(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを含む微多孔膜であって、前記ポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレンを含み、前記無機粒子は酸化亜鉛を主成分として含み、前記ポリオレフィン樹脂と前記無機粒子との総量中に占める前記無機粒子の割合が15質量%以上85質量%以下であり、気孔率が50%以上90%以下であるポリオレフィン微多孔膜。
前記樹脂組成物において、前記ポリオレフィン樹脂と前記無機粒子と前記可塑剤との総量中に占める前記無機粒子の割合が5質量%以上45質量%以下である、請求項4又は5に記載の製造方法。
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン微多孔膜又は請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜を含む蓄電デバイス用セパレータ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「微多孔膜」ともいう。)は、ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを含むポリオレフィン樹脂組成物にて形成される。本実施の形態において用いられるポリオレフィン樹脂とは、オレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体をいい、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のモノマーを重合して得られる重合体(ホモ重合体や共重合体、多段重合体等)が挙げられる。なお、ポリオレフィン樹脂が、オレフィン炭化水素とそれ以外の共重合体である場合、オレフィン炭化水素の共重合割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよい。これら重合体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0016】
また、上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(密度0.910g/cm3以上0.930g/cm3未満)、線状低密度ポリエチレン(密度0.910〜0.940g/cm3)、中密度ポリエチレン(密度0.930g/cm3以上0.942g/cm3未満)、高密度ポリエチレン(密度0.942g/cm3以上)、超高分子量ポリエチレン(密度0.910〜0.970g/cm3)、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバーが挙げられる。
【0017】
ここで、ポリオレフィン微多孔膜を電池セパレータとして用いる場合に、電池の高温保存特性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂が高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。高密度ポリエチレンのポリオレフィン樹脂中に占める割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0018】
また、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂はポリプロピレンを含むことが好ましい。ポリプロピレンのポリオレフィン樹脂中に占める割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、ポリプロピレンのポリオレフィン樹脂中に占める割合は、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。ポリプロピレンの割合を1質量%以上とすることは、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性を向上させる観点から好ましい。また、ポリプロピレンの割合を20質量%以上とすることは、延伸性をより良好にし、更に透気度の優れる微多孔膜を実現する観点から好ましい。一方、ポリプロピレンの割合を50質量%以下とすることは、延伸性をより良好にし、更に高突刺強度な微多孔膜を実現する観点から好ましい。
【0019】
上記ポリオレフィン樹脂は、特定の粘度平均分子量(なお、複数のポリオレフィン樹脂が用いられる場合には、各々のポリオレフィン樹脂について測定される値を意味する。)を有するポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。粘度平均分子量としては、好ましくは40万以上、より好ましくは50万以上、より好ましくは70万以上、より好ましくは100万以上、更に好ましくは150万以上、特に好ましくは180万以上であり、好ましくは500万以下、より好ましくは450万以下である。当該粘度平均分子量を40万以上とすることは、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融成形する際にメルトテンションを高く維持し良好な成形性を確保する観点、並びに、ポリオレフィン樹脂の分子に対して十分な絡み合いを付与し微多孔膜の強度を高める観点から好ましい。また、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して押出しする際の負荷を上昇させ、無機粒子の分散性を向上させる(品質の良い微多孔膜を実現する)観点からも好ましい。一方、粘度平均分子量を500万以下とすることは、ポリオレフィン樹脂組成物の均一な溶融混練を実現し、そのシートの成形性、特に厚み安定性を向上させる観点から好ましい。本実施の形態のポリオレフィン樹脂組成物は、上述の範囲の粘度平均分子量を有するポリエチレンを含むことが好ましい。
【0020】
本実施の形態において、無機粒子は酸化亜鉛を主成分として含むものである。ここで、「酸化亜鉛を主成分とする」とは、無機粒子中に占める酸化亜鉛の割合が30質量%以上であることを意味する。酸化亜鉛の無機粒子中に占める割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0021】
本実施の形態に係る無機粒子は、酸化亜鉛に加えて、その他の無機粒子を含んでもよい。酸化亜鉛と併用可能な無機粒子としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化鉄などの酸化物系セラミックス、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、ゼオライト等のセラミックス、ガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。微多孔膜が酸化亜鉛を含むと、電気化学的安定性の観点からも好ましい。酸化亜鉛を主成分として含む無機粒子は、市販品又は天然に存在するものを入手、あるいは常法により合成することができるが、中でも、粒径、形状を制御しやすく、電気化学素子に悪影響するイオン性不純物の量をコントロールできる合成酸化亜鉛がさらに望ましい。市販の酸化亜鉛を主成分として含む無機粒子としては、例えば、堺化学工業社製「FINEX30」などのFINEXシリーズや「ZINCA20」「NANOFINE W−1」、住友大阪セメント社製「ZnO350」などのZnOシリーズ、杭州万景新材料有限公司社製「VK−JS01」などのVK−JSシリーズが挙げられる。
【0022】
無機粒子のかさ比容は、好ましくは250mL/100g以上、より好ましくは270mL/100g以上、更に好ましくは300mL/100g以上である、また、無機粒子のかさ比容は、好ましくは1200mL/100g以下、好ましくは1000mL/100g以下、更に好ましくは900mL/100g以下である。かさ比容を250mL/100g以上とすることは、ポリオレフィン樹脂に無機粒子を分散させて得られたシートを延伸した際にマクロボイドが生じ難くなる傾向があり、高温保存時の自己放電を抑制する観点から好ましい。ここで、ポリオレフィン樹脂と無機粒子との間でマクロボイドが生じ難いことは、微多孔膜を構成するフィブリル自身の高硬度化の観点から好ましく、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度に優れる傾向が観察されるため好ましい。一方、かさ比容を1200mL/100g以下とすることは、製造上の観点から好ましい。
ここで「かさ比容」とは、JIS K 5101に基づいて求められる値を言う。
【0023】
本実施の形態に係るポリオレフィン樹脂組成物において、上記ポリオレフィン樹脂と上記無機粒子の総量中に占める上記無機粒子の割合が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、通常85質量%以下、好ましくは80質量%以下である。当該割合を15質量%以上とすることは、高レート特性を向上させる観点やポリオレフィン微多孔膜の透気度を低くして透過性を向上させる観点から好ましい。一方、当該割合を85質量%以下とすることは、高強度を発現させる観点から好ましい。
【0024】
上記ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料など、各種添加剤を混合してもよい。そのような添加剤の、ポリオレフィン樹脂組成物への配合量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。
【0025】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、例えば、下記(1)〜(5)の各工程を含む製造方法を用いることができる。
(1)ポリオレフィン樹脂と、無機粒子と、可塑剤とを含む混合物を溶融混練して混練物を得る混練工程、
(2)上記混練工程の後、上記混練物をシート状に成形してシート状成形体を得る成形工程、
(3)上記成形工程の後、上記シート状成形体を好ましくは20倍以上200倍以下の面倍率で延伸し、上記シート状成形体の加工物である延伸物を形成する延伸工程、
(4)上記延伸工程の後、上記延伸物から可塑剤を抽出して多孔体を形成する多孔体形成工程、
(5)上記多孔体形成工程の後、上記多孔体に対し、上記ポリオレフィン樹脂の融点以上、(ポリオレフィン樹脂の融点+40℃)以下の温度条件で熱処理を行う熱処理工程。
【0026】
上記(1)の工程で用いられる可塑剤は、ポリオレフィン樹脂と混合した際にポリオレフィン樹脂の融点以上において均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒であることが好ましい。また、可塑剤は常温において液体であることが好ましい。可塑剤としては、例えば、流動パラフィン及びパラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジエチルヘキシル及びフタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール及びステアリルアルコール等の高級アルコール類が挙げられる。
【0027】
また、可塑剤は、SP値が7.5以上8.5未満である可塑剤(I)と、SP値が8.5以上9.9未満である可塑剤(II)とを含む混合可塑剤であると好ましい。ここで、本実施の形態でいう「SP値」とは、溶解度パラメータであり、秋山三郎らによる「ポリマーブレンド」の125頁〜(1981年シーエムシー刊)に記載されている方法や、SmallによるJournal of Applied Chemistry 第3巻71頁〜(1953年)に記載されている周知の方法により計算される値である。
【0028】
SP値が7.5以上8.5未満の可塑剤(可塑剤(I))としては、例えば、流動パラフィン(以下、「LP」と略記することがある。SP値8.4)、プロセスオイル等の鉱物油、キシレン、デカリン等の炭化水素油が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
一方、SP値が8.5以上9.9未満の可塑剤(可塑剤(II))としては、例えば、フタル酸ジブチル(以下、「DBP」と略記することがある。SP値9.4、融点−35℃)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(以下、「DOP」と略記することがある。SP値8.9、融点−55℃)等のフタル酸エステル、セバシン酸ジオクチル(以下、「DOS」と略記することがある。SP値8.6、融点−62℃)等のセバシン酸エステル、アジピン酸ジオクチル(以下、「DOA」と略記することがある。SP値8.6、融点−70℃)等のアジピン酸エステル、トリメリット酸トリオクチル(以下、「TOTM」と略記することがある。SP値9.5、融点−30℃)等のトリメリット酸エステル、リン酸トリオクチル、(以下、「TOP」と略記することがある。SP値9.2、融点−70℃)等のリン酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
特にポリオレフィン樹脂にポリエチレンが含まれる場合、可塑剤として流動パラフィンを用いることは、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面剥離を抑制し、均一な延伸を実施する観点、及び高突刺強度を実現する観点から好ましい。また、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを用いることは、混練物を溶融押出しする際の負荷を上昇させ、無機粒子の分散性を向上させる(品質の良い微多孔膜を実現する)観点から好ましい。また、混合可塑剤が流動パラフィンとフタル酸ジ−2−エチルヘキシルとの組合せであると好ましい。このような混合可塑剤は、ポリエチレンと無機粒子との混合物に対して相溶性が高く、延伸時にポリエチレンと無機粒子と可塑剤との界面剥離が起こり難いため、均一な延伸を実施しやすく、その結果、強度の高い微多孔膜を実現できる。
【0031】
上記(1)の工程の混合物において、ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤との総量中に占める無機粒子の割合が5質量%以上であると好ましく、10質量%以上であるとより好ましく、15質量%以上であると更に好ましく、45質量%以下であると好ましく、40質量%以下であるとより好ましく、35質量%以下であると更に好ましい。その割合が5質量%以上であることにより、ポリオレフィン樹脂を含有する微多孔膜において耐熱性に優れるという効果を得やすい傾向にある。一方、その割合が45質量%以下であることにより、高強度が得られるという効果を得やすい傾向にある。また電池用セパレータとして使用した際に、高温保存時の容量低下が起こり難く、信頼性に優れる。特に、30質量%以下である場合、当該傾向が顕著となり好ましい。
【0032】
可塑剤(I)の混合可塑剤中に占める割合は、好ましくは15〜85質量%、より好ましくは20〜80質量%である。当該割合が15質量%以上の場合、ポリオレフィン樹脂に無機粒子が高分散しやすい傾向があるので好ましい。一方、当該割合が85質量%以下の場合、無機粒子の凝集が起こり難く均一な延伸が行われやすい傾向があるので好ましい。
【0033】
上記可塑剤の上記混練物中に占める割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。当該割合を80質量%以下とすることは、溶融成形時のメルトテンションを高く維持し、成形性を確保する観点から好ましい。一方、当該割合を30質量%以上とすることは、成形性を確保する観点、及び、ポリオレフィンの結晶領域におけるラメラ晶を効率よく引き伸ばす観点から好ましい。ここで、ラメラ晶が効率よく引き伸ばされることは、ポリオレフィン鎖の切断が生じずにポリオレフィン鎖が効率よく引き伸ばされることを意味し、均一かつ微細な孔構造の形成や、ポリオレフィン微多孔膜の強度及び結晶化度の向上に寄与し得る。
【0034】
ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤とを混練する方法としては、例えば、以下の(a)及び(b)の方法が挙げられる。
(a)ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを押出機、ニーダー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂を加熱溶融してそれらを混練しながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
(b)予めポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤とを、ヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で予備的に混練する工程を経て、それらの混練物を押出機に投入し、樹脂を加熱溶融させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
【0035】
上記(b)の方法における予備混練に際しては、無機粒子の分散性を向上させ、高倍率の延伸を破膜することなく実施する観点から、ポリオレフィン樹脂及び無機粒子に対し、下記式(A)で表される条件を満足する量の可塑剤を配合して予備的に混練することが好ましい。
0.2≦(可塑剤質量/無機粒子質量)≦1.2 (A)
【0036】
上記(2)の工程は、例えば、上記混練物をTダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて冷却固化させる工程である。当該熱伝導体としては、金属、水、空気、又は可塑剤自身を使用できる。また、冷却固化をロール間で挟み込むことにより行うことは、シート状成形体の膜強度を増加させる観点、並びにシート状成形体の表面平滑性を向上させる観点から好ましい。
【0037】
上記(3)の工程における延伸方法としては、例えば、二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)、多段延伸、多数回延伸等の方法が挙げられる。中でも、同時二軸延伸を採用することは、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度向上及び膜厚均一化の観点から好ましい。
【0038】
また、上記(3)の工程における面倍率は、好ましくは20倍以上、より好ましくは25倍以上であり、好ましくは200倍以下、より好ましくは100倍以下、更に好ましくは50倍以下である。当該面倍率を20倍以上とすることは、ポリオレフィン樹脂と無機粒子との界面を密着させ、ポリオレフィン微多孔膜の局所的かつ微小領域での耐圧縮特性を向上させる観点から好ましい。
【0039】
上記(3)の工程における延伸温度は、ポリオレフィン樹脂の融点を基準温度として、好ましくは(融点−50℃)以上、より好ましくは(融点−30℃)以上、更に好ましくは(融点−20℃)以上であり、好ましくは(融点−2℃)以下、より好ましくは(融点−3℃)以下である。延伸温度を(融点−50℃)以上とすることは、ポリオレフィン樹脂と無機粒子との界面、又はポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面を良好に密着させ、ポリオレフィン微多孔膜の局所的かつ微小領域での耐圧縮特性を向上させる観点から好ましい。例えば、ポリオレフィン樹脂として高密度ポリエチレンを用いた場合、延伸温度は115℃以上132℃以下が好適である。ポリオレフィン樹脂として複数のポリオレフィンを混合して用いた場合、その融解熱量が大きい方のポリオレフィンの融点を基準とすることができる。
【0040】
上記(4)の工程は、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度を向上させる観点から、上記(3)の工程の後に行うことが好ましい。抽出方法としては、上記可塑剤の溶剤に対して上記延伸物を浸漬する方法が挙げられる。なお、抽出後の微多孔膜中の可塑剤残存量を1質量%未満にすることが好ましい。
【0041】
上記(5)の工程は、熱固定、及び/又は熱緩和を行う工程であることが好ましい。ここで、(5)の工程における延伸倍率は、面倍率として好ましくは4倍未満、より好ましくは3倍未満である。面倍率を4倍未満とすることは、微多孔膜においてマクロボイドの発生や突刺強度低下を抑制する観点から好ましい。また、熱処理温度は、ポリオレフィン樹脂の融点を基準として、好ましくは(融点+40℃)以下、より好ましくは(融点+30℃)以下であり、融点以上である。熱処理温度を融点以上とすることは、膜の破れ等の発生を抑制し、また、ポリオレフィン微多孔膜の140℃条件下での熱収縮率を低減する観点から好適である。一方、熱処理温度を(融点+40℃)以下とすることは、ポリオレフィン樹脂の収縮を抑制し、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮率を低減する観点から好適である。
【0042】
なお、上記(5)の工程の後、得られたポリオレフィン微多孔膜に対して後処理を施してもよい。このような後処理としては、例えば、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理が挙げられる。
【0043】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜について、その突刺強度は、好ましくは1.0N/20μm(膜厚)以上、より好ましくは1.2N/20μm以上であり、更に好ましくは1.3N/20μm以上であり、好ましくは20.0N/20μm以下、より好ましくは15.0N/20μm以下、更に好ましくは10.0N/20μm以下である。突刺強度を1.0N/20μm以上とすることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点から好ましい。また、充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制し得る観点からも好ましい。一方、突刺強度を20.0N/20μm以下とすることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。なお、上記突刺強度は、ポリエチレン分子量、ポリオレフィン樹脂の割合、及び、上記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0044】
上記微多孔膜の気孔率は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。気孔率を50%以上とすることは、微多孔膜をリチウムイオン二次電池等の蓄電システムに用いた際に出力を確保する観点から好適である。一方、気孔率を90%以下とすることは、高い突刺強度を確保する観点から好ましい。なお、上記気孔率は、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する及び/または、前記(5)の熱固定及び熱緩和工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0045】
上記微多孔膜の最終的な膜厚は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。膜厚を2μm以上とすることは、微多孔膜の機械強度を向上させる観点から好適である。一方、微多孔膜の膜厚を100μm以下とすることは、セパレータとして用いた場合に電池内部での占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
【0046】
上記微多孔膜の透気度は20μm換算で、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上であり、好ましくは1000秒以下、より好ましくは500秒以下、更に好ましくは300秒以下である。透気度を10秒以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好適である。一方、透気度を1000秒以下とすることは、良好な充放電特性が得る観点から好ましい。
なお、上記透気度は、上記(5)の熱処理工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0047】
上記微多孔膜の高温保存試験において、ガス発生が観察されないことが好ましい。ガス発生が観察されないということは、電池内部において電解液の分解が生じていないことであり、優れた高温保存特性を発現させる観点から好ましい。
【0048】
本実施の形態の蓄電デバイス用セパレータは上記微多孔膜を含むものであれば特に限定されず、上記微多孔膜は、特に非水電解液を用いるような蓄電デバイス用セパレータとして有用である。また、本実施の形態の蓄電デバイスは、上述の蓄電デバイス用セパレータを備えるものであれば特に限定されず、そのセパレータと、正極と、負極と、電解液とを含む。これらの蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイスは、上記微多孔膜を用いる他は、従来の構成と同様であってもよい。
【0049】
上記蓄電デバイスは、例えば、上記微多孔膜を幅10〜500mm、好ましくは80〜500mm、長さ200〜4000m、好ましくは1000〜4000m、の縦長形状のセパレータとして作製し、当該セパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は、負極−セパレータ−正極−セパレータの順で重ね、円又は扁平な渦巻状に巻回して巻回体を得、当該巻回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することにより製造することができる。なお、上記蓄電デバイスは、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順に平板状に積層し、袋状のフィルムでラミネートし、電解液を注入する工程を経て製造することもできる。
【0050】
本実施の形態の蓄電デバイスは高出力、長期信頼性に優れるので、電気自動車やハイブリッド自動車用として、特に有用である。
【0051】
なお、上述した各種パラメータについては、特に記載のない限り、後述する実施例における測定方法に準じて測定される。
【実施例】
【0052】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各物性、特性は以下の方法により測定した。
【0053】
(1)かさ比容
無機粒子のかさ比容は、JIS K・5101に従って求めた。
【0054】
(2)平均一次粒子径(結晶径)
走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡により、目視で粒子を観察して、任意に抽出した50個の一次粒子の粒子径の平均を平均一次粒子径とした。
なお、粒子径は、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値とした。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。
【0055】
(3)粘度平均分子量(Mv)
ポリエチレンの粘度平均分子量は、溶剤としてデカリンを用い、測定温度135℃で測定し、粘度[η]から次式により算出した。
[η]=6.77×10
−4Mv
0.67(Chiangの式)
また、ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10
−4Mv
0.80
【0056】
(4)膜厚(μm)
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて室温23℃で微多孔膜の膜厚を測定した。
【0057】
(5)気孔率(%)
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm
3)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm
3)より、次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/混合組成物の密度)/体積×100
なお、膜密度(混合組成物の密度)は、用いたポリオレフィン樹脂及び無機粒子の各々の密度並びに混合比より計算で求められる値を用いた。
【0058】
(6)透気度(sec)
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計、G−B2(商標)により、微多孔膜の透気度を測定した。
【0059】
(7)突刺強度(N)
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで微多孔膜を固定した。次に固定された微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として生の突刺強度(N)を得た。
【0060】
(8)高温保存試験
微多孔膜(一方の主面の面積:0.1m
2)を100cm
3の内装ポリエチレンのアルミニウム製袋状容器に入れ、後述の非水電解液2〜6mLをその容器に注入し、微多孔膜に電解液を浸透させた。その後、可能な限り容器内の空気を除いてヒートシーラーで容器の入り口をシールして密閉した。その容器を80℃オーブンに4時間静置後取り出して、室温まで自然冷却した。
次に、冷却後の容器にガラス板を載置して、容器の膨れの有無(ガス発生の有無)を評価した。微量でもガスが発生した場合、オーブン内で加熱された容器が室温に冷却された際に容器の表面にシワとなって現れるので、この場合を「あり」と評価し、シワの発生が認められない場合を「なし」と評価した。
【0061】
(9)電気抵抗
安藤電気製LCRメーターAG−43と断面を
図1に示したセルとを用いて1kHzの交流にて、セル全体の抵抗値を測定し、次式により微多孔膜の電気抵抗を算出した。なお、
図1に示したセルは微多孔膜が存在するセルであり、そのセルから微多孔膜を除去した以外は同様の構成を有するセルが、微多孔膜が存在しないセルである。
電気抵抗(Ωcm2)=(膜が存在するときの抵抗値−膜が存在しないときの抵抗値)×0.785
なお、セルにおける電解液として、プロピレンカーボネートとジメトキシエタンとの混合溶液(50/50容量%)中に過塩素酸リチウム1mol/リットルを溶解したものを用い、電極として、極板面積:0.785cm2の一対の白金黒電極を極間距離が3mmになるよう配置したものを用いた。
【0062】
a.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させてて非水電解液を調製した。
b.正極の作製
活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO
2を92.2質量%、導電剤としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にダイコーターで塗付し、130℃で3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗付量は250g/m
2,活物質嵩密度は3.00g/cm
3になるようにした。これを電池幅に合わせて切断して帯状にして正極を得た。
c.負極の作製
活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の両面にダイコーターで塗付し、120℃で3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗付量は106g/m
2,活物質嵩密度は1.35g/cm
3になるようにした。これを電池幅に合わせて切断して帯状にして負極を得た。
d.電池組立
幅約42mmに切断した帯状ポリオレフィン微多孔膜(セパレータ)と帯状正極及び帯状負極を、帯状負極、セパレータ、帯状正極、セパレータの順に重ねて渦巻状に複数回捲回した後、平板状にプレスを行うことによって電極板積層体を作製した。その電極板積層体を蓋を備えるアルミニウム製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製リードを容器壁に、負極集電体から導出したニッケル製リードを上記容器の蓋にある端子部にそれぞれ接続した。さらにこの容器内に上述の非水電解液を注入し封口して電池を得た。
e.高レート特性
各セルにおける6.0mA(1C)放電時の放電容量を100%とし、18.0mA(3C)放電時の放電容量を高レート特性として評価した(下記式参照)。充放電は充放電装置(型式HJ−201BS、北斗電工社製)を用いて以下の順序で実施した。すなわち、(CH1)6.0mA充電、(DC1)6.0mA放電、(CH2)6.0mA充電、(DC2)6.0mA放電、(CH3)6.0mA充電、(DC3)18.0mA放電、(CH4)6.0mA充電、(DC4)6.0mA放電の順序で実施した。
指定値の電流値で電池電圧4.2Vまで充電し、その電圧に到達後4.2Vを保持するようにして電流値を指定値から絞り始めるという方法で、合計3時間充電した。また、指定値の電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。各セルにおける3C放電時の放電容量を比較した。
高レート特性(%)=(DC3)放電容量/(DC2)放電容量×100
f.高温保存維持率
各セルにおける6.0mA(1C)放電時の放電容量を100%とし、満充電したセルを60℃45日保存後に取り出して測定した6.0mA(1C)放電時の放電容量を比較した。充放電は充放電装置(型式HJ−201BS、北斗電工社製)を用いて実施した。
初回放電容量に対する60℃45日間保存した後の容量の割合(%)を高温保存維持率(高温保存特性の指標)として表した(下記式参照)。
高温保存維持率(%)=(60℃45日後の放電容量/初期放電容量)×100
【0063】
実施例で用いた酸化亜鉛等の無機粒子の各種物性を表1にまとめた。
【表1】
【0064】
また、その他の原料については以下の通りである。
MU2608P(商標):Mv15万の線状低密度ポリエチレン、三菱化学(株)製
UH650M1(商標):Mv100万の超高分子量ポリエチレン、旭化成ケミカルズ(株)製
UH850(商標):Mv200万の超高分子量ポリエチレン、旭化成ケミカルズ(株)製
UH950(商標):Mv450万の超高分子量ポリエチレン、旭化成ケミカルズ(株)製
SH800(商標):Mv27万の高密度ポリエチレン、旭化成ケミカルズ(株)製
H−100M(商標):Mv40万のポリプロピレン、(株)プライムポリマー製
LP:流動パラフィン(スモイルP−350P(商標)、松村石油研究所製)
DOP:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP(商標)、チッソ社製)
【0065】
[実施例1]
表2に示す配合量のポリオレフィン、無機粒子、及び可塑剤、並びに酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.2質量部、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.3質量部の割合で含む混合物を、ヘンシェルミキサーにて予備的に混合(予備混練)した。得られた予備混合物(予備混練物)をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機のフィード口に供給して溶融混練した。合わせて、溶融混練し押し出される全混練物(100質量部)中に占める流動パラフィン量の割合が68質量部となるように、流動パラフィンを二軸押出機シリンダーにサイドフィードした。溶融混練条件を、設定温度180℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量16kg/時間に設定して、予備混合物を溶融混練し、溶融混練物を得た。続いて、得られた溶融混練物をTダイを経て表面温度40℃に制御された冷却ロール間に押し出し、厚み1500μmのシート状のポリオレフィン組成物を得た。次に、連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に6.1倍に同時二軸延伸を行った。この時、同時二軸テンターの設定温度は122℃であった。得られた延伸シートを、塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後、室温で乾燥して塩化メチレンを除去した。さらに横テンターに導き横方向に1.7倍延伸した後、最終出口で1.5倍となるように13%緩和して(熱緩和)、巻取りを行って微多孔膜を得た。横方向への延伸時の設定温度は125℃、熱緩和時の設定温度は130℃であった。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
なお、得られた微多孔膜は膜厚が安定しており、1000m巻きが可能であった。
【0066】
[実施例2]
表2に示す条件以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0067】
[実施例3]
表2に示す条件以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0068】
[実施例4]
表2に示す配合量のポリオレフィン、無機粒子、及び可塑剤、並びに可塑剤として流動パラフィン(松村石油研究所製:スモイル P−350P、略称LP)を150質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキスー[3−(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.11質量部、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.18質量部の割合で含む混合物を、東洋精機製作所社製プラストミルを用いて溶融混練した。溶融混練は、プラストミルの温度を200℃、回転数を50rpmに設定して10分間行った。溶融した混練物をプラストミルから取り出して冷却し、得られた固化物をポリイミドフィルムを介して金属板の間に挟み、200℃に設定した熱プレス機を用い10MPaで圧縮し、厚さ1000μmのシートを作製した。得られたシートに対して、岩本製作所社製二軸延伸機を用いて、120℃で縦方向に7倍、横方向に7倍に同時二軸延伸を行った。得られた延伸シートを、ステンレスの枠でその四方を固定した状態で、塩化メチレンに浸漬して可塑剤を除去した後、室温で乾燥して塩化メチレンを除去して微多孔膜を得た。その微多孔膜について各種特性を評価した。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0069】
[実施例5]
表2に示す条件以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0070】
[実施例6]
表2に示す条件以外は実施例4と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0071】
[実施例7]
表2に示す条件以外は実施例4と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0072】
[実施例8]
表2に示す条件以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0073】
[実施例9]
表2に示す条件以外は実施例4と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0074】
[実施例10]
表2に示す配合量のポリオレフィン、無機粒子、及び可塑剤として流動パラフィン(LP)とフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(チッソ社製、商標「DOP」、略称「DOP」)との混合物(混合可塑剤、質量比にてLP/DOP=30/120)を150質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチルーテトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.11質量部、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.18質量部の割合で含む混合物を、東洋精機製作所社製プラストミルを用いて溶融混練した。溶融混練は、プラストミルの温度を200℃、回転数を50rpmに設定して10分間行った。溶融した混練物をプラストミルから取り出して冷却し、得られた固化物をポリイミドフィルムを介して金属板の間に挟み、200℃に設定した熱プレス機を用い10MPaで圧縮し、厚さ1000μmのシートを作製した。得られたシートに対して、岩本製作所社製二軸延伸機を用いて、115℃で縦方向に7倍、横方向に7倍に同時二軸延伸を行った。得られた延伸シートを、ステンレスの枠でその四方を固定した状態で、塩化メチレンに浸漬して可塑剤を除去した後、室温で乾燥して塩化メチレンを除去して微多孔膜を得た。その微多孔膜について各種特性を評価した。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0075】
[実施例11〜13]
表2に示す条件以外は実施例10と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0076】
[実施例14,15、比較例1,2,3]
表2に示す条件以外は実施例4と同様にして微多孔膜を得た。原料、製造条件及び膜特性を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2の記載から、以下の内容が読み取れる。
(1)酸化亜鉛無機粒子を含む実施例1〜15の微多孔膜は、炭酸カルシウム無機粒子を含む比較例1、酸化亜鉛無機粒子を少量(ポリオレフィン樹脂と無機粒子との総量中に占める割合が10質量%)しか含まない比較例2及びポリオレフィン樹脂中に高密度ポリエチレンを含まない比較例3の微多孔膜に比して、高温保存維持率が良好であった。
さらに、ポリオレフィン樹脂の組成が概ね同じであるものどうしを比較した場合、酸化亜鉛無機粒子を含む実施例2、4、5及び8〜14の微多孔膜は、炭酸カルシウム無機粒子を含む比較例1や酸化亜鉛無機粒子を少量しか含まない比較例2に比して、高レート特性も良好であった。
(2)超高分子量ポリエチレンを含む実施例1〜14の微多孔膜は、超高分子量ポリエチレンを含まない実施例15の微多孔膜に比して、高レート特性が良好であった。
(3)無機粒子のかさ比容が350mL/100gである実施例5及び無機粒子のかさ比容が500mL/100gである実施例8〜9の微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂の組成が同じで無機粒子のかさ比容が140mL/100gである実施例4の微多孔膜に比して、突刺強度が良好であった。
(4)2種類の可塑剤からなる混合可塑剤を用いて製造された実施例10〜12の微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂の組成が同じで可塑剤が1種類しか用いられていない実施例9及び13の微多孔膜に比して、交流電気抵抗が低く良好であった。