特許第5649242号(P5649242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649242
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】絶縁膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20141211BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20141211BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20141211BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20141211BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20141211BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20141211BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/004 501
   H05B33/22 Z
   H05B33/14 A
   G02F1/1333 505
   H01L21/30 502R
   C08G73/10
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-556967(P2012-556967)
(86)(22)【出願日】2011年3月7日
(65)【公表番号】特表2013-522660(P2013-522660A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2011001562
(87)【国際公開番号】WO2011111965
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2012年10月15日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0015963
(32)【優先日】2011年2月23日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0021946
(32)【優先日】2010年3月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504111015
【氏名又は名称】エルジー ケム. エルティーディ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、サン ウー
(72)【発明者】
【氏名】アン、キョウン ホー
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン、セ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヘ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ ナ
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196041(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059989(WO,A1)
【文献】 特開2010−169944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリイミド100重量部及び下記一般式(8)で表される化合物群から選ばれる1種以上である光活性物質1〜50重量部を含む感光性有機絶縁材組成物で製造されたポリイミドフィルムを含む絶縁膜。
[一般式(1)]
【化1】
上記一般式(1)中、
Xは4価の有機基であり、
Yは下記一般式(6)で表される2価の有機基群から選ばれる1種以上であり、
Zは下記一般式(4)で表されるジアミン化合物から由来したものであり、
p<1、0<q1、p+q=1であり、
nは2〜500の整数である。
[一般式(4)]
【化4】
上記一般式(4)中、mは2〜21の整数である。
[一般式(6)]
【化6】
[一般式(8)]
【化8】
上記一般式(8)中、Dは、下記一般式(9)で表される有機基又は水素原子(−H)から選ばれる1種以上である。
[一般式(9)]
【化9】
【請求項2】
上記一般式(4)のmは2〜7の整数であることを特徴とする、
請求項1に記載の絶縁膜。
【請求項3】
上記一般式(1)の置換基Xは、下記一般式(5)で表される有機基群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の絶縁膜。
[一般式(5)]
【化5】
【請求項4】
溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤および界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤を、前記ポリイミド100重量部に対し0.1〜30重量部を含むことを特徴とする、
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の絶縁膜。
【請求項5】
N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、m-クレゾール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒を組成物100重量部に対し40〜97重量部を含むことを特徴とする、
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の絶縁膜。
【請求項6】
上記絶縁膜は、OLED用絶縁膜、LCD用絶縁膜又は半導体用絶縁膜であることを特徴とする、
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の絶縁膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はOLEDの絶縁膜として用いられる感光性有機絶縁材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED用絶縁膜は、OLED用有機発光物質が蒸着されて画素として作用する領域を除いた全ての領域にポリイミド(PI)絶縁層を形成して画素形状を規定する役割をし、各画素の電気的独立駆動を可能にする。
【0003】
ポリイミドは主鎖にヘテロイミド環を有しているポリマーであって、テトラカルボン酸とジアミンを縮重合させて製造する。
【0004】
上記ポリイミドは、光透過度に優れ、機械的性質、熱的特性および基質との接着力が非常に優れるので商業的に重要である。ポリイミドは、電気、電子、自動車、飛行機、半導体など多様な分野において金属やガラスなどの代わりに広範囲に用いられている。
【0005】
特に、ポリイミドは、熱的特性と機械的性質に優れるので、半導体素子の表面保護膜又は絶縁膜などに用いられている。一般的に、ポリイミドは溶解性が低いので、ポリイミド前駆体溶液を得た後これをガラスなどの基板上にコーティングし、熱処理により硬化させる方法で製造される。市販されているポリイミド製品は、ポリイミド前駆体溶液のポリイミドフィルム状態で供給され、半導体素子分野においては主にポリイミド前駆体溶液状態で供給される。
【0006】
感光性有機絶縁材組成物は、光感度のみでなく低温硬化と短い硬化時間にも信頼性があり、且つ低いテーパー角を形成する絶縁膜を提供できるものが有利である。また、エッジ(edge)に残渣のない高残膜を実現することができ、露光部がアルカリ溶液に溶解して現像異物が最小限に発生するものが望ましい。有機絶縁材組成物の感光性樹脂として用いられるポリイミド又はその前駆体を製造するための合成単量体の選択が重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これにより、本発明の発明者らは、様々な研究と実験を重ねた結果、ポリイミド又はその前駆体の製造時にポリアルキレンオキシドを含有するジアミンを合成単量体として用いて製造したポリイミド又はその前駆体を有機絶縁材組成物として用いることにより、低温硬化および低いテーパー角を実現することができ、光透過度及び光感度に優れ、且つ基板との密着性に優れる感光性有機絶縁材組成物を開発するに至った。
【0008】
本発明の目的は、低温硬化および低いテーパー角の形成が可能なOLEDデバイス用感光性有機絶縁材組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、基板に対する高い密着性およびクラックの発生がない優れた膜特性を有する感光性有機絶縁材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるポリイミド又はその前駆体100重量部に対し光活性物質(Photo Active Compound)1〜50重量部を含むことを特徴とする感光性有機絶縁材組成物を提供する。
【化1】
【化2】
式中、Xは4価の有機基であり、
Yは2価の有機基であり、
Zは下記一般式(3)で表されるジアミン化合物から由来したものである。
【化3】
式中、mは2〜21の整数であり、R'は炭素数2〜6のアルキレン基である。
また、0≦p<1、0<q≦1、p+q=1である。
nは2〜500の整数であり、
Rは水素又はアルキル基又はシリルアルキル基(silyl alkyl)からなる群より選ばれるものである。
【0011】
望ましくは、上記一般式(1)のZは下記一般式(4)で表されるジアミン化合物から由来したものである。
【化4】
【0012】
式中、mは2〜21の整数である。
望ましくは、上記一般式(4)のmは2〜7の整数である。
【0013】
また、上記一般式(1)又は一般式(2)の置換基Xは、例えば、下記4価の有機基からなる群より選ばれる1種以上である。
【0014】
また、上記一般式(1)又は一般式(2)の置換基Yは、例えば、下記2価の有機基からなる群より選ばれる1種以上である。
【0015】
また、上記一般式(1)又は一般式(2)の置換基Yは、例えば、下記多数のジアミン化合物からなる群より選ばれるいずれか一つ以上のジアミン化合物から由来する2価の有機基である。
【0016】
一方、上記光活性物質は、例えば、下記化合物群から選ばれるいずれか一つ以上である。
【0017】
式中、Dは、例えば下記一般式で表される有機基又は水素原子(H)から選ばれるいずれか一つ以上である。
【0018】
一方、上記感光性有機絶縁材組成物は、溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤および界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をポリイミド又はその前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部を含むことができる。
【0019】
上記感光性有機絶縁材組成物は、望ましくは、N-メチル-2-ピロリドン、 N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、m-クレゾール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒を組成物100重量部に対し40〜97重量部を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリイミド又はその前駆体を含む感光性有機絶縁材組成物は、特に、最終デバイスの製造工程において基板に対して高い密着性を有するのみでなく、パターンのエッジ部に残渣がなく、低温硬化工程でも低いテーパー角の実現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で製造された樹脂を含む感光性有機絶縁材組成物を適用したOLEDデバイスにおいて絶縁膜のモルホロジーである。
図2】実施例2で製造された樹脂を含む感光性有機絶縁材組成物を適用したOLEDデバイスにおいて絶縁膜のモルホロジーである。
図3】比較例1で製造された樹脂を含む感光性有機絶縁材組成物を適用したOLEDデバイスにおいて絶縁膜のモルホロジーである。
図4】比較例2で製造された樹脂を含む感光性有機絶縁材組成物を適用したOLEDデバイスにおいて絶縁膜のモルホロジーである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ポリイミド又は前駆体を含む感光性有機絶縁材組成物に関する。
【0023】
本発明の感光性有機絶縁材組成物は、ポリアルキレンオキシドを含むジアミンを合成単量体として用いて製造したポリイミド又はその前駆体および光によって酸を発生させることができる光活性物質(Photo active compound)からなり、必要に応じて接着力増進剤、界面活性剤を添加して製造する。
【0024】
本発明においてベース樹脂として用いられるポリイミド又はその前駆体は、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される重合体である。
【化1】
【化2】
【0025】
式中、Xは4価の有機基であり、
Yは2価の有機基であり、
Zは下記一般式(3)で表されるジアミン化合物から由来したものである。
【化3】
式中、mは2〜21の整数であり、R'は炭素数2〜6のアルキレン基である。
また、0≦p<1、0<q≦1、p+q=1である。
nは2〜500の整数であり、
Rは水素又はアルキル基又はシリルアルキル基(silyl alkyl)からなる群より選ばれるものである。
【0026】
上記一般式1又は一般式2の繰り返し単位を有するポリイミド又はその前駆体は、有機溶媒下で酸成分のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて製造する。
【0027】
本発明ではジアミン化合物としてポリアルキレンオキシド([-OR']m)を含有するジアミンを用いることを特徴とする。
【0028】
上記ポリアルキレンオキシドにおいて、R'は、例えば、炭素数2〜6のアルキレン基である。その中でもR'がエチレン基としてポリエチレンオキシドであることが望ましい。
【0029】
したがって、本発明の一般式(1)又は一般式(2)で表されるポリイミド又はその前駆体において、置換基Zは、望ましくは下記一般式(4)で表されるジアミンから由来した「ポリエチレンオキシド含有2価の有機基」と定義される。
【化4】
式中、mは2〜21の整数である。
【0030】
このような置換基Zを含むポリイミド又はその前駆体は、感光性有機絶縁材組成物であって、OLEDデバイスの絶縁膜として用いられる場合、基板との密着性に優れ、低温硬化工程でも低いテーパー角を実現することができる。
【0031】
上記一般式(1)又は一般式(2)で表されるポリイミド又はその前駆体において、置換基Xは、ポリイミド又はその前駆体の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物から由来する4価の有機基であって、下記一般式で表される4価の有機基のうちいずれか一つ又は二つ以上である 。
【0032】
本発明では、ポリイミド又はその前駆体の製造時に上記一般式で表される4価の有機基から選ばれるいずれか一つ以上の4価の有機基を含むテトラカルボン酸二無水物を下記一般式(3)で表されるジアミンと縮合反応させる。
【化3】
【0033】
式中、mは2〜21の整数であり、R'は炭素数2〜6のアルキル基である。
【0034】
また、本発明では、ポリイミド又はその前駆体に感光性を付与するために、上記一般式(3)で表されるジアミンの他に下記一般式で表される2価の有機基群から選ばれるいずれか一つ以上を含むジアミンを合成単量体として用いてポリイミド又はその前駆体を製造する。
【0035】
上記一般式で表される2価の有機基は、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を含んで本発明のポリイミド又はその前駆体にアルカリ溶解性を付与する。
【0036】
本発明の一般式(1)又は一般式(2)で表されるポリイミド又はその前駆体において、置換基Yは上記2価の有機基群から選ばれるいずれか一つ又は二つ以上である。
【0037】
また、本発明では、ポリイミド又はその前駆体の感光性を調節するために、下記一般式で表されるジアミン化合物からなる群より選ばれるいずれか一つ以上を合成単量体として用いることができる。
【0038】
本発明でポリイミド又はその前駆体は、重量平均分子量が2,000〜200,000であるものを用いることができる。重量平均分子量が低過ぎるとフィルム特性が悪くなる問題があり、高過ぎると現像液に溶解度が低下する問題が生じる。
【0039】
本発明のポリイミド又はその前駆体は、テトラカルボン酸二無水物および上記一般式(3)で表されるジアミン化合物を有機溶媒下で反応させて製造する。
【0040】
本発明において、ポリイミド又はその前駆体の製造に用いられる有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコール、メチルエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノンおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれる1種以上を用いる。
【0041】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、上記のように製造されたポリイミド又はその前駆体に光活性物質(PAC)を添加し、必要に応じて溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤又は界面活性剤を添加させて製造する。
【0042】
上記各添加剤は、ポリイミド又はその前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲で用いることができる。
【0043】
本発明において使用可能な光活性物質は、下記一般式で表される化合物群から選ばれるいずれか一つ又は二つ以上を組み合わせて用いることができる。
式中、Dは、例えば下記一般式又は水素原子(-H)から選ばれるいずれか一つである。
【0044】
上記光活性物質は、ポリイミド又はその前駆体100重量部に対し1〜50重量部を用いることが望ましい。
【0045】
また、本発明の感光性有機絶縁材組成物に用いられる溶媒としては、上記ポリイミド又はその前駆体を溶解させることができるものであれば特に限定されない。具体的な例として、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、m-クレゾール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
【0046】
本発明の感光性有機絶縁材組成物は、組成物100重量部に対し40〜97重量部の溶媒を含むことが望ましい。溶媒が40重量部未満であると、必要以上に高粘度になり、コーティングのときに均一な表面を得ることができず、所望の厚さを実現し難く、液の製造のときに均一な混合を形成し難く、且つ微細パターンの形成のための物性の実現が難しく、溶液が97重量部を超えると、基板との密着力が低下し、均一なコーティング性および所望の膜厚を得難い。
【0047】
上記のような組成を有する本発明の感光性有機絶縁材組成物は、ガラス基板などの基材上にスピンコーティング、スリットスピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング、カーテンコーティングなどの通常の方法を用いて塗布し、露光および現像工程を経て感光性フィルムを形成させる。露光および現像工程も通常の感光性有機絶縁材組成物を利用した感光層の形成時に使用される方法を用い、特に限定されない。
【0048】
上記露光工程において、光照射手段により照射される光源としては電磁波、紫外線から可視光、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。また、光源の照射方法としては、高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、ハロゲンランプ、コピー機用冷陰極管、LED、半導体レーザーなど公知の手段を用いることができる。
【0049】
上記現像工程は、露光工程を経た感光性フィルムから露光された領域を現像液を利用して除去することによりパターンを形成する工程であって、ここに用いられる現像液としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア水4級アンモニウム塩のような塩基性水溶液が挙げられる。テトラメチルアンモニウム水溶液のようなアンモニア4級アンモニウム水溶液が特に望ましい。
【0050】
全体的な工程は、本発明の感光性有機絶縁材組成物をガラスやシリコンウェハ基板にスピンコーティングし、約110〜145℃で1〜2分間前熱処理(prebake)を行ってフィルムを形成させる。上記フィルムをパターンの形成されたフォトマスクにより露光させた後、露光部位をアルカリ水溶液を用いて現像し、脱イオン水で洗浄する。その後、200〜350℃で約30分〜2時間後熱処理(postbake)を行ってパターンを得ることになる。
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0052】
[合成例1(3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライドの製造)]
3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物31.0g(0.1mole)に無水メチルアルコール300mlを添加し、80℃の温度で5時間還流および撹はんして反応させた後、残留溶媒を高温減圧下で乾燥して3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジメチルエステル37.4g(収得率100%)を得た。得られた3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジメチルエステル37.4g(0.1mole)に、チオニルクロライド35.4g(0.3mole)を滴下し、触媒量のN,N-ジメチルホルムアミドを添加した後、90℃の温度で3時間反応させ、室温に冷却し、残留のチオニルクロライドを減圧下で除去した後、3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライド41.0g(収得率100%)を得た。
【0053】
[実施例1(ポリマーP-1の製造)]
上記合成例1で製造された3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジクロライド24.6g(60mmole)を2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)、そしてピリジン10.65gが溶けているN-メチル-2-ピロリドン150mlに窒素雰囲気下0℃でゆっくり滴下し、ゆっくり室温に上昇させた後、5時間撹はんすることにより反応させた。その後、反応物を2Lの水にゆっくり滴下して沈殿物を生成させ、得られた沈殿物は濾過して分離させ、水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリアミド酸メチルエステル(P-1)32.5gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は28,000であった。
【0054】
[実施例2(ポリマーP-2の製造)]
実施例1で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)の代わりに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン13.2g(36mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン1.8g(12mmole)および4-オキシジアニリン2.4g(12mmole)を添加することを除いては、同様の方法を用いてポリマー(P-2)を製造した。得られたポリマー(P-2)の重さ平均分子量は25,000であった。
【0055】
[比較例1(ポリマーP-3の製造)]
実施例1で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン15.4g(42mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン2.7g(18mmole)の代わりに、全量2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン22.0g(60mmole)を用いることを除いては、同様の方法を用いてポリアミド酸メチルエステル(P-3)29.5gを得た。得られたポリマーの重さ平均分子量は29,500であった。
【0056】
[比較例2(ポリマーP-4の製造)]
実施例2で2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン13.2g(36mmole)と1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン1.8g(12mmole)および4-オキシジアニリン2.4g(12mmole)の代わりに、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサフルオロプロパン17.6g(48mmole)と4-オキシジアニリン2.4g(12mmole)を添加することを除いては、同様の方法を用いてポリイミド(P-4)を製造した。得られたポリマーの重さ平均分子量は23,000であった。
【0057】
[感光性有機絶縁材組成物の製造および特性評価]
上記のように得られたポリイミド前駆体(P-1、P-3)又はポリイミド(P-2、P-4)3gと光活性化合物としてジアゾナフトキノンエステル化合物(TPPA320:OD/(OD+OH)=2/3の比率によりOHおよびODから選択的に与えられる。)1.0g、溶媒N-メチル-2-ピロリドン8gに加えた後、室温で1時間撹はんさせ、これを細孔1μmのフィルターで濾過して感光性有機絶縁材組成物を製造した。
【0058】
上記感光性有機絶縁材組成物を製造して下記のような方法で物性を測定し、その結果は下記の表1および図1図4に示した。
【0059】
1. テーパー角(Taper Angle)の撮影
テーパー角の測定は、パターンされたレジストの断面SEMイメージにより測定し、厚さおよび残膜測定は現像前/後のレジストに対して表面プロファイラ(surface profiler)を用いて測定した。
【0060】
2. 感度評価
感度評価は、ステッパー(stepper)およびアライナ(aligner)により露光部が現像液に完全に溶けてなくなる露光量を測定した。
【0061】
3. Residue及びAdhension評価
【0062】
Residue及びAdhension評価は、パターン工程を行った後残っているパターンの形状を観察した。
【表1】
[項目1]
下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるポリイミド又はその前駆体100重量部に対し光活性物質1〜50重量部を含む感光性有機絶縁材組成物。
[一般式1]
[一般式2]
式中、Xは4価の有機基であり、
Yは2価の有機基であり、
Zは下記一般式(3)で表されるジアミン化合物から由来したものである。
[一般式3]
式中、mは2〜21の整数であり、R'は炭素数2〜6のアルキレン基である。
また、0≦p<1、0<q≦1、p+q=1である。
nは2〜500の整数であり、
Rは水素又はアルキル基又はシリルアルキル基(silyl alkyl)からなる群より選ばれるものである。
[項目2]
上記Zは、下記一般式(4)で表されるジアミン化合物から由来したことを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[一般式4]
式中、mは2〜21の整数である。
[項目3]
上記一般式(3)のmは2〜7の整数であることを特徴とする項目2に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[項目4]
上記一般式(1)又は一般式(2)の置換基Xは、下記一般式で表される有機基群から選ばれる1種以上であることを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[項目5]
上記一般式(1)又は一般式(2)の置換基Yは、下記一般式で表される2価の有機基群から選ばれる1種以上であることを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[項目6]
上記一般式(1)又は一般式(2)の置換基Yは、下記一般式で表されるジアミン化合物群から選ばれる1種以上から由来する有機基であることを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[項目7]
上記光活性物質は、下記一般式で表される化合物群から選ばれる1種以上であることを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
式中、Dは、例えば下記一般式で表される有機基又は水素原子(-H)から選ばれる1種以上である。
[項目8]
溶解速度調節剤、増感剤、接着力増進剤および界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤をポリイミド又はその前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部を含むことを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[項目9]
N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、m-クレゾール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンからなる群より選ばれる1種以上の溶媒を組成物100重量部に対し40〜97重量部を含むことを特徴とする項目1に記載の感光性有機絶縁材組成物。
[項目10]
項目1に記載の感光性樹脂組成物で製造されたポリイミドフィルムを含むOLED絶縁膜、LCD絶縁膜又は半導体絶縁膜。
図1
図2
図3
図4