(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)面方位が{110}である主面を有する第1のシリコン層と、第2のシリコン層と、前記第1のシリコン層と前記第2のシリコン層との間に積層されたシリコン酸化層と、を有するSOIウェハを準備する準備工程と、
(B)少なくとも前記第1のシリコン層をウェットエッチングすることで、角柱を形成する角柱形成工程と、
(C)少なくとも前記第2のシリコン層をドライエッチングすることで、前記角柱を支持する凸部を形成する凸部形成工程と、を備えたことを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
先ず、プリント配線板20の製造に使用されるインプリントモールド10の構成について、
図1(A)〜
図1(C)を参照しながら説明する。
図1(A)は本実施形態におけるインプリントモールドの断面図、
図1(B)は
図1(A)のIB部の拡大図、
図1(C)は
図1(B)のIC-IC線に沿った断面図である。
【0024】
本実施形態におけるインプリントモールド10は、シリコン(Si)から構成される熱インプリント用の金型である。このインプリントモールド10は、
図1(A)〜
図1(C)に示すように、支持部11、凸部12、及び角柱13を備えている。なお、同図に示すインプリントモールド10における凸部12や角柱13の配置は一例に過ぎず、プリント配線板20の配線パターン22、ランド23、及びバイアホール24の配置に応じて決定される。
【0025】
凸部12は、プリント配線板20の配線パターン22やランド23を形成するために、支持部11上に設けられている。また、プリント配線板20のバイアホール24を形成するために、一部の凸部12には角柱13が立設されている。
【0026】
なお、凸部12において配線パターン22に対応する部分は、平面視において支持部11上に線状に延在しており、当該凸部12においてランド23に対応する部分は、平面視において角柱13を包含するような円形状となっている(
図20(A)参照)。
【0027】
それぞれの凸部12の最上部には、シリコン酸化物(SiO
2)からなる第1のシリコン酸化層121が形成されている。なお、凸部12の第1のシリコン酸化膜121に代えて、角柱13Bの最下部に第1のシリコン酸化層16を形成してもよい(
図22(C)参照)。
【0028】
角柱13は、
図1(B)に示すように、単結晶のシリコン(Si)から構成される本体部14と、シリコン酸化物(SiO
2)から構成される第2のシリコン酸化層15と、を有している。本実施形態では、異方性エッチングによって角柱13を形成するため、
図1(C)に示すように、角柱13の軸方向に直交する方向に沿った角柱13の断面形状が、菱形となっている。
【0029】
また、後述するように、角柱13の本体部14は、面方位が{110}である主面31aを有するデバイス層31を加工することで形成されているため、本体部14の上面141は、面方位が{110}の結晶面で構成されている。一方、当該本体部14の全ての側面142〜145は、面方位が{111}の結晶面で構成されている。
【0030】
ここで、面方位{110}とは、面方位(110)及びそれと等価な全ての面方位を含み、具体的には、(110),(101),(011),(1
*10),(1
*01),(01
*1),(11
*0),(101
*),(011
*),(1
*1
*0),(1
*01
*),及び(01
*1
*)を含む。
【0031】
また、面方位{111}とは、面方位(111)及びそれと等価な全ての面方位を含み、具体的には、(111),(1
*11),(11
*1),(111
*),(1
*1
*1),(1
*11
*),(11
*1
*),及び(1
*1
*1
*)を含む。
【0032】
なお、本明細書において、例えば、
【数1】
を表す場合には、(hk
*l)と略記する。
【0033】
図1(B)及び
図1(C)に示すように、この本体部14の上面141全体と2つの側面142,143は、第2のシリコン酸化層15で覆われている。これに対し、本体部14の残りの2つの側面144,145は、第2のシリコン酸化層15から露出して角柱13の側面を構成している。
【0034】
なお、本体部14の上面141及び側面142,143に第2のシリコン酸化層15を形成しなくてもよい(
図22(C)参照)。この場合には、本体部14の上面141が露出して角柱13Bの上面を構成すると共に、本体部14の4つの側面142〜145が露出して角柱13Bの側面を構成する。
【0035】
次に、上記のインプリントモールド10を用いてプリント配線板20を熱インプリント法によって製造する方法について、
図2(A)〜
図2(E)を参照しながら説明する。
図2(A)〜
図2(D)は本実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示す断面図であり、
図2(E)は
図2(D)のIIE-IIE線に沿った断面図である。
【0036】
先ず、
図2(A)に示すように、インプリントモールド10とフィルム状の樹脂基材21aとを、当該樹脂基材21aを構成する樹脂材料のガラス転移温度以上に加熱した後、インプリントモールド10を樹脂基材21aに押し付ける。なお、樹脂基材21aとしては、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなるフィルムや、味の素ファインテクノ株式会社製の層間絶縁フィルムABF等を用いることができる。
【0037】
インプリントモールド10を樹脂基材21aに押し付けると、
図2(B)に示すように、インプリントモールド10の表面形状(凸部12や角柱13の形状)が樹脂基材21aに転写されて、プリント配線板20の絶縁性基材21が形成される。この絶縁性基材21は、インプリントモールド10の凸部12や角柱13にそれぞれ対応する凹部211や孔部212を有している。
【0038】
次いで、
図2(C)に示すように、インプリントモールド10を絶縁性基材21から離型し、カーボンやパラジウム等のDPP処理、若しくは銅やニッケル等のスパッタ処理によって、絶縁性基材21にシード層を形成する。次いで、銅やニッケル等をメッキ処理によって凹部211や孔部212内に充填し、その後、その表面をエッチングや研磨によって平滑にする。これにより、
図2(D)に示すように、絶縁性基材21に配線パターン22、ランド23、及びバイアホール24が形成され、プリント配線板20が完成する。
【0039】
このプリント配線板20では、配線パターン22がランド23の外周部から絶縁基材21の平面方向に沿って延在していると共に、バイアホール24の上にランド23が位置しており、配線パターン22とバイアホール24とは、ランド23を介して接続されている。このプリント配線板20は、例えば、半導体デバイスが実装される半導体パッケージ用基板として利用される。なお、本実施形態では、配線パターン22とランド23が同一の深さを有しているが、特にこれに限定されない。
【0040】
以上のように、本実施形態では、角柱13に加えて凸部12を有するインプリントモールド10を用いてプリント配線板20を製造するので、配線パターン22及びランド23がバイアホール24と共に形成される。
【0041】
このプリント配線板20は、上記の熱インプリント法によって形成されるので、
図2(D)に示すように、配線パターン22やランド23が絶縁性基材21内に埋設されている。
【0042】
また、当該プリント配線板20におけるバイアホール24は、菱形の断面形状を有する角柱13の形状が転写されることで形成されるため、
図2(E)に示すように、バイアホール24の軸方向に対して実質的に直交する方向に沿ったバイアホール24の断面形状も、菱形となっている。
【0043】
なお、
図2(D)に示すプリント配線板20の配線パターン22、ランド23、及びバイアホール24の配置は一例に過ぎず、特に限定されない。
【0044】
本実施形態では、インプリント法によってプリント配線板20を形成するので、アディティブ法、セミアディティブ法、サブトラクティブ法といった従来の製法と比較して、配線パターン22やバイアホール24の微細化を図ることができる。
【0045】
次に、以上に説明したインプリントモールド10の製造方法について、
図3〜
図20を参照しながら説明する。
図3は本実施形態におけるインプリントモールドの製造方法を示すフローチャート、
図4〜
図20は
図3の各ステップを説明するための図である。なお、説明の便宜上、
図4〜
図20では、凸部12や角柱13の配置を単純化して図示しており、
図1(A)に示すものとは一致していない。
【0046】
本実施形態におけるインプリントモールド10の製造方法は、
図3に示すように、大別して、SOIウェハ30を準備する工程S10と、垂直壁312を形成する工程S20と、当該垂直壁312から角柱13を形成する工程S30と、当該角柱13の下に凸部12を形成する工程S40と、から構成されている。
【0047】
なお、本実施形態における工程S10が本発明における準備工程の一例に相当し、本実施形態における工程S20及び工程S30が本発明における角柱形成工程の一例に相当し、本実施形態における工程S40が本発明における凸部形成工程の一例に相当する。また、本実施形態における工程S20が本発明における第1の異方性エッチング工程の一例に相当し、本実施形態における工程S30が本発明における第2の異方性エッチング工程の一例に相当する。
【0048】
以下に、各ステップについて詳細に説明する。
【0049】
先ず、
図3のステップS10において、
図4(A)及び
図4(B)に示すようなSOIウェハ30を準備する。本実施形態におけるSOIウェハ30は、同図に示すように、デバイス層31と、ハンドル層33と、デバイス層31とハンドル層33との間に積層されたBOX(Buried OXide)層32と、を備えている。
【0050】
デバイス層31は、単結晶のシリコン(Si)から構成されており、面方位が{110}であり、好ましくは面方位が(110)である主面31aを有している。本実施形態では、プリント配線板20のバイアホール24の深さがSOIウェハ30のデバイス層31の厚さに依存するため、当該デバイス層31が、1〜100μmの厚さを有していることが好ましく、数10μm程度の厚さを有していることがより好ましい。
【0051】
一方、ハンドル層33も単結晶のシリコンから構成されているが、その主面の面方位は特に限定されない。このハンドル層33は、押圧時のインプリントモールド10の剛性を確保するために、100〜1000μm程度の厚さを有していることが好ましい。
【0052】
このSOIウェハ30のBOX層32は、シリコン酸化物(SiO
2)から構成されている。このBOX層32は、後述するステップS27やステップS35でエッチングストッパとして機能するため、0.1〜2.0μmの厚さを有していることが好ましく、0.5μm〜1.0μm程度の厚さを有していることがより好ましい。
【0053】
なお、本実施形態におけるデバイス層31が本発明における第1のシリコン層の一例に相当し、本実施形態におけるBOX層32が本発明におけるシリコン酸化層の一例に相当し、本実施形態におけるハンドル層33が本発明における第2のシリコン層の一例に相当する。
【0054】
次いで、
図3のステップS20において、デバイス層31に対する異方性エッチングによって垂直壁312を形成する。
【0055】
具体的には、先ず、
図3のステップS21において、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、SOIウェハの上面に第1のマスク層35を形成すると共に、下側にも第1のマスク層36を形成する。この第1のマスク層35,36は、例えば、シリコン酸化物(SiO
2)から構成されており、ウェット酸化、ドライ酸化、或いはパイロジェニック酸化によって形成される。特に上側の第1のマスク層35は、BOX層32の厚さの1/2以下の厚さを有することが好ましく、BOX層32の厚さの1/4〜1/5程度の厚さを有することがより好ましい。
【0056】
また、上側の第1のマスク層35は後述のステップS27及びステップS35でマスク材として機能するため、当該第1のマスク層35の厚さは、シリコンとシリコン酸化物に対するエッチャントのエッチング選択比を考慮して設定されている。
【0057】
具体的には、エッチャントとして濃度20wt%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いて、面方位が{110}である主面を有するシリコンウェハを約80℃でエッチングした場合におけるシリコンとシリコン酸化物のエッチング速度比は、Si:SiO
2=10000:1であることから、上側の第1のマスク層35は、デバイス層31の厚さの1/10000以上の厚さを有することが好ましく、デバイス層31の厚さの1/1000以上の厚さを有することがより好ましい。
【0058】
すなわち、本実施形態では、上側の第1のマスク層35が、BOX層の厚さの1/2以下であり、且つ、デバイス層31の厚さの1/10000以上の厚さを有していることが好ましい。
【0059】
なお、本実施形態では、第1のマスク層35,36をシリコン酸化物(SiO
2)で構成したが、特にこれに限定されない。例えば、第1のマスク層35,36として、LPCVD(減圧化学気相成長)プロセス等によって、SOIウェハ30の両主面にシリコン窒化層(Si
3N
4)を形成してもよい。
【0060】
次いで、
図3のステップS22において、
図6に示すように、上側の第1のマスク層35に円形状の開口351を形成する。具体的には、先ず、第1のマスク層35の表面にレジスト層を形成した後に、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)によって第1のマスク層35をデバイス層31が露出するまでエッチングする。その後、硫酸過水等によってレジスト層をSOIウェハ30から除去する。なお、このステップS22において、バッファードフッ酸(BHF:Buffered Hydrogen Fluoride)等を用いてウェットエッチングを行ってもよい。
【0061】
次いで、
図3のステップS23において、デバイス層31に異方性エッチングを行うことで、デバイス層31にアライメントマーク311を形成する。具体的には、TMAHを用いたウェットエッチングによって、デバイス層31において第1のマスク層25の開口351から露出している部分をエッチングする。
【0062】
このアライメントマーク311は、
図7(A)に示す平面視において六角形であり、且つ、
図7(B)に示す断面視において三角形の凹形状である。このアライメントマーク311は、デバイス層31が有する面方位{110}の主面31aに対して実質的に垂直である2つの{111}面31b,31cを有しており、2つの{111}面31b,31cは、相互に109.5°で交わっている。この2つの{111}面31b,31cは、インプリントモールド10に角柱13を形成する際の位置決めの基準となる。アライメントマーク311の数や位置は特に限定されないが、アライメントマーク311相互の距離が離れている方がアライメントの精度が向上する。
【0063】
なお、デバイス層31が有する面方位{110}の主面31aに対して実質的に垂直である2つの{111}面は、当該2つの{111}面の面方位が相互に交差するものであれば、上記のものに特に限定されない。本実施形態における一方の{111}面31bが本発明における第1の結晶面の一例に相当し、本実施形態における他方の{111}面31cが本発明における第2の結晶面の一例に相当する。
【0064】
なお、本実施形態では、角柱形成のための基準としてアライメントマーク311をデバイス層31に形成したが(ステップS22及びステップS23)、特にこれに限定されない。
【0065】
例えば、デバイス層31の結晶方位を示すオリエンテーションフラット301(
図4(A)参照)がSOIウェハ30に形成されている場合には、アライメントマーク311を形成せずに、当該オリエンテーションフラット301を基準として角柱13を形成してもよい。また、オリエンテーションフラット301に代えて、デバイス層31の結晶方位を示すノッチがSOIウェハ30に形成されている場合には、当該ノッチを基準として角柱13を形成すればよい。
【0066】
次いで、
図3のステップS24において、第1のマスク層35の上に第1のレジスト層41を形成する。具体的には、先ず、第1のマスク層35の上にレジストを滴下してスピンコータによって均一なレジスト膜を形成する。次いで、このレジスト膜上にフォトマスクを重ねた状態で紫外線を露光してキュア(凝固)させた後に現像することで、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、帯状の第1のレジスト層41が第1のマスク層35上に形成される。なお、スピンコータに代えて、スプレーコータを用いてもよい。
【0067】
本実施形態では、この第1のレジスト層41の帯形状は、ステップS23で形成されたアライメントマーク311の一方の{111}面31bに実質的に平行となっている。
【0068】
次いで、
図3のステップS25において、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、第1のマスク層35において第1のレジスト層41から露出している部分を、デバイス層31が露出するまでエッチングする。
【0069】
このステップS25においてウェットエッチングを行う場合には、エッチャントとしてバッファードフッ酸を用いることが好ましく、これによりデバイス層31の露出面の平滑性が良好となる。なお、第1のマスク層35をウェットエッチングする場合には、SOIウェハ30の裏面全面にも第1のレジスト層41を形成する必要がある。
【0070】
一方、このステップS25においてドライエッチングを行う場合には、例えばRIEによって第1のマスク層35をエッチングする。ちなみに、上述のステップS21において、第1のマスク層35をシリコン窒化層(Si
3N
4)で構成した場合にも、このステップS25において、RIEによって第1のマスク層35をドライエッチングする。
【0071】
次いで、
図3のステップS26において、
図10(A)及び
図10(B)に示すように、第1のレジスト層41を除去(剥離)する。具体的には、酸化プラズマによって第1のレジスト層41をアッシング(灰化)した後に、硫酸過水等でSOIウェハ30を洗浄する。
【0072】
次いで、
図3のステップS27において、
図11(A)〜
図11(C)に示すように、デバイス層31において第1のマスク層35から露出している部分に対して、BOX層32が露出するまで異方性エッチングを行う。このエッチングによって、垂直壁312を残してデバイス層31が侵食される。この垂直壁312の両壁面313は、ステップS23で形成されたアライメントマーク311の一方の{111}面31bに実質的に平行に延びている。
【0073】
このステップS27では、エッチャントとしてTMAHを用いて、デバイス層31にウェットエッチングを行う。TMAHは、シリコン酸化物(SiO
2)に対するエッチングレートが低く、BOX層32がエッチングストッパとして機能するので、ハンドル層33の平坦性を確保することができる。
【0074】
次いで、
図3のステップS30において、垂直壁312に対する異方性エッチングによって角柱13を形成する。
【0075】
具体的には、先ず、
図3のステップS31において、
図12(A)〜
図12(C)に示すように、垂直壁312の壁面313に第2のマスク層37を形成する。この第2のマスク層37は、第1のマスク層35,36と同様に、シリコン酸化物(SiO
2)から構成されており、ウェット酸化、ドライ酸化、或いはパイロジェニック酸化によって形成される。この第2のマスク層37は、後述のステップS33でのBOX層32のオーバエッチングを防止するために、BOX層32の露出部分よりも薄いことが好ましい。
【0076】
また、この第2のマスク層37は後述のステップS35でマスク材として機能するため、当該第2のマスク層37の厚さは、シリコンとシリコン酸化物に対するエッチャントのエッチング選択比を考慮して設定されている。
【0077】
具体的には、上述のように、上記条件でのTMAHによるエッチングにおけるシリコンとシリコン酸化物のエッチング速度比がSi:SiO
2=10000:1であることから、第2のマスク層37は、デバイス層31の厚さの1/10000以上の厚さを有することが好ましく、デバイス層31の厚さの1/1000以上の厚さを有することがより好ましい。
【0078】
すなわち、本実施形態では、第2のマスク層37が、BOX層32の露出部分よりも薄く、且つ、デバイス層31の厚さの1/10000以上の厚さを有していることが好ましい。
【0079】
なお、第1のマスク層35,36と同様に、第2のマスク層37として、LPCVDプロセス等によって垂直壁312の壁面313にシリコン窒化層(Si
3N
4)を形成してもよい。但し、第1のマスク層35,36と第2のマスク層37を同一材料で構成することが好ましい。これにより、後述する
図3のステップS33において(
図14(C)参照)、第1のマスク層35と第2のマスク層37を一度にエッチングすることができる。
【0080】
なお、このステップS31における酸化によって、第2のマスク層37の他に、第1のマスク層35やBOX層32も若干拡大するが、本実施形態における第2のマスク層37は、垂直壁312の壁面313に形成されるシリコン酸化層のみを指す。
【0081】
次いで、
図3のステップS32において、
図13(A)〜
図13(C)に示すように、上述のステップS24と同様の要領で、第1のマスク層35、第2のマスク層37、及びBOX層32の上に、帯状の第2のレジスト層42を形成する。
【0082】
本実施形態では、この第2のレジスト層42の帯形状は、ステップS23で形成されたアライメントマーク311の他方の{111}面31cに実質的に平行となっており、ステップS20で形成した垂直壁312と交差している。
【0083】
図21は
図3のステップS32で形成される第2のレジスト層の変形例を示す平面図である。なお、
図21に示すように、アライメントマーク311の他方の{111}面31cに実質的に平行な帯形状と、BOX層32の露出部分全体と、を合わせた領域に、第2のレジスト層42Bを形成してもよい。このような第2のレジスト層42Bからは、第1及び第2のマスク層35,37において、アライメントマーク311の他方の{111}面31cに実質的に平行な帯形状と交差しない部分のみが露出する。
【0084】
次いで、
図3のステップS33において、
図14(A)〜
図14(C)に示すように、上述のステップS25と同様の要領で、第1のマスク層35及び第2のマスク層37において第2のレジスト層42から露出している部分を、デバイス層31が露出するまでエッチングする。
【0085】
なお、このステップS33では、第1及び第2のマスク層35,37に加えて、BOX層32もエッチングされてしまう。一方、このBOX層32は、後述のステップS35においてエッチングストッパとして機能する。このため、このステップS33では、BOX層32の露出部分にエッチングストッパとして機能するための十分な厚さが残るように、エッチングを行う。
【0086】
具体的には、上述のように、上記条件でのTMAHによるエッチングにおけるシリコンとシリコン酸化物のエッチング速度比がSi:SiO
2=10000:1であることから、このステップS33では、BOX層32の露出部分のエッチング後の厚さが、好ましくはデバイス層31の厚さの1/10000以上、より好ましくはデバイス層31の厚さの1/1000以上残るように、エッチングを行う。このようなエッチングによって、BOX層32のオーバエッチングが防止される。
【0087】
次いで、
図3のステップS34において、
図15(A)〜
図15(C)に示すように、上述のステップS26と同様の要領で、第2のレジスト層42を除去(剥離)する。
【0088】
次いで、
図3のステップS35において、
図16(A)〜
図16(C)に示すように、垂直壁312において第1及び第2のマスク層35,37から露出している部分に対して、BOX層32が露出するまで異方性エッチングを行う。この際、ステップS27と同様に、エッチャントとしてTMAHを用いて、デバイス層31にウェットエッチングを行う。TMAHは、シリコン酸化物(SiO
2)に対するエッチングレートが低く、BOX層32がエッチングストッパとして機能するので、ハンドル層33の平坦性を確保することができる。
【0089】
このエッチングによって、角柱13の本体部12を構成する部分を残して垂直壁312が侵食される。この角柱13の本体部14の側面142,143は、アライメントマーク311の一方の{111}面31bに実質的に平行となっているのに対し、角柱13の側面144,145は、アライメントマーク311の他方の{111}面31cに実質的に平行となっている(いずれも
図1(C)参照)。
【0090】
ところで、DRIE等のドライエッチングでも、高アスペクト比のシリコン角柱を形成することは可能である。しかしながら、このドライエッチングに伴ってシリコン角柱の側面に形成されるスキャロップが、プリント配線板のバイアホールに転写されてしまい、バイアホールの内壁面が凹凸になってしまう。このようなバイアホールに高周波信号を流すと、信号がバイアホールの表層部を流れる表皮効果が発生するため、伝送損失が増大してしまう。
【0091】
これに対し、本実施形態では、インプリントモールド10の角柱13をウェットエッチング(異方性エッチング)によって形成するので、バイアホール24の内壁面を平滑とすることができ、表皮効果による伝送損失を抑制することができる。
【0092】
次いで、
図3のステップS40において、ドライエッチングによって角柱13の下に凸部12を形成する。
【0093】
具体的には、先ず、
図3のステップS41において、
図17(A)及び
図17(B)に示すように、上述のステップS24と同様の要領で、プリント配線板20の配線パターン22やランド23に対応した形状を有する第3のレジスト層43を形成する。例えば、
図17(A)において、第3のレジスト層43の線状部分431が、プリント配線板20の配線パターン22に対応し、第3レジスト層43の円形部分432が、プリント配線板20のランド23に対応している。
図17(B)に示すように、角柱13は、この第3のレジスト層43の円形部分432によって包み込まれる。
【0094】
次いで、
図3のステップS42において、
図18(A)及び
図18(B)に示すように、上述のステップS25と同様の要領で、BOX層32において第3のレジスト43から露出している部分を、ハンドル層33が露出するまでエッチングする。
【0095】
次いで、
図3のステップS43において、
図19(A)及び
図19(B)に示すように、上述のステップS26と同様の要領で、第3のレジスト層43を除去(剥離)する。
【0096】
次いで、
図3のステップS44において、
図20(A)及び
図20(B)に示すように、ドライエッチングによってハンドル層33に凸部12を形成する。具体的には、ハンドル層33においてBOX層32から露出した部分を、例えばDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によって所定の深さまでエッチングする。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)や六フッ化硫黄(SF
6)等のフッ素系ガスを例示することができる。
【0097】
なお、第1及び第2のマスク層35,37やBOX層32が、このステップS44のドライエッチングにおいてマスク材として機能するための十分な厚さを有していない場合には、ステップS41の前にSOIウェハ30全体を再度酸化させてもよい。
【0098】
このステップS44でのドライエッチングによって、角柱13の下に凸部12が形成される。また、ハンドル層33において凸部12以外の部分は、インプリントモールド10の支持部11を構成する。なお、ステップS44の後に、上述のステップS25と同様の要領で、第1及び第2のマスク層35〜37をエッチングによって除去してもよい。
【0099】
このように、本実施形態では、プリント配線板20の配線パターン22やランド23に対応する凸部12を、ドライエッチングによって形成するので、シリコンの結晶方位に依存することなく、任意の形状や配置の配線パターンやランドに対応することができ、インプリントモールド10の設計の自由度が向上する。因みに、この凸部12は、角柱13と比較して浅いので、上述したドライエッチングに伴うスキャロップの影響は少ない。
【0100】
なお、
図22(A)〜
図22(C)に示すように、ハンドル層33をエッチングする際に、BOX層32に代えて、第3のレジスト層43をマスク材として用いてもよい。
図22(A)〜
図22(C)は、
図3のステップS40の変形例を示す図である。
【0101】
具体的には、先ず、
図22(A)に示すように、上述のステップS42と同様の要領で、第1及び第2のマスク層35,37とBOX層32をエッチングする。
【0102】
次いで、
図22(B)に示すように、ステップS41と同様の要領で、第3のレジスト層43を形成した後に、ステップS44と同様の要領で、ドライエッチングによって凸部12Bを形成する。具体的には、ハンドル層33において第3のレジスト層43から露出している部分を、例えばDRIEによって所定の深さまでエッチングする。
【0103】
次いで、
図22(C)に示すように、上述のステップS43と同様の要領で、第3のレジスト層43を除去(剥離)する。
【0104】
すなわち、上述の実施形態では、第3のレジスト層43をBOX層32のエッチングのためのマスク材として利用し(
図18(A)及び
図18(B)参照)、BOX層32をハンドル層33のエッチングのためのマスク材として利用する(
図20(A)及び
図20(B)参照)。
【0105】
これに対し、
図22(A)〜
図22(C)に示す変形例では、デバイス層31をBOX層32のエッチングのためのマスク材として利用し(
図22(A)参照)、第3のレジスト層43をハンドル層33のエッチングのためのマスク材として利用する(
図22(B)参照)。
【0106】
このような相違から、
図22(C)に示すように、この変形例における角柱13Bの最下部にシリコン酸化層16が形成されているのに対し、凸部12Bの最上部にはシリコン酸化層が形成されていない。
【0107】
また、同図に示すように、この変形例では、第1及び第2のマスク層35,37がエッチングによって除去されるので、最終的には、本体部14の上面141が露出して角柱13Bの上面を構成していると共に、本体部14の全ての側面142〜145が露出して角柱13Bの側面を構成している。
【0108】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。