(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2記載の速度切替え式モータにおいて、複数の前記アーマチュアコイルと複数の前記接続部材とを同一の線材により形成したことを特徴とする速度切替え式モータ。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両に設けられる車両用ワイパ装置の駆動源としては、ウインドシールドガラス(フロントガラス)に付着する雨滴量の変化に応じて、その作動をLOモードとHIモードとに切り替えるために、速度切替え式モータが用いられている。
【0003】
速度切替え式モータは、アーマチュアシャフトに固定されたコンミテータに、共通ブラシ、低速用ブラシ及び高速用ブラシの3つのブラシを摺接させたブラシ付きモータとなっており、低速用ブラシまたは高速用ブラシのいずれか一方に選択的に通電することにより、作動速度を切り替えるようにしている。すなわち、運転者によりワイパスイッチがLOモード側に操作されたときには、低速用ブラシと共通ブラシとを対としてアーマチュアコイルに駆動電流が供給されてモータは低速作動し、ワイパスイッチがHIモード側に操作されたときには、高速用ブラシと共通ブラシとを対としてアーマチュアコイルに駆動電流が供給されてモータは高速作動するようになっている。
【0004】
一方、このような速度切替え式モータを小型化するために、モータ極数を4極以上に多極化したものが知られている。例えば、特許文献1には、モータヨークの内面に4つのマグネットを回転方向に並べて装着することにより、モータ極数を4極とした速度切替え式モータが記載されている。
【0005】
この場合、アーマチュアコアには16のスロットが形成されており、これらのスロットに巻装される複数のアーマチュアコイルは、それぞれ所定数のスロットを挟んだスロット間に巻き付けられてコイル状に形成される2組のコイル部を備えており、これらのコイル部は互いに巻き方向が逆向とされ、互いに回転方向に90度(電気角で180度)ずらして配置されている。アーマチュアコイルの両端は隣り合うコンミテータ片に接続されており、各コンミテータ片が、それぞれ回転方向に180度ずれたもの同士が均圧線により接続されることにより、4極に対応した回路構成とされている。
【0006】
このような構成により、特許文献1に示されるモータでは、スロット数/極対数=偶数、つまりマグネットの1極対当たりのスロット数が偶数となり、アーマチュアコイルは、各コイル部が回転方向に90度(電気角で180度)ずれて分散配置されるバランス巻線の構成となる。したがって、アーマチュアコイルが生じる電気的、磁気的なアンバランスを低減することができるとともに、アーマチュアコイルの各コイル部を回転方向に均等に分散配置させて各スロットに対するアーマチュアコイルの占積率を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示されるモータは、アーマチュアコイルの各コイル部が回転方向に均等に分散配置されるので、上記の効果を奏することができる一方、モータのコギングトルクやトルクリップルが増大して、モータ作動音が大きくなるという問題点がある。
【0009】
これに対して、スロット数/極対数=奇数となるようにスロット数やモータ極数を設定してモータのコギングトルクやトルクリップルを低減させる方法が考えられるが、マグネットの1極対当たりのスロット数が奇数となるモータに対しては、特許文献1の巻線方法ではアーマチュアコイルを回転方向に均一に分布配置することができない。そのため、アーマチュアコイルが電気的、磁気的なアンバランスを生じ、このアンバランスによりモータ作動音が大きくなる。
【0010】
本発明の目的は、アーマチュアコイルが生じる電気的、磁気的なアンバランスを低減させつつコギングトルクやトルクリップルを低減させることができる速度切替え式モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の速度切替え式モータは、低速作動と高速作動とに作動速度を切り替え可能な速度切替え式モータであって、アーマチュアシャフトを回転自在に支持するヨークと、回転方向に並ぶ
4個の磁極を備え、前記ヨークの内面に設けられる界磁部と、回転方向に並ぶ
18個のスロットを備え、前記アーマチュアシャフトに固定されるアーマチュアコアと、回転方向に並ぶ
18個のコンミテータ片を備え、前記アーマチュアシャフトに固定されるコンミテータと、それぞれ前記スロットに巻装され、両端が前記コンミテータ片に接続される複数のアーマチュアコイルと、前記コンミテータ片に摺接する低速用ブラシと、前記低速用ブラシに対して回転方向にずれて前記コンミテータ片に摺接する高速用ブラシと、前記コンミテータ片に摺接し、前記低速用ブラシまたは前記高速用ブラシのいずれか一方と選択的に対となって前記アーマチュアコイルに駆動電流を供給する共通ブラシと、それぞれ回転方向に
180(360/極対数)度ずれた前記コンミテータ片同士を接続する複数の接続部材とを有し、前記アーマチュアコアのスロット数と前記界磁部の磁極の極対数との関係が、スロット数
18/極対数
2=奇数
9に設定され、
いずれか1つの前記アーマチュアコイルの一端が、基準位置から回転方向に7番目の前記コンミテータ片に接続され、かつ、そのアーマチュアコイルの他端が、前記基準位置から回転方向に8番目の前記コンミテータ片に接続されるとともに、いずれか1つの前記アーマチュアコイルを、前記基準位置から回転方向に1番目の前記スロットと、前記基準位置から回転方向に5番目の前記スロットとの間に巻き付けて第1のコイル部を構成し、前記第1のコイル部を構成した前記アーマチュアコイルと同一の線材を、前記基準位置から回転方向に10番目の前記スロットと、前記基準位置から回転方向に14番目の前記スロットとの間に巻き付けて第2のコイル部を構成し、前記複数のアーマチュアコイルの残りのアーマチュアコイルの一端及び他端を前記回転方向に1つずつずれて前記コンミテータ片に対して接続し、かつ、そのアーマチュアコイルを残りの前記スロット間に前記回転方向に1つずつずらして巻き付け、前記第1のコイル部および前記第2のコイル部は、前記界磁部の同一極性の磁極に対して同一の位相で対向することを特徴とする。
【0012】
本発明の速度切替え式モータは、前記
第1のコイル部と前記第2のコイル部とは互いに回転方向に180度ずれて配置されるとともに、
前記第1のコイル部及び前記第2のコイル部は、前記回転方向で3つの前記スロットを挟んだ一対の前記スロット間にそれぞれ巻き付けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の速度切替え式モータは、複数の前記アーマチュアコイルと複数の前記接続部材とを同一の線材により形成したことを特徴とする。
【0014】
本発明の速度切替え式モータは、車両用のワイパ装置の駆動源として用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アーマチュアコアのスロット数と界磁部の磁極の極対数との関係を、スロット数/極対数=奇数に設定し、また、アーマチュアコイルを、その一端を隣り合うコンミテータ片の一方に接続し、他端を隣り合うコンミテータ片の他方に接続するとともに、極対数と同数のコイル部を互いに回転方向に(360/極対数)度ずれた位置に配置し、当該位置において所定数のスロットを挟んだ一対のスロット間に互いに同一方向に巻き付けてアーマチュアコアに巻装させるようにしたので、アーマチュアコイルを回転方向に均一に分布配置して電気的、磁気的にバランスさせつつ磁極の1極対当たりのスロット数を奇数としてモータのコギングトルクやトルクリップルを低減させることができる。
【0016】
また、アーマチュアコイルを回転方向に均一に分布配置して電気的、磁気的にバランスさせつつ磁極の1極対当たりのスロット数を奇数としてモータのコギングトルクやトルクリップルを低減させることにより、この速度切替え式モータの作動音を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に示すワイパモータ11は自動車等の車両に設けられる車両用のワイパ装置の駆動源として用いられるものである。このワイパモータ11は作動速度を低速作動と高速作動とに切り替えることができる速度切替え式モータとなっており、ワイパ装置をLOモードで作動させるときには低速作動し、HIモードで作動させるときには高速作動するようになっている。
【0020】
このワイパモータ11のヨーク(継鉄)12は鋼材により底付き円筒状に形成されており、その内部にはアーマチュア(電機子)13が収容されている。アーマチュア13はアーマチュアシャフト14を備えており、このアーマチュアシャフト14がヨーク12の底部に設けられた軸受15を介して当該ヨーク12に回転自在に支持されることにより、アーマチュア13はヨーク12の内部で回転自在となっている。
【0021】
ヨーク12の開口端にはギヤケース16が取り付けられ、ギヤケース16の内部には図示しない減速機が収容されている。減速機としては、例えばウォームギヤ機構が用いられ、アーマチュアシャフト14の回転は減速機により減速されて図示しない出力軸から出力されるようになっている。
【0022】
図2に示すように、ヨーク12の内周面には、4つのマグネット17a〜17dにより界磁部17が構成されている。これらのマグネット17a〜17dは、それぞれ磁極をヨーク12の径方向(内外方向)に向けたセグメント形の永久磁石となっており、アーマチュアシャフト14の回転方向(ヨーク12の周方向)に等間隔に並べて配置され、接着剤によりヨーク12の内周面に固定されている。各マグネット17a〜17dはN極とS極とが回転方向に交互に並ぶように配置され、これにより、ワイパモータ11の界磁部17は、極数が4、つまり極対数が2とされている。
【0023】
なお、極対数とは、界磁部17が有するN極とS極の対の数のことである。
【0024】
アーマチュアシャフト14にはアーマチュアコア18が固定されている。このアーマチュアコア18は、所定形状の多数の珪素鋼板を軸方向に重ねた略円柱状に形成されており、その外周面には回転方向に等間隔に並べて18のスロット18a〜18rが設けられている。
【0025】
また、アーマチュアシャフト14には、アーマチュアコア18に隣接してコンミテータ(整流子)21が固定されている。このコンミテータ21は、その外周面に互いに絶縁された状態で回転方向に等間隔に並べて配置される18個のコンミテータ片21a〜21rを備えている。
【0026】
アーマチュアコア18のスロット18a〜18rには銅線等の線材からなる複数のアーマチュアコイル22が巻装され、各アーマチュアコイル22の両端(コイル端)は、それぞれ対応するコンミテータ片21a〜21rに電気的に接続されている。
図3に示すように、各アーマチュアコイル22は所定の巻線方法でスロット18a〜18rに巻装されるが、その詳細については後述する。
【0027】
ギヤケース16の内部には樹脂製のホルダベース23が装着されており、このホルダベース23には、共通ブラシ(コモンブラシ)24、低速用ブラシ25及び高速用ブラシ26が設けられている。
図2に示すように、各ブラシ24〜26は、それぞれホルダベース23に固定されたブラシホルダ27〜29によりコンミテータ21に向けて進退移動自在に支持され、スプリング31〜33により付勢された状態でコンミテータ片21a〜21rに摺接している。
【0028】
低速用ブラシ25は共通ブラシ24に対して回転方向に90度ずれた位置に配置され、高速用ブラシ26は共通ブラシ24に対してさらに回転方向に120度ずれた位置に配置されており、共通ブラシ24は正極(プラス極)、低速用ブラシ25と高速用ブラシ26は負極(マイナス極)となっている。共通ブラシ24は低速用ブラシ25または高速用ブラシ26のいずれか一方と選択的に対となってアーマチュアコイル22に駆動電流を供給するようになっており、共通ブラシ24と低速用ブラシ25とが対となってアーマチュアコイル22に駆動電流が供給されるとワイパモータ11は低速作動し、共通ブラシ24と高速用ブラシ26とが対となってアーマチュアコイル22に駆動電流が供給されるとワイパモータ11は高速作動するようになっている。
【0029】
なお、低速作動とはアーマチュアシャフト14の回転数が高速作動よりも低くなる作動状態のことであり、高速作動とはアーマチュアシャフト14の回転数が低速作動よりも高くなる作動状態のことである。
【0030】
このワイパモータ11の界磁部の極数は4極であり、これに対して、共通ブラシ24と低速用ブラシ25、または共通ブラシ24と高速用ブラシ26の一対のブラシからアーマチュアコイル22に駆動電流を供給するようにしている。そのため、このワイパモータ11では、
図3に示すように、互いに回転方向に(360/極対数)度つまり180度ずれたコンミテータ片21a〜21r同士を接続部材としての9本の均圧線34a〜34iにより電気的に接続し、これらのコンミテータ片21a〜21rが通電時に同電位となるようにして、複数のアーマチュアコイル22を4極の磁極に対応した回路構成になるようにしている。これらの均圧線34a〜34iは銅線等の線材により形成されている。
【0031】
なお、均圧線34a〜34iにより互いに接続される一対のコンミテータ片21a〜21rの角度である(360/極対数)度つまり180度は、このワイパモータ11の機械角つまりアーマチュア13が1回転する角度である360度をこのワイパモータ11の極対数である2で割って算出される角度である。
【0032】
図4は
図3に示すアーマチュアコイルのスロットへの巻装手順を示す説明図である。
【0033】
前述のように、このワイパモータ11のアーマチュアコア18に設けられるスロット18a〜18rの数つまりスロット数は18、界磁部17の極対数は2であり、スロット数と極対数の関係つまり界磁部17のマグネット17aから17dの1極対当たりのスロット数は、スロット数/極対数=奇数(18/2=9)となっている。
【0034】
このようなワイパモータ11において、アーマチュアコア18の各スロット18a〜18rに複数のアーマチュアコイル22を磁気的・電気的に回転方向に均一に分布させた状態で配置するために、本発明では、
図4に示す手順で各アーマチュアコイル22をアーマチュアコア18の各スロット18a〜18rに巻装するようにしている。以下のこの巻装手順について、
図4に基づいて説明する。
【0035】
まず、
図4に示すように、アーマチュアコイル22の一端つまりアーマチュアコイル22を構成する銅線等の線材35の一端を、所定のコンミテータ片21g(任意の基準位置から回転方向に7番目のコンミテータ片21g)に接続する。
【0036】
次に、一端がコンミテータ片21gに接続された線材35を、所定のスロット18a(任意の基準位置から回転方向に1番目のスロット18a)にまで導き、そのスロット18aと当該スロット18aから回転方向に4つ分ずれたスロット18e(任意の基準位置から回転方向に5番目のスロット18e)との間に巻き付ける。つまり、線材35は、3つのスロット18b〜18dを挟んだスロット18aとスロット18eの間に巻き付けられる。これらのスロット18a,18eの間に巻き付けられた線材35は、当該スロット18a,18eの間にアーマチュアコイル22の第1のコイル部22aを構成する。
【0037】
次に、第1のコイル部22aを構成した線材35を、スロット18eのコンミテータ21側の開口から引き出して、任意の基準位置から回転方向に10番目のスロット18jにまで導く。そして、スロット18jにまで導いた線材35を、そのスロット18jと当該スロット18jから回転方向に4つ分ずれたスロット18n(任意の基準位置から回転方向に14番目のスロット18n)、つまり3つのスロット18k〜18mを挟んだスロット18jとスロット18nの間に巻き付けて第2のコイル部22bを形成する。第2のコイル部22bのスロット18j,18nの間への線材35の巻き付け方向は、第1のコイル部22aのスロット18a,18eの間への線材35の巻き付け方向と同一となっている。
【0038】
次いで、第2のコイル部22bを形成した線材35の端部つまり第2のコイル部22bの側のアーマチュアコイル22のコイル端を、第1のコイル部22aの側のコイル端が接続されたコンミテータ片21gに対して回転方向に隣接するコンミテータ片21h(任意の基準位置から回転方向に8番目のコンミテータ片21h)に接続する。これにより、アーマチュアコア18への1つ目のアーマチュアコイル22の巻装が完了する。1つ目のアーマチュアコイル22の巻装が完了すると、次いで、1つ目のアーマチュアコイル22に対して、その巻き始めのコイル端を回転方向に1つずれたコンミテータ片21hに接続するとともに第1のコイル部22aと第2のコイル部22bを巻装するスロットを回転方向に1つずらして、1つ目のアーマチュアコイル22を形成したのと同一の線材35を順次アーマチュアコア18の所定のスロット間に巻き付けて、1つの線材35により直列に設けられた複数のアーマチュアコイル22をアーマチュアコア18に巻装していく。
【0039】
なお、線材35の各コンミテータ片21a〜21rへの接続は、例えば、コンミテータ片21a〜21rと一体に設けられたフック部に線材35を引っ掛け、当該フック部をヒュージングすることにより行われる。また、図示する場合では、各コイル部22a,22bは、線材35をスロット18a〜18rの間に1巻きして形成されているが、これに限らず、スロット18a〜18rの間に線材35を複数回巻き付けて各コイル部22a、22bを形成するようにしてもよい。
【0040】
このように、本発明のワイパモータ11では、各アーマチュアコイル22は、極対数と同数である2つのコイル部22a、22bを備えるように形成されており、第1のコイル部22aと第2のコイル部22bは互いに回転方向に180度つまり(360/極対数)度ずれた位置に配置され、各コイル部22a、22bは互いにスロット18a〜18rに対する巻き付け方向が同一とされているので、アーマチュアコイル22を構成する第1のコイル部22aと第2のコイル部22bは、同一の線材35により直列的に設けられるとともに界磁部17の同一極性の磁極に対して同一の位相で対向することになる。したがって、このような構成で巻装された複数のアーマチュアコイル22は、回転方向に電気的、磁気的に均等に分布してアーマチュアコア18に配置されることになるので、アーマチュアコイル22が回転方向に電気的・磁気的にバランスされて、このワイパモータ11の作動音が低減されることになる。
【0041】
また、このワイパモータ11では、スロット数と極対数の関係、つまり界磁部17のマグネット17a〜17dの1極対当たりのスロット数が、スロット数/極対数=奇数(18/2=9)となるように構成されているので、N極のマグネット17a、17cに対するスロット18a〜18rの位置と、S極のマグネット17b、17dに対するスロット18a〜18rの位置とが回転方向に相対的なずれを生じて、このワイパモータ11のコギングトルクやトルクリップルが低減されることになる。
【0042】
このように、このワイパモータ11では、界磁部17のマグネット17a〜17dの1極対当たりのスロット数を奇数に設定し、アーマチュアコイル22を、その一端を隣り合うコンミテータ片21a〜21rの一方に接続し、他端を隣り合うコンミテータ片21a〜21rの他方に接続するとともに、磁極の極対数と同数の2つのコイル部22a、22bを、互いに回転方向に180度ずれた位置に配置し、当該位置において3つのスロットを挟んだ一対のスロット間に互いに同一方向に巻き付けてアーマチュアコア18に巻装するようにしたので、アーマチュアコイル22を回転方向に均一に分布配置して電気的、磁気的にバランスさせつつワイパモータ11のコギングトルクやトルクリップルを低減させることができる。これにより、このワイパモータ11の作動音を低減することができる。
【0043】
また、このワイパモータ11では、互いに180度ずれたコンミテータ片21a〜21r同士を均圧線34a〜34iにより接続するようにしたので、共通ブラシ24と低速用ブラシ25とを対として通電しているときに、高速用ブラシ26が隣り合うコンミテータ片同士を短絡してショートコイルを生じ、有効導体数が変化して各ブラシ24、25に循環電流が流れても、この循環電流を均圧線34a〜34iに流してブラシ24、25の整流効果を高めて、ブラシ24、25の耐久性を高めることができる。
【0044】
図5は
図4に示す巻装手順の変形例であって、均圧線をアーマチュアコイルと同一の線材で形成する場合を示す説明図であり、
図6は
図5に示す巻装手順の変形例を示す説明図である。なお、
図5、
図6においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0045】
図4に示す場合では、1つの線材35を順次所定のスロット18a〜18rに巻き付けて複数のアーマチュアコイル22をアーマチュアコア18に巻装するとともに、アーマチュアコイル22とは別の線材を用いて形成した均圧線34a〜34iにより各コンミテータ片21a〜21rを接続するようにしているが、
図5に示すように、アーマチュアコイル22と均圧線34a〜34iとを同一の線材35により形成するようにしてもよい。
【0046】
この場合、まず、アーマチュアコイル22の一端つまりアーマチュアコイル22を構成する線材35の一端を、所定のコンミテータ片21k(任意の基準位置から回転方向に11番目のコンミテータ片21k)に接続する。
【0047】
次に、一端がコンミテータ片21kに接続された線材35を、
図4に示す場合と同様に、所定のスロット18a、18eの間に巻き付けて第1のコイル部22aを形成し、次いで、所定のスロット18j、18nの間に巻き付けて第2のコイル部22bを形成する。そして、第2のコイル部22bを形成した線材35の端部つまり第2のコイル部22bの側のアーマチュアコイル22のコイル端を、所定のコンミテータ片21c(図示する場合では、任意の基準位置から回転方向に3番目のコンミテータ片21c)に接続する。これにより、アーマチュアコア18に1番目のアーマチュアコイル22が巻装される。
【0048】
次に、第2のコイル部22bの側のコイル端として所定のコンミテータ片21cに接続された線材35を、当該コンミテータ片21cに対して回転方向に180度つまり(360/極対数)度ずれたコンミテータ片21lに接続して均圧線34aを形成する。つまり、次のアーマチュアコイル22を形成するためにスロット18b、18fに線材35を巻装する前に、第2のコイル部22bの側のコイル端が接続されるコンミテータ片21cとこのコンミテータ片21cに対して回転方向に180度ずれたコンミテータ片21lとの間に線材35を接続して均圧線34aを形成する。このとき、コンミテータ片21cからコンミテータ片21lへの線材35の引き出し方向は、第1のコイル部22aから第2のコイル部22bへの線材35の引き方向とは反対向きとされている。
【0049】
均圧線34aを形成した線材35は、コンミテータ片21lから所定のスロット18b(図示する場合では、任意の基準位置から回転方向に2番目のコンミテータ片18b)にまで導かれ、以下、前述した1つ目のアーマチュアコイル22と同様の手順で順次アーマチュアコア18bに巻装されるとともに、各コンミテータ片21a〜21rが均圧線34a〜34iにより互いに接続されていく。なお、この場合では、アーマチュアコイル22の他端は均圧線34a〜34iを介して、アーマチュアコイル22の一端が接続されるコンミテータ片21kに隣接するコンミテータ片21lに接続されることになる。
【0050】
アーマチュアコイル22と均圧線34a〜34iとを同一の線材35により形成する構成としては、
図5に示すものに限らず、
図6に示す構成としてもよい。
【0051】
この場合、まず、アーマチュアコイル22の一端つまりアーマチュアコイル22を構成する線材35の一端を、所定のコンミテータ片21q(任意の基準位置から回転方向に17番目のコンミテータ片21q)に接続する。次に、一端をコンミテータ片21qに接続した線材35を、
図4に示す場合と同様に、所定のスロット18f、18jの間に巻き付けて第1のコイル部22aを形成し、次いで、所定のスロット18o、18aの間に巻き付けて第2のコイル部22bを形成する。そして、第2のコイル部22bを形成した線材35の端部つまり第2のコイル部22bの側のアーマチュアコイル22のコイル端を、回転方向に1周させてから所定のコンミテータ片21p(任意の基準位置から回転方向に16番目のコンミテータ片21p)に接続する。これにより、アーマチュアコア18に1つ目のアーマチュアコイル22が巻装される。
【0052】
次に、コンミテータ片21pに接続された線材35を、当該コンミテータ片21pに対して回転方向に180度つまり(360/極対数)度ずれたコンミテータ片21gに接続して均圧線34aを形成する。つまり、この場合においても、2つ目のアーマチュアコイル22を形成するためにスロット18n、18rの間に線材35を巻装する前に、コンミテータ片21pとこのコンミテータ片21pに対して回転方向に180度ずれたコンミテータ片21gとの間に線材35を接続して均圧線34aを形成する。このとき、コンミテータ片21pからコンミテータ片21gへの線材35の引き出し方向は、第1のコイル部22aから第2のコイル部22bへの線材35の引き方向とは反対向きとされている。
【0053】
均圧線34aを形成した線材35は、そのコンミテータ片21gから所定のスロット18n(任意の基準位置から回転方向に14番目のスロット18n)にまで導かれ、以下、前述した1つ目のアーマチュアコイル22と同様な手順で順次アーマチュアコアに巻装されるとともに、各コンミテータ片21a〜21rが均圧線34a〜34iにより互いに接続されていく。この場合には、アーマチュアコイル22の両端は、隣り合うコンミテータ片に、
図4に示す場合とは逆の順序で接続される。
【0054】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、モータ極数つまり界磁部17の極数が4極のワイパモータ11に本発明を適用した場合が示されているが、これに限らず、4極以上で偶数個であれば、例えば極数が6極や8極のワイパモータに本発明を適用してもよい。
【0055】
また、前記実施の形態においては、ワイパモータ11のスロット数は18とされているが、これに限らず、モータ極数との関係が、スロット数/極対数=奇数に設定されるように任意に設定することができる。
【0056】
さらに、前記実施の形態においては、コンミテータ片同士を接続する接続部材として線材で形成された均圧線34a〜34iを用いるようにしているが、これに限らず、コンミテータ片同士を接続することができる部材であれば、例えば導電板など、他の部材を用いるようにしてもよい。
【0057】
さらに、前記実施の形態においては、本発明を車両用のワイパ装置の駆動源として用いられるワイパモータ11に適用した場合を示しているが、これに限らず、作動速度を切り替えることができるモータであれば、他の用途のモータに本発明を適用してもよい。