(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、極薄のTiN単層バリア膜を有し、TiN膜の上にAlを埋め込むことにより、トレンチ開口部の減少を抑制し、Al拡散を抑制できるバリア膜を用いることにより、トレンチ部へのAl埋め込み工程を有する電子部品の製造方法を見出した。
【0015】
図1に、本発明における窒化チタン膜の第1の工程及びAl膜の第2の工程に用いられる装置の概略を示す。本発明の実施形態に係る半導体製造装置100は、
図1に示すように、上部電極401と下部電極301とを有するチャンバ201を備えている。チャンバ201は真空処理容器として機能するものであり、排気口205には、チャンバ201内を排気する真空用排気ポンプ410が接続されるとともに、自動圧力制御機構(APC)431が設けられている。また、チャンバ201内には、上部電極1と下部電極301が設けられている。上部電極には、整合器101を介して上部電極用高周波電源102とDC電源103が接続されている。また、下部電極301には、整合器304を介して下部電極用高周波電源305が接続されている。
【0016】
チャンバ201は略円柱状となっており、略円盤状の上部壁(天井壁)202と、略円
筒形の側壁203と、略円盤状の底壁204とから構成されている。チャンバ201内の
側壁203付近には、圧力を測定するための圧力計430(例えば、ダイヤフラムゲージ)
が設けられている。圧力計430は、自動圧力制御機構431と電気的に接続されており、チャンバ201内の圧力を自動制御できるように構成されている。
【0017】
上部電極401は、上部壁202と、磁石機構5と、ターゲット電極(第1の電極)402と、絶縁体404と、シールド403とから構成されている。磁石機構405は上部壁202の下方に設けられており、磁石機構405の下方にはターゲット電極402が設けられている。また、絶縁体404は、ターゲット電極402とチャンバ201の側壁とを絶縁するとともに、ターゲット電極402をチャンバ201内に保持するためのものである。さらに、絶縁体404の下方には、シールド403が設けられている。なお、ターゲット電極402は、整合器101を介して、上部電極用高周波電源102とDC電源103に接続されている。ターゲット電極402の主要部品は、Al、SUS、Cuなどの非磁性金属から構成されている。ターゲット電極402の減圧側には、基板306上に成膜するのに必要な材料ターゲット材(不図示)を設置することができる。また、上部電極401やターゲット電極402の中には配管が形成されており、この配管に冷却水を流すことによって、上部電極401やターゲット電極402を冷却することができる。
【0018】
磁石機構405は、マグネット支持板407と、マグネット支持板407に支持された複数のマグネットピース406と、複数のマグネットピース406の最外周側に設けられた磁場調整用磁性体408とから構成されている。なお、磁石機構5は、不図示の回転機構により、材料ターゲットの中心軸を回転軸として回転可能となっている。複数のマグネットピース406は、ターゲット電極402の上方であって、ターゲット電極402の表面と平行となるようにして、相互に隣接して配置されている。隣接するマグネットピース406には、プラズマを閉じ込めるために、閉じたポイントカスプ磁場411が形成されている。磁場調整用磁性体408は、外周側に位置するマグネットピース406が、ターゲット電極402側において部分的に重なるようにして延設されている。このような構成とすることにより、ターゲット電極402とシールド403の隙間において、磁場強度を抑制(制御)することできる。
【0019】
下部電極301は、ステージホルダ302と、冷却・加熱機構412と、底壁204と、
第2の電極用絶縁体303とから構成されている。ステージホルダ302は、基板306
を載置するための装置であり、その内部には冷却・加熱機構412が設けられている。第2の電極用絶縁体303は、ステージホルダ302とチャンバ201の底壁204とを電気的に絶縁して支持するための装置である。また、ステージホルダ302には、整合器304を介して下部電極用高周波電源305が接続されている。なお、図示していないが、ステージホルダ302には、単極型電極を有する静電吸着装置が設けられており、この単極型電極は、DC電源(不図示)と接続されている。さらに、図示していないが、ステージホルダ302には、基板306の裏面に対して、基板306を温度制御するためのガス(例えば、Arなどの不活性ガス)を供給するため、複数のガス噴出口と、基板の温度を測定するための基板温度計測器が設けられている。
【0020】
チャンバ201内には、アルゴン等のプロセスガスをチャンバ201内に供給するため
の複数のガス導入口409が設けられている。
図2を参照して、磁石機構405の形状について詳細に説明する。
図2は、磁石機構405をターゲット電極402側から見た平面図である。
図2に示すように、円盤状のマグネット支持体407には、環状の磁場調整用磁性体408と、磁場調整用磁性体408の内周領域に配置されたマグネットピース406とが、支持されて設けられている。ここで、
図3において、記号403aはシールド403の内径を示しており、多数の小さな円は各々のマグネットピース406の外形を示している。また、各マグネットピース406は、同じ形状及び同じ磁束密度を有している。さらに、N及びSの文字はターゲット電極402側から見たマグネットピース406の磁極を示している。
【0021】
マグネットピース406は、互いに略同一の間隔(5乃至100mmの範囲)を空けて、碁盤の目状(X軸方向、Y軸方向)に配置され、隣接する各マグネットピース406は、反対の極性を有している。一方、X軸方向及びY軸方向に沿って配置された任意の4つのマグネットピース406からなる四角形において、対角線方向に沿って隣接するマグネットピース406の極性はそれぞれ同一である。すなわち、隣接する任意の4つのマグネットピース406により、ポイントカスプ磁場411(Point−Cusp Magnetic Field;以下PCM)が形成される。
【0022】
マグネットピース406の高さは、通常は2mmよりも大きくなっており、その断面形状は四角または円形である。マグネットピース406の直径や高さ、材質は、プロセスアプリケーションによって、適宜設定することができる。半導体製造装置100の上部電極1に高周波電力を供給したとき、プラズマは容量結合型のメカニズムによって生成される。このプラズマは、閉じたポイントカスプ磁場411によって作用を受ける。
磁場調整用磁性体408は、外周側に位置するマグネットピース406が、ターゲット電極402側において、部分的に重なるように延設されている。これにより、ターゲット電極402とシールド403との隙間において、磁場強度を抑制(制御)することできる。磁場調整用磁性体408は、ターゲット電極402とシールド403の隙間の磁場強度を制御できる材料であればよく、例えば、SUS430等の透磁率が高い材料が好ましい。磁石機構405において、マグネットピース406と磁場調整用磁性体408とが重なる面積を調整することにより、磁場調整することが可能である。すなわち、マグネットピース406と磁場調整用磁性体408とが重なる面積を調整すると、ターゲット電極402の最外周まで、ターゲット電極402をスパッタするのに必要な磁場を供給し、ターゲット電極402とシールド403との隙間には、磁場強度を調整することができる。
【0023】
図3は、低圧力スパッタと高圧力スパッタの粒子輸送過程とトレンチ453に成膜されたスパッタ膜の形状の説明図である。
図3(a)(b)に示すように、低圧力スパッタでは、基板到着までの間にスパッタの粒子の衝突による散乱が起こらないため、
図3(a)の基板端部と
図3(b)の基板中心部にスパッタ膜形状に偏りが生じてしまう。しかし、本発明の
図1の装置を用いて高圧力でスパッタした場合、
図3(c)(d)に示すように、基板306にスパッタ粒子450が到達するまでの間にスパッタ粒子の衝突による散乱によって容器内に広がり、基板上306でのシース加速451によって、スパッタ粒子が入射するため、基板全面のトレンチ453において、対称性の良い被覆形状を有するスパッタ膜452を堆積することができ、さらに側壁への成膜を抑制することができる。ここで、454は下地基板である。
図4に、開口径32nm及び15nmの微細なトレンチの開口径にCVD法を用いて各種材料を積層するゲートラスト形成技術の説明図を示す。微細なトレンチ構造601には、予め形成された下地絶縁膜602がある。下地絶縁膜602上に、高誘電率絶縁膜603を形成する。さらに、動作電圧を制御するための金属窒化膜A604、金属窒化膜B605、金属窒化膜C606、金属膜607、埋め込みのためのバリア膜608、Seed−Al膜609を形成する。これらの各種材料をCVD法で形成した場合は、トレンチ部の底面だけでなく、側壁にも均等に膜が形成できるが、一方では成膜膜厚を厚くするとトレンチ開口部を狭くしてしまうことが解る。このため、15nmの微細なトレンチにおいては、各層の膜厚を薄くしないと開口部を塞いでしまう。そのため、バリア性を必要とするバリア下地層を厚くする必要がある場合においては、充分な膜厚を成膜できない。一方、本発明の
図1に示すPCMスパッタ装置100を用いて各種材料を積層するゲートラスト形成技術の説明図を
図5に示す。微細なトレンチ構造601には、予め形成された下地絶縁膜602がある。下地絶縁膜602上に、高誘電率絶縁膜603を形成する。さらに、動作電圧を制御するための金属窒化膜A701、金属窒化膜B702、金属窒化膜C703、金属膜704、埋め込みのためのバリア膜705を形成する。本発明の装置では、側壁へのスパッタ膜の形成を抑制することができるため、
図4に示したCVD法に比べて、トレンチ開口部を狭くすることなく各種材料を形成することができる。そのため、32nmトレンチと同じ膜厚でも15nmの微細パターンへ成膜ができる。従って、トレンチのサイズが微細化しても最適化された各種材料の膜厚を変更することなく形成することができる。さらに、本発明の装置を用いたバリア膜は、単層膜であるため、積層構造の層数を減少することができる。
【0024】
図6は、本発明の実施例である金属膜を埋め込む工程を有する電子部品の製造方法に用いた半導体製造装置500である。半導体製造装置500は、第1の工程及び第2の工程を処理する窒化チタン膜を形成するチャンバ501とAl埋め込みを行うチャンバ502と、その他の多種金属材料を成膜できるように取り付けられた金属膜を形成するチャンバ503、504、505を備え、501から505の各装置に基板を大気に晒すことなく搬送可能な真空搬送装置を備えたトランスファチャンバ506を備え、基板を大気から真空中に搬送するためのロードロックチャンバ507を備えている。尚、チャンバ501、502、503、504、505は
図1に示す本発明のPCMスパッタ装置である。本半導体製造装置500を用いることにより、基板を大気に晒すことなく連続的に処理を行うことができるため、界面への水分や炭素、酸素等の不純物の吸着を抑制することができる。そのため、各装置で形成された膜の特性を変えることなく、次の工程に基板を搬送することができる。なお、半導体製造装置500は、CPUなどの演算処理装置を備えたコントローラ(不図示)を備え、予め定められたプログラムに従って各処理装置501〜507に指示信号を出力することで、被処理基板に対し所定の処理を実行する。なお、各処理装置501〜507は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御装置(不図示)を夫々備えており、コントローラから出力された指示信号に従って、マスフローコントローラ、排気ポンプなどの装置を制御する。
【0025】
図7に、従来及び本発明の工程フローを示す。従来のAl埋め込み工程は、Alの拡散を抑制するため、積層したバリア膜形成工程810を用いており、さらにAlのマイグレーションを促進するためのSeed−Al層形成工程811を行い、その後、高温のAl埋め込み工程812を行う。しかし、本発明の装置を用いたAl埋め込み工程は、第1の工程の単層バリア膜形成工程815、その上に直接的にSeed−Alを用いずAl埋め込み形成工程816を行っても完全な埋め込み性能を得ることができる。第1の工程815におけるTiN単層バリア膜の堆積は、ターゲットは、Tiの金属ターゲットを用い、基板温度30℃、TiのターゲットRFパワーを1500W、DC電圧を430Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を70sccmとして、反応性ガスである窒素の供給量を30sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、成膜形状を制御するため、基板電極にRFパワー50Wに設定し成膜を行った。さらに、材料の比較検討のため、Ti単層バリア膜の堆積は、基板温度30℃、TiのターゲットRFパワーを1500W、DC電圧を430Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、成膜形状を制御するため、基板電極にRFパワー50Wに設定し成膜を行った。次に、第2の工程816におけるAlの堆積は、基板温度400℃、AlのターゲットRFパワーを3000W、DC電圧を100Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、トレンチ底部への成膜膜厚量を増やすため、基板電極にRFパワー200Wに設定し成膜を行った。ここで、高周波電源の周波数は、10−100MHzの間であることが好ましい。さらに望ましくは、上記圧力において、ポイントカスプ磁場を用いた高密度プラズマを形成するために、40−60MHzの間であることが、望ましい。
【0026】
図8は、本発明の
図1、
図6に記載のPCMスパッタ処理装置を用いてAl埋め込み特性を確認した結果である。Al埋め込み特性は、SEM(Secondary Electron Microscopy;電子顕微鏡)による分析により評価した。
図8(a)は、第1の工程であるTi単層バリア膜の堆積を10nm成膜した後、第2の工程であるAl埋め込みを行った結果である。
図8(b)は、第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積を10nm成膜した後、第2の工程であるAl埋め込みを行った結果である。
図8(a)では、トレンチ部へのAlの埋め込みができておらず、空洞(以下Void)が多く見られている。
図8(b)では、トレンチ部へ完全にAlの埋め込みができており、Voidの発生は見られなかった。これは、Ti単層バリア膜では、Al埋め込みにおいてTiとAlの反応が起こり、合金化が促進され、Alのマイグレーションを抑制していることが考えられる。従って、本発明のTiN単層バリア膜を用いることにより、合金化が抑制され、Alのマイグレーションを促進することができることを示している。
【0027】
図9(a)は、第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積を10nm成膜した後、大気に晒した後、第2の工程であるAl埋め込みを行った結果である。
図9(b)は、第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積を10nm成膜した後、大気に晒した後、再度第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積を10nm成膜した後、大気に晒すことなく第2の工程であるAl埋め込みを行った結果である。
図9(c)は、第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積を10nm成膜した後、大気に晒すことなく第2の工程であるAl埋め込みを行った結果である。
図9(a)では、トレンチ部へのAlの埋め込みができておらず、Voidが見られている。
図9(b)では、
図9(a)と比べて埋め込みができているトレンチ部が見られているが、Voidが発生している。
図9(c)では、トレンチ部へ完全にAlの埋め込みができており、Voidの発生は見られなかった。これは、TiN膜を大気に晒すことにより、大気暴露に伴い、大気中の水分やカーボン汚染が起こり、高温でAlを成膜する際のAlのマイグレーションが妨げられたことが考えられる。従って、第1の工程と第2の工程を、別々の真空容器を用いて行う場合は、大気に暴露することなく搬送され、実行されることが好ましい。
【0028】
次に、第1の工程と第2の工程を一般的に用いられているマグネトロンスパッタ装置(以下STD装置)を用いて比較検討を行った結果を
図10に示す。
図10(a)は、第1の工程をSTD装置にて基板温度を室温として圧力10PaでTiN成膜を10nm行い、第2の工程を基板温度400℃としてSTD装置にてAl埋め込みを行った結果である。トレンチ部へのAlの埋め込みができておらず、Voidが見られている。
図10(b)は、第1の工程を本発明の処理装置にて基板温度を室温として圧力10PaでTiN成膜を10nm行い、第2の工程を基板温度400℃としてSTD装置にてAl埋め込みを行った結果である。
図10(a)に比べてAlの埋め込みができているが、トレンチ底部にVoidが発生している。
図10(c)は、第1の工程を本発明の処理装置にて室温として圧力10PaでTiN成膜を10nm行い、第2の工程を本発明の処理装置にて基板温度400℃としてAl成膜を行った結果である。
図10(b)に比べてAlの埋め込み特性は改善されているが、Voidの発生が見られている。
図10(d)は、第1の工程を本発明の処理装置にて基板温度を400℃として圧力10PaでTiN成膜を10nm行い、第2の工程を本発明の処理装置にて基板温度400℃としてAl成膜を行った結果である。TiN成膜温度を400℃としても
図10(c)と同様にVoidの発生が見られている。
図10(e)では、第1の工程を本発明の処理装置にて基板温度を室温として圧力100PaでTiN成膜を10nm行い、第2の工程を本発明の処理装置にて基板温度400℃としてAl成膜を行った結果である。トレンチ部へ完全にAlの埋め込みができており、Voidの発生は見られなかった。
【0029】
次に、第1の工程のTiN単層バリア膜に関して調べた結果について説明する。
図11にTiN単層バリア膜の表面粗さ(Ra)をAFM(Atomic Force Microscopy;原子間力顕微鏡)法により分析した。
図11に示すように、STD処理装置を用いて室温として圧力10Paで堆積したTiN単層バリア膜の表面粗さ(Ra)は、0.479nmであるが、本発明の処理装置を用いて基板温度を室温として圧力10Paで堆積したTiN単層バリア膜表面粗さ(Ra)は、0.162nmと小さく、平坦性が良いことが解る。さらに、本発明の処理装置を用いて基板温度を400℃として圧力10Paで堆積したTiN単層バリア膜表面粗さ(Ra)は、0.091nmとなっており、室温で成膜した場合よりも、平坦性が改善されていることが解る。さらに、本発明の処理装置を用いて基板温度を室温として100Paで堆積したTiN単層バリア膜表面粗さ(Ra)は、0.073nmと最も小さいことも解った。一般的に金属原子の表面マイグレーションは、表面粗さが小さい方が大きい。しかし、
図10(c)と
図10(d)では、Al埋め込み特性の改善は見られておらず、平坦性の影響は少ないと考えられる。また、第1の工程における真空容器内の圧力は、TiN単層バリア膜の表面粗さを小さくするため、1Pa以上、200Pa以下が好ましく、さらに好ましくは、10Pa以上、100Pa以下が好ましい。
【0030】
次に、第1の工程であるTiN単層バリア膜の結晶配向性に関して調べた結果について説明する。
図12(a)にTiN単層バリア膜の結晶配向性をXRD(X−ray Diffraction;X線回折)法により分析した。
図12(a)に示すように、STD処理装置を用いて堆積したTiN単層バリア膜は、本発明の処理装置を用いて堆積したTiN単層バリア膜よりもC(111)、C(200)、C(220)配向が弱い膜となっていることが解る。このC(220)配向のピーク強度をC(111)のピーク強度で規格化した比率を
図12(b)に示す。この結果から、STD処理装置を用いて堆積したTiN単層バリア膜は、本発明の処理装置を用いて堆積したTiN単層バリア膜よりも最もC(220)/C(111)比率が小さく、0.5〜0.7程度である。本発明の処理装置を用いて基板温度を室温として圧力10Paで成膜した場合と基板温度を400℃として圧力10Paで成膜した場合のTiN単層バリア膜の結晶配向性は同等である。さらに、本発明の処理装置を用いて基板温度を室温として圧力100Paで成膜した場合では、最もC(220)/C(111)比率が大きくなることが解った。この結果と
図10(e)の結果から、C(220)の配向性がAl埋め込み特性を改善すると考えられる。このことから、TiN単層バリア膜の結晶性は、C(220)/C(111)比率が0.7以上であることが好ましい。また、第1の工程における真空容器内の圧力は、TiN単層バリア膜の結晶配向性を得るため、1Pa以上、200Pa以下が好ましく、さらに好ましくは、10Pa以上、100Pa以下が好ましい。また、結晶配向性が弱いとバリア性が劣化し、第2の工程であるAl埋め込みにおいて、TiN膜より下層にまでAlが拡散する。そのため、MOSFET電極形成においては、MOSFETの特性劣化が発生してしまう。さらに、
図13に示すように、STD処理装置で成膜したTiN単層バリア膜は、比抵抗値が高い。比抵抗が高い場合、電極膜とのコンタクト抵抗が高くなるため、消費電力の劣化等のMOSFET特性の劣化が発生する。一方、本発明の処理装置で成膜したTiN単層バリア膜は、50Pa、100Paでは高くなっているが、STD処理装置よりも低いことが解った。これは、STD処理装置で高圧成膜を行った場合では、スパッタ粒子の衝突確率が増加し活性化が不充分となり、結晶化や反応に必要なエネルギーを失われてしまうためと考えられる。しかし、本発明の処理装置では、高密度プラズマが形成されており、スパッタ粒子の衝突確率が増加しても充分に活性化されたスパッタ粒子が表面に到達するため、抵抗値を増加させることなく、結晶性が良いTiN単層バリア膜を形成することができると考えられる。
図14(a)は、第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積をSTD装置と本発明の処理装置で行い、TiN単層バリア膜のトレンチ底部に堆積した膜厚とトレンチ上部に堆積した膜厚の比率の圧力依存性を調べた結果である。
図14(b)は、第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積をSTD装置と本発明の処理装置で行い、TiN単層バリア膜のトレンチ側壁部に堆積した膜厚とトレンチ上部に堆積した膜厚の比率の圧力依存性を調べた結果である。
図14(a)より、STD装置では、圧力を高くしてもトレンチ底部の堆積膜厚比率(Bottomカバレッジ率)増加は見られないが、本発明の処理装置では、圧力4Paでは40%であるが、10Pa以上に圧力を高くすることにより顕著にトレンチ底部の堆積膜厚比率が60%以上に増加することが確認された。また、トレンチ底部の堆積膜厚を増加させるためには、10Pa以上、100Pa以下が好ましい。また、
図14(b)より、トレンチ側壁部の堆積膜厚比率(Sideカバレッジ率)は、どちらの装置でも同等である。この結果から、
図10の結果は次のように考察できる。
図15は、トレンチ構造801に第1の工程の単層TiNバリア膜802を堆積し、第2の工程のAl埋め込み803を行った場合の説明のための概略図である。
図15(a)に示すように、第2の工程のAl埋め込みにおいて、STD装置を用いた場合、トレンチ底部に形成されるAlの膜厚が薄いため、上部よりAlがマイグレーションしても充分なAl埋め込みができず、Void804を発生することが考えられる。一方、
図15(b)に示すように、本発明の処理装置を用いた場合、トレンチ底部に形成されるAlの膜厚が厚く、且つ上部よりAlがマイグレーションするため、完全なAl埋め込みができると考えられる。また、第1の工程と第2の工程における真空容器内の圧力は、トレンチ底部への成膜量を増やすため、1Pa以上、200Pa以下が好ましく、さらに好ましくは、10Pa以上、100Pa以下が好ましい。
【実施例】
【0031】
<実施例1>
本発明の第1の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図15(b)は、
図1、
図6に示す本発明のPCMスパッタ装置を用いてトレンチ構造へ第1の工程のTiN単層バリア膜を形成し、第2の工程のAl埋め込みを示した図である。まず、トレンチ構造にTiN単層バリア膜を堆積した。ターゲットは、Tiの金属ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンおよび窒素を用いた。次に、TiN単層バリア膜上にAl埋め込みを行った。ターゲットは、Alの金属ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンを用いた。
【0033】
基板温度は25℃〜500℃、ターゲットパワーは100W〜5000W、スパッタガス圧は1Pa〜200Pa、Arガス流量は10sccm〜500sccm、窒素ガス流量は1sccm〜100sccm、の範囲内で適宜決定することができる。
【0034】
第1の工程におけるTiN単層バリア膜の堆積は、Tiの金属ターゲットを用い、基板温度30℃、TiのターゲットRFパワーを1500W、DC電圧を430Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を70sccmとして、反応性ガスである窒素の供給量を30sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、成膜形状を制御するため、基板電極にRFパワー50Wに設定し成膜を行った。上述の形成工程を用いてTiN膜を膜厚3nm〜10nmの範囲で成膜した。次に、第2の工程におけるAlの堆積は、基板温度400℃、AlのターゲットRFパワーを3000W、DC電圧を100Vに設定し、不活性ガスとしてArを用い、Arの供給量を100sccmとして、チャンバ内圧力を自動調整機により10Paとして成膜を行った。また、トレンチ底部への成膜膜厚量を増やすため、基板電極にRFパワー200Wに設定し成膜を行った。
【0035】
<実施例2(ゲートラスト方式に適用した実施例)>
以下に本発明の第2の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図16(a)〜(f)は本発明の第2の実施例である半導体装置の製造方法の工程を示した図である。本実施形態では、第1の領域であるN型MOSFETを形成する領域と第2の領域であるP型MOSFETを形成する領域とのそれぞれに対して、第1の実施形態における第1の工程であるTiN単層バリア膜の堆積と第2の工程であるAl埋め込み工程を行い、それぞれに適した実効仕事関数を実現する金属ゲート電極を形成する。
図16(a)に示すように、第2の実施例と同様の方法を用いて、第1のN型MOSFETを形成する領域と第2のMOSFETを形成する領域にトレンチ構造901と902を形成する。次に、
図16(b)に示すように、トレンチ構造の内部を被覆するように、本発明におけるスパッタ処理装置を用いて金属窒化膜B903と金属窒化膜C904を形成する。
次に、
図16(c)に示すように、リソグラフィー技術とエッチング技術を用いて第1のN型MOSFETを形成する領域におけるトレンチ構造901の底部を構成する金属窒化膜Bと金属窒化膜Cを除去する。本実施形態では、金属窒化膜Bは硫酸と過酸化水素水と水の混合溶液を用いてウエットエッチングを行い、金属窒化膜Cは、Arプラズマによるエッチングにより除去した。
【0036】
次に、
図16(d)に示すように、トレンチ構造の内部を被覆するように、本発明におけるスパッタリング方法を有する
図6に示した半導体製造装置にて、チャンバー503に基板を搬送して金属合金膜905を形成した。
次に、
図16(e)に示すように、本発明の工程である第1の工程であるTiN単層バリア膜を堆積するためにチャンバー501に基板を搬送して堆積し、さらに第2の工程であるAl埋め込みを行うためにチャンバー502に基板を搬送してAl埋め込みを行い金属膜906を形成し、その後、CMP技術を用いて平坦化を行い
図16(f)に示される構造を形成した。尚、Alからなる金属膜を形成する工程において、基板温度を300℃〜400℃に設定することで金属合金膜905は、少なくともN型MOSFETを形成する領域における金属窒化膜900中を拡散し、N型MOSFETに適した実効仕事関数を達成することができる。一方、P型MOSFETを形成する領域においては、金属窒化膜Bと金属窒化膜CがAlの拡散を抑制するためP型MOSFETに適した実効仕事関数を維持することができる。このP型MOSFETの実効仕事関数を調べた結果を
図17に示す。
図17は、上述の各種金属材料の積層工程を完了した後、Al埋め込みを形成直後と、450℃の熱処理を施した後の実効仕事関数を調べた結果である。ここでは、TiN単層バリア膜厚を3nm、5nmとして評価した。TiN単層バリア膜中にAlの拡散がある場合、実効仕事関数は低下することが解っているが、
図16に示すように、450℃の加熱を行っても大きな実効仕事関数の低下は見られていない。これは、本発明の処理装置を用いたTiN単層バリア膜は、Alの拡散に対するバリア性が良いことを示している。作製した素子の、実効仕事関数、EOT、リーク電流特性を測定した結果、本発明におけるAl埋め込み方法を用いることで、EOTの増加を招くことなく、それぞれのMOSFETに適した実効仕事関数(N型MOSFETでは4.4eV以下、P型MOSFETでは4.6eV以上)が得られることを確認した。