(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649712
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-245444(P2013-245444)
(22)【出願日】2013年11月27日
(62)【分割の表示】特願2008-204865(P2008-204865)の分割
【原出願日】2008年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-37238(P2014-37238A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏行
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
実開平6−32162(JP,U)
【文献】
特開平7−164931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06−2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーレールをレール方向へ移動可能にロアレール上に支持するとともに、ロアレールの長手方向両端付近に配設したストッパによりアッパーレールに設けた係止部を係止することでアッパーレールの移動範囲を規制するシートスライド装置であって、
前記ロアレールは、レール底部を成す底壁部と、該底壁部の縁から上方へ立設された側壁部と、該側壁部の上端からレール内方へ向けて延設された天壁部と、該天壁部の先端から下垂された下垂部とを有し、
前記アッパーレールは、所定の間隔をあけて設けられる対の板材を上方にて連続させて成り上部にてシートを支持する立板部と、該立板部の板材の下端からレール外方へ向けて延設された底板部と、該底板部の先端から上方へ立設されその先端が前記ロアレールの側壁部と天壁部と下垂部とで構成される溝内に位置される側板部とを有し、
前記ストッパは、前記下垂部の下端より低い位置に設置基部が有り、先端が前記側壁部の内壁からレール内方へ向けて突出するように該側壁部に設けられた突起であり、
前記係止部は、前記底板部の縁又は側板部からレール外方へ向けて突出するように設けられ、先端が前記ストッパと係止可能な範囲に位置された突片である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記ストッパは、前記側壁部を切り起こし形成して成る突起片である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパーレールをレール方向へ移動可能にロアレール上に支持するとともに、ロアレールの長手方向両端付近に配設したストッパによりアッパーレールに設けた係止部を係止することでアッパーレールの移動範囲を規制するシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートを前後移動可能に支持するとともに、その移動範囲を規制する機構(ストッパ・係止部)を備えたシートスライド装置が提供されている。
移動範囲を規制する機構としては、ロアレールの長手方向両端付近の底壁部の内壁面から突出するようにストッパを設けるとともに、該ストッパにより係止される係止部をアッパーレールの対応部位に設けて成る機構が多数知られている。例えば、特開2007−223345号公報(特許文献1)を挙げることができる。
【0003】
しかしながら、ロアレールの側壁部(底壁部の縁から立設された側壁部)の内壁面から突出するようにストッパを設けた機構は知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2007−223345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車のシートを前後移動可能に支持するとともに、その移動範囲を規制する機構(ストッパ・係止部)を備えたシートスライド装置には、小型化・軽量化の要請や、工数削減の要請、或いは、組み付け作業の容易化の要請がある。
本発明は、アッパーレールを移動可能にロアレール上に支持し、ロアレールの長手方向両端付近に配設したストッパによりアッパーレールに設けた係止部を係止することでアッパーレールの移動範囲を規制するシートスライド装置に関して、上記の要請に応えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]〜[
2]のように構成される。なお、本項(課題を解決するための手段)及び次項(発明の効果)に於いて付した符号は理解を容易にするためであり、本願発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
[1]構成1:
アッパーレール2をレール方向へ移動可能にロアレール1上に支持するとともに、ロアレール1の長手方向両端付近に配設したストッパ19(190a)によりアッパーレール2に設けた係止部29(290)を係止することでアッパーレール2の移動範囲を規制するシートスライド装置であって、
前記ロアレール1は、レール底部を成す底壁部10と、該底壁部10の縁から上方へ立設された側壁部11と、該側壁部11の上端からレール内方へ向けて延設された天壁部12と、該天壁部12の先端から下垂された下垂部13とを有し、
前記アッパーレール2は、所定の間隔をあけて設けられる対の板材を上方にて連続させて成り上部にてシートを支持する立板部と、該立板部の板材の下端からレール外方へ向けて延設された底板部21と、該底板部21の先端から上方へ立設されその先端が前記ロアレール1の側壁部11と天壁部12と下垂部13とで構成される溝内に位置される側板部22とを有し、
前記ストッパは、前記下垂部13の下端より低い位置に設置基部が有り、先端が前記側壁部11の内壁からレール内方へ向けて突出するように該側壁部11に設けられた突起19(190a)であり、
前記係止部は、前記底板部21の縁又は側板部22からレール外方へ向けて突出するように設けられ、先端が前記ストッパ19(190a)と係止可能な範囲に位置された突片29(290)である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
[2]構成2:
構成1に於いて、
前記ストッパは、前記側壁部を切り起こし形成して成る突起片である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
ここで、本発明とは差異を有するが、本発明に関連する構成を備えた参考例として、下記[a]〜[h]を挙げる。
[a]参考a:
アッパーレール2をレール方向へ移動可能にロアレール1上に支持するとともに、ロアレール1の長手方向両端付近に配設したストッパ19(190)によりアッパーレール2に設けた係止部29(290)を係止することでアッパーレール1の移動範囲を規制するシートスライド装置であって、
前記ロアレール1は、レール底部を成す底壁部10と、該底壁部10のアウタ側の縁から上方へ立設されたアウタ側壁部11と、該アウタ側壁部11の上端からインナ側へ延設された天壁部12と、該天壁部12の先端から下垂された下垂部13とを有し、
前記アッパーレール2は、鉛直に設けられる板材から成り上部にてシートを支持する立板部20と、該立板部20の板材の下端からアウタ側へ延設された底板部21と、該底板部21の先端から上方へ立設されその先端が前記ロアレール1のアウタ側壁部11と天壁部12と下垂部13とで構成される溝内に位置される側板部22とを有し、
前記ストッパは、前記下垂部13の下端より低い位置に設置基部が有り、先端が前記アウタ側壁部11の内壁からインナ側へ突出するようにアウタ側壁部11に設けられた突起19(190)であり、
前記係止部は、前記底板部21のアウタ側先端又は側板部22からアウタ側へ突出するように設けられ、先端が前記ストッパ19(190)と係止可能な範囲に位置された突片29(290)である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
【0007】
上記に於いて、アウタ(側)・インナ(側)とは、それらが相互に反対方向であることを示す。したがって、この表現に代えて、例えば、「一方(側)」と「(該一方とは反対の)他方(側)」というような表現を用いてもよい。アウタ(側)・インナ(側)としては、例えば、シート着座者の左右の直下に一対のシートスライド装置を配した場合に於いて、着座者から見て外側をアウタ(側)、着座者の中心側をインナ(側)とすることができる。
また、上記に於いて、立板部20を後述の
参考cの如く2枚の平行な板材20a,20bで構成してもよく、その場合に於いて、それらを重ねて密着して構成してもよく、所定の間隙を保持して平行に設けるようにしてもよい。
【0008】
[b]参考b:
参考aに於いて、
前記ロアレール1は、さらに、前記底壁部10のインナ側の縁から上方へ立設されたインナ側壁部16を有する、
ことを特徴とするシートスライド装置。
参考bによると、インナ側への延設部を有することによりロアレール1の強度を増した場合においても、参考aと同様の作用効果を奏することができる。
【0009】
[c]参考c:
参考bに於いて、
前記ロアレール1は、さらに、前記インナ側壁部16の先端からアウタ側へ延設された第2天壁部17と、該第2天壁部17の先端から底壁部10側へ延設された第2下垂部18を有し、
前記アッパーレール2の立板部20の板材はアウタ側板材20aとインナ側板材20bという2枚の平行な板材から成り、前記底板部21はアウタ側板材20aから延設されており、
前記アッパーレール2は、さらに、前記インナ側板材20bの下端からインナ側へ延設された第2底板部26と、該第2底板部26の先端から上方へ立設されその先端が前記ロアレール1のインナ側壁部16と第2天壁部17と第2下垂部18とで構成される溝内に位置される第2側板部27とを有する、
ことを特徴とするシートトラック装置。
アウタ側板材20aとインナ側板材20bは、それぞれが別の板材であってもよく、また、1枚の板材を折り曲げて
図1内不図示の上方にて連続していてもよい。また、両板材は2枚重ねで密着していてもよく、所定の間隙をあけられていてもよい。
参考cによると、立板部20の強度を増し、且つ、インナ側への延設部を有することによりアッパーレール2の強度を増した場合においても、構成2と同様の作用効果を奏することができる。
【0010】
[d]参考d:
参考cに於いて、
前記ロアレール1のインナ側壁部16と第2天壁部17は、最高部位が前記下垂部13の下端と所定の高低差を確保するように設定されており、
前記アッパーレール2の底板部21の延設幅は第2底板部26の延設幅よりも広く、
前記アッパーレール2の立板部20を下方へ延長した仮想面は、前記底板部21直下側の幅が前記第2底板部26直下側の幅より広くなるように前記ロアレール1の底壁部10を分割する、
ことを特徴とするシートスライド装置。
参考dによると、インナ側の延設部を小型化・軽量化できる。
【0011】
[e]参考e:
参考a〜参考dの何れかに於いて、
前記ストッパは、前記アウタ側壁部11を切り起こし形成して成る突起片19である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
参考eによると、参考a〜参考dに加えて、具体的構成を提供できる。また、参考eの突起片19は、ロアレール1にアッパーレール2を組み付ける前はアウタ側壁部11の内面から突出させないようにしておき、組み付け後に押圧して突出させるようにすることができる。このような手順によると、作業が容易なばかりでなく、アッパーレール2をロアレール1に組み付ける工程までを自動化できる。
【0012】
[f]参考f:
参考a〜参考dの何れかに於いて、
前記ストッパは、前記アウタ側壁部11に取り付けられたリベットである、
ことを特徴とするシートスライド装置。
参考fによると、参考eとは別の具体的構成を提供できる。
【0013】
[g]参考g:
参考a〜参考dの何れかに於いて、
前記ストッパは、前記ロアレール1を床に固定するための足ブラケット5の立板部51を、前記アウタ側壁部11に固着するリベット190である、
ことを特徴とするシートスライド装置。
参考gによると、ストッパの形成と足ブラケット5の取り付けとを同時に行うことができ、工数を削減できる。
【0014】
[h]参考h:
参考gに於いて、
前記足ブラケット5は、前記ロアレール1のアウタ側壁部11の外面に密接される立板部51と、前記ロアレール1の天壁部12の上面に密接される上板部52と、前記ロアレール1の底壁部10の下面に密接される下板部53とを有する、
ことを特徴とするシートスライド装置。
参考hによると、付近のベルトアンカー(不図示)に衝撃力が加わって上方へ引かれた場合でも、天壁部12の上面に密接されている上板部52により押さえられるため、上記の力に耐えることができる。また、足ブラケット5を強固にロアレール1に取り付け得る。
【発明の効果】
【0015】
構成1は、アッパーレール2をレール方向へ移動可能にロアレール1上に支持するとともに、ロアレール1の長手方向両端付近に配設したストッパ19(190a)によりアッパーレール2に設けた係止部29(290)を係止することでアッパーレール2の移動範囲を規制するシートスライド装置であって、前記ロアレール1は、レール底部を成す底壁部10と、該底壁部10
の縁から上方へ立設され
た側壁部11と、
該側壁部11の上端から
レール内方へ向けて延設された天壁部12と、該天壁部12の先端から下垂された下垂部13とを有し、前記アッパーレール2は、
所定の間隔をあけて設けられる
対の板材
を上方にて連続させて成り上部にてシートを支持する立板部20と、該立板部20の板材の下端から
レール外方へ向けて延設された底板部21と、該底板部21の先端から上方へ立設されその先端が前記ロアレール1
の側壁部11と天壁部12と下垂部13とで構成される溝内に位置される側板部22とを有し、前記ストッパは、前記下垂部13の下端より低い位置に設置基部が有り、先端が前
記側壁部11の内壁から
レール内方へ向けて突出するように
該側壁部11に設けられた突起19(190a)であり、前記係止部は、前記底板部21の
縁又は側板部22から
レール外方へ向けて突出するように設けられ、先端が前記ストッパ19(190a)と係止可能な範囲に位置された突片29(290)であることを特徴とするシートスライド装置であるため、組み付け作業の容易化の要請に応えることができる。即ち、ロアレール1にアッパーレール2を組み付けた後であっても、ロアレール1
の側壁部11の外壁面は露出されているとともに、内壁面の下垂部13の下端より下の部位も、ロアレール1の端部付近であればアッパーレール2を適宜にレール長手方向へ移動させることにより露出可能であるため、この部位にストッパ19(190)を設ける作業を容易に行うことができる。
【0016】
構成2は、構成
1に於いて、前記ストッパは、前
記側壁部11を切り起こし形成して成る突起片19であることを特徴とするシートスライド装置であるため、構成
1の効果に加えて、具体的構成を提供できる効果がある。また、
構成2の突起片19は、ロアレール1にアッパーレール2を組み付ける前はアウタ側壁部11の内面から突出させないようにしておき、組み付け後に押圧して突出させるようにすることができる。このような手順によると、作業が容易なばかりでなく、アッパーレール2をロアレール1に組み付ける工程までを自動化できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施の形態のシートスライド装置の断面図(
図2内A−A線断面図)。
【
図2】第1の実施の形態のシートスライド装置の要部斜視図。
【
図3】第2の実施の形態のシートスライド装置の要部断面図。
【
図4】第2の実施の形態のシートスライド装置のロアレールのアウタ側壁部11の内壁面側から見た斜視図。
【
図5】第2の実施の形態のシートスライド装置のロアレールのアウタ側壁部11の外壁面側から見た斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は第1の実施の形態のシートスライド装置の断面図(
図2内A−A線断面図)、
図2は要部斜視図である。
図3は第2の実施の形態のシートスライド装置の要部断面図、
図4と
図5はロアレールの斜視図である。なお、以下で、アウタとは
図1や
図3での左方を言い、インナとは右方を言う。
【0019】
(1)
第1の実施の形態
図示のシートスライド装置は、ロアレール1の底壁部10とその両縁から立設された2つの側壁部(アウタ側壁部11,インナ側壁部16)で囲まれる空間(溝状空間)に、アッパーレール2の下部を収容して、レール方向へ移動可能に支持する装置である。この移動を可能にするために、アッパーレール2とロアレール1の間隙には、ローラ41や、ボール42,43が設けられている。例えば、底板部21と底壁部10の間にはローラ41が設けられている。また、アウタ側壁部11・天壁部12と側板部22の先端寄り部位との間にはボール42が設けられており、下垂部13と側板部22の屈曲部位との間にはボール43が設けられている。
【0020】
また、図示のシートスライド装置は、アッパーレール2とロアレール1の間にロック機構3を備えており、これにより、アッパーレール2の移動を所望の位置で停止させて、ロックすることができる。即ち、ロック機構3のロック部材30(線状の弾性体を屈曲させて成るバネ)の突出部31を、アッパーレール2の立板部20の貫通孔、ロアレール1の下垂部13の下端にレール長手方向に等間隔で形成された切欠き、さらに、アッパーレール2の側板部22に形成された貫通孔に挿通することにより、アッパーレール2のロアレール1に対する移動をロックする機構を備えている。なお、ロック解除は、ロック部材30の中央付近(
図1の紙面直交方向での中央付近)を下方へ押し下げて突出部31を下垂部13の下端の切欠きから下方へ離脱させることにより行われる。
【0021】
ロアレール1は、床面に平行に設置される底壁部10と、底壁部10のアウタ側の縁から垂直に立設されたアウタ側壁部11と、アウタ側壁部11の上端から略90度インナ側へ曲げて延設された天壁部12と、天壁部12の先端から略90度下方へ曲げて下垂された下垂部13を有するとともに、底壁部10のインナ側の縁から斜め上方インナ側へ曲げてその最高高さが下垂部13の下端より低く該下端と所定の高低差を確保する高さとなるように延設されたインナ側壁部16と、インナ側壁部16の先端から最高高さが下垂部13の下端より低く該下端と所定の高低差を確保する高さでアウタ側へ延設された第2天壁部17と、第2天壁部17の先端から略90度曲げて底壁部10側(下方側)へ延設された第2下垂部18を有する。これらの各部から構成されるロアレール1は、1枚の金属板を折り曲げ形成することにより製造され得る。この折り曲げ形成後、本第1の実施の形態では、アウタ側壁部11のレール長手方向の両端付近にであって、下垂部13の下端より低い部位に、アウタ側壁部11の内壁面からインナ側(
図1で右側)へ突出するように突起片19を切り起こし形成している。正確には、まず、アウタ側壁部11の外壁面からアウタ側(
図1で左側)へ突出するように突起片を切り起こし形成しておき、アッパーレール2をロアレール1に組み付けた後に、当該の突起片をアウタ側(
図1で左側)からインナ側(
図1で右側)へ押圧してアウタ側壁部11の内壁面からインナ側へ突出させて、突起片(ストッパ)19としている。なお、ストッパ(例:突起片19等)の高さ方向での位置は、上記の加工時に下垂部13の下端より低ければ足り、加工後には、例えば先端部等は、必ずしも下垂部13の下端より低くなくてもよい。このような要請を満たす加工時の部位に対応する加工後の部位が、請求項の「設置基部」である。なお、このことは、後述の第2の実施の形態に関しても同様である。
【0022】
アッパーレール2は、鉛直に設けられる2枚重ねの板材20a,20bから成り上部にてシート(不図示)を支持する立板部20と、立板部20の2枚の板材の一方であるアウタ側板材20aの下端から略90度曲げてアウタ側へ延設された底板部21と、底板部21の先端から上方へ立設されその先端がロアレール1のアウタ側壁部11と天壁部12と下垂部13とで構成される溝(下側開放の溝)内に位置される側板部22と、立板部20の2枚の板材の他方であるインナ側板材20bの下端から略90度曲げてインナ側へ延設された第2底板部26と、第2底板部26の先端から斜め上方へ立設されその先端がロアレール1のインナ側壁部16と第2天壁部17と第2下垂部18とで構成される溝(下側開放の溝)内に位置される第2側板部27とを有する。これらの各部から構成されるアッパーレール2の各板材は、それぞれ、1枚の金属板を折り曲げ形成することにより製造され得る。また、この折り曲げ形成後、レール長手方向の略中央部の2箇所に於いて、それぞれ、底板部21の先端部分を切り起こして
図1での鈍角上方へ曲げた後に更に上方へ曲げることにより突片29を形成する。即ち、係止部29を形成する。
この係止部29が前記突起片19により係止されることにより、アッパーレール2の移動がその位置で規制される。
なお、突片(係止部)29の位置は、必ずしも底板部21のアウタ側先端から切り起こす必要はなく、例えば、後述の第2の実施の形態と同様に、側板部22の途中から切り起こして形成したり(
図3の290;参照)、或いは、別途の部材を取り付ける等の手法によって構成してもよい。要は、ストッパ19と係止可能な位置に係止部29を設ければよい。
また、アウタ側板材20aとインナ側板材20bは、本実施の形態ではそれぞれ別の2枚の板材を用いているが、これに代えて、例えば、1枚の板材を折り曲げて
図1内不図示の上方にて連続させたものでよい。
また、アウタ側板材20aとインナ側板材20bは、図示の例では2枚重ねに密接されているが、これらが所定の間隙を有していてもよい。
【0023】
なお、上記構成に於いて、側板部22の先端側は、ボール42や43を支持可能なように、適宜に屈曲され、適宜に傾斜されている。
また、上記構成に於いて、アッパーレール2の底板部21の延設幅は、第2底板部26の延設幅よりも広い。同様に、アッパーレール2の立板部20を下方へ延長した仮想面(板材20aと20bの境界面を
図1で下方へ延長した面)は、底板部21の下方側の部分の幅が第2底板部26の下方側の部分の幅よりも広くなるように、ロアレール1の底壁部10を分割する。言い換えれば、
図1で立板部20の境界より右側の部分は、幅に関しても左側の部分よりも小さく構成されており、軽量である。
【0024】
(2)
第2の実施の形態
第2の実施の形態は、足ブラケット5をロアレール1に固着するリベット190によってストッパを構成した点、及び、アッパーレール2の底板部21のアウタ側の先端からではなく、側板部22の中途から突片290を切り起こして係止部と成した点で、第1の実施の形態と異なる。他の部分の構成は第1の実施の形態と同様であるため、同様の部分には同じ符号を付して示し、説明は省略する。
【0025】
図3〜5に示すように、本第2の実施の形態では、ロアレール1のアウタ側壁部11を貫通するリベット190を用いて、アウタ側壁部11の外面側に、足ブラケット5の立板部51を固着している。54は足ブラケット5の基部であり、この部分が、自動車の床面に取り付けられる。また、53は下板部、52は上板部であり、リベット190による固着とともに、上板部52と下板部53とでロアレール1を上下から挟み込むことで、しっかりと取り付けている。なお、リベット190は、固着後、両側(アウタ側壁部11の内壁面側・足ブラケット立板51の外面側)から押圧されてかしめられる。
【0026】
リベット190の中でアウタ側壁部11の内壁面から突出される部分190aが、ストッパとして機能する部位である。即ち、この部位190aが、アッパーレール2の側板部22の中途からアウタ側(
図3で左側)へ切り起こされた突片290を係止して、アッパーレール2の移動を規制するように作用する。
なお、リベット190が設けられている高さ、及び、突片290が設けられている高さについては、前記突起片19と突片29と同様での議論が成り立つ。
【0027】
また、
図4に示す例では、下垂部13の下端が切り欠かれており、この切欠きにより露出された部位にリベット190が設けられている。言い換えれば、リベット190は、下垂部13の本来の下端よりも高い位置に設けられている。本明細書では、このような場合は、下垂部13の本来の下端ではなく、切り欠いて形成された端面(切欠き部の端面)の高さを、「下垂部13の高さ」と言うものとする。つまり、アウタ側壁部11の内壁面側(
図1や3で右側)であって、ストッパ19を設けるべき部位が、下垂部13により隠れていなければよい。
なお、上記では、リベットとして足ブラケット5を取り付けるためのリベットを説明したが、これに限定されず、他の用途のリベットや、リベットのみを取り付ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 ロアレール
10 底壁部
11 アウタ側壁部
12 天壁部
13 下垂部
16 インナ側壁部
17 第2天壁部
18 第2下垂部
19 ストッパ/突起片
190 リベット
190a リベットのストッパとして機能する部分
2 アッパーレール
20 立板部
20a アウタ側板材
20b インナ側板材
21 底板部
22 側板部
26 第2底板部
27 第2側板部
29 突片(係止部)
290 突片(係止部)
3 ロック機構
30 ロック部材/バネ
31 係合突部
41 ローラ
42 ボール
43 ボール
5 足ブラケット
51 立板
52 上板
53 下板
54 基部