特許第5649780号(P5649780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649780コンクリート組成物の製造方法及びコンクリート成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649780
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】コンクリート組成物の製造方法及びコンクリート成形体
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20141211BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20141211BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20141211BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20141211BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   B28C7/04
   C04B14/28
   C04B18/08 Z
   C04B18/14 A
   C04B18/14 Z
   C04B28/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-330587(P2008-330587)
(22)【出願日】2008年12月25日
(65)【公開番号】特開2010-149402(P2010-149402A)
(43)【公開日】2010年7月8日
【審査請求日】2011年9月22日
【審判番号】不服2013-24337(P2013-24337/J1)
【審判請求日】2013年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】辻 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】鴉越 元紀
(72)【発明者】
【氏名】柿沢 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】三井 健郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲郎
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 真々田 忠博
【審判官】 河原 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−89808(JP,A)
【文献】 特開平6−114824(JP,A)
【文献】 特開2003−266423(JP,A)
【文献】 特開2002−248615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水/結合材比が0.05以上0.15以下のコンクリート組成物の製造方法であって、コンクリート組成物に含まれるセメントを含む結合材の総量を100質量部としたときに、結合材の50質量部から90質量部と水と細骨材とポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤とを、ミキサー中で練り混ぜて、練り混ぜに用いるミキサーの負荷電流がピークを過ぎたことにより、練り混ぜられる混合物がスラリー状態となり流動性が向上したことを確認することでスラリーを調整する第1の練り混ぜ工程と、
該スラリーに対し、結合材の残量を添加して練り混ぜる第2の練り混ぜ工程と、を有するコンクリート組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の練り混ぜ工程において、練り混ぜ開始からスラリー状となるまでに掛かる時間が15秒〜2分間である請求項1記載のコンリート組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第1の練り混ぜ工程において、練り混ぜられる混合物がスラリー状態となり流動性が向上したことを確認した後、さらに、混合物を1分間〜3分間練り混ぜる請求項1又は請求項2記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第1の練り混ぜ工程において使用される水と結合材との混合比率が、0.1〜0.3である請求項1から請求項3のいずれか1項記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第1の練り混ぜ工程に用いられる、結合材が、セメント、シリカフューム、スラグ、石灰石微粉末、フライアッシュから選択される1種以上を含有する請求項1から請求項4のいずれか1項記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第2の練り混ぜ工程の後に、さらに、粗骨材を添加して練り混ぜる第3の練り混ぜ工程を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の製造方法により得られたコンクリート組成物を硬化させてなる、圧縮強度が80N/mm以上であるコンクリート成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート組成物の製造方法及び該製造方法により得られたコンクリート組成物を硬化させて得られるコンクリート成形体に関し、詳細には、水/結合材比が低く、高強度の成形体を得られるコンクリート組成物を容易に調整しうる製造方法及びそれにより得られた高強度のコンクリート成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高層化や橋梁の大規模化などに伴い、土木建築構造物に使用されるセメントコンクリートからなる成形体として高強度のものが求められている。従来、コンクリート組成物は、水/結合材比が0.4〜0.7、即ち、水と結合材との総量中における結合材の含有量が71質量%〜59質量%程度のものが用いられ、これに、必要に応じて細骨材、粗骨材などを混合し、一括混練りしてスラリー状のコンクリート組成物を調製し、それを打設し、硬化させて成形体を得ている。このような場合には、混練りを開始してから数分で打設可能なスラリー状のコンクリート組成物が得られる。
しかしながら、コンクリート成形体の高強度化の手段として、水/結合材比を低くすると、粉体の量が増加するため、均一なスラリー状のコンクリート組成物を調製するのに時間が掛かるという問題があり、これについては、減水剤を配合することで効率化を図っている。
高強度コンクリートにおいては、水/結合材比を低減して、セメントとともにシリカフュームや石灰石微粉などの微粉末の含有量をも増加させるが、粉末量が多く、且つ、粉末のかさ容積が大きいために、水/結合材比が0.3以下、特に、0.2以下のものを調製する場合、粉体間に減水剤を含んだ水が均一に行きわたらず、均一なスラリーとなるのに長時間かかる、或いは、10分間以上練り混ぜても、スラリー形成の前段階である、各固体粒子間の一部に水が侵入して塊状となるペンデュラー状態が形成されず、均一なスラリーとならないといった問題がある。
【0003】
高強度コンクリート組成物の調製法としては、例えば、補強繊維を含有する高強度コンクリート組成物を得るために、水に減水剤、補強繊維を順次添加し、混練りした後に、セメントを添加して練り混ぜ、セメントペーストを調製した後に、空練り下した骨材混合物に、このセメントペーストを添加するコンクリート組成物の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、補強繊維をコンクリート組成物中に均一に配置することができるが、ここに記載されたコンクリート組成物の水/結合材比は0.6(60%)程度であり、水/結合材比を低くして高強度化を図る点については考慮されておらず、また、この技術を水/結合材比の低い組成物に適用すると、セメント投入後に練り混ぜを行っても均一なセメントペーストは得られないという問題があった。
【0004】
また、高強度コンクリートの他の製造方法としては、セメント、珪砂、水及び減水剤を練り混ぜてセメントペーストを作製し、その後、水及び遅延剤を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、計量の正確さを期するために、水を2回に分けて添加するが、水/結合材比の低い組成物では、第1段階の混合物に添加する水がさらに少なくなるために、均一なセメントペーストが得られないという問題があり、いずれも、水/結合材比の低いコンクリート組成物の調製に関する本質的な解決には至っていなかった。
【特許文献1】特開平11−320544号公報
【特許文献2】特開2004−123428公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、水/結合材比の低いコンクリート組成物に適用した場合でも、短時間、低エネルギーで、均一なスラリー状のコンクリート組成物を調製することができ、高圧縮強度の成形体を形成しうるコンクリート組成物の製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、前記コンクリート組成物の製造方法により得られる組成物を用いてなる、水/結合材比が低く、高圧縮強度のコンクリート成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セメントコンクリート組成物、特にセメントペーストの調製工程において、セメントやシリカフュームなどの結合材を2回に分けて添加することで、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> 水/結合材比が0.05以上0.15以下のコンクリート組成物の製造方法であって、コンクリート組成物に含まれるセメントを含む結合材の総量を100質量部としたときに、結合材の50質量部から90質量部と水と細骨材とポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤とを、ミキサー中で練り混ぜて練り混ぜられる混合物がスラリー状態となり流動性が向上したことを練り混ぜに用いるミキサーの負荷電流がピークを過ぎたことにより確認することでスラリーを調整する第1の練り混ぜ工程と、該スラリーに対し、結合材の残量を添加して練り混ぜる第2の練り混ぜ工程とを有するコンクリート組成物の製造方法。
<2> 前記第1の練り混ぜ工程において、練り混ぜ開始からスラリー状となるまでに掛かる時間が15秒〜2分間である<1>記載のコリート組成物の製造方法。
<3> 前記第1の練り混ぜ工程において、練り混ぜられる混合物がスラリー状態となり流動性が向上したことを確認した後、さらに、混合物を1分間〜3分間練り混ぜる<1>又は<2>記載のコンクリート組成物の製造方法。
【0007】
> 前記第1の練り混ぜ工程において使用される水と結合材との混合比率が0.1〜0.3である<1>〜<>のいずれか1項記載のコンクリート組成物の製造方法。
> 前記第1の練り混ぜ工程に用いられる、結合材が、セメント、シリカフューム、スラグ、石灰石微粉末、フライアッシュから選択される1種以上を含有する<1>〜<>のいずれかに記載のコンクリート組成物の製造方法。
【0008】
> 前記第2の練り混ぜ工程の後に、さらに、粗骨材を添加して練り混ぜる第3の練り混ぜ工程を有する<1>〜<>のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の製造方法。
> <1>〜<>のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の製造方法により得られたコンクリート組成物を硬化させてなる、圧縮強度が80N/mm以上であるコンクリート成形体。
【0009】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。本発明のコンクリート組成物に製造方法では、水全量に対して、セメント、シリカフュームなどの結合材の一部である50質量部から90質量部、細骨材及びポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤をまず添加することで、第1の練り混ぜ工程における組成物は、水と結合材との比率が大きくなり、短時間で粉末の間隙や周辺部に水が速やかに浸透し、短時間で均一なスラリー状の混合物となる。均一なスラリー状態になったことを確認した後、そこに、残余の結合材を添加すると、一旦形成された水に比較して高粘度のスラリーに粉末状の結合材が添加されることになるため、スラリーの均一性を損なうことなく、追加された結合材がスラリー中に均一に分散され、短時間で、水/結合材比の低いスラリーが調製され、打設に適したコンクリート組成物を得ることができるものと考えている。
また、打設に適したコンクリート組成物を短時間で効率よく調整しうるために、スラリー調製時の巻き込み空気が少なくなり、スラリー調製に時間とエネルギーとを本態様よりも多く必要とする一括練りに比べて、このコンクリート組成物を硬化させて得られる成形体の圧縮強度も向上するものと考えられる。
一般に、水/結合材比が低いほど練り混ぜによる均一なスラリー状混合物の調製が困難であるため、本発明の製造方法は、水結合材比が0.05〜0.15のコンクリート組成物の調製に用いて、その効果が著しいといえる。
【0010】
なお、一般に建築材料として、セメント等の結合材に対し、粗骨材を含有せず、細骨材のみを配合して調整したものをモルタルと称するが、セメントなどの結合材と水とを前記所定量含有する組成物であれば、練り混ぜ工程において同一または類似の挙動を示すために、本発明における「コンクリート組成物」は、粗骨材を含まないモルタル組成物も包含するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水/結合材比の低い、具体的には、水/結合材比が0.05以上0.15以下のコンクリート組成物に適用した場合でも、短時間で、均一なスラリー状のコンクリート組成物を調製しうるコンクリート組成物の製造方法を提供することができる。
また、本発明のコンクリート組成物の製造方法により得られる組成物を用いることで、水/結合材比が低く、高圧縮強度のコンクリート成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<コンクリート組成物の製造方法>
本発明のコンクリート組成物の製造方法は、水/結合材比が0.05以上0.15以下のコンクリート組成物の製造方法であって、コンクリート組成物に含まれるセメントを含む結合材の総量を100質量部としたときに、結合材の50質量部から90質量部と水と細骨材とポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤とを練り混ぜてスラリーを調整する第1の練り混ぜ工程と、該スラリーに対し、結合材の残量を添加して練り混ぜる第2の練り混ぜ工程とを有することを特徴とする。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明の製造方法が適用されるコンクリート組成物は、水/結合材比が0.05以上0.15以下の組成物であって、少なくとも、水、セメント、及び、その他の結合材を含有し、目的に応じて、さらに、細骨材、粗骨材などの骨材、及び、減水剤などを含有する。
水/結合材比は、0.05〜0.15、即ち、水と結合材との総量中における結合材の含有量が87質量%〜95質量%、の範囲であることを要する
なお、本発明における結合材は、コンクリートの主成分であるセメント及び一般にセメントと共に用いられるシリカフューム、スラグやフライアッシュなどの微粉末を包含するものである。
【0014】
本発明のコンクリート組成物の製造方法に用いられるセメントには特に制限はなく、目的に応じて、各種セメント類の中から、適宜選択することができる。セメントとして、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどの公知のセメントはいずれも好適に使用しうる。
【0015】
セメントと共に用いる他の結合材にも特に制限はなく、調製されるコンクリート組成物の用途に応じて、各種セメント、コンクリート用に用いられる結合材から適宜種類、使用量を選択できる。
本発明に用いうるセメント以外の結合材としては、具体的には、高炉スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末、フライアッシュやシリカフュームなどが好ましく挙げられる。
本発明において「結合材」とは、セメント及び添加材としての他の結合材粉末を包含するものである。
【0016】
また、このコンクリート組成物には、目的に応じて、骨材や減水剤、遅延剤など、コンクリート組成物に用いられる他の成分を含むことができる。
【0017】
〔コンクリート組成物に含まれるセメントを含む結合材の総量を100質量部としたときに、結合材の50質量部から90質量部と水と骨材とポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤とを練り混ぜてスラリーを調整する第1の練り混ぜ工程〕
本発明に用いられるコンクリート組成物は、水/結合材比が0.05以上0.15以下であることを要するが、本発明において「水/結合材比」と表記した場合の結合材の量は、セメント類及びセメント以外の上述した結合材の総量を基準とするものである。
第1の練り混ぜ工程では、まず、水全量に対し、結合材のうち、全体の50〜90質量部を量り取り、これを添加して練り混ぜる。
【0018】
結合材は、総量を100質量部としたときに、その50質量部から90質量部を添加することを要し、効率的に均一に混練りするという観点からは、第1の練り混ぜ工程において可能な限りで多くの結合材を添加することが好ましく、70質量部から90質量部を添加することが好ましい。このとき添加する結合材の割合は、調製しようとするコンクリート組成物の物性や配合により適宜選択されるが、効率よくスラリー状混合物を形成するという観点からは、第1の練り混ぜ工程における混合物の水/結合材比を0.1〜0.3となるように結合材の添加割合を決めることが好ましい。
【0019】
また、調製するコンクリート組成物が骨材を含む場合には、骨材のうち、細骨材を第1の練り混ぜ工程において配合する。
用いられる細骨材としては、山砂や砕砂など、公知のものを用いることができる。粗骨材は配合される全量を第1の練り混ぜ工程において添加することが好ましい。
【0020】
また、効率よく混合物をスラリー状とするという観点からは、第1の練り混ぜ工程において、減水剤を添加する。
減水剤としては、公知のものを適宜選択できるが、リグニンスルホン酸などを主成分とするAE減水剤、高級脂肪酸のスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩を含む減水剤、及び、実施例で使用されたチューポールSSP(商品名:竹本油脂社製)であるポリカルボン酸コポリマーを主成分とする減水剤などから選択される界面活性剤を主成分とする減水剤などが挙げられる。本発明においては、第1の練り混ぜ工程において、好ましい減水剤の一つであるポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤を添加する。
減水剤の添加量としては、第1の練り混ぜ工程に用いられる結合材の総量を100質量部としたとき、0質量部を超え10質量部以下の範囲で添加することができる。
減水剤を添加する場合、第1の練り混ぜ工程において添加するかぎり、添加の時期は任意であり、また、減水剤の一部を第2の練り混ぜ工程において添加してもよい。
【0021】
水、結合材の一部及び細骨材、ポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤を添加して練り混ぜを行うことで、混合物は当初、各固体粒子間の一部に水が侵入して塊状となるペンデュラー状態からファニキュラー状態となり、さらに粉体表面に毛管現象などにより均一の水の被膜が形成されたキャピラリー状態となり、さらに練り混ぜることで、流動性に優れたスラリー状態となる。混合物をスラリー状態とすることが第一の練り混ぜ工程である。
練り混ぜに用いるミキサーは公知のものを適宜使用することができる。
【0022】
ミキサー中で練り混ぜられる混合物がスラリー状態になることは、練混ぜ中の混合物が団子状態(流動性を持たない状態)から流動性を持つ状態に変化することにより、その状態を目視で確認することができる。また、スラリー状態となり流動性が向上することは、練り混ぜに用いるミキサーの負荷電流がピークを過ぎたことにより確認することもできる。
練り混ぜ開始からスラリー状となるまでに掛かる時間は、通常15秒間〜5分間であることが好ましく、15秒〜2分間であることがより好ましい。
また、スラリー状態となった後、均一性向上のため、さらに、1〜3分間程度練り混ぜることが好ましい。
【0023】
〔スラリーに対し、結合材の残量を添加して練り混ぜる第2の練り混ぜ工程〕
本工程では、第1の練り混ぜ工程で調製されたスラリー状の混合物(モルタル或いはセメントペースト)に残余の結合材を添加してさらに練り混ぜを行う。
この工程は、第1の練り混ぜ工程に引き続き、同じミキサーを用いて行うことができる。すなわち、第1の練り混ぜ工程の終了後、ミキサーを一旦停止し、スラリー状態となった混合物に対して、残余の結合材を添加してさらに練り混ぜを行うことができる。
この工程では、スラリー状態となった混合物に対して、結合材のみを添加するが、すでにスラリー状態が形成されたものに対し、粉末を添加することで、粉末はスラリー中に速やかに分散され、均一なコンクリート組成物が形成される。結合材を添加すると、直後には、混合物中に凝集体であるフェニキュラー状態が形成され、1〜5分間、好ましくは、1〜3分間ほど練り混ぜると、均一なスラリー状態となり、たとえば、ミキサーの負荷電流が一旦上昇し、その後、下降する。
第2の練り混ぜ工程においても、スラリー状態となった後、さらに、1〜3分間程度練り混ぜを続けることが好ましい。
こうして、所定の水/結合材比を有する流動状のコンクリート組成物を短時間で製造することができる。
【0024】
本発明のコンクリート組成物を調製するに際しては、公知の添加剤を適宜配合することができる。
例えば、強度、靭性、耐火性などの向上を目的として、コンクリート組成物に炭素繊維、鋼繊維などの補強繊維を添加することもできる。
【0025】
他の添加剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤などの界面活性剤;有機染料、有機顔料などの有機成分;水溶性ポリマー、非水溶性の繊維状物質のような有機高分子化合物、炭素、シリカ、チタニア等の無機化合物からなる無機微粒子などが挙げられ、これらは製造の任意の段階で含ませることが可能である。更に目的に応じて他素材と複合化した粒子、表面処理を施した粒子を用いることも可能である。
【0026】
本発明に係るコンクリート組成物には、上記必須成分及び上述した添加剤の他、通常セメント系組成物に配合されている各種添加剤、例えば、空気連行剤、消泡剤などを、適宜配合することができる。
コンクリート組成物においては、水、セメント、混和材料、骨材、化学混和剤などの各種材料の重量比を適宜調整することで強度や物性を調整することもできる。
【0027】
なお、コンクリート組成物を調製に際して併用しうる結合材以外の成分のうち、この第1の練り混ぜ工程において添加する成分としては、前記ポリカルボン酸コポリマーを含む減水剤、細骨材などが挙げられる。なお、減水剤や細骨材の一部を、第二の練り混ぜ工程において添加することもできる。
また、第2の練り混ぜ工程の終了後に添加することが好ましい成分としては、鋼繊維、有機繊維などが挙げられる。
【0028】
コンクリート組成物において、所望により用いられる細骨材及び粗骨材は、第1の練り混ぜ工程、第2の練り混ぜ工程のいずれで添加してもよく、また、第1の練りまぜ工程、第2の練り混ぜ工程の後に添加してもよい。
細骨材及び粗骨材は、必要とする総添加量を一度に添加してもよく、また、これを2分割から3分割して、異なる工程で添加してもよい。
細骨材及び粗骨材添加の態様としては、第1の練り混ぜ工程において総量を添加する態様、第2の練り混ぜ工程において総量を添加する態様。第1及び第2の練り混ぜ工程の終了後に総量を添加する態様、さらには、粗骨材を2分割して、第1の練り混ぜ工程と第2の練り混ぜ工程においてそれぞれを添加する態様、第2の練り混ぜ工程と第1及び第2の練り混ぜ工程の終了後においてそれぞれを添加する態様、第1の練り混ぜ工程と第1及び第2の練り混ぜ工程の終了後においてそれぞれを添加する態様、粗骨材を3分割して、第1の練り混ぜ工程、第2の練り混ぜ工程、及び、第1及び第2の練り混ぜ工程の終了後においてそれぞれを添加する態様などのいずれの態様をとってもよい。
細骨材及び粗骨材を2分割、3分割する際の量比は任意である。
これらの条件は、コンクリート組成物に用いる材料や目的とする組成物の物性に従って適宜選択すればよい。
これらのなかでも、細骨材は第1の練り混ぜ工程中に添加することが好ましく、粗骨材は第2の練り混ぜ工程の終了後に添加することが好ましいことは前述したとおりである。
【0029】
<コンクリート成形体>
前記本発明の製造方法により調製されたコンクリート組成物は水結合材比が0.05以上0.15以下と低いものではあるが、流動性に優れた均一なスラリー状態であることから、このような組成物を硬化させて得られる本発明のコンクリート成形体硬化体は、圧縮強度が高く、圧縮強度が80N/mm以上を達成する。
水結合材比をさらに低くすることにより圧縮強度をさらに向上させることができ、本発明のコンクリート成形体の圧縮強度は好ましくは、100N/mm以上であり、さらに好ましくは、150N/mm以上である。
【0030】
本発明のコンクリート成形体は、前記各必須成分或いはさらに目的に応じて添加される種々の添加剤を含有するコンクリート組成物を上記本発明の方法により少なくとも2工程に分けて混練し、これを型枠などに打設し、硬化することにより製造することができる。
【0031】
本発明のコンクリート成形体は、簡易に製造することができ、水/結合材比が低いことから圧縮強度が高いために、ビルや橋脚などの構造材料、プレキャストコンクリート成形体など、その応用範囲は広い。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(コンクリート組成物の調製)
[使用材料]
セメント:低熱ポルトランドセメント(三菱マテリアル社製)比重3.24
混和材:シリカフューム(エルケム社製)比重2.2
水:水道水
細骨材:大月産安山岩砕砂 比重2.6
粗骨材:大月産安山岩砕石 最大寸法15mm 比重2.6
減水剤:チューポールSSP(竹本油脂社製)添加量:セメント総量の5質量%
単位水量:126kg/m、水結合材比が0.11となるコンクリート組成物を調製する。また、粗骨材は、かさ容積が0.5m/mとなる量で添加する。コンクリートの練り量は80Lとした。
【0033】
(第1の練り混ぜ工程)
まず、水の全量、及び混和剤の全量、セメントと混和材を合わせた結合材のうち50質量%に相当する45.76kg、及び、細骨材の50質量%に相当する17.56kg、粗骨材の細骨材の50質量%に相当する29.72kgを100L練強制2軸ミキサー中に投入して練り混ぜた。
練り混ぜ後、23秒間で均一なスラリー状態が形成された。
(第2の練り混ぜ工程)
その後、ミキサーを一旦止めて残余の結合材45.76kg及び残余の細骨材17.56、粗骨材29.72kgをミキサーに投入してさらに練りまぜたところ、49秒後に均一なスラリー状態のコンクリート組成物を得た。
即ち、本実施形態では、練り混ぜは、第1の練り混ぜで、水全量+混和剤全量+(結合材+粗骨材+細骨材)のそれぞれ半量を添加し、第2の練り混ぜで、(結合材+粗骨材+細骨材)のそれぞれ半量を追加して行った。
【0034】
このとき、ミキサーに掛かる負荷電流を測定することで、練り混ぜに要するエネルギーを計測した。図1は、実施例1のコンクリート組成物の練り混ぜ時に、調製ミキサーに掛かる負荷電流を示すグラフである。2工程の練り混ぜを行うことで、速やかにスラリー状態の組成物を得られることがわかる。
均一なスラリー状態のコンクリート組成物を得るまでに要したエネルギーは、1611A・秒であった。
【0035】
得られたコンクリート組成物のワーカビリティを測定したところ、空気量2.7%であり、JIS A1101(1998年)に準拠して測定したスランプフローは67.5×62.5(cm)であり、JIS R5201(1997年)に準拠して測定した粘度は、50cmフロータイムで34秒、Lフロー初期値V1は2.4m/s、V2は2.7m/sであり、打設に適切な流動性を有することがわかった。
【0036】
(コンクリート成形体の製造)
得られたコンクリート組成物を直径100mm、高さ200mmの型枠に打設し、標準水中養生を行って、材齢28日間のコンクリート成形体を得た。得られたコンクリート成形体の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定したところ、155.1N/mmであり、高強度の成形体であることが確認された。また、同様の成形体を90℃3日間の蒸気養生にて硬化させたところ、圧縮強度は259.4N/mmであり、蒸気養生によっても高強度の成形体が得られることが確認された。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1と同様の使用材料を同量用いて、コンクリート組成物を調整した。調整には、実施例1で用いたのと同様なミキサーを用い、すべての材料をミキサー中に投入して1工程で練り混ぜを行い、比較例1のコンクリート組成物を調整した。
図2は、比較例1のコンクリート組成物の練り混ぜ時に、調製ミキサーに掛かる負荷電流を示すグラフである。1工程の練り混ぜによれば、実施例1におけるよりも、均一なスラリー状態の組成物を得るまでに1.5倍ほどの時間が掛かることがわかる。
均一なスラリー状態のコンクリート組成物を得るまでに要したエネルギーは、2252A・秒であり、実施例1に比べ、より多くのエネルギーを要することがわかる。
【0038】
得られたコンクリート組成物のワーカビリティを、実施例1におけるのと同様に測定したところ、空気量2.3%であり、スランプフローは62.5×63.5(cm)であり、粘度は、50cmフロータイムで37秒、Lフロー初期値V1は4.9m/s、V2は2.7m/sであり、実施例1におけるものと同程度の流動性を有することがわかった。
【0039】
(コンクリート成形体の製造)
得られたコンクリート組成物を実施例1と同様の型枠に打設し、標準水中養生を行って、材齢28日間のコンクリート成形体を得た。得られたコンクリート成形体の圧縮強度を測定したところ、161.8N/mmであり、高強度の成形体であることが確認された。また、同様の成形体を90℃3日間の蒸気養生にて硬化させたところ、圧縮強度は252.7N/mmであり、蒸気養生によっても高強度の成形体が得られることが確認された。
実施例1と比較例1との対比より、実施例1の製造方法によれば、水/結合材比の低いコンクリート組成物を用いて、従来品と同等の優れた圧縮強度を有する成形体を、より短時間で、より低エネルギーで製造しうることがわかる。
【0040】
〔実施例2〕
(コンクリート組成物の調製)
[使用材料]
セメント:シリカフュームセメント(三菱マテリアル社製)比重3.08
水:水道水
細骨材:山梨県大月産 安山岩砕砂 密度2.61 吸水率2.48
減水剤:チューポールSSP(竹本油脂社製)
単位水量:162kg/m、水結合材比が0.10となるコンクリート組成物を調製する。
【0041】
上記組成のうち、結合材であるセメントを等量に2分割し、実施例1と同様にして、第1の練り混ぜ工程、第2の練り混ぜ工程において、それぞれ半量ずつ添加してコンクリート組成物を調整した。
第1の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の混合物を得るのに要した時間を測定したところ、45秒であり、第2の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の組成物を得るように要した時間は75秒であり、均一なコンクリート組成物を得るのに要した時間は、120秒であった。
【0042】
得られたコンクリート組成物のワーカビリティについて、実施例1と同様にして空気量とスランプフローを測定した。結果を下記表1に示す。
また、得られたコンクリート組成物を用い、実施例1と同様の条件にて、標準水中養生及び蒸気養生にて硬化させ、コンクリート組成物を得て、成形体の圧縮強度を測定した。
【0043】
〔比較例2〕
実施例2と同様の使用材料を同量用いて、コンクリート組成物を調整した。調整には、実施例1で用いたのと同様なミキサーを用い、すべての材料をミキサー中に投入して1工程で練り混ぜを行い、比較例2のコンクリート組成物を調整した。
比較例2において、均一なコンクリート組成物を得るのに要した練り混ぜ時間は、150秒であった。
比較例2により得られたコンクリート組成物について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に記載する。
【0044】
〔実施例3〕
(コンクリート組成物の調製)
[使用材料]
セメント:シリカフュームセメント(三菱マテリアル社製)比重3.08
水:水道水
細骨材:山梨県大月産 安山岩砕砂 密度2.61 吸水率2.48
減水剤:チューポールSSP(竹本油脂社製)
単位水量:149kg/m、水結合材比が0.09となるコンクリート組成物を調製する。
【0045】
上記組成のうち、結合材であるセメントを等量に2分割し、実施例1と同様にして、第1の練り混ぜ工程、第2の練り混ぜ工程において、それぞれ半量ずつ添加してコンクリート組成物を調整した。
第1の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の混合物を得るのに要した時間を測定したところ、51秒であり、第2の練り混ぜ工程において均一なスラリー状態の組成物を得るように要した時間は84秒であり、均一なコンクリート組成物を得るのに要した時間は、135秒であった。
【0046】
得られたコンクリート組成物のワーカビリティについて、実施例1と同様にして空気量とスランプフローを測定した。結果を下記表1に示す。
また、得られたコンクリート組成物を用い、実施例1と同様の条件にて、標準水中養生及び蒸気養生にて硬化させ、コンクリート組成物を得て、成形体の圧縮強度を測定した。
【0047】
〔比較例3〕
実施例3と同様の使用材料を同量用いて、コンクリート組成物を調整した。調整には、実施例1で用いたのと同様なミキサーを用い、すべての材料をミキサー中に投入して1工程で練り混ぜを行い、比較例3のコンクリート組成物を調整した。
比較例3において、均一なコンクリート組成物を得るのに要した練り混ぜ時間は、180秒であった。
比較例3により得られたコンクリート組成物について、実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に記載する。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に明らかなように、実施例2及び3の製造方法により得られたコンクリート組成物は、比較例にくらべて短時間かつ低エネルギーで均一なコンクリート組成物を得ることができた。また、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3との対比により、本発明の製造方法で得られたコンクリート組成物は空気量が少なく、これにより、組成物調製時の空気の巻き込み量が少ないことが裏付けられた。
また、本発明の製造方法により得られたコンクリート組成物を硬化させてなる成形体は、比較例により得られたコンクリート組成物を硬化させてなる成形体に比べ、標準的な水中養生のもの、蒸気養生のもののいずれも、圧縮強度がより高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例1のコンクリート組成物の練り混ぜ時に、調製ミキサーに掛かる負荷電流を示すグラフである。
図2】比較例1のコンクリート組成物の練り混ぜ時に、調製ミキサーに掛かる負荷電流を示すグラフである。
図1
図2