特許第5649199号(P5649199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649199回転型超音波探傷装置用回転トランス及びこれを用いた回転型超音波探傷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649199
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】回転型超音波探傷装置用回転トランス及びこれを用いた回転型超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20141211BHJP
   G01N 29/24 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
   G01N29/10 502
   !G01N29/24 504
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-509972(P2013-509972)
(86)(22)【出願日】2012年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2012060097
(87)【国際公開番号】WO2012141279
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2013年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-91299(P2011-91299)
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592244376
【氏名又は名称】日鉄住金テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114410
【弁理士】
【氏名又は名称】大中 実
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正司
(72)【発明者】
【氏名】藤懸 洋一
(72)【発明者】
【氏名】幡原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 道章
(72)【発明者】
【氏名】三井 宗健
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−242081(JP,A)
【文献】 特開平7−201612(JP,A)
【文献】 特開平7−37736(JP,A)
【文献】 特開2002−345822(JP,A)
【文献】 特開2004−344247(JP,A)
【文献】 特開昭58−48200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
H01F 38/18
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面側にコイルが配設された平板状の固定体と、一方の面側にコイルが配設された平板状の回転体とを備え、前記固定体及び前記回転体それぞれのコイル配設面側が対向するように配置され、対向するコイル間で1〜10MHzの周波数帯の信号伝送を行う回転型超音波探傷装置用回転トランスであって、
前記固定体は、複数の1ターンコイルが同心円状に形成された基板と、該基板を保持する保持部材とを具備し、
前記回転体は、前記固定体に形成された1ターンコイルと同数の1ターンコイルが同心円状に形成された基板と、該基板を保持する保持部材とを具備し、
前記固定体が具備する前記基板と前記保持部材との間、及び、前記回転体が具備する前記基板と前記保持部材との間には、空気、又は絶縁体で且つ比透磁率がほぼ1に等しい材料が介在することを特徴とする回転型超音波探傷装置用回転トランス。
【請求項2】
前記固定体及び前記回転体のそれぞれが具備する前記基板に形成された複数の1ターンコイルは、コイル幅と同等の間隔を隔てて同心円状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転型超音波探傷装置用回転トランス。
【請求項3】
前記固定体及び前記回転体のそれぞれが具備する前記基板と前記保持部材との離間距離は、前記固定体に形成された1ターンコイルと前記回転体に形成された1ターンコイルとのギャップの5〜10倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転型超音波探傷装置用回転トランス。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の回転型超音波探傷装置用回転トランスと、
前記回転体に形成された複数の1ターンコイルと電気的に接続され、前記回転体と一体的に回転する複数の超音波探触子と、
前記固定体に形成された複数の1ターンコイルと電気的に接続された超音波探傷器とを備えることを特徴とする回転型超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型超音波探傷装置用回転トランス及びこれを用いた回転型超音波探傷装置に関する。特に、本発明は、超音波探傷で使用される信号を伝送する際であってもその伝送効率に優れた回転型超音波探傷装置用回転トランス及びこれを用いた回転型超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波探触子を管状又は棒状の被検査材の周方向に沿って回転させながら探傷を行う回転型超音波探傷装置が知られている。
図1に示すように、一般的な回転型超音波探傷装置は、被検査材Sに対して超音波を送受信する超音波探触子1と、超音波探触子1が取り付けられ被検査材Sの周方向に回転する探触子ホルダー2と、超音波探触子1からの超音波の送受信を制御すると共に、超音波探触子1で受信したエコーに基づき被検査材Sの探傷を行う超音波探傷器3と、超音波探触子1と超音波探傷器3との間の信号伝送を行う信号伝送部4とを備えている。
【0003】
上記の構成を有する回転型超音波探傷装置において、被検査材Sを軸方向に直進させると共に、探触子ホルダー2、ひいては超音波探触子1を回転させる(50rpm〜2000rpm程度)ことで、超音波探触子1の軌跡は被検査材Sの外表面上でスパイラル状になり、被検査材Sの全断面を高速で探傷することが可能である。
【0004】
ここで、信号伝送部4において、超音波探傷で一般的に使用される周波数帯(1〜10MHz)の信号を伝送する方法としては、(1)スリップリングを用いる方法、(2)コンデンサカップリングを用いる方法、(3)回転トランスを用いる方法、が知られている。以下、順次これらの方法について説明する。
【0005】
(1)スリップリングを用いる方法(例えば、特許文献1参照)
この方法では、図2に示すように、信号伝送部4(図1参照)に、固定側電極41Aと回転側電極42Aとを設ける。固定側電極41Aと回転側電極42Aとの間に、ブラシ43を介在させる。固定側電極41Aは、超音波探傷器3(図1参照)と電気的に接続される。一方、回転側電極42Aは、超音波探触子1(図1参照)と電気的に接続され、超音波探触子1(探触子ホルダー2)(図1参照)と一体的に回転する。
そして、固定側電極41Aと回転側電極42Aとがブラシ43を介して接触することにより、超音波探触子1と超音波探傷器3との間の信号伝送が行われる。
この方法は、接触式であるため、高速回転に不適であり、保守性も極めて悪いという問題がある。
【0006】
(2)コンデンサカップリングを用いる方法(例えば、特許文献2参照)
この方法では、図3に示すように、信号伝送部4(図1参照)に、固定側電極41Bと回転側電極42Bとを設ける。固定側電極41Bと回転側電極42Bとの間に、空気や水などの誘電体44を保持させる。固定側電極41Bは、超音波探傷器3(図1参照)と電気的に接続される。一方、回転側電極42Bは、超音波探触子1と電気的に接続され、超音波探触子1(探触子ホルダー2)(図1参照)と一体的に回転する。
上記のように、固定側電極41Bと回転側電極42Bとの間に誘電体44を保持させてコンデンサを形成することにより、超音波探触子1と超音波探傷器3との間の信号伝送が行われる。
この方法において、誘電体44として空気を用いる場合には、空気の誘電率が小さいため、電極間距離を微小(0.1〜0.5mm程度)にする必要があり、保守性が悪いという問題がある。
【0007】
一方、コンデンサカップリングを用いる方法において、誘電体44として水を用いる場合には、電極間距離を大きくできる(2mm程度)ものの、水を均一に保持する必要がある。
多チャンネルの信号伝送を行う場合(超音波探触子1を複数備える場合)、図4に示すように、水Wを均一に保持するには、複数の固定側電極41C及び回転側電極42Cを被検査材Sの長手方向に配列する必要がある。このため、信号伝送部4が被検査材Sの長手方向に長くなり、超音波探傷装置の大型化に繋がるという問題がある。また、被検査材Sの径が大きくなると、信号伝送部4の径も大きくなり、より一層水Wの保持が困難になる。
【0008】
(3)回転トランスを用いる方法(例えば、特許文献3参照)
この方法では、図5に示すように、信号伝送部4(図1参照)に、固定側コイル45と回転側コイル46とを設ける。固定側コイル45は、超音波探傷器3(図1参照)と電気的に接続される。一方、回転側コイル46は、超音波探触子1と電気的に接続され、超音波探触子1(探触子ホルダー2)(図1参照)と一体的に回転する。
そして、固定側コイル45と回転側コイル46との間に生じる電磁誘導により、超音波探触子1と超音波探傷器3との間の信号伝送が行われる。
この方法では、コイル間は空気Aを介在させればよい上、前述したコンデンサカップリングを用いる方法と異なり、コイル間距離も大きくできるという利点がある。
しかしながら、従来、回転型超音波探傷装置の信号伝送部4用として提案されている回転トランスは、多チャンネルの信号伝送を行う場合(超音波探触子1を複数備える場合)、前述した固定側電極41C及び回転側電極42Cと同様に、複数の固定側コイル45及び回転側コイル46を被検査材Sの長手方向に配列する形態であるため、信号伝送部4が被検査材Sの長手方向に長くなり、超音波探傷装置の大型化に繋がるという問題がある。
【0009】
ここで、回転トランスとしては、一方の面側にコイルが配設された平板状の固定体と、一方の面側にコイルが配設された平板状の回転体とを備え、前記固定体及び前記回転体それぞれのコイル配設面側が対向するように配置され、対向するコイル間で信号伝送を行う平板型回転トランスが知られている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0010】
回転型超音波探傷装置の信号伝送部用として、上記の平板型回転トランスを適用すれば、多チャンネルの信号伝送を行う場合であっても、超音波探傷装置の大型化を抑制できると考えられる。つまり、平板型回転トランスを構成する固定体及び回転体のそれぞれに複数のコイルを配設し、平板型回転トランスの中心孔に被検査材を挿通させる構成とすれば、信号伝送部が被検査材の長手方向に短くなり、超音波探傷装置の大型化を抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国特開平6−94685号公報
【特許文献2】日本国特開平7−12783号公報
【特許文献3】日本国特開平6−242081号公報
【特許文献4】日本国特開平7−201612号公報
【特許文献5】日本国特開平7−37736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の平板型回転トランスを構成する固定体及び回転体は、一般的に、信号の伝送効率を高めるためにソフトフェライトのような強磁性体からなる平板状の基材に溝が形成され、この溝内にコイルが配設された構成とされている。或いは、強磁性体からなる基材の代わりに、アルミニウムなどの導電体からなる基材が用いられる場合もある。いずれにせよ、コイルと基材とが直接接触する構成である。
【0013】
しかしながら、このような平板型回転トランスを用いて、超音波探傷で一般的に使用される、1〜10MHz程度の周波数帯で且つ100〜500V程度の電圧を有する信号を伝送する際には、基材を構成する強磁性体内でのヒステリシス損や、基材を構成する導電体内での渦電流損の影響を受けて、伝送効率が低下するという問題がある。
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、超音波探傷で使用される信号を伝送する際であってもその伝送効率に優れた回転型超音波探傷装置用回転トランス及びこれを用いた回転型超音波探傷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は、一方の面側にコイルが配設された平板状の固定体と、一方の面側にコイルが配設された平板状の回転体とを備え、前記固定体及び前記回転体それぞれのコイル配設面側が対向するように配置され、対向するコイル間で1〜10MHzの周波数帯の信号伝送を行う回転型超音波探傷装置用回転トランスであって、前記固定体は、複数の1ターンコイルが同心円状に形成された基板と、該基板を保持する保持部材とを具備し、前記回転体は、前記固定体に形成された1ターンコイルと同数の1ターンコイルが同心円状に形成された基板と、該基板を保持する保持部材とを具備し、前記固定体が具備する前記基板と前記保持部材との間、及び、前記回転体が具備する前記基板と前記保持部材との間には、空気、又は絶縁体で且つ比透磁率がほぼ1に等しい材料が介在することを特徴とする回転型超音波探傷装置用回転トランスを提供する。
【0016】
本発明に係る回転型超音波探傷装置用回転トランスが備える固定体及び回転体は、コイルが形成された基板と、該基板を保持する保持部材とを具備し、前記基板と前記保持部材との間には、空気、又は絶縁体で且つ比透磁率がほぼ1に等しい材料(例えば、ベークライト等のプラスチック)が介在する。換言すれば、コイルと保持部材とが直接接触せずに、コイルと保持部材との間に、電磁場を誘起し難い物質が介在することになる。このため、たとえ、保持部材がソフトフェライトのような強磁性体やアルミニウムなどの導電体から形成されていたとしても、コイルで誘起される電磁場が保持部材で減衰し難く、伝送効率の低下を引き起こし難い。
【0017】
ここで、一般的には、コイルのターン数に比例して伝送効率が向上する。しかしながら、超音波探傷で一般的に使用される周波数帯(1〜10MHz)においては、コイルのターン数が増えてコイル線長が大きくなると、コイル線間浮遊容量が大きくなり、インピーダンスが増大する。コイルを駆動する信号源は瞬時的には定電圧電源と考えられるため、上記のようにインピーダンスが増大すると、コイルに流れる電流は減衰し、固定体に形成されたコイルと回転体に形成されたコイルとの間での伝送効率は極端に低下する。
従って、本発明に係る回転型超音波探傷装置用回転トランスが備える固定体及び回転体には、複数の1ターンコイルが形成されている。このように、1ターンコイルを用いることにより、コイル線間浮遊容量が0になるため、伝送効率の低下が生じない。
【0018】
以上のように、本発明によれば、超音波探傷で使用される信号を伝送する際であっても、その伝送効率に優れた回転型超音波探傷装置用回転トランスを得ることが可能である。
【0019】
ここで、複数のコイルを配設して複数の異なる信号を伝送する場合、各信号間の干渉(クロストーク)が問題となる場合がある。これを避けるため、従来は、電磁場遮蔽のためのシールド用電極を設けていた(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、超音波探傷で一般的に使用される周波数帯(1〜10MHz)においては、コイルに近接してシールド用電極を設けると、コイルと電極間の線間浮遊容量により、伝送効率が低下するという問題がある。
【0020】
従って、前記固定体及び前記回転体のそれぞれが具備する前記基板に形成された複数の1ターンコイルは、コイル幅と同等の間隔を隔てて同心円状に形成されることが好ましい。
【0021】
斯かる好ましい構成によれば、各1ターンコイルで伝送される信号間のクロストークを低減することが可能である。
【0022】
好ましくは、前記固定体及び前記回転体のそれぞれが具備する前記基板と前記保持部材との離間距離は、前記固定体に形成された1ターンコイルと前記回転体に形成された1ターンコイルとのギャップの5〜10倍とされる。
【0023】
基板と保持部材との離間距離が両コイルのギャップの5倍未満であると、コイルで誘起される電磁場が保持部材で減衰して伝送効率の低下を引き起こすおそれがある一方、基板と保持部材との離間距離が両コイルのギャップの10倍を超えると、保持部材での電磁場の減衰の影響は少なくなるため、離間距離をむやみに大きくしても回転トランスの厚みが大きくなってしまうだけだからである。
【0024】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記回転トランスと、前記回転体に形成された複数の1ターンコイルと電気的に接続され、前記回転体と一体的に回転する複数の超音波探触子と、前記固定体に形成された複数の1ターンコイルと電気的に接続された超音波探傷器とを備えることを特徴とする回転型超音波探傷装置としても提供される。
【0025】
本発明に係る回転型超音波探傷装置によれば、装置の大型化を抑制しつつ多チャンネルの信号伝送を効率良く行うことが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る回転型超音波探傷装置用回転トランスによれば、超音波探傷で使用される信号を伝送する際であってもその伝送効率に優れるという効果を奏する。また、本発明に係る回転型超音波探傷装置によれば、装置の大型化を抑制しつつ多チャンネルの信号伝送を効率良く行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、一般的な回転型超音波探傷装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、超音波探傷で使用される信号をスリップリングを用いて伝送する方法を説明する説明図である。
図3図3は、超音波探傷で使用される信号をコンデンサカップリングを用いて伝送する方法を説明する説明図である。
図4図4は、超音波探傷で使用される信号をコンデンサカップリングを用いて多チャンネルで伝送する方法を説明する説明図である。
図5図5は、超音波探傷で使用される信号を回転トランスを用いて伝送する方法を説明する説明図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る回転型超音波探傷装置の概略構成を示す模式図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る回転型超音波探傷装置用回転トランスが備える固定体の概略構成を示す模式図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る回転型超音波探傷装置用回転トランスが備える回転体の概略構成を示す模式図である。
図9図9は、図6に示す回転型超音波探傷装置の評価試験の結果を示すグラフである。
図10図10は、図6に示す回転型超音波探傷装置の他の評価試験の結果を示すグラフである。
図11図11は、図6に示す回転型超音波探傷装置のさらに他の評価試験において観察された受信波形の例を示す。
図12図12は、図6に示す回転型超音波探傷装置のさらに他の評価試験において観察された干渉エコー(表面エコー)の高さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る回転型超音波探傷装置の概略構成を示す模式図である。図6(a)は装置の全体構成を示す図であり、図6(b)は1つの超音波探触子についての電気的な接続関係を説明する図である。
図6に示すように、本実施形態に係る回転型超音波探傷装置100は、被検査材Sに対して超音波を送受信する複数の超音波探触子1と、超音波探触子1が取り付けられ被検査材Sの周方向に回転する探触子ホルダー2と、超音波探触子1からの超音波の送受信を制御すると共に、超音波探触子1で受信したエコーに基づき被検査材Sの探傷を行う超音波探傷器3と、超音波探触子1と超音波探傷器3との間の信号伝送を行う回転型超音波探傷装置用回転トランス(以下、単に回転トランスという場合がある)5とを備えている。被検査材Sは、探触子ホルダー2及び回転トランス5の中心孔に挿通される。
【0029】
回転トランス5は、一方の面側にコイルが配設された平板状の固定体51と、一方の面側にコイルが配設された平板状の回転体52とを備え、固定体51及び回転体52それぞれのコイル配設面側が対向するように配置され、対向するコイル間で1〜10MHzの周波数帯の信号伝送を行う構成である。本実施形態に係る回転型超音波探傷装置100は、一対の回転トランス5(送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5B)を備えている。
【0030】
図7は、回転トランス5が備える固定体51の概略構成を示す模式図である。図7(a)は平面図であり、図7(b)は図7(a)に示すAA断面図である。
図7に示すように、固定体51は、複数(図7に示す例では4つ)の1ターンコイル511が同心円状に形成された基板512と、基板512を保持する保持部材513とを具備する。保持部材513は、基板512のコイル形成面と反対側の面を保持するものである。本実施形態の保持部材513は、アルミニウムから形成されている。
固定体51が具備する基板512と保持部材513との間には、空気、又は絶縁体で且つ比透磁率がほぼ1に等しい材料(例えば、ベークライト等のプラスチック)Mが介在している。図7に示す例では、基板512のコイル511が形成されている部位と保持部材513とが基板512の厚み方向に離間するように、保持部材513が断面コの字状に形成されており、基板512と保持部材513との間には空気が介在している。
本実施形態では、好ましい構成として、固定体51が具備する基板512に形成された複数の1ターンコイル511が、コイル幅Cと同等の間隔Dを隔てて同心円状に形成されている。
【0031】
図8は、回転トランス5が備える回転体52の概略構成を示す模式図である。図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)に示すBB断面図である。
図8に示すように、回転体52も、複数(図8に示す例では4つ)の1ターンコイル521が同心円状に形成された基板522と、基板522を保持する保持部材523とを具備する。保持部材523は、基板522のコイル形成面と反対側の面を保持するものである。保持部材523は、アルミニウムから形成されている。
回転体52が具備する基板522と保持部材523との間には、空気、又は絶縁体で且つ比透磁率がほぼ1に等しい材料(例えば、ベークライト等のプラスチック)Mが介在している。図8に示す例では、基板522のコイル521が形成されている部位と保持部材523とが基板522の厚み方向に離間するように、保持部材523が断面コの字状に形成されており、基板522と保持部材523との間には空気が介在している。
本実施形態では、好ましい構成として、回転体52が具備する基板522に形成された複数の1ターンコイル521が、コイル幅Cと同等の間隔Dを隔てて同心円状に形成されている。
【0032】
図6に示すように、本実施形態の超音波探触子1は、送信用振動子11及び受信用振動子12を備えた送受信分離型の超音波探触子とされている。超音波探触子1は、回転体52に形成された1ターンコイル521と電気的に接続され、回転体52と一体的に回転するように構成されている。具体的には、超音波探触子1の送信用振動子11が送信用回転トランス5Aの回転体52に形成された1ターンコイル521と電気的に接続され、受信用振動子12が受信用回転トランス5Bの回転体52に形成された1ターンコイル521と電気的に接続されている。そして、送信用回転トランス5Aの回転体52及び受信用回転トランス5Bの回転体52は、探触子ホルダー2と一体的に回転するように構成されており、探触子ホルダー2が所定の駆動源によって被検査材Sの周方向に回転することにより、超音波探触子1、送信用回転トランス5Aの回転体52及び受信用回転トランス5Bの回転体52は、被検査材Sの周方向に一体的に回転する。
【0033】
図6に示すように、超音波探傷器3は、固定体51に形成された1ターンコイル511と電気的に接続されている。本実施形態では、超音波探傷器3は、送信用回転トランス5Aの固定体51に形成された1ターンコイル511と、受信用回転トランス5Bの固定体51に形成された1ターンコイル511とに電気的に接続されている。
【0034】
なお、図6(b)では、1つの超音波探触子1が一対の1ターンコイル521(送信用回転トランス5Aの回転体52に形成された1つの1ターンコイル521と、受信用回転トランス5Bの回転体52に形成された1つの1ターンコイル521)に電気的に接続されている例を示しているが、他の超音波探触子1については、他の対の1ターンコイル521と電気的に接続されることになる。また、図6(b)では、超音波探傷器3が一対の1ターンコイル511(送信用回転トランス5Aの固定体51に形成された1つの1ターンコイル511と、受信用回転トランス5Bの固定体51に形成された1つの1ターンコイル511)に電気的に接続されている例を示しているが、超音波探触子1の数に応じて、他の対の1ターンコイル511とも電気的に接続されることになる。
【0035】
また、本実施形態では、送信用振動子11及び受信用振動子12を備えた送受信分離型の超音波探触子1を用いる例について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、1つの振動子が送信用と受信用を兼ねる送受信一体型の超音波探触子を用いることも可能である。この場合、回転トランス5としては、一対の回転トランス5(送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5B)を用いる必要が無く、単一の回転トランス5を用いればよい。
【0036】
以上に説明した構成を有する回転型超音波探傷装置100を用いて被検査材Sの超音波探傷を行う際には、被検査材Sを軸方向に直進させると共に、探触子ホルダー2、ひいては超音波探触子1を回転させる。このとき、送信用振動子11から超音波を送信させるための信号が超音波探傷器3から出力され、送信用回転トランス5Aの1ターンコイル511、521を介して、送信用振動子11に伝わる。これにより送信用振動子11から送信された超音波Uは、接触媒体としての水Wを介して被検査材Sに入射し、そのエコーが受信用振動子12で検出される。受信用振動子12で検出されたエコーは、電気信号に変換され、受信用回転トランス5Bの1ターンコイル521、511を介して、超音波探傷器3に入力される。超音波探傷器3は、この入力された信号に基づき被検査材Sの探傷を行う。超音波探触子1の軌跡は被検査材Sの外表面上でスパイラル状になるため、被検査材Sの全断面を探傷することが可能である。
【0037】
以下、本実施形態に係る回転型超音波探傷装置100について行った評価試験について説明する。
【0038】
<基板と保持部材との離間距離に関する評価試験>
本実施形態に係る回転型超音波探傷装置100において、送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5Bの双方について、固定体51が具備する基板512と保持部材513との離間距離、及び、回転体52が具備する基板522と保持部材523との離間距離を適宜変更し、超音波探傷器3で観察されるきずからのエコー高さを評価する試験を行った。
具体的には、送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5Bの双方について、固定体51に配設されたコイル511と回転体52に配設されたコイル521とのギャップを2mmに設定し、超音波探触子1と被検査材Sとの間に介在する水Wの厚みを0.5mmとし、探傷周波数5MHzで直径5.6mmの平底穴をきずとして探傷した。コイル511、521は、コイル幅5mmの1ターンコイルで、隣接するコイルの間隔は5mmとした。なお、きずエコーを観察する際には、複数の1ターンコイル511のうち最も外側に配設された1ターンコイル511(直径:約1200mm)と超音波探傷器3とを電気的に接続した。また、複数の1ターンコイル521のうち最も外側に配設された1ターンコイル521(直径:約1200mm)と超音波探触子1とを電気的に接続した。
【0039】
図9は、上記評価試験の結果を示すグラフである。
図9に示すように、基板512(又は522)と保持部材513(又は523)とを離間させれば(基板と保持部材との間に空気を介在させれば)、離間距離が0の場合(基板と保持部材との間に何も介在しない場合)に比べて、きずエコー高さが大きくなることが分かった。これは、基板(コイル)と保持部材との間に電磁場を誘起し難い空気が介在することになるため、たとえ、本実施形態のように保持部材が導電体であるアルミニウムから形成されていたとしても、コイルで誘起される電磁場が保持部材で減衰し難く、伝送効率の低下を引き起こし難いからだと考えられる。より具体的には、コイル511と保持部材(アルミニウム)及びコイル521と保持部材(アルミニウム)との間の電磁誘導による影響が小さくなり、コイル511とコイル521との電磁誘導による伝送の効率の低下を引き起こし難いからだと考えられる。
【0040】
また、図9に示すように、基板と保持部材との離間距離がおよそ10〜20mm程度(固定体51に配設されたコイル511と回転体52に配設されたコイル521とのギャップ2mmの5〜10倍程度)のとき、観察されるきずエコー高さはピークとなり、これ以上離間距離を大きくしてもきずエコー高さに変化が無いことが分かった。つまり、これ以上離間距離を大きくしても、コイルで誘起される電磁場の保持部材での減衰を抑制する効果に乏しいということが分かった。このため、基板512(又は522)と保持部材513(又は523)との離間距離は、固定体51に配設されたコイル511と回転体52に配設されたコイル521とのギャップの5〜10倍程度にするのが好ましい。
【0041】
<コイルのターン数に関する評価試験>
本実施形態に係る回転型超音波探傷装置100において、受信用回転トランス5Bを取り外して、超音波探触子1の受信用振動子12と超音波探傷器3とを直接電気的に接続した状態で、送信用回転トランス5Aの固定体51及び回転体52に形成するコイルのターン数を適宜変更し、超音波探傷器3で観察されるきずからのエコー高さを評価する試験を行った。
具体的には、送信用回転トランス5Aの固定体51に配設されたコイルと回転体52に配設されたコイルとのギャップを2mmに設定し、基板512(又は522)と保持部材513(又は523)との離間距離を20mmとし、超音波探触子1と被検査材Sとの間に介在する水Wの厚みを0.5mmとし、探傷周波数5MHzで直径5.6mmの平底穴をきずとして探傷した。送信用回転トランス5Aに配設するコイルとしては、1ターンコイル、3ターンコイル及び5ターンコイルの3種類のコイルを用いた。1ターンコイルを用いる場合、コイル幅を5mmとし、隣接するコイルの間隔は5mmとした。3ターンコイルを用いる場合、コイル幅を1mmとして隙間2mmで3ターン巻回し、隣接するコイルの間隔は5mmとした。5ターンコイルを用いる場合、コイル幅を0.5mmとして隙間0.5mmで5ターン巻回し、隣接するコイルの間隔は5mmとした。なお、きずエコーを観察する際には、1ターンコイル、3ターンコイル及び5ターンコイルのいずれについても、固定体51の最も外側に配設されたコイル(直径:約1200mm)と超音波探傷器3とを電気的に接続した。また、回転体52の最も外側に配設されたコイル(直径:約1200mm)と超音波探触子1とを電気的に接続した。
【0042】
図10は、上記評価試験の結果を示すグラフである。なお、図10において、ターン数0の位置にプロットしたデータは、送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5Bの双方を取り外し、超音波探触子1の送信用振動子11及び受信用振動子12と超音波探傷器3とを直接電気的に接続した状態で、超音波探傷器3で観察されるきずからのエコー高さを評価した結果を示す。
図10に示すように、コイルのターン数を増加させると、きずエコー高さが小さくなることが分かった。これは、コイルのターン数が増えてコイル線長が大きくなると、コイル線間浮遊容量が大きくなり、インピーダンスが増大するため、コイルに流れる電流が減衰し、固定体51に形成されたコイルと回転体52に形成されたコイルとの間での伝送効率が低下するからだと考えられる。
以上の結果に基づき、前述のように、本実施形態に係る回転トランス5が備える固定体51及び回転体52には、複数の1ターンコイル511、521が配設されている。
【0043】
<コイル間隔に関する評価試験>
本実施形態に係る回転型超音波探傷装置100において、送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5Bの双方について、固定体51及び回転体52に形成する複数の1ターンコイル511、521の間隔を適宜変更し、超音波探傷器3で観察される、隣接するコイル間の干渉エコーの高さを評価する試験を行った。
具体的には、送信用回転トランス5A及び受信用回転トランス5Bの双方について、固定体51に配設されたコイル511と回転体52に配設されたコイル521とのギャップを2mmに設定し、基板512(又は522)と保持部材513(又は523)との離間距離を20mmとし、超音波探触子1と被検査材Sとの間に介在する水Wの厚みを0.5mmとし、探傷周波数5MHzで直径5.6mmの平底穴をきずとして探傷した。コイル511、521は、コイル幅5mmの1ターンコイルで、隣接するコイルの間隔を0.5〜15mmの範囲で変更した。なお、きずからのエコーを観察する際には、複数の1ターンコイル511のうち最も外側に配設された1ターンコイル511(直径:約1200mm)及びこれに隣接する1ターンコイル511と超音波探傷器3とを電気的に接続した。また、複数の1ターンコイル521のうち最も外側に配設された1ターンコイル521(直径:約1200mm)及びこれに隣接する1ターンコイル521と2つの超音波探触子1とを電気的に接続した。そして、最も外側に配設された1ターンコイル521と電気的に接続されている超音波探触子1で受信したエコーを超音波探傷器3で観察した。
【0044】
図11は、上記評価試験において観察された受信波形の例を示す。図11(a)は、隣接する1ターンコイルの間隔を5mmとした場合の受信波形の例を、図11(b)は、隣接する1ターンコイルの間隔を0.5mmとした場合の受信波形の例を示す。なお、図11において符号Tで示すエコーは送信エコー、符号Sで示すエコーは表面エコー、符号F1、F2で示すエコーはきずエコー、符号B1、B2で示すエコーは底面エコーである。
本実施形態の超音波探触子1は、送信用振動子11及び受信用振動子12を備えた送受信分離型の超音波探触子であるため、表面エコー(被検査材Sの表面で反射したエコー)Sは受信用振動子12でほとんど受信されないのが通常である。しかしながら、複数の1ターンコイルを配設して複数の異なる信号を伝送する場合、各信号間の干渉(クロストーク)が生じることで、表面エコーSの高さが大きくなると考えられる。図11(a)に示すように、隣接する1ターンコイルの間隔をコイル幅と同等の5mmとした場合には、各信号間の干渉が少なく、表面エコーSの高さは小さい。一方、図11(b)に示すように、隣接する1ターンコイルの間隔を0.5mmとした場合には、各信号間の干渉により、表面エコーSの高さは大きくなる。また、図示しないが、隣接する1ターンコイルの間隔をコイル幅より大きくしても、表面エコーSの高さが大きい受信波形となった。これらの結果より、隣接する1ターンコイルの間隔には、表面エコーの高さを低減する上での最適値が存在することが分かった。
【0045】
図12は、上記評価試験において観察された干渉エコー(表面エコーS)の高さを示すグラフである。
図12に示すように、隣接する1ターンコイルの間隔をコイル幅と同等の5mmにすることにより、干渉エコーの高さを低減、すなわち各1ターンコイルで伝送される信号間のクロストークを低減できることが分かった。
以上の結果に基づき、本実施形態では、好ましい構成として、固定体51が具備する基板512に形成された複数の1ターンコイル511、及び、回転体52が具備する基板522に形成された複数の1ターンコイル521が、コイル幅と同等の間隔を隔てて同心円状に形成されている。
【符号の説明】
【0046】
1・・・超音波探触子
2・・・探触子ホルダー
3・・・超音波探傷器
5・・・回転トランス
5A・・・送信用回転トランス
5B・・・受信用回転トランス
11・・・送信用振動子
12・・・受信用振動子
51・・・固定体
52・・・回転体
100・・・回転型超音波探傷装置
511・・・1ターンコイル
512・・・基板
513・・・保持部材
521・・・1ターンコイル
522・・・基板
523・・・保持部材
M・・・空気、又は絶縁体で且つ比透磁率がほぼ1に等しい材料
S・・・被検査材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図12
図11