(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
i.第1のタイプの粒子(FP)及び第2のタイプの粒子(SP)の両方が引きつけられる少なくとも1つの安定均衡点(SEP)を有する力場(F)を生成するステップと、
ii.制御された速度(VF)で前記力場(F)を移動させ、前記少なくとも1つの安定均衡点(SEP)の空間内において少なくとも1つの移動を引き起こすステップと
を含む、少なくとも第1のタイプ(FP)及び第2のタイプ(SP)の粒子を分離する方法であって、
前記第1のタイプの粒子が、第1の移動速度(VFP)で前記力場(F)の移動に追従し、前記第2のタイプ(SP)の粒子が、第1の速度(VFP)よりも低い第2の移動速度(VSP)で前記力場(F)の移動に追従し、
前記力場(F)の前記少なくとも1つ安定均衡点(SEP)の少なくとも1つの移動が、第1の移動速度(VFP)と実質的に同程度であって、第2の移動速度(VSP)と異なるように選択された速度(VF)で、少なくとも1回の期間の間に引き起こされ、前記第1のタイプ(FP)の粒子が前記並進に継続的に追従し、前記第2のタイプ(SP)の粒子が、後に取り残され、前記少なくとも1つの安定均衡点(SEP)に次第に引き付けられなくなる、方法。
前記第1のタイプの粒子(FP)の移動速度(VFP)と同程度の速度(VF)で、1空間周期(CPIT)に等しい前記力場(F)の1つの移動に相当する期間の間に、前記力場(F)をある方向(X)に移動させるステップと、
期間(TW)の間、前記力場を停止させるステップと
を含む、前記第1のタイプの粒子(FP)のみを、前記方向(X)に移動させる、請求項6に記載の方法。
前記第1のタイプの粒子(FP)の移動速度(VFP)と同程度の速度(VF)で、1空間周期(CPIT)に等しい前記力場(F)の1つの移動に相当する期間の間に、前記力場(F)を第1の方向(X)に移動させるステップと、
期間(TW)の間、前記力場(F)を停止させるステップと、
前記第2のタイプの粒子(SP)の移動速度(VSP)と同程度の第2の速度(VS)で、1空間周期(CPIT)に等しい前記力場(F)の1つの移動に相当する期間の間に、前記力場(F)を前記方向(X)とは逆の方向に移動させるステップと
を含む、前記第2のタイプの粒子(SP)のみを、前記方向(X)とは正反対の方向に移動させる、請求項6に記載の方法。
i)前記第1のタイプの粒子(FP)の移動速度(VFP)と同程度の速度(VF)で、1空間周期(CPIT)から1電極周期(EPIT)を差し引いた量に等しい前記力場(F)の1つの移動に相当する期間の間に、前記力場(F)を第1の方向(X)に移動させるステップと、
ii)期間(TW)の間、前記力場(F)を停止させるステップと、
iii)前記力場(F)の1空間周期(CPIT)を1電極周期(EPIT)で割った数に等しい回数だけステップi)及びii)を繰り返すステップと
を含む、第1のタイプの粒子(FP)を第1の方向(X)に移動させ、かつ、第2のタイプの粒子(SP)を第1の方向(X)とは逆の方向に移動させる、請求項6に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の目的は、粒子の物理的特性に基づいて粒子を分離する、または粒子を定量化する、または粒子のサイズを決定するための方法および装置を提供することにある。本発明の方法は、一様でない力場(F)を利用することに基づくものである。力場は、例えば、誘電泳動(DEP)(負の誘電泳動(NDEP)もしくは正の誘電泳動(PDEP))、電気泳動(EF)または電気流体力学的運動(EHD)の力場であることが可能である。
【0018】
力場の生成
図1に少なくとも1つの基板(SUB、SUB2)上に作られた電極アレイ(EL)を利用した従来技術による力場を生成するためのいくつかの方法を示す。同じく電極であることが可能なカバー(LID)は、一定の粘性を有する液体で満たして使用されるマイクロチャンバ(micro-chamber)の境界を形成する。DEPの場合、印加される電圧は正フェーズ(+)と負フェーズ(−)が周期的に交互する周期電圧(好ましくは正弦波)である。負フェーズの電圧は180度だけ位相がずれた電圧と理解される。力場は両方とも均衡点(PEQ:points of equilibrium)に引きつけられる高速粒子(FP:faster particles)と低速粒子(SP:slower particles)の両方に作用する力(F)を生成する。印加される電圧の配列(configuration)に応じて、安定均衡点(PEQ)の位置に対応する座標(DEPC)と、不安定均衡点に対応する座標(WS)(これは異なる安定均衡点の吸引ベイスン(basin of attraction)の境界である)を特定することが可能である。これらのライン(WS)は理想的には、粒子がどの安定均衡点に向かいやすいかを決定する一種の分水嶺を形成する。NDEP(負の誘電泳動)の場合、カバー(LID)が導電性電極であれば、フォースケージ(force cages)を閉鎖することが可能である。均衡点(PEQ)は通常、電極から液中のある決まった高さのところに見出され、粒子(SP、FP)は浮揚した静止状態にある。PDEF(正の誘電泳動)の場合、均衡点(PEQ)は通常、電極がその上に形成された表面と連接したところに見出され、粒子(SP、FP)はそれと接触した静止状態にある。PDEPでは、PDEPの均衡点は電場の極大点に対応することから、PDEPでは、カバーの中に追加の電極を設ける必要はない。
【0019】
これらの場合、力場は電極周期(EPIT)の倍数である空間周期(CPIT)を持つことができる。
【0020】
分離の特性
力場(F)の安定均衡点が電極(EL)に印加される電圧の配列(+、−)を変更するステップ(EPIT)だけ移動させられると、粒子は粘性摩擦力と力場(F)の力の比に大きく依存する時間で新しい均衡点に向かって集中する。
図2に、力場の均衡点がEPITステップ(実験したケースでは25μmに等しい)だけ移動した後、NDEPのもとにそれぞれ粒子直径が3μmと10μmのポリスチレンのマイクロビーズがEPITステップの半分に等しい移動を完了するのに必要な、電極に印加された正弦電圧の最高最低振幅に依存する時間の実験データとシミュレーションを示す。同じ粒子材料では、力場(F)の力は体積(半径の3乗に比例)に比例するのに対し、粘性力は半径に比例する。このため、より大きな半径を持つ粒子(FP)ほど相対的に小さな粒子直径を持つ粒子(SP)よりも高速に移動することになる。後述するように、本発明においてこの効果は、粒子を分離するため、または粒子群を定量化するため、または粒子サイズを決定するために有効に活用される。粒子の直径が同じ(粘性摩擦力が同じ)でもそれらの粒子に強度の違う力場が作用すれば速度の違いが生じることがあり得ることも当業者には明白である。この場合、より大きな強度の力場が作用する粒子(FP)ほど相対的に強度が弱い力場が作用する粒子(SP)よりも高速である。
【0021】
さらに、本方法は全ての粒子に力場が同じ力で作用するがしかし粘性摩擦は例えば粒子の材料の違いまたは形状の違いのために異なる場合にも有効に適用されることは明白である。
【0022】
分離の原理は、空間的に一様でなく制御された方法で移動する力場(F)によって生成される力と一様に作用する力との間の釣り合いを活用する。一様に作用する力は上述したように粘性摩擦力のほか重力もあり得る。例えば、力場(F)が同じ力で作用し同じ粘性摩擦を持つ2つの粒子(例えば同じ直径を有する)はそれでもなお異なる質量を持つことがあり得る。この場合、力場(F)の移動方向に重力が非ゼロ成分を持つように装置を傾けることで粒子が異なる速度を持つようになり、そのため本発明の方法をいかようにも適用することが可能である。一般に、粒子間に異なる物理的特性が1つでもあれば分離することが可能である。粒子を区別する物理的特性としては、例えば、粒子の直径、形状、材料または成分材料の相対的な組成比と配合、あるいは表面特性がある。他の場合にはそれらは電荷を含む。それらは明らかに前述した特性の組み合わせも可能である。例として、本発明の目的を制限することなく、次のようなものの分離に適用することができる。
タイプは同じだが大きさが異なる細胞の分離。
タイプは同じだが機能的特徴が異なる細胞の分離。例えば、正常な精細胞から形態学的に異常な精細胞の分離。
大きさは同じだが細胞質の組成が異なる細胞の分離。
生きている細胞からアポトーシスを起こした細胞の分離。
ウィルスに感染していない細胞からウィルスまたは細胞間寄生生物に感染した細胞の分離。例えば、AIDSに感染していない細胞からAIDSに感染した細胞の分離、マラリアに感染していない細胞からマラリアに感染した細胞の分離、クラミジアに感染していない細胞からクラミジアに感染した細胞の分離。
抗体を備えていない細胞から抗体を備えた細胞の分離。
タイプが異なる細胞の分離。例えば、リンパ球細胞から赤血球細胞の分離、エリトロ脊髄性(erythromyeloid)細胞から赤血球細胞の分離、膣上皮細胞から精細胞の分離。
大きさが異なるが内容物が同じリポソームの分離。
大きさが異なるマイクロビーズの分離。例えば、3μmと10μmのポリスチレンビーズの分離、6μと15μmのビーズの分離。
大きさは同じだが表面の機能性が異なるマイクロビーズの分離。例えば、アンミン基で官能化された3μmのビーズと官能化されていない同じ大きさのビーズの分離。
大きさは同じだが表面電荷が異なるマイクロビーズの分離。
電気的に中性のマイクロビーズから正に荷電したマイクロビーズの分離。
ウィルスから細胞の分離。
タイプの異なるウィルスの分離。
分子量が異なるDNA断片の分離。
比電荷の異なるタンパク質の分離。
【0023】
非周期的速度(単一波)による分離方法
図3に一定速度で並進する力場を用いて分離を実行する本発明による方法の第1の態様を示す。最初に、全ての粒子は唯一の均衡点に対応する同じ位置(DEPC)に引きつけられる。力場は平均速度V
Fで反復のステップ(EPIT)に等しい離散的な距離だけ並進させられる。ここで平均速度V
Fは反復のステップ(EPIT)と力場がEPITに等しい距離だけ進むのに要する時間t
Fの比、つまりV
F=EPIT/t
Fに等しい。V
F以上の速度で移動することが可能な粒子(FP)だけが継続的に力場の並進に付いていくことができる。V
Fより遅い粒子(SF)は力場の並進に付いていくことができず、結局は遅れる。結果として、それらは力場の吸引点に更に押し戻され続け、引力は次第に弱まり多かれ少なかれ出発点近くで停止する。代わりに、これらの遅い粒子は例えば出発点の座標NDEPCに生成される新しい均衡点から収集することが可能である。オプションとして、速度の異なる集団として出発点において集め直された粒子を更に分離するためにより遅い並進速度(より大きなt
F)で分離を繰り返すことが可能である。
【0024】
これと同様に、吸引点の並進速度が時間とともに増大する設定で分離を実行することも可能である。この場合、
図4に示すように、粒子は、並進速度が粒子の力場に対応できる限界速度を超えるまで、最初から吸引点の座標(DEPC)に追従する。このケースでも、後に取り残された粒子を収集するために新しい吸引点(NDEPC)を生成することが可能である。
【0025】
本方法は開始の力場が単一の均衡点ではなく複数の均衡点を持つときにも適用されることは明らかである。
【0026】
同じ分離技術は空間内において力場を連続的または断続的または区分的に移動させて実施することが可能である。
【0027】
周期速度による分離方法
力場(F)の並進速度は周期的でもある場合がある。これは力場が空間的な周期性(CPIT)を有するときに特に有用である。簡単のため、力場の反復周期を電極数で表した数pitch=CPIT/EPITを定義する。以下、本方法のいくつかの態様を説明する。
【0028】
高速粒子の並進
図5に周期的な力場の周期(t
p)を有する周期的な速度(VF)での並進による高速粒子の分離の様子を示す。第1の期間pitch・t
fでは、1つの空間周期(CPIT)に等しい力場の並進を引き起こすように、力場は一定の平均速度V
F=EPIT/t
fで並進する。第2の期間(t
w)では、力場は静的な状態のままで、その間に低速粒子(SP)はもとの開始座標に対応する新しい均衡点まで到達し、高速粒子(FP)は力場の並進距離(CPIT)と同程度進んだところにある新しい位置まで到達することが可能である。このケースでは、区別される臨界速度は、ν
ws=((CPIT/2)/((pitch−1)・t
f)=(CPIT/(CPIT−EPIT))・V
F/2である。時間に関しては、通常の臨界時間はt
ws=EPIT/ν
ws=2・((CPIT−EPIT)/CPIT))・t
fで定義される。1ステップを進むのにこの時間より長い時間を要する粒子は出発地点まで戻ることになる。実際には、X軸に沿った力は通常は一定ではない。そのため粘性摩擦との均衡が存在するときに得られる制限速度はWSとDEPCの間では一定ではない。従って、上記公式は目安であって、より正確な値を得るためにそれは実験的に補正されるかまたは数値シミュレーションによって決定されなければならない。待機時間(t
w)は目安として少なくともt
w=α
w(pitch−2)・t
fに等しく、その時間内に低速粒子(SP)はもとの位置に沈降し、高速粒子は新しい位置に沈降することができるようにその時間内は力場は静的な状態のままである。ここでα
w≧1とすることで沈降速度は一般的に並進時の沈降速度よりも低いという事実を考慮に入れる。実際、並進中では、粒子はほとんどの時間の間、力がより強い領域内にある。そのため、それらはより高速に移動する。
【0029】
従って、全体の周期は、t
p=[pitch+α
F・(pitch−2)]・t
fである。これから、高速粒子(FP)がこの周期内に移動する分離の平均速度をν
sep=CPIT/t
p=V
F/[pitch+α
F・(pitch−2)]と定義することが可能である(ただしν≧ν
ws)。
図6に異なる力場の配位に対する上述した高速粒子の分離の様子を示す。
【0030】
低速粒子の並進
図7に周期的な力場内での周期(t
p)的な速度(V
F)での並進によって低速粒子を分離する様子を示す。本方法は、第1の部分では第1の方向において高速粒子を分離する前述の方法に全体に類似しているが、その部分に加えて、第1の方向とは逆方向の第2の方向において低速粒子(SP)だけが正味の並進を実現し、高速粒子(FP)は最初から全く動かなかったかのようにするために、高速粒子(FP)と低速粒子(SP)を両方とも第2の方向に並進させる第2の部分が付け加わる。臨界速度ν
wsと臨界時間t
wsは、この場合において並進させられる粒子がより速度の遅い粒子(ν≦ν
ws)でしかも1ステップを完了するのにより長い時間(t>t
ws)を要しても、以前のケースと同じままである。時間t
bは第2の制限速度を規定する。遅すぎる粒子(ν<ν
ws2=EPIT/t
b)は第2の方向の移動に全く付いていくことはできない。それゆえそれらは力場の移動との同期を失い実質的に静的な状態のままであるかまたはそれらは予測が難しい方向にかろうじて移動する。サイクルの全体の周期はt
p=pitch・(t
f+t
b)+t
wである。これから、分離の平均速度ν
sep=CPIT/t
p=CPIT/[pitch・(t
f+t
b)+t
w]が得られ、選択された粒子(SP)はこの期間(t
p)内においてこの平均速度(ν<ν
ws)で移動する。
【0031】
低速粒子と高速粒子の互いに逆方向の並進
図8に周期的な力場内での周期的な並進により高速粒子と低速粒子を互いに逆方向に分離する様子を示す。
【0032】
第1の期間(pitch−1)・t
fでは、力場は第1の方向に(pitch−1)・EPITに等しい力場の並進を引き起こすべくV
F=EPIT/t
fに等しい空間周期EPITにおける一定の平均速度で並進する。第2の期間(t
w)では、力場は不動のままの状態にあり、その間に、低速粒子(SP)は−EPIT、高速粒子(FP)はCPIT−EPITだけ、元の位置から力場の並進方向に座標の違う新しい均衡点まで移動することが可能である。このケースでは、区別される臨界速度は、ν
ws=((CPIT−2・EPIT)/2)・(1/((pitch−2)・t
f))=V
F/2である。通常の臨界時間はt
w=EPIT/ν
ws=2・t
fである。1ステップを完了するのにこの時間より長い時間を要する粒子は低速粒子(SP)のカテゴリに戻る。一方、1ステップを完了するのにこの時間より短い時間を要する粒子は高速粒子(FP)のカテゴリに属する。
【0033】
力場が不動のままでいる第2の期間は低速粒子が新しい均衡点に到達することが可能になるためにt
w=α
w(pitch−1)・t
fより長い時間を必要としなければならない。ここで、α
w≧1はWS座標から新しい均衡点に到達するための沈降時間が一般的には既に言及したように均衡点からWSまでに必要な時間よりも長いという事実を考慮に入れている。このケースでも、t
wの実の値は更なる限界を決定する。この時間内に−EPITにある均衡点まで到達できない過度に遅い粒子はそれらの同期を失う。
【0034】
上述した並進は力場の周期に等しい並進を完了するためにpitchに等しい回数だけ行われる必要があるので、分離のサイクル周期は、t
p=pitch・[(pitch−1)・t
f+t
w]=pitch・[(1+α
w)・(pitch−1)・t
f]で定義することができる。この期間内に、低速粒子はDXSP=−pitch・EPITだけ並進する一方で高速粒子はDXFP=pitch・(pitch−1)・EPITだけ並進する。分離速度は高速粒子(FP)に対してはν
sep=(EPIT/(1+α
w)・t
f)、低速粒子(SP)に対してはν
sep=−EPIT/((1+α
w)・(pitch−1)・t
f)である。
【0035】
図9に、幅45μmの長細い電極を5μm間隔で並べた装置(EPIT=50μm)において、誘電泳動の移動ケージ内にNDEPによって捕捉した、水溶液中の10μm(SP)と25μm(FP)のポリスチレンのマイクロビーズを逆方向に分離した実験結果を示す。導電性の透明カバーは高さ130μmのマイクロチャンバを形成する。印加電圧は、1MHz、4.7Vppである。フェーズ(−)の電極をカバーとして、フォース・ケージ(DEPC)が形成される(pitch=3)。写真は、
図8に関する力場の並進の最初の繰り返しに対する、初期状態(STEP1)と、続く2つのステップ(STEP2、STEP3)を示したものである。
【0036】
本発明によれば他の方法を上記方法の組み合わせとして実現することができることは当業者には明らかである。例えば、1周期内に力場がその空間周期の倍数分を並進する高速粒子の周期的な並進が実現される。あるいは、高速粒子の周期的な速度(ただし力場の速度(V
F)は徐々に減少)による分離を順々に繰り返して、粒子の初期集団を各群が速度間隔によって特徴付けられる一連の粒子群に分離することが可能である。
【0037】
さらに、NDEPのケースに関して言えば、上述した方法を、ケージの大きさが単一電極の倍数になっている場合まで一般化することは容易なことも明らかである(例えば、ケージは、フェーズ(-)の2つの隣接する電極とカバーで生成される。)。
【0038】
最後に、力場(F)の並進に関係している上述したケースは(軸対称の代わりに)点対称の電極アレイに用いることができる、例えば、回転などの他のタイプの運動にまで容易に一般化することができることは明らかである。それでもここでは簡単のため、説明の継続性から、並進を例にとって説明する。
【0039】
不均一な電圧による分離方法
さらに、並進時の電極に印加される電圧の強度を変えることは可能である。これは一般に力線の同じ配位を維持しながら力場の強度を変えることを含む。例えば、高速粒子(FP)を分離するために力場(F)を一定の速度で並進させるが、その間、力場の強度を低減して、より反応の良い粒子(FP)だけを力場に追随させるようにすることは可能である。それと同時に、粘性摩擦力との関係で力場の影響をあまり受けない粒子(SP)は後に残ったままの状態である。その一例を
図10に示す。
【0040】
不均一な電極アレイによる分離方法
上述した例ではこれまで等しい幅の電極が空間周期EPITで規則正しく並んだ電極アレイを議論してきた。本発明は別の態様として電極アレイが不規則な場合もカバーする。例えば、それぞれの大きさは固定されているがそれぞれの間の距離は変わり得る電極(複数)、またはそれぞれの大きさは変わり得るがそれぞれの間の距離は等しい電極(複数)、またはそれぞれの大きさもそれぞれの間の距離も変わり得る電極(複数)を使用することが可能である。
【0041】
これらのケースでは、力場の均衡点の位置が変わるほか、並進時においてその強度が変化するとともに、一般には力場の形状も変化する。すなわち、力線は並進されるだけでなく変形もされる。
【0042】
先述の方法の説明と同じようにして、力場の並進に十分追従できる粒子を力場の並進に追いつけない粒子から分離することは可能である。あるいは力場の不均一性を活用することで、直径の異なる粒子を例えば2つのタイプの粒子のいずれか一方のタイプの粒子だけを輸送することがもはやできないほど力場が変形するまで同じ方向に押すことによって分離することが可能である。さらに、同じ分離方法を3タイプ以上の粒子を分離する一般的な場合まで適用することが可能であることは明らかである。
【0043】
唯2つの力場配位による分離方法
これまでの例では、空間内における一連の力場配位(a succession of configurations of forces)を議論してきた。特定の方向に粒子を移動させる、従って分離させるのに必要な力場の配位の最小数は2である。実際、
図14に示すように、電圧(V1、V2)が印加された電極の適切な分布により、安定均衡点のグループ(GSEP1、GSEP2)によって特徴付けられるちょうど2つの力の分布(F1、F2)を作り出すことが可能である。ただしこのとき、前記グループ(GSEP1、GSEP2)の一方のグループのどの第1の均衡点(SEP1、SEP2)も他方のグループ(GSEP2、GSEP1)の単一の第2の安定均衡点の吸引ベイスン(basin of attraction)の内部に完全に含まれるようになっていること、前記第2の安定均衡点は前記第1の均衡点(SEP1、SEP2)の吸引ベイスンの中に含まれていないことが必要である。こうすることで、力の配位が一方から他方へ移行することで、粒子は特定の方向に動かされるが、以前の配位に戻っても、粒子は逆戻りすることはなく、同じ方向への移動を継続する。2つの配位を適切な速度で交互に入れ替えることで、反応性があまり良くない粒子(SP)を動かさずにまたは後に残したままより反応性の良い粒子(FP)だけを移動させることが可能である。この方法は力場の空間的な不均一性と空間的な非反復性の両方を必要とし、これは例えば詳しく後述される本発明による装置を使って実現することが可能である。
【0044】
本方法によれば、新しい均衡点における第1のタイプの粒子(FP)の沈降時間の逆数と実質的に同程度であるが少なくとも第2のタイプの粒子(SP)の沈降時間の逆数よりも大きな周波数(頻度)で力場の配位を変えることで、第1のタイプの粒子(FP)だけを実質的に移動させて、少なくとも2つのタイプの粒子(FP、SP)を分離することが可能である。
【0045】
本方法によれば、少なくとも2つのサイズの粒子(BP、LP)を分離することも可能である。実際、粒子(BP)が2つ以上の安定均衡点の引力の影響を受けるほど安定均衡点の吸引ベイスンよりもずっと大きいときには、合成力はその粒子をいずれかの均衡点に向かわせるほど大きくはないので、粒子(BP)は移動しない。従って、小さな粒子(LP)の分離を実行するため、前記粒子(BP、LP)に対する第1のセットの安定均衡点(GSEP1)によって特徴付けられる空間内における力場の第1の分布(F1)と、少なくとも、前記粒子(BP、LP)に対する第2のセットの安定均衡点(GSEP2)によって特徴付けられる空間内における力場の第2の分布(F2)を作り出すことが可能である。このとき、力場の前記2つの分布(F1、F2)は、前記グループ(GSEP1、GSEP2)の一方のグループのどの第1の均衡点(SEP1、SEP2)も他方のグループ(GSEP2、GSEP1)の単一の第2の均衡点の吸引ベイスン(basin)の内部に完全に含まれるようになっていること、それに対し前記第2の均衡点は前記第1の均衡点(SEP1、SEP2)の吸引ベイスンに含まれないこと、そして各第1の均衡点(SEP1、SEP2)の吸引ベイスンのサイズはその第1の均衡点を含む前記単一の第2の安定均衡点(SEP2、SEP1)の吸引ベイスンのサイズより大きいかまたはそれ未満であることが必要である。このような条件のもと、前記力場の分布(F1、F2)を両方のタイプの粒子(BP、LP)の沈降時間の逆数と同程度の周波数(頻度)で交互に入れ替えて、前記粒子のサイズが吸引ベイスンのサイズと同程度になるまで前記粒子(BP、LP)を1つの新しい均衡点から次の新しい均衡点まで移動させることが可能である。吸引ベイスンのサイズが徐々に減少する場合には、大きい粒子(BP)は実際に小さな粒子(LP)よりも早期に移動を停止し、その結果、小さな粒子(LP)は大きな粒子(BP)よりも実質的に大きく移動することができる。
【0046】
並進速度の間接測定による粒子群の定量化方法
上記の方法では、力場に支配される粒子の密度は粒子同士の相互作用のために単一粒子の並進速度に大きく影響を及ぼすようなものではないということが有利である。実際は、粒子は一緒に集団化されると、
図11に示すように、小さな粒子でも単一粒子の体積の総和とほぼ同等な体積の大きな粒子と同じように振る舞う。
【0047】
本発明の更なる方法によれば、
図13に示すように、この効果は分析すべきサンプルを形成する粒子の量(N)を特定するために利用される。
【0048】
速度がわかっているが濃度がわかっていない粒子の均一なサンプルから始め、粒子群の位置が決定される。
【0049】
次に2つのポジションの間にある安定均衡点は既知の速度(Vfh)で移動させられ、粒子群がレストポジション(rest position)の対応する動きが伴う力場の変化に対応するかどうかが確認される。もし対応しなければ、その粒子群の臨界速度は安定均衡点の移動速度(Vfh)よりも明らかに低い。粒子がそれらの開始点に沈降することを可能にするための待機時間(t
w)の後、粒子がレストポジションの移動に付いていくことが可能になる(これは粒子の臨界速度の方が高いことを示す)まで力場の移動は低速度(Vfl)で繰り返される。粒子の臨界速度よりも大きな力場の少なくとも1つの移動速度とその臨界速度よりも小さな1つの移動速度とを特定するために測定を繰り返すことで、その臨界速度が必ずその中に含まれていなければならない、特定の範囲の粒子量に対応する(速度の)間隔が決定される。このようして、臨界速度ν
wsがその中に含まれる範囲がわかると、体積と速度との理想的には線形の比を利用して粒子群の総体積を(レンジ幅に関係した一定の近似で)算出することが可能である。この比が線形でなければ、その比は実験的に決定することができる。臨界速度は例えば二分または線形探索法といった様々な方法で調べることが可能である。
【0050】
位置は従来技術による、光学タイプ、インピーデンシオメトリック(impedentiometric)その他の内蔵型または外部のセンサを使って測定することが可能である。
【0051】
これらのセンサの感度が電極上の初期の量の粒子の存在を検出するには適していなかったとすれば、本発明によればその量はいくつかのケージの内容物が集中して増大したことになり、測定量を決定するための検出と線形関係または事前の特徴付けの活用とが可能となる。
【0052】
並進速度の間接測定による粒子サイズの決定方法
粒子の定量化のための上記の方法は粒子のサイズを決定する問題にも同様のやり方で適用することが可能である。本目的のため、相互作用しない粒子の群または互いの相互作用が無視できる粒子の群を取り扱う。このケースでは、
図12に示すように、単一粒子のサイズを取得するため、粒子の速度(V
particle)とそれらの直径(D
particle)との間の関係が利用される。
【0053】
粒子の分離装置
本発明のもう1つの主題は粒子の選択的な移動に必要な適切な力場の配位を作り出すための装置である。本装置は、一般的な態様の1つとして、2つの電極アレイ(EL1、EL2)と、必要に応じてカバー(LID)とを有する。また、電位(V1)を第1の電極アレイ(EL1)に印加し、少なくとも第2の電位(V2)を少なくとも第2の電極アレイ(EL2)に印加するための手段も含まれる。(ただ手段そのものは既に知られた技術で実現可能で、従って添付図面には図示されていない。)前記電極とそれらの電極に電位を印加するための前記手段は、安定均衡点のグループ(SEP1、SEP2)によってそれぞれ特徴付けられる力場の少なくとも2つの異なる空間的分布(F1、F2)が作り出されるように適切な電位(V1、V2)が電極(EL1、EL2)に印加されるように動作可能に構成される。これらの安定均衡点の特徴は各点がその他の力場配位の安定均衡点の吸引ベイスンの中のどれか唯1つのベイスンの内部に完全に含まれるということである。このようにして、本装置は粒子を捕捉し、それらを力場の2つの配位が交互に入れ替わる速度と粒子の反応性とに依存する速度(あるいは周波数)で1つの方向に移動させる。力のこれらの分布は、例えば、それぞれの間の間隔が一定でそれぞれの幅が徐々に増大するもしくは減少する電極(
図14参照)またはそれぞれの幅は一定でそれぞれの間の間隔が徐々に増大するもしくは減少する電極を利用して作り出すことができる。別の態様では、それぞれ一定の大きさと一定の間隔を有するがカバーとの距離が徐々に増大するまたは減少する電極(
図15参照)を利用することができる。これらの態様の組み合わせも明らかに可能である。