【実施例1】
【0019】
本発明の薬剤手撒き代行装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が薬剤手撒き代行装置10の外観斜視図、(b)が容器運搬具20の外観斜視図、(c)が基板13に装着された機構部31〜46の斜視図である。また、
図2は、(a)が容器運搬具20の箱体21の縦断面図、(b)がロック機構25の縦断面図、(c)及び(d)が薬剤容器2を収納した容器運搬具20の縦断面図であって、(c)がアンロック状態を示し、(d)がロック状態を示している。
【0020】
薬剤手撒き代行装置10は(
図1(a)参照)、既述した薬剤手撒き装置のうち自動分包の中断を短縮や回避するために薬剤分配用機構部を薬剤分包機から分離したものを更に改良して薬剤分配を手撒きから自動にしたものであり、自立した専用の筐体11を具備して、薬剤分包機やそれに組み込まれた薬剤手撒き装置とは別体のものとなっている。
筐体11の内部空間は、基板13にて上下に仕切られており、基板13の上方と直下のところが機構部となり、基板13の下方の底板15の上が電装部となっている。
電装部には、図示は割愛したが、分配制御装置や、電源回路の他、バキュームチャック用やクリーナ用のエア配管なども収納されている。
【0021】
筐体11の外板のうち主に基板13より上のところには、メンテナンス用の大扉12と、容器運搬具20を出し入れするための小扉14と、予備撒きカセット6を出し入れするためのカセット出入口16と、予備撒きカセット6の出入動作や薬剤分配の開始などを手動指示するため例えば幾つかの押しボタンを配設した操作部17と、装置動作状態や薬剤手撒き情報などを目視可能に表示するため例えば液晶パネルからなる表示部18とが設けられている。底板の下面には移動用キャスターや固定用ボルトも設けられている。
【0022】
また、薬剤手撒き代行装置10に固定されるものでなく薬剤手撒き代行装置10に出し入れして用いられるものとして(
図1(b),(c)参照)、容器運搬具20と薬剤容器2と予備撒きカセット6がある。
容器運搬具20は(
図1(b)参照)、小扉14を開けて出し入れできる大きさの箱体21に、人手で運び易いよう持ち手22を付けたものであり、薬剤容器2を一つずつ差し込んで収納しうる容器収納空間23が多段に図示の例では上下4段に形成されている。
【0023】
容器運搬具20の箱体21には(
図2参照)、容器収納空間23の総てと天板と底板とを貫通して上下に連なるロッド挿通穴24が形成されており、そのロッド挿通穴24にロック機構25のロッド27が挿通されている。ロック機構25のロッド27の上端には、摘み兼抜け落ち防止用のヘッド26が装着され、ロッド27の中間部には、一つずつ容器収納空間23に収まるフック28が装着されている。そして(
図2(c)参照)、例えば容器運搬具20を容器載置部34に載置してロッド27の下端を押し上げたり或いはヘッド26を引っ張ったりして、ロック機構25が持ち上げられると、容器収納空間23の中の薬剤容器2からフック28が外れて、ロック機構25がアンロック状態になり、容器運搬具20から薬剤容器2を取り出すのが許容されるようになっている。
【0024】
これに対し(
図2(d)参照)、例えば持ち手22を掴んで容器運搬具20を持ち上げると、ロック機構25が自重で下降し、それによって容器収納空間23の中の薬剤容器2にフック28が掛かって、ロック機構25がロック状態になり、容器運搬具20から薬剤容器2が抜け落ちるのが防止されるようになっている。
薬剤容器2は(
図1(c)参照)、丸皿や角皿のような上面解放の小容器であり、容器運搬具20の容器収納空間23に一つずつ収納しうるようになっている。
【0025】
薬剤4は、玉剤などの錠剤が典型的であるが、一つずつ移載しうるものであれば、例えばカプセル等に入った散剤や水剤など他の剤形でも予備撒き可能な薬剤になりうる。
予備撒きカセット6は、既述した別体の薬剤分包機に組み込まれている薬剤手撒き装置に着脱しうるカセットであり、薬剤手撒き対象の区画室8が多数形成されている。区画室8の上面は薬剤分配時に薬剤8を投入しうるよう解放されている。また、薬剤手撒き代行装置10で薬剤分配を終えて薬剤分包機の薬剤手撒き装置へ移された予備撒きカセット6の各区画室8から一斉に分配済み薬剤4を薬剤手撒き装置の作動部へ移し替えるのを可能とするために、予備撒きカセット6の下面部には開閉部材が付設されている。
【0026】
薬剤手撒き代行装置10の機構部の構成に説明を戻すと(
図1(c)参照)、基板13の上面には、容器運搬具20の底部を収めて位置決めすガイド凹み等が形成されていて容器運搬具20を安定姿勢で一時載置しうる運搬具載置部31と、例えば運搬具載置部31の下方に設けられた運搬具昇降機構32と運搬具載置部31の横に設けられた容器水平搬送機構33とからなり運搬具載置部31に置かれた容器運搬具20から薬剤容器2を一つずつ取り出して容器載置部34に移して一時載置するとともに空になった薬剤容器2を容器運搬具20に戻す容器移載機構32,33と、薬剤容器2の底面より広いガイドやストッパ等が設けられていて薬剤4を収容した薬剤容器2を安定姿勢で一時載置しうる容器載置部34とを備えている。
【0027】
また、薬剤手撒き代行装置10は、基板13の上に、カセット出入口16から進退しうる引出機構からなり予備撒きカセット6を一時載置しうるカセット載置部36と、カセット載置部36の引出部材を伸縮動作させてカセット載置部36の上の予備撒きカセット6をカセット出入口16から出し入れする進退駆動機構35とを備えている。
さらに、薬剤手撒き代行装置10は、薬剤4を例えば負圧吸引にて吸着保持する多数の薬剤保持部材41と、薬剤保持部材41を複数たとえば3個ずつ装備した複数の交換ユニット42と、容器載置部34に置かれた薬剤容器2を照らす照明43と、容器載置部34に置かれた薬剤容器2の薬剤4を撮る撮像装置44と、使用中の交換ユニット42を一つ装着しうる薬剤移載機構45と、待機中の交換ユニット42を複数装着しうるユニットストック46とを備えている。
【0028】
薬剤移載機構45は、例えば汎用のハンドリングロボットからなり、平面移動に加えて上下移動も可能なアームを具備していて、そのアームをユニットストック46のところへ伸ばしてアーム先端の交換ユニット42を交換するようになっている。また、アーム先端を容器載置部34のところへ伸ばして、容器載置部34に置かれている薬剤容器2の中から薬剤保持部材41にて薬剤4を取り出すとともに、アーム先端を予備撒きカセット6のところへ伸ばして、カセット載置部36に置かれている予備撒きカセット6の各区画室8に薬剤4を投入することにより、薬剤分配を自動で行うようになっている。
【0029】
分配制御装置は、例えばプログラマブルなマイクロプロセッサやシーケンサからなり、薬剤手撒き装置を組み込んだ薬剤分包機の制御装置から又はそのような薬剤分包機に調剤指示を与える上位装置から、その薬剤分包機の薬剤手撒き装置に係る薬剤手撒き情報があれば、その情報を有線や無線の適宜な通信手段によって取得して、その薬剤手撒き情報に基づいて薬剤移載機構45やその他の機構に対して動作制御を行うことにより、機構部に薬剤分配を的確に遂行させるようになっている。また、撮像装置44で得た画像データに基づいて薬剤4の認識と確認なども行うようになっている。
なお、その具体的な制御内容は、以下の動作説明において例示する。
【0030】
この実施例1の薬剤手撒き代行装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が薬剤手撒き代行装置10の外観斜視図、(b)が容器運搬具20外観斜視図、(c)が基板13に装着された機構部31〜46の斜視図である。また、
図2は、(a)が容器運搬具20の箱体21の縦断面図、(b)がロック機構25の縦断面図、(c)及び(d)が薬剤容器2を収納した容器運搬具20の縦断面図であって、(c)がアンロック状態を示し、(d)がロック状態を示している。
【0031】
薬剤手撒き代行装置10は、薬剤手撒き装置が組み込まれた薬剤分包機が一台または複数台設置されている調剤薬局や調剤部門で使用されることが多く、薬剤手撒き代行装置10の分配制御装置と薬剤分包機の制御装置やその上位装置とがLAN等を介して通信可能であれば薬剤手撒き情報が自動で分配制御装置に送りつけられ、そうでない場合は薬剤手撒き情報が操作部17の手動操作にて分配制御装置に入力される。薬剤手撒き情報は、薬剤分包機80で自動分包できない薬剤だけについて剤種や分配情報などを規定したデータであり、表示部18に表示される他、手撒き調剤指示箋などに印刷される。
【0032】
その表示や指示箋を見て、人手で、薬品棚等から必要な薬剤4を収集して例えば剤種毎に分けて幾つかの薬剤容器2に収容し、更にその薬剤容器2を容器運搬具20に収納する。容器収納後は薬剤容器2が容器運搬具20から抜け落ちないようロック機構25でロックし、容器運搬具20を薬剤手撒き代行装置10のところへ運び、小扉14を開閉して容器運搬具20を運搬具載置部31に載せ置く。容器運搬具20が運搬具載置部31に置かれるとロック機構25のロッド27の下端が運搬具載置部31によって押し上げられるので、容器運搬具20は、ロックが解除され、薬剤容器2の取出が許容される。
【0033】
その容器運搬具20のセットの先でも後でも良いが、操作部17を操作してカセット載置部36をカセット出入口16から進出させて、その上に空の予備撒きカセット6を載せてから、カセット載置部36を軽く押して又は再び操作部17を操作して、カセット載置部36を後退させて戻すととともに、それで予備撒きカセット6をカセット出入口16から内部へ引き込ませる。
これで、薬剤分配の自動処理の準備が整うので、操作部17を操作して薬剤分配の自動処理を開始させる。そうすると、分配制御装置が薬剤手撒き情報に基づいて各部材の動作を制御することで薬剤分配が自動で実行される。
【0034】
詳述すると、分配制御装置の制御の下、容器移載機構32,33によって容器運搬具20から薬剤容器2が一つずつ容器載置部34に送り込まれ、その容器載置部34に収容されている薬剤4の剤種と位置が撮像装置44の画像データに基づくコードや文字の読取さらにはパターンの切出やマッチングといったデータ処理によって検出され、その検出された剤種や位置と薬剤手撒き情報との突き合わせ結果に応じて、薬剤移載機構45によって容器載置部34の薬剤容器2から薬剤4が取り出されるとともにその薬剤4が予備撒きカセット6の何れか適切な区画室8に投入される。そして、薬剤手撒き情報で指示された薬剤分配が終了すると、予備撒きカセット6がカセット出入口16から出されるとともに、空になった薬剤容器2を収納した容器運搬具20がセット時の高さに戻される。
【0035】
こうして、予備撒きカセット6への薬剤4の手撒き作業が、薬剤手撒き代行装置10による自動の薬剤分配にって代行されて、能率良く迅速に遂行される。しかも、分配ミスの少ない高確度で実行される。
人手に依存するのは、薬剤4の取り揃えや予備撒きカセット6のセットなどの準備作業と、薬剤分配を終えた容器運搬具20の取り出しや予備撒きカセット6の薬剤手撒き装置への移し替えといった後始末作業だけである。
【実施例3】
【0039】
本発明の薬剤手撒き代行装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図4は、(a)及び(b)が何れも薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80とを横に並べて設置したところの外観斜視図、(c)及び(d)が薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80とを向かい合わせで設置したところの側面図である。
【0040】
図4(a)に示したものは、連携する薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80とを左右隣り合わせに設置したものであり、薬剤手撒き情報の自動送受信は行うが、予備撒きカセット6を薬剤手撒き代行装置10のカセット載置部36から薬剤分包機80の薬剤手撒き装置81へ移載するのは人手で行うようになっている。
【0041】
図4(b)〜(d)に示したものは、薬剤手撒き代行装置10のカセット載置部36から薬剤分包機80の薬剤手撒き装置81へ予備撒きカセット6を移載するカセット移載機構82,83を備えていて、薬剤分配を終えた予備撒きカセット6の移載まで自動で行われるようになっている。
そのうち
図4(b)に示したものは、カセット移載機構82の大部分が薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80の中に格納されて、外部への突出部分が小さくなっている。
【0042】
図4(c)に示したものは、薬剤手撒き代行装置10を薬剤分包機80の前方に位置させるとともに、両者の間に別体のカセット移載機構83を配置したものであり、特定の薬剤分包機80に限らず幾つかの薬剤分包機80に対して手軽に薬剤手撒き代行装置10及びカセット移載機構83を組み替えることができるようになっている。
【0043】
図4(d)に示したものは、薬剤手撒き代行装置10にカセット供給機構84を追加内蔵したものであり、上側部分には未使用で空の予備撒きカセット6を積み上げ収納し、下側部分には使用済みの予備撒きカセット6を積み重ね収納している。そして、未使用の予備撒きカセット6を一つずつ取り出してカセット載置部36に載置し、その予備撒きカセット6に薬剤分配を行ってからその予備撒きカセット6を薬剤分包機80へ供給する一方、使用済みの予備撒きカセット6を薬剤分包機80から受け取って下側部分に収納するようになっている。