(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649449
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】旋回装置駆動装置をオーバーライドするための油圧制御回路
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
F15B20/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-533428(P2010-533428)
(86)(22)【出願日】2008年11月7日
(65)【公表番号】特表2011-503475(P2011-503475A)
(43)【公表日】2011年1月27日
(86)【国際出願番号】DE2008001861
(87)【国際公開番号】WO2009062484
(87)【国際公開日】20090522
【審査請求日】2011年10月26日
(31)【優先権主張番号】102007055001.6
(32)【優先日】2007年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102008034028.6
(32)【優先日】2008年7月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508339699
【氏名又は名称】テレックス・クレーンズ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100118407
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 尚美
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100125036
【弁理士】
【氏名又は名称】深川 英里
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】イェーネ,ティロ
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,アヒム
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−188276(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0205272(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102006040459(DE,A1)
【文献】
特開昭64−021204(JP,A)
【文献】
特開平02−275103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11;20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置を制御する油圧システムのオーバーライド用の、特にクレーン上部旋回体の旋回装置を駆動する油圧モータ(5)を制御するための油圧制御回路であって、前記油圧モータ(5)用の圧力管路(3.9、3.10)を有し、前記圧力管路(3.9、3.10)が供給弁(3.2)を介して油圧ポンプ(2)もしくはタンク(1)と結合されており、前記圧力管路(3.9、3.10)にそれぞれパイロット弁(3.4、3.3)、シャトル弁(3.8、3.7)および切換弁(3.6、3.5)が結合されているものにおいて、
駆動可能な比例パイロット弁(6)が設けられており、前記比例パイロット弁(6)と前記シャトル弁(3.7、3.8)が制御線路(3.11、3.12)を介して結合されており、前記制御線路(3.11、3.12)を通して、前記パイロット弁(6)で増圧された圧力によって、別々に駆動可能な前記切換弁(3.5、3.6)が駆動可能であり、
前記パイロット弁(3.4)が通電されると、前記制御線路(3.18)が閉じ保持され、前記排出口側パイロット弁(3.3)が部分的に通電され、前記切換弁(3.5)は部分的に開口され、
前記圧力管路(3.10)から前記供給弁(3.2)に連結された管路は、前記供給弁(3.2)のタンクポートによって常にブロックされていることから前記供給弁(3.2)を迂回する管路を介して前記タンク1への貫流を開放し、
前記比例パイロット弁(6)が制御線路(3.11、3.12)の圧力を増圧するためにブレーキペダル(8)を介して操作可能に形成されており、該ブレーキペダル(8)の操作により、前記制御線路(3.11、3.12)の圧力が前記シャトル弁(3.7、3.8)を介して制御線路(3.17、3.18)を通して制御圧力が増成されて両方の前記切換弁(3.5、3.6)を絞らせ、この絞りは増成される制御圧力に比例して起こり、これにより旋回運動が制動され、旋回台の自由旋回が阻止され、非常ブレーキとしての駆動の他に動的常用ブレーキとしての駆動も行われることを特徴とする、油圧制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン上部旋回体の旋回装置または巻上装置または起伏用巻上装置を駆動する油圧モータの駆動をオーバーライドするための油圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は特許文献1から出発する。そこではまず一般的旋回装置制御装置における先行技術が述べられている。
【0003】
それによれば、当該ジブ(腕木)を備えたクレーン上部旋回体を固定式下部走行体上で自由に旋回可能とする機構が旋回装置と称される。普通、適宜な変速比を有する伝動装置を介してやはり上部旋回体を下部走行体に対して任意に位置決めする油圧モータを介して駆動は行われる。作業時、一方で旋回運動はごくゆっくりと制御可能でなければならず、他方で当該作業サイクルを可能とするために高い速度を達成しなければならない。旋回システムの動的特性はジブ長、旋回半径および荷重重量に依存してごく強く変化する。クレーン操作に対する要求はやはり作業現場での利用によって決まる。そのことから、分解能と変換とによる高度な可制御性が必要となる。
【0004】
移動式クレーン内で通常使用される旋回装置制御装置は「閉回路、開回路」として実施される。「開回路」の内部では容積流調整式システムまたは圧力調整式システムが応用される。
【0005】
「閉回路」内では可変容量形ポンプが油圧回路内で油圧モータへと直接移送し、他の分配部をシステム内に有してはいない。還流する油はポンプに直接送られる。漏れは他の補助ポンプによって各還流側に供給される。旋回運動の速度はポンプの吐出し容積によって決まる。ポンプ内の制御弁は要求に応じて量を調整する。移送方向は、従って旋回装置の旋回方向も、やはりポンプによって決まる。機械式/油圧式弁システムは、ポンプの変位ユニットを一方の最大位置から零位置を経て他方の最大位置へと方向転換させ、こうして連続的移送流を一方の出口から他方の出口へと切り換えることを可能とする。同時に、ポンプの吸込み側も切り替わる。
【0006】
この制御原理の利点は、
移動式クレーンが旋回時に横力を受けるとき
上部旋回体の旋回離脱(Wegdrehen)を限定的に防止する旋回装置の固定にある。というのも、油圧モータはポンプ
と同様で、従って
駆動源のディーゼルエンジンで支えられるからである。「閉回路」による旋回装置の固定は、駆動解消時に旋回速度の即時的減速を引き起こす。旋回運動に対する運転者の注意を高める必要がある。良好なエネルギー勘定、ポンプ幾何学によって予め与えられた吐出し容積、それとともに正確な位置に接近できる可能性が、その他の利点である。
【0007】
横力のとき油圧モータおよびポンプによる漏れ油発生量の増加が不利に作用し、旋回装置の望ましくない
離反ドリフト(Wegdriften)を生じる。「閉回路」にもかかわらず、追加の
動的な旋回ブレーキが必要である。
【0008】
「開回路」内では普通、定容量形ポンプが油をタンクから比例弁を通して旋回装置モータへと移送する。還流する油は比例弁を通してタンクに達する。旋回方向と旋回装置モータへの吐出し量は弁によって決まる。旋回方向と吐出し量は、要求に応じて比例信号によって制御される。
【0009】
比例弁は絞り弁として、あるいは調圧弁としても、作動することができる。その場合、圧力に左右されない移送流調整が保証されている。純粋の絞り制御は旋回装置のごく動的な走行様式にきわめて適しているが、しかし荷重変動時には計算不能である。移送流の調整は荷重に左右されることなく最低速度を制御または調整できるが、
しかしカウンタコントロール
(対応制御)(Gegensteuerung
)がなされる動的走行
方式には適していない。スプールのフリーホイール切換によってフックは、ブレーキ開放時およびフック持上げ時、常に自動的に正確に荷の上で心合せする。
【0010】
「開回路」の大きな欠点は適切な運動停止にある。比例弁を備えたブレーキは可能でない。というのも荷重変動時、規定された制動距離に対して異なる制動力が必要であるからである。
【0011】
こうしてこの選択肢が成立しないので、スプール弁は中立位置のとき常に旋回装置モータのフリーホイール
のときに切り換えられている。動的に作用するブレーキが停止のために必要である。これらのブレーキは主として、強く変化する荷重を制動しなければならないときやはり取扱いに問題のある機械式多板ブレーキとして実施されている。
【0012】
駆動装置を制御する油圧システム用の、特にクレーン上部旋回体の旋回装置を駆動する油圧モータを制御するための油圧制御回路が特許文献1により提案されており、この油圧制御回路は定容量形油圧ポンプと旋回装置を制御するための油圧モータとの間で両方の作動管路中に配置されて別々に駆動可能な比例パイロット弁と、油圧モータへの流入量およびそこからの流出量、従って油圧モータ回転方向を制御可能とするそれぞれ別々に駆動可能な比例切換弁とを特徴としている。
【0013】
このような油圧制御回路ではなかんずく2つの態様が考えられる:
1.非駆動状態のとき切換弁が「開」。すなわち、作動管路および還流管路を介してタンクへと貫流。
2.非駆動状態のとき切換弁が「閉」。すなわち、還流管路を介したタンクへの貫流なし。
【0014】
1.について。この場合、切換弁を駆動するのに必要なエネルギーの
消滅は、旋回運動中の旋回台の質量慣性に基づいて制御不能に継続旋回すること、もしくは静止中の旋回装置の不釣合いな荷重分布に基づいて旋回運動が開始することを意味する。制御不能な継続旋回も、望ましくない旋回運動の開始も、安全上のリスクである。
【0015】
2.について。この場合、切換弁の駆動に必要なエネルギーの
消滅は、駆動装置の排出管路が閉じることを意味する。これは旋回運動の急制動をもたらす。そのことから機械の機械的過負荷もしくは機械の傾動というリスクが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006040459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、旋回装置、巻上装置または起伏用巻上装置の駆動が部分的にまたは完全に故障した場合でも機械操作員が旋回装置、巻上装置または起伏用巻上装置を制動し、最後に停止させることのできるように油圧回路を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題が本発明によれば請求項1の特徴で解決される。
【0019】
以下、図面を参考に本発明を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この制御コンセプトの主要部材は下記構成要素を含む。
特許文献1による自走クレーンの旋回装置制御装置。
さらに、
・シャトル弁3.7、3.8
・制御線路3.11、3.12
・比例圧力調整弁6
【0022】
1旋回方向への旋回装置の駆動のみが述べられるが、逆方向でも同様に行われる。
【0023】
旋回装置モータ5の駆動は供給弁(制御弁)3.2を介して行われる。供給弁は旋回装置モータの回転方向および回転速度を設定する。この実施例では、ポンプ2から供給弁3.2、圧力管路3.9を介してモータ5へと油流が流れると仮定する。
【0024】
モータ5から還流する油は次に圧力管路3.10を介して切換弁3.5へと流れ、この切換弁
3.5から管路10を介してタンク1へと流れる。その際、排出口を絞って閉じるために
制御線路3.17もしくは3.18内で制御圧力が必要であるように切換弁
3.5は実施されている。制御圧力なしでは切換弁3.5、3.6は圧力管路3.9もしくは3.10から管路10を経てタンク1に至る貫流を開放する。制御圧力は電流に比例してパイロット弁3.3もしくは3.4によって発生される。この例ではパイロット弁3.4が通電され、
制御線路3.18が閉保持される。排出口側パイロット弁3.3が(部分的に)通電され、
切換弁3.5は(部分的に)開口され、
圧力管路3.10から
タンク1への貫流を開放する。その限りでこの説明は特許文献1の説明に一致している。
【0025】
ところでパイロット弁3.3の電気
制御に誤機能
が生じ、
制御線路3.15内、従って
制御線路3.17内でもパイロット圧力が増成されないと仮定する。その場合、ばね付勢式切換弁3.5が排出口を開口する。これにより旋回装置はフリーホイール状態であり、操作要素、例えば
図2のブロック線図に示したジョイスティック(操縦桿)9を介した操作員のコントロールに旋回装置はもはや服さない。切換弁のばね付勢式開口によって、旋回装置の急制動の起きないことが達成される。急制動が起きると、特定境界条件(高い慣性モーメント)のもとでシステムの危険を意味しよう。
【0026】
本発明によれば例えばブレーキペダル8からの弁6の操作を介して操作員はいまや
制御線路3.11および3.12内に制御圧力を増成することができる。そのことから、シャトル弁3.7、3.8を介して
制御線路3.17および3.18内で制御圧力が増成されて両方の切換弁3.5、3.6を絞らせることになる。この絞りは増成される制御圧力に比例して起きる。これにより旋回運動が制動され、旋回台の自由旋回が阻止される。こうして操作員は、(部分的)システム故障の場合でも常に旋回運動をコントロールしている。本発明に係る旋回装置用オーバーライドは、所定の運転範囲全体においても動的常用ブレーキとして利用することができる。