【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、本発明の独立請求項に係る水素貯蔵のためのイオン性液体の使用の方法及び水素貯蔵のためのイオン性液体により解決される。さらに例示的実施態様が従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明のひとつの例示的側面によれば、水素貯蔵の方法が提供され、前記方法は、カチオンと、特にメタボレートであるボレートを含むアニオンを含む第二のイオン性液体にボロヒドリドを導入して第一のイオン性液体を形成し、かつ、前記第一のイオン性液体から水及び/又は触媒を用いて水素を放出させて前記第二のイオン性液体を形成する、ことを含む。即ち、ループプロセス又はサイクルプロセスが形成される。そこで、イオン性液体が例えばボロヒドリドの形で水素貯蔵に使用される。ここで、前記イオン性液体又はより具体的には前記同じイオン性液体の前記アニオンが最初のもの(例えばボロヒドリド)から二番目のもの(例えばメタボレート又はボレート又はポリボレート)と交換される。かかるプロセスでは、水素はイオン性液体の特定のアニオンの形(例えばボロヒドリド)で貯蔵され、そして、第二のアニオン(例えばメタボレート又はボレート又はポリボレート)が形成される際に放出され、その結果第二のイオン性液体において再び水素を負荷させることができる。特にボロヒドリドはナトリウムボロヒドリド(NaBH
4)であり得る。特にボロヒドリドイオン性液体の流体及び水は触媒が導入される前にエマルジョンに変換され得る。従って相境界表面が増大する。特に、エマルジョンは乳化剤を用いないで(例えば流体の攪拌、流体を水切りつばやバッフルプレートに対向して流すことで)発生させることができる。乳化剤を用いないことは、前記ボロヒドリドの続く再利用をより簡単にすることができる。
【0012】
特にボロヒドリドは前記第一のイオン性液体を形成する。前記第一のイオン性液体及び第二のイオン性液体は純粋なイオン性液体であってよい。即ち実質的にアニオンとカチオンのみを含み、他の成分(例えば水)を含まない。又は、前記イオン性液体及び溶媒又はさらなる成分(例えば粘度を下げるために)を含む溶液も使用されてもよい。明確にするために留意すべきは、前記イオン性液体はもちろん複数のカチオン及びアニオンを含んでいてよいということである。前記イオン性液体は、相対的に低融点(例えば100℃よりも低い融点)を持つ有機塩であってよい。すなわち、室温では固体又は少なくとも高粘度であってもイオン性液体として特定され得る。
【0013】
特に、前記カチオンは、疎水性カチオンであってよい。この用語の意味は、イオン性液体が、温度範囲、0℃及び60℃の間、より具体的には0℃と80℃の間、さらに具体的には0℃と100℃の間で、水への強い非混和性を持つことを意味する。
【0014】
本発明のひとつの例示的側面によれば、水素貯蔵のためのイオン性液体が提供される。ここで前記イオン性液体はカチオンとボロヒドリドを含む。特に、前記ボロヒドリドは前記イオン性液体の一部のアニオン又はアニオンであり得る。前記カチオンは第4級物質(例えばトリオクチルメチルアンモニウム又は1−オクチル−3−メチル−イミダゾリウム)からなるか、を含む。さらに、前記イオン性液体は既定の粘度を有する。特に、前記粘度は、例えば望ましいレベル(例えば室温で100mPaより小さい及び/又は−20℃で2000mPaよりも小さい)に設定され得る。
【0015】
本発明のひとつの例示的側面によれば、水素貯蔵のイオン性液体が提供される。ここで、前記イオン性液体はカチオンとボレート(特にメタボレート)を含むアニオンを含む。前記ボレートは、B、O及び場合によりH原子を含んでいてよい。さらにボレートはメタボレート又はポリボレートで形成されてよい。特に、前記ボレート又はメタボレートは前記イオン性液体のアニオンの一部又はアニオンであってよい。前記カチオンは第4級物質(例えばトリオクチルメチルアンモニウム)を含む又はであってよい。さらに、前記イオン性液体は既定の粘度を持つことができる。特に前記粘度は例えば望ましいレベルに設定され得る。
【0016】
本発明では、「ボロヒドリド」とは、最も広い意味で使用される。即ち、ボロン及び少なくともひとつの水素を含む全ての分子、化合物、ラジカル又は複合物を意味することができる。即ち、一般式BHR’R’’R’’’又はBH
3X
−又はB
2H
6X
−により記載される。ここでX
−はボラン又はジボランと錯体(complex)を形成する全てのアニオンである。例えばR’、R’’、R’’’は水素原子、C1−C20アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル又はヘテロアリルであり、Rは独立して上に記載された基のひとつで置換されてよい。
【0017】
ボロヒドリドイオン性液体(例えば前記第一のイオン性液体)を提供することにより、水素貯蔵の方法及び水素貯蔵のためのイオン性液体を提供することが可能となる。かかる方法により、効率的であり及び/又は安全な操作方法を提供することが可能となる。特に、前記ボロヒドリドは前記カチオンと共にイオン性液体を形成することができ、容易なかつ安全な扱いを可能にし、例えば自動車のためのエネルギ源又はエネルギキャリアとして使用され得る。特に、扱いは通常のガソリンと同じであり得る。というのは、イオン性液体はまた、通常のガソリンと同じく液体だからである。従って、加圧水素や金属ヒドリド(これは特定の条件でのみ形成される)などの追加の支持体を必要としない。従って、イオン性液体の使用はより安全となる。なぜなら特別の条件が必要なく、また少なくとも特定の条件に関する制限(例えば温度範囲)が少ないからである。イオン性液体の粘度は適切な条件設定で低減され得ることは留意すべきである。例えば温度上昇などである。水素貯蔵のためのかかるイオン性液体の使用はまた、イオン性液体の貯蔵に用いる容器などの低腐食性をもたらす貯蔵媒体を提供する。従って、腐食防止剤の使用を省略することを可能とする。
【0018】
次に、水素貯蔵のためのイオン性液体を用いる方法の例示的実施態様のさらなる側面が記載される。
【0019】
本方法のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは第4級又はプロトン化カチオンである。
【0020】
本方法のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは、水素、Cl−C20−アルキル、Cl−C20−アルケニル、Cl−C20−アルキニル、Cl−C20−シクロアルキル、Cl−C20−シクロアルケニル、Cl−C20−アリル及びCl−C20−ヘテロアリルを含む群からの基を1から4個含む。
【0021】
好ましくは、前記1から4の基(即ち、1、2、3又は4個の基)は、水素、C1−C10−アルキル、C1−C10−アルケニル、C1−C10−アルキニル、C1−C10−シクロアルキル、C1−C10−シクロアルケニル、C1−C10−アリル及びC1−C10−ヘテロアリルを含む群から選択され得る。さらに好ましくは、前記1から4の基は、C1−C8−アルキル、C1−C8−アルケニル、C1−C8−アルキニル、C1−C8−シクロアルキル、C1−C8−シクロアルケニル、C1−C8−アリル及びC1−C8−ヘテロアリルを含む群から選択され得る。
【0022】
明確にするために次のことは留意すべきである。即ち、本発明において、用語C1−C20アルキル又は類似の用語は、C1−アルキル、C2−アルキル、…、C20アルキルまでのアルキル基又は類所の用語の省略語である。
【0023】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは、ピリジニウム、ピロリニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム及びキノリニウムを含む群からのひとつであり、ひとつの基が前記窒素元素に結合し及び/又は1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する。
【0024】
本発明の例示的実施態様によれば、前記カチオンは、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウムを含む群のひとつである。
本発明の例示的実施態様によれば、前記カチオンは、ピペラジニウム、ピロリジニウム及びモルホリニウムを含む群からのひとつであり、前記1から4の基の1又は2つの基が前記窒素原子に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する。
【0025】
本発明の例示的実施態様によれば、前記カチオンが、イミダゾリウム、ベンズイミダゾリウム、ピラゾリウム及びベンゾトリアゾリウムを含む群からのひとつであり、前記4つの基のそれぞれのひとつがそれぞれの窒素に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する。明確にする目的で次の点に留意すべきである。1以上の窒素原子の場合、第一の基が第一の窒素に結合することができ、第二の基が第二の窒素原子に結合することができる。
【0026】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは、トリオクチルメチルアンモニウム、トリヘキシルメチルアンモニウム、テトラヘキスルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム及びl−オクチル−3−メチルイミダゾリウムを含む群からのひとつである。特にトリオクチルメチルアンモニウムが前記イオン性液体の前記カチオンを形成することができる。
【0027】
特に、前記カチオンはアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含まない。すなわち、イオン性液体は、アルカリ金属カチオン及び/又はアルカリ土類金属カチオンを含まない。
【0028】
本発明の例示的実施態様によれば、前記触媒は遷移金属及び/又は貴金属である。特に、貴金属には、白金、パラジウム、ロジウムなどが含まれ、遷移金属にはコバルト、ニッケル、銅又はランタニドなどが含まれる。さらに、触媒は、上で説明した貴金属及び/又は遷移金属からなる、又はを含む、合金、金属間化合物、化合物、錯体(complex)又はセラミックスとして形成されてよい。さらに、触媒は、化学的又は物理的に、媒体上又は媒体中(例えば活性炭、セラミックス、ゼオライト、ナノチューブ、フラレン、プラスチック、メンブレンなど)に固定化されてよい。
【0029】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、触媒はミクロ結晶又はナノ結晶構造を持つ。
【0030】
用語「ミクロ結晶構造」とは、サイズがマイクロメータである要素を有する結晶性構造を意味する。同様に「ナノ結晶性構造」とは、サイズがナノメータである要素を有する結晶性構造を意味する。例えば、触媒構造は、粒子サイズがマイクロメータ又はナノメータ(例えば0.2マイクロメータから1.6マイクロメータ又は約10ナノメータ)である金属粉末を焼結することで形成され得る。これらの粉末粒子は焼結されてミリメータ範囲の直径を持つ球状(例えば0.1mmから20mm、特に1mmから2mm)となる。前記球状物を焼結した後に同じく焼結して結晶状の構造を形成することができる(例えば、六方充填、特に六方最密充填)。かかる構造は特に大きな表面積を有することから、反応、例えば水素放出が促進され得ることから有用である。
【0031】
水素放出によりボレート(例えばメタボレート)又は一般式BOR又はBOR’に対応する全ての化合物が形成される。
【0032】
特に前記メタボレートはイオン性液体のアニオンを形成する。
【0033】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、前記第一のイオン性液体及び/又は第二のイオン性液体は既定の粘度を持つ。特に前記第一のイオン性液体及び第二のイオン性液体は同じ粘度又は異なる粘度を持ってよい。例えば、第一の既定の粘度は前記第一のイオン性液体に伴うものであってよく、一方で第二の既定の粘度は前記第二のイオン性液体に伴うものであってよい。特に、粘度は例えば望ましいレベル(例えば室温で100mPaよりも小さく及び/又は−20℃では2000mPaよりも小さい)に設定され得る。
【0034】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、粘度レベルは添加剤を添加することで既定の粘度に設定することができる。特に、前記添加剤は粘度を低減させるために使用され得る。例えばイオン性液体(即ち水素貯蔵液体)よりも低粘度の試薬である。さらに、添加剤はイオン性液体及び/又は使用する触媒と反応性のないものであり得る。従って、一般的にはエステル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などは使用できないが、立体障害性のものは使用され得る。即ち、イオン性液体及び/又は触媒とは例えば立体障害のために反応しないアルデヒド、ケトン又はカルボン酸である。
【0035】
一般的に、該添加剤は、例えば腐食や疲労、高圧、酸化及び/又は還元プロセスに対する保護のための保護剤、例えばpHレベル緩衝である緩衝剤及び/又は酸捕集剤、錯化剤、乳化剤、分散媒体、表面活性剤、潤滑剤、摩擦調節剤、粘性調節剤、ゲル化剤、シーリング剤、保存剤、いわゆる流動点添加剤、発泡防止剤、ラジカル干渉剤及び水分調節試薬などが挙げられる。
【0036】
特に、添加剤は低蒸気圧、高沸点及び低凍結温度を持つものが使用され得る。さらに、添加剤は、水素ガスから例えばガス相として容易に除去できるものが使用され得る。この除去は例えば活性炭などの吸収剤により行うことができる。さらに、使用済み添加剤は水に溶解性、混和性でなく、従って再生プロセス中では除去されなくてもよい。
【0037】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、添加剤は、アミド、サイクリック又はポリエーテルを含むエーテル、アセタール、ケタール、ポリアルコールを含むアルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が挙げられる。例えば、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、脂肪酸アルコール、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、1、2−ジエトキシエタン、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(異なる長さの)及びポリビニルアルコール(異なる長さ)が挙げられる。
【0038】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、本方法はさらに、前記第一のイオン性液体及び/又は第二のイオン性液体に塩基を添加することを含む。これはpHを7よりも大きく維持するために使用されることができる。特に、塩基添加剤は安定化効果を有し、安定化剤とも呼ばれてもよい。
【0039】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、塩基性添加剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属カーボネート、アルカリ土類金属カーボネート、第4級テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第4級テトラアルキルアンモニウムカーボネート、第4級テトラアルキルホスホニウム水酸化物、第4級テトラアルキルホスホニウムカーボネート及びアルキルカーボネートを含む群からの少なくとも1つである。
【0040】
まとめると、本発明のひとつの例示的実施態様によれば、水素貯蔵のためのプロセスが提供される。前記プロセスは閉鎖ループを形成し、液体キャリア物質(例えばイオン性液体などの)に基づく。特に、前記液体キャリアはカチオン(例えばトリオクチルメチルアンモニウムなど)及びアニオンを含む。前記アニオンはボロヒドリドにより形成され保存水素を運ぶことができる。前記カチオン及びアニオンは水と接触しても安定なイオン性液体を形成する。しかし、貯蔵水素は水及び触媒(例えば白金、パラジウム又はロジウムなどの遷移金属又は貴金属)の使用により放出される。この条件では、イオン性液体が水素を放出し、一方で、トリオクチルメチルアンモニウム及びボレート(例えばメタボレート)を含む新たなイオン性液体が形成される。この新たなイオン性液体はその後、水素を再度負荷される(例えば、ナトリウムボロヒドリドを前記イオン性液体に導入することにより)。
【0041】
イオン性液体を用いて水素を貯蔵するそれぞれの方法は、水素貯蔵の効率的かつ安全な方法を提供する。特に、高圧も低温も使用せずに十分な量を貯蔵することができる。例えば、カチオンとしてトリオクチルメチルアンモニウムを、アニオンとしてメタボレート又はボロヒドリドを含むイオン性液体を用いると、イオン性液体がひとつのサイクル又はリサイクルプロセスにおいて水素を負荷及び脱負荷されることができる(例えばイオン性液体交換プロセスを用いて)液体貯蔵媒体の提供が可能となる。
このイオン性液体は水素の十分高い貯蔵密度を提供することができ、この水素は触媒を用いて制御して放出されることができる。一般的に、例えば自動車のために十分な範囲を保証する貯蔵媒体を提供することができる。貯蔵媒体としてイオン性液体を用いることで、質量当たりの高い貯蔵容量及び/又は容積当たりの高い貯蔵容量を保証することができる。さらに、高い貯蔵安全性を導く低い漏れも達成可能である。さらに、記載されたイオン性液体は、化学的及び/又は熱影響及び/又は防火性について長時間にわたり高い安定性を有することができる。
【0042】
他の可能なカチオンには、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、1、3−ジメチルイミダゾリウム、l−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1、2、3−トリメチルイミダゾリウム、l−エチル−3−メチルイミダゾリウム、l−エチル−2、3−ジメイルイミダゾリウム及びl−ブチル−2、3−ジメチルイミダゾリウム(全てアニオンとしてBH
4と共に使用され得る)が挙げられる。
【0043】
本発明の上で記載された側面及びさらなる側面は、以下記載される実施態様の例により明らかであり、実施態様のこれらの例を参照して説明される。留意すべきことは、ひとつの例示的実施態様又は例示的側面に結びつけて記載された構成は、他の例示的実施態様及び他の例示的側面と組み合わせることができ得る、ということである。
【0044】
以下、本発明を実施態様の例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。