特許第5649472号(P5649472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649472
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】多方向通信特性を有する通信カプラ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20141211BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20141211BHJP
   H01Q 9/40 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   H01Q13/08
   H04B5/02
   H01Q9/40
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-13526(P2011-13526)
(22)【出願日】2011年1月26日
(65)【公開番号】特開2012-156733(P2012-156733A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用 〔博覧会名〕 CEATEC JAPAN 2010 〔主催者名〕 社団法人電子情報技術産業協会 〔主催者名〕 一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会 〔主催者名〕 社団法人コンピュータソフトウェア協会 〔開催日〕 平成22年10月5日〜平成22年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高村 祐
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓也
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−099236(JP,A)
【文献】 特開2005−303921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/40
H01Q 13/08
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号の通信に用いられる通信カプラであって、前記高周波信号の伝送路が接続され、微小電気ダイポールを形成するように配置された第1の電極平面を有する結合用電極及びグランドと、該結合用電極に流れ込む電流を大きくしてより強い電界を発生させるための共振部とを具備するとともに、該結合用電極の先端部を折り曲げて第2の電極平面を形成し、該第2の電極平面の端縁が該共振部に近接することにより、2方向に誘導電界が形成されることを特徴とする通信カプラ。
【請求項2】
該共振部と該グランド板がプリント基板に設けられた導電パターンで構成され、該共振部の導電パターンを略5の字形にすることでインピーダンス整合が行われたことを特徴とする、請求項1に記載の通信カプラ。
【請求項3】
該プリント基板が多層構造となっており、該プリント基板の表面に該共振部が、該プリント基板の内層に該グランド板が形成されていることを特徴とする請求項に記載の通信カプラ。
【請求項4】
該共振部と該結合用電極との間に誘電体を挟持したことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の通信カプラ。
【請求項5】
該グランド板と該結合用電極との間隔が、2mm以上5mm以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の通信カプラ。
【請求項6】
該プリント基板の幅が9mm以上30mm以下、長さが14mm以上30mm以下であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の通信カプラ。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の通信カプラを使用した通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ
伝送を行なう通信カプラ並びに通信装置に係り、特に、電界結合を利用した微弱UWB
通信において複数方向に通信可能である通信カプラ並びに通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近距離高速無線通信技術として、UWB(Ultra Wide Band)のローバンド(4GHz帯)を用いたTransferJet(登録商標)と呼ばれる微弱UWB通信方式(例えば、非特許文献1を参照のこと)が用いられ始めている。
【0003】
微弱UWB通信方式には、特許文献1、特許文献2などに記載されるような通信カプラが用いられ、例えば図1に示すような形態をとる。
【0004】
特許文献2によると、図1に示した通信カプラ1は次に示す要素で構成される。
【0005】
(1)高周波信号の伝送路2
(2)伝送路2の一端に接続され、電荷を蓄える結合用電極3
(3)結合用電極3に対向して、高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間して配置され、結合用電極3に蓄えられた電荷に対する鏡像電荷を蓄えるグランド板4
(4)結合用電極3と伝送路2の間に接続された直列インダクタ、及び伝送路2とグランド板4の間に接続された並列インダクタから構成される、伝送路を介して結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部5
【0006】
さらに、特許文献2には、通信カプラに要求されることとして以下の記載がある。
【0007】
(1)電界で結合するための結合用電極があること。
(2)より強い電界で結合させるための並列インダクタがあること。
(3)通信に使用する周波数帯において、結合器を向かい合わせに置いたときにインピーダンス・マッチングが取れるように、直列・並列インダクタ、及び、結合用電極によるコンデンサの定数が設定されていること。
【0008】
上記要求に従って設計された通信カプラは、通信の際に以下の動作を示す。
【0009】
電流として伝送路2に送られた高周波信号は、伝送路2→共振部5→結合用電極3と伝送され、結合用電極3に電荷が蓄えられる。この時、グランド板4に鏡像電荷が蓄えられる。
【0010】
この結果、結合用電極3に蓄えられた電荷の中心とグランド板4に蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小電気ダイポールPが図2のように形成される。この微小電気ダイポールPからその垂直方向に誘導電界Eが発生する。
【0011】
上記状態となった2つの通信カプラ1を誘導電界Eの発生した向きに近接させると、通信カプラ間で電界結合が起こり、通信が行われる。
【0012】
その他、通信カプラの原理、特性の詳細については特許文献1を参照されたい。
【0013】
ところで、図1に示した通信カプラ1は、図2に示す通り、誘導電界Eを微小電気ダイポールPの垂直方向のみに発生させるため、通信可能な方向は1方向のみとなっている。
また、通信を行うために必要な誘導電界Eを発生させるためには、結合用電極3、共振部5等の設計上の関係で、通信カプラ1の大きさは一定以上の面積となってしまう。
【0014】
図1に示した通信カプラ1を通信装置等に組込む際、図3に示す2通りの設置方法が考えられるが、通信カプラ1の面積以上の設置スペースが必要となっている。
図3(a)に示す設置方法は薄型携帯電話に代表される薄型の通信装置に適用できるが、図4に示す通信方向に対応できず、図3(b)に示す設置方法は通信カプラの面積が災いして、薄型通信装置への適用は困難である。
【0015】
具体例を挙げると、薄型通信装置の筐体上面に赤外線などの送受信装置を設け、図5に示した方法で通信を行うことがあるが、高速、大容量通信を特徴とする高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信を同様の方法で行おうとしても、送受信装置となる通信カプラ1では設置スペースの確保が困難であるため、対応できないでいる。
図3(a)に示す方法で設置することも可能であるが、図5に示した方法で通信を行えず、必ずしも使用者が求める通信方向になるとは限らない。
【0016】
すなわち、現在の通信カプラ1では通信機器の厚みなどによって設置方法に制限があると、通信方向を選択する余地がなくなり、通信機器の使い勝手に影響してしまうという問題がある。
【0017】
通信カプラ1の低面積化が困難である以上、この問題の解決策として、従来の通信カプラの構造を大きく変えないまま、図6に示すように誘導電界Eを複数方向に発する通信カプラ7を作成することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2008−271606
【特許文献2】特許第4345851号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】www.transferjet.org/en/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、高周波数の広帯域信号を用いるUWB通信方式により情報機器間で大容量のデータ通信を行なうことができる通信カプラで、複数方向に誘導電界が発生する、すなわち複数方向に通信が可能であり、薄型電子機器への組込みなど設置方法に制限がある場合でも所望する通信方向を得られる通信カプラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者等は、通信カプラに複数の微小電気ダイポールを発生させることが複数方向での通信に必要であることに着目し、結合用電極と共振部の形状と共振部を工夫することで、複数方向に微小電気ダイポール、すなわち誘導電界が発生し、複数方向での通信が可能な通信カプラを発明するに至った。
【0022】
すなわち、本発明によれば、以下の通信カプラが提供される。

高周波信号の通信に用いられる通信カプラであって、前記高周波信号の伝送路が接続され、微小電気ダイポールを形成するように配置された第1の電極平面を有する結合用電極及びグランドと、該結合用電極に流れ込む電流を大きくしてより強い電界を発生させるための共振部とを具備するとともに、該結合用電極の先端部を折り曲げて第2の電極平面を形成し、該第2の電極平面の端縁が該共振部に近接することにより、2方向に誘導電界が形成されることを特徴とする通信カプラ
【発明の効果】
【0023】
本発明の通信カプラは、以下の顕著な効果が期待できる。
(1)方向に誘導電界が発生し、方向で通信が可能になる。
(2)通信部の面積を小さくすることができ、薄型通信装置への組込が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の通信カプラを示す模式図である。
図2図1の通信カプラに微小電気ダイポールと誘導電界が形成された状態を示す模式図である。
図3図1の通信カプラを通信装置に組込んだ時の模式図である。
図4】薄型通信装置から通信用誘導電界が発生した模式図である。
図5】薄型電子装置間で通信を行っている模式図である。
図6】通信カプラから複数方向に誘導電界が発生した状態の模式図である。
図7】本発明の通信カプラの模式図である。
図8】本発明に使用する結合用電極の一例である。
図9】本発明に用いる共振部の一例である。
図10】本発明に用いるプリント基板の一例である。
図11】本発明の通信カプラの(a)組立例、(b)実施例、である。
図12】本発明の通信カプラの結合強度の測定方向を現す図である。
図13】本発明の通信カプラの結合強度測定結果である。
図14】本発明の通信カプラのゲイン測定結果である。
図15】本発明の通信カプラを薄型電子機器に組込んだ模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の通信カプラの態様について、結合用電極と共振部の形状に重点を置いて説明する。
【0026】
図7に本発明の通信カプラ7の模式図を示す。本発明における特徴は、第1の電極平面3aを有する結合用電極3の先端部を折り曲げて第2の電極平面3bを形成し、第2の電極平面3bの端縁を共振部5に近接させたことである。微小電気ダイポールPは結合用電極3を構成する平面に垂直な向きに形成される。結合用電極3の形状を変更して2つ電極平面3a、3bを形成することによって、2つの微小電気ダイポールPを形成でき、方向への通信が可能となる。
【0027】
方向に通信を行う結合用電極3は、図8に示されるように第1の電極平面3aと、第1の電極平面3aの先端部分を折り曲げることで形成される、第2の電極平面3bと、第1の電極平面3aと共振部5を接続する脚3cで構成される。
【0028】
方向への通信を行うために、第2の電極平面3bを共振部5に近接させると通信カプラ7のキャパシタ成分が増大する。特許文献1に記載されているように、通信カプラ間で通信を行うには、使用する周波数帯におけるインピーダンス整合が重要となる。キャパシタンス成分の増大はインピーダンス整合を阻害する要因となる。
【0029】
このインピーダンス整合の問題を解決するために、本発明では共振部5の構造を以下の通りとした。
(1)直列インダクタ、並列インダクタを使用せず、導電パターンのみで共振部を構成する。
(2)導電パターンの面積を調整することで、インピーダンス整合を図る。
【0030】
導電パターンの面積調整は、面積を大きくすることがインピーダンス整合に有効である。キャパシタンス成分の増大による所定のインピーダンス値からのずれを、導電パターンの面積拡大に伴うリアクタンス成分の増加によって補正し、インピーダンスを整合させる。
【0031】
具体的な共振部5の形状は、図9に示すような、インピーダンス調整部5aと称する長方形の導電パターンの上辺から直線状に、下辺から1回折り返したコの字上に導電パターンを延ばすことで形成した、略5の字形の形状とするのが好ましいことが判明した。
このインピーダンス調整部5aの面積を大きくし、適切な面積に調整することでインピーダンスを整合させる。またコの字状に延ばした導電パターンの先端部には伝送路2が接続される給電点Sとなる。
【0032】
また、この共振部5を略5の字形の形状にすることは、導電パターンの総面積を抑えてインピーダンス調整が可能であるため、通信カプラの小型化が行える点、及び結合用電極3の形状変更によって形成される微小電気ダイポールPから発生する誘導電界Eをより強いものとし、安定した通信を行う点でも有効である。
【0033】
グランド板4はコスト、製造時の作業性等を考慮すると、共振部5と共に導電パターンとしてプリント基板8に形成することが好ましい。
プリント基板8は多層構造とし、共振部5は結合用電極3に近接させるためプリント基板8の最表面に形成し、グランド板4は結合用電極3に対向して、高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間して配置される必要があるため、プリント基板8の内層に形成するのが好ましい。
【0034】
通信カプラ7の機能上、結合用電極3とグランド板4は、共振部5を介して電気的に導通している必要がある。このためグランド板4に短絡部4aを設けて共振部5と導通させる。また、後述するように伝送路2として同軸電線を使用する際には、グランド板4に伝送路接続部4bを設け、プリント基板8の表面に露出させても良い。
【0035】
短絡部4aと伝送路接続部4bは同じグランド板4上に設けても良いし、場合によってはグランド板4を複数設けて、それぞれに設けても良い。
【0036】
好ましくは、グランド板4から結合用電極3の第1の電極平面3aまでの間隔が2mm以上5mm以下の範囲にあることが望ましい。この範囲は、通信カプラの薄型化と強い誘導電界が両立できる範囲である。
【0037】
さらに好ましくはプリント基板の幅を9mm以上30mm以下、長さを14mm以上30mm以下とすることが望ましい。この範囲は、通信カプラの小型化と強い誘導電界が両立できる範囲である。
【0038】
また、結合用電極3と共振部5の間に誘電体9を挟持させても良い。
通信カプラ7は結合用電極3とグランド板4の間でコンデンサを形成しているため、誘電体9を挟持させることで電気容量が大きくなり、より強い誘導電界を得ることができる。
【0039】
本発明の通信カプラ7に最適な誘電体9を検討したところ、誘電体9をPCABS製とするのが好ましいことが判明した。
【0040】
伝送路2は、内部導体、誘電体、外部導体、絶縁被覆材から構成される同軸電線を使用することが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に、図7で示した方向に誘導電界を形成する通信カプラ7の具体例を示す。
【0042】
結合用電極3は錫メッキを施して厚さ0.3mmとした黄銅平板を板金加工することで形成し、図8に示すような第1の電極平面3aと、第1の結合用電極の先端部分をL字状に折り曲げることで形成される、第2の電極平面3bと、第2の電極平面3bに対向する位置に存在し、第1の結合用電極と共振部を接続する脚3aを有する形状とした。
【0043】
第1の電極平面3aは、幅9mm×長さ6.5mmで、脚3cが形成される部分に幅3mm×長さ3mmの切り欠けがある略凹字型形状とした。第2の電極平面3bは幅9mm×長さ1.5mmの長方形形状とした。脚3cは幅1.5mm×高さ1.5mmとし、その先端には共振部5との接続部分となる幅1.5mm×長さ1mmの平面を形成した。
【0044】
共振部5とグランド板4は多層プリント基板8に形成した。プリント基板8の表面に共振部5となる導電パターンを形成し、プリント基板8の内層にグランド板4を形成した。グランド板4には短絡部4aと伝送路接続部4bとを設け、短絡部4aは共振部5に接続されており、伝送路接続部4bはプリント基板8の表面に露出している。
プリント基板8の大きさは。幅10mm、長さ15mm、厚さ1mmとし、表面から0.5mmの内層にグランド板4が形成されている。
【0045】
共振部5は先の説明の通り、インピーダンス調整部5aの面積を多く取ることでインピーダンス整合を取り、結合用電極3に形成される微小電気ダイポールPから発生する誘導電界Eの強度を確保した。
インピーダンス調整部5aの面積は約33mm、共振部5の総面積は約54mmとした。
最終的にプリント基板8は図10に示す状態となった。
【0046】
プリント基板8と結合用電極3の間に、幅10mm×長さ4mm×厚さ1.5mmで、幅6mm×長さ1.5mmの切り欠けのある略凹字状形状をしたPCABS製の誘電体9を挟持させ、結合用電極の脚3cの先端部の平面を共振部5にハンダ固定した。なお結合用電極の脚3cの固定部分は、グランド板4に設けられた短絡部4aの真上となっている。
【0047】
伝送路2を除いた通信カプラ7の大きさは幅10mm×長さ15mm×厚さ3mmとなる。
【0048】
高周波信号の伝送路2には、内部導体、誘電体、外部導体、絶縁被覆材からなる同軸電線を使用した。同軸電線の外径は1.1mmとし、内部導体には銀メッキ銅線、外部導体には錫メッキ銅線、誘電体と絶縁被覆材には四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体を使用した。同軸電線の端末部に段剥ぎ加工を行い、内部導体はプリント基板8の表面に形成された共振部5の給電点Sに、外部導体はプリント基板の表面に露出した伝送路接続部4bにハンダ固定した。通信カプラ7側とは反対の同軸電線の端末部には、高周波信号源等に接続するためのコネクタを取り付け、図11(b)に示した形状の通信カプラ7を完成させた。
【0049】
このようにして製作した通信カプラ7の各特性値を測定した。
【0050】
図12に示した2方向で通信カプラ7の結合強度を測定した結果を図13に示す。一般的に、本発明のようなTransferJetに使用される通信カプラは、通信カプラ間の距離z=15mmにおいて、結合強度が−25dB以上であることが求められる。
4GHz帯において、結合方向1、2ともz=15mmまでは結合強度は−25dB以上となっており、通信に必要な結合強度が得られていることがわかる。
【0051】
逆にz=30mm以上では結合方向1、2とも結合強度は−25dB以下となり、通信特性が低下する。本発明のような通信カプラは、至近距離でのみ通信を行い、距離が離れると発せられる信号が周囲への干渉を起こさない程度まで減衰することを特徴とするため、これらの結果は本発明が有するべき特性を持っていることを示している。
【0052】
また図14は周波数4.48GHzにおける通信カプラ7のゲインを表す図である。H偏波成分、V偏波成分とも各平面の各位置でゲインが0dBiを超えていない。この結果は通信カプラから一定の距離以上離れた場所には通信に有効な電界が発生していないことを示し、至近距離でのみ通信が可能な本発明の特徴を現している。
【0053】
完成した通信カプラ7は厚さ3mmのため、図15に示すような形で薄型通信機器へ容易に組込むことができ、2方向に誘導電界Eが発生するため、図5に示した方法で高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信が薄型通信装置間で可能となる。
【0054】
以上の例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明の通信カプラは、組込まれる通信装置の搭載スペース、必要とされる通信方向等に応じて、特徴を失わないよう種々変形されて供されることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の通信カプラは、パソコン、携帯電話をはじめとする情報端末機器の他に、情報家電製品あるいは自動車関連機器など、各種通信装置へ組込むことができる。
特に、複数方向に通信可能であるから、従来の通信カプラでは設置方法の制限による通信方向の限定が災いして組込みが見送られていた通信装置にも容易に組込むことができ、より多くの通信装置で高速、大容量通信を特徴とする高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信が利用可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 通信カプラ
2 伝送路
3 結合用電極
3a 第1の電極平面
3b 第2の電極平面
3c 脚
4 グランド板
4a 短絡部
4b 伝送路接続部
5 共振部
5a インピーダンス調整部
6 通信装置
6a 薄型通信装置
7 誘導電界を複数方向に発する通信カプラ
8 プリント基板
9 誘電体
P 微小電気ダイポール
E 誘導電界
S 給電点

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15