スリーブ55がプレスのストロークの終端の近傍で上方に動く時に、缶体15をその外側の圧力スリーブに対して保持するためのものであり、それによって、完成した缶体を従来方式で横方向に急速に取り出すことができる。
【0017】
図2を参照すると、変更された工具アセンブリ35’が工具アセンブリ35と同様に構成される。変更点は、上部リテーナ38’内部の空気溜めチャンバ70が圧力空気を流路135から受け取るが、この流路135は、圧力空気をポート92から受け取る環状のチャンバ91に連結されているという点である。この圧力空気は125〜170psi
(0.86184〜1.17211MPa)程度のものとすることができ、外側の圧力スリーブ55のピストン56と内側の圧力スリーブ80のピストン82とに対して、同じ空気圧力が印加される。
図1の工具アセンブリ35の場合は、空気溜めチャンバ70は、160〜170psi
(1.10316〜1.17211MPa)程度の圧力空気をポート74および流路76から受け取り、一方、外側の圧力スリーブ55のピストン56は、80〜90psi
(0.55158〜0.62053MPa)程度の圧力空気をポート92から受け取る。
【0018】
単動プレスの各ストロークによる工具アセンブリ35または35’の操作を表現する
図3〜12の部分拡大図を参照すると、内側の圧力スリーブ80がノーズ部分140を有しており、このノーズ部分140は、上部ダイシュー40の下降ストロークの初期段階および上昇ストロークの最終段階の間、ダイの中心ポンチ65の底面から下向きに直角に突き出ている。このノーズ部分140は、底部の曲線状の端面144から円錐台状の傾斜した表面147に延びる環状の曲線状の表面143を有する。外側の圧力スリーブ55の底面の端部は、僅かに曲線状のまたはアーチ状の表面151を有するが、この表面151は、ダイのコアリング98の上端部分99に形成されるアーチ状のクラウン表面153に対向しかつ適合する。ダイのコアリング98の上端部分99は、また、傾斜したまたは円錐台状の表面156と、曲線状の環状の表面158と、内側の圧力スリーブ80の底面における対応表面147、143および144に対向しかつ適合する曲線状の表面161とを有する。
【0019】
パネルポンチ118はフラットな頂部の円形表面163を有し、この円形表面163は、テーパ状または円錐台状の表面164と、ほぼ円筒状の表面166と、内側の圧力スリーブ80のノーズ部分140上の端面144に対向する外側のテーパ状または円錐台状の表面168とによって囲繞されている。
図3および4に示すように、上部ダイシュー40がその下降ストロークを開始すると、ブランクドローダイ48がカットエッジダイ105と協働して、薄い金属シートまたはアルミニウムシートのほぼ円形のディスク170を打ち抜く。上部ダイシューの引き続く下降ストロークによって、ディスク170の環状部分が、外側の圧力スリーブ55とダイのコアリング98との間に挟み込まれるが、この挟み込みは、外側の圧力スリーブ55のピストン56に対して選択された空気圧力によって決定される制御された圧力によって行われる。ディスク170の外周のエッジ部分は、ブランクドローダイ48および対向する下部圧力スリーブ110の下方への動きによって、ダイのコアリング98の上端部分の回りに下向きに絞られる。この絞り操作は、下部圧力スリーブ110のピストン112に対してチャンバ114内部において選択された空気圧力によって制御される挟み込み圧力でもって行われる。
【0020】
図4および5に示すように、内側の圧力スリーブ80の突き出たノーズ部分140が、外側の圧力スリーブ55およびダイのコアリング98の内側のディスク150の部分からカップ部分Cの絞りを開始する。上部ダイシュー40の引き続く下降ストロークによって、ダイの中心ポンチ65が内側の圧力スリーブ80と協働するようになってカップ部分Cの絞りを継続し、一方、ディスク170の外側部分は、外側の圧力スリーブ55と、ダイのコアリング95と、ブランクドローダイ48との間において摺動する。
図7および8に示すように、上部ダイシュー40の引き続く下降ストロークによって、ダイの中心ポンチ65が、カップ部分Cがパネルポンチ118の頂面163に接触するまで、内側の圧力スリーブ80から延び出る。同時に、内側の圧力スリーブ80の底部の輪郭化された表面143、144および147が、ディスク170の中間の環状部分を、ダイのコアリング98の適合する相手側の輪郭表面158、161および156に対して挟み込んで、缶体15の環状部分22、23、24および26(
図12)を成形する。缶体15のクラウン部分28および外側の丸く巻き込まれたリップ部分29は、外側の圧力スリーブ55のピストン56に対する制御された力で、ダイのコアリング98上に同時に成形される。
【0021】
単動プレスの上部ダイシュー40がその下降ストロークの底部に達し(
図8)、ピストン56が肩部90上に停止すると、ダイの中心ピストン60上部のチャンバ44内部の制御された空気圧によって、ダイの中心ピストン60およびダイの中心ポンチ65が、僅かに、例えば約0.010インチ
(約0.0254cm)だけ上方に動くことが可能になる。いくつかのプレスにおいては、これによって、すべての最終的な缶体15の全高が常に一定かつ一様であることが保証される。より正確に制御される他のプレスにおいては、ダイの中心ピストン60をリテーナ38または38’に固定することができる。
【0022】
ダイシュー40が上昇ストロークを開始する(
図9)と、ダイの中心ポンチ65は、パネルポンチ118と同様に上向きに動き、一方、内側の圧力スリーブ80は、制御された一定圧力を維持して、缶体部分22〜24および26を、内側の圧力スリーブ80およびダイのコアリング98の互いに適合する表面間に保持する。内側の圧力スリーブ80のこの制御された圧力は、パネルポンチ118がパネルポンチピストン122によって印加される力によって上方に動く間、維持され、その結果、表面164、166および168が、
図11に示すように、缶体15に環状部分17、18、19および21を成形する。上部ダイシュー40がそのストローク上昇を続行すると、完成した缶体15が、外側の圧力スリーブ55の上方への動きと共に、パネルポンチ118の孔131からパネルウォール16に対して上向きに導かれる空気噴流流れの結果として、ダイのコアリング98およびパネルポンチ118から上方に動く。
【0023】
工具アセンブリ35または35’の構成および操作は、前記の段落[0002]〜[0004]に述べた重要かつ望ましい特徴および利点を提供することが分かった。例えば、このコンパクトな工具アセンブリは、単動機械プレスにおいて操作するのに適しており、工具アセンブリの全高が低くなっているので、当分野に存在するほとんどの単動高速プレスにおいて使用することが可能である。別の重要な利点として、空気溜めチャンバ70と、ダイの中心ピストン60の内部に円周方向に間隔配置される1組の空気流路88とによって、ピストンチャンバ84の内部においてより低圧の空気を使用し得るようになる点がある。すなわち、内側の圧力スリーブ80のピストン82上に印加される空気圧力が低下すると、高速運転中の工具アセンブリの上部部分における熱の発生が低下し、その結果、工具アセンブリがより一様かつ正確な缶体を製造するのである。
【0024】
空気溜め70および流路88内部の圧力空気は空気バネとしても作用する。この空気バネは、熱の発生を抑えるだけでなく、内側の圧力スリーブ80のピストン82上に印加される弾性力の正確な選択を可能にして、固定式のダイのコアリング98に対して内側の圧力スリーブ80によって印加されるディスク170上への所望の正確な挟み込み力を保証する。工具アセンブリ35は、また、外側の圧力スリーブ55のピストン56に対して、例えば80〜90psi
(0.55158〜0.62053MPa)のような低圧の工場供給空気の使用をも可能にする。外側の圧力スリーブに対して正確に制御された低圧空気を用いると、カップ部分Cの成形時に、金属シートが外側の圧力スリーブ55と、ダイのコアリング98と、ブランクドローダイとの間において摺動する際に、その金属シートが延びることが避けられる。
【0025】
さらに別の利点は、内側の圧力スリーブ80のノーズ部分140が、ダイの中心ピストン65の下に直角に突き出ていることによってもたらされる。この結果、
図5に示すように、このノーズ部分がカップ部分Cの成形を開始する。このノーズ部分140は、また、缶体15の環状部分22〜24および26の皺の発生なしの精密成形を保証し、これらの缶体部分は、
図10に示すように、パネルポンチ118が上方に動く際に、パネルウォール部分17および18が精密成形される間、および、傾斜したウォール部分21を含むカウンタシンク19が成形される間、内側の圧力スリーブ80とダイのコアリング98との互いに適合する表面間に固く保持される。上記の利点は、本発明の工具アセンブリを、プレスストロークが約1.75インチ
(約4.445cm)の単動プレスにおいて例えば毎分650ストロークのような高速で運転する場合に、特に望ましい点である。
【0026】
以上述べた装置または工具アセンブリ、および、その操作方法は本発明の好ましい実施形態を構成するが、本発明は、記述されたこの工具アセンブリおよび方法ステップに限定されないこと、および、添付の請求項に記載される本発明の範囲および本質から逸脱することなく、変更をなし得ることが理解されるべきである。