特許第5649198号(P5649198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5649198
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】スピン流制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   H01L29/82 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-236151(P2013-236151)
(22)【出願日】2013年11月14日
【審査請求日】2013年12月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、数値シミュレーションによる新材料・新機能の開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】市村 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】家田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】前川 禎通
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−168447(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/114415(WO,A1)
【文献】 特開2012−151307(JP,A)
【文献】 市村雅彦、外3名,スピン起電力による非局所スピンバルブ構造におけるスピン流変調,2013年 第60回応用物理学会春季学術講演会「講演予稿集」[CDROM],日本,公益社団法人 応用物理学会,2013年 3月11日,p.10−055
【文献】 市村雅彦、外3名,スピン起電力を用いた非局所スピンバルブ構造におけるスピン流増幅,2012年秋季 第73回応用物理学会学術講演会「講演予稿集」[CDROM],日本,公益社団法人 応用物理学会,2012年 8月27日,p.10−047
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性導電体と、
第1の強磁性体と第1の電流源を備え前記非磁性導電体にスピン注入するスピン注入部と、
磁壁が挿入された第2の強磁性体と、前記第2の強磁性体に制御電流を流すための第2の電流源と、前記制御電流をオン・オフするスイッチを有し、前記制御電流によって前記第2の強磁性体に挿入された磁壁を移動させ、前記スピン注入部から注入され前記非磁性導電体中を拡散するスピン流に前記磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによって前記スピン流を遮断する機能を有するスピン流制御部と、
入力信号によって前記スピン流制御部の前記スイッチをオン・オフ制御する入力部と、
第3の強磁性体と、前記第3の強磁性体と前記非磁性導電体の間に発生する電圧を検出する電圧計とを備え、前記スピン注入部からみて前記スピン流制御部より下流側に設けられた出力部と、を有し、
前記入力信号に対して前記電圧計の電圧を出力信号とするNOT回路として機能することを特徴とするスピン流制御装置。
【請求項2】
請求項記載のスピン流制御装置において、
記スピン流制御部は、前記スイッチがオンのとき、前記非磁性導電体に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生することを特徴とするスピン流制御装置。
【請求項3】
請求項記載のスピン流制御装置において、
前記第2の強磁性体は両端部に磁化が互いに逆方向を向いた磁化固定膜が積層されていることを特徴とするスピン流制御装置。
【請求項4】
第1の非磁性導電体と、
第1の強磁性体と第1の電流源を備え前記第1の非磁性導電体にスピン注入する第1のスピン注入部と、
磁壁が挿入された第2の強磁性体と、前記第2の強磁性体に制御電流を流すための第2の電流源と、前記制御電流をオン・オフする第1のスイッチを有し、前記制御電流によって前記第2の強磁性体に挿入された磁壁を移動させ、前記第1のスピン注入部から注入され前記第1の非磁性導電体中を拡散するスピン流に前記磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによって前記スピン流を遮断する機能を有する第1のスピン流制御部と、
第1の入力信号によって前記第1のスピン流制御部の前記第1のスイッチをオン・オフ制御する入力部と、
第2の非磁性導電体と、
第3の強磁性体と第3の電流源を備え前記第2の非磁性導電体にスピン注入する第2のスピン注入部と、
磁壁が挿入された第4の強磁性体と、前記第4の強磁性体に制御電流を流すための第4の電流源と、前記制御電流をオン・オフする第2のスイッチを有し、前記制御電流によって前記第4の強磁性体に挿入された磁壁を移動させ、前記第2のスピン注入部から注入され前記第2の非磁性導電体中を拡散するスピン流に前記磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによって前記スピン流を遮断する機能を有する第2のスピン流制御部と、
第2の入力信号によって前記第2のスピン流制御部の前記第2のスイッチをオン・オフ制御する入力部と、
前記第1の非磁性導電体の前記第1のスピン流制御部あるいはそれより下流側の領域と、前記第2の非磁性導電体の前記第2のスピン流制御部あるいはそれより下流側の領域とを接続する第5の強磁性体と、
前記第5の強磁性体と前記第1の非磁性導電体及び前記第2の非磁性導電体との間の電圧を測定する電圧計を備える出力部、とを有し、
前記第1の入力信号及び第2の入力信号に対して前記電圧計の電圧を出力信号とするNAND回路として機能することを特徴とするスピン流制御装置。
【請求項5】
請求項記載のスピン流制御装置において、
前記第1のスピン流制御部は、前記第1のスイッチがオンのとき、前記第1の非磁性導電体に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生し、
前記第2のスピン流制御部は、前記第2のスイッチがオンのとき、前記第2の非磁性導電体に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生することを特徴とするスピン流制御装置。
【請求項6】
請求項記載のスピン流制御装置において、
前記第2の強磁性体及び第4の強磁性体は各々両端部に磁化が互いに逆方向を向いた磁化固定膜が積層されていることを特徴とするスピン流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピン流をオン・オフ制御することのできるスピン流制御装置及びスピン流のオン・オフ制御を応用した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子は、電気伝導を担う電荷に加え、磁性を担うスピンを有する。近年、電子の電荷を活用したエレクトロニクスに加えて、スピンの性質を積極的に利用したスピントロニクス素子の開発に注目が集まっている。例えば、スピン注入を用いたトンネル磁気抵抗素子として、スピン注入素子が提案されている(特許文献1)。また、強磁性体中に挿入された磁壁を移動させると、その磁壁部分に起電力が発生することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−186274号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Physical Review B 82, 054410 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子スピンの情報は、非磁性体において、空間的には、距離Lとスピン拡散長λの比に依存し、exp(−L/λ)に従って指数関数的に減衰する。これまではスピン流を制御する手段がなかったため、その利用が限られていた。
【0006】
本発明は、スピン流を制御する機構を提供し、更に、そのスピン流制御機構を用いてスピン流をオン・オフ制御する回路あるいはスピン流を用いた論理回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、純粋スピン流が生じる非磁性導電体に磁壁の挿入された強磁性体を接合し、接合部分に磁壁を位置させる。そして、強磁性体に通電して磁壁を移動させ、磁壁移動に伴って発生する実効電場により、スピン流を構成する上向きスピンと下向きスピンに個別にエネルギー付与を行い、スピン流のオン・オフ制御を行う。
【0008】
本発明によるスピン流制御装置は、非磁性導電体と、第1の強磁性体と第1の電流源を備え非磁性導電体にスピン注入するスピン注入部と、スピン注入部から注入され非磁性導電体中を拡散するスピン流を制御するスピン流制御部とを有し、スピン流制御部は、磁壁が挿入された第2の強磁性体と、第2の強磁性体に制御電流を流して磁壁を移動させる第2の電流源とを有し、非磁性導電体中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによってスピン流を遮断するものである。
【0009】
ここで、スピン流制御部は、多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生する。
【0010】
また、本発明によるスピン流制御装置は、非磁性導電体と、第1の強磁性体と第1の電流源を備え非磁性導電体にスピン注入するスピン注入部と、磁壁が挿入された第2の強磁性体と、第2の強磁性体に制御電流を流すための第2の電流源と、制御電流をオン・オフするスイッチを有し、制御電流によって第2の強磁性体に挿入された磁壁を移動させ、スピン注入部から注入され非磁性導電体中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによってスピン流を遮断する機能を有するスピン流制御部と、入力信号によってスピン流制御部のスイッチをオン・オフ制御する入力部と、第3の強磁性体と、第3の強磁性体と非磁性導電体の間に発生する電圧を検出する電圧計とを備えスピン注入部からみてスピン流制御部より下流側に設けられた出力部と、を有し、入力信号に対して電圧計の電圧を出力信号とするNOT回路として機能するものである。
【0011】
スピン流制御部は、スイッチがオンのとき、非磁性導電体に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生する。
【0012】
また、本発明によるスピン流制御装置は、第1の非磁性導電体と、第1の強磁性体と第1の電流源を備え第1の非磁性導電体にスピン注入する第1のスピン注入部と、磁壁が挿入された第2の強磁性体と、第2の強磁性体に制御電流を流すための第2の電流源と、制御電流をオン・オフする第1のスイッチを有し、制御電流によって第2の強磁性体に挿入された磁壁を移動させ、第1のスピン注入部から注入され第1の非磁性導電体中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによってスピン流を遮断する機能を有する第1のスピン流制御部と、第1の入力信号によって第1のスピン流制御部の第1のスイッチをオン・オフ制御する入力部と、第2の非磁性導電体と、第3の強磁性体と第3の電流源を備え第2の非磁性導電体にスピン注入する第2のスピン注入部と、磁壁が挿入された第4の強磁性体と、第4の強磁性体に制御電流を流すための第4の電流源と、制御電流をオン・オフする第2のスイッチを有し、制御電流によって第4の強磁性体に挿入された磁壁を移動させ、第2のスピン注入部から注入され第2の非磁性導電体中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによってスピン流を遮断する機能を有する第2のスピン流制御部と、第2の入力信号によって第2のスピン流制御部の第2のスイッチをオン・オフ制御する入力部と、第1の非磁性導電体の第1のスピン流制御部あるいはそれより下流側の領域と、第2の非磁性導電体の第2のスピン流制御部あるいはそれより下流側の領域とを接続する第5の強磁性体と、第5の強磁性体と第1の非磁性導電体及び第2の非磁性導電体との間の電圧を測定する電圧計を備える出力部、とを有し、第1の入力信号及び第2の入力信号に対して電圧計の電圧を出力信号とするNAND回路として機能するものである。
【0013】
ここで、第1のスピン流制御部は、第1のスイッチがオンのとき、第1の非磁性導電体に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生し、第2のスピン流制御部は、第2のスイッチがオンのとき、第2の非磁性導電体に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きの電場を発生する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、外部入力信号によりスピン流をオン・オフ制御することが可能になる。また、外部入力信号の論理演算結果をスピン流の有無として出力する論理回路を得ることができる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】スピン流制御装置の構造例を示す模式図。
図2】非磁性導電体中を拡散するスピン流の様子を示す模式図。
図3】磁壁を挟んだz方向の各位置での磁化の様子を示した摸式図。
図4】スピン制御部に設ける磁性体の実施例を示す模式図。
図5】NOT回路として機能するスピン流制御装置の概念図。
図6】NOT回路として機能するスピン流制御装置の構成例を示す模式図。
図7】NAND回路として機能するスピン流制御装置の概念図。
図8】NAND回路として機能するスピン流制御装置の構成例を示す模式図。
図9】非磁性導電体中を拡散するスピン流の様子を示す模式図。
図10】非磁性導電体中を拡散するスピン流の様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるスピン流制御装置の構造例を示す模式図である。
【0017】
本実施例のスピン流制御装置は、非磁性導電体10、非磁性導電体10の一端に絶縁層21を介して積層された第1の強磁性体22、及び非磁性導電体10の長手方向に第1の強磁性体と異なる位置に配置された第2の強磁性体31を備える。第1の強磁性体22は一定の方向を向いた磁化23を有する。また、第2の強磁性体31には磁壁32が挿入されており、矢印33,34で示すように、第2の強磁性体31の磁化の向きは磁壁32を挟んで変化している。磁壁32は電場伝達部11を挟んで非磁性導電体10の上に配置されている。非磁性導電体10と第1の強磁性体22の間には第1の電流源24が接続されている。また、第2の強磁性体31の両端にはスイッチ36を介して第2の電流源35が接続され、磁壁32は第2の強磁性体31中を流れる制御電流によって移動するように構成されている。
【0018】
非磁性導電体10に絶縁層21を介して第1の強磁性体22が積層されたトンネル接合部とそこに電流を流す第1の電流源24とは、非磁性導電体10にスピンを注入するスピン注入部として機能する。また、磁壁32が挿入された第2の強磁性体31、第2の強磁性体31に制御電流を流すための第2の電流源35及びスイッチ36はスピン流制御部として機能する。スピン注入部とスピン流制御部の距離は、非磁性導電体10のスピン拡散長より短く設定されている。
【0019】
非磁性導電体10としては、例えば、Al,Cu,Agなどを用いることができる。非磁性導電体10の大きさは、例えば6μm×250nm×50nmである。スピン注入部を構成する第1の強磁性体22としては、Co,Fe,FePtなどを用いることができる。第1の強磁性体22の大きさは、例えば1μm×400nm×50nmである。また、絶縁層21としては、AlOx,MgOなどを用いることができる。絶縁層21の膜厚は1nm〜2nm程度が好ましいが、絶縁層はなくてもよい。第1の強磁性体22の磁化方向を固定するために、第1の強磁性体22に接してMnIr,NiOなどの反強磁性層を形成してもよい。第2の強磁性体31としては、Co/Ni多層膜、パーマロイ(NiFe合金)などを用いることができる。電場伝達部11は、非磁性導電体10を流れるスピン流が第2の強磁性体31に分流する効果を低減させるためのものである。第2の強磁性体31として例えばパーマロイを用いた場合には、非磁性導電体10を流れるスピン流が第2の強磁性体31に分流する効果が無視できず、制御対象である非磁性導電体10を流れるスピン流が減少してしまう。このとき電場伝達部11は、膜厚1nm〜2nm程度のAlOx,MgOなどが望ましい。なお、非磁性導電体10を流れるスピン流は強磁性体31に分流する寄与が無視できる場合、電場伝達部11を設けず、非磁性導電体10の上に直接第2の強磁性体31を形成してもよい。
【0020】
スピン流は、上向きスピンと下向きスピンからなり、非磁性導電体10の中を拡散によって伝達する。この時のスピン流は電流を伴わず、純粋スピン流と呼ばれる。図1に示した配置では、第1の電流源24に接続された第1の強磁性体22から非磁性導電体10の方向にトンネル電流が流れ、多数派スピン(上向きスピン)は絶縁層21から電場伝達部11への向きで非磁性導電体10中を流れ、少数派スピン(下向きスピン)はその逆向きで非磁性導電体10中を流れる。
【0021】
図2は、非磁性導電体中を拡散するスピン流の様子を示す模式図である。スイッチ36が開かれて第2の強磁性体31に制御電流が流されていないとき、非磁性導電体10中における多数派スピンの電気化学ポテンシャルμmajと少数派スピンの電気化学ポテンシャルμminは、図2の上段に破線で図示するように、スピン流注入部から拡散方向に向かって単調に減少する空間分布を示す。
【0022】
次に、スピン流制御部によってスピン流の制御を行う機構について説明する。スピン流制御部のスイッチ36を閉じて第2の強磁性体31に第2の電流源35から制御電流を流し、第2の強磁性体31に挿入された磁壁32を移動させると、移動磁壁の部分に次式で示される実効電場が発生する(非特許文献1参照)。
【0023】
[式1]
【0024】
ここで、xは第2の強磁性体31の長手方向に沿う座標である。またθは、スピン注入部における第1の強磁性体22の磁化方向をz軸にとり、z軸からの極角、φは磁化の方位角で、歳差運動の角度である。なお、方位角はx座標に依存しないので、その空間微分はゼロ、すなわち右辺第2項からの寄与はない。また、外部磁場がなくとも、磁壁が定義される程度の大きさの一軸異方性磁場があるため、方位角の時間微分は有限となる。
【0025】
図3は、第2の強磁性体31の磁壁32を挟んだx方向の各位置での磁化の様子を示した摸式図である。図1に示した電流方向、磁壁を挟んだ磁化の状態の条件では、磁壁は図の左方向、すなわちx軸のマイナス方向に移動し、次式が成立する。
【0026】
[式2]
【0027】
このとき、式(1)の右辺の第1項は負になり、磁壁32の移動する領域にはx軸のマイナス方向に向いた実効電場が発生する。この第2の強磁性体31の磁壁32部分に発生したx軸のマイナス方向に向いた実効電場は、非磁性導電体10において連続性を満たすよう誘起される。この実効電場のx方向(接線成分)の連続性は、ガウスの法則から要請される。非磁性導電体10における実効電場の接線成分は、図2の下段に実線で示すように、多数派スピンの電気化学ポテンシャルを減少させるように作用する。一方、実効電場がスピンに依存しているため、少数派スピンに対しては電気化学ポテンシャルを増加(絶対値を取ると減少)させるように作用し、結果的にμmaj−μminを減少させる。その結果、実効電場の向きと大きさが適切な場合、x方向に向かって減衰してきたスピン流をスピン流制御部で遮断し、消滅させることができる。なお、図2の網掛け部分は、第2の強磁性体31の磁壁移動に伴う実効電場が作用している領域を示している。
【0028】
このように本実施例のスピン流制御装置は、スピン流制御部のスイッチ36を開放すると、スピン注入部から注入されたスピン流を非磁性導電体10の長手方向にそのまま拡散させて伝達させる。一方、スピン流制御部のスイッチ36を閉じると、スピン注入部から非磁性導電体10に注入され拡散してきたスピン流をスピン流制御部の電場伝達部11の個所で消滅させ、それより下流側には伝達させない。こうしてスピン流のスイッチングを行うことができる。
【0029】
図4は、スピン流制御部に設けた第2の強磁性体31の実施例を示す図である。第2の強磁性体31は、挿入された磁壁32が非磁性導電体10の長手方向に移動できればどのような形状であっても構わない。従って、第2の強磁性体31の最も基本的な形状は、長手方向に1つの磁壁が挿入された直方体の形状である。
【0030】
一方、本実施例の第2の強磁性体31は、中央部に断面積の小さなくびれ部37が設けられた形状をしている。強磁性体中に設けられた断面積の小さなくびれ部は、磁壁を安定に保持する磁壁保持部として機能する。従って、第2の強磁性体31に制御電流が流されていないとき、すなわち磁壁移動が生じていないとき、第2の強磁性体31に挿入された磁壁32は自律的に磁壁保持部であるくびれ部37に移動し、そこに保持される。こうして、第2の強磁性体31にくびれ部37を設けることにより、第2の強磁性体37に磁壁32の初期位置を設定することができる。くびれ部を設けたことにより、スイッチ36を開放すると、磁壁はくびれ部に戻される。つまり、スイッチ36を閉じることにより、x軸のマイナス方向に移動した磁壁は、x軸のプラス方向に移動することになる。このときも電場が発生するが、その極性は逆である。つまり、非磁性導電体10に注入され拡散してきたスピン流を増大させる。後述する図5のように、電圧でスピン流を検出する場合、あるしきい値電圧を設け、しきい値電圧以上の電圧値を「オン」、しきい値電圧未満の電圧値を「オフ」と設定することにより、遮断されたスピン流のみを「オフ」に割り当てることが可能である。こうすれば、遮断されないスピン流と増大されたスピン流の二通りが「オン」に割り当てられ、くびれ部に戻される磁壁が発する電場は、スイッチング機能に悪影響を及ぼさない。
【0031】
また、本実施例の第2の強磁性体31は、その両端部に磁化が互いに逆方向を向いた磁化固定膜38,39を積層した。磁化固定膜38,39と接する第2の強磁性体31の領域の磁化は、磁化固定膜38,39との強磁性結合により磁化固定膜38,39の磁化と同じ向きに揃う。そのため第2の強磁性体31の磁化は両端部で逆向きに固定され、両端部の間に1つの磁壁が確実に挿入されることになる。磁化固定膜38,39の材料としては、Co,Fe,FePtなどを用いることができる。
【0032】
なお、図1に図示した各強磁性体の磁化の向きや電源の極性は一例であり、この配置に限られない。例えば、第1の強磁性体22の磁化23を図示と逆向きに設定し、第1の電源24の極性を逆向きにしても同様の効果が得られる。あるいは、第1の電流源24の極性だけを図示と逆向きにした場合、第2の強磁性体の磁化33,34を逆にする、あるいは第2の電流源35の極性を逆にすることで同様の効果が得られる。要は、スピン注入部から注入されて非磁性導電体10中を拡散してきたスピン流に対してスピン流制御部に設けた磁性体の磁壁移動によって発生する実効電場の向きが、多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を縮小する向きになるように、各強磁性体の磁化の向きや電流の向きが設定されていればよい。
【0033】
図5は、NOT回路として機能する本発明のスピン流制御装置の概念図である。
このスピン流制御装置は、スピン流を伝達させる非磁性導電体10、非磁性導電体10の一端側に設けられたスピン注入部51、非磁性導電体10の中央部に設けられたスピン流制御部52、スピン流制御部52に入力信号を入力する入力部53、及び非磁性導電体10の他端側に設けられた出力部54を備える。スピン注入部51は、第1の強磁性体22と第1の電流源24を備え、非磁性導電体10にスピンを注入する。スピン流制御部52は、磁壁32が挿入された第2の強磁性体31、第2の強磁性体31に制御電流を流すための第2の電流源35、制御電流をオン・オフするスイッチ36を有する。スイッチ36が閉じて第2の強磁性体31に制御電流が流されると、制御電流によって第2の強磁性体31に挿入された磁壁32が移動し、スピン注入部51から注入され非磁性導電体10中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場が作用してスピン流の遮断が生じる。スピン流を遮断するのに必要な制御電流の大きさについては後述する。
【0034】
入力部53は、入力信号Inによってスピン流制御部52のスイッチ36をオン・オフ制御する。出力部54は、スピン注入部51からみてスピン流制御部52より下流側に設けられ、第3の強磁性体42と電圧計43を備える。電圧計43は、第3の強磁性体42と非磁性導電体10の間に発生する電圧を検出する。
【0035】
図6は、NOT回路として機能する本発明のスピン流制御装置の構成例を示す模式図である。本実施例のスピン流制御装置は、図5に示したスピン流制御装置の概念を具現化したものである。
【0036】
図6に示した実施例では、より実際的な構成例として、スピン注入部には第1の強磁性体22と非磁性導電体10の間に絶縁層21を備え、出力部には第3の強磁性体42と非磁性導電体10の間に絶縁層41を備える。また、スピン流注入部に配置された第2の強磁性体31は両端部に磁化が互いに逆向きの磁化固定膜38,39が積層され、第2の強磁性体31と非磁性導電体10の間には電場伝達部11が配置されている。NOT回路としての必須事項は、第1の強磁性体22の磁化の向きと第1の電流源24の極性の組合せにより非磁性導電体10において電場伝達部11(電場伝達部11を設けない場合磁壁32)直下を流れるスピン流の極性を設定することと、スイッチ36を閉じることで駆動される磁壁32が誘起する電場が整合的にスピン流を遮断することである。
【0037】
本実施例では、非磁性導電体10として6μm×50nm×25nmのAlを用いた。電場伝達部11は、50nm×50nm×2.5nmのAlOxによって構成した。第1の強磁性体22としてはFePtを、第3の強磁性体42としてはFePtを用いた。第2の強磁性体31には200nm×20nm×2nmのCo/Ni多層膜を用いた。磁化固定膜38,39にはFePtを用いた。また、絶縁層21,41には膜厚2.5nmのAlOxを用いた。
【0038】
次に、図6に示したスピン流制御装置のNOT回路としての機能について説明する。
入力部53に入力される入力信号Inによってスピン流制御部のスイッチ36をオン・オフ制御する。入力信号Inがオフ(0)でスイッチ36が開いているときには、図2の上段に示したように、スピン注入部から注入されたスピン流が減衰しながら出力部に達し、出力部の電圧計43に出力が生じる。
【0039】
一方、入力信号Inをオン(1)にしてスイッチ36が閉じられると、第2の強磁性体31に第2の電流源35から制御電流が流され、第2の強磁性体31に挿入された磁壁32が移動する。そして、磁壁移動に伴って発生する電場が、電場伝達部11を介して非磁性導電体10中を伝達するスピン流に作用する。このとき発生される電場は、非磁性導電体10に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きに設定されている。また、電場の大きさは、磁壁移動による電場印加領域でちょうどスピン流を遮断することのできる大きさとする。このとき、図2の下段に示すようにスピン流制御部よりも下流側にはスピン流が伝達しないため、出力部の電圧計43には出力が生じない。
【0040】
本実施例の場合、幅20nm、厚さ2nmのCo/Ni多層膜を用い、くびれ部の幅を4nmとしたので、磁気異方性定数Ku= 4×105J/m3、交換スティフネスA=1×10-11J/mから、くびれ部は相対的に3.2×10-20Jのエネルギーだけ安定である。これから、磁壁移動のために通電する電流パルスの見積もりは、電流値が100μA、パルス幅が1nsとなる。
【0041】
表1は、図6に示したスピン流制御装置の入力信号Inと出力信号の関係をまとめたものである。表1から、本実施例のスピン流制御装置は、入力信号に対して電圧計の電圧を出力信号とするNOT回路として機能していることが分かる。
【0042】
【表1】
【0043】
図7は、NAND回路として機能する本発明のスピン流制御装置の概念図である。
このスピン流制御装置は、スピン流を伝達させる非磁性導電体として、第1の非磁性体110と第2の非磁性体210の2つの非磁性導電体を備える。第1の非磁性体110は、一端に第1のスピン注入部61が設けられ、中央部に第1のスピン流制御部62が設けられ、他端が接地されている。また、第1のスピン流制御部62に入力信号In1を入力する第1の入力部153が設けられている。同様に、第2の非磁性体210は、一端に第2のスピン注入部71が設けられ、中央部に第2のスピン流制御部72が設けられ、他端が接地されている。第2の入力部253は、第2のスピン流制御部72に入力信号In2を入力する。更に、第1の非磁性導電体110の第1のスピン流制御部62あるいはそれより下流側の領域と、第2の非磁性導電体210の第2のスピン流制御部72あるいはそれより下流側の領域とが第5の強磁性体300によって互いに接続されており、第5の強磁性体300と接地間に電圧計81が接続され出力部80を構成している。
【0044】
第1のスピン流制御部62は、入力信号In1がオンのとき、第1の非磁性導電体110中を拡散するスピン流に強磁性体の磁壁移動に伴って発生する電場を作用させてスピン流を遮断するように作用する。同様に、第2のスピン流制御部72は、入力信号In2がオンのとき、第2の非磁性導電体210中を拡散するスピン流に強磁性体の磁壁移動に伴って発生する電場を作用させてスピン流を遮断するように作用する。
【0045】
図8は、NAND回路として機能する本発明のスピン流制御装置の構成例を示す模式図である。本実施例のスピン流制御装置は、図7に示したスピン流制御装置の概念を具現化したものである。
【0046】
第1の非磁性導電体110の一端に設けられた第1のスピン注入部61は、絶縁層121を介して積層された第1の強磁性体122と第1の電流源124を備え、第1の非磁性導電体110にスピン注入する。第1のスピン流制御部62は、磁壁132が挿入された第2の強磁性体131、第2の強磁性体131に制御電流を流すための第2の電流源135、制御電流をオン・オフするスイッチ136を有する。スイッチ136が閉じられて第2の強磁性体131に制御電流が流されると、制御電流によって第2の強磁性体131に挿入された磁壁132の移動が起こり、スピン注入部61から注入され非磁性導電体110中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場が作用してスピン流が遮断される。また、第2の強磁性体131は両端部に磁化が互いに逆向きの磁化固定膜138,139が積層され、第2の強磁性体131と非磁性導電体110の間には電場伝達部111が配置されている。入力部153は、入力信号In1によってスピン流制御部62のスイッチ136をオン・オフ制御する。
【0047】
第2の非磁性導電体210の一端に設けられた第2のスピン注入部71は、絶縁層221を介して積層された第3の強磁性体222と第3の電流源224を備え、第2の非磁性導電体210にスピン注入する。第2のスピン流制御部72は、磁壁232が挿入された第4の強磁性体231、第4の強磁性体231に制御電流を流すための第4の電流源235、制御電流をオン・オフするスイッチ236を有する。スイッチ236が閉じられて第4の強磁性体231に制御電流が流されると、制御電流によって第4の強磁性体231に挿入された磁壁232の移動が起こり、スピン注入部71から注入され非磁性導電体210中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場が作用してスピン流が遮断される。また、第4の強磁性体231は両端部に磁化が互いに逆向きの磁化固定膜238,239が積層され、第4の強磁性体231と非磁性導電体210の間には電場伝達部211が配置されている。入力部253は、入力信号In2によってスピン流制御部72のスイッチ236をオン・オフ制御する。
【0048】
また、第1の非磁性導電体110の第1のスピン流制御部62あるいはそれより下流側の領域と、第2の非磁性導電体210の第2のスピン流制御部72あるいはそれより下流側の領域とは、それぞれ絶縁層141,241を介して第5の強磁性体300によって接続されている。出力部を構成する電圧計81は、第5の強磁性体300と第1の非磁性導電体110及び第2の非磁性導電体210の間の電圧を測定する。
【0049】
本実施例では、非磁性導電体110,210として6μm×50nm×25nmのAlを用いた。電場伝達部111,211は、50nm×50nm×2.5nmのAlOxによって構成した。第1の強磁性体122及び第3の強磁性体222としてはFePtを用いた。第2の強磁性体131及び第4の強磁性体231には200nm×20nm×2nmのCo/Ni多層膜を用いた。第5の強磁性体300にはFePtを用いた。磁化固定膜138,139,238,239にはFePtを用いた。また、絶縁層121,221、141,241には膜厚2.5nmのAlOxを用いた。
【0050】
なお、図7及び図8に示した実施例では、第1の非磁性導電体110と第2の非磁性導電体210とで、スピン流注入部61,71を設ける端部を反対側の端部としたが、必ずしもこの配置に限られない。例えば、第2の非磁性導電体210に対し、第1の非磁性導電体110と同じように、左端部にスピン注入部を配置して右端部を接地し、スピン流制御部72あるいはそれより右側の領域に第5の強磁性体300を接続してもよい。
【0051】
次に、図8に示したスピン流制御装置のNAND回路としての機能について説明する。
第1の入力信号In1によって第1のスピン流制御部62のスイッチ136をオン・オフ制御する。入力信号In1がオフ(0)でスイッチ136が開いているときには、スピン注入部61から第1の非磁性導電体110に注入されたスピン流は減衰しながら第1のスピン流制御部62を越えて伝達する。
【0052】
一方、第1の入力信号In1がオン(1)でスイッチ136が閉じられると第2の強磁性体131に制御電流が流れ、第2の強磁性体131に挿入された磁壁132が移動する。そして、磁壁移動に伴って発生する電場が、電場伝達部111を介して第1の非磁性導電体110中を伝達するスピン流に作用する。このとき発生される電場は、第1の非磁性導電体110に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きに設定されている。また、電場の大きさは、磁壁移動による電場印加領域でちょうどスピン流を遮断することのできる大きさに設定されている。このとき第1の非磁性導電体110中を拡散するスピン流は、図9の模式図に示すようにスピン流制御部で遮断され、その下流側には伝達しない。
【0053】
本実施例の場合、幅20nm、厚さ2nmのCo/Ni多層膜を用い、くびれ部の幅を4nmとしたので、磁気異方性定数Ku= 4×10J/m、交換スティフネスA=1×10−11J/mから、くびれ部は相対的に3.2×10−20Jのエネルギーだけ安定である。これから、磁壁移動のために通電する電流パルスの見積もりは、電流値が100μA、パルス幅が1nsとなる。
【0054】
同様に、第2のスピン流制御部72のスイッチ236をオン・オフ制御する第2の入力信号In2がオフ(0)でスイッチ236が開いているときは、スピン注入部71から第2の非磁性導電体210に注入されたスピン流は減衰しながら第2のスピン流制御部72を越えて伝達する。
【0055】
一方、第2の入力信号In2がオン(1)でスイッチ236が閉じられると、第4の強磁性体231に制御電流が流れ、第2の強磁性体231に挿入された磁壁232が移動する。そして、磁壁移動に伴って発生する電場が、電場伝達部211を介して第2の非磁性導電体210中を伝達するスピン流に作用する。このとき発生される電場は、第2の非磁性導電体210に注入された多数派スピンの電気化学ポテンシャルと少数派スピンの電気化学ポテンシャルの差を小さくする向きに設定されている。また、電場の大きさは、磁壁移動による電場印加領域でちょうどスピン流を遮断することのできる大きさに設定されている。このとき第2の非磁性導電体210中を拡散するスピン流は、図10の模式図に示すようにスピン流制御部で遮断され、その下流側には伝達しない。
【0056】
表2は、図8に示したスピン流制御装置の入力信号In1,In2と出力信号の関係をまとめたものである。表2から、本実施例のスピン制御装置は、入力信号に対して電圧計の電圧を出力信号とするNAND回路として機能していることが分かる。
【0057】
【表2】
【0058】
以上説明したように、本発明によるとスピン流のスイッチングが可能となり、それを組み合わせることにより論理回路を構成することができる。
【0059】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 非磁性導電体
22 第1の強磁性体
31 第2の強磁性体
32 磁壁
37 くびれ部
38 磁化固定膜
39 磁化固定膜
42 第3の強磁性体
51 スピン注入部
52 スピン流制御部
53 入力部
54 出力部
61 第1のスピン注入部
62 第1のスピン流制御部
71 第2のスピン注入部
72 第2のスピン流制御部
80 出力部
110 第1の非磁性導電体
210 第2の非磁性導電体
300 第5の強磁性体
【要約】
【課題】スピン流を制御する機構を提供し、更に、そのスピン流制御機構を用いてスピン流をオン・オフ制御する回路あるいはスピン流を用いた論理回路を提供する。
【解決手段】非磁性導電体10にスピン注入するスピン注入部と、スピン注入部から注入され非磁性導電体中を拡散するスピン流を制御するスピン流制御部とを有する。スピン流制御部は、磁壁32が挿入された強磁性体31と、強磁性体31に制御電流を流して磁壁を移動させる電流源35とを有し、非磁性導電体中を拡散するスピン流に磁壁移動に伴って発生する電場を作用させることによってスピン流を遮断する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10