(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヘッド部が,前記組み立て時のロータの円周方向に対して存在する前記ピン孔のうち,同一円周上に配置される複数の前記ピン孔,または前記組み立て時のロータの同一半径方向に配置される複数の前記ピン孔に対向する位置に複数設けられ,
前記ヘッド部が,前記同一円周上の複数のピン孔内または前記同一半径方向の複数のピン孔内に,前記ピーニングを同時に施して前記圧縮応力領域を形成する
請求項5記載の応力処理装置。
前記制御部は,前記ロータの軸方向の前記ヘッド部の移動量および前記レーザの照射範囲に基づいて,前記ピン孔内の前記レーザ部,前記ヘッド回転部および前記第2の移動部を制御し,前記ピン孔内を断続的に前記ピーニングを施し,前記圧縮応力領域を部分的に形成する
請求項5記載の応力処理装置。
前記支持部は,前記光ファイバを支持する支持部材と,前記支持部材の周囲に設けられ,前記支持部材と前記ピン孔内とを結合する複数の結合部材とを有し,前記結合部材間に形成された空隙を介して前記噴射部から噴射された液体を流通する
請求項2記載の応力処理装置。
前記ヘッド回転部は,前記ピン孔の内径より小さい径の前記ヘッド部の中心軸を,前記ピン孔の中心軸に対して平行に円運動させて,前記ヘッド部が前記ピン孔の内面に沿って偏心運動する
請求項5記載の応力処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はタービン動翼10とディスク12を同時にリーマ加工することを説明するための図で、(a)がタービン動翼10とディスク12の結合構造を示す正面図で、(b)が側面図で、(c)が(b)のX部拡大図である。
図2は、本発明の一実施形態の応力処理装置24の構成を説明するための図で、タービン動翼10とディスク12の結合構造のピン孔15に応力改善を施す場合を示す正面図である。
図3は、
図2をA方向から見た構成を示す矢視図である。
図4は、
図2に示したヘッド部を示す拡大図である。なお、以下の図において、同様の構成部分については同一符号を付記する。
【0014】
タービン動翼10は、下端に翼フォーク11を有する。ロータ1のディスク12は、上端にディスクフォーク13を有する。この翼フォーク11とディスクフォーク13は、互いに係合可能に形成され、後述する複数のピンを、翼フォーク11とディスクフォーク13とを貫通して設けられたピン孔15に挿入することで、タービン動翼10とディスク12とが結合される。なお、このタービン動翼10には、予めピン孔15の孔径よりも0.5〜1.0mm程度小さい径の下孔16が加工されている。
【0015】
リーマ加工装置100は、回転駆動部101、複数のリーマ工具102、図示しない移動部を備える。回転駆動部101は、複数のリーマ工具102を同時に、かつ同じ速度で回転させる。回転駆動部101およびリーマ工具102は、移動部によってピン孔15の軸方向(図中の矢印14方向)に移動する。リーマ加工装置100は、翼フォークを有するタービン動翼と、前記翼フォークが係合するディスクフォークを有するロータのディスクと、を同時にリーマ加工する加工部として機能する。
【0016】
タービン動翼10は、ディスク12に植設された後に、下孔16に仮ピン19を挿入して下孔16を同軸上に位置決めする。次にリーマ加工装置100において、リーマ工具102を回転駆動部101にて複数同時に、かつ同じ速度で回転し、ピン孔15の軸方向に移動させて下孔16を削り、ピン孔15を合せ加工する。このように、ピン孔15を複数同時に加工することで、タービン動翼10とディスク12のピン孔15の位置ずれがなくなり、ピン孔15およびピンへの運転時の負荷が軽減される。なお、このリーマ加工後に、生じたピン孔15内の切り屑は除去される。
【0017】
次に、本発明の一実施形態の応力処理装置24の構成を説明する。本実施形態に係る応力処理装置24は、疲労強度向上および残留応力除去を目的として、翼フォーク11とディスクフォーク13のピン孔15にピーニングを施す。
【0018】
図2〜
図4において、応力処理装置24は、ロータ回転部20、施工部29およびこれら部位を駆動制御する制御部18を備える。ロータ回転部20は、やげん台21、ロータ回転装置22を備える。やげん台21は、ロータ1の両端に1台ずつ配設され、このロータ1の両端を回転可能に軸受する。ロータ回転装置22は、ロータ1の先端部近傍に配設される。このロータ回転装置22は、例えばステッピングモータを有し、ロータ1の軸2の中心軸27を中心としてディスク12を所定位置に回転して、この所定位置での施工部29による施工を可能にする。このロータ回転装置22は、翼フォークを有するタービン動翼と、前記翼フォークと係合して組み立てられ、かつ前記翼フォークと互いに貫通するピン孔が形成されるディスクフォークを有するディスクとを備えるロータを回転させ、前記ディスクを所定位置に位置決めするロータ回転部として機能する。
【0019】
施工部29は、ロータ1の正面近傍に配置され、台座30、ロータ半径方向駆動部31、ロータ接線方向駆動部32、ヘッド送り駆動部33、ヘッド回転駆動部34、ブーム35、ヘッド部36を備える。
台座30は、ロータ1の半径方向17および中心軸27と平行に移動可能に構成される。ここで、ロータ1の半径方向17とは、水平方向と平行な方向を示すものである。
ロータ半径方向駆動部31は、台座30の上方に配置されるロータ半径方向駆動軸を有し、ブーム35をロータ1の半径方向17に移動させる。
【0020】
ロータ接線方向駆動部32は、ブーム35内に配置されるロータ接線方向駆動軸を有し、ヘッド部36をロータ1の接線方向に移動させる。
ヘッド送り駆動部33は、ヘッド部36の施工ヘッド38をロータ1の中心軸27と平行に移動させる。
ヘッド回転駆動部34は、ヘッド部36に配置される回転モータを有し、ピン孔15の内面に後述する圧縮応力領域が形成されるように、ヘッド部36の施工ヘッド38を回転する。
【0021】
ブーム35は、
図3に示すような羽子板形状の平板で構成され、内部にロータ接線方向駆動部32が配置される。このブーム35は、最終段落とその手前の段落のタービン動翼10およびディスク12の隙間より小さい幅に設定されている。
ヘッド部36は、ブーム35の先端に配設され、回転可能な施工ヘッド38を有する。この施工ヘッド38は、ブーム35と垂直(
図3の紙面と垂直)な方向に設けられている。
【0022】
施工時には、最終段落とその手前の段落のタービン動翼とディスクの隙間からブーム35を挿入し、施工対象のピン孔15へ位置決めする。次に、この施工ヘッド38を回転させてピン孔15の内面にピーニングを施す。この施工部29は、前記位置決めされた所定位置で前記翼フォークのピン孔内面および前記ディスクフォークのピン孔内面の少なくとも一方のピン孔内面に、ピーニングを施して圧縮応力領域を形成する施工部として機能する。
【0023】
この応力処理装置24は、ヘッド部36がロータ1の中心軸27と平行になるように、やげん台21と平行になるように、やげん台側面28に台座側面37を当接させて芯出しを可能にする。次に、ロータ半径方向駆動部31およびロータ接線方向駆動部32によって、施工対象のピン孔15位置に合せて施工ヘッド38位置を微調整する。次に、ヘッド送り駆動部33によって、施工ヘッド38がピン孔15内をロータ1の中心軸27と平行に移動させるとともに、この施工ヘッド38をヘッド回転駆動部34によって回転させて施工対象のピン孔15への位置決めを可能にする。
【0024】
ところで、通常ではタービン動翼10は、ロータ1の円周上に100本以上結合されている。このような環境化において施工対象のピン孔15の位置と施工ヘッド38の位置を目視で直接確認することは困難である。
【0025】
そこで、本実施形態に係る応力処理装置24は、施工ヘッド38の近隣に撮像ユニット39を設け、ピン孔15位置と施工ヘッド38位置とを遠隔で確認する。この撮像ユニット39は、監視カメラと、この監視カメラの周囲に配置された照明とを有する。そして、施工ヘッド38をピン孔15に位置決めする際に、監視カメラで撮影した映像から、画像計測方法(画像計測プログラム)によりピン孔15の輪郭を3点検索して中心を認識し、基準孔との位置ずれを認識し、この位置ずれに基づいてロータ半径方向駆動部31とロータ接線方向駆動部32を駆動制御してピン孔15に対する施工ヘッド38の位置決めを行う。
【0026】
このように、本実施形態に係る応力処理装置では、撮影した画像から、画像計測プログラムを用いて施工ヘッドとピン孔の位置ずれを補正するので、施工ヘッドを正しいピン孔の位置に位置決めできる。
【0027】
次に、この施工部29の一例を説明する。
図5は、施工部としてのレーザピーニング装置29の概要構成を説明するための断面図である。
図6はレーザピーニング装置29の構成の一部を示す要部断面図である。
レーザピーニング装置29は、台座30、ロータ半径方向駆動部31、ロータ接線方向駆動部32、ヘッド送り駆動部33、ヘッド回転駆動部34、ブーム35、ヘッド部36の他に、レーザ発振器40、レーザ光調整部41、光ファイバ42、送液部43を備える。
【0028】
施工ヘッド38は、中空の管状部材45、ヘッド先端部46、反射ミラー47および支持部材50を備える。
管状部材45は、支持部材50によって回転可能に支持されている。管状部材45の内部は、光ファイバ42が貫通するとともに、ホース48からの液体をヘッド先端部46に供給する。ヘッド先端部46は、円柱状に形成され、円周面に開口部46aを有し、管状部材45と一体に形成されている。反射ミラー47は、この開口部46a近郊で、かつ光ファイバ42の光軸上のヘッド先端部46内に固定される。この反射ミラー47は、非球面ミラーで構成され、入射するレーザ光Bを円周方向に曲げて、ピン孔15内面付近で集光する。
【0029】
レーザ発振器40は、ジャイアントパルスYAGレーザ発振器が望ましいが、パルスレーザを照射した際にプラズマのようなエネルギを発生することができるレーザ発振器であればよい。
レーザ光調整部41は、ミラー、レンズ、バッフルなどを組み合わせてレーザ発振器40から放射されたレーザ光Bの形状を整形する。
【0030】
光ファイバ42は、レーザ光調整部41によって形状整形されたレーザ光Bを伝送し、施工対象のピン孔15内面に放射する機能を有する。この光ファイバ42は、ヘッド部36内に挿入され、光ファイバ42を伝送したレーザ光Bは、施工ヘッド38のヘッド先端部46から放射される。
【0031】
送液部43は、ホース48および管状のスリーブ49を有し、施工対象のピン孔15内面に液体Lを供給する機能を有する。このホース48は、ブーム35内に配設された支持部材50と接続される。ブーム35と支持部材50間には、円周状の溝51が形成されている。スリーブ49は、この溝51の内側に設けられ、液体を通過させる複数の貫通孔を有する。なお、56は、ブーム35と支持部材50間に設けられたOリングである。送液部43からの液体Lは、ホース48を経由して溝51に蓄えられ、次にスリーブ49の貫通孔を介して支持部材50内部に供給される。支持部材50内部に供給された液体は、施工ヘッド38内を経由してヘッド先端部46の開口部46aからピン孔15内面に噴出される。
【0032】
このホース48から供給された液体Lは、管状部材45を経由して、回転するヘッド先端部46の開口部46aから噴出されることによって、ピン孔15内面全体に供給される。この供給された液体Lは、ロータ1の下方に設けられた液体受けパン55に落下して溜められる(
図2参照)。
【0033】
このように、送液部43から供給する液体として、例えば水を用いることで、施工対象のピン孔15の近傍を洗浄しながらレーザ光Bを放射することが可能となる。また、送液部43から供給する液体として、水のような中性の液体に代えて、アルカリイオン水やアンモニア水といったアルカリ性の液体を用いることにより、タービン動翼10やディスク12に錆が発生するのを防止することができる。
【0034】
また、この液体は、レーザピーニング時に発生する不純物がレーザ光Bの光路上に浮遊することによるレーザ光の減衰を防止するため、不純物のない新しい状態のものを常にこの光路に満たす役割を有する。
【0035】
ヘッド回転駆動部34は、
図6に示すように回転駆動モータ52、タイミングベルト53およびプーリ54を有し、回転駆動モータ52、タイミングベルト53およびプーリ54は、ブーム35内に配置される。回転駆動モータ52は、外部から駆動制御される。プーリ54は、支持部材50を回転可能にする。この回転駆動モータ52の回転モーメントがタイミングベルト53およびプーリ54を介して管状部材45に伝達されて、管状部材45およびヘッド先端部46を回転させる。
【0036】
これにより、光ファイバ42の先端から放射されたレーザ光Bは、回転する反射ミラー47で反射され、ピン孔15内面で焦点を結ぶことによって、このピン孔15内面全体にレーザピーニングを施して圧縮応力領域Cを形成することが可能となる。
【0037】
なお、
図6に示したレーザピーニング装置29では、ピン孔15の径が異なる場合、施工ヘッド38がピン孔15に接触しないことがある。レーザ光Bは、最小スポット径の位置が最も応力改善効果が高く、レーザ焦点裕度つまり応力改善効果が得られる範囲を事前に求めることができる。
【0038】
また、リーマ加工後のピン孔の径を事前に把握していれば、施工ヘッド38が使用可能であるか否か判断することができる。ピン孔15の径が、応力改善効果を得られる範囲を越えている場合には、施工ヘッド38を交換する必要がある。
【0039】
しかし、施工ヘッド38は、光学精密部品で構成されているため、取り扱いが難しく単純に施工ヘッド38のみを交換することが困難である。
そこで、本実施形態では、
図6に示す施工ヘッド38、光ファイバ42、支持部材50、回転駆動モータ52、タイミングベルト53およびプーリ54を、1つのユニットとして構成し、このユニット単位で施工ヘッド38の交換を可能にする。
【0040】
これにより、本実施形態では、施工ヘッドを駆動系とともにユニット構成としたので、ピン孔の径が、応力改善効果を得られる範囲を越えている場合には、取り付けられている施工ヘッドを有するユニットを、応力改善効果を得られる施工ヘッドを有するユニットに簡単に交換できる。
【0041】
図7は、ピン23が挿入されていないタービン動翼10とディスク12の結合構造を示す要部拡大断面図である。ここでは、翼フォーク11とディスクフォーク13のピン孔15内面には、圧縮応力領域Cが形成されている。この圧縮応力領域Cは、例えば表層から0.1mm〜0.2mm程度までの範囲に付与されている。このピン孔15には、ピン23が挿入されてタービン動翼10とディスク12との結合が可能になる。この圧縮応力領域Cがピン孔15内面に形成されていることによって、タービンの運転時にピン孔15内面にかかる引張応力が抑えられ、疲労強度を高めるとともに、SCCの発生を抑制することができる。
【0042】
次に、圧縮応力領域Cの形成を含めたタービン動翼10とディスク12の組み立て手順について説明する。
図8は、蒸気タービンの応力改善処理手順の一実施形態を示すフローチャートである。
【0043】
まず、タービン動翼10の翼フォーク11とディスク12のディスクフォーク13とを係合させ、タービン動翼10をロータ1に取り付ける(ステップS101)。この時点では、翼フォーク11にはピン孔15よりも径の小さい下孔16が形成されている。なお、ディスクフォーク13には、新設タービンの場合は下孔16が、またタービン動翼10の取り替えの場合はピン孔15が形成されている。このタービン動翼10の取り替えの場合は、取り替え前のタービン動翼10よりもピン孔の径を大きくするため、実質的にディスクフォーク13に形成されているピン孔は下孔16である。
【0044】
次に、下孔16にリーマ加工を施して径を大きくし、ピン孔15を形成し、必要に応じてリーマ加工で生じた切り屑を除去する(ステップS102)。
次に、形成されたピン孔15の表面に、レーザピーニング装置による応力改善処理を行い、圧縮応力領域Cを形成する(ステップS103)。なお、この切り屑の除去の作業については、応力改善処理の作業によっては、この応力改善処理の作業と並行して、または応力改善処理の作業の後に行うことが可能である。例えば、このレーザピーニングでは、レーザ光の放射点近傍である施工対象に液体を供給しながら施工するため、施工対象周辺の切り屑を除去しつつ施工することが可能である。
【0045】
そして最後に、ピン孔15にピンを挿入して、タービン動翼10をディスク12に結合する(ステップS104)。なお、この組み立て手順は、制御部18の制御動作によって自動的に行うことが可能である。
【0046】
このように、本実施形態に係る応力処理装置および施工システムでは、圧縮応力領域Cがピン孔内面に形成されていることによって、タービンの運転時にピン孔15内面にかかる引張応力が抑えられる。この結果、構造体に形成されたピン孔内面、すなわち蒸気タービンの動翼とディスクの結合部のピン孔内面の応力腐食割れの発生が低減できるとともに、疲労強度を向上することができる。
【0047】
また、運転プラントの蒸気タービンは、原子炉からの汚染した蒸気がタービンに循環するため、放射線量が高く、作業者による長時間の現場作業ができない環境にある。しかし、本実施形態に係る応力処理装置では、施工ヘッドの位置決めや施工の遠隔操作が可能となるので、制御盤などを放射線源より離れた位置に配置することができる。この結果、被爆汚染を低減し、圧縮応力領域形成の連続作業が可能となる。
【0048】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る応力処理装置24の構成を説明するための図で、ディスク12のピン孔15に応力改善を施す場合を示す正面図である。この実施形態2の応力処理装置24の構成は、
図2に示した応力処理装置と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0049】
この応力処理装置24では、タービン動翼10を取り外した位置に、翼フォーク11と同一形状のガイドプレート59を配置する。このディスクフォーク13とガイドプレート59は、仮ピンによって位置決めした後、ピン孔15内面にピーニングを施して圧縮応力領域Cを形成する。なお、ピン孔15の位置と施工ヘッド38の位置との位置決めは、実施形態1の応力処理装置と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
このように、本実施形態2に係る応力処理装置では、圧縮応力領域がディスクフォークのピン孔内面に形成されていることによって、タービンの運転時にピン孔内面にかかる引張応力が抑えられる。この結果、蒸気タービンの動翼とディスクの結合部のピン孔内面の応力腐食割れの発生を防止するとともに、疲労強度を向上することができる。
【0051】
また、タービン動翼を取り外した位置に、翼フォークと同一形状のガイドプレートを配置するので、ディスクフォークの間を施工ヘッドが通過する際に、中心軸がずれることなく、またレーザピーニングによって施工する場合に液体をピン孔内面に確実に供給することができる。
【0052】
(実施形態3)
次に、ロータ1から取り外したタービン動翼10にピーニングを施す場合を説明する。
図10は、単品施工する場合のタービン動翼10を示す図で、(a)はタービン動翼の斜視図で、(b)はX方向からの部分側面図である。
図11は、2枚重ねて施工する場合のタービン動翼10を示す斜視図である。
図12は、本発明の実施形態3に係る応力処理装置60の構成を説明するための図で、取り外したタービン動翼10のピン孔15内面に応力改善を施す応力処理装置60を示す斜視図である。
【0053】
タービン動翼10は、幅方向にある半円形の孔15a,15bを有する。この15a,15bは、ロータ1の半径方向にそれぞれ3つ形成され、ラジカル面57をそれぞれ構成する。そして、隣り合うタービン動翼10同士を重ね合せることで、互いの孔15a,15bによってピン孔15が形成される。
【0054】
図10においては、半円形の孔15a,15bを施工するのに左右2回行わなければならないが、
図11においては、隣接するタービン動翼10をピン孔15が同軸上に配置することで、左右の孔15a,15bを同時に施工できる。この結果、施工回数を1回ずつ削減することができる。
【0055】
この実施形態3に係る応力処理装置60では、隣接するタービン動翼10のピン孔15を同軸上に位置決めして施工する。この位置決めのために、応力処理装置60は、ガイドプレート61、ラジカル面ブロック62、端具ブロック63、クランプ64を有する。ガイドプレート61は、ディスクフォーク13と同じフォーク形状からなり、タービン動翼10の翼フォーク11が係合する。ラジカル面ブロック62は、翼フォーク11のラジカル面57の一方の面(例えば、孔15a側の面)を受ける。端具ブロック63は、翼フォーク11の植え込み部端具58に係合する。クランプ64は、ラジカル面57とは逆の半円形の凸部を有し、この凸部がラジカル面57の他方の面の孔(例えば孔15b)に係合する。
【0056】
すなわち、翼フォーク11は、ガイドプレート61に挿入され、同時にラジカル面ブロック62、端具ブロック63に押し当てられる。その結果,翼フォーク11は、ロータの円周方向及び軸方向に相当する2方向と、タービン動翼10の長手方向との3方向が拘束される。この拘束された状態で、クランプ64がエアーシリンダ65によって、翼フォーク11のラジカル面57の一方の面(例えば、孔15a側の面)に当接し、常に同じ位置にタービン動翼10を固定することが可能となる。ガイドプレート61、ラジカル面ブロック62、端具ブロック63、クランプ64は、前記取り外されたタービン動翼を、組み立て時の前記ロータの円周方向および軸方向に相当する2方向と、前記タービン動翼の長手方向との3方向に対して位置決めする位置決め部として機能する。
【0057】
また、応力処理装置60は、ヘッド部66、高さ方向調整部67、幅方向調整部68、ヘッド回転部69、ヘッド送り部70、制御部180を有する。ヘッド部66は、実施形態1のヘッド部36と同様の構成を有するので、ここでは詳細な説明を省略する。高さ方向調整部67は、ヘッド部66の高さ方向Hを調整する。幅方向調整部68は、ヘッド部66の幅方向Sを調整する。ヘッド回転部69は、ヘッド部66を回転する。ヘッド送り部70は、ヘッド部66をロータ1の中心軸27に相当する方向と平行方向Pに移動させる。
【0058】
制御部180は、高さ方向調整部67、幅方向調整部68、ヘッド回転部69およびヘッド送り部70を同時に駆動制御することで、ピン孔15内面を施工して、圧縮応力領域を形成する。この圧縮応力領域が形成されたタービン動翼10は、ロータ1のディスク12と順次組み合わされる。
【0059】
このように、本実施形態に係る応力処理装置では、圧縮応力領域Cがタービン動翼のピン孔内面に形成されていることによって、タービンの運転時にピン孔15内面にかかる引張応力が抑えられる。この結果、蒸気タービンの動翼とディスクの結合部のピン孔内面の応力腐食割れの発生を防止するとともに、疲労強度を向上することができる。
【0060】
(実施形態4)
図13は、本発明の実施形態4に係る応力処理装置60の構成を示す斜視図である。この応力処理装置60は、実施形態3の応力処理装置を応用したものであり、隣接するタービン動翼10を2列配置し、これらタービン動翼10のピン孔15を同軸上に位置決めして施工する。このため、応力処理装置60は、ガイドプレート61、ラジカル面ブロック62、端具ブロック63、クランプ64を2台ずつ有する。また、ヘッド部66は、2列のタービン動翼10に対応させて、実施形態3のヘッド部より長くする必要がある。なお、本実施形態では2列のタービン動翼を同時に施工したが、これに限らず3列以上のタービン動翼を同時に施工することも可能である。
【0061】
このように、本実施形態に係る応力処理装置では、実施形態3と同様の効果を奏するともに、複数列のタービン動翼を同時に施工することが可能となるので、施工時間の短縮を図ることができる。
【0062】
(実施形態5)
図14は、実施形態5に係る応力処理装置の施工ヘッド38の断面図で、(a)は紡錘形状の施工ヘッド38でピン孔15に挿入する場合、(b)は紡錘形状の施工ヘッド38でピン孔15に挿入された場合を示す図である。
実施形態1では、撮影した画像から、画像計測プログラムを用いて施工ヘッドの位置決めを行った。この場合には、ヘッド先端部46が円柱形状でも、ピン孔15の入口で干渉することなく、施工ヘッド38をピン孔15の位置に容易に位置決めできる。しかし、この撮影した画像をモニタに写し、目視により施工ヘッドの位置ずれを人為的に補正する場合がある。この場合には、僅かな位置ずれを補正しきれず、ヘッド先端部46がピン孔15の入口で干渉することがある。
【0063】
そこで、本実施形態に係る施工ヘッド38では、ヘッド先端部46を紡錘形状に形成する。このヘッド先端部46を配設した施工ヘッド38を位置決めし、ピン孔15に挿入する場合、僅かな位置ずれが生じていても、施工ヘッド38がピン孔15の半径方向に力を受け、この反力より管状部材45が撓んでピン孔15に沿うように挿入される。この施工ヘッド38は、予めピン孔15より0.5mm程度径を小さく形成するため、径方向に0.25mm程度の軸心ずれdを吸収することができる。
【0064】
また、レーザピーニングによってピン孔15内面に応力改善を行う場合には、レーザ光Bが焦点を結ぶ最小スポット径sが最もエネルギが大きく、ピン孔15半径に対して±0.5mm程度の応力改善が見込まれる裕度を持つ。このため、僅かな位置ずれ(軸心ずれd)を吸収しながら、応力改善効果が得られる範囲で回転動力を伝達することが可能となる。
【0065】
(実施形態6)
図15は、ピン孔15の出入口部の拡大断面図で、(a)は入口部、(b)は出口部を示す図である。
ピン孔15の入口部と出口部では、開口部46aがピン孔15内に完全に挿入されていないので、液体は施工対象位置aのみに噴出されずに分流してしまう。この結果、施工対象位置aに供給される液体の量が減少してしまう。
【0066】
そこで、本実施形態では、ピン孔15の入口部と出口部に近接させてガイドプレート80,81を配置する。このガイドプレート80,81は、ピン孔15と同径の貫通孔82,83を有し、この貫通孔82,83の中心軸がピン孔15の中心軸と同軸になるように配置する。
【0067】
この状態で、ヘッド先端部46がガイドプレート80に挿入され、開口部46aがピン孔15の入口部の位置に到ると、液体はピン孔15と貫通孔82に供給されて分流されることなくピン孔15の入口部に直接噴出される。
そして、ヘッド先端部46がピン孔15内を進み、開口部46aがピン孔15の出口部に到ると、液体はピン孔15と貫通孔83に供給されて分流されることなくピン孔15の出口部に直接噴出される。
【0068】
このように、本実施形態では、ガイドプレート80,81をピン孔15の入口部と出口部に配置するので、液体の分流を防止でき、液体を入口部と出口部に噴出することができ、洗浄を効果的に行うことが可能となる。
【0069】
(実施形態7)
図16は、実施形態7に係る応力処理装置のヘッド部36とブーム35の要部拡大図で、(a)は側面、(b)は正面を示す図である。本実施形態では、ロータ1の半径方向に配置された複数のピン孔15を同時に施工するヘッド部36の構成を説明する。
【0070】
ピン孔15は、ロータ1の半径方向に等ピッチで複数個形成されている。そこで、これらピン孔15に対応させてヘッド部36の複数の施工ヘッド38をブーム35の長手方向に配設する(
図16(b)参照)。これら施工ヘッド38は、例えば
図4に示したヘッド回転駆動部34によって同時に回転されて、複数のピン孔15の同時施工を可能にする。
【0071】
これにより、本実施形態では、ロータの半径方向に設けた複数のピン孔を同時に施工できるので、位置決め回数や施工回数を削減でき、この結果施工の作業工程や作業時間を削減できる。
【0072】
(実施形態8)
図17は、実施形態8に係る応力処理装置のヘッド部36とブーム35の要部拡大図で、(a)は側面、(b)は正面を示す図である。本実施形態では、ロータ1の円周方向に配置された複数のピン孔15を同時に施工するヘッド部36の構成を説明する。
【0073】
例えば、
図5に示すように翼フォーク11およびディスクフォーク13は、先端方向に厚さが薄くなっており、これに伴ってピン孔15の長さも短くなっている。このため、実施形態7のヘッド部を用いて複数のピン孔を同時に施工すると、長さの短いピン孔の施工では待ち時間が生じてしまう。
また、ピン孔15は、ロータの円周方向にも等ピッチで複数個形成されている。
【0074】
そこで、これらピン孔15に対応させてヘッド部36の複数の施工ヘッド38をブーム35の幅方向に配設する(
図17(b)参照)。これら施工ヘッド38は、たとえば
図4に示したヘッド回転駆動部34によって同時に回転されて、複数のピン孔15の同時施工を可能にする。
【0075】
各施工ヘッド38は、棒状構造の支持部材85にそれぞれ取り付けられる。各支持部材85は、
図17(b)に示すように羽子板形状のブーム35の幅広領域部(ホルダ)35aに配置される。この際、施工ヘッド38の中心が、ピン孔15に対応してロータの円周方向に等ピッチになるように、支持部材85を所定角度に角度付けして配置する。
【0076】
これにより、本実施形態では、ロータの円周方向に設けた複数のピン孔を同時に施工できるので、位置決め回数や施工回数の削減でき、この結果施工の作業工程や作業時間を削減できるとともに、施工の待ち時間を削減でき、ヘッド回転駆動部の回転操作回数を削減できる。
【0077】
(変形例1)
ピン孔15の配列位置は、ロータ1の半径方向の位置と、円周上のピン孔15のピッチとによって様々な配列が考えられる。このため、異なるピン孔の配列の場合には、
図17に示したホルダ35aの施工ヘッド取り付け位置を、使用するロータ1に合せて交換することで対応が可能とする。
【0078】
そこで、本実施形態では、施工ヘッド38の支持部材85を、施工対象のピン孔15の円周上のピッチに対応して、所定角度に位置決めするホルダ35aのリーマ穴86を予め加工しておく。このように施工対象のピン孔15の異なる円周上のピッチに対応したホルダ35aを複数製作する。そして、施工対象のピン孔15のピッチに対応したホルダ35aを選び、このホルダ35aに支持部材85を取り付け、リーマ穴86にリーマボルト87を挿入して支持部材85を位置決め固定する。
【0079】
このように、本変形例1では、ピン孔の異なる円周上のピッチに対応したホルダを複数製作し、このホルダの中から施工対象のピン孔のピッチに対応したホルダに施工ヘッドの支持部材を取り付ける。これにより、如何なるプラントのピン孔配列に対してもピン孔内の施工が可能となる。
【0080】
(変形例2)
また、同一プラントにおいて、フォークにはピン孔15が複数段の円周状に同じ数、例えば実施形態では半径の異なる3つの同心円の円周状で同一半径方向に3つ配列されている。
そこで、この変形例2では、施工ヘッド38の位置を組替え可能とするホルダ35aを提供する。
【0081】
図18は、実施形態8の変形例2に係る応力処理装置のヘッド部36とブーム35の要部拡大図で、(a)は側面、(b)は正面を示す図である。
ホルダ35aでは、複数の所定のロータ1の半径方向と平行に配列した複数の組立用リーマ穴86を有する。組立用リーマ穴86は、1つの施工ヘッド38に対して両側の長手方向に沿って配列されている。そして、各施工ヘッド38をロータ1の半径方向(矢印88方向)に移動させて施工対象のピン孔15の位置に合せ、その状態でリーマ穴86にリーマボルト87を挿入して支持部材85を位置決め固定する。
【0082】
このように本変形例2では、施工ヘッドを施工対象のピン孔の位置に合せるように移動させ、その状態で支持部材を位置決めするので、施工ヘッドを施工対象のピン孔位置に容易に組み替え可能となる。
【0083】
(実施形態9)
図19は、実施形態9に係る応力処理装置の施工動作を説明するための図で、(a)は直線動作の場合の施工軌道を示す図、(b)は直線動作の場合の施工時間を示す図である。
【0084】
応力処理装置24(又は60)は、まずヘッド送り駆動部33を駆動制御し、レーザ照射時間T1でピン孔15の軸方向(図面の右から左方向)に直線でレーザ照射を行う。その後、ヘッド回転駆動部34を駆動制御し、レーザ遮断時間T2でレーザ光を遮断してピン孔15の円周方向に光軸を移動する。そして、再びヘッド送り駆動部33を駆動制御し、レーザ照射時間T1でピン孔15の軸方向(図面の左から右方向)に直線でレーザ照射を行い、以下この施工動作を繰り返して、ピン孔15内面に圧縮応力領域を形成する。
【0085】
ここで、レーザ照射時間T1は、ピン孔15の軸方向の長さを、レーザ光の移動速度で割った値である。レーザ遮断時間T2は、ピン孔15内面に圧縮応力領域が所定の厚みでムラなく形成できる、たとえばレーザ光の口径に関係した値である。
これにより、本実施形態では、レーザ光をピン孔の軸方向と平行に、かつ左右に折り返し移動させるので、ピン孔内面に均一な圧縮応力領域を形成することができる。
【0086】
(変形例)
図20は、実施形態9の変形例に係る応力処理装置の施工動作を説明するための図で、(a)は螺旋動作の場合の施工軌道を示す図、(b)は螺旋動作の場合の施工時間を示す図である。
【0087】
実施形態9の施工動作では、レーザ遮断時間T2が一操作毎に発生するので、その繰り返されたレーザ遮断時間T2だけ施工時間が長くなることが考えられる。
そこで、本変形例では、レーザ照射を連続的に行う場合について説明する。
【0088】
応力処理装置24(又は60)は、ヘッド送り駆動部33およびヘッド回転駆動部34を駆動制御し、レーザ照射時間Tでピン孔15内面を螺旋状にレーザ照射を行ってピン孔15内面に圧縮応力領域を形成する。
ここで、レーザ照射時間Tは、レーザ光が所定ピッチで、ピン孔15の入口部から出口部まで螺旋状に移動する長さをレーザ光の移動速度で割った値である。所定ピッチは、ピン孔15内面に圧縮応力領域が所定の厚みでムラなく形成できる、たとえばレーザ光の口径に関係した値である。
【0089】
これにより、本変形例では、レーザ照射を螺旋状に連続的に移動させるので、ピン孔内面に均一に綱圧縮応力領域を形成するとともに、レーザ遮断時間が発生せず、施工時間を短縮することが可能である。
【0090】
(実施形態10)
レーザピーニング装置29では、タービン動翼10とディスク12の素材の種類によって施工条件を切り替えて施工を行う場合がある。
図21は、応力処理装置24の施工管理を行う施工管理システムの構成を示すブロック図である。
図22は、レーザピーニングを行う応力処理装置24において、素材の種類によって施工条件を切り替え施工する場合を説明するための図で、(a)は一方の素材のみを施工する場合の図、(b)は異なる条件で施工する場合の図である。
【0091】
施工管理システムは、レーザピーニング装置29を含む応力処理装置24、施工条件入力部90、制御盤91、モニタ92を備える。
施工条件入力部90は、施工条件としてピン孔15の軸方向の移動量、
図22に示す一方の素材(翼フォーク11又はディスクフォーク13)のみを施工するのか、素材の種類によって異なる施工条件で施工するのか等の情報を入力する。
【0092】
制御盤91は、入力する施工条件の情報に基づいて、施工の動作速度94や動作範囲95を求め、これら情報を応力処理装置24の制御部18に出力するとともに、モニタ92に表示させる。なお、施工条件入力部90、制御盤91、モニタ92は、たとえばパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)などで構成することが可能である。すなわち、施工条件入力部90はパソコンのキーボードやマウス、制御盤91はパソコン本体、モニタ92はパソコンのディスプレイに相当する。
制御部18は、入力するこれら情報に基づいて、ロータ半径方向駆動部31、ロータ接線方向駆動部32、ヘッド送り駆動部33、ヘッド回転駆動部34を駆動制御して、ピン孔15内面を施工する。
【0093】
制御盤91は、移動距離をレーザ照射開始時からの時間で検出しており、応力処理装置24によるピン孔15の軸方向の移動位置が、目標の位置(レーザ照射時間T3)に達すると、レーザピーニング装置29にレーザ停止指令を出力してレーザ光を遮断する。
【0094】
次に、
図22の(a)の場合は、レーザ光を遮断させた状態で次のレーザ照射の開始位置(レーザ遮断時間T4)に達すると、レーザ照射を開始する。また、
図22の(b)の場合は、レーザ照射条件を切り替えた後に直ちにレーザ光を照射させて、次の目標の位置(レーザ照射時間T3)までレーザ光を移動させる。
【0095】
このように、本実施形態では、施工条件に応じて、レーザ照射の条件を切り替えることができるので、素材によって異なる条件でピン孔を施工することが可能となる。
なお、施工条件として、
図19、
図20に示した直線動作又は螺旋動作で施工するかを施工条件入力部90から入力して施工の動作条件を切り替えることも可能であり、この場合は異なる動作条件でピン孔を施工することが可能となる。
【0096】
(実施形態11)
レーザピーニングにおいて、ピン孔15に応力改善する際に、ピン孔15の径が異なっても施工ヘッド38を共用する場合について説明する。実施形態1に示した施工ヘッド38はユニット構成としたが、この構成では交換する部分が大きく、複数のユニットを所持するのは困難が伴う。
【0097】
そこで、本実施形態では、施工ヘッド38の共用を可能にする。
図23は、実施形態11に係る応力処理装置の施工ヘッド38の要部断面図で、(a)は正面を示す図で、(b)は側面を示す図である。
図24は、
図23に示した施工ヘッド38の回転状態を説明するための正面図である。
【0098】
施工ヘッド38の径は、施工を行うピン孔15の径の最小径より小さく形成する。制御部18は、施工を行うピン孔15の径に合せて施工ヘッド38が円運動するように、ロータ半径方向駆動部31とロータ接線方向駆動部32を駆動制御する。同時に、制御部18は、施工ヘッド38の中心98とピン孔15の中心99を結ぶ法線方向にヘッド回転駆動部34を駆動制御する。これにより、施工ヘッド38は、ピン孔15内面を偏心運動することが可能となる。この偏心運動の際に、レーザ光Bは、常に施工ヘッド38がピン孔15と接触している位置に照射されるように制御される。
【0099】
このように、本実施形態では、ピン孔の径に合せて施工ヘッドがピン孔内面を偏心運動するので、径が異なる複数の種類のピン孔を施工することが可能となる。
【0100】
(変形例1)
図25は、実施形態11の変形例1に係る応力処理装置の施工ヘッド38の要部断面図で、(a)は正面を示す図で、(b)は側面を示す図である。
図26は、
図25に示した施工ヘッド38の回転状態を説明するための正面図である。
【0101】
実施形態11では、ピン孔15と施工ヘッド38間に隙間が生じるので、応力処理装置に振動や衝撃が加わると、レーザ光Bのスポット径が大きくなって、応力改善範囲の裕度を超え、応力改善効果が得られないことがある。
【0102】
そこで、本変形例では、ピン孔15と施工ヘッド38間の隙間に応じたスペーサ110を設けてこの隙間を埋める。このスペーサ110は、断面三日月形状で形成され、施工ヘッド38の外周面に着脱可能に取り付けられて、ピン孔15との隙間を調整する。このスペーサ110は、たとえばリーマボルトなどによって施工ヘッドに固定することも可能である。なお、このスペーサ110は、複数取り付けることも可能である。
【0103】
制御部18は、実施形態11と同様に、ロータ半径方向駆動部31、ロータ接線方向駆動部32およびヘッド回転駆動部34を駆動制御する。このスペーサ110を取り付けることにより、施工ヘッド38は、ピン孔15内面を良好に偏心運動することが可能となる。この偏心運動の際に、レーザ光Bは、常に施工ヘッド38がピン孔15と接触している位置に照射されるように制御される。
【0104】
このように、本変形例では、施工ヘッドにスペーサを取り付けて、ピン孔との隙間を調整するので、光学系部品である施工ヘッドを交換することなく、ピン孔の径に応じた形状のスペーサを施工ヘッドの外周面に取り付けできる。この結果、初心者でも容易にスペーサを取り付けることができる。
【0105】
(変形例2)
図27は、実施形態11の変形例2に係る応力処理装置の施工ヘッド38の動作制御を説明するための断面図である。
図28は、
図27のE−E断面を示す断面図である。
【0106】
ここで,次の関係式が成り立つ。
X=(D−d)÷2×cosθ
Y=(D−d)÷2×sinθ
Z=P×N+P×θ÷360
R=θ
C1:ピン孔15の中心位置(基準位置)(基準座標(0,0,0)))
C2:施工ヘッドの中心位置(座標(X,Y,Z))
D:ピン孔15の直径
d:施工ヘッド38の直径
θ:ピン孔15方位
P:1回転当たりの施工ヘッド38の送りピッチ
N:施工ヘッド38の回転数
X,Y,Z:中心位置C1から中心位置C2までのX,Y,Z軸方向の距離
R:ヘッドの回転軸角度(ピン孔中心C1の真上を0度とした時計回り方向の角度)
【0107】
この関係から、制御部18が施工ヘッド38を上記X,Y,Z軸方向及びR角方向に動作制御すると、施工ヘッド38(施工対象位置a)がピン孔15の中心C1と施工ヘッド38の中心C2を結んだ法線方向を向き、かつ施工ヘッド38がピン孔15の内周面に沿って偏芯運動することができる。
【0108】
なお、施工ヘッド38の中心C2の上記X,Y軸方向の運動において、ピン孔15の直径Dと施工ヘッド38の直径dの差分がD−d=0の場合、ピン孔15と施工ヘッド38の中心C1,C2は等しくなる。即ち,この場合、施工ヘッド38は偏芯運動ではなく円運動することとなる。
【0109】
このように、本変形例では、施工ヘッドを上記X,Y,Z,R軸方向に動作制御して、ピン孔との隙間を調整する。このため、ピン孔の径にかかわらず、施工ヘッド38は、ピン孔15内面を良好に偏心運動することが可能となる。この偏心運動の際に、レーザ光は、常に施工ヘッド38がピン孔15と接触している位置に照射されるように制御できる。
【0110】
(実施形態12)
応力処理装置24では、中性またはアルカリ性の液体Lを施工対象のピン孔15内面に噴出するので、この液体Lが残留したまま放置されると、その放置された部分に錆が発生する。このため、施工後のピン孔15またはタービン動翼10とディスク12の隙間部およびこれらの周囲を乾燥し錆の発生を防止する必要がある。
【0111】
タービン動翼10またはディスク12に付着した液体Lは、基本的にはこれらの表面に付着し下方へ流れ落ちる。しかし、タービン動翼10とディスク12は円周状に連結されており、翼フォーク11とディスクフォーク13は、0.4mm程度の隙間しかなく、この隙間部125に液体Lが堆積してしまう場合がある。この狭い隙間部125に直接、乾燥ヘッドを挿入して、乾燥気体を吹き付けることは従来困難であった。また、ピン孔15内面においても、同様に表面張力によって液体Lが堆積することがあった。
【0112】
図29は、実施形態12に係るタービン動翼10とディスク12の隙間部125を乾燥する乾燥装置130を説明するための図で、(a)はタービン動翼10とディスク12の正面図で、(b)は乾燥ヘッド131のX方向から見た矢視図である。
【0113】
乾燥装置130は、乾燥気体を供給する気体供給部(図示せず)、ヘッド移動部(図示せず)、乾燥ヘッド131、Oリング133を有する。
気体供給部は、窒素を80%含む気体をヒータで加熱乾燥し、水分を除去した乾燥気体を乾燥ヘッド131に供給する。
【0114】
ヘッド移動部は、乾燥ヘッド131を軸方向に移動させる。
乾燥ヘッド131は、円筒形状に形成され、先端部131aの円周面に
図29(b)に示す複数の貫通孔132を有する。この乾燥ヘッド131は、フォークに形成されたピン孔15の数に対応した数、実施形態では3つ配置される。3つの乾燥ヘッド131は、ピン孔15の長さに合せて、
図29(a)に示すように、3段に配列され、この配列の状態でピン孔15内面を移動する。これにより、ピン孔15内面を移動する全ての乾燥ヘッド131が、同時に隙間部125の位置に到ることが可能となる。
【0115】
この貫通孔132は、たとえば乾燥ヘッド131の円周面の6方向に放射状に、かつ乾燥ヘッド131の先端部131aの2個所にそれぞれ配置される。これら2個所の貫通孔132間の距離は、施工対象のピン孔15の長さと等しい長さに設定されている。これら貫通孔132は、気体供給部から供給された乾燥気体を、乾燥ヘッド131内部からピン孔15内面に噴出させる機能を有する。
【0116】
Oリング133は、貫通孔132を挟むように、乾燥ヘッド131の軸方向の前後の円周面にそれぞれ4つ設けられる(
図29(a)参照)。
乾燥ヘッド131が、挿入されたピン孔15内面を軸方向に移動し、翼フォーク11とディスクフォーク13の隙間部125の位置に到ると、Oリング133がピン孔15内面をシールする。このため、貫通孔132から供給された乾燥気体Vは、この隙間部125のみを介して外部に噴出する。
【0117】
このように、本実施形態では、乾燥気体を隙間部のみから外部へ噴出することができるので、乾燥気体がピン孔内面に分流されず、隙間部に残留された液体を的確に除去でき、錆の発生を防止可能となる。
【0118】
(変形例1)
次に、ピン孔15内面を乾燥する乾燥ヘッド135について説明する。
図30は、実施形態12の変形例1に係る乾燥ヘッド135を示す断面図である。
【0119】
乾燥ヘッド135は、円筒形状に形成され、円周面に複数の貫通孔136を有する。
これらの貫通孔136は、同じ円周上および乾燥ヘッド135の軸方向に複数配列される。貫通孔136は、乾燥ヘッド135内部から斜め前方に、乾燥気体Vを噴出するように、約45度の斜め穴に形成される。これは、ピン孔15がロータ1の回転中心と平行で、かつ床面とも平行な状態にあり、液体Lがこのピン孔15内面に付着したまま残留するので、この液体Lを乾燥ヘッド135の前方へ飛散できるようにするためである。
【0120】
このように、本変形例では、乾燥気体を乾燥ヘッドの斜め前方のピン孔内面に噴出することができるので、乾燥気体がピン孔内面の前方に流れ、ピン孔内面に付着した液体を的確に除去でき、錆の発生を防止可能となる。
【0121】
(変形例2)
図31は、実施形態12の変形例2に係る乾燥ヘッド137を示す断面図である。
乾燥ヘッド137は、固定プロペラ部138、回転部139、接続リング140、管状部材141を備える。
【0122】
固定プロペラ部138は、乾燥ヘッド137の先端に内向きに固定されたプロペラ状の羽根142を有する。この羽根142は、供給される乾燥気体Vを正面から受けるように配置されている。
回転部139は、羽根142を覆う円筒形状に形成され、円周面に貫通孔143を有する。この貫通孔143は、変形例1の貫通孔136と同様、乾燥ヘッド137内部から斜め前方に、乾燥気体Vを噴出するように、約45度の斜め穴に形成される。
【0123】
接続リング140は、管状部材141に対し、回転部139を回転可能に接続する。接続リング140は、たとえば摩擦抵抗を低減するベアリングなどで構成される。
管状部材141から供給される乾燥気体Vを、0.5MPa程度の圧力で勢い良く羽根142に噴出すると、羽根142は反力を受ける。この反力により、回転部139には、回転力が伝達され、その回転力で回転しながら、貫通孔143を介して、乾燥気体Vを乾燥ヘッド137のピン孔15内面全周に噴出することができる。
【0124】
このように、本変形例では、回転する回転部から乾燥気体を乾燥ヘッドの斜め前方のピン孔内面に噴出することができるので、乾燥気体がピン孔内面の前方に流れ、ピン孔内面に付着した液体を的確に除去でき、錆の発生を防止可能となる。
【0125】
(実施形態13)
次に、ピン孔15内面に圧縮応力領域が形成された後に、ピン孔15内面を検査する場合について説明する。
図32は、実施形態13に係る検査ヘッド145を示す断面図である。
【0126】
ピン孔15は、通常10mm〜17mmの直径で形成される。これに対して、翼フォーク11とディスクフォーク13の最大幅は、300mm以上あるため、ピン孔15内は照度が低く、ピン孔15全体を目視で検査することは困難であった。
【0127】
そこで、本実施形態では、ピン孔15内全体を検査可能とする検査ヘッド145を提供する。
検査ヘッド145は、管状部材146、ファイバスコープ147、照明部148を備える。
【0128】
管状部材146は、内部にファイバスコープ147が配設されている。また、管状部材146の先端には、照明部148が配設されている。
ファイバスコープ147は、管状部材146前方に目視可能な視界領域を発生する。ファイバスコープ147は、図示しないモニタと接続されており、映像の表示を可能にしている。
【0129】
照明部148は、リング状の照明からなり、管状部材146前方の視界領域内のピン孔15内面を照射する。
検査ヘッド145がピン孔15内に挿入されると、前方の視界領域内のピン孔15内面が照射され、作業者の目視による検査を可能にする。
このように、本実施形態では、照明部によって映し出されたピン孔内面をファイバスコープでとらえて目視可能とするので、ピン孔全体を目視で検査することができる。
【0130】
(実施形態14)
次に、乾燥作業とピン孔15内面検査を併用する場合について説明する。
図33は、実施形態14に係る併用ヘッド150を示す断面図である。
【0131】
併用ヘッド150は、管状部材151、ファイバスコープ152、照明部153を備える。
管状部材151は、内部にファイバスコープ152が配設されている。管状部材151の内面とファイバスコープ152との間には、隙間部154が形成される。管状部材151は、気体供給部に接続され、隙間部154を介して外部に乾燥気体Vを噴出する。このため、管状部材151の先端側の隙間部154は、狭隘構造に形成されている。
【0132】
ファイバスコープ152は、管状部材151前方に目視可能な視界領域を発生する。ファイバスコープ152は、図示しないモニタと接続されており、映像の表示を可能にしている。また、ファイバスコープ152の先端には、照明部153が配設されている。
照明部153は、リング状の照明からなり、管状部材151前方の視界領域内のピン孔15内面を照射する。
【0133】
併用ヘッド150がピン孔15内に挿入されると、管状部材151とファイバスコープ152間の隙間部154からピン孔15内に乾燥気体Vが噴出され、これと同時に前方の視界領域内のピン孔15内面が照射され、作業者の目視による検査を可能にする。
このように、本実施形態では、ピン孔全体を目視で検査しながら、同時にピン孔内を乾燥することができる。
【0134】
(実施形態15)
次に、ピン孔15に供給された切削材や液体を回収する回収部について説明する。
レーザピーニング時に噴出する液体Lは、ピン孔15のヘッド挿入側の反対方向から飛散することとなる。
そこで、本実施形態では、切削材や液体を回収する回収部を提供する。
【0135】
図34は、実施形態15に係る回収部160を示す図である。
回収部160は、フランジ161、ガイドパイプ162、Oリング163、図示しないポンプを備える。
【0136】
フランジ161は、ガイドパイプ162が取り付けられた孔164を有する。この孔164は、ピン孔15と同じ径に形成される。
ガイドパイプ162は、ポンプに接続され、ポンプの吸引動作によって液体Lを吸引する。
Oリング163は、孔164を取り囲むように、フランジ161の側面に配設される。
【0137】
ピン孔15の出口部に孔164が合うように、フランジ161とOリング163をフォーク側面に取り付け、ポンプで吸引することで、施工時に飛散する液体Lをガイドパイプ162に取り込む。
【0138】
このように、本実施形態では、飛散する液体を吸引するので、ピン孔に残留する液体を削減でき、次の作業工程、たとえば乾燥工程での作業時間を短縮することができる。
【0139】
(実施形態16)
次に、レーザピーニング時に噴出する液体Lの回収、再利用するシステムについて説明する。
図35は、液体Lを回収、再利用する実施形態16に係る再利用システムの構成を示すブロック図である。
【0140】
再利用システムは、レーザピーニング装置29を含む応力処理装置24、制御盤91、液体受けパン55、フィルタ170、PHコントロールユニット171、ポンプ貯液槽172、制御盤91を備える。なお、
図35中、実線は液体Lの流れを示し、点線は制御系の接続経路を示す。
【0141】
液体受けパン55は、ピン孔15から落下した液体Lを貯留し、フィルタ170に供給する。
フィルタ170は、ピン孔15に残留していた不純物や油分、レーザピーニングによって昇華した微量の金属粉、外部から混入した異物などを濾過する機能を有する。なお、フィルタ170は、異物が所定量異常付着すると、目詰まりを起こす可能性があるため、定期的にフィルタを交換する必要がある。
【0142】
PHコントロールユニット171は、濾過された液体LのPHを調整する機能を有する。なお、液体LのPHは、アルカリ性に近いほど、タービン動翼10およびディスク12を錆びにくくする効果がある。
【0143】
ポンプ貯液槽172は、図示しないポンプを有し、PH調整された液体Lを吸い上げて応力処理装置24に供給する。なお、ポンプ貯液槽172の液体Lが所定レベル以下になった場合は、液体を補充する必要がある。
制御盤91は、施工条件に基づいて、応力処理装置24を制御するするとともに、ポンプ貯液槽172のポンプを駆動制御する。
【0144】
液体Lは、ポンプ貯液槽172に貯えられ、ポンプによって汲み上げられて、図示しない流量検知バルブ、ホース48、ブーム35の順に通過し、施工ヘッド38の開口部46aより噴出される。
【0145】
開口部46aから噴出された液体Lは、ピン孔15を経由して液体受けパン55に落下し、さらにフィルタ170に吸引されて異物が除去される。次に、液体Lは、PHコントロールユニット171によってPH調整され、ポンプによって吸い上げられてポンプ貯液槽172に循環される。
【0146】
このように、本実施形態では、ピン孔に噴出された液体を濾過およびPH調整した後に、再び応力処理装置に供給するので、液体の再利用が可能となる。この結果、資源の枯渇化を防止することができる。
【0147】
(実施形態17)
図36は、実施形態17に係る施工システム175の構成を示す図である。
この施工システム175では、最終段落のディスク12aの同一円周上の異なる位置に上述した応力処理装置24と同様の機能を有する応力処理装置(たとえば応力処理装置24a〜24cまたは応力処理装置24d,24e)を複数配列する。そして、制御盤91によって、これら応力処理装置を同じタイミングで複数のピン孔15をそれぞれ施工して圧縮応力領域を形成する。
【0148】
また、この施工システム175では、タービン側の最終段落のディスク12aとコレクタ側の最終段落のディスク12bの対向する位置に上述した応力処理装置24と同様の機構を有する応力処理装置(たとえば応力処理装置24aと24dまたは応力処理装置24cと24e)を複数配列する。そして、制御盤91によって、これら応力処理装置を同じタイミングで複数のピン孔15をそれぞれ施工して圧縮応力領域を形成する。
【0149】
また、この施工システム175では、応力処理装置24a〜24eを組み合わせて配置する。そして、制御盤91によって、これら応力処理装置を同じタイミングで複数のピン孔15をそれぞれ施工して圧縮応力領域を形成してもよい。この施工システムは、応力処理装置を、前記ロータの同一円周上の異なる位置、およびタービン側の前記ディスクとコレクタ側の前記ディスクの対向する位置の少なくとも一方の位置に複数設置する施工システムとして機能する。
【0150】
このように、本実施形態では、応力処理装置を用いてピン孔に圧縮応力領域を形成するので、蒸気タービンの動翼とディスクの結合部のピン孔内面の応力腐食割れの発生を防止するとともに、疲労強度を向上することができる。
【0151】
さらに、本実施形態では、複数の応力処理装置を組み合わせて配置し、複数のピン孔をそれぞれ施工して圧縮応力領域を形成するので、一度の回転制御で同時施工が可能となり、施工時間を削減できる。
【0152】
(実施形態18)
図37は、実施形態18に係る施工システム176の構成を示す図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
この施工システム176では、リーマ加工装置100a,100bと、施工装置181a,181b、乾燥装置182a,182b、検査装置183a,183b、ピン組立装置184a,184b、制御盤91を備える。
【0153】
リーマ加工装置100a,100bは、
図1に示したリーマ加工装置と同様なので、説明を省略する。このリーマ加工装置100a,100bは、翼フォークを有するタービン動翼と、前記翼フォークが係合するディスクフォークを有するロータのディスクと、を同時にリーマ加工する加工部として機能する。
【0154】
施工装置181a,181bは、レーザピーニング施工により、ピン孔15内面に圧縮応力領域を形成するものである。この施工装置181a,181bは、レーザピーニング施工の場合は、
図5に示したレーザピーニング装置29と同様である。この施工装置181a,181bは、前記ロータを回転させ、前記ディスクを所定位置に位置決めするロータ回転部と、前記位置決めされた所定位置で前記翼フォークのピン孔内面および前記ディスクフォークのピン孔内面の少なくとも一方のピン孔内面に、ピーニングを施して圧縮応力領域を形成する施工部と、前記ピン孔内に液体を噴射する噴射部と、を具備する応力処理装置として機能する。
【0155】
乾燥装置182a,182bは、レーザピーニング施工後にピン孔15内に残留する切削材、液体またはその他の異物を吹き飛ばす作業を行う。この乾燥装置182a,182bは、
図29〜
図31のいずれかに示した乾燥装置130と同様である。この乾燥装置182a,182bは、前記ピン孔内に噴射された液体を乾燥する乾燥部として機能する。
【0156】
検査装置183a,183bは、レーザピーニング施工後のピン孔15内面の異物や施工範囲を確認する作業を行う。この検査装置183a,183bは、
図32に示した検査ヘッド145を備える検査装置と同様である。この検査装置183a,183bは、前記ピン孔内に形成された圧縮応力領域の画像を撮影し、前記画像に基づいて、前記圧縮応力領域を認識する認識部として機能する。
【0157】
ピン組立装置184a,184bは、圧縮応力領域が形成された翼フォーク11とディスクフォーク13のピン孔15にピンを挿入してタービン動翼10とディスク12を組み立てる作業を行う。このピン組立装置184a,184bは、前記タービン動翼と前記ディスクを組み立てる組立部として機能する。
なおこの他に、応力集中を緩和するために、リーマ加工後の翼フォーク11とディスクフォーク13のピン孔15の出入口部を面取り加工する装置を備えることも可能である。
【0158】
この施工システム176では、最終段落のディスク12aの同一円周上の異なる位置に、これら装置100a、181a〜184aをそれぞれ配列する。そして、制御盤91によって、これら装置100a、181a〜184aの駆動制御および作業管理を行う。この制御盤91は、これら装置100a、181a〜184aの異なる複数の作業を同時に実施する。
【0159】
また、この施工システム176では、最終段落のディスク12a,12bの同一円周上の異なる位置にこれら装置100a、181a〜184aおよび100b、181b〜184bをそれぞれ配列するとともに、タービン側のディスク12aとコレクタ側のディスク12bの対向する位置に同じ機能を有する装置100aと100b、181aと181b、182aと182b、183aと183b、184aと184bをそれぞれ配置する。そして、制御盤91によって、これら装置100a、181a〜184aおよび100b、181b〜184bの駆動制御および作業管理を行う。この制御盤91は、これら装置100a、181a〜184aおよび100b、181b〜184bの異なる複数の作業を同時に実施する。
【0160】
この施工システム176は、翼フォークを有するタービン動翼と、前記翼フォークが係合するディスクフォークを有するロータのディスクと、を同時にリーマ加工する加工部と、前記ロータを回転させ、前記ディスクを所定位置に位置決めするロータ回転部と、前記位置決めされた所定位置で前記翼フォークのピン孔内面および前記ディスクフォークのピン孔内面の少なくとも一方のピン孔内面に、ピーニングを施して圧縮応力領域を形成する施工部と、前記ピン孔内に液体を噴射する噴射部と、を具備する応力処理装置と、前記ピン孔内に噴射された液体を乾燥する乾燥部と、前記ピン孔内に形成された圧縮応力領域の画像を撮影し、前記画像に基づいて、前記圧縮応力領域を認識する認識部と、前記タービン動翼と前記ディスクを組み立てる組立部と、を具備し、前記ロータの同一円周上の異なる位置に前記各部位をそれぞれ配置し、または前記ロータの同一円周上の異なる位置に各部位をそれぞれ配置するとともに、タービン側の前記ディスクとコレクタ側の前記ディスクの対向する位置に同じ機能を有する前記各部位をそれぞれ配置する施工システムとして機能する。
【0161】
このように、本実施形態では、応力処理装置を用いてピン孔に圧縮応力領域を形成するので、蒸気タービンの動翼とディスクの結合部のピン孔内面の応力腐食割れの発生を防止するとともに、疲労強度を向上することができる。
【0162】
また、本実施形態では、圧縮応力領域を形成するための異なる作業を行う各装置を、組み合わせてディスクの同一円周上の異なる位置、またはディスクの対向する位置に配列し、各作業を行うので、各作業の同時実施が可能となり、作業時間や位置決め回数を削減できる。
【0163】
(実施形態19)
次に、施工管理インターロック機能、ペースメーカ機能について説明する。なお、これらの機能を実現する施工管理システムは、
図21に示したシステム構成と同様なので、
図21を用いて説明する。
【0164】
図21において、制御盤91は、レーザ照射履歴91a、装置移動履歴91bを記録する施工記録機能を有するとともに、これら履歴91a,91bをモニタ92に表示させて、これら履歴に基づく施工管理記録情報を作成し、施工管理記録91cする機能を有する。
【0165】
また、制御盤91は、施工の動作速度94や動作範囲95の検知、レーザピーニング装置29の検知(たとえばレーザパワー不足などの検知)、ポンプ貯液槽172のポンプの液体流量の検知、施工範囲の検知などを行う。そして、制御盤91は、これらの検知結果に異常があった場合には、応力処理装置24の駆動を停止し、異常部位をモニタ92に表示する施工管理インターロック機能を有する。
【0166】
なお、液体流量の検知は、流量検知バルブによって行われ、液体流量が規定量に満たない場合には、レーザ光の照射位置での不純物や異物を除去できずに、レーザパワーが規定条件を下回ることが考えられる。このため、流量低下の場合は、応力処理装置24に指令し、モニタ92に異常を表示させる必要がある。
【0167】
このように、本実施形態では、上述した効果を有するとともに、異常を検知して応力処理装置の駆動を停止する施工管理インターロック機能を有するので、装置の安全性を向上できる。
【0168】
また、実施形態17で示したディスク12a円周上の異なる位置やタービン側のディスク12aとコレクタ側のディスク12bの対向する位置に応力処理装置を複数配列し、施工を同時に行う。
【0169】
この場合、
図21に示した制御盤91が各応力処理装置の施工記録機能を有し、上記情報を集約管理することが可能である。そして、制御盤91は、相互の作業完了予測時間を求めて、この予測時間をモニタ92に表示させるペースメーカ機能と目標工程に対する作業実績を表示させる表示機能を有することも可能である。
【0170】
このように本実施形態では、上述した効果を有するとともに、相互の作業完了を予測するペースメーカ機能を有するので、作業効率を向上させることが可能である。
【0171】
(実施形態20)
図38は、本発明の実施形態20に係る応力処理装置のヘッド先端部46の要部断面図である。
図39は、
図38のX−X断面を示す断面図である。
図40は、
図38に示した支持部200を示す斜視図である。
【0172】
気中において、ヘッド先端部46の光ファイバ42の先端を固定しないで管状部材45内に大量の液体を噴射させると、光ファイバ42の先端がその水流の勢いで振動してしまい、レーザ光が施工対象位置aからずれてしまう。また、この振動を防ぐために、この管状部材45内に少量の液体を噴射させると、勢いが弱くなりこの液体による液体膜が良好に生成されず、レーザエネルギーをこの液体膜のみに封印することができない。
【0173】
そこで、本実施形態では、
図38、
図39に示すように、光ファイバ42の先端を支持する支持部200をヘッド先端部46内に固設する。この支持部200は、光ファイバ42の芯線42aを支持する支持部材201と、支持部材201の周方向に等間隔に配置され、この支持部材201とヘッド先端部46の内周面を結合する、例えば3つの結合部材202とからなる。これら支持部材201と結合部材202は一体的に形成されている。なお、結合部材202は、3つに限らず、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0174】
図40に示すように、中心部材201は、長手方向の長さが結合部材202の長手方向の長さと同一で、かつ中空の円筒形状に構成され、光ファイバ42の芯線42aを中心軸として内部に挿入することで支持している。結合部材202は、長方体からそれぞれ構成され、ヘッド先端部46内の3点に固定され、結合部材202間には、空隙が形成されて液体が流通可能になっている。
【0175】
この支持部200は、ヘッド先端部46に固定されているので、このヘッド先端部46が回転する時に、ヘッド先端部46と伴に回転する。この時、光ファイバ42は、支持部200に支持された状態で回転はしない。
【0176】
この状態で、管状部材45内に多くの流量の液体が噴射されると、液体は結合部材202間の空隙を介して施工対象位置aに流れるが、光ファイバ42の先端は支持部200に支持されているので、水流によって振動することが防がれ、レーザ光を施工対象位置aに的確に照射することができる。この支持部200は、前記光ファイバを支持する支持部材201と、前記支持部材201の周囲に設けられ、前記支持部材201と前記ピン孔内とを結合する複数の結合部材202とを有し、前記結合部材202間に形成された空隙を介して前記噴射部から噴射された液体を流通可能に機能する。
【0177】
このように、本実施形態では、光ファイバの先端を、ヘッド先端部に固定された支持部に支持させるので、多くの流量の液体を管状部材内に噴出し、良好な液体膜を生成でき、かつレーザエネルギーをこの液体膜内にのみ封印して、ピン孔内面の施工対象位置にレーザピーニングを施して圧縮応力領域を形成することができる。
【0178】
なお、ヘッド先端部46に形成された開口部46aは、反射ミラー47から出射されるレーザ光Bが楕円であるため、楕円形状であることが好ましい。さらに、たとえばこの開口部46aの長径(ヘッド先端部46の長手方向の径)は、3〜10[mm]、短径(ヘッド先端部46の短手方向の径)は、2〜6[mm]程度に設定するのが好ましい。
【0179】
また、本願発明は、上記実施形態に限らず、例えば構造体、例えば航空機ボディー等のファスナー穴(リベット穴)やディーゼルエンジンのシャフトのオイル噴出し穴や車の車軸等の工業製品等の高サイクル疲労対策、さらに金型の冷却穴等の応力腐食割れ対策に使用可能である。
【0180】
また、上記実施形態では、気中にて応力処理を行う場合について説明したが、本願発明はこれに限らず、液中にても上記応力処理を行うことが可能である。
【0181】
なお、本願発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の発明を構成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。