【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、発泡助剤として特定の化合物を使用する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の発泡体製造用樹脂組成物及び発泡体に関する。
1.発泡体製造用樹脂組成物であって、カルボキシル基含有樹脂、アゾジカルボンアミド系発泡剤及びカルボン酸ヒドラジド化合物を含有することを特徴とする発泡体製造用樹脂組成物。
2.前記カルボキシル基含有樹脂は、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びこれらの共重合体を含むアイオノマーからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の発泡体製造用樹脂組成物。
3.前記カルボキシル基含有樹脂は、エチレン−メタクリル酸共重合体である、上記項1に記載の発泡体製造用樹脂組成物。
4.前記カルボン酸ヒドラジド化合物は、アジピン酸ジヒドラジドである、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡体製造用樹脂組成物。
5.上記項1〜4のいずれかに記載の発泡体製造用樹脂組成物を所望の形状に成形後、加熱発泡させて得られる発泡体。
6.上記項1〜4のいずれかに記載の発泡体製造用樹脂組成物をシート状に成形後、加熱発泡させて得られる発泡樹脂層。
7.紙質基材上に少なくとも上記項6に記載の発泡樹脂層を有する発泡化粧シート。
8.紙質基材上に上記項6に記載の発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aを順に積層した発泡化粧シート。
9.前記紙質基材と前記発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層Bを更に有する、上記項8に記載の発泡化粧シート。
10.最表面層の上からエンボス加工が施されている、上記項7〜9のいずれかに記載の発泡化粧シート。
以下、本発明の発泡体製造用樹脂組成物及び発泡体について説明する。
1.発泡体製造用樹脂組成物
本発明の発泡体製造用樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂、アゾジカルボンアミド系発泡剤(ADCA系発泡剤)及びカルボン酸ヒドラジド化合物を含有する。
【0011】
上記特徴を有する本発明の発泡体製造用樹脂組成物は、カルボン酸ヒドラジド化合物が発泡助剤として作用する。従来、カルボキシル基含有樹脂と発泡助剤(金属酸化物系及び脂肪酸金属塩系:例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等)とを組み合わせて用いた場合、両者の化学的な反応により発泡助剤の本来の効果が失われたり発色団を形成したりして樹脂層や紙質基材が変色(黄変)する問題があったが、上記カルボン酸ヒドラジド化合物を用いることにより、発泡助剤の効果が損なわれず、変色等の問題が改善された発泡体を提供できる。
【0012】
以下、発泡体製造用樹脂組成物の各成分について説明する。
【0013】
カルボキシル基含有樹脂
カルボキシル基含有樹脂としては樹脂中にカルボキシル基を含有するものであれば特に限定されない。カルボキシル基含有樹脂としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を好適に用いることができる。具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)及びこれらの共重合体を含むアイオノマーの少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマーとしては、EMAA及び/又はEAAの分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用で
きる。上記樹脂(重合体やアイオノマー)を用いることにより、樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成できるため、発泡体の表面強度を高め易い。
【0014】
本発明では、カルボキシル基含有樹脂に他の樹脂を添加しても良い。例えば、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂(EVA等)を添加しても良い。なお、カルボキシル基含有樹脂と他の樹脂とを混合して用いる場合には、樹脂成分100重量%中のカルボキシル基含有樹脂の含有量は、60重量%以上に設定することが好ましい。
【0015】
アゾジカルボンアミド系発泡剤
本発明では、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)系発泡剤を用いる。
【0016】
ADCA系発泡剤は熱分解温度が高いため、製膜性が高く、押出し製膜時に機内発泡のおそれが少ない観点で好ましい。本発明では、熱分解型発泡剤としてADCA系発泡剤を単独で使用すれば良いが、発明の効果を損なわない範囲で、ADCA系発泡剤とともに、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)系発泡剤等、他の熱分解型発泡剤を併用してもよい。
【0017】
樹脂組成物中の熱分解型発泡剤の含有量は発泡倍率に応じて適宜設定できる。例えば、発泡倍率が1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度となるように調整する。具体的には、樹脂成分100重量部に対して、3〜6重量部が好ましく、3.5〜5重量部がより好ましい。本発明では、実質的にADCA系発泡剤のみを使用すれば良いが、OBSH系発泡剤等を併用する場合には、発泡剤100重量%に含まれるADCA系発泡剤の含有量は50重量%以上とすることが好ましい。
【0018】
カルボン酸ヒドラジド化合物
本発明では、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を用いる。カルボン酸ヒドラジド化合物は、カルボキシル基含有樹脂と組み合わせて使用しても、化学的な反応により発泡助剤の効能を失活しない。そのため、樹脂成分としてカルボキシル基含有樹脂を含む発泡体を製造する場合に、発泡体の変色等を生じさせることなく発泡体が得られる。
【0019】
カルボン酸ヒドラジド化合物としては、例えば、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物が挙げられる。
【0020】
モノヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、一般式(1)
R−CO−NHNH
2 (1)
〔式中、Rは水素原子、アルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。〕
で表されるモノヒドラジド化合物が挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、これらの中でもフェニル基が好ましい。またアリール基の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等を挙げることができる。
【0022】
上記一般式(1)のヒドラジド化合物としては、より具体的には、ラウリル酸ヒドラジ
ド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等を例示できる。
【0023】
ジヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、一般式(2)
H
2NHN−X−NHNH
2 (2)
〔式中、Xは基−CO−又は基−CO−A−CO−を示す。Aはアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基を示す。〕
で表わされるジヒドラジド化合物が挙げられる。
【0024】
上記一般式(2)において、Aで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基を挙げることができる。アルキレン基の置換基としては、例えば水酸基等を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等を挙げることができ、これらの中でもフェニレン基、ナフチレン基等が好ましい。アリーレン基の置換基としては、上記アリール基の置換基と同様のものを挙げることができる。
【0025】
上記一般式(2)のジヒドラジド化合物は、具体的には、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。更に、特公平2−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化合物、2,4−ジヒドラジノ−6−メチルアミノ−sym−トリアジン等も本発明のジヒドラジドとして用いることができる。
【0026】
ポリヒドラジド化合物は、具体的には、ポリアクリル酸ヒドラジド等を例示できる。
【0027】
これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましく、2塩基酸ジヒドラジドが特に好ましく、アジピン酸ジヒドラジドが最も好ましい。
【0028】
上記ヒドラジド化合物は単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
カルボン酸ヒドラジド化合物の含有量は限定的ではないが、ADCA系発泡剤1重量部に対して0.2〜1重量部が好ましく、0.3〜0.7重量部がより好ましい。
【0030】
その他の添加剤
発泡体製造用樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでもよい。
【0031】
添加剤は、例えば、無機充填剤、顔料、滑剤、流動性改善剤、架橋剤等である。
【0032】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、樹脂成分の使用量を相対的に減量することができる。また、表面強度の向上効果が得られる。更に、発泡体が発泡化粧シートの発泡樹脂層である場合には、無機充填剤の添加により発泡化粧シートのカールを抑制する効果も得られる。このような無機充填剤の含有
量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部が好ましく、20〜70重量部がより好ましい。
【0033】
顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部が好ましく、15〜30重量部がより好ましい。
【0034】
架橋剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよい。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部とすることが好ましく、1〜4重量部とすることがより好ましい。
【0035】
発泡体製造用樹脂組成物は、上記成分を所定量用意して混練することにより得られる。混練方法は特に限定されず、公知のミキサーなどで混練すれば良い。
2.本発明の発泡体
本発明の発泡体は、発泡体製造用樹脂組成物を所望の形状に成形後、加熱発泡させることにより得られる。例えば、溶融状態の発泡体製造用樹脂組成物を所望の形状(例えば、シート状)に成形後、成形体を加熱発泡させることにより得られる。
【0036】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡体が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は190〜240℃程度が好ましく、加熱時間は15〜90秒程度が好ましい。
【0037】
前記加熱処理の前に電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋できるため、発泡体の発泡倍率及び表面強度を調整することができる。電子線のエネルギーは、150kV程度が好ましい。照射量は、10〜70kGy程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤)を使用して実施することもできる。
【0038】
本発明の発泡体は、発泡化粧シートの発泡樹脂層として好適に利用できる。例えば、紙質基材上に発泡樹脂層を積層した発泡化粧シートが挙げられる。以下、発泡体の例として、発泡化粧シートについて説明する。具体的には、基材上に非発泡樹脂層B(任意層)、発泡樹脂層、非発泡樹脂層A(任意層)、絵柄模様層(任意層)及び表面保護層(任意層)を有する発泡化粧シートについて説明する。
【0039】
基材
基材は、化粧シート基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、例えば、樹脂シート、繊維質シート(紙等)などが一般に使用できる。
【0040】
上記の中でも紙等の繊維質シートが好ましく、具体的には、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙など
が挙げられる。
【0041】
基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m
2程度が好ましく、50〜80g/m
2程度がより好ましい。
【0042】
非発泡樹脂層B
本発明では、必要に応じて基材と発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層(非発泡樹脂層B)が形成されていてもよい。特に、非発泡樹脂層Bが接着剤層として形成される場合は、優れた密着性を得ることができる。非発泡樹脂層Bとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等を好適に用いることができる。
【0043】
非発泡樹脂層Bは樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。
【0044】
非発泡樹脂層Bの厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0045】
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより形成される。本発明では、発泡体製造用樹脂組成物からシート状に成形された発泡剤含有樹脂層を形成し、それを加熱発泡させることにより得られる。
【0046】
発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、非発泡状態(発泡前)で70〜150μmが好ましい。発泡後は300〜900μmが好ましい。
【0047】
発泡剤含有樹脂層を発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すれば良い。
【0048】
非発泡樹脂層A
発泡樹脂層のおもて面には、更に非発泡樹脂層Aを形成してもよい。
【0049】
非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)は、主として発泡樹脂層を保護するものである。本発明では、アクリル酸(CH
2=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH
2=C(CH
3)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層を非発泡樹脂層とすることが好ましい。
【0050】
前記樹脂成分としては、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、EMAA、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、EMAA及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0051】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は限定的ではないが、15重量%以下が好ましく、4〜15重量%程度がより好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。
【0052】
非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0053】
前記樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。
【0054】
また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0055】
絵柄模様層
本発明では、非発泡樹脂層Aのおもて面に必要に応じて絵柄模様層を有してもよい。
【0056】
絵柄模様層は、発泡化粧シートに意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡化粧シートの種類に応じて選択できる。
【0057】
絵柄模様層は、例えば、非発泡樹脂層Aのおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0058】
着色剤としては、例えば、発泡体製造用樹脂組成物に使用される顔料を使用できる。
【0059】
結着材樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0060】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0061】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0062】
表面保護層(オーバーコート層)
本発明では、絵柄模様層の表面に艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保
護層を有してもよい。表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0063】
発泡化粧シートの表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0064】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
【0065】
エンボス
本発明では、適宜エンボス模様を付してもよい。この場合、発泡化粧シートの最表面層(基材と反対側)の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が表面保護層である場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0066】
<発泡化粧シートの製造方法>
発泡化粧シートの製造方法は特に限定されない。例えば、紙等の基材上に発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとを有する発泡化粧シートを製造するには、Tダイ押出し機による同時押出しが好適である。2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。この方法では、同時押出し積層体は、基材上に同時積層(成膜)する。基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため基材と接着される。
【0067】
なお、予め2種2層を同時成膜した積層体を用意して、それを基材上に載せて、熱ラミネートすることにより基材と接着してもよい。
【0068】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、押出し成形機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これがシート表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記非発泡樹脂層A及び非発泡樹脂層Bを、発泡剤含有樹脂層とともに同時押出し成形(3種3層同時押出し成形)することが好ましい。同時押出し成形は、例えば、マルチマニホールドタイプのTダイを用いることにより行える。このように発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し成形することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0069】
電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を形成した場合には、電子線照射によって表面保護層を硬化させることができる。このような電子線照射は、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋させるために行う電子線照射と同時(同処理)とできる。つまり、発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層、絵柄模様層及び電離放射線硬化型樹脂を含有する表面保護層を順に形成後、電子線照射を行って、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂を架橋するとともに表面保護層に含まれる樹脂を硬化させることができる。
【0070】
絵柄模様層を有する発泡化粧シートを製造する場合には、上記加熱処理前に非発泡樹脂層の表面に絵柄模様層を形成することが好ましい。