(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
(構成)
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す図である。
図1において、101は天板、102は本体筐体、103は高周波電流を供給する回路、104は操作部、105は表示手段、22は加熱コイルである。
天板101は、鍋などの被加熱物を載置するためのものであり、鍋の載置位置を表示する加熱口106が設けられている。本体筐体102の内部には、回路103、表示手段105、加熱コイル22が収納されており、その上面に天板101を被せ、本体筐体102の内部構造を収納する。
回路103は、後述の
図2で説明する構成を有しており、加熱コイル22に高周波電流を供給する。
操作部104は、ユーザが加熱出力を調整するためのものである。
表示手段105は、液晶表示デバイス等で構成された画面表示装置で、誘導加熱調理器の動作状態を表示する。
加熱コイル22は、加熱口ごとに奥行き方向と横方向それぞれに、複数個並ぶように配置されている。
【0010】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
誘導加熱調理器は、交流電源1に接続されており、交流電源1から供給される電力は直流電源回路2で直流電力に変換される。
直流電源回路2は、交流電力を整流する整流ダイオードブリッジ3と、各インバーター回路9ごとに設けられたリアクトル4および平滑コンデンサ5とにより構成されている。そして各インバーター回路9へ入力される入力電力は、入力電圧検出手段7と各インバーター回路9ごとに設けられた入力電流検出手段6とによって検出される。直流電源回路2で直流電力に変換された電力は、各インバーター回路9−1〜9−nに供給される。
なお、入力電流検出手段6と入力電圧検出手段7とにより、本発明の「電力検出手段」を構成する。
【0011】
直流電源回路2には、複数のインバーター回路9−1〜9−nが接続されている。各インバーター回路9−1〜9−nはそれぞれ同一の構成である。以下、区別しないときはインバーター回路9と称する。このインバーター回路9は、加熱コイル22の数に応じて設けられている。
インバーター回路9は、それぞれ同一の直流電源回路2の正負母線間に直列に接続された2つのスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子とそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって形成されるアーム2組(以下、2組のアームを、U相アーム10とV相アーム11と称する。また、各アームの正母線側スイッチング素子を上スイッチと、負母線側スイッチング素子を下スイッチとそれぞれ称する。)で形成されている。
【0012】
U相アーム10は、上スイッチ12と、下スイッチ13と、上スイッチ12と逆並列に接続された上ダイオード14と、下スイッチ13と逆並列に接続された下ダイオード15とで構成されている。
また、V相アーム11は、上スイッチ16と、下スイッチ17と、上スイッチ16と逆並列に接続された上ダイオード18と、下スイッチ17と逆並列に接続された下ダイオード19とで構成されている。
【0013】
U相アーム10を構成する上スイッチ12と下スイッチ13とは、U相駆動回路20から出力される駆動信号によりオン/オフ駆動されるようになっている。
また、V相アーム11を構成する上スイッチ16と下スイッチ17とは、V相駆動回路21から出力される駆動信号によりオン/オフ駆動されるようになっている。
U相駆動回路20は、U相アーム10の上スイッチ12をオンさせている間は下スイッチ13をオフにし、上スイッチ12をオフさせている間は下スイッチ13をオンにするというように、上スイッチ12と下スイッチ13とを交互にオン/オフする駆動信号を出力するものである。
また、V相駆動回路21も同様に、V相アーム11の上スイッチ16と下スイッチ17とを交互にオン/オフする駆動信号を出力するものである。
【0014】
インバーター回路9における2つのアームの出力点間には、加熱コイル22と共振コンデンサ23とで構成されている負荷回路24が接続されている。加熱コイル22と共振コンデンサ23とは、直列共振回路を形成し共振周波数を有するが、インバーター回路9は、その共振周波数よりも高い周波数で駆動されるので、負荷回路24は誘導性特性を有するようになっている。
【0015】
制御手段25は、各インバーター回路9−1〜9−nの駆動制御を行うとともに、誘導加熱調理器全体を制御する機能を果たすものである。制御手段25は、操作部104においてユーザが設定した火力指示に基づき、入力電流検出手段6と入力電圧検出手段7とからの検出値を使用して、U相駆動回路20とV相駆動回路21との両方から高周波駆動信号を出力させたフルブリッジ動作モードで加熱出力を制御するようになっている。
【0016】
出力電流検出手段28は、加熱コイル22と共振コンデンサ23とで構成される負荷回路24に流れる電流(以下「出力電流」と称する。)を検出するものである。
制御手段25内に設けられた負荷判別手段26は、出力電流検出手段28により検出された出力電流と、入力電流検出手段6により検出された入力電流との相関に基づいて、加熱コイル22の上方に適正鍋(適正負荷)が載置されているか否かを判別する(以下「負荷判別」とも称する。)。
なお、適正鍋とは、誘導加熱を行うのに適した鍋をいい、不適正鍋以外の被加熱物をいう。また、ここで記述する不適正鍋とは、例えば、アルミ鍋のような低効率の材質で加熱できない低抵抗鍋や、加熱すべきでないフォークやスプーン等の小物や、被加熱物が載置されていない無負荷状態をいう。
なお、以下の説明において、負荷判別手段26は、出力電流と入力電流とに基づいて負荷判別をする場合を説明するが本発明はこれに限るものではない。
例えば、入力電流に代えて、インバーター回路9の入力電力または出力電力を用い、この入力電力または出力電力と、出力電流とに基づいて負荷判別を行うようにしても良い。なお、出力電力を用いる場合には、インバーター回路9から負荷回路24へ出力される電圧(実効値)を検出する出力電圧検出手段を別途設けて、この出力電圧と、出力電流検出手段28により検出された出力電流とにより出力電力を検出することができる。
【0017】
(電力制御動作)
次に、インバーター回路9のアーム相互間の位相差による加熱出力の制御動作について説明する。
図3、
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器のインバーター回路の駆動信号と出力電圧波形の例を示す図である。
(a)は高出力状態における各スイッチの駆動信号と出力電圧波形の例である。
(b)は中出力状態における各スイッチの駆動信号と出力電圧波形の例である。
(c)は低出力状態における各スイッチの駆動信号と出力電圧波形の例である。
なお、
図3、
図4における先行アームとは、U相アーム10またはV相アーム11のうち、出力電位の変動が他方より先行するアームをいい、追従アームとは、U相アーム10またはV相アーム11のうち、出力電位の変動が他方に追従するアームをいう。
以下の説明では、U相アーム10が先行アーム、V相アーム11が追従アームの場合を例に説明する。
【0018】
制御手段25は、U相駆動回路20およびV相駆動回路21から出力される駆動信号を制御して、負荷回路24の共振周波数よりも高い周波数でインバーター回路9を駆動する。その際、U相駆動回路20から出力される上スイッチ12および下スイッチ13への駆動信号と、V相駆動回路21から出力される上スイッチ16および下スイッチ17への駆動信号は同一周波数である。
(a)〜(c)に示すように、先行アーム(U相駆動回路20)からの駆動信号が追従アーム(V相駆動回路21)からの駆動信号より位相が進んでおり、先行アームの出力電位と追従アームの出力電位とに位相差が生じている。そして、この位相差(以下、アーム間位相差とも称する。)により、インバーター回路9の出力電圧の印加時間が制御され、負荷回路24に流れる出力電流の大きさを制御することができる。
(a)に示すように、高出力状態の場合には、アーム間位相差を大きくして、1周期における電圧印加時間幅を大きくする。また、(b)に示すように、中出力状態の場合には、高出力状態と比較してアーム間位相差を小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。そして、(c)に示す低出力状態の場合には、さらにアーム間位相差を小さくして、1周期における電圧印加時間幅をさらに減少させる。
なお、アーム間位相差の上限は、逆相(位相差180°)の場合であり、このときの出力電圧波形はほぼ矩形波となる。また、アーム間位相差の下限は、例えば、ターンオン時に負荷回路24に流れる電流の位相等との関係でスイッチング素子に過大電流が流れて破壊してしまわないレベルに設定する。
【0019】
(負荷判別)
次に、負荷判別手段26の負荷判別動作について説明する。
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイルと被加熱負荷(鍋)との位置関係の例を示す図である。
図5(a)は加熱コイル22の配置を上方から見た説明図であり、
図5(b)は、加熱コイル22の配置を側面から見た説明図である。なお、
図5(a)では隣接する加熱コイル22は逆周回方向に巻回されており、インバーター回路9から同一位相の高周波電流が出力されれば隣接する加熱コイル22に180度位相のずれた高周波電流が流れる。
図6は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱開始時における加熱可否判別条件の例を示す図である。
ここでは、
図5に示すように、1つの加熱口106に対して、9つの加熱コイル22が横方向に3つ、奥行き方向に3つ配置されている場合を例に説明する。
以下の説明において、加熱口106の中央部に配置した加熱コイル22を、中心加熱コイル22aと称する。
また、中心加熱コイル22aの横方向と奥行き方向に配置した加熱コイル22を、周辺加熱コイル22b−1〜22b−8と称する。なお、区別しないときは周辺加熱コイル22bと称する。なお、周辺加熱コイル22bの数はこれに限らず任意の数とすることができる。
また、以下の説明において、中心加熱コイル22aを駆動するインバーター回路9を、中心加熱コイル用インバーター回路9aとも称し、周辺加熱コイル22b−1…nを駆動するインバーター回路9を、周辺加熱コイル(1…n)用インバーター回路9b−1…nとも称する。
【0020】
負荷判別手段26は、加熱制御における所定のタイミング(後述)で、出力電流検出手段28により検出された出力電流と、入力電流検出手段6により検出された入力電流とを取得する。そして例えば
図6のような情報を参照し、取得した出力電流および入力電流に基づいて、各加熱コイル22の上方に載置された負荷が適正負荷であるか否かを判別する。
例えば
図6に示すように、出力電流が大きい場合には、アルミ鍋のような低効率の材質で加熱できない低抵抗鍋であると判断する。また、入力電流が小さい場合には、無負荷状態、または、フォークやスプーン等の加熱すべきでない小物であると判断する。一方、入力電流および出力電流が所定の範囲に入った場合には、加熱に適した負荷である適正鍋と判断する。
【0021】
図5に示す例では、中心加熱コイル22aの上方全体と周辺加熱コイル22b−2の一部に、鍋200(適正径)が載置されているため、負荷判別手段26は、中心加熱コイル22aと周辺加熱コイル22b−2とに適正鍋が載置されたと判別する。
そして、制御手段25は、上方に適正鍋が載置されている中心加熱コイル用インバーター回路9aと、周辺加熱コイル2用インバーター回路9b−2を駆動する。なお、加熱制御動作については後述する。
このように、本実施の形態では、複数の加熱コイル22が隣接して配置されており、加熱調理において、これらの複数の加熱コイル22が同時に駆動される場合がある。
【0022】
(電力移動の原理)
次に、複数の加熱コイル22が同時に駆動された場合における電力移動の原理について説明する。
図7は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル間の磁気結合状態を示す図である。
ここでは、電力移動が生じる2つの加熱コイル22を、加熱コイルA、Bで示す。
上述したように、各加熱コイルに載置されている被加熱物の有無は、加熱コイルに流れる出力電流と、加熱コイルに入力または出力される電力(入力電流と同義)から判断される。
加熱コイルA、B上に被加熱物である鍋が載置され、鍋と各加熱コイルとが磁気結合している場合には、加熱コイルに流れる高周波電流により生じる高周波磁界により、加熱コイル上の鍋底に渦電流が誘導されて電力が消費されるので、無負荷状態と比較して出力電力が大きくなる。
ここで、加熱コイルAと加熱コイルBに、以下の電流が流れた場合を考える。
加熱コイルA:ia(t)=(√2)Ia・sin(ωt)
加熱コイルB:ib(t)=(√2)Ib・sin(ωt+θ)
【0023】
加熱コイルAの自己インダクタンスをLa、抵抗値をra、加熱コイルBの自己インダクタンスをLb、抵抗値をrb、相互インダクタンスをMとすると、インバーター回路9から、加熱コイルA、加熱コイルBへ出力される電力Pa、Pbは、
Pa=ra・Ia
2+M・Ia・Ib・ω・sinθ
Pb=rb・Ib
2−M・Ia・Ib・ω・sinθ
となる。
【0024】
つまり、隣接する加熱コイル間で電力の移動が生じ、この移動する電力の大きさは各加熱コイルに流れる電流の位相差θに依存する。
したがって、加熱コイルAと加熱コイルBに流れる電流の位相差θが大きい場合には、加熱コイル間の電力の移動が大きくなる。そして、このような加熱コイル間の電力の移動が大きい場合には、負荷判別手段26による負荷判別が正確に判別できないおそれがある。一方、位相差θを0にすれば加熱コイル間の電力の移動が無くなり、負荷判別の負荷判定の精度を向上することが可能となる。
【0025】
図8は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器のインバーター回路・加熱コイル・被加熱物間における電力の流れを示す図である。
図9は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器における被加熱負荷の有無の判別条件を示す図である。
図8、
図9を用いて、加熱コイル間の電力移動と負荷判別への影響についてさらに説明する。
図8において、インバーター回路9aから加熱コイルAへ出力する電力の測定値(電力検出手段の検出値)をPaとし、加熱コイルAに流れる出力電流の測定値(出力電流検出手段28の検出値)をIaとする。また、インバーター回路9bから加熱コイルBへ出力する電力の測定値(電力検出手段の検出値)をPbとし、加熱コイルBに流れる出力電流の測定値(出力電流検出手段28の検出値)をIbとする。
また、加熱コイルAから加熱コイルBへ移動した電力をPabとする。
【0026】
図8に示すように、加熱コイルA、Bの上方に適正鍋である鍋200が載置されると、鍋200と加熱コイルA、Bとが磁気結合する。
この場合、インバーター回路9aから観測できる負荷抵抗値、および、加熱コイルAと鍋200(被加熱物)との磁気結合により決まる抵抗値は、次のようになる。
インバーター回路9aから観測できる負荷抵抗値=Pa/(Ia×Ia)
加熱コイルAと鍋200との磁気結合により決まる抵抗値=(Pa−Pab)/(Ia×Ia)
即ち、インバーター回路9aから観測できる負荷抵抗値は、加熱コイルAと鍋200との磁気結合により決まる抵抗値より大きくなる。
この場合、
図9の点Aで示すように、インバーター回路9aの入力電流検出手段6により検出された入力電流(Paと同義)は、電力移動によって大きく検出される。
【0027】
また、インバーター回路9bから観測できる負荷抵抗値、および、加熱コイルBと鍋200(被加熱物)との磁気結合により決まる抵抗値は、次のようになる。
インバーター回路9bから観測できる負荷抵抗値=Pb/(Ib×Ib)
加熱コイルBと鍋200との磁気結合により決まる抵抗値=(Pb+Pab)/(Ib×Ib)
即ち、インバーター回路9bから観測できる負荷抵抗値は、加熱コイルBと鍋200との磁気結合により決まる抵抗値より小さくなる。
この場合、
図9の点Bで示すように、インバーター回路9bの入力電流検出手段6により検出された入力電流(Pbと同義)は、電力移動によって小さく検出される。
このように、入力電流の検出値が小さく検出されると、加熱コイルBの負荷判別において(
図6参照)、無負荷や小物または低抵抗鍋として誤判別する場合がある。
【0028】
このような複数の加熱コイル間で生じる電力の移動を抑制して、負荷判別の精度を向上する、本実施の形態における動作について、次に説明する。
【0029】
(動作)
図10は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御手段における加熱制御処理を示すフローチャートである。
図10に基づいて、この加熱制御処理の流れを説明する。
まず、制御手段25は操作部104から加熱電力が設定されるなどの加熱開始要求が入力されたかどうかを判断する(S101)。
加熱開始要求があった場合には、初期負荷判別処理を開始する(S200)。
この初期負荷判別処理の詳細について
図11により説明する。
【0030】
図11は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御手段における初期負荷判別処理を示すフローチャートである。
制御手段25は、中心加熱コイル用インバーター回路9aを所定出力(所定周波数・所定アーム間位相差)で駆動させる(S201)。
制御手段25は、駆動させた当該インバーター回路9の、出力電流検出手段28により検出された出力電流と入力電流検出手段6により検出された入力電流とを取得する(S202)。
制御手段25は、一定時間経過したあと、中心加熱コイル用インバーター回路9aの出力を停止させる(S203)。
負荷判別手段26は、上述したように、取得された出力電流および入力電流と、加熱可否判別条件(
図6)とに基づいて、中心加熱コイル22aの上方に適正負荷が載置されているか否かを判別する。そして、負荷判別結果を設定(保持)する(S204)。
【0031】
中心加熱コイル22aの上方に適正負荷がないと判別された場合には、初期負荷判別処理を終了する。一方、中心加熱コイル22aの上方に適正負荷がありと判別された場合には、周辺加熱コイル22b−1の負荷判別処理に進む(S205)。
【0032】
周辺加熱コイル22b−1の初期負荷判別処理(S206−1)においては次の処理を行う。
(1)制御手段25は、周辺加熱コイル1用インバーター回路9b−1を所定出力(所定周波数・所定アーム間位相差)で駆動させる。
(2)制御手段25は、駆動させた当該インバーター回路9の、出力電流検出手段28により検出された出力電流と入力電流検出手段6により検出された入力電流とを取得する。
(3)制御手段25は、一定時間経過したあと、周辺加熱コイル1用インバーター回路9b−1の出力を停止させる。
(4)負荷判別手段26は、上述したように、取得された出力電流および入力電流と、加熱可否判別条件(
図6)とに基づいて、周辺加熱コイル22b−1の上方に適正負荷が載置されているか否かを判別する。そして、負荷判別結果を設定(保持)する。
【0033】
以降同様に、周辺加熱コイル22b−2、3、…8の初期負荷判別処理(S206−2、3…8)においても上記(1)〜(4)の処理を行う。
なお、本実施の形態では、周辺加熱コイル22bが8つの場合を説明するが、本発明はこれに限るものではない。また、上記の初期負荷判別処理は周辺加熱コイル22bの数に応じて適宜実施する。
【0034】
再び
図10において、制御手段25は、中心加熱コイル22aの上方に適正負荷がありと判別されたか否かを判断する(S102)。中心加熱コイル22aの上方に適正負荷がない場合は、上記ステップS101に戻り上記動作を繰り返す。
【0035】
一方、中心加熱コイル22aの上方に適正負荷がある場合には、制御手段25は、上記ステップS200で、上方に適正負荷が載置されていると判別された中心加熱コイル用インバーター回路9a、および周辺加熱コイル用インバーター回路9bの駆動を開始する(S103)。なお、2以上のインバーター回路9を駆動させる場合、当該インバーター回路9の駆動周波数をそれぞれ同一周波数で駆動させる。
次に、制御手段25は、駆動させた各インバーター回路9の、出力電流検出手段28により検出された出力電流と入力電流検出手段6により検出された入力電流とを取得する(S104)。
負荷判別手段26は、中心加熱コイル22aの出力電流および入力電流と、加熱可否判別条件(
図6)とに基づいて、中心加熱コイル22aの上方に適正負荷が載置されているか否かを判別する(S105)。
中心加熱コイル22aの上方に適正負荷が載置されていない場合、ステップS112に進み、制御手段25は、全てのインバーター回路9の駆動を停止させた後、ステップS101に戻る。
【0036】
一方、中心加熱コイル22aの上方に適正負荷が載置されている場合、制御手段25は、操作部104で使用者により設定された設定電力(火力)と、入力電流検出手段6および入力電圧検出手段7の検出値から求めた入力電力とを比較する(S106)。
【0037】
設定電力より入力電力が小さい場合には(ステップS106;>)、中心加熱コイル用インバーター回路9aのアーム間位相差が上限(180度(半周期))未満であるか判断する(S107)。
アーム間位相差が上限値に到達していた場合は、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
一方、アーム間位相差が上限未満であれば、制御手段25は、中心加熱コイル用インバーター回路9aのアーム間位相差を増大させ(S108)、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
【0038】
設定電力より入力電力の方が大きい場合には(ステップS106;<)、中心加熱コイル用インバーター回路9aのアーム間位相差が下限値より大きいかどうか判断する(S109)。このアーム間位相差の下限値は、例えば、ターンオン時に負荷回路24に流れる電流の位相等との関係でスイッチング素子に過大電流が流れて破壊してしまわないレベルに設定するものとする。
アーム間位相差が下限値に到達していた場合は、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
一方、アーム間位相差が下限値より大きい場合には、制御手段25は、中心加熱コイル用インバーター回路9aのアーム間位相差を縮小させ(S110)、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
【0039】
設定電力と入力電力とが略同一の場合(ステップS106;≒)、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
【0040】
制御手段25は、周辺加熱コイル22b−1、2、…8の出力制御処理を行う(S300−1〜8)。この制御の詳細について
図12により説明する。
なお、各周辺加熱コイル22bの出力制御処理は同一であり、
図12の説明においては、出力制御処理を行う周辺加熱コイル22bを周辺加熱コイルnと称し、この周辺加熱コイルnを駆動するインバーター回路9を、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nと称する。
【0041】
図12は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御手段における周辺加熱コイルn用インバーター回路の出力制御処理を示すフローチャートである。
制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nが駆動中であるか否かを判断する(S301)。駆動中でない場合は、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nが駆動中の場合、制御手段25は、当該周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nの、出力電流検出手段28により検出された出力電流と入力電流検出手段6により検出された入力電流とを取得する(S302)。
【0042】
制御手段25は、取得した出力電流が所定の過電流値を超えているか否かを判断する(S303)。出力電流が所定の過電流値を超えている場合には、当該周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nの駆動を停止させ(S304)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
一方、出力電流が所定の過電流値を超えていない場合には、中心加熱コイル用インバーター回路9aの出力電流を基準として、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nの出力電流位相を判断する(S305)。
【0043】
周辺加熱コイルnの出力電流位相が遅れ位相の場合、制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nの駆動信号の位相を進めて、周辺加熱コイルnの出力電圧の位相を進ませる(遅れ電流シフト補正)。これにより、中心加熱コイルの出力電流位相との位相差を低減させる(S306)。
一方、周辺加熱コイルnの出力電流位相が進み位相の場合、制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nの駆動信号の位相を遅らせ、周辺加熱コイルnの出力電圧の位相を遅らせる(進み電流シフト補正)。これにより、中心加熱コイルの出力電流位相との位相差を低減させる(S307)。
【0044】
なお、駆動信号の位相を進める(遅らせる)時間は、所定の時間としても良いし、出力電流間の位相差を検出して当該位相差に相当する時間を進める(遅らせる)ようにしても良い。なお、所定の時間とした場合であっても、後述するように当該出力処理は繰り返し実行されるため、最終的には略同位相に収束することとなる。
また、各周辺加熱コイルnについて当該出力処理が繰り返し実行されることで、最終的には駆動中の全ての加熱コイルの出力電流が略同位相に収束することとなる。
【0045】
このような出力電流間の位相差を抑制する遅れ電流シフト補正と進み電流シフト補正について、
図13により説明する。
【0046】
図13は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の出力電流間の位相差を抑制した例を示す図である。
(a)は遅れ電流シフト補正における出力電圧波形と出力電流波形の例である。
(b)は進み電流シフト補正における出力電圧波形と出力電流波形の例である。
なお、
図13では理解を容易にするため、各出力電圧波形を矩形波で示したが、上記
図3、
図4で説明したように、加熱出力に応じたアーム相互間の位相制御により出力電圧波形が変化することを付言しておく。
【0047】
(a)において、位相補正前での周辺加熱コイルnの出力電流は、中心加熱コイル22aの出力電流に対して遅れ位相(θ1)である。この場合、周辺加熱コイルnの出力電圧を、中心加熱コイルの出力電圧に対して進める(t1)ことで、位相補正後における当該出力電流間の位相を略同位相とすることができる。
また、(b)において、位相補正前での周辺加熱コイルnの出力電流は、中心加熱コイルの出力電流に対して進み位相(θ2)である。この場合、周辺加熱コイルnの出力電圧を、中心加熱コイルの出力電圧に対して遅らせる(t2)ことで、位相補正後における当該出力電流間の位相を略同位相とすることができる。
【0048】
このように、周辺加熱コイルnと中心加熱コイル22aの出力電流間の位相差を低減する(略同位相)ことで、当該周辺加熱コイルnと中心加熱コイル22a間での電力移動を抑制することが可能となる。
【0049】
再び
図12において、上記ステップS305で、周辺加熱コイルnの出力電流位相が略同位相の場合、負荷判別手段26は、周辺加熱コイルnの上方に適正負荷が載置されているか否かを判別する(S308)。
周辺加熱コイルnの上方に適正負荷が載置されていない場合、制御手段25は、当該周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nの駆動を停止させ(S309)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
このように、出力電流間の位相差を低減させて、加熱コイル間の電力移動を抑制した状態で負荷判別を行うことで、判別精度を向上することができる。
【0050】
上記ステップS306、S307の後、または、ステップS308で適正負荷が載置されている場合、制御手段25は、中心加熱コイル22aの出力電流と周辺加熱コイルnの出力電流とを比較する(S310)。
【0051】
中心加熱コイル22aの出力電流より周辺加熱コイルnの出力電流が小さい場合には(ステップS310;>)、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nのアーム間位相差が上限(180度(半周期))未満であるか判断する(S311)。
アーム間位相差が上限値に到達していた場合は、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
一方、アーム間位相差が上限未満であれば、制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nのアーム間位相差を増大させ(S312)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
【0052】
中心加熱コイル22aの出力電流より周辺加熱コイルnの出力電流の方が大きい場合には(ステップS310;<)、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nのアーム間位相差が下限値より大きいかどうか判断する(S313)。このアーム間位相差の下限値は、例えば、ターンオン時に負荷回路24に流れる電流の位相等との関係でスイッチング素子に過大電流が流れて破壊してしまわないレベルに設定するものとする。
アーム間位相差が下限値に到達していた場合は、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
一方、アーム間位相差が下限値より大きい場合には、制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9b−nのアーム間位相差を縮小させ(S314)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
【0053】
中心加熱コイル22aの出力電流と周辺加熱コイルnの出力電流とが略同一の場合(ステップS310;≒)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
【0054】
再び
図10において、全ての周辺加熱コイルの出力制御処理が終了した後、制御手段25は、操作部104によりユーザが設定する加熱停止要求の操作がされているか否かを判断する(S111)。
加熱停止要求がない場合には、ステップS104へ戻り上記操作を繰り返す。
一方、加熱停止要求がある場合には、ステップS112に進み、制御手段25は、全てのインバーター回路9の駆動を停止させ、ステップS101に戻る。
【0055】
なお、上記の動作では、周辺加熱コイルnの出力制御処理(S300−1〜8)において、随時、中心加熱コイル用インバーター回路9aの駆動信号との位相差を制御する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、加熱開始時の初期負荷判別処理(S200)において、各加熱コイル22の負荷状態を判別し、各加熱コイル22に流れる高周波電流が略同位相となるように各インバーター回路9の駆動信号の位相をシフト(補正)することとしても良い。
【0056】
なお、上記の動作では、中心加熱コイル22aと各周辺加熱コイルnとの間で出力電流の位相差を順次低減させる動作を説明したが本発明はこれに限るものではなく、同時に駆動される複数の加熱コイル22間での出力電流の位相
差を低減する動作であれば良い。
例えば中心加熱コイル22aの出力電圧の位相を制御するようにしても良い。また、中心加熱コイル22aと周辺加熱コイルnとを区別せず、駆動中の任意の加熱コイル22の出力電流を基準として、他の加熱コイル22の出力電流の位相差を低減するように制御しても良い。
【0057】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、複数のインバーター回路9のうち、2以上のインバーター回路9を同時に駆動させる場合、当該インバーター回路9の駆動周波数を同一周波数で駆動させる。また、駆動させたインバーター回路9の出力電流をそれぞれ取得し、取得した各出力電流間の位相差が低減するように、インバーター回路9を駆動制御する。そして、駆動されたインバーター回路9の、出力電流検出手段28により検出された出力電流と電力検出手段により検出された入力電力または出力電力とに基づいて負荷判別を行う。
このため、複数の加熱コイル22間で生じる電力の移動を抑制することができ、各加熱コイル22に流れる出力電流とその加熱コイル22へ出力する電力(入力電流)から、各加熱コイル22と磁気結合している被加熱物の判別を精度良く行うことが可能となり、各加熱コイルの上方に被加熱物が載置されている状態か否かの判別精度を向上することができる。
なお、本実施の形態では、隣接する加熱コイル22を逆周回方向に巻回し、インバーター回路9から各加熱コイル22への出力電流の位相差を低減することにより加熱コイル22間の電力の移動を抑制することとしたが、隣接する加熱コイル22を同一周回方向に巻回し、インバーター回路9からその隣接する加熱コイル22への出力する電流の位相を互いに180度差に近づけることも加熱コイル22間の電力の移動を抑制する同等の動作である。
【0058】
また本実施の形態においては、複数のインバーター回路9のうち、2以上のインバーター回路9を同時に駆動させる場合、各出力電流間の位相差が低減するように、インバーター回路9の出力電圧の位相を制御する。
このため、駆動中の各加熱コイル22に流れる電流の位相差を低減することができ、隣接する加熱コイル22間で生じる電力の移動を抑制することができる。よって、出力電流と入力電力または出力電力(入力電流)とに基づく負荷判別の精度を向上することができる。
【0059】
また本実施の形態においては、複数のインバーター回路9のうち、2以上のインバーター回路9を同時に駆動させる場合、各出力電流間の位相差が低減するように、インバーター回路9のスイッチング素子へ出力する駆動信号を制御する。
このため、駆動中の各加熱コイル22に流れる電流の位相差を低減することができ、隣接する加熱コイル22間で生じる電力の移動を抑制することができる。よって、出力電流と入力電力または出力電力(入力電流)とに基づく負荷判別の精度を向上することができる。
【0060】
また本実施の形態においては、負荷判別手段26は、出力電流検出手段28により検出された出力電流と、電力検出手段により検出された入力電力または出力電力との相関に基づいて、加熱コイル22の上方に適正負荷が載置されているか否かを判別する。そして、制御手段25は、負荷判別手段26の判別結果に基づき、上方に適正負荷が載置されていない加熱コイル22のインバーター回路9の駆動を停止させる。
このため、適正負荷が載置されているか否かを精度良く判別することができる。そして、加熱に適さない被加熱物(負荷)の加熱を防止することができ、また、上方に負荷が載置されていない無負荷状態において加熱コイル22が駆動されることを防止することができる。
【0061】
実施の形態2.
本実施の形態2では、インバーター回路9をハーフブリッジで構成した形態について説明する。
【0062】
図14は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
以下、上記実施の形態1との相違点を中心に説明する。なお、
図14において、上記実施の形態1(
図2)と同様の構成には同一の符号を付する。
【0063】
本実施の形態2における各インバーター回路9’は、ハーフブリッジ構成であり、高電位側のスイッチング素子(上スイッチ12’)と低電位側のスイッチング素子(下スイッチ13’)と、上スイッチ12’に逆並列に接続された上ダイオード14’と、下スイッチ13’に逆並列に接続された下ダイオード15’とで構成されている。
各インバーター回路9’における出力点間には、負荷回路24’が接続されている。負荷回路24’は、加熱コイル22と、共振コンデンサ23と、この共振コンデンサ23と並列に接続されたクランプダイオード27とで構成されている。
クランプダイオード27は、加熱コイル22と共振コンデンサ23の接続点電位を直流電源の低電位側母線電位にクランプする。このクランプダイオード27の働きにより、下スイッチ13’が導通した状態では加熱コイル22に流れる電流は転流しない。
【0064】
上スイッチ12’と下スイッチ13’は、駆動回路20’から出力される駆動信号によりオン/オフ駆動されるようになっている。
本実施の形態の制御手段25は、高電位側のスイッチング素子(上スイッチ12’)と低電位側のスイッチング素子(下スイッチ13’)とを交互にオン・オフすることにより、その接続点と直流母線の一端との間に高周波電圧を発生し、負荷回路24’に供給する。
【0065】
図15は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器のインバーター回路の駆動信号例を示す図である。
(a)は高出力状態における各スイッチの駆動信号と出力電圧波形の例である。
(b)は中出力状態における各スイッチの駆動信号と出力電圧波形の例である。
(c)は低出力状態における各スイッチの駆動信号と出力電圧波形の例である。
制御手段25は、駆動回路20’から出力される駆動信号を制御して、負荷回路24’の共振周波数よりも高い周波数でインバーター回路9’を駆動する。
(a)〜(c)に示すように、本実施の形態の制御手段25は、高電位側のスイッチング素子(上スイッチ12’)および低電位側のスイッチング素子(下スイッチ13’)の通電比率を制御することによって、インバーター回路9’の出力電圧の印加時間が制御され、負荷回路24’に流れる出力電流の大きさを制御することができる。
(a)に示すように、高出力状態の場合には、上スイッチ12’の通電比率(オンデューティー比)を大きくして、1周期における電圧印加時間幅を大きくする。また、(b)に示すように、中出力状態の場合には、高出力状態と比較して上スイッチ12’の通電比率(オンデューティー比)を小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。そして、(c)に示す低出力状態の場合には、さらに上スイッチ12’の通電比率(オンデューティー比)を小さくして、1周期における電圧印加時間幅をさらに減少させる。
【0066】
図16は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の制御手段における加熱制御処理を示すフローチャートである。
図17は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の制御手段における周辺加熱コイルn用インバーター回路の出力制御処理を示すフローチャートである。
図16、
図17に基づいて、上記実施の形態1(
図10、
図12)との相違点について説明する。
なお、上記実施の形態1と同様の動作には同一のステップ番号を付する。また、初期負荷判別処理の動作は、上記実施の形態1(
図11)と同様である。
なお、以下の説明において、中心加熱コイル22aを駆動するインバーター回路9’を、中心加熱コイル用インバーター回路9’aと称し、周辺加熱コイル22b−1…nを駆動するインバーター回路9’を、周辺加熱コイル(1…n)用インバーター回路9’b−1…nと称する。
【0067】
まず、
図16の加熱制御処理について上記実施の形態1との相違点を説明する。
ステップS106において、設定電力より入力電力が小さい場合には(ステップS106;>)、中心加熱コイル用インバーター回路9’aの上スイッチ12’の通電比率が上限未満であるか判断する(S401)。
上スイッチ12’の通電比率が上限値に到達していた場合は、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
一方、上スイッチ12’の通電比率が上限未満であれば、制御手段25は、中心加熱コイル用インバーター回路9’aの上スイッチ12’の通電比率を増大させ(S402)、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
【0068】
ステップS106において、設定電力より入力電力の方が大きい場合には(ステップS106;<)、中心加熱コイル用インバーター回路9’aの上スイッチ12’の通電比率が下限値より大きいかどうか判断する(S403)。
上スイッチ12’の通電比率が下限値に到達していた場合は、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
一方、上スイッチ12’の通電比率が下限値より大きい場合には、制御手段25は、中心加熱コイル用インバーター回路9’aの上スイッチ12’の通電比率を縮小させ(S404)、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
【0069】
ステップS106において、設定電力と入力電力とが略同一の場合(ステップS106;≒)、周辺加熱コイル22bの出力制御処理に進む。
【0070】
次に、
図17の出力制御処理について上記実施の形態1との相違点を説明する。
ステップS310において、中心加熱コイル22aの出力電流より周辺加熱コイルnの出力電流が小さい場合には(ステップS310;>)、周辺加熱コイルn用インバーター回路9’b−nの上スイッチ12’の通電比率が上限未満であるか判断する(S501)。
上スイッチ12’の通電比率が上限値に到達していた場合は、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
一方、上スイッチ12’の通電比率が上限未満であれば、制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9’b−nの上スイッチ12’の通電比率を増大させ(S502)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
【0071】
ステップS310において、中心加熱コイル22aの出力電流より周辺加熱コイルnの出力電流の方が大きい場合には(ステップS310;<)、周辺加熱コイルn用インバーター回路9’b−nの上スイッチ12’の通電比率が下限値より大きいかどうか判断する(S503)。
上スイッチ12’の通電比率が下限値に到達していた場合は、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
一方、上スイッチ12’の通電比率が下限値より大きい場合には、制御手段25は、周辺加熱コイルn用インバーター回路9’b−nの上スイッチ12’の通電比率を縮小させ(S504)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
【0072】
ステップS310において、中心加熱コイル22aの出力電流と周辺加熱コイルnの出力電流とが略同一の場合(ステップS310;≒)、当該周辺加熱コイルnの出力処理を終了する。
【0073】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、インバーター回路9’をハーフブリッジで構成した。このような構成においても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0074】
なお、実施の形態2におけるハーフブリッジ構成のインバーター回路9’と、実施の形態1におけるフルブリッジ構成のインバーター回路9とが混在する回路構成としても良い。
【0075】
なお、上記実施の形態1、2では、複数の加熱コイル22は、天板101に設けられた加熱口106の中央部に配置した中心加熱コイル22aと、その横方向と奥行き方向にそれぞれ複数配置した周辺加熱コイル22bとから構成した場合を説明したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、
図18に示すように、複数の加熱コイル22は、天板101に設けられた加熱口106の中央部に配置した中心加熱コイル22aと、その周囲の周方向に複数配置した周辺加熱コイル22bとから構成しても良い。
このような構成においても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0076】
また例えば、
図19に示すように、複数の加熱コイル22は、天板101に設けられた加熱口106の中央部に配置した内側加熱コイル22
a’と、その周囲を取り囲むように巻回した外側加熱コイル22
b’とから構成しても良い。なお、この場合には上述した動作説明における中心加熱コイル22aが、内側加熱コイル22
a’に相当し、周辺加熱コイル22bが外側加熱コイル22
b’に相当する。
このような構成においても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。