特許第5649206号(P5649206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649206
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】X線断層撮影方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20141211BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   A61B6/14 311
   A61B6/03 350F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-207589(P2008-207589)
(22)【出願日】2008年8月12日
(65)【公開番号】特開2010-42119(P2010-42119A)
(43)【公開日】2010年2月25日
【審査請求日】2011年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】友江 剛
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−204953(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/084407(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/063980(WO,A1)
【文献】 特開昭62−204730(JP,A)
【文献】 特開平10−225455(JP,A)
【文献】 特開平08−215191(JP,A)
【文献】 特開平06−078919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を被写体に照射するX線源と、該被写体を通過したX線を検出するX線撮像手段と、被写体を中心に位置させて前記X線源および前記X線撮像手段を一定距離に相互に対向して回転アームに固定し、前記被写体の周りを旋回させる旋回駆動手段と、前記X線撮像手段で得られた画像情報をフレーム画像として記憶するフレーム画像記憶手段と、該フレーム画像記憶手段から出力される信号を処理することによりフレーム画像を生成する画像処理手段と、該画像処理された画像を記憶する処理画像記憶手段と、該処理画像記憶手段の処理された各断層像を表示し記憶する全画像表示記憶手段と、該全画像表示記憶手段の全画像を出力する出力手段とを備え、X線撮影を行うに当たり、パノラマ撮影・CT撮影モードを切り替えても回転アーム移動手段の軌跡が同一で変わらず、それぞれ共通となるように旋回駆動手段を構築することを特徴とするとともに、CT撮影モード選択時は、平面X線受像器に対し通常のCT撮影を行い、パノラマ撮影モード選択時は、同一の平面X線受像器に対し、前記回転アームを回転させながらX線源からのX線ビームを水平方向に移動させ、前記回転アームの回転に伴い平面X線受像器に照射される位置をも水平方向に移動させ、得られたフレーム画像に対し、所望の位置での重ね合わせ計算処理を行ってパノラマ断層像を再構成することを特徴とし、
さらに、前記フレーム画像記憶手段から順次取出されたフレーム画像に対して拡大率補正処理を施し、該拡大率補正処理されたフレーム画像に対して重ね合わせ処理を施してパノラマ画像を形成するようにしたことを特徴とするとともに、
前記拡大補正処理が、撮影位置(0)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa0、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M0=1+(b0/a0)、撮影位置(1)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率をM1=1+(b/a)としたとき、撮影位置(0)で得られたフレーム画像を正規のサイズとすると、撮影位置(1)で得られたフレーム画像にはM/Mの係数を乗算してフレーム画像の拡大縮小を施してX線ビームが被写体の歯列弓を透過する所望の局部箇所のフレーム画像の拡大率の補正を行うことを特徴とするX線断層撮影方法。
【請求項2】
X線を被写体に照射するX線源と、該被写体を通過したX線を検出するX線撮像手段と、被写体を中心に位置させて前記X線源および前記X線撮像手段を一定距離に相互に対向して回転アームに固定し、前記被写体の周りを旋回させる旋回駆動手段と、前記X線撮像手段で得られた画像情報をフレーム画像として記憶するフレーム画像記憶手段と、該フレーム画像記憶手段から出力される信号を処理することによりフレーム画像を生成する画像処理手段と、該画像処理された画像を記憶する処理画像記憶手段と、該処理画像記憶手段の処理された各断層像を表示し記憶する全画像表示記憶手段と、該全画像表示記憶手段の全画像を出力する出力手段とを備え、X線撮影を行うに当たり、パノラマ撮影・CT撮影モードを切り替えても回転アーム移動手段の軌跡が同一で変わらず、それぞれ共通となるように構成された旋回駆動手段を更に備えることを特徴とするとともに、CT撮影モード選択時には、平面X線受像器に対し通常のCT撮影を行うとともに、パノラマ撮影モード選択時には、同一の平面X線受像器に対し、前記回転アームを回転させながらX線源からのX線ビームを水平方向に移動させ、前記回転アームの回転に伴い平面X線受像器に照射される位置をも水平方向に移動させる手段と、得られたフレーム画像に対し、所望の位置での重ね合わせ計算処理を行ってパノラマ断層像を再構成する手段とを更に備えることを特徴とし、
さらに、前記フレーム画像記憶手段から順次取出されたフレーム画像に対して拡大率補正処理を施し、該拡大率補正処理されたフレーム画像に対して重ね合わせ処理を施してパノラマ画像を形成するとともに、前記拡大補正処理が、撮影位置(0)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa0、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M0=1+(b0/a0)、撮影位置(1)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率をM1=1+(b/a)としたとき、撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M、撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率Mとしたとき、撮影位置(0)で得られたフレーム画像を正規のサイズとすると、撮影位置(1)で得られたフレーム画像にはM/Mの係数を乗算してフレーム画像の拡大縮小処理を施してX線ビームが被写体の歯列弓を透過する所望の局部箇所のフレーム画像の拡大率の補正を行う手段とを備えることを特徴とするX線断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCT撮影モードおよびパノラマ撮影モードを切り替えても回転アームの回転中心の軌跡が共通で同一であるX線断層撮影方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CT撮影機能を保有するパノラマ断層撮影装置等において、パノラマ撮影モードとCT撮影モードとを切り替えることによって、回転アームなどの移動手段が撮影中にそれぞれ別の画像形成軌跡に沿って移動することは既知である(特許文献1、図4および図25参照)。
【0003】
また、従来のパノラマ撮影では、図1に示すように、被写体1を中心とし、その両側に所定距離を保ってX線源2およびX線受像器3を回転アーム(図示せず)により固定配置し、その回転中心oの軌跡を被写体1の形状に対応させて移動させ、最適のパノラマ像が得られるようにしている。
【0004】
更に、近年パノラマ撮影において、X線源からのX線ビームが被写体を経て受像されるX線受像器はフイルムからCCD(Charge Coupled Device)やFPD(Flat Panel Detector(平面X線受像器))等に移行しつつある。
【0005】
この際、X線ビームAを水平方向に移動させる手段としては、
1.X線源の直前に設けられた第1スリットを水平方向に移動させること、
2.ヘッド部を、焦点位置を中心に左右に振ること、
等が考えられるが、X線源の直前に設けられた第1スリットを水平方向に移動させる場合には、辺縁部にてビーム幅が変化する欠点があり、また、ヘッド部を、焦点位置を中心に左右に振る場合にはX線ヘッドの首振りを行う必要があり、首振り機構が複雑となる欠点があった。
【0006】
また、X線ビームAを水平方向に移動させる場合には、平面X線受像器の受像面において、辺縁部は入射角が大きくなる欠点があり、この場合の対策としては、
1.前処理として水平方向の拡大率を変化させること(特許文献2参照)、
2.入射角をキャンセルする方向に平面X線受像器を傾け、所謂、センサの首振りを行うこと、
等が必要であり、この場合にはセンサの首振り機構が複雑となる欠点があった。
【特許文献1】特許第3966425号、図4および図25
【特許文献2】特開2003−175031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、パノラマ撮影モード・CT撮影モードを切り替えても回転アーム移動手段の軌跡が同一で固定されて変わらず、それぞれ共通となる1軸回転系のX線撮影方法および装置を提供しようとするものである。
【0008】
本発明の他の目的は、X線源の第1スリットを円弧の形状にして、円弧に沿って移動させ、平面X線受像器に入射するX線ビームの幅を所望幅に規制すると共に平面X線受像器へのX線入射角を一定としたX線撮影方法および装置を提供せんとするにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、回転アーム移動手段の軌跡が同一で固定の場合に、所定の位置で行われる重ね合わせ計算の前処理として予め拡大率補正処理を行って拡大率を拡大縮小し得るようにしたX線撮影方法および装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明X線断層撮影方法は、前記目的を達成するため、X線を被写体に照射するX線源と、該被写体を通過したX線を検出するX線撮像手段と、被写体を中心に位置させて前記X線源および前記X線撮像手段を一定距離に相互に対向して回転アームに固定し、前記被写体の周りを旋回させる旋回駆動手段と、前記X線撮像手段で得られた画像情報をフレーム画像として記憶するフレーム画像記憶手段と、該フレーム画像記憶手段から出力される信号を処理することによりフレーム画像を生成する画像処理手段と、該画像処理された画像を記憶する処理画像記憶手段と、該処理画像記憶手段の処理された各断層像を表示し記憶する全画像表示記憶手段と、該全画像表示記憶手段の全画像を出力する出力手段とを備え、X線撮影を行うに当たり、パノラマ撮影・CT撮影モードを切り替えても回転アーム移動手段の軌跡が同一で変わらず、それぞれ共通となるように旋回駆動手段を構築することを特徴とするとともに、CT撮影モード選択時は、平面X線受像器に対し通常のCT撮影を行い、パノラマ撮影モード選択時は、同一の平面X線受像器に対し、前記回転アームを回転させながらX線源からのX線ビームを水平方向に移動させ、前記回転アームの回転に伴い平面X線受像器に照射される位置をも水平方向に移動させ、得られたフレーム画像に対し、所望の位置での重ね合わせ計算処理を行ってパノラマ断層像を再構成することを特徴とし、さらに、前記フレーム画像記憶手段から順次取出されたフレーム画像に対して拡大率補正処理を施し、該拡大率補正処理されたフレーム画像に対して重ね合わせ処理を施してパノラマ画像を形成するようにしたことを特徴とするとともに、前記拡大補正処理が、撮影位置(0)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa0、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M0=1+(b0/a0)、撮影位置(1)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率をM1=1+(b/a)としたとき、撮影位置(0)で得られたフレーム画像を正規のサイズとすると、撮影位置(1)で得られたフレーム画像にはM/Mの係数を乗算してフレーム画像の拡大縮小を施してX線ビームが被写体の歯列弓を透過する所望の局部箇所のフレーム画像の拡大率の補正を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明X線断層撮影装置は、前記目的を達成するため、X線を被写体に照射するX線源と、該被写体を通過したX線を検出するX線撮像手段と、被写体を中心に位置させて前記X線源および前記X線撮像手段を一定距離に相互に対向して回転アームに固定し、前記被写体の周りを旋回させる旋回駆動手段と、前記X線撮像手段で得られた画像情報をフレーム画像として記憶するフレーム画像記憶手段と、該フレーム画像記憶手段から出力される信号を処理することによりフレーム画像を生成する画像処理手段と、該画像処理された画像を記憶する処理画像記憶手段と、該処理画像記憶手段の処理された各断層像を表示し記憶する全画像表示記憶手段と、該全画像表示記憶手段の全画像を出力する出力手段とを備え、X線撮影を行うに当たり、パノラマ撮影・CT撮影モードを切り替えても回転アーム移動手段の軌跡が同一で変わらず、それぞれ共通となるように構成された旋回駆動手段を更に備えることを特徴とするとともに、CT撮影モード選択時には、平面X線受像器に対し通常のCT撮影を行うとともに、パノラマ撮影モード選択時には、同一の平面X線受像器に対し、前記回転アームを回転させながらX線源からのX線ビームを水平方向に移動させ、前記回転アームの回転に伴い平面X線受像器に照射される位置をも水平方向に移動させる手段と、得られたフレーム画像に対し、所望の位置での重ね合わせ計算処理を行ってパノラマ断層像を再構成する手段とを更に備えることを特徴とし、さらに、前記フレーム画像記憶手段から順次取出されたフレーム画像に対して拡大率補正処理を施し、該拡大率補正処理されたフレーム画像に対して重ね合わせ処理を施してパノラマ画像を形成するとともに、前記拡大補正処理が、撮影位置(0)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa0、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M0=1+(b0/a0)、撮影位置(1)におけるX線源から被写体の断層位置までの距離をa、前記被写体の断層位置からX線撮像手段までの距離をbとすると撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率をM1=1+(b/a)としたとき、撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M、撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率Mとしたとき、撮影位置(0)で得られたフレーム画像を正規のサイズとすると、撮影位置(1)で得られたフレーム画像にはM/Mの係数を乗算してフレーム画像の拡大縮小処理を施してX線ビームが被写体の歯列弓を透過する所望の局部箇所のフレーム画像の拡大率の補正を行う手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パノラマ撮影モードとCT撮影モードとを切換えても、回転アーム移動手段の画像形成軌跡は、パノラマ撮影・CT撮影それぞれ同一で固定され、共通であり、ユーザーが撮影前にセンサを取り替える手間を省略することができ、その上、回転アーム移動手段を回転のみ(X軸・Y軸不要、即ち1軸回転のみ)で構成することが可能となり、装置を著しく簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
CT撮影モードが選択されている場合は、従来のCT撮影と同様の撮影を行う。パノラマ撮影モードが選択されている場合は、CT撮影時に使用する平面X線受像器(FPD等)を用いて、回転アームは回転動作のみを行い、X線源から照射されるX線ビームAを水平方向に移動させながら撮影する。この移動に伴い、X線受像器に照射される位置も水平方向に移動するが、所定の位置での重ね合わせ計算を行うことで、パノラマ断層画像を再構成することができる。また、この水平方向の移動により、X軸、および/またはY軸を移動させて得られるパノラマ撮影と同様のX線入射角を得ることができる。
【0022】
X軸・Y軸を移動させる場合と比較して回転中心が固定されている場合には、所定の断層域における拡大率が一定ではないが、上記の重ね合わせ計算の前処理として予め拡大縮小処理を行うことで、これを解決可能である。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明X線断層撮影装置の一例を説明する。
図2に示すように、本発明では、被写体1をほぼ中心としてX線源2および平面X線受像器3を対向配置し、回転アーム(図示せず)を介して固定し、回転可能な撮像系を構成すると共にX線源2の前方に第1スリット板4を設ける。この第1スリット板4は、ほぼ180度乃至240度程度の円弧状のX線遮蔽板で構成し、中央部に縦長のスリット孔が形成されたものであり、このスリット板によってX線源2をほぼ囲むように配置されている。また、このスリット板4はX線源2の前面でほぼ180度乃至240度程度X線源2を中心に回転または回動するように構成し、前記撮像系の回転に伴ってスリット孔を通過し、被写体1を透過したX線ビームが平面X線受像器3の平面内の所望局部箇所の縦・横の幅内に位置し、且つ撮像系の回転の開始時にスリット孔を通過し、被写体1を透過したX線ビームAが平面X線受像器3の平面内の左端側に投射され、撮像系の回転と共に平面X線受像器3の平面内を右側に移動し、撮像系の回転の終了時に平面X線受像器3の平面内の右端側に位置し得るように構成配置する。
【0024】
本発明によれば、上述したようにスリット板4を構成配置したため、X線源2から照射されたX線ビームAは、スリット板4のスリット孔を通過し、被写体1の歯列弓の所望局部をほぼ直交して透過し、対応する平面X線受像器3の平面にほぼ直交して投射され、従ってセンサである平面X線受像器3の平面へのX線入射角は回転アームの種々の回転位置において一定となる。
【0025】
ここに云う“X線ビーム”とはX線コーンビーム走査方向の広がりを所望の幅に制限させるものを意味するものとする。
【0026】
本発明においては、図4に示すように、撮影系の回転アームの回転中心(o)を、被写体1の歯列弓1のほぼ中心位置に位置させて固定し、CT撮影時もパノラマ撮影時もほぼ同一位置に固定する。
【0027】
次に、X線源2から照射され、平面X線受像器3に入射するX線ビームAの幅を制限するスリット部の構成を説明する。
本発明においては、スリット板4として、直線状スリット板および円弧状スリット板を用いることができる。
【0028】
直線状スリット板は、図5に示すに、X線源2を内蔵するX線ヘッド6の1側面にX線ビームA(図示せず)の照射口部7を設け、該照射口部7の他側面にスリット保持部8を介してスリット部9を摺動自在に設け、該スリット部9に、スリット孔10を有する直線状スリット板4を固着して構成する。
また、スリット部9のスリット支持体11にはモータ12の溝付き回転軸13を螺着する。即ち、スリット支持体11の側面に設けられたねじ山と、前記モータ12の溝付き回転軸13のねじ溝とを螺合して、前記モータ12の回転に伴ってスリット孔10をX線源2の前方でX線源2に対して左右にスライドし得るようにする。
斯様に構成した直線状スリット板4は、撮像系の回転に伴ってX線源2の前方でX線源2に対して左右にスライドし平面X線受像器3に左側から右側に向かって入射するX線ビームAの幅を規制し得るようにする。
【0029】
円弧状スリット板4は、図6aおよび図6bに示すように、X線源2を内蔵するX線ヘッド16の下面に、モータ17により回転自在の固定ギア18を固着するとともに、この固定ギア18に歯合するプラネット回転ギア19を設けて、このプラネット回転ギア19にスリット支持手段20を介してスリット孔21を有する円弧状スリット板4を固着して構成する。
斯様に構成した円弧状スリット板4は、固定ギア18の回転軸に設けられたモータ17の回転により固定ギア18に歯合するプラネット回転ギア19が固定ギア18の周縁を回動し、これによりプラネット回転ギア19は自転しながら固定ギア18の周縁を回動し、結果的に、プラネット回転ギア19に固着されているスリット支持手段20および円弧状スリット板4を、撮像系の回転アームの回転に伴ってX線源2の前方で左右に回動し、X線源2から照射されるX線ビームAの幅を制限し、平面X線受像器3に幅がほぼ一定のX線ビームAを入射し得るようにする。
【0030】
次に、X線撮影を行う場合には、先ず最初、被写体1、即ち、被写体1の頭部をX線源2とX線撮像手段3との間のほぼ中間位置に導入する。これらX線源2およびX線撮像手段3は、円の直径方向に対向して配置し、旋回駆動手段の回転アーム(図示せず)に回転自在に固着し、これらX線源2とX線撮像手段3の回転中心oに被写体1の歯列弓が位置し得るように配置する。
【0031】
撮影は旋回駆動手段を回転駆動しながらX線源2からX線を照射し、被写体1を透過したX線をX線撮像手段3(CMOSセンサ)、即ち、平板状受像器3で受け、得られたX線画像をA/D変換手段によりA/D変換し、フレーム画像のデジタル電気信号に変換する。このA/D変換されたフレーム画像を大容量フレーム画像記憶手段に記憶させるという手順をとる。
【0032】
上述したところでは、フレーム画像記憶手段、画像処理手段および処理画像記憶手段を個別に設けていたが、これらの機能を1つの大型メモリによって達成することもできる。
【0033】
上述したように、X線源2からX線ビームAを照射し、被写体1を透過したX線ビームAをX線撮像手段3(CMOSセンサ)で受ける状態を図7に示す。
図7aおよび図7bはX線ビームAがX線源2からX線撮像手段3に入射する状態を示し、図7aは側方から見た場合のX線ビームAと基準点sとの関係を示す側面図であり、図7bは同じく、上方から見た上面図である。
【0034】
従来は、図8に示すように、工程Iとして、上述したようにして取得され、大容量フレーム画像記憶手段に順次記憶されたフレーム画像を順次取り出し、工程IIで順次取出されたフレーム画像の基準点sを整列させ、工程IIIにおいて、整列させたフレーム画像を基準点sを基に重ね合わせ処理して、最終的にパノラマ画像を形成するようにしている。
【0035】
本発明では、図9に示すように、工程Iとして、上述したようにして取得され、大容量フレーム画像記憶手段に順次記憶されたフレーム画像を順次取り出し、工程IIで順次取り出されたフレーム画像の基準点sを整列させ、工程IIIで基準点sを整列させたフレーム画像に対して拡大率補正処理を施し、工程IVにおいて、拡大率補正処理されたフレーム画像に基準点sを基準にして重ね合わせ処理を施して、最後にパノラマ画像を形成する。
【0036】
従来一般には、パノラマ断層撮影において、図3に示すように、得られたフレーム画像の拡大率Mは一定であり、次式で表わすことができる。
る。
【0037】
(数1)
M = (a+b)/a = 1+(b/a)
【0038】
しかし、この式は一般のパノラマ撮影において回転アームの回転中心の軌跡が被写体の歯列弓内において或る軌跡に沿って移動する場合である。
【0039】
本発明のように、回転アームの回転中心の軌跡が図4に示すようにほぼ固定されている場合には、得られたフレーム画像の拡大率Mは一定とはならない。
即ち、図4に示すように、撮影位置(0)で得られたフレーム画像の拡大率M0は次式で表されるようになる。
【0040】
(数2)
M0 = 1+(b0/a0)
【0041】
また、撮影位置(1)で得られたフレーム画像の拡大率M1は次式で表されるようになる。
【0042】
(数3)
M1 = 1+(b1/a1)
【0043】
今、撮影位置(0)で得られたフレーム画像を正規のサイズとすると、本発明では、撮影位置(1)で得られたフレーム画像にはM0/M1の係数を乗算してフレーム画像の拡大縮小処理を施して、X線ビームAが被写体の歯列弓を透過する箇所、即ち、歯列弓の所望の局部箇所のフレーム画像の拡大率の補正を行うものである。
【0044】
本発明は上述した例に限定されるものではなく、平面X線受像器の代わりにCCDなどの細長いX線受像器を使用し、水平方向に移動させることによって1軸パノラマ(X軸・Y軸の移動が無く固定)とすることも可能である。また、そのX線受像器を、弧を描くように移動させると、X線受像器へのX線入射角を一定とすることができる。
また、上述した例では、X線撮像手段側に回転に連動してスライド移動する第1スリットを設けるとともにソフト的に処理するようにしているが、X線撮像手段側にもスリット機構(第2スリット機構)を設け、第1スリットの移動に連動しながら第2スリット機構をスライド移動させることも可能である。この場合には、散乱線による影響を受けないさらに解像力の良い画像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、X線断層撮影方法および装置の例について説明したが、これに限定されるものではなく、非破壊検査方法および装置にも適用し得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】従来のパノラマ撮影の構成を示す原理図である。
図2】本発明パノラマ撮影の構成を示す原理図である。
図3】従来のパノラマ断層撮影における断層部位のフレーム画像の拡大率を求める説明図である。
図4】本発明パノラマ断層撮影における断層部位のフレーム画像の拡大率を求める説明図である。
図5】X線源から照射され、平面X線受像器に入射するX線ビームAの幅を制限するスリット部の直線状スリット板の構成を示す説明図である。
図6】(a)は、X線源から照射され、平面X線受像器に入射するX線ビームAの幅を制限するスリット部の円弧状スリット板の構成を説明する上面図である。(b)は、X線源から照射され、平面X線受像器に入射するX線ビームAの幅を制限するスリット部の円弧状スリット板の構成を説明する側面図である。
図7】(a)は、X線ビームAがX線源からX線撮像手段に入射する状態を、側方から見た場合のX線ビームAと基準点sとの関係を示す側面図である。(b)は、X線ビームAがX線源からX線撮像手段に入射する状態を、上方から見た場合のX線ビームAと基準点sとの関係を示す上面図である。
図8】従来のパノラマ撮影において、フレーム画像の目的のエリアを切り取り、重ね合わせ処理を施す工程を示す説明図である。
図9】従来のパノラマ撮影において、フレーム画像の目的のエリアを切り取り、重ね合わせ処理を施す工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 被写体
2 X線源
3 X線受像器
4 第2スリット板
6 X線ヘッド
7 照射口部
8 スリット保持部
9 スリット部
10 スリット孔
11 スリット支持体
12 モータ
13 溝付き回転軸
16 X線ヘッド
17 モータ
18 固定ギア
19 プラネット回転ギア
20 スリット支持手段
21 スリット孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9