(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミンC・アミノ酸等の機能性成分が入った水、アロマオイル、消臭材等の不揮発性機能性成分を含む水を高電圧を印加することで霧化させ、ミストとして放出する静電霧化装置が知られている。一般的に静電霧化装置は、貯水部から水を放出ピン部材の先端部まで毛細管現象で搬送し、先端部が多孔質体から形成される放出ピン部材まで水が引き上げられ、該放出ピン部材に高電圧を印加することにより、先端部からミストを放出する。
しかしながら、従来の静電霧化装置においては、水タンクに補給する水が、水道水のようなCa、Mg等のミネラル成分を含む水であった場合には、このミネラル成分が空気中のCO
2と反応して吸水体の霧化部にCaCO
3やMgO等を析出付着させ、ミストの発生を妨げることがあった。
この問題点に対し、水搬送経路中にミネラル成分を除去するためのイオン交換部を設けることで、尖った霧化部において空気中のCO
2との反応によりCaCO
3やMgO等の析出付着が防止され、定期的なメンテナンスを行わずとも継続的に使用することが可能な静電霧化装置が記載されている(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の高電圧を印加しミストを発生させる霧化部を有する静電霧化装置においては、その構成において、放出ピン部材先端部を構成する多孔質体が空気に触れ、酸化反応を起こすことで酸化物が付着し、多孔質体を目詰まりさせるという別の問題があった。このように多孔質体が目詰まりすると、毛細管現象による水の搬送を阻害し、静電霧化が起こりにくくなるという現象が起こるため、放出ピン部材先端部に析出付着して目詰まりしている酸化物等を除去するメンテナンスを行ったり、ミスト放出のために必要以上に高電圧を印加する必要があった。
そこで、本発明は、ミスト放出のための放出ピン部材に着目し鋭意検討を行った結果、放出ピン部材にカーボン材料を担持させることで、必要以上の高電圧を印加することなく多量のミストを放出することが可能な放出ピン部材、その放出ピン部材及び保水部材と組み合わせて用いるミスト発生部材、それを用いた静電霧化部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明に係る放出ピン部材は、ミストを外部に放出する静電霧化装置に用いる部材であって、多孔質体又は繊維成型体の芯部と、該芯部を覆うように形成された導電性グラファイト配合材と、からなり、導電性グラファイト配合材は、放出ピン部材の底面部において、その底面部周縁部を残してその中心部が除去されていることを特徴とする。
[2]本発明に係る放出ピン部材は、前記[1]において、下方部においてその側面に水溶液吸収用の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
[3]本発明に係るミスト発生部材は、前記[1]又は[2]の放出ピン部材と、該放出ピン部材を上部に突設するための保水部材と、からなり、該保水部材は、その上面において該放出ピン部材を嵌合するための凹部が設けられており、その下面において導電層を有しており、前記放出ピン部材を該凹部に嵌合させて、前記放出ピン部材の底面部周縁部の導電性グラファイト配合材と該保水部材下面に設けられた導電層とが通電性を有するようにしたことを特徴とする。
[4]本発明に係る静電霧化装置は、前記[3]のミスト発生部材を備え、該ミスト発生部材の保水部材に水溶液を供給する貯水部と、前記放出ピン部材に電圧を印加する印加電極と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の放出ピン部材は、多孔質体又は繊維成型体の芯部と、該芯部を覆うように形成された導電性グラファイト配合材と、からなり、導電性グラファイト配合材は、放出ピン部材の底面部において、その底面部周縁部を残してその中心部が除去されていることにより、底面部からの吸水性を有するとともに、高電圧を印加することなく多量のミストを放出することが可能となるという効果を奏する。
また、下方部においてその側面に水溶液吸収用の貫通孔を形成することで、保水部材から放出ピン部材の下方側面の貫通孔を通して芯部に容易に水溶液を吸収させることができる。
さらに、保水部材下面に設けられた導電層と接触させて通電性を有するようにしたことで、保水部材に印加電極の給電端子を接合させて放出ピン部材を安定的にイオン化させて静電霧化が行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態により、本発明を説明するが、以下の実施例は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施例を通じて説明される特徴が本発明を限定するものでもない。
【0009】
本発明に係る放出ピン材は、多孔質体又は繊維成型体の芯部と、該芯部を覆うように形成された導電性グラファイト配合材と、からなり、導電性グラファイト配合材は、放出ピン部材の底面部において、その底面部周縁部を残してその中心部が除去されている。
【0010】
本発明に係る静電霧化装置は、高電圧を印加することで水溶液を霧化させ、ミストとして放出するものである。静電霧化装置は、貯水部と、貯水部から吸水した水を保持する保水部材と、保水部に突設されたミストを外部に放出する放出ピン部材と、放出ピン部材に電圧を印加する印加電極とを備える。
このうち、放出ピン部材は、保水部部材に突設され、保水部部材に保持された水や機能性成分を含む水(本明細書において、水と併せて水溶液という)を吸い上げ、その先端部からミストを外部に放出する役割を果たす。したがって、放出ピン部材は高い吸水力及び保水力を備えることが必要となる。これは、水溶液を保水部部材に留まらせることなく効率的に放出ピン部材に吸い上げ、ミストを外部に放出させるためである。
【0011】
放出ピン部材は、多孔質体や繊維成型体からなる芯部と、該芯部を覆うように形成された導電性グラファイト配合材と、からなる。多孔質体や繊維成型体は、セラミック材料、金属材料、合成樹脂材料、天然樹脂材料の1種類または2種類以上を複合化して形成される。
【0012】
多孔質体とは、内部に無数の微小な空孔をもつ材料のことを指し、該多孔質体は独立した微細泡の集合体であるよりも、無数の微細孔が連続しているものを使用する方が、水溶液を吸い上げる上で好ましい。例えば、セラミック粒子や金属粒子を棒状体として焼結させた多孔体や、ウレタン樹脂やスチレン樹脂等の発泡体を棒状体として形成したものが挙げられる。繊維成型体とは、多数の繊維状物を収束して自己融着もしくは接着剤等により部分的もしくは全体的に接着して一体化し、その網目状空隙を水溶液の流路として形成される材料のことを指す。例えば、セラミックス繊維(セラミックスファイバー、ガラス繊維等)、有機繊維(ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維等)、金属繊維(ステンレス繊維、銅繊維、チタン繊維等)又はこれらを混合したものを棒状体として形成したものが挙げられる。
【0013】
セラミック材料とは、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアのような単一酸化物、または、ムライト、ゼオライト、ベントナイト、セビオライト、アタパルジャイト、シリマナイト、カオリン、セリサイト、珪藻土、長石、蛙目粘度、珪酸塩化合物(パーライト、バナミキュライト、セリサイト等)等のいずれか、又は前記のものの少なくともひとつを含む組合せからなるものを指すが、これに限定されるものではない。金属材料とは、ステンレス、銅、チタン、スズ、プラチナ、金、銀等が挙げられるが、これに限定されるものではない。合成樹脂材料とは、ポリエステル、ナイロンやレーヨン、ウレタン(ポリウレタンを含む)、アクリル、ポリプロピレン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。天然樹脂材料とは、パルプ繊維、綿、ウール繊維、麻繊維等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0014】
繊維成型体は中空繊維を複数本、集束固定化して形成したものである。中空繊維とは内部に空洞を有するストロー状の繊維をいい、極細管、キャピラリー、中空糸等と同義に使用される。中空繊維の外径は、0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下であり、内径は10μm以上50μm以下が好ましい。
中空繊維に使用する原材料は、中空繊維に加工可能なものであれば、有機材料、無機材料のいずれでも良く、例えば、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)、芳香族ポリアミド等のポリアミド系の各種繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系の各種繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系の各種繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の各種繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系の各種繊維、ポリビニルアルコール系の各種繊維、ポリ塩化ビニリデン系の各種繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン系の各種繊維、フェノール系繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系繊維、カーボンナノチューブ等の炭素系繊維等の材料が挙げられる。
【0015】
また、芯部は、多孔質体もしくは繊維成型体以外でも、優れた吸水力及び保水力を有する構造であれば、ハニカム構造やコルゲート構造、またパイプ状、シート状、プリーツ状等も挙げられる。
【0016】
放出ピン部材の形状としては、断面が円である棒状体として形成したものが挙げられるが、これに限定されるものではなく、楕円柱形状、円錐形状、角柱形状等でもよい。また、放出ピン部材先端部は、平面状よりも丸みを帯びた曲面形状であることが好ましい。鋭利に尖った形状であると、放出ピン部材先端部まで電流が行き渡らず、水溶液を十分に保持できないためであり、このため放出ピン部材先端部が適度な丸みを有する形状とすることも望ましい。
【0017】
前記多孔質体又は繊維成型体からなる芯部の材質及び構造により水溶液の吸水特性が異なるため、時間当たりの水溶液の吸い上げ量を測定することで、該多孔質体又は繊維成型体の放出性能が決定される。放出性能は、芯部の有する時間当たりの吸水率で性能が決定され、いずれの素材においてもその吸水率は30〜100%程度が適しているが、特に材質別にみれば、セラミック材料では30〜80%が好ましく、金属材料では10〜60%が好ましく、合成樹脂材料及び天然樹脂材料では70〜110%が好ましい。なお、吸水率とは、飽水状態の多孔質体又は繊維成型体に含まれている全水量の、絶対乾燥状態の多孔質体又は繊維成型体質量に対する百分率のことを指す。
【0018】
芯部の廻りには、芯部を覆うように導電性グラファイト配合材が形成されている。導電性グラファイト配合材とは、導電性グラファイトを含む導電性材料のことを指す。芯部の廻りを覆うように形成する導電性グラファイト配合材は、例えば塗料のように塗布する手段により行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る放出ピン部材は、下方部においてその側面に水溶液吸収用の貫通孔を形成することもできる。放出ピン部材下方部においてその側面に水溶液吸収用の貫通孔を形成することで、貫通孔を通して保水部材から芯部に容易に水溶液を吸収させることができる。
【0020】
放出ピン部材本体への導電性グラファイト配合材の塗布は、次の手順により行う。まず、導電性グラファイト配合材として導電性グラファイト調整液を、導電性材料であるグラファイトペースト、バインダー、界面活性剤である希釈液の3種類を配合し作製する。グラファイトペーストは、導電性グラファイト微粒子を界面活性剤であるEDTAを保護膜として分散させたペースト状の溶液のことを指す。バインダーとしてはアクリル系エマルジョンが挙げられる。界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0021】
上述のように作製された導電性グラファイト調整液を、芯部の廻りにスプレー塗布、あるいは、導電性グラファイト調整液中に芯部を1分間程度浸漬させて形成する。そして、芯部の廻りに導電性グラファイトを形成した放出ピン部材を室温で約1時間乾燥させた後に80℃に設定した乾燥機で3時間以上乾燥を行い、放出ピン部材を得る。ここで、保水部材に突設された放出ピン部材の底面部からは毛細管現象により吸水が行われるため、放出ピン部材の底面部において、底面部周縁部の導電性グラファイト配合材を残してその中心部が除去されている。
すなわち、放出ピン部材の底面部の中心部においては吸水のために導電性グラファイト配合材が除去されているが、底面部の周縁部においては放出ピン部材の芯部の周りに形成された導電性グラファイト配合材が、その底面での剥離を防止するために、底面部の中心方向に廻り込んで形成されている。
【0022】
また、底面周縁部において導電性グラファイト配合材が形成されていることによって、後述する保水部材の導電層との通電性が向上する効果もある。このような放出ピン部材の底面部の中心部において導電性グラファイト配合材を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、底面部の周縁部を除いてその中心部にマスキングテープ等で予め覆っておき、その上から導電性グラファイト調整液をスプレー塗布することなどで実現できる。
【0023】
導電性グラファイト配合材が被覆された放出ピン部材は、被覆しないものと比較し、電気抵抗値が大幅に低下することで、必要以上の高電圧を印加することなく、多量のミストを外部に放出することが可能となる。また、導電性グラファイト配合材表面においては酸化反応が起こらないため、酸化物による放出ピン部材の目詰まりがなく、長期間にわたってメンテナンスをすることなく安定的に静電霧化が行える。電気抵抗値とミスト発生量の関係については後述の実施例にて詳述する。
【0024】
本発明に係るミスト発生部材は、前記放出ピン部材と、放出ピン部材を上部に突設するための保水部材と、からなり、保水部材は、その上面において放出ピン部材を嵌合するための凹部が設けられており、その下面において導電層を有しており、放出ピン部材を凹部に嵌合させて、放出ピン部材の底面部周縁部の導電性グラファイト配合材と該保水部材下面に設けられた導電層とが通電性を有するようにされている。
放出ピン部材を突設する保水部材は、放出ピン部材の芯部と同様、セラミック材料、金属材料、合成樹脂材料、天然樹脂材料の1種類または2種類以上を複合化して形成される多孔質体又は繊維成型体からなり、形状は特に限定されるものではないが、所定の厚みを有する矩形状とすることが静電霧化装置全体の構成からすると好ましい。
なお、保水部材は放出ピン部材と比較し低い吸水力及び保水力を有することで足り、保水材に吸水した水溶液を保水部材に留まらせることなく、放出ピン部材へと吸い上げさせ、外部にミストを放出させる。
【0025】
保水材部材は、その上面において、放出ピン部材を嵌合させるための凹部が設けられており、その下面において、導電性グラファイト配合材が形成されており、放出ピン部材を凹部に嵌合させて、放出ピン部材の底面部周縁部の導電性グラファイト配合材と保水材部材の下面に形成された導電層とが通電性を有するようにしている。導電層は、保水材部材の下面に放出ピン部材と同様の導電性グラファイト配合材を形成したものでよい。また、別途のシートに導電性素材(例えば金属繊維、金属パウダーなど)を配合したものでもよい。
凹部は、単数又は複数設けられており、その配列は、一列や円周状など、静電装置の設計上適宜決められる。
【0026】
本発明に係る静電霧化装置は、前記ミスト発生部材を備え、ミスト発生部材の保水部材に水溶液を供給する貯水部と、放出ピン部材に電圧を印加する印加電極と、を備える。
放出ピン部材に電圧を印加する印加電極は、例えば、4〜10kV程度のDCマイナス電圧を発生させる電源であり、その負極が導線を介して保水部材の下面の導電層に接続され、水溶液を保持する保水材部を負に帯電させている。したがって、保水部材と放出ピン部材とを通電性を持たせて接続することにより負の電流は放出ピン部材へと集まり、自然放電現象により放出ピン部材から外部へ負の電荷を有したミストを放出させることができる。
【0027】
静電霧化装置に備えられた貯水部は、水溶液を収容するとともに、毛細管現象等を利用して、常時、保水部材にこの水溶液を供給する。貯水部の容量や形状等は特に限定されるものではないが、ミスト放出量に従って適宜選択することができる。
【0028】
貯水部に収容される水溶液としては、水をはじめとして各種の機能性を有する水溶液が適用される。機能性水溶液の機能性成分としては、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ビタミンCエステル((L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム、リン酸アスコルビンマグネシウム等)、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンDα−リボ酸、アミノ酸、茶菓抽出物(カテキン、タンニン、サポニン、テアニン、カフェイン等)、ヒアルロン酸、コラーゲン、アロマ精油(ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、ティートリー、セージ、クローブ、オレンジ、グレープフルーツ、シナモン、ジャスミン等)、コーヒー豆、茶菓、ワサビ、ヒノキチオール、キチン、キトサン、プロポリス等のような有機系可溶性成分が挙げられ、その他、無機物(無機系可溶性成分)では、銀または食塩が挙げられる。また、白金ナノ粒子、パラジウムナノ粒子等も使用することができる。
【0029】
ここで、「機能性」とは、生活環境を快適にして、健康に改善できる性質をいい、消臭性(脱臭、分解等)、抗微生物性(抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウイルス性等)、リラクゼーション性、保湿性、抗酸化性、有害小生物忌避性、静電気抑制性、防塵性等のうち、少なくとも一種類の性質を有することを意味する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
<実施例1>
図1は、本発明に係る静電霧化装置10の実施の一形態を示す概略図である。図において、静電霧化装置10は、貯水部12と、貯水部12から吸水し水溶液を保持する保水部材13と、保水部材13の上面に突設されたミストを外部に放出する放出ピン部材11と、放出ピン部材11に高電圧を印加する印加電極15とを備えている。
また、放出ピン部材11は、保水部材13の上面に設けられた凹部13bに嵌合されて突設され、電源部14の印加電極15が保水部材13の下面に形成された導電層13aに接続されて放出ピン部材11の底面部11b周縁部11eの導電性グラファイト配合材と保水部材下面に設けられた導電層13aとが通電性を有している。導電層13aは、不織布を、放出ピン部材の芯部の廻りに形成した導電性グラファイト配合材を浸漬して導電性グラファイトを浸透したものを用い、保水部材13の下面に積層した。
これにより、放出ピン部材11がマイナスに帯電するとともに、放出ピン部材11の底面部11bから水溶液16を吸い上げ、放出ピン部材11の先端部11aからマイナスに帯電したミスト17を外部に放出するようになっている。
【0031】
図2は、実施例1の放出ピン部材11の構造を示す説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は底面図であり、(c)は(a)の一部拡大図である。
図3は、実施例1の放出ピン部材を保水部材に突設した状態を示す説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は上面図であり、(c)は保水部材の他の実施形態を示す上面図である。
図示するように、ポリエチレン繊維を束ねた直径約5mm、高さ約30mmの芯部11cの廻りに導電性グラファイト配合材11dが形成されている。また、放出ピン部材11の底面部11bにおいては、その周縁部11e(約0.1〜0.5mmの幅)を残して、導電性グラファイト配合材が除去されており、放出ピン部材11を保水部材13の上面に突設したときに、その底面部11bにおいて隙間を形成してそこに水溶液を貯留する貯水部12を形成するようになっている。
【0032】
放出ピン部材11は、多孔質体や繊維成型体から形成される芯部11cを覆うようにその周囲に導電性グラファイト配合材11dが塗布されている。導電性グラファイト配合材11dとして、導電性グラファイト微粒子を用いてグラファイトペーストを作製した。グラファイトペーストは、導電性グラファイト微粒子を界面活性剤を保護膜として分散させた黒色粘性ペースト水溶液であり、鱗片状グラファイト微粒子、EDTA(界面活性剤)、蒸留水を、20.0質量%:1.9質量%:78.1質量%の割合で配合した。作製したグラファイトペーストをアクリル系エマルジョンであるバインダーZ850、界面活性剤である希釈液と共に配合させ導電性グラファイト調整液を作製した。作製された導電性グラファイト調整液を、芯部11cの廻りにスプレー塗布し、室温で約1時間乾燥させた後に80℃に設定した乾燥機で3時間以上乾燥を行い、放出ピン部材11を得た。
ここで、保水部材13に突設された放出ピン部材11の底面部11bからは毛細管現象により吸水を行わさせるため、導電性グラファイト配合材の底面部11bの周縁部11eを残して、底面部11bの中心部にマスキングしてスプレーした。したがって、放出ピン部材11の底面部11bは、その中心部においては導電性グラファイト配合材が除去されており、その周囲においては導電性グラファイト配合材が周縁部11eとして形成されている。
【0033】
なお実施例1において、放出ピン部材11の芯部11cとしては、ポリエステル繊維を一定方向に束ねてその直径が5mm、長さが30mmの繊維成型体とし、その繊維成型体の廻りに導電性グラファイト配合材を約0.1mmの厚みに塗布した。また、底面部11bにおける導電性グラファイト配合材は、中心部を除いて、幅0.5mmの周縁部11eを形成した。
【0034】
<実施例2>
図4は、実施例2の放出ピン部材の構造を示す説明図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は底面図であり、(c)は(a)の一部拡大図である。
図5は、実施例2の放出ピン部材を保水部材に突設した状態を示す説明図である。図示するように、実施例2の放出ピン部材21は、ポリエチレン繊維を束ねた芯部21cの廻りに導電性グラファイト配合材21dが形成されており、放出ピン部材21の底面部21bにおいては、その周縁部21eを残して、導電性グラファイト配合材が除去されており、放出ピン部材21を保水部材23の上面の凹部23bに突設したときに、その底面部21bにおいて隙間を形成してそこに水溶液を貯留する貯水部22を形成する点では、実施例1の放出ピン部材と同様であるが、下方部においてその側面周囲に水溶液吸収用の貫通孔21fが形成されている点で異なる。
実施例2の放出ピン部材21は、下方部においてその側面に水溶液吸収用の貫通孔21fを形成したので、放出ピン部材の下方側面の貫通孔21fを通して保水部材23から芯部21cに容易に水溶液を吸収させることができる。なお、貫通孔21fは、芯部21cの廻りに導電性グラファイト配合材21dを形成させた後、細い針を突き刺すなどして形成することができる。貫通孔21fの直径や数は、水溶液が通過する大きさであれば十分でありミストの霧化量に応じて適宜決定されるものである。