(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る押釦式スイッチ装置100の全体構成を示す分解斜視図であり、
図2は、押釦式スイッチ装置100の組立状態を示す斜視図である。なお、
図2では、キートップ40の図示を省略している。以下では便宜上、図示のように上下方向および前後左右方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0009】
押釦式スイッチ装置100は、基部10と、基部10の上面に設置される作動部材20と、作動部材20を挟んで基部10に取り付けられるカバー30と、下方に押圧操作されるキートップ40と、基部10とキートップ40との間に配設される左右一対のリンク部材50とを有する。
【0010】
図3は、基部10の拡大斜視図である。基部10は、略矩形状の底板部11と、底板部11の上面の左右両縁から上方に突設された、前後方向に平板状に延設する左右一対の側板部12と、底板部11の上面の前後両端部から上方に突設された、左右方向に平板状に延設する前後一対の側板部13と、底板部11の上面かつ側板部12,13の内側にて上方に突設された前後一対のガイド部14とを有する。基部10は、非導電性の樹脂を構成材とした一体成形により形成される。
【0011】
各ガイド部14は、平面視略コ字形状を呈して前後方向に互いに向かい合わって配設され、その側板部12,13に面した外側面は、側板12,13に対して略平行に平面状に形成されている。各ガイド部14の左右両端角部は内側に矩形状に除去され、一対のガイド部全体の四隅に凹部14aが形成されている。一方、各ガイド部14の内側面は円弧状に形成され、一対のガイド部14の内側に円筒状の収容空間が形成されている。各ガイド部14の底面はそれぞれ内側に延設され、座部14bが形成されている。各座部14bの内周縁は円弧状をなし、一対の座部14bの内側には略円形状の凹部が形成されている。
【0012】
各ガイド部14の左右両端部上面には、上方に向けてそれぞれ円柱状の突起部14cが突設されている。各ガイド部14の前後両端部には、その上端面から下方にそれぞれ左右一対の円弧状の軸受け溝14dが形成されている。
【0013】
底板部11の上面には導電性の一対のプレート15が設置されている。各プレート15は、ガイド部14の内側の凹部において前後方向に延設され、その一端部は互いに接近し、各プレート15の一端部上面には、上方に膨出した導電性の固定接点16がそれぞれ形成されている。各プレート15は、前後のガイド部14の下方をそれぞれ左方に向けて延在し、その他端部は左側の側板部12を貫通して接続端子17にそれぞれ接続されている。プレート15は、例えばインサート成形により基部10と一体化されている。
【0014】
図4は、作動部材20の断面図である。作動部材20は、上下方向の中心軸を中心とした対称形状をなし、全体が略ドーム形状を呈している。すなわち、作動部材20は、円環部21と、円環部21の内周縁部からテーパ状に上方に延びるテーパ部22と、テーパ部22の上縁部から起立する円環部23とを有する。円環部23の下方には、略円柱状の突起部24が膨出され、突起部24の下面に、導電性の可動接点25が設けられている。作動部材20は弾性体としてのゴム材料によって構成されている。可動接点25は導電ゴムにより形成され、一体成形により作動部材20に一体化されている。なお、導電印刷により、突起部24の下面に可動接点25を形成することもできる。可動接点25は固定接点16とともにスイッチ接点部を構成する。
【0015】
作動部材20は、基部10のガイド部14の内側の収容空間に収容され、円環部21は、座部14b上に設置される。作動部材20が基部10に設置された状態では、一対の固定接点16の上方に可動接点25が位置する。作動部材20に押圧力が作用する前は、可動接点25は固定接点16から離間した上限位置にあり、スイッチ接点部は開放されている。作動部材20に上方から押圧力が作用すると、テーパ部22が弾性変形して可動接点25が下降し、可動接点25が一対の固定接点16に当接する。これにより一対の固定接点16が可動接点25を介して短絡し、スイッチ接点部が閉成される。
【0016】
作動部材20の上方には、
図1に示す薄板状のカバー30が配設される。カバー30は、例えば樹脂を構成材とした一体成形により形成される。カバー30は、外形形状が略矩形状であり、その角部には、ガイド部14の凹部14a(
図3)に対応して切り欠き30aが形成され、カバー30の外形形状は一対のガイド部14の外形形状に一致している。カバー30の中央部には、作動部材20の円環部21(
図4)の外径よりも小さく、かつ、弾性変形部としてのテーパ部22と干渉しない大きさの円形の貫通孔31が開口されている。
【0017】
さらにカバー30には、基部10の突起部14c(
図3)に対応して円形の貫通孔32が開口されている。
図2に示すように、組立状態では、各突起部14cは貫通孔32に挿入される。この状態で、突起部14cの上端部がハンマー等により押し潰されて、カバー30がガイド部14の上面に固定され、座部14bとカバー30との間に作動部材20の円環部21が挟持される。なお、突起部14cの上端部を熱溶融させて、カバー30をガイド部14の上面に固定することもできる。
【0018】
図5は、キートップ40を斜め下方から見た斜視図である。キートップ40は、全体が略矩形の平板形状を呈し、樹脂を構成材とした一体成形により形成される。キートップ40の上面(表面)には、押圧操作される操作部41(
図1)が設けられ、キートップ40の下面(裏面)の前後両端部には、左右方向に平板状に延在する前後一対の側板部42が下方に向けて突設されている。
【0019】
キートップ40の前後方向長さおよび左右方向長さは、基部10の前後方向長さおよび左右方向長さとほぼ等しく、スイッチ組立状態においては、一対の側板部42が基部10の一対の側板部13よりも前後方向外側に位置する。側板部42の左右両端部は、前後方向内側に厚肉化され、その厚肉部の左右外側面には前後内側面に連なり、それぞれ左右方向内側にかけてガイド溝44が形成され、ガイド溝44によって側板部42の左右両端に軸支持部43が形成されている。
【0020】
図6は、リンク部材50の構成を示す斜視図である。なお、ここでは、
図1の右側のリンク部材50の構成を示しているが、左右のリンク部材50の構成は互いに同一であり、右側のリンク部材50を水平面内で180度回転させると、左側のリンク部材50となる。
【0021】
リンク部材50は、樹脂を構成材とした一体成形により形成され、
図6に示すように、前後方向に延在する胴部51と、胴部51の前後両端部から左方に延在する前後一対の腕部52とを有し、全体が略コ字形状を呈している。胴部51の背面(右端面)には、胴部51に沿って略円柱状のガイド軸53が一体に延設され、ガイド軸53の両端部は腕部52の前後両端面よりも前後方向外側に突出している。
【0022】
各腕部52は断面略矩形状を呈し、その基端部(右端部)の内側面はそれぞれ段付き形状を呈し、前後方向内側に突出した段部54がそれぞれ形成されている。各腕部52の先端側の内側面には、前後方向に向けてそれぞれ略円柱形状の軸部55が同軸上に突設されている。前側の腕部52の左端面には凹部56が形成され、後側の腕部52の左端面には凸部57が形成されている。
【0023】
一方のリンク部材50の凹部56は、他方のリンク部材50の凸部57に噛合し、一方のリンク部材50の凸部57は、他方のリンク部材50の凹部56に噛合する。これにより
図1に示すように側面視V字状のV字ギアリンクが構成される。各リンク部材50の軸部55は、それぞれ上方から基部10の軸受け溝14d(
図3)に嵌合される。このとき、リンク部材50は
図2に示すようにガイド部14と側板部12,13との間の空間に配置され、リンク部材50はガイド部14や側板部12,13と干渉することなく、軸部55を支点にして基部10に回動可能に支持される。
【0024】
図7は、押釦式スイッチ装置100の組立状態を示す要部断面図であり、キートップ40が押圧操作される前の初期状態を示している。スイッチ装置100は、例えばプリント基板200に実装される。プリント基板200は、絶縁性の板に導電性の配線パターンによる電気回路を形成したものであり、プリント基板200上に基部10が設置され、接続端子17がはんだ付け等によりプリント基板200上の電気回路に接続されている。
【0025】
スイッチ組立状態では、一対のリンク部材50が互いに噛合し、各リンク部材50の軸部55が基部10の軸受け溝14dに回動可能に支持されている。また、キートップ40の裏側の各ガイド溝44に各リンク部材50のガイド軸53が挿入され、各リンク部材50のガイド軸53は、キートップ40の軸支持部43に、それぞれガイド溝44に沿って摺動可能に支持されている。
【0026】
このため、キートップ40の操作部41に押圧力が作用すると、作動部材20は弾性変形して押し潰され、各リンク部材50は互いに連動して反対方向へ揺動する。このとき、ガイド軸53はガイド溝44を左右方向に摺動し、キートップ40は、操作部41を所定の略水平姿勢に保持しつつ下方に平行移動する。キートップ40が打鍵ストロークの下限位置に移動すると、可動接点25が固定接点16に当接し、スイッチ接点部が閉成される。
【0027】
キートップ40に作用する押圧力が解除されると、リンク部材50の摺動によりキートップ40は水平姿勢を保持しつつ打鍵ストロークの上限位置に至るまで、作動部材20の弾性力により上方に移動する。打鍵ストロークの上限位置は、リンク部材50のガイド軸53がキートップ40の軸支持部43の左右方向内壁に係止されることにより規定される。
【0028】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)互いに噛合された一対のリンク部材50の基端側の軸部55を基部10の軸受け部14dに回動可能に支持するとともに、一対のリンク部材50の先端側のガイド軸53を、キートップ40裏側の軸支持部43で左右方向に摺動可能に支持するようにしたので、キートップ40の操作部41の端部が押圧操作された場合にも、キートップ40は傾かずに水平姿勢を維持することができる。このため、作動部材20は周方向均等に弾性変形して良好なクリック感を得ることができ、スイッチ装置100の操作性が向上するとともに、スイッチ接点部の開閉動作が安定する。
【0029】
(2)キートップ40の押し下げ時に、各リンク部材50が基部10の側板部12,13とガイド部14との間の空間に収容されるので、各リンク部材50は基部10や作動部材20と干渉することなく揺動し、スイッチ装置100を容易に低背化することができる。
(3)各リンク部材50を略コ字形状として作動部材20を包囲するように配置するので、スイッチ装置100を前後左右方向にも小型化できる。
(4)作動部材20の内側の突起部24に、一体成形により可動接点25を設けるようにしたので、可動接点25を作動部材20に安定して取り付けることができる。
(5)基部10に、作動部材20、カバー30およびキートップ40を積み上げて押釦式スイッチ装置100を構成するので、スイッチ装置100の組立が容易である。
【0030】
なお、上記実施の形態では、作動部材20の内側に一体成形により可動接点25を設けるようにしたが、可動接点25の構成はこれに限らず、例えば
図8に示すように導電性の金属によって構成された板ばね26に可動接点25を設けてもよい。ここで、
図8(a)は板ばね26の平面図、
図8(b)は側面図であり、板ばね26は、略C字状の平板部26aと、平板部26aの内周縁から上方かつ板ばね26の中心に向けて延在する板ばね部26bと、板ばね部26bの先端部において前後方向に幅広に延在する接点部26cとを有し、接点部26cの下面に可動接点25が設けられている。
【0031】
この場合、平板部26aを基部10の座部14b(
図3)と略同一形状に形成し、平板部26aを固定接点16から絶縁した状態で座部14bと作動部材20の円環部21との間に挟設する。このとき、固定接点16の上方に可動接点25が位置し、キートップ40の押圧操作により作動部材20の内側の突起部24(
図4)により接点部26cが押圧されると、板ばね部26bが弾性変形し、可動接点25を固定接点16に当接することができる。一方、キートップ40に作用する押圧力が解除されて作動部材20の突起部24が上方に移動すると、板ばね部26bのばね力により接点部26cが上方に移動し、可動接点25を固定接点16から離間することができる。
【0032】
ところで、押釦式スイッチ装置100の組立状態では、リンク部材50のガイド軸53がキートップ40のガイド溝44に挿入されてキートップ40が取り付けられるが、この取付作業は例えば次のようにして行われる。
図9は、キートップ40の取付工程の一例を示す押釦式スイッチ装置100の要部断面図である。なお、
図9では、キートップ40のガイド溝44の左右方向外側に、下方に向けて側壁40aが突設されている。
【0033】
この場合、まず、
図9(a)に示すように、キートップ40を傾けた状態で、左側のガイド溝44に左側の前後一対のガイド軸53を挿入する。次いで、
図9(b)に示すように、左側のガイド軸53をガイド溝44の奥部まで挿入させた状態で、キートップ40の右側を下方に回転させながら作動部材20に抗してキートップ40を下限位置まで押し込む。さらにキートップ40を右側にずらし、右側のガイド溝44に前後一対のガイド軸53を挿入する。その後、キートップ40の押し込みをやめると、
図9(c)に示すようにキートップ40は作動部材20の弾性力により押し上げられ、キートップ40の取付が完了する。
【0034】
以上の取付工程を容易にするために、例えばリンク部材50のガイド軸53を
図10に示すように構成してもよい。
図10(a)、(b)は、それぞれキートップ40の押圧操作前および押圧操作後のスイッチ装置100の要部断面図であり、
図10(c)は、
図10(b)の状態でガイド軸53の右後端部を上方から見た図である。
図10では、左右一対のリンク部材50の各ガイド軸53は、円形断面の一部が直線状に切り取られた形状をなしている。すなわち、ガイド軸53には、前後方向に延在する平坦面53aが形成され、各ガイド軸53は側面視略D字状の断面形状を呈している。
【0035】
平坦面53aは、
図10(a)の状態で、左右のガイド軸53の平坦面53aが略ハの字形状となり、
図10(b)の状態では、左右のガイド軸53の平坦面53aが上下方向に延びて互いに平行に対向するように設けられている。これによりキートップ40の取付時に、ガイド軸53の平坦面53aを軸支持部43の左右外側端面43aに沿ってガイド溝44内に案内することができる。このため、キートップ40を左右方向へずらす量が少なくなり、キートップ40の取付が容易になる。また、キートップ40の取付時に、ガイド軸53に作用する力を低減でき、軸支持部43とガイド軸53の変形や破損を防止できる。キートップ40の押圧操作時には、ガイド軸
53の平坦面53aが軸支持部
43に接することなく
図10(a)の状態から
図10(b)の状態へと移行するため、ガイド軸
53の円滑な摺動を実現できる。
【0036】
図11は、
図10の変形例を示す図であり、
図11(a)、(b)は、それぞれキートップ40の押圧操作前および押圧操作後の要部断面図を、
図11(c)は、
図11(b)の状態でガイド軸53の右端部を上方から見た図を示している。
図11では、一対のリンク部材50の各ガイド軸53の前後両端面に、それぞれ前後方向内側にかけてスリット状のすり割り53bが設けられている。すり割り53bは、ガイド軸53の前後端面中央部に、
図11(b)の状態で上下方向に貫通して設けられている。これによりキートップ40の取付時に、すり割53bを介してガイド軸53を左右方向に容易に弾性変形させることができ、ガイド軸53のガイド溝44への挿入が容易となる。
【0037】
ガイド軸53の根元部に切り欠きを設けてキートップ40の取付を容易にしてもよい。
図12は、その一例を示すリンク部材50の斜視図である。
図12では、ガイド軸53の前後方向内側に、その左右方向外端面から左右方向内側にかけて切り欠き53cが形成されている。切り欠き53cは、リンク部材50を上下方向に貫通して設けられている。これによりガイド軸53の前後両端面に前後方向に圧縮力が付加することにより、ガイド軸53を前後方向内側に容易に弾性変形させることができ、ガイド軸53のガイド溝44への挿入が容易となる。
【0038】
リンク部材50へのキートップ40の着脱を容易にするために、キートップ40の軸支持部43を弾性変形可能な形状に構成してもよい。
図13は、その一例を示す図であり、
図13(a),(b)は、それぞれキートップ40の押圧操作前および押圧操作後の要部断面図を、
図13(c)は、
図13(a)のc−c線断面図を示している。
図13では、軸支持部43の上端部に前後方向にわたって切り欠き430が設けられ、
図13(a),(b)に示すように、切り欠き部430の下方にて軸支持部43は断面略L字形状をなし、L字部431が形成されている。L字部431は、キートップ40の前後内側の底面から弾性変形可能に片持ち支持されている。
【0039】
このように軸支持部43に切り欠き部430を設けることで、L字部431が弾性変形可能となり、ガイド軸53や軸支持部43を塑性変形および破損させることなく、キートップ40を容易に着脱することができる。とくに
図13(a)の状態からキートップ40を上方へ引き上げた場合には、その引き上げ力により切り欠き部430の空間(上下方向高さ)が拡げられ、切り欠き部430を貫通してガイド軸53を切り欠き部430の左右内側にスライドさせることができる。これによりユーザがキートップ40を無理に引き抜こうとした場合であっても、ガイド軸53や軸支持部43を破損することなく、キートップ40を取り外すことができる。
【0040】
リンク部材50へのキートップ40の着脱を容易にするために、ガイド軸53を摺動可能に案内する軸支持部43のアンダーカット部分の長さ(軸支持部43の下部の左右方向長さ)を短くするように構成してもよい。
図14は、その一例を示す図であり、
図14(a),(b)は、それぞれキートップ40の押圧操作前および押圧操作後の要部断面図を、
図14(c)は、
図14(a)のc−c線断面図を示している。
図14では、軸支持部43の左右外側にリブ45が突設されている。
【0041】
この場合、ガイド軸53は軸支持部43とリブ45に案内されてガイド溝44に挿入されるとともに、リブ45が軸部53の抜け止めとして機能する。このため、
図14(b)に示すように、アンダーカットの長さを
図10のもの(点線)よりも所定長さΔLだけ短くすることができる。その結果、ガイド軸53や軸支持部43を塑性変形や破損させることなく、キートップ40を容易に着脱することができる。なお、
図14に
図13の構成を組み合わせてもよい。
【0042】
以上の
図13、
図14の構成では、
図10〜
図12に示すようにリンク部材50を構成する必要がないため、リンク部材50の成形用の金型を新たに作成する必要がなく、リンク部材50の製造コストの増加を抑えることができる。なお、
図10〜
図12のリンク部材50の構成を、
図13、
図14に適用してもよい。
【0043】
なお、V字ギアリンクをなす一対のリンク部材を、メンブレンスイッチを有する押釦式スイッチ装置に適用することもできる。
図15は、この適用例を示す押釦式スイッチ装置101の分解斜視図であり、
図16は、押釦式スイッチ装置の組立状態を示す斜視図である。なお、
図16では、キートップの図示を省略している。
【0044】
押釦式スイッチ装置101は、サポートパネル110上に装着されたメンブレンスイッチ120と、サポートパネル110の上方に立設されるハウジング130と、ハウジング130の内側にてメンブレンスイッチ120上に配置される作動部材140と、ハウジング130に回動可能に支持される一対のリンク部材150と、押圧操作されるキートップ160とを有する。
【0045】
ここで、リンク部材150とキートップ160の基本的構成は、上述のリンク部材50とキートップ40の基本的構成と同一である。すなわち、各リンク部材150は略コ字形状を呈し、その腕部の内側面には、それぞれ前後方向内側に向けて同軸上に軸部151が突設され、腕部の外側面には、それぞれ前後方向外側に向けて同軸上にガイド軸152が突設されている。スイッチ組立状態では、腕部の左右先端部が互いに噛合するとともに、ガイド軸152がキートップ160の裏側のガイド溝(不図示)に左右方向摺動可能に挿入され、側面視V字ギアリンクが構成される。
【0046】
サポートパネル110は、樹脂や金属等からなる板部材であり、サポートパネル110にはハウジング取付用の複数(図では4個)の貫通孔111が開口されている。
図17は、
図16のXVII-XVII線断面図である。メンブレンスイッチ120は、上下に対向して配置された一対の接点121と、一対の接点121を各々担持する一対のシート基板122と、一対のシート基板122の間に配設され、シート基板同士を所定距離だけ離間して両接点121を開状態に保持するスペーサ123とを有する。
図15に示すようにシート基板122には、各貫通孔111の周囲に貫通孔が開口され、このうちシート基板122の左右の貫通孔は互いに連通し、前後一対の長孔124が開口されている。
【0047】
作動部材140は、上述の作動部材20と同様、略ドーム形状を呈し、前後一対の長孔124の間のメンブレンスイッチ120上に配置されている。
図17に示すように、作動部材140の内側には下方に向けて突起部141が膨出され、突起部141は接点121の上方に位置する。キートップ160が押圧されると、作動部材140のテーパ部142が弾性変形して突起部141が下降する。この突起部141の下降動作により接点121に所定の押下力が作用し、上下の接点121が閉じられる。キートップ160の押圧力が解除されると、作動部材140の弾性力により突起部141が上昇し、接点121が開放される。
【0048】
ハウジング130は、略矩形の枠形状を呈する樹脂成形品であり、その四方角部にはそれぞれ下方に向けて脚部131が突設されている。ハウジング130の左右の脚部131の間には、それぞれ前後一対の側壁132が左右方向にかけて延設されている。脚部131は側壁132よりも下方に突出している。側壁132の下端面は、長孔124を介してサポートパネル
110の上面に当接し、ハウジング130がサポートパネル
110上に支持される。このとき、脚部131は貫通孔111を貫通し、その先端部はサポートパネル110の裏側で熱カシメされ、サポートパネル110に固定される。
【0049】
ハウジング130の各側壁132には、その下端面から上方にかけて円弧状の軸受け溝133が、左右方向に離間してそれぞれ一対設けられている。ハウジング130は、作動部材140とリンク部材150の間の空間に上方から挿入され、サポートパネル110に固定される。このとき、リンク部材150の軸部151が軸受け溝133に嵌合し、リンク部材150はハウジング130により回動可能に支持される。
【0050】
以上のようなメンブレンスイッチ120を有する押釦式スイッチ装置101においては、ハウジング130の脚部131が熱カシメによってサポートパネル110に固定されるため、熱カシメ時にサポートパネル全体が高温となる。その結果、ハウジング130がサポートパネル110に接触する接触部(側壁132の下端部)が高温となり、ハウジング130の側壁132が熱変形し、リンク部材150の良好な組立や円滑な動作が妨げられるおそれがある。
【0051】
この熱変形を回避するために、熱かシメ時の温度や加熱時間を調整することが考えられるが、熱カシメ時の温度や加熱時間は、サポートパネル110の寸法や板厚、カシメ機の種類等により変動するため、調整作業に手間がかかる。このような問題に対処するために、例えば
図18に示すようにハウジング130を構成すればよい。
【0052】
図18(a)は、ハウジング130の平面図であり、
図18(b)は
図18(a)のb−b線断面図である。
図18では、ハウジング130の前後の側壁132の底面中央部に、それぞれ突起部135が突設されている。これによりハウジング130の取付時にサポートパネル110の上面に突起部135が当接し、この当接部以外では、側壁132の下端面とサポートパネル110の上面との間に隙間が生じる。このため、ハウジング130とサポートパネル110の接触面積が小さくなり、脚部131の熱カシメ時におけるサポートパネル110からハウジング130への伝熱量を低減することができる。
【0053】
図19(a)は、
図18の変形例を示すハウジング130の平面図であり、
図19(b)は
図19(a)のb−b線断面図である。なお、
図19(b)にはサポートパネル110も併せて示している。
図19では、ハウジング130の前後の側壁132の底面中央部に、それぞれ略円錐形状の突起部136が突設され、サポートパネル110には、この突起部136に対応して貫通孔112が開口されている。貫通孔112の径は突起部136の基端部の径よりも小さい。
【0054】
これによりハウジング130の取付時に突起部136の周面が貫通孔112の上側開口縁に当接し、この当接部以外では、側壁132の下端面とサポートパネル110の上面との間に隙間が生じる。このため、ハウジング130とサポートパネル110の接触面積が小さくなり、サポートパネル110からハウジング130への伝熱量を低減できる。また、貫通孔112に突起部136が嵌合することで、サポートパネル110に対してハウジング130を位置決めすることができ、熱カシメ時におけるハウジング130の位置ずれを防止できる。
【0055】
図18,19では、ハウジング130の底面に突起部135,136を設けて、サポートパネル110からハウジング130への伝熱量を低減するようにしたが、ハウジング130とサポートパネル110の間に断熱性を有する断熱フィルムを介装し、サポートパネル110からハウジング130への伝熱量を低減してもよい。
図20は、その一例を示すメンブレンスイッチ120の平面図である。
図20では、ハウジング130の側壁132が設置されるサポートパネル110の上面に、メンブレンスイッチ120の貫通孔124の一部を塞ぐように断熱フィルム137が装着されている。
【0056】
これにより脚部131の熱カシメ時において、サポートパネル110からハウジング130への伝熱量を抑えることができ、ハウジング130の熱変形を防止できる。この場合、メンブレンスイッチ120の表面を構成するメンブレンフィルムを、断熱フィルム137に流用することができる。メンブレンフィルムは耐熱性に優れたPETシート(例えば耐熱温度150℃)により構成されるため、メンブレンフィルムにカシメ熱が作用しても、メンブレンフィルムの溶融等のおそれがない。
【0057】
上記実施の形態(
図1〜
図8)では、一対の固定接点16が設けられた基部10をプリント基板200に実装するようにしたが、他の部材に取り付けてもよい。一対のリンク部材50の凹部56と凸部57を互いに噛合させて側面視V字状のギアリンクを構成したが、各リンク部材50の形状および一対のリンク部材50の係合構造はこれに限らない。互いに係合する一対のリンク部材50により操作部材としてのキートップ40が一定姿勢で移動するのであれば、移動方向を規制する規制手段の構成はいかなるものでもよい。例えば一対のリンク部材50を上下反転し、軸部55をキートップ40の裏側で回動可能に支持するとともに、ガイド軸53を基部10により摺動可能に支持するようにしてもよい。キートップ40の操作部41は水平面とは限らず、例えば操作部41を傾斜して設け、この傾斜面を保ったままキートップ40が基部10に対して垂直(上下方向)に移動するようにしてもよい。基部10の側板部12,13とガイド部14との間の空間(収容部)に、一対のリンク部材50を収容可能としたが、リンク部材50を上下反転した場合には、キートップ40の裏側に収容部を設ければよい。
【0058】
上記実施の形態(
図10〜
図12)では、ガイド軸53を断面略D字形状とし、あるいはガイド軸53にすり割り53bを設け、あるいはガイド軸53の突出方向に対して略垂直(左右方向)に切り欠き53cを設けたが、キートップ40の取付を容易にするための摺動軸部としてのガイド軸53の構成は上述したものに限らない。
図10では、ガイド軸53の平坦面53aを軸支持部43の端面に沿ってガイド溝44に案内するようにしたが、案内部の構成はこれに限らない。上記実施の形態(
図13)では、軸支持部43に切り欠き430を設けてL字部431を形成したが、キートップ40の底面から離間して垂下するのであれば、垂下部をL字以外の他の形状としてもよい。上記実施の形態(
図14)では、軸支持部43の左右外側にリブ45を設けるようにしたが、軸支持部43に対向してキートップ40の底面から垂下し、軸支持部43とともにガイド軸53を案内するのであれば、リブ45の構成はいかなるものでもよい。
【0059】
上記実施の形態(
図15〜
図20)では、支持プレートとしてのサポートパネル110上に、上下に対向して配置された一対の接点121を有するメンブレンスイッチ120を配設したが、キートップ160の押圧操作により作動する他の接点部を用いてもよい。接点部を包囲するようにサポートパネル110に立設して固定されるのであれば、ハウジング130の構成は上述したものに限らない。ハウジング130の端面とサポートパネル110の上面との当接部における、ハウジング130への伝熱量を低減するように構成されるのであれば、伝熱抑制手段の構成は上述したものに限らない。例えば
図19において、サポートパネル110に貫通孔112を設けたが、嵌合部の構成は単なる凹部であってもよい。
図20において、断熱フィルム137をハウジング130の端面に貼付してもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の押釦式スイッチ装置に限定されない。