特許第5649446号(P5649446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5649446-ネットワークオーディオプロセッサ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649446
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ネットワークオーディオプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20141211BHJP
   G10K 15/02 20060101ALI20141211BHJP
   G10L 21/034 20130101ALI20141211BHJP
   G10L 21/0364 20130101ALI20141211BHJP
   G10L 21/057 20130101ALI20141211BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20141211BHJP
   H04R 29/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   H04R3/00 310
   G10K15/02
   G10L21/02 301B
   G10L21/02 302B
   G10L21/04 200C
   H04R3/04
   H04R29/00 310
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-520978(P2010-520978)
(86)(22)【出願日】2008年7月17日
(65)【公表番号】特表2010-537483(P2010-537483A)
(43)【公表日】2010年12月2日
(86)【国際出願番号】US2008008735
(87)【国際公開番号】WO2009025705
(87)【国際公開日】20090226
【審査請求日】2011年6月29日
【審判番号】不服2013-21873(P2013-21873/J1)
【審判請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】60/964,978
(32)【優先日】2007年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リー,ブレット,エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ケン
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 関谷 隆一
【審判官】 萩原 義則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−369281(JP,A)
【文献】 特開昭57−99047(JP,A)
【文献】 特開2005−191851(JP,A)
【文献】 特開平9−233591(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/050754(WO,A2)
【文献】 特開2002−247697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生されたオーディオコンテンツ信号を受信する第一の手段と、
周辺雑音に従ってマイクロフォンの出力信号を供給するマイクロフォンと、
前記再生されたオーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォンの出力信号をイネーブルにし、前記再生されたオーディオコンテンツ信号がオンであるとき、第二の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォンの出力信号をディスエーブルにする第二の手段と、
前記第一及び第二の手段と通信するシグナルプロセッサとを有し、
前記シグナルプロセッサは、前記マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに増加し、前記マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに減少する伝達関数を前記再生されたオーディオコンテンツ信号に適用し、イコライゼーションカーブを前記オーディオコンテンツ信号に適用して、子音認識を向上し且つ音声の理解度を高める声域における周波数成分を強調する、
ネットワークオーディオ処理回路。
【請求項2】
前記シグナルプロセッサは、前記オーディオコンテンツ信号に遅延を加える、
請求項1記載のネットワークオーディオ処理回路。
【請求項3】
遅延されたオーディオコンテンツ信号は、当該オーディオ処理回路が統合されるスピーカの代わりに、前記オーディオコンテンツ信号に関連するコンテンツプレイアウト装置から発生されるように知覚される、
請求項2記載のネットワークオーディオ処理回路。
【請求項4】
入力と出力とを有する少なくとも1つの増幅器を更に有し、前記増幅器の入力は、前記シグナルプロセッサの出力信号に結合され、前記増幅器の出力は、スピーカの入力に結合される、
請求項記載のネットワークオーディオ処理回路。
【請求項5】
前記シグナルプロセッサは、それぞれのスピーカが前記ネットワークオーディオ処理回路に接続されているか、又は前記それぞれのスピーカが適切に動作することができないかを判定するために前記少なくとも1つの増幅器と通信する、
請求項4記載のネットワークオーディオ処理回路。
【請求項6】
周辺雑音の存在下で再生されたオーディオコンテンツ信号の理解度を向上する方法であって、
前記再生されたオーディオコンテンツ信号を受信するステップと、
マイクロフォン出力信号を提供するマイクロフォンを使用して周辺雑音信号をモニタするステップと、
前記マイクロフォン出力信号が再生されたコンテンツ信号成分を含むことなしに周辺雑音信号成分を含むように、前記再生されたオーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォン出力信号をイネーブルにし、前記再生されたオーディオコンテンツ信号がオンであるとき、第二の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォン出力信号をディスエーブルにするステップと、
前記マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに増加し、前記マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに減少する第一の伝達関数を前記再生されたオーディオコンテンツ信号に適用するステップと、
イコライゼーションカーブを前記オーディオコンテンツ信号に適用して、子音認識を向上し且つ音声の理解度を高める声域における周波数成分を強調するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
前記インクリメンタルな利得の調節は、約1dBと約10dBの間のステップである、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記オーディオコンテンツ信号に遅延を加えるステップを含む、
請求項6記載の方法。
【請求項9】
それぞれのスピーカが接続されているか、又はそれぞれのスピーカが適切に動作することができないかを判定するための問い合わせを開始するステップを含む、
請求項6記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声処理に関し、より詳細には、ネットワーク化されたオーディオ環境におけるオーディオレベルを制御する方法及び装置に関する。
本出願は、2007年8月16日に提出された米国特許仮出願第60/964,978号“Network Audio Processor”の利益を特許請求するものであり、この米国特許仮出願は、その完全な形で引用により本明細書に盛り込まれる。
【背景技術】
【0002】
スピーカシステムの設計及び実装の分野では、たとえばスピーカはどのようなタイプを使用すべきか、スピーカはどの位大きくあるべきか、スピーカはどのような周波数応答を有するべきか等の決定において、多くの要素が決定的な役割を果たす。これらの要素のうちの重要なもののうちの1つは、スピーカが動作しなければならない環境である。特に、スピーカの作動領域を囲んでいる周辺雑音の周波数及び振幅が考慮される必要がある。
【0003】
今日の従来型のスピーカは、周辺雑音が時間を通して大きく変化する商業及び小売店の環境におけるオーディオ又はオーディオ/ビデオの広告を提供するために利用される。オーディオの分野において、オーディオコンテンツ信号から導出された、係る環境における再生された音声又は楽音の理解度は、周辺雑音の音量に対する再生音の音量の割合により強く影響されることが知られている。したがって、理解度は、周辺雑音の音量の関数として再生音の音量を直接的に変えるやり方でオーディオコンテンツ信号を処理することで高められる。さらに、聴覚科学の分野では、ライブの音声及び周辺雑音の信号成分の両者を含む補聴器のマイクロフォン出力信号の理解度は、減少する係る音声及び雑音信号の振幅に応答して、圧縮されたゲインと増加する周波数フィードバックの両者を導入する信号処理を通して強調されることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
係る従来型のスピーカシステムは、変化する周辺雑音の関数として、振幅の補償を線形及び直接的に提供する。この線形な補償は、伝達関数である。しかし、線形の伝達関数は、少なくとも小売店及び他の商業の環境について最適ではなく、この環境は、周辺雑音において頻繁且つ多種多様な変化を一般に示す。これは、従来型の補償されるスピーカ出力信号が、リスナを悩ませる可能性があるサウンドレベルにおける相応の頻繁且つ多種多様な変化を与えるからである。係るように、周辺雑音における係る頻繁且つ多種多様な変化の関数として、直接的であるが、インクリメンタルな振幅の補償を提供するスピーカシステムが導入されている。しかし、今日の係るインテリジェントシステムは、たとえば小売の広告環境においてスピーカのネットワークの間でイコライゼーションを提供することができず、スピーカのネットワークのうちの少なくとも1つのスピーカが作動することができないときを検出することができず、これは、イコライゼーションの計算に最終的に悪影響を与える可能性がある。
【0005】
係るように、直接的であるが、インクリメンタルな振幅補償を提供するスピーカシステムが必要とされており、このスピーカシステムは、ネットワークにおける複数のスピーカのイコライゼーションが可能であって、スピーカの不作動の感知が可能なシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態は、オーディオ環境におけるオーディオレベルを制御する方法及び装置を提供することで従来技術の問題点に対処するものである。
本発明の様々な実施の形態は、同期されたオーディオを伝達し、バックホールのオーディオウォータマークを受信し、音響環境に応答する能力を提供する。
【0007】
本発明の1実施の形態では、ネットワークオーディオ処理回路は、再生されたオーディオコンテンツ信号を受信する第一の手段、周辺雑音に従ってマイクロフォンの出力信号を供給するマイクロフォン、再生されたオーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間インクリメントの間にマイクロフォンの出力信号をイネーブルにし、再生されたオーディオコンテンツ信号がオンであるとき、第二の時間インクリメントの間にマイクロフォンの出力信号をディスエーブルにする第二の手段、並びに、第一及び第二の手段と通信するシグナルプロセッサを含む。本発明の1実施の形態では、シグナルプロセッサは、伝達関数を再生されたオーディオコンテンツ信号に適用する。この伝達関数は、マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに増加し、マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに減少する。シグナルプロセッサは、イコライゼーションカーブをオーディオコンテンツ信号に適用して、声域における周波数をブーストする。これにより、子音認識が向上され、音声の理解度が高められる。
【0008】
本発明の代替的な実施の形態では、周辺雑音の存在下で再生されたオーディオコンテンツ信号の理解度を向上する方法は、再生されたオーディオコンテンツ信号を受信するステップ、マイクロフォン出力信号を提供するマイクロフォンを使用して周辺雑音信号をモニタするステップ、マイクロフォン出力信号が再生されたコンテンツ信号成分を含むことなしに周辺雑音信号成分を含むように、再生されたオーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間のインクリメントの間にマイクロフォン出力信号をイネーブルにし、再生されたオーディオコンテンツ信号がオンであるとき、第二の時間のインクリメントの間にマイクロフォン出力信号をディスエーブルにするステップ、第一の伝達関数を再生されたオーディオコンテンツ信号に適用するステップを含み、この第一の伝達関数は、マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに増加し、マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、再生されたオーディオコンテンツ信号へのゲインの調節をインクリメンタルに減少する。本方法は、イコライゼーションカーブをオーディオコンテンツ信号に適用して、声域における周波数をブーストするステップを含み、これにより、子音認識が向上され、音声の理解度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の教示は、添付図面と共に以下の詳細な説明を考慮すること容易に理解することができる。
図1】本発明の実施の形態に係るネットワークオーディオ処理回路の高水準のブロック図である。
図2】本発明の実施の形態が適用されるコンテンツ配信システムの高水準のブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に従って、本発明の実施の形態が適用される店内に設けられた広告ネットワークの高水準のブロック図である。 なお、図面は本発明の概念を例示するものであって、本発明の例示する唯一可能なコンフィギュレーションを必ずしも示すものではない。理解を容易にするため、同一の参照符号が図面に共通の同一のエレメントを示すために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ネットワーク環境におけるオーディオレベルを制御する方法及び装置を有利に提供する。本発明は小売の広告ネットワーク環境の文脈で主に記載されるが、本発明の特定の実施の形態は、本発明の範囲を制限するものとして扱われるべきではない。本発明の概念はオーディオレベルを制御するために実質的に任意のオーディオ環境に有利に適用されることが等業者により理解され、本発明の教示により知らされるであろう。
【0011】
引用により本明細書にその完全な形で盛り込まれる“Speaker Systems and methods having amplitude and frequency response compensation”と題された共同所有され、公開された特許出願第20050190927号では、オーディオコンテンツ信号から導出される再生された音声又は楽音の理解度が、オーディオコンテンツ信号に適用される信号処理の第一及び第二の伝達関数の少なくとも1つによりエンハンスされる、スピーカシステム及び方法が教示される。先に識別された公開された特許出願では、周辺雑音における迅速に生じる大きな変化の結果として再生された音の音量が余りに頻繁に変化しないように、周辺雑音の存在下で再生されたオーディオコンテンツ信号の改善された理解度を提供する方法及びシステムが記載される。1実施の形態では、離散時間のインクリメントを通して多種多様な周辺雑音レベルの存在下で再生されたプログラム信号の理解度を向上するための信号処理及び伝達関数が記載される。教示される伝達関数は、直接的に周辺雑音の音量の関数として、たとえば約1dB〜約10dBのステップで再生される音の音量をインクリメントに変化し、それにより、係るインクリメントの変化は、再生された音の音量が周辺雑音において迅速に生じる変化の結果として余りに頻繁に変化しないことを保証する。先に識別された公開された特許出願では、周辺雑音は、マイクロフォン又は他の類似の音声入力装置により測定され、スピーカシステム上で又はスピーカシステムの近くで発見される。システムは、たとえばオーディオ又はオーディオ/ビデオ広告のセグメント間で生じるか、或いは、会話の間又は音楽セグメントの間に生じる場合がある、プログラム信号が実質的にオフである間、再生されたプログラム信号成分なしに周辺雑音の信号成分を提供及び利用する。
【0012】
先に識別された公開された特許出願の少なくとも1つの実施の形態によれば、プログラム入力信号は、信号処理の出力ポートの信号入力に適用され、信号処理の出力信号を提供する。信号処理は、たとえば信号処理の制御信号の増加する振幅の関数として約1dB〜約10dBのステップといったインクリメンタルに増加するか、逆に、信号処理の制御信号の減少する振幅の関数として約10dB〜約1dBのステップといったインクリメンタルに減少する利得を提供する伝達関数を導入する。先に識別された公開された特許出願の信号処理は、マイクロフォン出力信号がイネーブルにされる(すなわち、信号処理の制御入力にスイッチされる)係る時間の間に維持され、先に決定された周辺雑音レベル又はレベルの平均を使用して継続する音再生を提供する。
【0013】
本発明の実施の形態は、オーディオコンテンツ信号から導出された再生された音声又は楽音の理解度がオーディオコンテンツ信号に適用される第一及び第二の伝達関数の少なくとも1つにより向上される類似のスピーカシステム及び方法を提供するものであり、プログラム信号が実質的にオフである間にマイクロフォン信号をイネーブルにすることで、再生されたプログラム信号なしに周辺雑音の信号成分を提供することを含み、本明細書に記載される及び本発明の様々な実施の形態に係る様々な改善を含む。
【0014】
より詳細には、図1は、本発明の1実施の形態に係るネットワークオーディオ処理(NAP)回路100の高水準のブロック図を示す。図1のNAP回路100は、マイクロフォン102、少なくとも1つの出力電力増幅器104(例示的に4つの出力電力増幅器1041〜1044)、第一のコーダ/デコーダ(CODEC)106及び第二のコーダ/デコーダ(CODEC)108、デジタルインタフェース110、ネットワーク能力のあるオーディオプロセッサ112(例示的にイーサネット(登録商標)・オーディオプロセッサ)、及びネットワークスイッチ114(例示的にイーサネット(登録商標)・スイッチ)を例示的に有する。図1に例示される本発明の実施の形態では、第一のCODEC106は、たとえば2つのライン入力を介して入力オーディオを受ける。第二のCODEC108は、マイクロフォン102からの情報を受信する。第二のCODEC108は、受信された(再生された)オーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間のインクリメントの間にマイクロフォン出力信号をイネーブルにし、オーディオ信号を再生するとき、第二の時間のインクリメントの間にマイクロフォン出力信号をディスエーブルにするために作用する。CODEC106,108は、受信された信号をデジタルに変換し、アナログに変換するアナログ−デジタル(A/D)及びデジタル−アナログ(D/A)コンバータである。
【0015】
デジタルインタフェース110は、1実施の形態では、最小の損失で入力デジタル情報を伝送するSPDIF(Sony/Philips digital interface)を含む。デジタルインタフェース110の出力は、イーサネット(登録商標)・オーディオプロセッサ112に伝達され、このプロセッサは、1実施の形態ではCobraNet(登録商標)を含むことができ、ネットワークを通して多くのチャネルのリアルタイムの高品質なデジタルオーディオの配信を可能にするソフトウェア、ハードウェア及びネットワークプロトコルの組み合わせを含む。デジタルインタフェース110は、第一及び第二のCODEC106,108と通信し、イーサネット(登録商標)スイッチ114と通信する。イーサネット(登録商標)オーディオプロセッサ112は、CODEC106、108と通信し、マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、再生されたオーディオコンテンツ信号へのゲインの調節をインクリメンタルに増加し、マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、再生されたオーディオコンテンツ信号へのゲインの調節をインクリメンタルに減少するため、伝達関数を再生されたオーディオコンテンツ信号に適用する。すなわち、イーサネット(登録商標)オーディオプロセッサ112からの制御信号に応答して、電力増幅器104は、上述されたNAP回路100の出力音量レベルを調節するために制御される。電力増幅器104の出力は、スピーカの入力に伝達される。本発明の1実施の形態では、NAP回路100は、以下に提示及び記載される図2のスピーカシステム235に集積される。
【0016】
図1のNAP回路100において、特定のコンポーネントがそれらのコンポーネントの特定の関数を実行するために例示されているが、類似の機能を有する他のコンポーネントは、図1のNAP回路100で例示される機能を置き換えることができ、なお本発明の教示に含まれる。
【0017】
図1のNAP回路100のような本発明のNAP回路の実施の形態では、第一のCODEC106によりオーディオが受信される。NAP100のイーサネット(登録商標)オーディオプロセッサ112では、イコライゼーションカーブがオーディオに適用され、たとえば声域における特定の周波数を高め、これにより子音認識が向上され、高い周辺雑音の環境における音声の理解度が増加される。さらに、低周波成分は音声の理解度のために必ずしも必要ではなく、周辺雑音を付加するのみであるので、低周波成分を除去するためにハイパスフィルタ(図示せず)が適用される。これは、目標とする、減少する記憶に関連する疲労を改善する強いスピーカのカバレッジエリアを形成するという追加された利益を有する。イコライゼーションは、ネットワークを通してリアルタイムで制御することができ、その日の異なる時間で、又はNAPマイクロフォンの入力を介して周辺雑音の到来する測定値に応答して、異なるEQ曲線が適用されるのを可能にする。さらに、イコライゼーションは、それぞれのEQ曲線が様々なスピーカに適用することができるようにネットワークを通して制御することができ、スピーカのオーディオレベルがたとえば小売の環境を通してそれぞれ整合して保持されるようにオーディオ環境のスピーカシステムを通して制御される。他の応用におけるイコライゼーション曲線のオーディオへの適用は知られており、本明細書で記載されるようなNAP回路における係るイコライゼーションカーブの新たな適用について本実施の形態において詳細に記載されない。
【0018】
さらに、図1のNAP回路100のような本発明のNAP回路の様々な実施の形態において、本発明のスピーカ又はスピーカシステムのNAP100のそれぞれのイーサネット(登録商標)オーディオプロセッサ112は、異なる量の遅延をそれぞれのオーディオ信号に適用することができる。たとえば、本発明のNAP回路の1実施の形態では、NAP回路の増幅器の4つの出力チャネルのそれぞれに遅延が加えられる。これにより、タイミングが合って到達する音場の形成が可能である。この技術は、実際に大部分の音声がオーバヘッドスピーカシステムのような別の方向から到来するとき、音声がそれぞれのディスプレイから発生されるように見えるようにするために使用される。
【0019】
さらに、図1のNAP回路100のような本発明のNAP回路の様々な実施の形態では、NAP100のイーサネット(登録商標)オーディオプロセッサ112は、スピーカが接続されるか否かを判定するためにNAPの増幅器のセクション104に問い合わせを行う。たとえば、本発明の1実施の形態では、ネットワークサーバは、スピーカがNAP100に接続されているか又は接続されたスピーカが使用可能であるかを判定するために、イーサネット(登録商標)オーディオプロセッサ112と通信する。係る機能は、スピーカのコンプライアンスがインストール時及び通常動作の間の両者でチェックされるのを可能にする。また、係る機能は、コンテンツのオーディオ部分が接続されたスピーカで再生されることができたことの確認を提供する。
【0020】
本発明のNAP回路100は、フォームファクタにおいて、それぞれのスピーカに統合されるために十分に小さいことが好ましい。たとえば、本発明の1実施の形態では、NAP回路100は、6.3in×6.7in×1.7inのサイズを超えない。さらに、NAP回路100は、実用可能な限り低い電流引き込みを使用するべきである。たとえば、本発明の1実施の形態では、NAP回路100の電力引き込みは、120VACで3ampsを超えない。
【0021】
本発明の実施の形態では、NAP回路100は、メスのRCAコネクタを使用した2つのラインレベル入力と、定格20ワット/8オームのターミナルストリップを使用して2つのチャネル増幅された出力とを含む。さらに、NAP回路100は、LEDリンクステータスインジケータを持つメスのRJ−45コネクタを使用した100Mbpsのフルデュプレックス・イーサネット(登録商標)ポートを含む。NAP回路100は、リンクステータスを示すLEDをもつ標準的なRJ−45イーサネット(登録商標)コネクタを提供することができる。インタフェースは、100Mbps/secをサポートすることができる。
【0022】
本発明の代替的な実施の形態では、NAP回路100は、リセット、セルフテスト、又はネットワーク上のNAP回路100を識別する異なる方法で使用することができるボタンを含む。たとえば、ユニットがオンである間にボタンがひとたび押された場合、NAP回路100は、ネットワーク上で自身を識別し、ボタンが3秒間にわたり押し下げられた場合、NAP回路100がリセットされ、及び、電力を印加している間にボタンが押し下げられた場合、NAP回路100はセルフテストモードに入る。セルフテストは、NAP回路100のマイクロフォンにより取り出されるオーディオ出力テストのトーンを含む。
【0023】
図2は、本発明のNAP回路の実施の形態を適用することができるコンテンツ配信システムの高水準のブロック図である。図2のコンテンツ配信システムは、少なくとも1つのサーバ210、チューニング/デコーディング手段のような複数の受信装置(例示的にセットトップボックス(STB))2201〜220n、及びセットトップボックス2201〜220nのそれぞれについて、それぞれのディスプレイ2301〜230n、並びにオーディオ出力装置のような他の受信装置(例示的にスピーカシステム)2351〜235nを例示的に含む。図1のNAP回路100のような本発明のNAP回路は、図2のスピーカシステム235のようなオーディオ出力装置に統合される。
【0024】
図2のシステム200では、複数のセットトップボックス2201〜220nのそれぞれは、単一の、それぞれのディスプレイに例示的に接続されているが、本発明の代替的な実施の形態では、複数のセットトップボックス2201〜220nのそれぞれは、1つのディスプレイを超えるディスプレイに接続することができる。さらに、図2のコンテンツ配信システム200では、チューニング/復号化手段はセットトップボックス220として例示的に示されているが、本発明の代替的な実施の形態では、本発明のチューニング/復号化手段は、ディスプレイ230に統合されるチューニング/復号化回路或いはスタンドアロン型のチューニング/復号化装置等のような代替的なチューニング/復号化手段を有することができる。さらに、本発明の受信装置は、オーディオ、ビデオ及び/又はオーディオ/ビデオコンテンツのようなコンテンツを受信可能な任意の装置を含む。
【0025】
本発明の1実施の形態では、図2のコンテンツ配信システム200は、店内に設けられた広告ネットワークの一部とすることができる。たとえば、図3は、店内の広告を提供する店内の広告ネットワーク300の高水準のブロック図である。図3の広告ネットワーク300では、広告ネットワーク300及び配信システム200は、カタログ作成、配信、プレゼンテーション、並びに、音楽レコーディング、ホームビデオ、プロダクトデモンストレーション、広告コンテンツ及び、娯楽コンテンツ、ニュース及び店内のセッティングにおける消費者の情報コンテンツと同様に他の係るコンテンツのような使用のトラッキングを提供するソフトウェアとハードウェアの組み合わせを利用する。コンテンツは、圧縮又は非圧縮ビデオ及びオーディオストリームフォーマットで提供されるコンテンツを含むことができるが(たとえば、MPEG4 /MPEG4 Part 10/AVC-H.264, VC-1, Windows(登録商標) Media, etc)、本発明は、それらのフォーマットのみを使用することに限定されるべきではない。
【0026】
本発明の1実施の形態では、店内に設けられた広告ネットワーク300及びコンテンツ配信システム200の様々なエレメントを制御するソフトウェアは、ウィンドウ環境(たとえばMS-Windows(登録商標)又はX-Windows(登録商標)オペレーティングシステム)を使用した32ビットオペレーティングシステム及び高性能コンピューティングハードウェアを含む。広告ネットワーク300は、分散されたアーキテクチャを利用することができ、1実施の形態では、衛星(又は他の方法では、たとえばワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、一連のマイクロ波リンク、或いは類似のメカニズム)及び店内に設けられたモジュールを介して、集約化されたコンテンツ管理及び配信制御を提供する。
【0027】
図3に示されるように、店内に設けられた広告ネットワーク300及びコンテンツ配信システム200のコンテンツは、広告主302、レコード会社304、映画スタジオ306又は他のコンテンツプロバイダ308から供給される。広告主302は、製品メーカ、サービスプロバイダ、製造業者又はサービスプロバイダ、あるいは他のエンティティを表す広告会社である。広告主302からの広告コンテンツは、コマーシャル、「インフォマーシャル」、製品情報及び製品デモンストレーション等を含むオーディオビジュアルコンテンツからなる。
【0028】
レコード会社304は、レコード会社、音楽出版社、ライセンス供与/出版エンティティ(たとえば、BMI又はASCAP)、個々のアーティスト、或いは他の係る音楽に関連するコンテンツのソースである。レコード会社304は、音楽クリップ(記録された音楽のショートセグメント)、音楽ビデオクリップ等のようなオーディオビジュアルコンテンツを提供する。映画スタジオ306は、映画スタジオ、映画製作会社、広報係、或いは映画産業に関連する他のソースである。映画スタジオ306は、映画クリップ、男優及び女優による予め記録されたインタビュー、映画レビュー、「舞台裏」のプレゼンテーション、及び類似のコンテンツを提供する。
【0029】
他のコンテンツプロバイダ308は、たとえば図2のコンテンツ配信システム200を介して配信及び表示することができるビデオ、オーディオ又はオーディオビジュアルコンテンツの任意の他のプロバイダである。
【0030】
本発明の1実施の形態では、コンテンツは、例えば従来の記録されたメディアを使用してネットワーク管理センタ310(NMC)を介して取得される。NMC310に供給されるコンテンツは、たとえばローカルサイトにコンテンツを配信及び表示するローカル配信システム200への配信に適した形式にコンパイルされる。
【0031】
NMC310は、受信されたコンテンツをデジタル化し、デジタル化されたコンテンツをデジタル化されたデータファイル322の形式でネットワークオペレーションズセンタ322に供給する。なお、データファイル322は、デジタル化されたコンテンツの観点で呼ばれるが、ストリーミングオーディオ、ストリーミングビデオ、又は他の係る情報とすることができることに留意されたい。NMC310によりコンパイル及び受信されたコンテンツは、コマーシャル、バンパー、グラフィックス、オーディオ等を含む。全てのファイルは、これらが固有に識別可能であるように名前が付されることが好ましい。より詳細には、NMC310は、ストアロケーションのような特定のサイトを目標とされる配信パックを形成し、スケージュールされたやり方又はオンデマンドのやり方で1以上のストアに伝達される。配信パックは、使用される場合、オンサイトで既に存在する既存のコンテンツを置き換えるか又は既存のコンテンツの質を高めることが意図されるコンテンツを含む(サイトのシステムが最初に初期化されていない場合、その場合、伝達されるパッケージは、サイトの初期のコンテンツの基礎を形成する)。代替的に、ファイルは、個別に圧縮及び転送されるか、或いはあるタイプのストリーミング圧縮プログラムが利用される。
【0032】
NOC320は、デジタル化されたデータファイル322を、この例ではコマーシャルセールスアウトレット230にあるコンテンツ配信システム200に通信ネットワーク225を介して伝達する。通信ネットワーク225は、幾つかの技術の何れかの1つで実現することができる。たとえば、本発明の1実施の形態では、サテライトリンクは、コマーシャルセールスアウトレット230のコンテンツ配信システム100にデジタル化されたデータファイル222を配信するために使用することができる。これにより、様々なロケーションにコンテンツをブロードキャスト(又はマルチキャスト)することでコンテンツを容易に配信することが可能となる。代替的に、オーディオビジュアルコンテンツをコマーシャルセールスアウトレット230に配信し、コマーシャルセールスアウトレット230からのフィードバックを可能にするために、インターネットを使用することができる。専用線、マイクロ波ネットワーク、又は他の係るメカニズムを使用するような通信ネットワーク225を実現する他のやり方は、本発明の代替的な実施の形態に従って使用することができる。
【0033】
コンテンツ配信システム100のサーバ110は、コンテンツ(たとえば配信パック)を受信し、これに応じてセットトップボックス120及びディスプレイ130及びスピーカシステム135のような店内の様々なレシーバに配信する。図1のNAP回路100のような本発明のNAP回路の実施の形態は、伝達されたコンテンツを受信し、本明細書で記載された本発明の様々な実施の形態のNAP回路の様々な発明の態様を実行する。
【0034】
(例示するものであって限定するものではないことが意図される)オーディオ環境におけるオーディオレベルを制御する方法及び装置の様々な実施の形態を記載したが、上記の教示に照らして変更及び変形が等業者によりなされる。したがって、本発明の範囲及び精神において開示される本発明の特定の実施の形態において変形が行われる場合があることが意図される。上述の内容は本発明の様々な実施の形態に向けられる一方で、本発明の他の実施の形態及び更なる実施の形態が本発明の基本的な範囲から逸脱することなしに創作される場合がある。
いくつかの付記を記載しておく。
〔付記1〕
再生されたオーディオコンテンツ信号を受信する第一の手段と、
周辺雑音に従ってマイクロフォンの出力信号を供給するマイクロフォンと、
前記再生されたオーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォンの出力信号をイネーブルにし、前記再生されたオーディオコンテンツ信号がオンであるとき、第二の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォンの出力信号をディスエーブルにする第二の手段と、
前記第一及び第二の手段と通信するシグナルプロセッサとを有し、
前記シグナルプロセッサは、前記マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに増加し、前記マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに減少する伝達関数を前記再生されたオーディオコンテンツ信号に適用し、イコライゼーションカーブを前記オーディオコンテンツ信号に適用して、子音認識を向上し且つ音声の理解度を高める声域における周波数成分を強調する、
ネットワークオーディオ処理回路。
〔付記2〕
前記シグナルプロセッサは、前記オーディオコンテンツ信号に遅延を加える、
付記1記載のネットワークオーディオ処理回路。
〔付記3〕
遅延されたオーディオコンテンツ信号は、当該オーディオ処理回路が統合されるスピーカの代わりに、前記オーディオコンテンツ信号に関連するコンテンツプレイアウト装置から発生されるように知覚される、
付記2記載のネットワークオーディオ処理回路。
〔付記4〕
入力と出力とを有する少なくとも1つの増幅器を更に有し、前記増幅器の入力は、前記シグナルプロセッサの出力信号に結合され、前記増幅器の出力は、スピーカの入力に結合される、
付記4記載のネットワークオーディオ処理回路。
〔付記5〕
前記シグナルプロセッサは、それぞれのスピーカが前記ネットワークオーディオ処理回路に接続されているか、又は前記それぞれのスピーカが適切に動作することができないかを判定するために前記少なくとも1つの増幅器と通信する、
付記4記載のネットワークオーディオ処理回路。
〔付記6〕
周辺雑音の存在下で再生されたオーディオコンテンツ信号の理解度を向上する方法であって、
前記再生されたオーディオコンテンツ信号を受信するステップと、
マイクロフォン出力信号を提供するマイクロフォンを使用して周辺雑音信号をモニタするステップと、
前記マイクロフォン出力信号が再生されたコンテンツ信号成分を含むことなしに周辺雑音信号成分を含むように、前記再生されたオーディオコンテンツ信号が実質的にオフであるとき、第一の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォン出力信号をイネーブルにし、前記再生されたオーディオコンテンツ信号がオンであるとき、第二の時間のインクリメントの間に前記マイクロフォン出力信号をディスエーブルにするステップと、
前記マイクロフォンの出力信号の増加する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに増加し、前記マイクロフォンの出力信号の減少する振幅の関数として、前記再生されたオーディオコンテンツ信号に対するゲインの調節をインクリメンタルに減少する第一の伝達関数を前記再生されたオーディオコンテンツ信号に適用するステップと、
イコライゼーションカーブを前記オーディオコンテンツ信号に適用して、子音認識を向上し且つ音声の理解度を高める声域における周波数成分を強調するステップと、
を含む方法。
〔付記7〕
前記インクリメンタルな利得の調節は、約1dBと約10dBの間のステップである、
付記6記載の方法。
〔付記8〕
前記オーディオコンテンツ信号に遅延を加えるステップを含む、
付記6記載の方法。
〔付記9〕
それぞれのスピーカが接続されているか、又はそれぞれのスピーカが適切に動作することができないかを判定するための問い合わせを開始するステップを含む、
付記6記載の方法。
図1
図2
図3