特許第5649586号(P5649586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649586水素貯蔵のためのイオン性液体を使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649586
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】水素貯蔵のためのイオン性液体を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/32 20060101AFI20141211BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   C01B3/32 Z
   C01B3/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-545668(P2011-545668)
(86)(22)【出願日】2010年1月8日
(65)【公表番号】特表2012-515134(P2012-515134A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2010000062
(87)【国際公開番号】WO2010081657
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2012年11月28日
(31)【優先権主張番号】09150676.6
(32)【優先日】2009年1月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511160066
【氏名又は名称】ヴイティーユー ホールディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VTU HOLDING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】カーブ,ローランド
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−514539(JP,A)
【文献】 特表2008−540939(JP,A)
【文献】 特表2003−535450(JP,A)
【文献】 特開2006−272143(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0102489(US,A1)
【文献】 M.P. STRACKE,HYDROGEN-STORAGE MATERIALS BASED ON IMIDAZOLIUM IONIC LIQUIDS,ENERGY AND FUELS,2007年 8月 3日,V21,P1695-1698
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンとボレートを有するアニオンを含む第二のイオン性液体にボロヒドリドを導入することにより、カチオンとボロヒドリドを含むアニオンとを含む第一のイオン性液体を形成する方法
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、前記カチオンが第4級カチオン又はプロトン化カチオンである、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であり、前記カチオンが、水素、Cl−C20−アルキル、Cl−C20−アルケニル、Cl−C20−アルキニル、Cl−C20−シクロアルキル、Cl−C20−シクロアルケニル、Cl−C20−アリル及びCl−C20−ヘテロアリルからなる群からの基を1から4個含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であり、前記カチオンが、ピリジニウム、ピロリニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム及びキノリニウムからなる群のひとつであり、
前記1から4の基が、前記窒素原子に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であり、前記カチオンが、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウムからなる群のひとつである、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であり、前記カチオンが、ピペラジニウム、ピロリジニウム及びモルホリニウムからなる群からのひとつであり、
前記1から4の基の1又は2つの基が前記窒素原子に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であり、前記カチオンが、イミダゾリウム、ベンズイミダゾリウム、ピラゾリウム及びベンゾトリアゾリウムからなる群からのひとつであり、
前記4つの基のそれぞれのひとつがそれぞれの窒素に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であり、前記カチオンが、トリオクチルメチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム及び1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、トリヘキシルメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1、3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1、2、3−トリメチルイミダゾリウム、l−エチル−3−メチルイミダゾリウム、l−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウム及びl−ブチル−2、3−ジメチルイミダゾリウムからなる群のひとつである、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であり、前記第一のイオン性液体及び/又は前記第二のイオン性液体が、既定の粘度を持つ、方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法であり、前記粘度レベルが添加剤を添加することで既定の粘度に設定される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であり、前記添加剤が、アミド、サイクリック又はポリエーテルを含むエーテル、アセタール、ケタール、ポリアルコールを含むアルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、1、2−ジエトキシエタン、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリビニルアルコールからなる群からのひとつである、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であり、さらに、前記第一のイオン性液体及び/又は前記第二のイオン性液体に、塩基性添加剤を添加することを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であり、前記塩基性添加剤が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属カーボネート、アルカリ土類金属カーボネート、第4級テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第4級テトラアルキルアンモニウムカーボネート、第4級テトラアルキルホスホニウム水酸化物、第4級テトラアルキルホスホニウムカーボネート及び第4級テトラアルキルホスホニウムアルキルカーボネートからなる群からの少なくともひとつである、方法。
【請求項14】
水及び触媒の使用によって水素を放出し、カチオンと、ボレートを含むアニオンとを含むイオン性液体になる、水素貯蔵のためのイオン性液体であり、
カチオンボロヒドリドを含むアニオンとを含む、イオン性液体。
【請求項15】
ボロヒドリドを導入すると、カチオンとボロヒドリドを含むアニオンとを含むイオン性液体になる、水素貯蔵のためのイオン性液体であり、
カチオンと、ボレートを含むアニオンとを含む、イオン性液体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵のためのイオン性液体を使用する方法に関する。さらに本発明は、水素貯蔵のためのイオン性液体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の貯蔵及び輸送は種々の方法で行うができる。例えば、水素は、875barの圧力に耐える適切な高圧タンク内で圧縮して貯蔵することができる。さらに、好ましくは超断熱冷却容器内である、適切な冷却容器内で低温液化貯蔵が知られている。低温液化貯蔵は、特に水素駆動車で−それらが改良燃焼機関による手段での駆動であるか、電気モータを駆動する燃料電池による手段での駆動であるかには無関係に−実装される可能性がある。
【0003】
水素貯蔵方法として、化学的に水素を結合し得る有機化合物内に水素を貯蔵するシステムはいまだ実験段階である。そのような貯蔵システムは、MPH(メチルシクロヘキサンポルレン水素)、デカリン/ナフタレン及びn−ヘプタン/トルエンシステムとして知られている。
【0004】
上で説明したことに共通なことは、水素が適切な条件でそれらと反応させて水素化して水素貯蔵するということである。
【0005】
上で説明したすべての代替技術は、特有の利点及び欠点を持つ。従ってこれらの代替技術のひとつを選択する決定は、通常特定の応用及び条件に依存する。これまでのかかる代替技術の本質的な欠点は、使用される化学反応システムが相対的に高い蒸気圧を持つことであり、従って水素のかなりの程度の汚染を生じるということである。
【0006】
特に水素の高純度を達成するために、かかる化学反応システムは、ときには相当の費用とエネルギをかけて汚染を除去しなければならない。
【0007】
当業者は水素の可能性のある貯蔵方法を創造するために努力してきた。かかる貯蔵方法は、水素を純粋又は完全に純粋なかたちで貯蔵でき、さらに貯蔵は商業的に最も安全かつ最も経済的に貯蔵できるものである。水素は、特に燃料電池で使用される場合非常に高純度であることを要する。場合により上で説明した改良燃焼機関においても同様である。これは通常下流に触媒コンバータを有し、水素は(超)高純度で貯蔵されることを要求される。なぜなら、かかる水素と処理される炭化水素は触媒の変換効率又は寿命に悪影響を与える恐れがあるからである。特に水素をいわゆる自動車への応用−自動車運転操作−の際には安全性の側面が極めて大きい。このことは特に再充填過程で指摘される。というのは通常この過程は運転者自身、従って「技術的素人」によって行われるからである。
【0008】
従って、水素貯蔵代替技術であって、効果的及び/又は安全な方法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、水素貯蔵の方法及び水素貯蔵の媒体を提供することであり、かかる方法は、効率的であり及び/又は安全な操作を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、本発明の独立請求項に係る水素貯蔵のためのイオン性液体の使用の方法及び水素貯蔵のためのイオン性液体により解決される。さらに例示的実施態様が従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明のひとつの例示的側面によれば、水素貯蔵の方法が提供され、前記方法は、カチオンと、特にメタボレートであるボレートを含むアニオンを含む第二のイオン性液体にボロヒドリドを導入して第一のイオン性液体を形成し、かつ、前記第一のイオン性液体から水及び/又は触媒を用いて水素を放出させて前記第二のイオン性液体を形成する、ことを含む。即ち、ループプロセス又はサイクルプロセスが形成される。そこで、イオン性液体が例えばボロヒドリドの形で水素貯蔵に使用される。ここで、前記イオン性液体又はより具体的には前記同じイオン性液体の前記アニオンが最初のもの(例えばボロヒドリド)から二番目のもの(例えばメタボレート又はボレート又はポリボレート)と交換される。かかるプロセスでは、水素はイオン性液体の特定のアニオンの形(例えばボロヒドリド)で貯蔵され、そして、第二のアニオン(例えばメタボレート又はボレート又はポリボレート)が形成される際に放出され、その結果第二のイオン性液体において再び水素を負荷させることができる。特にボロヒドリドはナトリウムボロヒドリド(NaBH)であり得る。特にボロヒドリドイオン性液体の流体及び水は触媒が導入される前にエマルジョンに変換され得る。従って相境界表面が増大する。特に、エマルジョンは乳化剤を用いないで(例えば流体の攪拌、流体を水切りつばやバッフルプレートに対向して流すことで)発生させることができる。乳化剤を用いないことは、前記ボロヒドリドの続く再利用をより簡単にすることができる。
【0012】
特にボロヒドリドは前記第一のイオン性液体を形成する。前記第一のイオン性液体及び第二のイオン性液体は純粋なイオン性液体であってよい。即ち実質的にアニオンとカチオンのみを含み、他の成分(例えば水)を含まない。又は、前記イオン性液体及び溶媒又はさらなる成分(例えば粘度を下げるために)を含む溶液も使用されてもよい。明確にするために留意すべきは、前記イオン性液体はもちろん複数のカチオン及びアニオンを含んでいてよいということである。前記イオン性液体は、相対的に低融点(例えば100℃よりも低い融点)を持つ有機塩であってよい。すなわち、室温では固体又は少なくとも高粘度であってもイオン性液体として特定され得る。
【0013】
特に、前記カチオンは、疎水性カチオンであってよい。この用語の意味は、イオン性液体が、温度範囲、0℃及び60℃の間、より具体的には0℃と80℃の間、さらに具体的には0℃と100℃の間で、水への強い非混和性を持つことを意味する。
【0014】
本発明のひとつの例示的側面によれば、水素貯蔵のためのイオン性液体が提供される。ここで前記イオン性液体はカチオンとボロヒドリドを含む。特に、前記ボロヒドリドは前記イオン性液体の一部のアニオン又はアニオンであり得る。前記カチオンは第4級物質(例えばトリオクチルメチルアンモニウム又は1−オクチル−3−メチル−イミダゾリウム)からなるか、を含む。さらに、前記イオン性液体は既定の粘度を有する。特に、前記粘度は、例えば望ましいレベル(例えば室温で100mPaより小さい及び/又は−20℃で2000mPaよりも小さい)に設定され得る。
【0015】
本発明のひとつの例示的側面によれば、水素貯蔵のイオン性液体が提供される。ここで、前記イオン性液体はカチオンとボレート(特にメタボレート)を含むアニオンを含む。前記ボレートは、B、O及び場合によりH原子を含んでいてよい。さらにボレートはメタボレート又はポリボレートで形成されてよい。特に、前記ボレート又はメタボレートは前記イオン性液体のアニオンの一部又はアニオンであってよい。前記カチオンは第4級物質(例えばトリオクチルメチルアンモニウム)を含む又はであってよい。さらに、前記イオン性液体は既定の粘度を持つことができる。特に前記粘度は例えば望ましいレベルに設定され得る。
【0016】
本発明では、「ボロヒドリド」とは、最も広い意味で使用される。即ち、ボロン及び少なくともひとつの水素を含む全ての分子、化合物、ラジカル又は複合物を意味することができる。即ち、一般式BHR’R’’R’’’又はBH又はBにより記載される。ここでXはボラン又はジボランと錯体(complex)を形成する全てのアニオンである。例えばR’、R’’、R’’’は水素原子、C1−C20アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル又はヘテロアリルであり、Rは独立して上に記載された基のひとつで置換されてよい。
【0017】
ボロヒドリドイオン性液体(例えば前記第一のイオン性液体)を提供することにより、水素貯蔵の方法及び水素貯蔵のためのイオン性液体を提供することが可能となる。かかる方法により、効率的であり及び/又は安全な操作方法を提供することが可能となる。特に、前記ボロヒドリドは前記カチオンと共にイオン性液体を形成することができ、容易なかつ安全な扱いを可能にし、例えば自動車のためのエネルギ源又はエネルギキャリアとして使用され得る。特に、扱いは通常のガソリンと同じであり得る。というのは、イオン性液体はまた、通常のガソリンと同じく液体だからである。従って、加圧水素や金属ヒドリド(これは特定の条件でのみ形成される)などの追加の支持体を必要としない。従って、イオン性液体の使用はより安全となる。なぜなら特別の条件が必要なく、また少なくとも特定の条件に関する制限(例えば温度範囲)が少ないからである。イオン性液体の粘度は適切な条件設定で低減され得ることは留意すべきである。例えば温度上昇などである。水素貯蔵のためのかかるイオン性液体の使用はまた、イオン性液体の貯蔵に用いる容器などの低腐食性をもたらす貯蔵媒体を提供する。従って、腐食防止剤の使用を省略することを可能とする。
【0018】
次に、水素貯蔵のためのイオン性液体を用いる方法の例示的実施態様のさらなる側面が記載される。
【0019】
本方法のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは第4級又はプロトン化カチオンである。
【0020】
本方法のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは、水素、Cl−C20−アルキル、Cl−C20−アルケニル、Cl−C20−アルキニル、Cl−C20−シクロアルキル、Cl−C20−シクロアルケニル、Cl−C20−アリル及びCl−C20−ヘテロアリルを含む群からの基を1から4個含む。
【0021】
好ましくは、前記1から4の基(即ち、1、2、3又は4個の基)は、水素、C1−C10−アルキル、C1−C10−アルケニル、C1−C10−アルキニル、C1−C10−シクロアルキル、C1−C10−シクロアルケニル、C1−C10−アリル及びC1−C10−ヘテロアリルを含む群から選択され得る。さらに好ましくは、前記1から4の基は、C1−C8−アルキル、C1−C8−アルケニル、C1−C8−アルキニル、C1−C8−シクロアルキル、C1−C8−シクロアルケニル、C1−C8−アリル及びC1−C8−ヘテロアリルを含む群から選択され得る。
【0022】
明確にするために次のことは留意すべきである。即ち、本発明において、用語C1−C20アルキル又は類似の用語は、C1−アルキル、C2−アルキル、…、C20アルキルまでのアルキル基又は類所の用語の省略語である。
【0023】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは、ピリジニウム、ピロリニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム及びキノリニウムを含む群からのひとつであり、ひとつの基が前記窒素元素に結合し及び/又は1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する。
【0024】
本発明の例示的実施態様によれば、前記カチオンは、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウムを含む群のひとつである。
本発明の例示的実施態様によれば、前記カチオンは、ピペラジニウム、ピロリジニウム及びモルホリニウムを含む群からのひとつであり、前記1から4の基の1又は2つの基が前記窒素原子に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する。
【0025】
本発明の例示的実施態様によれば、前記カチオンが、イミダゾリウム、ベンズイミダゾリウム、ピラゾリウム及びベンゾトリアゾリウムを含む群からのひとつであり、前記4つの基のそれぞれのひとつがそれぞれの窒素に結合し及び/又は前記1から4の基の1から3の基が前記炭素環の炭素原子に結合する。明確にする目的で次の点に留意すべきである。1以上の窒素原子の場合、第一の基が第一の窒素に結合することができ、第二の基が第二の窒素原子に結合することができる。
【0026】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、前記カチオンは、トリオクチルメチルアンモニウム、トリヘキシルメチルアンモニウム、テトラヘキスルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム及びl−オクチル−3−メチルイミダゾリウムを含む群からのひとつである。特にトリオクチルメチルアンモニウムが前記イオン性液体の前記カチオンを形成することができる。
【0027】
特に、前記カチオンはアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含まない。すなわち、イオン性液体は、アルカリ金属カチオン及び/又はアルカリ土類金属カチオンを含まない。
【0028】
本発明の例示的実施態様によれば、前記触媒は遷移金属及び/又は貴金属である。特に、貴金属には、白金、パラジウム、ロジウムなどが含まれ、遷移金属にはコバルト、ニッケル、銅又はランタニドなどが含まれる。さらに、触媒は、上で説明した貴金属及び/又は遷移金属からなる、又はを含む、合金、金属間化合物、化合物、錯体(complex)又はセラミックスとして形成されてよい。さらに、触媒は、化学的又は物理的に、媒体上又は媒体中(例えば活性炭、セラミックス、ゼオライト、ナノチューブ、フラレン、プラスチック、メンブレンなど)に固定化されてよい。
【0029】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、触媒はミクロ結晶又はナノ結晶構造を持つ。
【0030】
用語「ミクロ結晶構造」とは、サイズがマイクロメータである要素を有する結晶性構造を意味する。同様に「ナノ結晶性構造」とは、サイズがナノメータである要素を有する結晶性構造を意味する。例えば、触媒構造は、粒子サイズがマイクロメータ又はナノメータ(例えば0.2マイクロメータから1.6マイクロメータ又は約10ナノメータ)である金属粉末を焼結することで形成され得る。これらの粉末粒子は焼結されてミリメータ範囲の直径を持つ球状(例えば0.1mmから20mm、特に1mmから2mm)となる。前記球状物を焼結した後に同じく焼結して結晶状の構造を形成することができる(例えば、六方充填、特に六方最密充填)。かかる構造は特に大きな表面積を有することから、反応、例えば水素放出が促進され得ることから有用である。
【0031】
水素放出によりボレート(例えばメタボレート)又は一般式BOR又はBOR’に対応する全ての化合物が形成される。
【0032】
特に前記メタボレートはイオン性液体のアニオンを形成する。
【0033】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、前記第一のイオン性液体及び/又は第二のイオン性液体は既定の粘度を持つ。特に前記第一のイオン性液体及び第二のイオン性液体は同じ粘度又は異なる粘度を持ってよい。例えば、第一の既定の粘度は前記第一のイオン性液体に伴うものであってよく、一方で第二の既定の粘度は前記第二のイオン性液体に伴うものであってよい。特に、粘度は例えば望ましいレベル(例えば室温で100mPaよりも小さく及び/又は−20℃では2000mPaよりも小さい)に設定され得る。
【0034】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、粘度レベルは添加剤を添加することで既定の粘度に設定することができる。特に、前記添加剤は粘度を低減させるために使用され得る。例えばイオン性液体(即ち水素貯蔵液体)よりも低粘度の試薬である。さらに、添加剤はイオン性液体及び/又は使用する触媒と反応性のないものであり得る。従って、一般的にはエステル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などは使用できないが、立体障害性のものは使用され得る。即ち、イオン性液体及び/又は触媒とは例えば立体障害のために反応しないアルデヒド、ケトン又はカルボン酸である。
【0035】
一般的に、該添加剤は、例えば腐食や疲労、高圧、酸化及び/又は還元プロセスに対する保護のための保護剤、例えばpHレベル緩衝である緩衝剤及び/又は酸捕集剤、錯化剤、乳化剤、分散媒体、表面活性剤、潤滑剤、摩擦調節剤、粘性調節剤、ゲル化剤、シーリング剤、保存剤、いわゆる流動点添加剤、発泡防止剤、ラジカル干渉剤及び水分調節試薬などが挙げられる。
【0036】
特に、添加剤は低蒸気圧、高沸点及び低凍結温度を持つものが使用され得る。さらに、添加剤は、水素ガスから例えばガス相として容易に除去できるものが使用され得る。この除去は例えば活性炭などの吸収剤により行うことができる。さらに、使用済み添加剤は水に溶解性、混和性でなく、従って再生プロセス中では除去されなくてもよい。
【0037】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、添加剤は、アミド、サイクリック又はポリエーテルを含むエーテル、アセタール、ケタール、ポリアルコールを含むアルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が挙げられる。例えば、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、脂肪酸アルコール、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、1、2−ジエトキシエタン、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(異なる長さの)及びポリビニルアルコール(異なる長さ)が挙げられる。
【0038】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、本方法はさらに、前記第一のイオン性液体及び/又は第二のイオン性液体に塩基を添加することを含む。これはpHを7よりも大きく維持するために使用されることができる。特に、塩基添加剤は安定化効果を有し、安定化剤とも呼ばれてもよい。
【0039】
本発明のひとつの例示的実施態様によれば、塩基性添加剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属カーボネート、アルカリ土類金属カーボネート、第4級テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第4級テトラアルキルアンモニウムカーボネート、第4級テトラアルキルホスホニウム水酸化物、第4級テトラアルキルホスホニウムカーボネート及びアルキルカーボネートを含む群からの少なくとも1つである。
【0040】
まとめると、本発明のひとつの例示的実施態様によれば、水素貯蔵のためのプロセスが提供される。前記プロセスは閉鎖ループを形成し、液体キャリア物質(例えばイオン性液体などの)に基づく。特に、前記液体キャリアはカチオン(例えばトリオクチルメチルアンモニウムなど)及びアニオンを含む。前記アニオンはボロヒドリドにより形成され保存水素を運ぶことができる。前記カチオン及びアニオンは水と接触しても安定なイオン性液体を形成する。しかし、貯蔵水素は水及び触媒(例えば白金、パラジウム又はロジウムなどの遷移金属又は貴金属)の使用により放出される。この条件では、イオン性液体が水素を放出し、一方で、トリオクチルメチルアンモニウム及びボレート(例えばメタボレート)を含む新たなイオン性液体が形成される。この新たなイオン性液体はその後、水素を再度負荷される(例えば、ナトリウムボロヒドリドを前記イオン性液体に導入することにより)。
【0041】
イオン性液体を用いて水素を貯蔵するそれぞれの方法は、水素貯蔵の効率的かつ安全な方法を提供する。特に、高圧も低温も使用せずに十分な量を貯蔵することができる。例えば、カチオンとしてトリオクチルメチルアンモニウムを、アニオンとしてメタボレート又はボロヒドリドを含むイオン性液体を用いると、イオン性液体がひとつのサイクル又はリサイクルプロセスにおいて水素を負荷及び脱負荷されることができる(例えばイオン性液体交換プロセスを用いて)液体貯蔵媒体の提供が可能となる。
このイオン性液体は水素の十分高い貯蔵密度を提供することができ、この水素は触媒を用いて制御して放出されることができる。一般的に、例えば自動車のために十分な範囲を保証する貯蔵媒体を提供することができる。貯蔵媒体としてイオン性液体を用いることで、質量当たりの高い貯蔵容量及び/又は容積当たりの高い貯蔵容量を保証することができる。さらに、高い貯蔵安全性を導く低い漏れも達成可能である。さらに、記載されたイオン性液体は、化学的及び/又は熱影響及び/又は防火性について長時間にわたり高い安定性を有することができる。
【0042】
他の可能なカチオンには、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、1、3−ジメチルイミダゾリウム、l−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1、2、3−トリメチルイミダゾリウム、l−エチル−3−メチルイミダゾリウム、l−エチル−2、3−ジメイルイミダゾリウム及びl−ブチル−2、3−ジメチルイミダゾリウム(全てアニオンとしてBHと共に使用され得る)が挙げられる。
【0043】
本発明の上で記載された側面及びさらなる側面は、以下記載される実施態様の例により明らかであり、実施態様のこれらの例を参照して説明される。留意すべきことは、ひとつの例示的実施態様又は例示的側面に結びつけて記載された構成は、他の例示的実施態様及び他の例示的側面と組み合わせることができ得る、ということである。
【0044】
以下、本発明を実施態様の例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、イオン性液体に基づく水素貯蔵のためのサイクルプロセスを模式的に示す。
図2図2は、触媒物質を含む触媒コンバータを模式的に示す。
図3図3は、水素貯蔵媒体のための容器を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図による説明は模式的である。
【0047】
図1は、イオン性液体を基にする、水素貯蔵のためのサイクルプロセス又はリサイクルプロセス100を模式的に示す。前記プロセスの最初で、イオン性液体が、トリオクチルメチルアンモニウムメチルカーボネート及びナトリウムボロヒドリド(NaBH)(図1で、101で示される)から作られる。
【0048】
【化1】
得られるイオン性液体はトリオクチルメチルアンモニウム−ボロヒドリド(TOMA−BH)である。
【0049】
【化2】
ここで、トリオクチルメチルアンモニウムはカチオンを形成し、ボロヒドリドはアニオンを形成し、またその後放出される水素を含む。TOMA−BHは水に可溶ではないが、水及び触媒と接触して水素を放出することができる(図1では102で示される)。
【0050】
NaBHと比べて、TOMA−BHを使用することはいくつかの利点を持つ。例えば、TOMA−BHは安定であるが、NaBHはアルカリ条件下でも速やかに分解する。さらに、TOMA−BHは水とは反応せず、水には溶解しない。即ち水相に分離して浮遊相を形成する。一方NaBHは水と反応して水に溶解する。さらに、TOMA−BHはNaBHに比べて結晶化する傾向が低く特に低温においてそうである。
【0051】
触媒として、遷移金属が使用され得る。例えば白金又はパラジウムである。水素放出の結果として第二のイオン性液体が形成され、これはトリオクチルメチルアンモニウムをカチオンとし、メタボレートをアニオンとして有する。次の式で表現される。
【0052】
【化3】
すなわち、トリオクチルメチルアンモニウム−メタボレート(TOMA−BO)が形成され、これも水に対する混和性はない。メタボレートアニオンは特に、高温度で部分的に又は完全に反応してボレート又はポリボレートアニオンとなるが、どちらにしても、このボレート又はポリボレートアニオンは該プロセスに干渉せず、メタボレートとほとんど同じ性質を示す。
ここで「メタボレート」とは、より一般的な意味であり、メタボレート及び/又はボレート及び/又はポリボレートの混合物を意味する。前記サイクルステップの次のステップでは、TOMA−BOをナトリウムボロヒドリド(NaBH)の水溶液と接触させ(図1での矢印103で示される)、TOMA−BH及びナトリウムメタボレート(NaBO)の水溶液とする。ここでTOMA−BH及びNaBOは得られる液体で2相を形成する。これらの2相は分離されてさらにリサイクルTOMA−BHとする。留意すべきは、TOMA−BH中の少量の水は悪い影響は与えないということである。なぜならTOMA−BHは触媒の存在なしでは水とは反応しないからである。
【0053】
NaBOはNaBHへ、通常の方法で変換され得る。ここでNaBHが再びリサイクルプロセスで使用されることができる(矢印103)。
【0054】
図2は、触媒物質を含む触媒コンバータの可能な形成を模式的に示す。一般的に触媒コンバータ200は、貴金属(例えば白金又はパラジウム)を含むか、実質的に貴金属からなる。さらに反応を行う非常に広い表面積を持つ(例えば水素放出反応)。特に、触媒コンバータは複数の小球又は球体201(直径約1mmから2mm)から形成される。
これらの球体は、六方体、立方体又は面中心立方体配列を持つ構造に形成される。特に、該配置は可能な限り密にして触媒とイオン性液体が接触する表面積を増加させるべきである。単一の球体201は金属粉末を焼結して形成し得る。ここで粉末粒子はマイクロメータ又はナノメータ範囲(例えば1nm及び50ミクロンメータ、より具体的には10nmから5ミクロンメータ)のサイズを持つ。触媒コンバータは複数のボール又は球体を持つという事実から、触媒コンバータはほとんどすべての望ましい形状に適合させることができる(例えば望ましい形状に切断され得る)。
【0055】
図3は、水素貯蔵媒体を貯蔵するための容器300を模式的に示す。特に容器300は入口302、出口302及び容器内の2つのチャンバ又は2つの部分をお互いに分離する、移動可能な、弾性又は柔軟性なメンブレン303を含む。入口301を用いて水素リッチなイオン性液体(例えばTOMA−BH)が、容器内に供給され図3の左のチャンバ304を充填する。一方出口302は水素を放出したイオン性液体を排出するために使用され得る(例えばTOMA−BOが、図3の右チャンバ305から)。
さらに、容器300はチャンバ304に設けられる出口結合306を含んでいてよい。これは外部ハウジング307と結合されここには触媒コンバータが配置される。ハウジング内で、水素が水素リッチイオン性液体から放出され、水素を放出したイオン性液体が再生される。さらに、ハウジングは容器300とインプット結合308で結合され、インプット結合はチャンバ305に配置される。
【0056】
最後に、留意すべきは以下の点である。上で説明された実施態様は本発明を説明する目的であり、限定するものではないということである。また、当業者であれば、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から離れることなく多くの変更例を設計することができるということである。
【0057】
特許請求の範囲において、括弧内の参照符号は特許請求の範囲を限定するものではない。用語「含む」及び類似の用語は、全ての請求項及び明細書全体で上げられているものの他の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素の単数表現は、その要素の複数の存在を排除するものではなく、逆もまたそうである。いくつかの手段が列挙される装置の請求項において、これらの手段のいくつかは、ソフトウェア又はハードウェアのひとつ又は同じ事項により実施されることができる。ある手段が、相互に異なる従属請求項で引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用することができないということを意味するものではない。
図1
図2
図3