(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来のn型トレンチMOSFET10の断面図である。MOSFET10において、n型エピタキシャル(「N−epi」)層14が、N
+基板12上に成長される。N−epi層14は、低濃度にドープされた層、すなわち、N
-層であり得る。p型ボディ領域16は、N−epi層14とN
+ソース領域18とを分離する。電流は、トレンチ20の側壁に沿って(破線で示された)チャネルを通じて垂直に流れる。トレンチ20の側壁および底部は、薄いゲート絶縁体22(たとえば二酸化ケイ素)で内側を覆われている。トレンチ20は、ドープされたポリシリコン等の導電性材料で埋められ、これがゲート24を形成する。ゲート24を中に含むトレンチ20は、絶縁層26でカバーされており、これはボロンフォスフォシリカガラス(BPSG)であり得る。ソース領域18およびボディ領域16に導電体28が電気的に接続されており、導電体28は通常、金属または金属合金である。ボディコンタクト領域30は、金属28とPボディ16とのオーム性接触を容易にする。ゲート24は、
図1の紙面外で、奥行き方向において接続される。
【0006】
MOSFET10の非常に不利な点は、ゲート24とN−epi層14とが重なり合う領域が大きいことであり、薄いゲート絶縁体22の一部分がドレインの動作電圧にさらされてしまう。このように重複部分が大きいと、MOSFET10のドレインの定格電圧が制限され、薄いゲート絶縁体22の長期的信頼性に問題が生じ、また、MOSFET10のゲート・ドレイン間容量C
gdも大いに増す。トレンチ構造では、C
gdが従来の横方向デバイスにおけるよりも大きいので、MOSFET10のスイッチング速度が制限され、またしたがって、その高周波用途への使用が制限される。
【0007】
この短所に対処し得る1つの方法が、米国出願番号第09/591,179号に記載されており、これを
図2に示す。
図2は、トレンチ20の底部近傍にドープされていないポリシリコンプラグ42を有するトレンチMOSFET40の断面図である。MOSFET40は、ポリシリコンプラグ42を備える点を除いては、
図1のMOSFET10と同様である。ポリシリコンプラグ42は、酸化物層22によってトレンチ20の底部から、また酸化物層44によってゲート24から分離されている。酸化物層22、ポリシリコンプラグ42および酸化物層44のサンドイッチ構造により、ゲート24とN−epi層14との距離が増し、したがってC
gdが減じられる。
【0008】
しかしながら、状況によっては、高周波用途のためにC
gdを最小にする目的で、トレンチ19の底部にノンドープポリシリコンよりも良好な絶縁体の材料を有することが好ましい場合がある。
【0009】
この問題に対処し得る1つの方法が、米国出願番号第09/927,320号に記載されており、これを
図3に示す。
図3は、トレンチ20の底部近傍に厚い酸化物層52を有するトレンチMOSFET50の断面図である。厚い酸化物層52は、ゲート24とN−epi層14とを分離する。これにより、
図1のように薄いゲート絶縁体15のみがゲート24とN−epi層14(ドレイン)とを分離する場合に生じる問題を回避することができる。厚い酸化物層52は
図2に示されるポリシリコンプラグ42よりもより効果的な絶縁体であり、これにより、
図2のMOSFET40の場合と比較して、MOSFET50のゲート・ドレイン間容量C
gdが減じられる。
【0010】
しかしながら、
図3の解決方法でもやはり、ボディ領域16と厚い酸化物層52との間に薄いゲート酸化物領域54が存在する。これは、ボディ領域16の下方接合部と厚い酸化物層52の上端とが自己整合されないためである。ボディ領域16が厚い酸化物層52の上端を超えて下方向に延びれば、MOSFET50は高いオン抵抗R
onおよび高いしきい値電圧を有し得る。しかし、この整合は製造時に制御するのが難しいので、ボディ領域16と厚い酸化物層52との重なり合いを防ぐには、かなりの誤差マージンが許容されねばならず、これは、薄いゲート酸化物領域54においてゲート・ドレイン間が大きく重なり合う結果となり得る。薄いゲート領域54は、
図2のMOSFET40においても、ボディ領域16とポリシリコンプラグ42との間に存在する。したがって、C
gdは未だ、高周波用途にとって問題であり得る。したがって、ゲート・ドレイン間容量C
gdが減じられかつ高周波性能が改善されたトレンチMOSFETが求められる。
【0011】
トレンチMISデバイスの別の問題は、たとえば
図1に示すコーナ56で表わされる、トレンチのコーナにおける電界の強度に関する。電界強度はトレンチのコーナで最大であり、したがって、ここが通常、アバランシェ降伏が生じる場所である。アバランシェ降伏は通常、ホットキャリアの生成に繋がり、ゲート酸化物層の近くで降伏が起こった場合、ホットキャリアがゲート酸化物層内に注入されるおそれがある。これは、ゲート酸化物層を損傷または破断し得、デバイスの長期信頼性の問題が生じ得る。降伏は、ゲート酸化物層から離れた、バルクシリコン内で起こることが好ましい。
【0012】
トレンチのコーナにおける電界強度を減じかつトレンチから離れたバルクシリコン内で降伏を起こさせるための1つの技術が、米国特許番号第5,072,266号に教示されている。この技術は
図4に示され、
図4はMOSFET60を示す。MOSFET60は
図1のMOSFET10と同様であるが、深いP
+拡散部62がPボディ16から下方向に、トレンチ20の底部よりも下のレベルにまで延在する点で異なる。深いP
+拡散部62は、トレンチのコーナ56において電界強度を減じるように電界を整形する効果を有する。
【0013】
米国特許番号第5,072,266号の技術はMOSFETの耐圧性能を改善するが、
図4に「d」で示すセルピッチの下限を設定することになる。なぜなら、セルピッチが小さくなりすぎると、深いP
+拡散部からのドーパントがMOSFETのチャネル領域に入り込み、そのしきい値電圧を高くするためである。セルピッチを減じることで、MOSFETのセルの合計周長が増し、電流に対してより大きなゲート幅が与えられ、それによりMOSFETのオン抵抗を減じられる。したがって、MOSFETの耐圧特性を改善するためにBuluceaの特許の技術を使用すると、実際のところ、MOSFETのオン抵抗を減じることがより困難になってしまう。
【0014】
要約すれば、低いオン抵抗およびしきい値電圧を提供し、しかも高周波動作が可能な、MIS構造が明らかに求められる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に従ったMISデバイスにおいて、第1の導電型の基板は、第2の導電型のエピタキシャル(「epi」)層によって覆われる。トレンチはエピタキシャル層内に形成され、ゲートは、トレンチ内に配置され、酸化物または他の絶縁層によってエピタキシャル層とは分離される。
【0016】
ゲート・ドレイン間容量C
gdを最小にするために、厚い絶縁層、好ましくは酸化物、がトレンチの底部に形成される。トレンチは、たとえば窒化物の比較的厚い層で内側が覆われ、窒化物層は方向性エッチングにかけられて、トレンチの底部から窒化物層が除去される。この時点で、第1の導電型のドーパントがトレンチの底部を介して注入されて、トレンチの底部から基板へと延びるドレイン・ドリフト領域が形成される。
【0017】
厚い絶縁層はいくつかの方法で形成することが可能である。酸化物または他の絶縁層は、たとえば化学蒸着(CVD)によって堆積することができ、厚い絶縁層は、トレンチの底部に「プラグ」のみが残るまでエッチバックされ得る。酸化物層は、トレンチの底部に、熱酸化によって形成されてもよい。堆積プロセスは、堆積された材料(たとえば酸化物)が、トレンチの側壁の内側を覆う材料(たとえば窒化物)よりも、トレンチの底部におけるシリコン上に選択的に堆積するような態様で行なわれ得る。
【0018】
トレンチの底部に厚い絶縁層が形成された後に、トレンチの側壁の内側を覆う材料が除去される。トレンチの側壁上に、比較的薄いゲート酸化物層が形成され、トレンチがドープされたポリシリコン等の導電性のゲート材料で埋められる。しきい値調節またはボディ注入が行なわれ得、その後、第1の導電型のソース領域がエピタキシャル層の表面に形成される。
【0019】
ドレイン・ドリフト領域はいくつかの方法で形成され得る。第2の導電型のドーパントが、トレンチの底部を介して、トレンチ底部から基板へと拡散なしに延びるようなドーズ量およびエネルギで注入され得る。その代わりに、第2の導電型のドーパントは、トレンチの底部を介して、最初にトレンチ底部のすぐ下に第2の導電型の領域を形成するように、より低いエネルギで注入されてもよい。その構造を予め定められた時間、高温にさらすことによって、そのドーパントは基板に向かって下方向に拡散され得る。またその代わりに、第2の導電型の層は、エピタキシャル層と基板との界面にまたはその近辺の場所に注入され得、その後、ドーパントはトレンチの底部に向かって上方向に拡散され得る。上記プロセスを組合せてもよい。すなわち、第2の導電型の領域をトレンチ底部のすぐ下に形成し、第2の導電型の層をエピタキシャル層と基板との界面にまたはその近辺の場所に注入し、その構造を加熱することによって該領域と該層とが結合するようにすることも可能である。一連の注入が、トレンチ底部と基板との間に第2の導電型領域の「積層」を含むドレイン・ドリフト領域を形成するように実行されてもよい。
【0020】
このようなプロセスの結果として得られるMISデバイスは、トレンチの底部に厚い酸化物または他の絶縁層を有し、また、トレンチの底部から基板に延びるドレイン・ドリフト領域を有する。ドレイン・ドリフト領域の接合部は、好ましくは、厚い絶縁層のエッジと自己整合がとられる。これにより、デバイスのしきい値電圧またはオン抵抗を損なうおそれなしに、ゲート・ドレイン間容量を最小にすることができる。MOSFETセルの中央部において、P−epi層はトレンチ底部のレベルよりも下に延びて、降伏が確実にゲート酸化物層から離れたところで起きるようにする。しかし、米国特許番号第5,072,266号に教示されたような深い注入は存在せず、したがって、セルピッチは、第2の導電型のドーパントがチャネル領域に入り込んでデバイスのしきい値電圧に悪影響を与えるおそれなしに、設定することが可能である。
【0021】
デバイスの降伏電圧(耐圧)を高めるために、基板の上に第1の導電型の低濃度にドープされたエピタキシャル層が形成されてもよい。
【0022】
この発明の一局面に従えば、エッジ終端領域は、トレンチおよびドレイン・ドリフト領域を作製するのに使用されるのと実質的に同じプロセスステップを使用して作製される。
【0023】
この発明の別の局面に従えば、MISデバイスの終端領域は、複数の終端トレンチと、各終端トレンチの底部から基板に延びる第1の導電型の領域とを含む。各終端トレンチは導電性材料を含み、金属層が、各終端トレンチ内のポリシリコンを、トレンチに隣接するメサ上のコンタクトエリアに接続する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】N
+基板を覆うNエピタキシャル層内に形成された従来のトレンチMOSFETを示す図である。
【
図2】ノンドープのポリシリコンプラグをトレンチの底部近傍に有するトレンチMOSFETを示す図である。
【
図3】厚い酸化物層をトレンチの底部近傍に有するトレンチMOSFETを示す図である。
【
図4】セルの中央近傍にトレンチの底部よりも低いレベルにまで下方向に延びる深いP
+拡散部を有するMOSFETを示す図である。
【
図5】(A)はこの発明に従ったMISデバイスを示す図であり、(B)は(A)のMISデバイスに逆バイアスがかけられたときにデバイス内に形成される空乏領域を示す図である。
【
図6】エピタキシャル層が異なるドーピング濃度を有する2つのサブ層に分割される、この発明に従ったMISデバイスを示す図である。
【
図7A】
図5(A)のMOSFETのドーパント濃度をチャネル領域を通る縦断面で示す、コンピュータシミュレーションプログラムSUPREMEを使用して作成したグラフである。
【
図7B】
図5(A)のMOSFETのドーパント濃度をトレンチの底部を通る縦断面で示す、コンピュータシミュレーションプログラムSUPREMEを使用して作成したグラフである。
【
図8A】
図5(A)のMOSFETのドーパント濃度をチャネル領域を通る縦断面で示す、コンピュータシミュレーションプログラムMEDICIを使用して作成したグラフである。
【
図8B】
図5(A)のMOSFETのドーパント濃度をトレンチの底部を通る縦断面で示す、コンピュータシミュレーションプログラムMEDICIを使用して作成したグラフである。
【
図9】
図1に示すような従来のMOSFETのチャネルを通る縦断面におけるドーピングプロファイルのグラフであって、(A)はチャネル領域のドーピング濃度がドレインに向かう方向で急速に低下することを示すグラフであり、(B)はチャネル領域のドーピング濃度が比較的一定であることを示すグラフである。
【
図10】
図9(B)のグラフと同様のドーピングプロファイルのグラフであって、(A)はしきい値調整注入部を追加した場合を示すグラフであり、(B)はボディ注入部を追加した場合を示すグラフである。
【
図11】ドレイン・ドリフト領域が深い層を注入しその深い層を上方向に拡散させることによって形成される場合の、トレンチの下方の縦断面におけるドーピングプロファイルの概略形状を示す図である。
【
図12A】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12B】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12C】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12D】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12E】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12F】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12G】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチの底部を介してドーパントを注入することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12H】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチ底部の直下の領域内へとドーパントを注入しそれを基板に向かって下方向に拡散させることによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12I】トレンチの側壁スペーサ間にトレンチ底部の直下の領域内へとドーパントを注入しそれを基板に向かって下方向に拡散させることによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12J】トレンチの下方にドーパントの深い層を注入しそのドーパントをトレンチに向かって上方向に拡散させることによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12K】トレンチの下方にドーパントの深い層を注入しそのドーパントをトレンチに向かって上方向に拡散させることによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12L】トレンチの側壁スペーサ間にドーパントを注入して、トレンチの底部の直下に比較的浅い領域と、トレンチの下方に深い層とを形成し、その後、浅い領域と深い層とが結合するまでドーパントを拡散させることによって、ドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12M】トレンチの側壁スペーサ間にドーパントを注入して、トレンチの底部の直下に比較的浅い領域と、トレンチの下方に深い層とを形成し、その後、浅い領域と深い層とが結合するまでドーパントを拡散させることによって、ドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12N】トレンチの側壁スペーサ間およびトレンチの底部を介して異なるエネルギで一連の注入を行なって領域の積層を形成することによってドレイン・ドリフト領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図12O】高濃度にドープされた領域がドレイン・ドリフト領域に注入される、一実施例を示す図である。
【
図13A】トレンチの側壁スペーサ間に酸化物を堆積することによって厚い底部酸化物層を形成するプロセスを示す図である。
【
図13B】トレンチの側壁スペーサ間に酸化物を堆積することによって厚い底部酸化物層を形成するプロセスを示す図である。
【
図13C】トレンチの側壁スペーサ間に酸化物を堆積することによって厚い底部酸化物層を形成するプロセスを示す図である。
【
図14】トレンチの側壁スペーサ間に酸化物を熱的に成長させることによって厚い底部酸化物層を形成するプロセスを示す図である。
【
図15】側壁スペーサが種々の異なる厚さを有する場合の、
図14のプロセスを示す図である。
【
図16】種々の材料上での酸化物の異なる堆積速度を利用することによって厚い底部酸化物層を形成するプロセスを示す図である。
【
図17A】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17B】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17C】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17D】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17E】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17F】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17G】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17H】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図17I】厚い底部酸化物層が形成された後にMISデバイスの作製を引続き行なうプロセスを示す図である。
【
図18】エピタキシャル層が最初にN型またはP型の不純物で低濃度にドープされ、その後、P型がボディドーパントとして注入される、一実施例を示す図である。
【
図19】この発明によってMISデバイスのエッジ終端領域の作成が簡素化される様子を示す図である。
【
図20】ドレイン・ドリフト領域が省略されかつトレンチがエピタキシャル層を通じて基板内へと延びる、一実施例を示す図である。
【
図21】基板と同じ導電型の低濃度にドープされたエピタキシャル層が基板上に形成されて、デバイスの耐圧が高められる、実施例を示す図である。
【
図22】基板と同じ導電型の低濃度にドープされたエピタキシャル層が基板上に形成されて、デバイスの耐圧が高められる、実施例を示す図である。
【
図23】基板と同じ導電型の低濃度にドープされたエピタキシャル層が基板上に形成されて、デバイスの耐圧が高められる、実施例を示す図である。
【
図24】基板と同じ導電型の低濃度にドープされたエピタキシャル層が基板上に形成されて、デバイスの耐圧が高められる、実施例を示す図である。
【
図25】基板と同じ導電型の低濃度にドープされたエピタキシャル層が基板上に形成されて、デバイスの耐圧が高められる、実施例を示す図である。
【
図26】
図21に示すMOSFETと同様であるが、厚い底部酸化物が省かれている、MOSFETを示す図である。
【
図27】この発明に従ったMOSFETの終端領域を示す図である。
【
図29】この発明に従った終端領域の第2の実施例を示す図である。
【
図30】この発明に従った終端領域の第3の実施例を示す図である。
【
図31】この発明の一局面に従ったMOSFETの終端領域の断面図である。
【
図32】この発明に従ったMOSFETの代替的な終端領域の断面図である。
【
図33】この発明に従ったMOSFETの別の代替的な終端領域の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図5(A)は、この発明に従った典型的なMISデバイス70を示す。MISデバイス70はMOSFETであるが、これは、インシュレイティッドバイポーラトランジスタ(IGBT)またはMOSゲートサイリスタ等の、別の種類のMISデバイスでもあり得る。
【0027】
MISデバイス70は、エピタキシャル(「epi」)層102内に形成される。この層は通常、P型不純物でドープされ、N
+基板100の上に横たわる。N
+基板100は、デバイスのドレインを形成するが、これはたとえば、5×10
-4Ω・cmから5×10
-3Ω・cmの比抵抗を有し得る。P−epi層102は、1×10
15cm
-3から5×10
17cm
-3の濃度までボロンをドープされ得る。N
+基板100は通常、約200ミクロン厚さであり、epi層102は2ミクロンから5ミクロン厚さであり得る。
【0028】
トレンチ110がP−epi層102内に形成される。トレンチ110の内側は、ゲート酸化物層170で覆われ、ゲート174として機能するポリシリコンで埋められる。N
+ソース領域178およびP
+ボディコンタクト領域180がP−epi層102の表面に形成される。P−epi層102の残りの部分がP型ベースまたはボディ103を形成する。ボディ103は、N
+基板100との接合部を形成し、P−epi層102とN
+基板100との界面と実質的に一致する。
【0029】
N
+ソース領域178およびP
+ボディコンタクト領域180に、金属層184が電気的に接続される。ボロンフォスフォシリカガラス(BPSG)層182は、ゲート174を金属層184から絶縁する。ゲート174は、図面の紙面外の奥行き方向において電気的に接続される。
【0030】
この発明に従えば、デバイス70のドレインは、(a)トレンチ110の底部とN
+基板100との間に延びるN型ドレイン・ドリフト領域116と、(b)トレンチ110内に、ドレイン・ドリフト領域116に隣接して形成される、厚い底部酸化物領域150とを含む。Nドレイン・ドリフト領域116とPボディ103との接合部105は、N
+基板100とトレンチ110との間に延びる。Nドレイン・ドリフト領域116は、たとえば、5×10
15cm
-3から5×10
17cm
-3までの濃度にリンがドープされてもよい。
【0031】
図7Aは、MOSFET70内のドーピング濃度のグラフである。このグラフは、コンピュータシミュレーションプログラムSUPREMEによって作成されたものであり、
図5(A)にI−Iで示される、チャネル領域を通じた縦断面でとられたものである。示される曲線はヒ素およびボロンのドーピング濃度を示し、第3の曲線は正味のドーピング濃度を示す。
図7Bは、
図5(A)にII−IIで示されるトレンチの底部を横断する縦断面でとられた、同様のグラフである。
図7Aの横軸は、P−epi層の表面の下方の距離をミクロン単位で示し、
図7Bの横軸は、トレンチの底部の下方の距離をミクロン単位で示す。
図7Aの縦軸および
図7Bの縦軸は、ドーピング濃度の常用対数をatoms/cm
3という単位で示す。なお、
図7Aにおいて、P−epi層102の下地ドーパントであるボロンの濃度は比較的平坦であり、チャネル領域内で優性である。ヒ素のドーピング濃度はチャネル領域からソースまたはドレインへと移行するにつれて高くなる。
【0032】
図8Aおよび
図8Bは、
図7Aおよび
図7Bとそれぞれ同じ区域におけるドーピング濃度を示すグラフである。しかし、
図8Aおよび
図8Bは、コンピュータシミュレーションプログラムMEDICIを用いて作成されたものであり、N型またはP型の正味のドーピング濃度のみを示す。
【0033】
SUPREMEのシミュレーションとMEDICIのシミュレーションとは、SUPREMEが単一の縦断面におけるドーピング濃度のみを考慮し、他の横方向にそれた位置におけるドーパントの効果を考慮しないのに対して、MEDICIが図面の二次元の紙面内のすべてドーパントを考慮に入れる点で異なる。
【0034】
MOSFET70の利点は以下のものを含む:
1.アバランシェ降伏は、概ね、トレンチから離れて、N
+基板100とP−epi層102との界面で生じる(たとえば、
図5(A)に72で示した場所)。これにより、降伏の生じたエリアで生成されるホットキャリアによるゲート酸化物層170の損傷を防げる。
【0035】
2.電界が最大になるトレンチのコーナにおけるゲート酸化物170の破断が防止される。
【0036】
3.所与のしきい値電圧について、より高いパンチスルー降伏電圧が得られる。Nドレイン・ドリフト領域116とPボディ103との接合部105はN
+基板100へと下方向に延びる。
図5(B)に示すように、PN接合部105に、MOSFET70がオフ状態にあって電流をブロックしている場合のように逆バイアスがかけられると、破線105A、105Bで示される空乏領域が接合部105の全長に沿って延び、その結果、チャネルエリアにおける空乏領域はソース領域に向かってそれほど素早く拡張することはない。空乏領域のソース領域へと向かう拡張は、パンチスルー降伏を引き起こす条件である。
【0037】
4.また、所与のしきい値電圧について、より高いパンチスルー降伏電圧が得られる。
図9(A)に示すように、拡散ボディを有する従来のMOSFETにおいては、ボディのドーパント濃度は、N−epi(ドリフト領域)に近づくにつれて急激に低下する。しきい値電圧は、ピークドーピング濃度N
A peakによって決定される。パンチスルー降伏電圧は、(
図9(A)のPボディ曲線の下方のエリアによって表わされる)チャネル領域内の合計電荷量Q
channelによって決定される。この発明のMOSFETにおいて、
図9(B)に示すように、Pボディ領域のドーピングプロファイルは比較的平坦である。したがって、チャネル内の合計電荷量が増しても、N
A peakは同じであり得るので、より高いパンチスルー降伏電圧が提供される。
【0038】
5.各セル内に(米国特許番号第5,072,266号に教示されたような)深いボディ拡散部が存在しないので、追加のP型ドーパントがチャネル領域に入り込んでMOSFETのしきい値電圧を上げるおそれなく、セルピッチを小さくすることができる。したがって、セル充填密度を高めることができ、デバイスのオン抵抗が減じられる。
【0039】
6.従来のトレンチMOSFETにおいて、低濃度にドープされた「ドリフト領域」は、しばしば、チャネルと高濃度にドープされた基板との間に形成される。ドリフト領域のドーピング濃度は、あるレベルよりも低く維持されねばならない。さもなければ、有効な空乏が得られず、トレンチのコーナにおける電界の強度が大きくなりすぎるからである。しかし、ドリフト領域のドーピング濃度を低く保つと、デバイスのオン抵抗が増す。これに対し、この発明のNドレイン・ドリフト領域116は、より高濃度にドープすることができる。というのも、Nドレイン・ドリフト領域116の形状および、Nドレイン・ドリフト領域116とPボディ領域103との接合部105の長さが、より効果的な空乏をもたらすからである。より高濃度にドープされたNドレイン・ドリフト領域116は、デバイスのオン抵抗を減じる。
【0040】
7.
図19(A)に示すように、MOSFETの終端領域に別個のP型拡散部を設ける必要はない。なぜなら、Nドレイン・ドリフト領域116が位置する場所を除いて、P−epi層102が、N
+基板100へと延びるからである。
図19(B)は、従来のMOSFETの終端領域を示し、これはP型拡散部75を含む。P型終端拡散部またはフィールドリングが排除されることで、マスキングステップの数が減じられる。たとえば、ここで説明されるプロセスにおいては、マスキングステップは5つしか必要とされない。
【0041】
ドレイン・ドリフト領域の形成
図12A〜
図12Nは、この発明に従った、
図5(A)のMOSFET70のようなトレンチMOSFETを作製するためのプロセスの一実施例を示す断面図である。
図12Aに示すように、プロセスは、高濃度にドープされたN
+基板100上に、低濃度にドープされたP−epi層102(通常約6〜8μm厚さ)を成長させることから始まる。パッド酸化物104(たとえば、100〜200Å厚さ)が、P−epi層102上に、950℃で10分間、ドライな熱酸化によって成長する。
図12Bに示すように、窒化物層106(たとえば、200〜300Å厚さ)が、パッド酸化物104上に、化学蒸着(CVD)によって堆積される。通常のフォトリソグラフィプロセスおよび第1の(トレンチ)マスクを使用して、窒化物層106およびパッド酸化物104がパターニングされて、トレンチが配置されるべき開口部108が形成される。
図12Cに示すように、トレンチ110が、たとえば反応性イオンエッチング(RIE)のようなドライプラズマエッチングを使用して、開口部108を介してエッチングされる。トレンチ110は、約0.5〜1.2μm幅および約1〜2μm深さであり得る。
【0042】
第2のパッド酸化物112(たとえば、100〜200Å)が、
図12Dに示すように、トレンチ110の側壁および底部上に熱酸化によって成長する。厚い窒化物層114(たとえば、1000〜2000Å)が、
図12Eに示すように、トレンチ110の側壁および底部上ならびに窒化物層106の上に、CVDによりコンフォーマルに堆積される。窒化物層114は、酸化物よりも窒化物層114に対して高い選択性を有するエッチャントを使用して、RIE等の方向性のドライプラズマエッチングによってエッチングされる。この窒化物エッチングにより、
図12Fに示すように、トレンチ110の側壁に沿って窒化物層114のスペーサ115が残り、トレンチ110の底部中央においてはパッド酸化物112が露出する。窒化物層114は、窒化物層106がパッド酸化物104の上から取除かれる程度にまでオーバーエッチングされてもよい。
【0043】
側壁スペーサ115が適所に残った状態で、N型ドーパントがトレンチ110の底部におけるパッド酸化物112を介して注入されて、Nドレイン・ドリフト領域116が形成される(
図12G)。たとえば、リンを、1×10
13cm
-2から1×10
14cm
-2のドーズ量で、300keVから3.0MeVのエネルギで注入することができる。リンの多大な拡散およびその結果としてのNドレイン・ドリフト領域116の拡張を防ぐために、前述の構造(
図12G)に後工程で加えられる熱量が、約950℃で60分相当に制限されるか、または、前述の構造(
図12G)が、1050℃で90秒間の高速熱アニール(RTA)にかけられてもよい。いずれの場合にも、Nドレイン・ドリフト領域116は
図12Gに示す実質的に小型の形状を維持する。有利なことに、
図12Gの断面図において、Nドレイン・ドリフト領域116の少なくとも75%、好ましくは90%が、トレンチ110の直下に位置する。
【0044】
これに代えて、Nドレイン・ドリフト領域116は、リンを30keVから300keV(典型的には150keV)のより低いエネルギで注入してトレンチの直下にN型領域118を形成し(
図12H)、その後1050℃から1150℃で10分から120分(典型的には1100℃で90分)加熱してリンを拡散することにより、形成することも可能であり、この場合、N型領域118が下方向および横方向に拡張して、
図12Iに示されるような形のドレイン・ドリフト領域120が形成される。
【0045】
プロセスの別の変形例においては、深い層122(たとえばリン)が、
図12Jに示すように、トレンチの下方の場所に比較的高いエネルギで注入され、その後、リンがトレンチの底部に達するまで熱プロセスを使用してリンを上方向に拡散させることにより、
図12Kに示すようなドレイン・ドリフト領域124を得る。これは、
図12Gに関連して上述した、注入後にN型ドーパントがトレンチ110の底部からN
+基板とP−epi層との界面へと延びるプロセスとは区別され、また、
図12Hに関連して上述した、注入後ドーパントがトレンチの底部の直下に位置するプロセスとも区別される。N型ドーパントを比較的高いエネルギで注入して深い層122を形成する場合、トレンチの深さ、P−epi層102の厚さ、および注入エネルギを変更することにより、層122は、N
+基板100とP−epi層102の界面より上方(たとえば、P−epi層102が厚いおよび/またはトレンチ深さが小さい場合)か、N
+基板100内(たとえば、P−epi層102が薄いおよび/またはトレンチ深さが大きい場合)に位置するようにされ得る。
【0046】
図11は、ドレイン・ドリフト領域が深く注入された層を上方向に拡散させることによって形成された場合の、トレンチ底部を始点とする、縦断面におけるドーピングプロファイルの概略形状を示す。
図11に示されるように、ドレイン・ドリフト領域のN型ドーパントの濃度は、トレンチ底部の下方へいくにつれて単調に増加する。これは、
図8Bに示すような、ドーピング濃度が最初に減少しその後N
+基板の近傍で上昇する、低エネルギプロセスを使用して形成されたMOSFETにおけるトレンチ下方のドーピングプロファイルとは区別される。
【0047】
図12Jおよび
図12Kに示すプロセスを使用することで、トレンチの直下の領域にほぼ閉じ込められかつより小さいセルピッチを可能にする、Nドレイン・ドリフト領域が与えられる。このプロセスは、制御もより簡単であり、スループットも大きくなる。
【0048】
これに代えて、上方向の拡散と下方向の拡散を組合せたプロセスを、ドレイン・ドリフト領域を形成するのに使用することも可能である。
図12Lに示すように、深いN層122(たとえばリン)が、高エネルギ注入プロセスによって、N
+基板100とP−epi層102との界面に形成される。
図12Hに関連して上に説明したように、N型ドーパントがトレンチの底部を介して注入されて、トレンチの下方にN
+領域118が形成される。その後この構造がたとえば900℃から1100℃に加熱される。深いN層122は上方向に、N領域118は下方向に、それらが結合するまで拡散されて、
図12Mに示すようなN型ドレイン・ドリフト領域126が形成される。
【0049】
さらに別の代替例は、N注入を順次増大するエネルギで3回以上連続して行なってドレイン・ドリフト領域を形成することにより、
図12Nに示すような、重なり合う注入領域128の積層を形成するものである。積層128は4つの注入領域128A〜128Dを含むが、これよりも少ない回数または5回以上注入を行なって積層を形成することも可能である。積層は、実質的に拡散なしに(すなわち加熱せずに)形成することも可能であり、また、加熱することでドーパントを拡散して領域128A〜128D同士の重なり合う量を増すことも可能である。
【0050】
選択的に、ドレイン・ドリフト領域内の電流拡散を増加させかつデバイスのオン抵抗をさらに減じる目的で、
図12Oに示すように、ドレイン・ドリフト領域116内に、高濃度にドープされたN
+領域130を注入することも可能である。
【0051】
高エネルギであっても低エネルギであっても、プロセスの完了時には、Nドレイン・ドリフト領域がN
+基板からトレンチ底部へと延在する。多くの場合、Nドレイン・ドリフト領域とP−epi層との接合部は、基板からトレンチの側壁まで延びる。低エネルギ注入プロセスが使用されドーパントがその後に熱によって拡散される場合には、ドレイン・ドリフト領域とP−epi層との接合部は、ドレイン・ドリフト領域の外部に向かって凸な円弧の形状をとる(
図12I)。
【0052】
上記のどの方法も、ドレイン・ドリフト領域を形成するのに使用することができる。以下に、厚い底部絶縁層の形成方法を説明するが、ここでは、
図12Gに示す注入プロセスを使用するものとする。しかしながら、代替的な方法のいずれもが使用可能であると理解されるべきである。
【0053】
厚い底部酸化物の形成
図13Aに示すように、プロセスは、たとえば2〜4μm厚さの、厚い絶縁層150の堆積から開始する。この堆積方法は、ノンコンフォーマルなものが用いられ、それによりトレンチ110が埋められかつP−epi層102の上面の上にオーバフローが生じる。厚い絶縁層150は、たとえば、低温酸化物(LTO)、化学蒸着(CVD)酸化物、フォスフォシリカガラス(PSG)、ボロンフォスフォシリカガラス(BPSG)、または別の絶縁材料であり得る。以下の説明では、絶縁層150はCVD酸化物層であるものとする。
【0054】
通常、窒化物よりも酸化物に対して高い選択性を有するエッチャントを使用したウェットエッチングを行なうことにより、酸化物層150は、トレンチ110内へとエッチバックされる。酸化物層150は、
図13Bに示すように、約0.1〜0.2μmのみがトレンチ110内に残るようになるまでエッチングされて、厚い底部酸化物層151が形成される。
【0055】
窒化物層106およびスペーサ115が、通常、酸化物よりも窒化物に対して高い選択性を有するエッチャントを使用したウェットエッチングを行なうことによって除去される。その後、パッド酸化物104およびパッド酸化物112の露出部分が、一般的なウェットエッチングによって除去される。このウェットエッチングにより、厚い酸化物層151のごく一部が除去されるが、その部分はさほど重要ではない。結果として得られる、厚い酸化物層151がトレンチ110の底部に残っている構造を、
図13Cに示す。
【0056】
この発明に従った別の変形例においては、ゲート酸化物層の厚い区分と薄い区分との間になだらかな遷移部が形成される。
【0057】
そのプロセスは、
図12Fに示したステップを経る上述のプロセスと同様であってもよく、その場合、窒化物エッチングにより、トレンチ110の側壁に沿って側壁スペーサ115が残され、トレンチ110の中央底部領域でパッド酸化物112が露出される。しかしながら、次のステップでは、厚い絶縁層を堆積する代わりに、厚い酸化物層が熱プロセスによって成長する。これが行なわれると、熱酸化物がシリコンの一部を消費して、側壁スペーサ115のエッジ部分をアンダーカットし、その結果、窒化物がトレンチの表面から取除かれる(リフトオフ)。これにより、半導体装置の上面にフィールド酸化物領域を作製するのにしばしば使用される従来のLOCOS(シリコンの局所酸化)プロセスにおける「バーズビーク」と同様の構造が形成される。
【0058】
図14は、熱酸化物層158がトレンチ110の底部において成長した後の構造を示す。この構造は
図15(A)に詳細に示される。熱酸化物層158のエッジ部は、側壁スペーサ115の下側を押圧し、結果として、傾斜するかまたは先細りしている。
【0059】
側壁スペーサの厚さを変化させることで、酸化物層のエッジ部を異なる場所に位置付けることが可能である。
図15(A)は、比較的厚い側壁スペーサ115を示しており、結果として、酸化物層158のエッジ部は、トレンチ110の底部に位置する。
図15(B)は、より薄い側壁スペーサ115Aを示しており、酸化物層158Aのエッジ部は実質的に、トレンチ110のコーナに配置される。
図15(C)はさらに薄い側壁スペーサ115Bを示しており、酸化物層158Bのエッジ部は、トレンチ110の側壁に位置する。
【0060】
同様に、酸化物層のエッジ部は、側壁スペーサの厚さを変更することにより、種々の中間点に位置付けることが可能である。側壁スペーサの厚さは、トレンチの幅や深さとは独立している。たとえば、側壁スペーサが1,500〜2,000Å厚さの範囲内であった場合、酸化物層のエッジ部は、トレンチの底部に位置する可能性が最も高い(
図15(A))。側壁スペーサが500Å以下の厚さである場合、酸化物層のエッジ部は通常、トレンチの側壁に位置するであろう(
図15(C))。
【0061】
酸化物層は、たとえば、シリコン構造を1,000℃から1,200℃の温度で20分から1時間加熱することによって成長され得る。
【0062】
厚い底部酸化物を形成するさらに別の方法を、
図16の(A)および(B)に示す。
図12Aから
図12Gに図示しかつ上述したように、ドレイン・ドリフト領域116および側壁スペーサ115が形成された後に、酸化物層160が堆積されるが、このとき、側壁スペーサ115上ではなくトレンチ110の底部に露出したシリコン上に選択的に堆積するようにするプロセスが用いられる。使用され得るプロセスとして、化学反応を起こすのにオゾンを使用する、準大気圧(サブアトモスフェリック)化学蒸着(SACVD)プロセスがある。この反応中、オゾンは容易に解離して原子状酸素を放出し、これがTEOS等のプレカーサと結合して二酸化ケイ素が形成される。この構造はその後アニールされてもよい。
【0063】
表1は、厚い絶縁層21のオゾンで活性化されるTEOS SACVD形成のための、例示的なプロセスパラメータを示す。
【0065】
スペーサ115は、窒化物以外の材料を含んでいてもよい。スペーサに使用される材料は、二酸化ケイ素がスペーサよりもシリコン上に選択的に堆積するように選ばれる。スペーサ用の材料の選択は、使用される酸化物堆積プロセスに依存する。表2は、オゾンで活性化されるTEOS SACVD中の、いくつかの材料の堆積選択性を示す。
【0067】
表2に示すように、オゾンで活性されるTEOS SACVDの間、二酸化ケイ素は、窒化物上に堆積する速度の5倍の速度でシリコン上に堆積する。したがって、窒化物側壁スペーサ115を使用するデバイスの作製中、トレンチ110の底部に堆積される二酸化ケイ素は、窒化物側壁スペーサ115上に堆積される二酸化ケイ素よりも約5倍の厚みがあることになる。実際に、シリコン表面上に3000Åの酸化物膜を成長させたとき、窒化物表面上では酸化物の成長は見られなかった。このような堆積選択性は、おそらくは、シリコン窒化物の表面エネルギがシリコンと比較して低いことに起因すると思われる。表2に示すように、熱酸化によって成長した二酸化ケイ素、またはTEOS PECVDで堆積された二酸化ケイ素もまた、層160の堆積がオゾンで活性化されるTEOS SACVDを用いるものであった場合に、スペーサに好適な材料となり得る。なぜなら、二酸化ケイ素は、これらの材料よりもやはりシリコン上に選択的に堆積するからである。SiH
4 PECVDで堆積された二酸化ケイ素、またはPECVDで堆積されたBPSGは、オゾンで活性化されるTEOS SACVDにとって好適なスペーサ材料とはならないであろう。なぜなら、二酸化ケイ素は、これらの材料に対してシリコンを選択することがないからである。オゾンで活性化されるTEOS SACVD以外の堆積プロセスが使用される場合、表2に示す以外の材料が、側壁スペーサ用に使用され得る。
【0068】
酸化物層160が堆積された後、バッファード酸化物エッチングを使用して、窒化物側壁スペーサ115の表面上に堆積された酸化物が除去され、ウェット窒化物エッチングを使用して、窒化物側壁スペーサ115および窒化物層106が除去される。窒化物がすべて確実に除去されるように、たとえば1,000℃で5〜10分間、別のアニールを行なって残りの窒化物を酸化してもよく、また、このアニールの後に酸化物エッチングを行なってもよい。酸化物エッチングは、酸化された窒化物(酸窒化物)を除去するが、酸化物層160の大きな部分を除去することはない。
【0069】
パッド酸化物104、112もまた除去されるが、これは通常、ウェットエッチングで行なわれる。このウェットエッチングは、酸化物層160の重要でない小さい部分を除去する。結果として得られる構造を
図16(B)に示す。ここで、酸化物層160の一部分がトレンチ110の底部に残っている。
【0070】
デバイスの完成
上記プロセスのうち1つのプロセスによって厚い底部酸化物が形成された後に、犠牲酸化物層(図示せず)がトレンチの側壁に成長されその後除去され得る。これは、トレンチのエッチング中に生じた結晶の損傷を除去する助けとなる。犠牲酸化物層は、約500Å厚さにすることができ、たとえば1050℃で20分間のドライな熱酸化によって成長させ、ウェットエッチングによって除去することができる。犠牲ゲート酸化物のウェットエッチングは、トレンチの底部における酸化物層のエッチングを最小限に抑えるために短時間で行なわれる。
【0071】
次に、
図17Aに示すように、ゲート酸化物層170または他の絶縁層(たとえば約300〜1000Å厚さ)が、トレンチ110の側壁上およびP−epi層102の上面に形成される。たとえば、ゲート酸化物層170は、1050℃で20分間のドライな熱酸化を使用して成長され得る。
【0072】
図17Bに示すように、ポリシリコンまたは他の導電性材料の層172が(たとえば低圧CVD(LPCVD)プロセスによって)堆積されて、それがトレンチ110を埋めかつ酸化物層170の水平面上にオーバフローを生じる。ポリシリコン層172はたとえば、予めドープされたポリシリコンであるか、ノンドープのポリシリコン層がその後注入されアニールされたものであるか、または、代替的な導電性材料であり得る。ポリシリコン層172は、一般的に反応性イオンエッチングを使用して、ポリシリコン層172の上面がP−epi層102の上部とほぼ同じレベルになるまでエッチングされて、
図17Cに示すようなゲート174が形成される。N型MOSFETにおいて、ゲート174はたとえば、リンが1×10
19cm
-3の濃度でドープされたポリシリコン層であり得る。いくつかの実施例では、ポリシリコン層172をトレンチ110の上部を超えてエッチングしてゲート174を凹ませることにより、ゲート・ソース間のオーバラップ容量を最小にするようにしてもよく、ゲート174の上方に酸化物または他の絶縁層を形成してもよい。多くの場合、ポリシリコン層172は第2の(ゲートポリ)マスク内の開口部を介してエッチングされるが、これは、ポリシリコン層172の一部が、ゲート174が金属層184のゲート金属部によって接続される位置に残るようにする(
図17I)。
【0073】
オプションとして、しきい値電圧が調整される場合には、たとえばP−epi層102の表面を通じてボロンを注入することによって、しきい値調節注入を行なうことができる。ボロンは、5×10
12cm
-2のドーズ量で150keVのエネルギで注入することができ、結果として、P−epi層102の、MOSFETのチャネルを形成する部分において、P型ドーパントの濃度が1×10
17atoms/cm
3になる。上述のように、
図10(A)は、チャネルを通る線で切った縦断面におけるドーパントプロファイルを示し、しきい値調節注入部を示すものである。図示されるように、しきい値調節注入部は、通常、チャネルの、ソース領域の直下のエリアに位置している。MOSFETのしきい値電圧は、しきい値調節注入部のピークドーピング濃度N
A peakによって決定される。デバイスのしきい値電圧を調節する必要がない場合には、このステップは省くことができる。
【0074】
必要であれば、ボロン等のP型ドーパントを注入して、
図17Dに示すようなボディ領域176を形成することも可能である。一般的なボディ注入のドーピングプロファイルが
図10(B)のグラフに示される。ボディ注入部は、しきい値調節注入部と幾分類似するが、使用されるエネルギはより高く、結果として、ボディ注入部はP−epi層とNドレイン・ドリフト領域との間の接合部により近いレベルにまで延びる。MOSFETのしきい値電圧は、ボディ注入部のピークドーピング濃度N
A peakによって決定される。これに代えて、Pボディ注入部は、
図17Eにボディ領域186で示すように、トレンチ110の底部よりも低いがP−epi層102とN
+基板100との界面よりも高いレベルに打ち込まれてもよい。
【0075】
次に、P−epi層102の上面を第3の(ソース)マスクでマスクして、リン等のN型ドーパントを注入して、
図17Fに示すN
+ソース領域178を形成することができる。ソースマスク190は除去される。BPSG層182がデバイスの上面上に堆積され、第4の(コンタクト)マスク183がBPSG層182の表面上に堆積されエッチングされる。これを
図17Gに示す。BPSG層182はコンタクトマスク183内の開口部を介してエッチングされ、P型ドーパントがBPSG層182の結果として得られる開口部を介して注入されて、P
+ボディコンタクト領域180が形成される。これを
図17Hに示す。たとえば、N
+ソース領域178には、ヒ素を5×10
15cm
-2のドーズ量で80keVのエネルギで注入することができ、それにより1×10
20cm
-3の濃度が得られ、また、P
+ボディコンタクト領域180には、ボロンを1×10
15cm
-2のドーズ量で60keVのエネルギで注入することができ、それにより5×10
19cm
-3のドーパント濃度が得られる。
【0076】
金属層184、好ましくはアルミニウムが、
図17Iに示すように堆積され、ソース領域178とボディコンタクト領域180との間にショートが構築される。すなわち、電気的にソース領域とボディコンタクト領域180とが接続される。第5の(金属)マスク(図示せず)を使用して金属層184をパターニングおよびエッチングすることにより、
図17Iに示すソース金属部分および、ゲートへ電気的に接続されるゲート金属部分が形成される。これにより、MOSFET70の作製が完了する。
【0077】
別の実施例においては、エピタキシャル層は、まず、N型またはP型の不純物で低濃度にドープされ、ボロン等のP型不純物がボディドーパントとして注入され、そのドーパントがエピタキシャル層と基板との界面に達するまで打ち込まれる。このような実施例を
図18に示す。
図18(B)に示すように、ボロンが注入され拡散されると、Pボディ領域がN
+基板102上に形成される。
【0078】
図17Dに示すようなPボディ176、
図17Eに示すようなPボディ186および
図18(B)に示すようなPボディ104を含む構造は、ここに記載されるドレイン・ドリフト領域を形成するためのプロセスのいずれとも組合せて使用することが可能である。このプロセスは、深く注入された層を上方向に拡散することを含む
図12Jおよび
図12Kに示すプロセスと、深く注入された層の上方向拡散およびトレンチの底部の下方に注入された領域の下方向の拡散を含む
図12Lおよび
図12Mに示すプロセスと、異なるエネルギでの複数のN型領域の注入によって重なり合う領域の積層を形成することを含む
図12Nに示すプロセスと、を含む。
【0079】
図6は、代替的な実施例を示す。MOSFET95において、P−epi層は、サブ層P−epi1およびP−epi2に分割される。周知のプロセスを使用して、サブ層を有するエピタキシャル層を、エピタキシャル層の成長中にドーパントガスの流量を変化させることによって形成することが可能である。その代わりに、サブ層P−epi1は、エピタキシャル層の上方部分にドーパントを注入することによって形成することも可能である。
【0080】
サブ層P−epi1のドーパント濃度は、サブ層P−epi2のドーパント濃度よりも高くても低くてもよい。MOSFETのしきい値電圧およびパンチスルー降伏電圧は、サブ層P−epi1のドーピング濃度の関数であり、MOSFETの降伏電圧およびオン抵抗は、サブ層P−epi2のドーピング濃度の関数である。したがって、この実施例のMOSFETにおいて、しきい値電圧およびパンチスルー降伏電圧は、アバランシェ降伏電圧およびオン抵抗とは独立して設計することが可能である。P−epi層は、異なるドーピング濃度を有する3つ以上のサブ層を含んでもよい。
【0081】
MOSFET95は、酸化物層で内側を覆われたトレンチ204内に位置付けられたゲート電極202を含む。ゲート202の上面は、トレンチ204内に窪んでいる。酸化物層は、トレンチ204の底部に概ね配置される、この発明に従って形成された厚い区分206と、トレンチ204の側壁に隣接する比較的薄い区分210とを含む。厚い区分206と薄い区分210との間に遷移領域208があり、ここでは、酸化物層の厚さが厚い区分206から薄い区分210へと徐々に薄くなる。MOSFET95はまた、PN接合部を含み、これらは遷移領域208においてトレンチ204と交差する。上述のように、遷移領域208の場所は、MOSFET95の作製中に窒化物層の厚さを変化させることによって変えることができる。
【0082】
MOSFET95はまた、N
+ソース領域214と、P
+ボディコンタクト領域216と、ゲート電極202を覆う厚い酸化物層218と、N
+ソース領域214およびP
+ボディコンタクト領域216に電気的に接続される金属層220とを含む。破線で示すように、MOSFET95は、トレンチ204の底部に、高濃度にドープされた領域222を含む。高濃度にドープされた領域222は、窒化物層が
図12Oに示すようにエッチングされた後に、ヒ素またはリン等のN型ドーパントを注入することによって作製され得る。
【0083】
図20は、別の代替的な実施例を示す。MOSFET98において、ドレイン・ドリフト領域は省かれており、トレンチ230がP−epi層102全体を介してN
+基板100内に延びる。この実施例は、低電圧(たとえば5V以下の)MOSFETに特に好適である。
【0084】
デバイスの降伏電圧(耐圧)を増す目的で、低濃度にドープされたN型エピタキシャル層を、N
+基板100の上およびP−epi層102の下に、成長させることができる。この構造のいくつかの実施例を
図21〜
図25に示す。
【0085】
図21は、
図5(A)に示されるMOSFET70と同様であるが、N−epi層252がN
+基板100の上に成長している点で異なる、MOSFET250を示す。N−epi層252は、1〜50μm厚さであり得、リンが1×10
15/cm
-3から1×10
17/cm
-3の濃度でドープされ得る。N−epi層252のドーピング濃度は、P−epi層102のドーピング濃度よりも高くても低くてもよい。
【0086】
N−epi層252の成長を除いては、MOSFET250を作製するプロセスは、
図12A〜
図12Gに関連して上述したMOSFET70を作製するプロセスと同様である。特に、
図12Gに示すように、リンをトレンチの底部を介して注入してドレイン・ドリフト領域116を形成することができる。しかしながら、リン注入のエネルギおよびドーズ量は、ドレイン・ドリフト領域116が、N
+基板100の上方境界ではなく、N−epi層252の上方境界にまで確実に下方向に延びるように設定される。
【0087】
図22は、
図12Iに示されるドレイン・ドリフト領域120と同様のドレイン・ドリフト領域120を有するMOSFET260を示す。MOSFET260は、リンを注入してトレンチのすぐ下にN型領域を形成し(
図12Hを参照)、その後、加熱によってリンを拡散することで、N型領域が下方向および横方向に拡張して
図22に示すドレイン・ドリフト領域120が形成されるようにすることによって、形成される。
【0088】
図23は、
図12Kに示すドレイン・ドリフト領域124と同様のドレイン・ドリフト領域124を有するMOSFET270を示す。MOSFET270は、リンを注入してN−epi層252とP−epi層102との界面近傍にN型領域を形成し(
図12Jを参照)、その後、加熱によりそのリンを拡散して、N型領域が上方向および横方向に延びて
図23に示すドレイン・ドリフト領域124を形成するようにすることによって、形成される。
【0089】
図24は、
図12Mに示されるドレイン・ドリフト領域126と同様のドレイン・ドリフト領域126を有するMOSFET280を示す。MOSFET280を作製するのに、深いN層(たとえばリン)が高エネルギ注入プロセスによってN−epi層252とP−epi層100との界面に形成される。N型ドーパントがトレンチの底部を介して注入されて、トレンチのすぐ下に第2のN領域が形成される。この構造がその後、たとえば900〜1100℃に加熱される。深いN層は上方向に、第2のN領域は下方向に、それらが互いに結合するまで拡散して、
図24に示すようなN型ドレイン・ドリフト領域126が形成される。
【0090】
図25は、
図12Nに示す構造と同様に、重なり合う注入領域128の積層を作製するために、連続して増大するエネルギで一連のN注入を行なうことによって形成されたドレイン・ドリフト領域を含むMOSFET290を示す。積層128は4つの注入領域を含むが、4回より少ないかまたは多い回数だけ注入を行なって積層を形成することも可能である。積層は、顕著な拡散なしに(すなわち加熱なしに)形成することもできるが、ドーパントを拡散して注入領域間の重なり合いの量を増すために加熱されてもよい。
【0091】
別のグループの実施例は、
図21〜25に示されるものと同様であるが、厚い底部酸化物領域150が省略され、トレンチの底部が、トレンチ110の壁部の内側を覆う酸化物層170と実質的に同じ厚さを有する酸化物層で覆われている点で異なる。この種のデバイスを作製するには、リン等のN型ドーパントがプロセスの
図12Cに示されるステージでトレンチ110の底部を介して注入され、
図12Eおよび
図12Fに示される窒化物層114の堆積および側壁スペーサ115の形成が省略される。N型ドーパントが
図12Gに示すようにトレンチの底部から下方向に延びるように注入される場合、結果として、
図26に示されるMOSFET300が得られる。これに代えて、
図12H〜12I、
図12J〜12K、
図12L〜12Mおよび
図12Nに示される種類のドレイン・ドリフト領域を、それらの図に関連して説明したプロセスをたどることによって作製することも可能である。どの場合においても、ドレイン・ドリフト領域はトレンチ110の底部から、N−epi層252の接合部にまで延びる。
【0092】
終端領域
この発明に従って作製されるデバイスは、通常、元々は半導体ウェハの一部であった半導体ダイに形成される。デバイスの内部構造が作製された後、ダイは互いに分割されるが、これは通常、ダイを分割するスクライブラインでウェハをのこ引きすることによって行なわれる。平行に一連ののこ引きが行なわれた後に、初回の一連の切断に対して垂直方向に、2回目の一連ののこ引きが行なわれる。
【0093】
上述のように、この発明に従ったNチャネルデバイスは、通常、N
+基板を覆うP−epi層内に形成されるか、N
+基板を覆うN−epi層を覆うP−epi層内に形成される。もちろん、これらの極性は、Pチャネルデバイスにおいては逆にされる。通常、Nチャネルデバイスにおいては、ドレイン(N
+基板)は、いくらかの正電圧でバイアスがかけられ、N
+ソースは接地される。Pボディが通常N
+ソースにショートされるので、Pボディもまた接地される。ゲート電圧は、通常、デバイスがオフおよびオンされるとき、ゼロといくらかの正電圧との間で変化する。
【0094】
切断するプロセスは、通常、ダイのエッジ部に電流リーク経路を形成し、したがって、Nチャネルデバイスがオフされるとき、P−epi層は正のドレイン電圧に達し得る。P−epi層とN
+ソースとの間の降伏または電流リークを防ぐために、終端構造が必要である。
【0095】
図27は、
図5(A)から終端エリア400に隣接する部分までのMOSFET70を示す。終端エリア400は、ダイのエッジ406まで延びるハーフトレンチ402Aを含む。N領域408は、ハーフトレンチ402Aから下方向に、P−epi層102を介してN−epi層252まで延びる。P−epi層102はPボディ層176を含む。MOSFET70のN
+ソースおよびPボディと接触するソース金属層184Aは、BSPG層182を覆うようにハーフトレンチ402A内に延びるが、上述の電流リーク経路を通じたドレインとの電気的接触のおそれがあるエッジ406の手前で終端となる。この構造において、ソース金属層184Aの、終端領域400内に延びる部分が、N領域408とP−epi層102との接合部のためのフィールドプレートとしての役割を果たし、電気力線を広げかつその接合にわたる降伏を防ぐ。
【0096】
図28A〜28Eは、MOSFET70を作製するのに必要とされるプロセスステップに何ら追加のプロセスステップを加えずに終端領域400を作製する方法を示す。プロセスは通常、たとえば
図12A〜12Gで示されたプロセスのような、上述のプロセスと平行して行なわれる。
図28Aに示されるように、プロセスは、N
+基板100を覆うN−epi層252およびP−epi層102を形成することから始まる。パッド酸化物層104がP−epi層102の上に形成される。
【0097】
図28Bに示すように、パッド酸化物層104の上に窒化物層106が堆積される。窒化物層106およびパッド酸化物層104はフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングされ、窒化物層106とパッド酸化物層104との中に開口部410が形成される。開口部410は、隣接するダイ間のスクライブラインと合致する、すなわち、スクライブラインを含む。これは、
図12Bに示されるステップと同時に行なわれ得る。
【0098】
図28Cに示すように、幅の広いトレンチ402が開口部410を介してP−epi層102内にエッチングされる。これは、
図12Cに示すステップと同時に行なわれ得る。
【0099】
図28Dは、トレンチ402内の第2のパッド酸化物層412の成長を示す。これは、
図12Dに示される、パッド酸化物層112の成長と同時に行なわれ得る。
【0100】
たとえば
図12Gに示されるように、ドレイン・ドリフト領域が注入されるとき、トレンチ402は露出されたままであり、ドーパントはP−epi層102に入る。上記のいずれかの方法で、ドーパントが注入および/または拡散されて、トレンチ402の底部からN−epi層252に延びるN型領域408が形成される。プロセスのこの段階が
図28Eに示される。幅広のトレンチ402内には厚い底部酸化物層は形成されない。したがって、幅広のトレンチ402の側壁には窒化物スペーサ115は形成されず(
図12Eおよび
図12Fを参照)、N型ドーパントが、窒化物層106をマスクとして使用して注入される。
【0101】
上述のように、プロセスの以後のある時点で、BPSG層182が堆積およびパターニングされて、デバイスの活性領域におけるゲート電極をカバーしてもよい。BPSG層182の堆積およびパターニングは、たとえば
図17Gおよび
図17Hに示される。これに続いて、
図17Iに示されるように金属層184が堆積される。これらの層もまた、幅広のトレンチ402内に堆積される。金属層184がパターニングされてソース金属層とゲート金属層とに分割されるとき、ソース金属層184Aの、幅広のトレンチ402内の中央領域における部分もまたエッチングされて、
図28Fに示される構造が得られる。これは、通常のフォトリソグラフィパターニングおよびエッチングによって行なわれる。その結果、ソース金属層184Aは幅広のトレンチ402内へと延在する。
【0102】
BPSG層182および金属層184が堆積された後、デバイスの上面を保護するためにパッシベーション層(図示せず)が堆積されてもよい。
【0103】
これらのプロセスが行なわれた後、ダイが、たとえば
図28Fの破線409で、幅広のトレンチ402の中央部でのこ引きされる。
【0104】
これにより
図28Gに示される構造が得られ、のこ引きによって形成されたエッジ406に位置するハーフトレンチ402Aが形成される。
図28Gに示されるように、BPSG層182および金属層184Aは、P−epi層102の上面からハーフトレンチ402A内に延びる。この実施例では、Pボディ層176がP−epi層102内に注入され拡散されている(
図17Dを参照)が、これは選択的(オプション)である。
【0105】
図29および
図30は、2つの代替的な実施例を示す。
図29に示す実施例においては、開口部416がBPSG層182および第2のパッド酸化物層412内に形成され、エッジ片184Bが金属層184Aから分離されている。好ましくは、これらのステップはそれぞれ、BPSG層182および金属層184のパターニングと同時に行なわれる。層184を構成する金属は開口部416内に流れ込み、N領域408とのオーム性接触を形成する。したがって、エッジ片184Bはドレイン電位でバイアスされ、ソース金属層184Aとエッジ片184Bとの間の横方向の隔離距離は、ソース・ドレイン間電圧に耐えるだけ十分大きくなければならない。パッシベーション層が後に堆積される場合、これは、ソース金属層184Aとエッジ片184Bとの間のギャップ内に流れ込むことになる。
【0106】
図30に示す実施例は、
図29の実施例と同様であるが、N
+領域414がハーフトレンチ402Aの底部に形成されて、エッジ片184BとN領域408とのオーム性接触を強化する点で異なる。N
+領域414は、
図17Fに示すように、N
+ソース領域に沿って注入されてもよい。
【0107】
図31は、
図5(A)から終端エリア500に隣接する部分までのMOSFET70を示す。この実施例において、Nエピタキシャル層252がN
+基板100上に形成され、Pエピタキシャル層102がNエピタキシャル層252上に形成される。
【0108】
終端エリア500は4つの終端トレンチ502、504、506および508を含む。N領域510は、トレンチ502、504、506および508の各々の底部からNエピタキシャル層252まで延びる。終端トレンチ502、504、506および508は各々、酸化物層512で内側を覆われ、ポリシリコン514で埋められる。Pエピタキシャル領域102において、終端トレンチ502、504、506および508のそれぞれの右側に、P
+領域516、518、520および522が設けられる。金属層524、526、528および530は、終端トレンチ502、504、506および508の各々のポリシリコン514をそれぞれP
+領域516、518、520および522に、BPSG層182内の開口部を介して電気的に接続する。終端トレンチ502、504、506および508の各々におけるポリシリコン514、ならびにP
+領域516、518、520および522は、電気的にフロート状態にされる。終端トレンチ502、504、506および508は、
図5(A)に示すように、厚い底部酸化物層を有している。
【0109】
他の実施例において、この発明に従った終端領域は、4つよりも少ない数または多い数の終端トレンチを含み得る。各実施例において、金属層の各々は、複数の終端トレンチのうち1つのトレンチ内のポリシリコン、および、その終端トレンチに隣接するメサに、電気的に接続される。たとえば、2つの終端トレンチがあった場合、第1の終端トレンチ内のポリシリコンと電気的に接続される金属層は、第1の終端トレンチと第2の終端トレンチとの間のPエピタキシャル層102内のメサと電気的に接続され、また、第2の終端トレンチ内のポリシリコンと電気的に接続される金属層は、第2の終端トレンチの反対側のPエピタキシャル層102と電気的に接続される。
【0110】
典型的に、MOSFET70のドレインを表わすN
+基板100は、N
+ソース領域178に対して正にバイアスされる。上述のように、多くの例において、ソース領域は接地され、ドレインは正の電圧でバイアスされる。各N
+ソース領域178は、P
+領域180およびソース金属層184を介してPボディ103に結合される。したがって、チップのソース・ドレイン間電圧は、終端トレンチ502、504、506および508にわたって分散されるかまたは段階式に降圧される。トレンチ502、504、506および508の各々を埋めるポリシリコンがフロート状態になっているので、併せてそれらトレンチが、1つの分圧器として機能する。
【0111】
終端領域500は、MOSFET70を作製するのに使用されるのと同じプロセスステップで作製することができる。ただし、終端領域500のエリアにおいては、N
+ソース領域178を形成するのに使用されたマスク内の開口部は存在せず、BPSG層182がパターニングされて、
図31に示すように、終端トレンチ502、504、506および508の上方と、終端トレンチ502、504、506および508の間とに、開口部が形成される。P
+領域516、518、520および522は、終端トレンチ502、504、506および508の間に、BPSG層182内の開口部を介して注入され得る。加えて、ソース金属層はパターニングされて、金属層524、526、528および530が形成される。
【0112】
この発明の原理は、
図31に示す構造以外の構造にも適用可能である。いくつかの実施例において、トレンチは、注入されたドレイン・ドリフト領域を有するが、厚い底部酸化物層を有さなくてもよい。これは上述の米国出願番号第10/317,568号に記載されており、そのような実施例を
図32に示す。そこでは、MOSFET80のトレンチならびに終端領域600の終端トレンチ502、504、506および508は、厚い底部酸化物を含んでいない。
【0113】
さらに、この発明の原理は、注入されたドレイン・ドリフト領域を含まないデバイスにも適用可能である。
図33は、従来のトレンチMOSFET90および終端領域700を示しており、それらは、N
+基板100を覆うNエピタキシャル層92内に形成される。Pボディ領域94が通常、Nエピタキシャル層92内に注入されてトレンチの底部に近いレベルにまで拡散され、N
+ソース領域178およびP
+ボディコンタクト領域180がPボディ領域94内に形成される。やはり、終端トレンチ502、504、506および508の各々におけるポリシリコン、ならびに、Pボディ領域94のそれらに隣接する部分が、ソース・ドレイン間の電圧を段階的に降下する。
【0114】
この発明のいくつかの具体的な実施例を上に述べたが、これらの実施例は例示の目的のみのものである。当業者には、この発明の広い原理に従って多数の付加的な実施例が作製され得ることが理解されるであろう。たとえば、上述の実施例はNチャネルMOSFETであるが、MOSFET内の種々の領域における導電型を逆転させることにより、この発明に従って、PチャネルMOSFETを作製することが可能である。