(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
開口部の枠と扉を開閉自在に、又は、扉や戸の相互間とを折り曲げ自在に取り付ける蝶番には多くの種類がある。大きく分類すると、閉じた扉を基準にして蝶番の取付状態を見ると、扉内外の何れかの側もしくは何れの側からも、蝶番の回転軸など蝶番の一部が見えるタイプと全く見えず蝶番の使用を感じさせないタイプとに分けられる。
【0003】
見えるタイプの代表的な蝶番としては、一本の軸周りに二枚の羽根板を回動自在に連結する構造を基本とする。このタイプの蝶番では、枠に対して扉を90度以上開くためには、回転軸による羽根板の連結部を枠と扉の合わせ目から扉内外に突き出して取り付ける必要がある。この構成では、壁と開口部の位置関係により連結部の突出量が邪魔になり、扉の開閉方向が制限を受けることがあり、また、蝶番が外部から破壊されて枠と扉が外され、防犯上問題となる場合がある。
【0004】
見えないタイプは隠し蝶番とも呼ばれ、枠と扉にそれぞれ取り付けた一対のフレームの間を連結部材で連結する構成を有する。隠し蝶番の一例としては、特許文献1(特開平6−288139号公報)等に記載のものが例示でき、各フレームに形成した案内溝に沿って連結部材の回転軸を進退可能に構成することで、一対のフレーム開角度の違いによる形状変化を吸収する。すなわち、扉が開き始めると連結部材がフレーム開口側へ迫り出し、フレームが180度まで開き終わると連結部材がフレームの開口に隣接して配置可能となるように、連結部材とフレームとの連結軸が移動する。一方、一対のフレームが閉じた状態になるときは、連結部材の連結軸がフレームの開口奥側へ移動し、フレームの開口内に連結部材が収容される。
【0005】
特許文献1に記載の隠し蝶番に用いられているリンク構造は、それぞれのフレームから連結軸が移動可能な連結部材が設けられ、他方のフレームでは、軸移動することのないように固定することで、蝶番の開閉に伴うフレームの開角度の連動を行うように構成している。すなわち、枠と扉の開閉時において、扉側フレームと連結部材とがなす角度が変わると、当該角度変更に連動して枠側フレームと連結部材とがなす角度が変わるようなリンク構造を有している。このフレームの開角度の連動を可能とすることにより、扉のガタツキなどを防止することができ、扉の開閉をスムーズにすることができる。
【0006】
このように、一般的に隠し蝶番に用いられているリンク構造についても、フレームの開角度の連動を可能とするために、一方のフレームに対し回転軸が固定され他方のフレームにはスライド可能に連結された連結部材を双方のフレームについて設けると共に、これらの連結部材を中間部分で回動可能に軸支し、それぞれのスライド可能に構成されている側のフレームの先端部分を収納する基本的構成を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の隠し蝶番は、この角度連動を実現するリンク構成が複雑になるため、移動可能な連結軸及び固定連結軸周りのリンク構成が煩雑であった、一方で、リンク構成を大きくするとフレームの開口にリンク全体を収納することが困難となるため、連結軸周りのリンクの肉厚を小さくすることでリンク構造の小型化を実現させていた。このため、リンク構造に高強度材料を用いることで蝶番としての強度を持たせており、高コスト化の原因となっていた。
【0009】
また、特許文献2(特開2006−83628号公報)には、フレーム間の連結機構を簡易に構成した隠し蝶番が開示されている。この隠し蝶番は、回転中心になるピンを備えたフレームと両端を折り曲げて先端に軸受を形成した連結材を回動自在に嵌合する構成を有している。しかし、この構成では、単に両端が曲げられた連結材とフレームとを回動可能に軸支するのみであり、一方のフレームと連結材の角度変化が他方のフレームと連結材の角度変化に連動することがなく、蝶番の開閉に伴うフレームの開角度の連動を行うことができないという問題があった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の問題点を解決し、簡単な構成でフレーム間の連動を実現可能な低コストの隠し蝶番を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の隠し蝶番を提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、閉じた状態における互いの対向位置に開口する収納室が設けられた一対のフレームと、
前記フレームの収納室深さ方向にスライド可能に設けられたスライダと、
両端に設けられた屈曲部の先端に第1軸受が形成され
、前記スライダを介して前記フレームに連結される連結部材
と、
両先端に第2軸受を備え、中間部が前記連結部材と非連結
であり、前記連結部材の固定軸とリンク部材の固定軸とが異なる位置となるように前記スライダを介してフレームに連結されるリンク部材と、
前記連結部材の屈曲部に設けられたピニオンと、
前記フレームの内側面に設けられた前記ピニオンと噛合するラックと、
を備えることを特徴とする、隠し蝶番を提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記連結部材の固定軸とリンク部材の固定軸とは、収納室の深さ方向に異なる位置に設けられている第1態様の隠し蝶番を提供する。
【0015】
本発明の第
3態様によれば、前記ピニオンは、前記屈曲部の前記第1軸受を回転中心として設けられていることを特徴とする、
第1又は第2態様の隠し蝶番を提供する。
【0016】
本発明の第
4態様によれば、前記ピニオンは、前記屈曲部の外周面に前記連結部材と一体に設けられていることを特徴とする、
第1から第3態様の隠し蝶番を提供する。
【0017】
本発明の第
5態様によれば、前記フレームは対向する内面に前記スライダと係合する案内部を備え、前記スライダは、当該案内部に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする、
第1から第4態様のいずれか1つの隠し蝶番を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、連結部材とは別に、その中間部が連結部材と非連結のリンク部材を設け、連結部材とリンク部材の軸受に設けられる固定軸により、連結部材とリンク部材を一対のフレームと連結する。なお、リンク部材の中間部と連結部材が非連結とは、軸受部分を除く箇所で直接的又は間接的に両部材が連結されていない構成である。また、連結部材を軸支する固定軸とリンク部材を軸支する固定軸をフレームに取り付ける位置が、例えば収納室の深さ方向に異なる位置となるようにして、リンク部材と連結部材とがフレームに連結する。この構成により、連結部材、リンク部材及び一対のフレームが、それぞれの固定軸とを回転軸とする四節機構を構成することとなる。したがって、連結部材と一方のフレームとの角度変化を他方のフレームとの角度変化として連動可能とする構成とすることができる。
【0019】
また、連結部材は、両端が屈曲部として構成されているため、収納室の深さ方向に異なる位置で連結部材及びリンク部材とをフレームと連結することが可能であり、また、フレームの周縁とこれらの部材との干渉を防止して隠し蝶番の開閉角度を大きくすることができる。
【0020】
また、本発明によれば、連結部材とリンク部材とをフレームの収納室深さ方向にスライド可能とすることによって、フレームとリンク機構の干渉を防止することができるため、開閉時におけるリンク機構の収容及び開閉角度を大きくすることができる。また、屈曲部及びフレームの内側面に設けられたラック・ピニオンにより、フレームと連結部材との角度連動に応じて連結部材等のスライドを確実にすることができると共に、開閉動作時にのみ連結部材とリンク部材とのスライドを許容することで、フレームと連結部材とのガタツキや脱落を防止することができる。このため、閉じた状態におけるリンク機構の収納及び蝶番の開放角度の拡大を実現することができる。また、ピニオンの回転中心を第1軸受とすることで、ピニオンの回転に伴う第1軸受の位置変化を直線的にすることができ、構成を簡単にすることができる。
【0021】
本発明の第
4態様によれば、ピニオンを屈曲部の外周面に設けることで、部品点数を少なくすることができ、リンク構成を簡単にすることができる。また、ピニオンの設置幅を大きくすることができることから、噛合力を大きくして隠し蝶番のガタツキなどを防止することができる。
【0022】
本発明の第
5態様によれば、スライダは、フレームの収納室の内側面に設けられた案内部によってスライド方向を決定づけられ、ガタツキを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る隠し蝶番について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
隠し蝶番1は、
図1に示すように、玄関などの枠体100と扉101とで構成される開き戸や、
図2に示すように折り戸の2枚の戸102の折り合わせ面102aの連結に用いられる。以下、本実施形態においては、
図1に示す開き戸に隠し蝶番1を適用する場合を例にとって説明する。
【0026】
図3は、本発明の実施形態にかかる隠し蝶番の構成を示す斜視図である。
図4は、扉が閉じた状態にある隠し蝶番の構成を示す図である。隠し蝶番1は、開き戸の枠体100の端面100aに取り付けられる枠体側フレーム3と扉101の端面101aに取り付けられる扉側フレーム4とからなる一対のフレームが連結部材5及びリンク部材6で連結された構成である。
【0027】
連結部材5及びリンク部材6は、一対のフレーム2を連結するリンク機構を構成する。本実施形態では隠し蝶番1は、2つの連結部材5と1つのリンク部材6を備え、2つの連結部材5はフレーム2の高さ方向に平行になるように設けられる。リンク部材6は、連結部材5の間に連結部材5に沿って配置される。
【0028】
一対のフレーム2は、図示しないケーシングを介して開き戸に取り付けられる。フレーム2とケーシングは、フレーム2の上下端部に設けられたネジ孔7に挿入される図示しない固定ネジによって固定される。
【0029】
ケーシングと枠体側フレーム3は高さ方向に、ケーシングと扉側フレーム4は奥行き方向に相対位置を調整可能に構成されており、ケーシングとフレーム2との相対位置を変更することで、隠し蝶番の取り付け位置調整を行うことができる。
【0030】
一対のフレーム2は、閉じた状態における互いの対向面が開口する収納室8が設けられており、内部に連結部材5及びリンク部材6を収納可能に構成されている。
図4に示すように、開き戸が閉じた状態にあるとき、連結部材5及びリンク部材6は奥側にスライドして収納室8内に収納され、枠体100と扉101の面に大きな隙間を形成しないようにする。一方で、
図3に示すように開き戸が開いた状態では、収納室8の開口側にスライドし、フレーム2の開き角度が大きくなるように構成されている。
【0031】
図5は、
図3の隠し蝶番の部分組立分解図である。
図6は、
図5の隠し蝶番を別角度からみた組立分解図である。
図5及び
図6においては、枠体側フレーム3とリンク機構についての組立構成が示されているが、扉側フレーム4についても同様の構成が採用されている。また、
図6においては、リンク機構とスライダとを連結するピンを省略している。
【0032】
図5に示すように枠体側フレーム3の対向面9に設けられた収納室8は、側面にラック10、案内溝形成リブ11及び溝部材取付リブ12が設けられている。案内溝形成リブ11とラック10はフレーム2の高さ方向に交互に設けられており、また、溝部材取付リブ12は、ラック10が設けられている側面に対向する面に設けられている。
【0033】
ラック10は、歯列が収納室8の深さ方向となるように、収納室8の一方の内側壁に設けられている。ラック10は、後述する連結部材5の屈曲部21に設けられているピニオン22と噛合する。
【0034】
図7は、閉じた状態にある
図3の隠し蝶番のフレームと連結部材の位置関係を示す断面図である。
図8は、開いた状態にある
図3の隠し蝶番のフレームと連結部材の位置関係を示す断面図である。連結部材5は、板状の本体部20の両端に屈曲部21を有する形状である。屈曲部21の先端は、概ね円弧形状となるように構成されており、その円弧中心には第1軸受23が存在する。また、屈曲部21の外周部分にピニオン22が形成されている。屈曲部21に設けられている第1軸受23は、後述する第1軸ピン45を挿入することで、第1及び第2のスライダ15,16と連結する(
図5参照)。
【0035】
リンク部材6は、板状の本体部24の両端に屈曲部25を有する形状である。屈曲部25には第2軸受26が設けられている(
図6参照)。リンク部材6は、屈曲部25を除く本体部24の部分では連結部材5と非連結に構成されている。すなわち、屈曲部25に設けられた第2軸受26の部分において、後述するように第2のスライダ16を介して連結部材5と連結されているが、その他の部位では連結部材と連結されていない。
【0036】
上記のように、ピニオン22とフレーム2に設けられたラック10は互いに噛合するように構成されており、連結部材5とフレーム2とがなす角度が異なると、ラック10とピニオン22により、連結部材5がラック10の歯列に沿って移動する。
図7に示す閉じた状態にあるときは、連結部材5は、フレーム2の収納室8の奥側に位置している。この状態において、ピニオン22とラック10は互いに噛合しているため、連結部材5とフレーム2との位置ずれは防止され、結果として一対のフレーム2間のガタツキが防止される。
【0037】
図8に示すように、一対のフレーム2が開いた状態となると、フレーム2と連結部材5との角度が変化する。連結部材5の回転に伴いピニオン22とラック10との噛合位置が移動する。上記のように連結部材5の先端に設けられているピニオン22は、第1軸受23を中心とする円周上に設けられているため、第1軸受23はフレーム2の収納室8の深さ方向に直線移動する。
【0038】
第1軸受23には、第1軸ピン45を介して第1及び第2のスライダ15,16が取り付けられている。第1及び第2のスライダ15,16は、案内溝17により案内されて収納室8の深さ方向にのみ移動可能である。
【0039】
図5に示すように、収納室8の深さ方向に伸びるように設けられている案内溝17は、案内溝形成リブ11及び後述する溝部材40に設けられている。案内溝形成リブ11及び溝部材40に設けられている案内溝17は、フレーム2の幅方向に対して対向する位置に配置され、第1及び第2のスライダ15,16と係合して、第1及び第2のスライダ15,16を収納室8の深さ方向に移動可能に保持する。
【0040】
溝部材40は溝部材取付リブ12に嵌合されてフレームに設けられる部材であり、本実施形態にかかる隠し蝶番の組立を容易にすることができる。溝部材40は、
図6に示すように、フレーム2の底壁13に設けられた挿入穴14を通して、フレームの底面外側から挿入される。挿入穴14は、底壁13の溝部材取付リブ12が設けられている位置に設けられている。挿入穴14から挿入された溝部材40は、係合溝18と溝部材取付リブ12の係合によって案内されて、収納室8の特定位置に配置される。
【0041】
第1及び第2のスライダ15,16は、共に軸受穴42を有する板状部材であり、フレーム2の内側面との対向位置に案内溝17に陥入する嵌入爪19が設けられている。
【0042】
第1のスライダ15は、
図5、
図6に示すように、連結部材5の外側に設けられるスライダであり、円形の軸受穴42を有している。当該軸受穴42には、
図9に示す第1軸ピン45が挿入されることによって、連結部材5に回動可能に取り付けられる。
【0043】
第2のスライダ16は、
図5、
図6に示すように、連結部材5とリンク部材6との間に設けられるスライダであり、中央部分に軸受穴42を有している。当該軸受穴42には、
図9に示す第1軸ピン45が挿入されることによって連結部材5にさらに、
図11に示す第2軸ピン46が挿入されることによってリンク部材6に取り付けられる。なお、第1軸ピン45は本発明の連結部材の固定軸に相当し、第2軸ピン46は本発明のリンク部材の固定軸に相当する。
【0044】
図10は、第2のスライダの構成を示す斜視図である。第2のスライダ16は、中央部分に設けられた軸受穴42の形状が第1スライダ15の軸受穴42と異なる。第2のスライダ16の軸受穴42は、連結部材5と連結するための連結軸穴43とリンク部材6と連結するためのリンク軸穴44とが異なる位置にずらした状態で設けられている。本実施形態では、連結軸穴43とリンク軸穴44とは、スライダの嵌入爪19の延在方向、すなわち、矢印90で示す第2のスライダ16の移動方向にずれた位置に設けられている。なお、連結軸穴43とリンク軸穴44との位置のずれ方向は、第2のスライダの移動方向、すなわち、収納室8の深さ方向に限定されるものではなく、後述する四節機構が機能する向きであれば特に制限されない。
【0045】
図9に示す第1軸ピン45は、第1のスライダ15,連結部材5,第2のスライダ16を連結する円柱状の部材であり、一端側に平面部47が設けられている。平面部47は、第2のスライダ16の連結軸穴43に挿入されたとき、近接して設けられたリンク軸穴44に挿入された第2軸ピン46と干渉しないように外周部分の一部を除去したものである。
【0046】
図11に示す第2軸ピン46は、リンク部材6とその両側に設けられる2つの第2のスライダ16とを連結する円柱状の部材であり、両端側に平面部47が設けられている。平面部47は、第2のスライダ16のリンク軸穴44に挿入されたとき、近接して設けられた連結軸穴43に挿入された第1軸ピン45と干渉しないように外周部分の一部を除去したものである。すなわち、第1軸ピン45と第2軸ピン46は、第2のスライダ16の主面に対し、反対側から挿入されるため、双方のピン45,46の平面部47とが対面位置となるようにして挿入することができ、双方のピンの干渉を防止することができる。
【0047】
第1軸ピン45及び第2軸ピン46の平面部47の形状は、第2スライダ16の軸受穴42の形状、すなわち、連結部材5の連結軸穴43とリンク部材6のリンク軸穴44との位置のずれ量により適宜設計すればよい。
【0048】
上記構成の隠し蝶番は、次の手順によって簡単に組み立てることができる。まず、第1及び第2のスライダ15,16と連結部材5及びリンク部材6とを組み立ててリンク機構構成ユニットを作成し、第1及び第2のスライダ15,16の嵌入爪19が案内溝形成リブ11の案内溝にはめるようにして、一対のフレーム2とリンク機構構成ユニットの位置を仮決めする。このとき、フレーム2と連結部材5及びリンク部材6との角度に応じてラック10とピニオン22の噛合位置を調整する。その後、第1及び第2のスライダ15,16の嵌入爪19が溝部材40の案内溝にはまるよう位置決めし、フレームの底面外側の挿入穴14から溝部材40を挿入する。
【0049】
上記のようにして連結された隠し蝶番1において、連結部材5とリンク部材6及び一対のフレームに設けられた2つの第2のスライダ16は、両フレームの第1軸ピン45と第2軸ピン46の4軸を回転軸とする四節機構を構成することとなる。
【0050】
すなわち、連結部材5と一方の第2のスライダ16とがなす角度の変化は、第1軸ピン45と異なる位置に設けられた第2軸ピン46によって連結されているリンク部材6に連動され、他方の第2のスライダ16と連結部材5とがなす角度に連動する。
【0051】
上記のように第2のスライダ16は、連結軸穴43とリンク軸穴44とがスライダの移動方向、すなわちフレーム2の収納室8の深さ方向にずれて設けられている。また、第2のスライダ16は、フレームの収納室8の深さ方向にのみ直線移動可能である。このため、連結部材5と一方の第2のスライダ16とがなす角度の変化は、連結部材5と一方のフレーム3とのなす角度の変化としてとらえることができる。そして、連結部材5と一方のフレーム3との角度変化は、リンク部材6によって連結部材5と他方の第2のスライダ16とのなす角度の変化、すなわち連結部材5と他方のフレーム4とのなす角度に連動する。
【0052】
以下、上述の本実施形態にかかる隠し蝶番の連動動作について、詳細に説明する。
図12から
図14は、本実施形態にかかる隠し蝶番の連動動作について説明する断面図である。これらの図面は、手前側に位置する連結部材5とリンク部材6との間の位置で切断した状態を示し、それぞれの図面は角度位置が異なる状態を示している。以下、図面では、理解のために位置固定した枠体側フレーム3に対して、扉側フレーム4がどのように動作するかについて説明する。また、下記説明中、枠体側フレーム3と扉側フレーム4との各構成部品を区別するために、枠体側フレーム3の構成部品については各部品の符号にaの添字を、扉側フレーム4の構成部品については各部品の符号にbの添字を付して説明する。
【0053】
図12は、開いた状態にある隠し蝶番の断面図である。
図12に示すように、隠し蝶番が開いた状態では、
図8を用いて先に説明したように、連結部材5は、枠体側フレーム3と扉側フレーム4の双方において、収納室8の開口側に位置している。このとき、枠体側フレーム3の第2のスライダ16aでは、枠体側フレーム3の開口側にリンク軸穴44aが、枠体側フレーム3の底面側に連結軸穴43aが位置し、連結部材5の第1軸受23及びリンク部材6の第2軸受26がそれぞれ第1軸ピン45及び第2軸ピン46によって連結されている。一方、扉側フレーム4の第2のスライダ16bでは、枠体側フレーム3の底面側にリンク軸穴44bが、枠体側フレーム3の開口側に連結軸穴43bが位置し、連結部材5の第1軸受23及びリンク部材6の第2軸受26がそれぞれ第1軸ピン45及び第2軸ピン46によって連結されている。
【0054】
この状態で
図13の矢印に示すように、扉側フレーム4を押し上げて連結部材5が起き上がると、連結部材5のピニオン22と枠体側フレーム3のラック10aが噛み合い、第2スライダ16aが案内溝17に案内されて図示下方へ移動する。双方の第2のスライダ16の連結軸穴43及びリンク軸穴44の相対位置は固定しているため、リンク部材6が連結部材5と同様に起き上がり、この結果、扉側フレーム4の第2のスライダ16bが連動して、扉側フレーム4と一体的に連結部材5との角度が変化する。また、リンク部材6の連結軸穴43及びリンク軸穴44の相対位置は固定しているため、連結部材5と扉側フレーム4の角度も変化する。さらに、連結部材5のピニオン22bはラック10bと噛合しているため、連結部材5の角度変化に応じて第2のスライダ16bが収納室の底側へ移動する。
【0055】
図13の状態からさらに扉側フレーム4が上方へ移動して連結部材5が起き上がると、上述と同様に、枠体側フレーム3の第2のスライダ16aが案内溝17に案内されて図示下方へ移動する。これに伴いリンク部材6が起き上がり、扉側フレーム4の第2のスライダ16bが連動して、扉側フレーム4と一体的に連結部材5との角度が変化し、第2のスライダ16bが収納室8の底側へ移動する。
【0056】
このように、本実施形態にかかる隠し蝶番によれば、簡単な構成で一対のフレーム2の連動を確実にすることができる。なお、上記説明では、隠し蝶番を開いた状態から綴じた状態への動作について説明したが、逆方向の動作においても、当然同様の機構により連動する。
【0057】
また、一対のフレームを連結する連結部材及びリンク部材は、第1軸受23及び第2軸受26の周りに十分な厚みを残して構成することができるため、金属と比較して強度的に劣る樹脂などを用いて製造しても、十分な強度を実現することが可能であり、隠し蝶番の低コスト化を実現することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態にかかる隠し蝶番は、一対のフレーム2を連結する連結部材5とは別にリンク部材6を設け、連結部材の第1軸受23とリンク部材6の第2軸受26とが、例えば開口の深さ方向に異なる位置となるように第2のスライダ16を介してフレームに連結されている。よって、連結部材5、リンク部材6及び第2のスライダ16が、第1軸受23と第2軸受26を回転軸とする四節機構を構成する。したがって、連結部材5と一方のフレームとの角度変化を他方のフレームとの角度変化として連動可能とする構成とすることができる。
【0059】
また、連結部材5は、両端が屈曲部として構成されているため、連結部材とリンク部材とを開口の深さ方向に異なる位置でフレームと連結することが可能であり、また、隠し蝶番の開閉角度を大きくすることができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。たとえば、本実施形態では、連結部材の外側にも第1のスライダ15を設け、第1のスライダを案内する案内溝17を設ける構成としているが、連結部材の第1軸ピンを直接フレームの内面に設けられた収納室8の深さ方向に伸びる案内ガイドに嵌入して連結部材にフレームに支持させてもよい。この構成によれば、第1のスライダ15を省略することができるので部品点数を少なくすることができる。
【0061】
また、例えば、本実施形態では、連結部材の屈曲部21の先端側にピニオン22を一体的に設けているが、屈曲部21の第1軸受23を回転中心とするピニオンを連結部材5とは別部材として設けてもよい。
【0062】
また、ピニオンは屈曲部21の第1軸受23を回転中心として設け、またラックは収納室の側壁内面に直線的に設けた例としているが、これらはスライダの移動を直線的なものとして案内溝の構成を容易にするためである。したがって、スライダの非直線的な移動を許容する設計であれば、回転中心の位置及びラックの形状を上記実施例と異ならせてもよい。