特許第5649194号(P5649194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルドルフ ヴィルド ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲーの特許一覧

<>
  • 特許5649194-ジェラン水分散液 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649194
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ジェラン水分散液
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   A23L2/00 E
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-79627(P2013-79627)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-223492(P2013-223492A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2013年4月5日
(31)【優先権主張番号】12002784.2
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512328809
【氏名又は名称】ルドルフ ヴィルド ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハイデバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ザトラー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シャタール
(72)【発明者】
【氏名】マティアス サス
(72)【発明者】
【氏名】アクセル デ ウィット
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−023893(JP,A)
【文献】 特表平10−502246(JP,A)
【文献】 特開平05−003773(JP,A)
【文献】 特表平10−502247(JP,A)
【文献】 特開2009−291163(JP,A)
【文献】 特開2002−306138(JP,A)
【文献】 特開平02−135061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/52
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
G−Search
Food Science and Tech Abst(FSTA)(ProQuest Dialog)
Foodline Science(ProQuest Dialog)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェラン重量%、少なくとも1つの二価カチオンの塩15重量%、及び少なくとも1つの酸0.6重量%を含み、
少なくとも1つの二価カチオンの塩がカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩であり、
少なくとも1つの酸が、亜リン酸、次亜塩素酸、硫酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、プロピオン酸、乳酸、酢酸、安息香酸、ギ酸、ソルビン酸、酒石酸、グルコン酸、メタ酒石酸、アジピン酸及びコハク酸から選択される、ジェラン水分散液。
【請求項2】
少なくとも1つの二価カチオンの塩が、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムから選択される、請求項1に記載のジェラン水分散液。
【請求項3】
少なくとも1つの二価カチオンの塩が乳酸カルシウムである、請求項1又は2に記載のジェラン水分散液。
【請求項4】
少なくとも1つの酸がリンゴ酸である、請求項1〜のいずれか一項に記載のジェラン水分散液。
【請求項5】
食品保存料をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のジェラン水分散液。
【請求項6】
金属イオン封鎖剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のジェラン水分散液。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のジェラン水分散液を含む飲料濃縮液。
【請求項8】
請求項に記載の濃縮液を含む、そのまま飲める飲料。
【請求項9】
少なくとも1つの二価カチオンの塩の水溶液に、ジェラン及び少なくとも1つの酸を分散させる段階を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のジェラン水分散液を調製する方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載のジェラン水分散液を、飲料のさらなる成分と混合する段階、及び得られた混合液を低温殺菌する段階を含む、そのまま飲める飲料を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はジェラン水分散液に関する。
【0002】
ジェランは、大量の細菌スフィンゴモナス・エロデア(Sphingomonas elodea)が微生物発酵することで産生される約5×10Daの直鎖状アニオン性細胞外ヘテロ多糖である。ジェランは、単糖単位であるグルコース、グルクロン酸及びラムノースを2:1:1のモル比で含み、四糖の繰り返し単位を有する。ネイティブの高アシル型では、繰り返し単位ごとに1つのL−グリセリル置換基と、繰り返し単位1つおきに1つのアセチル置換基とを備えたポリマーが生成される(Hydrocolloid applications;第4章:Gellan Gum;編集者;Nussinovitch,A.;1997 Chapman&Hall、英国)。
【0003】
ジェランは、カリウム塩の形態を主とし、少量のナトリウム塩の形態及びカルシウム塩の形態を含む混合塩の形態で存在する。ジェランは、特有のゲル化能を有する食感構築添加剤として、食品及び飲料産業で使用することができる。水溶液にジェランを添加することで、水溶液の粘度及び食感が著しく影響を受け、濃度の増加と共に、非常に強いゲルのほか、弱いゲル、いわゆるずり減粘「流体ゲル」が成長する。
【0004】
ジェランの食感構築挙動はまた、ジェラン分子の水和レベルによって決まり、水溶液に存在する一価及び二価カチオンの濃度によって影響される。さらに、初期の加熱は、再冷却後に十分な食感構築ポテンシャルを達成するようにジェランの分子構造を変化させるために必要である。ゾル−ゲル転移に必要な温度は、溶液中の二価カチオンの量に強く依存し、65℃〜80℃の間であることが多い。ゾル−ゲル転移の前には、高温のジェランポリマーが単一コイルの鎖(single−coiled chain)の状態で存在する。加熱したジェランゾルを再冷却することで三重の左巻き二重らせんの形成が促進され、内部水素結合によって安定化される。ジェラン二重らせんは、ゲル化促進カチオンの存在下で会合して接合ゾーン(junction zone)を形成し、三次元のゲルを成長させる。二価カチオン(例えばCa2+)は、隣接鎖のカルボキシル基同士の間にイオン結合を形成する(Huang,Y.、Singh,P.P.、Tang,J.、Swanson,B.G.(2004)、Gelling temperatures of high acyl gellan as affected by monovalent and divalent cations with dynamic rheological analysis、Carbohydrate Polymers、56、27〜33;Nickerson,M.T.、Paulson,A.T.、Speers,R.A.(2003):Rheological properties of gellan solutions:effect of calcium ions and temperature on pre−gel formation;Food Hydrocolloids、17、577〜583)。
【0005】
ジェランは温水に溶解するが、冷たい水溶液に添加される場合は、水和レベルは、ジェランの調製によって溶液に導入されたか、又は天然に若しくは添加されて既に水に存在する、二価カチオンの濃度によって決まる。周囲温度(ambient temperature)では、二価イオンの濃度が高いほど水和が少ない。様々な供給源からの水道水のカチオン濃度は大きく異なり得るため、冷たい工程用水への溶解挙動に関する一般的な報告はない。二価カチオンの影響を制御するために、錯化剤(金属イオン遮蔽剤(sequestering agent))を添加し、溶液中の二価カチオンを結合させることもある。ジェランを冷水に溶解させると、非常に低濃度で既に粘度が高い溶液となる(Hydrocolloid applications;第4章:Gellan Gum;編集者:Nussinovitch,A.;1997 Chapman&Hall、英国)。
【0006】
飲料産業において実際に使用する場合には、必要量のジェランが理想的には水和しないで冷水に均一に分散され、続いて水和させるために混合液が70℃以上に加熱される。さらに、所望の構造を構築する場合には、加熱前又は加熱中に必要量の二価カチオンを添加し、再冷却中にゲル化を促進する。二価カチオンの欠乏のため、初期の冷たい水溶液中での部分的な水和によって望ましくない凝集及び集塊(lumping)が既に引き起こされている可能性がある。
【0007】
そのまま飲める飲料(ready−to−drink beverage)では、ジェランの応用レベルは比較的低い。その理由は、ジェランは水和すると食感に大きな影響を与え、すぐに低品質レベルとしてしまうからである。
【0008】
米国特許第5597604号には、0.01%〜0.15%の間の濃度のジェランを含む飲料が記載されている。この文献では、乾燥ジェラン粉末が所望の濃度で飲料に添加され、その後、食感特性(texturizing property)が得られるまで加熱する。
【0009】
国際公開第9619925号パンフレットでは、ジェラン濃度が0.0001〜0.2%である炭酸飲料が特許請求されている。この事例では、ジェランは、金属イオン遮蔽剤及びカルシウム塩と一緒に乾燥ブレンドとして、又は粉末として、必要な濃度で飲料に添加される。
【0010】
国際公開第9639048号パンフレットでは、ジェラン、金属イオン封鎖剤(sequestrant)、二価イオン及び他の化合物を含有する乾燥混合物の形態でのジェランの液体への添加が特許請求されている。乾燥混合物には、ジェランの食感構築挙動を操作できる全ての物質が一段階で飲料に添加されるという利点がある。
【0011】
しかしながら、飲料へのジェランの適用には、比較的少量の粉末が正確な用量で、そのまま飲める飲料に添加されなければならないという一般的な欠点があり、それが製造業者の側で問題となる場合が多い。さらに、飲料は一般的に濃縮液体飲料ベースから製造される。濃縮液体飲料ベースの形態に機能性成分としてジェランを適用するための解決策がない。
【0012】
その理由は、濃縮飲料ベースにジェランを適用すると、このベース中でジェラン濃度を高くすることが不可欠となるからである。濃縮飲料ベースは、希釈後のそのまま飲める最終の飲料で、所望の食感効果をさらに達成する必要がある。しかしながら、液体飲料ベースでジェラン濃度が増加すると、濃縮ベースにおいて望ましくない早期のゲル化又は凝集が生じやすい。
【0013】
国際公開第9639047号パンフレットでは、乾燥混合物の概念が、0〜60%の間というより高い含水量を有する乾燥混合物にさらに拡張されている。国際公開第9639047号パンフレットに記載されているようにこの混合物の含水量は比較的高いが、水含量が60%というような濃縮分散液が、それでもやはり乾燥混合組成物として特許請求されている。これは、ジェランは著しい水和を生じることなく多量の水を吸収することができるためである。
【0014】
しかしながら、乾燥混合物の形態のそのような調製物は、流動することもポンプで吸い上げることもできないため、添加には非現実的であるという欠点がある。さらに、そのような乾燥混合物は粉塵(dust)を形成する傾向があり、その結果、取り扱いが困難になる可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、容易にかつ正確に添加でき、望ましくない粉塵の形成がなく、保存のために微生物安定性を有し、粘度を制御することができ、水溶液に添加した場合に凝集及び/又は塊を生じないジェラン水分散液を提供することである。上記目的は、ジェラン0.8〜8重量%、少なくとも1つの二価カチオンの塩1〜20重量%、及び少なくとも1つの酸0.3〜3重量%を含むジェラン水分散液によって達成される。
【0016】
本発明の発明者らは、少なくとも1つの二価カチオンの塩の濃縮水溶液にジェランを分散させることにより、そのような安定したジェラン水分散液が調製できることを見出した。
【0017】
本明細書に使用される用語「分散液」は、少なくとも2つの成分の均質な液体−固体混合液を指し、この混合液中では、固体が液体に微細に分散している。用語「分散液」は、本明細書では用語「懸濁液」と同義的に使用される。本発明の場合、液体は水であり、水にジェランが微細に分散している。
【0018】
ジェランは非水和分散状態で相当量の水と結合するので、高ジェラン濃度における高い粘度は、正確な用量及びポンプ圧送性(pumpability)の点から好ましくないことがある。しかしながら、発明者らは、驚くべきことに、特定量の少なくとも1つの酸を添加することにより分散液の粘度が著しく低下することを見出した。従って、本発明で使用されるようなジェラン濃度のレベルであっても、液状を呈するジェラン分散液を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明者らは、pHを低下させ分散液の微生物安定性を増加させるために、特定量の少なくとも1つの酸をジェラン水分散液に添加してもよいことを見出した。
【0020】
驚くべきことに、濃縮液から飲料を製造するための成分としてそのようなジェラン水分散液を適用すると、再希釈して加熱し、再冷却して完全な水和を達成する際に局所的な濃度の突出によって引き起こされる塊の形成又は凝集が生じない。そのように製造された飲料の感覚特性及び食感特性は、飲料に直接的に添加される粉末形態でジェランを使用することにより達成されるものと同様の質である。
【0021】
本発明のジェラン水分散液は、最終飲料に5〜20g/L添加すると所望の構造が得られるように濃縮されるべきである。これを達成するために、水分散液でのジェランの濃度は通常0.8〜8重量%であるべきである。本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれと組み合わせる場合でも、分散液中のジェランの濃度は1〜5重量%の間、より好ましくは2〜3重量%の間である。
【0022】
所望のゲル支持特性(gel−supporting property)を得るために、水分散液中の少なくとも1つの二価カチオンの塩の量は、1〜20重量%であるべきである。本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、少なくとも1つの二価カチオンの塩の量は3〜15重量%の間であり、本発明のより好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれと組み合わせる場合でも、5〜10重量%の間である。
【0023】
ジェラン分散液に二価塩を添加すると、加熱及び再冷却によるゾル−ゲル転移の後のゲル強度が高まる。本発明のジェラン水分散液中の少なくとも1つの二価カチオンの塩は、周期系(periodic system)の第二主族(second main group)に属する金属に由来する。本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、カルシウム塩及びマグネシウム塩が本発明のジェラン分散液で使用される。本発明のより好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、二価カチオンの塩は、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム及びそれらの組み合わせから選択される。本発明の特に好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、少なくとも1つの二価カチオンの塩は乳酸カルシウムである。
【0024】
分散液のpH値を微生物安定性及び低粘度に有利なpH3.0〜4.0に調整するために、少なくとも1つの酸が0.3〜3重量%の量で添加される。本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、少なくとも1つの酸が0.6〜2重量%の量で添加され、より好ましくは、少なくとも1つの酸の量が0.8〜1.2重量%の間である。
【0025】
本発明の分散液中の少なくとも1つの酸は無機酸でも有機酸でもよい。
【0026】
無機酸に関しては、亜リン酸、次亜塩素酸及び硫酸を使用することが、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明の好ましい実施形態である。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、有機酸が本発明のジェラン分散液で使用される。本発明のより好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、有機酸は、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、プロピオン酸、乳酸、酢酸、安息香酸、ギ酸、ソルビン酸、酒石酸、グルコン酸、メタ酒石酸、アジピン酸及びコハク酸から選択される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明のジェラン水分散液は、少なくとも1つの有機酸、少なくとも1つの無機酸、少なくとも2つの有機酸の混合物、少なくとも2つの無機酸の混合物、又は少なくとも1つの有機酸と少なくとも1つの無機酸の混合物を含む。本発明のジェラン水分散液においては、少なくとも1つの酸として、リンゴ酸を使用することが最も好ましい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明のジェラン水分散液は、ジェラン1〜5重量%、少なくとも1つの二価カチオンの塩3〜15重量%、及び少なくとも1つの酸0.6〜2重量%を含む。特に好ましい実施形態では、本発明の水分散液は、ジェラン2〜3重量%、少なくとも1つの二価カチオンの塩5〜10重量%、及び少なくとも1つの酸0.8〜1.2重量%を含む。
【0030】
0.8〜1.2重量%の量の酸が本発明の分散液に添加される場合、本発明の分散液の微生物安定性は特に高い。二価カチオンの塩が5〜10重量%の量で添加される場合、本発明の分散液のゲル強度特性は特に増大する。
【0031】
本発明のジェラン水分散液は、金属イオン封鎖剤、香料、甘味料、食品着色料、食品保存料、果物及び/又は植物の抽出液又はジュース、ビタミン、酸化防止剤並びにそれらの混合物の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明の分散液は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酒石酸カルシウム、クエン酸三アンモニウム、カルシウム−二ナトリウム−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、二リン酸塩、三リン酸塩、ポリリン酸塩、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム及びグルコン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属イオン封鎖剤をさらに含む。
【0033】
さらに好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明のジェラン分散液は少なくとも1つの香料をさらに含む。一般的な香料は、エチルマルトール、マルトール、マルトール誘導体、例えば、イソ酪酸マルトール;バニリン、エチルバニリン、バニリン酸、フラネオール、フラネオール誘導体、例えば、エチルフラネオール、酢酸フラネオール及びホモフロノール(homofuronol);ヘリオトロピン、γ−ラクトン及びδ−ラクトン、例えば、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−デカラクトン及びマソイアラクトン;クマリン及びその誘導体、例えばジヒドロクマリン;フルーツエステル(fruit ester)、例えば、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、カプリル酸エチル、酢酸アニシル、マロン酸ジエチル及びコハク酸ジエチル;フルフラール、5−メチルフルフラール、フェニルエタナール、p−ヒドロキシベンジルアセトン、p−ヒドロキシベンズアルデヒド及びtrans−ケイ皮酸である。
【0034】
別の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明の分散液は少なくとも1つの甘味料をさらに含む。甘味料は、天然甘味料及び人工甘味料又はそれらの混合物の群から選択されてもよい。一般的な天然甘味料は、ショ糖、フルクトース、グルコース、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ(high fructose corn syrup)、キシロース、アラビノース、ラムノース、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ハチミツ、ステビオール配糖体、ネオヘスペリジン(neohesperidine)、イソマル(isomalt)、タウマチン、マルチトール、マルチトールシロップ、ラクチトール、アガベネクタ及び転化糖シロップ(invert sugar syrup)である。一般的な人工甘味料は、アスパルテーム、アセスルファム、ネオテーム、スクラロース、サッカリン及びシクラミン酸ナトリウムである。より好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1つの天然甘味料、又は2つ以上の天然甘味料の混合物を含む。最も好ましくは、本発明の組成物は、ショ糖、ステビオール配糖体、転化糖シロップ又はそれらの混合物を含む。人工甘味剤が存在する場合、人工甘味剤は、好ましくは、アスパルテーム、アセスルファム、スクラロース、サッカリン、シクラミン酸ナトリウムである。
【0035】
別の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明の分散液は、カラメル色素、アナット、クロロフィリン、コチニール、ベタニン、ウコン、サフラン、パプリカ、ニワトコジュース(elderberry juice)、パンダン(pandan)、チョウマメなどの食品着色料;ソルビン酸カリウムなどの食品保存料;オレンジ、マンゴー、レモン、ラズベリー、イチゴ、バナナ、リンゴ、ブルーベリー、モモ、西洋ナシ、メロン、パッションフルーツ、トマト、及びニンジンの抽出液又はジュースなどの果物及び植物の抽出液及び分離物及びジュース;ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン;ポリフェノール、トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤の群から選択される少なくとも1つの追加成分;並びに2つ以上の追加成分の混合物をさらに含む。
【0036】
本発明のジェラン水分散液は、口当たりのよいそのまま飲める飲料の成分として使用してもよい。さらに、本発明の分散液は、そのまま飲める飲料を製造するための原料(飲料濃縮液)の成分として使用してもよい。従って、本発明のジェラン水分散液を含む飲料濃縮液と、本発明のジェラン水分散液を含む飲料濃縮液を含むそのまま飲める飲料の双方とも、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明の好ましい実施形態である。
【0037】
ジェラン水分散液は、少なくとも1つの二価カチオンの塩及び少なくとも1つの酸の水溶液にジェランを分散させることにより調製される。好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、少なくとも1つの二価カチオンの塩が予備成形された水溶液に、必要量のジェランが粉末の形態で添加され、その後、必要量の少なくとも1つの酸が添加される。別の好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、少なくとも1つの二価カチオンの塩の水溶液に、少なくとも1つの酸が最初に添加され、その後ジェラン粉末が添加されてもよい。
【0038】
本発明の分散液の調製に使用されるジェラン粉末は、好ましくは純粋な形態である。とはいえ、スクロースなどの追加的な化合物を相当量含むジェラン粉末を本発明の分散液の調製に使用することもできる。本明細書に示される本発明の分散液中のジェランの最終重量パーセントは、分散液に存在する純粋なジェランの実際の量を常に表す。従って、純度が100%未満の市販のジェラン粉末を本発明の分散液の調製に使用する場合、本発明の分散液中のジェランの最終重量パーセントが得られるように、この市販のジェランの純度を考慮しなければならない。
【0039】
金属イオン封鎖剤、香料、甘味料、食品着色料、食品保存料、果物及び/又は植物の抽出液又はジュース、ビタミン、酸化防止剤などの追加成分が、ジェラン、少なくとも1つの二価カチオンの塩及び少なくとも1つの酸の上記混合物の水溶液に添加されてもよい。その後、混合物は、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)、ローター/ステーターシステム(rotor−stator−system)、膜ホモジナイザー(membrane homogenizer)及び超音波ホモジナイザーを使用した均質化によって分散させてもよい。好ましい実施形態では、上記又は下記の実施形態のいずれかと組み合わせる場合でも、本発明の分散液はローター/ステーターシステムによって得られる。
【0040】
本発明のジェラン分散液は、均質な飲料濃縮液を得るために、本発明のジェラン分散液と、金属イオン封鎖剤、香料、甘味料、食品着色料、食品保存料、果物及び/又は植物の抽出液又はジュース、ビタミン、酸化防止剤などの、飲料の他の成分とを混合する段階を含む、飲料濃縮液の調製に使用されてもよい。本発明の分散液を含んでもよい飲料濃縮液として、例えば、栄養ドリンク濃縮液、ソフトドリンク濃縮液、コーラ飲料濃縮液及びジュース飲料濃縮液が挙げられる。
【0041】
本発明のジェラン分散液はまた、そのまま飲める飲料を得るために、本発明のジェラン分散液と、水、金属イオン封鎖剤、香料、甘味料、食品着色料、食品保存料、果物及び/又は植物の抽出液、ビタミン、酸化防止剤、ビタミンなどの、飲料のさらなる成分とを混合する段階、及び得られた均質な混合液を低温殺菌する段階を含む、そのまま飲める飲料の調製に使用されてもよい。或いは、そのまま飲める飲料を得るために、本発明のジェラン分散液を含む上記の飲料濃縮液を水で希釈してもよく、金属イオン封鎖剤、香料、甘味料、食品着色料、食品保存料、果物及び/又は植物の抽出液又はジュース、ビタミン及び酸化防止剤などの飲料の追加成分を添加してもよく、混合液を均質化し最後に低温殺菌してもよい。本発明のジェラン分散液を含んでもよいそのまま飲める飲料は、栄養ドリンク、ソフトドリンク、コーラ飲料及びジュース飲料を含む。
【0042】
以下の実施例によって本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、酸濃度に依存した粘度を示す。
【実施例】
【0044】
(比較例1:食感促進剤(texture promoting agent)としてジェランを含有するそのまま飲める飲料の調製)
表1の成分リストに従い、ジェラン粉末を様々な濃度で直接使用することによって飲料を製造した。
【0045】
室温で脱イオン水と転化糖シロップを混合した。続いて、乳酸カルシウム及び純粋なジェラン粉末(Kelcogel LT100−P)をゆっくり攪拌しながら添加し、均質な分散液が形成されるまで混合した。その後、レモン/ライム化合物及びクエン酸を混合液に添加した。混合液を脱イオン水で満たし100%にした。その後、90℃で1分間、飲料を低温殺菌した。
【0046】
感覚試験により、そのまま飲める飲料中のジェランの濃度が0.02〜0.03重量%の間であると、所望の口当たりのよい流体ゲルが得られることが明らかになった。
【0047】
【表1】
【0048】
(実施例2:ジェラン分散液の使用によるそのまま飲める飲料の調製)
2.1.濃縮ジェラン水分散液の調製:
純粋なジェラン粉末(Kelcogel LT100−P)2.5重量%、リンゴ酸1重量%及び安息香酸ナトリウム0.12重量%を、乳酸カルシウム5.4重量%の水溶液に添加し、ウルトラタラックス(ultra−turrax)を用いて2分間分散させた。その後、水分散液を冷蔵条件(5℃)下で保存し、飲料を調製するために4週間以内に使用した。保存7日目及び28日目に分散液から一定分量をそれぞれ採取し、栄養寒天の標準平板計数測定によって微生物腐敗について分析した。試料は、微生物腐敗に関していかなる陽性結果も示さなかった。
【0049】
2.2.そのまま飲める飲料の調製:
2.1に記載されたジェラン水分散液を様々な濃度で使用し、表2の成分リストに従って、種々の飲料を製造した。
【0050】
最初に、転化糖シロップ、各ジュース化合物及びクエン酸を脱イオン水に添加し混合した。続いて、2.1のジェラン水分散液を、1.2重量%の濃度でゆっくり攪拌しながら混合液に添加し、均一に分散させた。その後、その混合液を85℃まで加熱し、ボトルに高温充填(hot−fill)した。
【0051】
その結果、ジェラン濃度が0.03重量%の最終のそのまま飲める飲料が得られた。感覚試験では、そのまま飲める飲料にジェランを濃縮水分散液の形態で添加することにより、実施例1によって製造された飲料と同様の所望の口当たりのよい流体ゲルが得られることが明らかになった。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例3:粘度の酸濃度依存性)
続いて、純粋なジェラン粉末(Kelcogel LT100−P)2.0重量%又は2.5重量%、及び様々な濃度のリンゴ酸(w/w)を、乳酸カルシウム5.4重量%の水溶液に添加し、ウルトラタラックスを用いて2分間分散させた。
【0054】
図1は、双方のジェラン濃度での、酸濃度に依存した粘度を示す。1.2重量%のリンゴ酸を分散液に添加した場合、リンゴ酸を含有しない分散液と比較して、約50%もの著しい粘度低下が認められた。
図1