特許第5649796号(P5649796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649796毛髪処理剤組成物及びこれを用いる毛髪処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649796
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】毛髪処理剤組成物及びこれを用いる毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20141211BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20141211BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20141211BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20141211BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/891
   A61K8/41
   A61K8/42
   A61Q5/12
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2009-88288(P2009-88288)
(22)【出願日】2009年3月31日
(65)【公開番号】特開2010-235571(P2010-235571A)
(43)【公開日】2010年10月21日
【審査請求日】2012年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100103160
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 光春
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
【審査官】 橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−018419(JP,A)
【文献】 特開2007−153806(JP,A)
【文献】 特開平11−246366(JP,A)
【文献】 特開2008−290987(JP,A)
【文献】 特開2004−196749(JP,A)
【文献】 特開2007−015951(JP,A)
【文献】 特開2003−212746(JP,A)
【文献】 特開平05−178728(JP,A)
【文献】 特開2003−261427(JP,A)
【文献】 特開2000−119143(JP,A)
【文献】 特開2005−336136(JP,A)
【文献】 特開2006−248985(JP,A)
【文献】 特開2001−199844(JP,A)
【文献】 特開平06−087726(JP,A)
【文献】 特開2001−335436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が16〜22アルキル基を有する塩化アルキルトリメチルアンモニウム、炭素数が16〜22アルキル基を有する2鎖型の塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、カチオン化セルロース系ポリマー、重合性カチオン化ポリマー、ポリアミン型ポリマー、ポリアミノアミド型ポリマー、ポリ第4級アンモニウム型ポリマー、高分子変成型カチオン性ポリマー、及び、下記式(I)にて表される第三級アミン化合物
【化1】
[式中、Rは炭素数6〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Aは、アミド基又はエーテル基であり、Aの数を表すmは0若しくは1であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐鎖のヒドロキシアルキレン基又はヒドロキシアルキレニル基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。]
、からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性化合物を含む毛髪処理剤組成物を塗布した後の毛髪に塗布するための後処理剤組成物であって、下記の成分(1)及び(2)を含有することを特徴とする毛髪処理剤組成物。
(1)25℃において、0.2質量%の中性領域水溶液として1時間放置した場合の粘度は12000〜35000mPa・sであるカルボキシビニルポリマー、及び、同粘度が2000〜7500mPa・sであるカルボキシビニルポリマー;
(2)液状ジメチルポリシロキサンとゴム状ポリシロキサンを含むシリコーン油。
【請求項2】
ゴム状ポリシロキサンは、ゴム状ジメチルポリシロキサン、及び、ゴム状ジヒドロキシポリシロキサンの双方であることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項3】
さらにアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項4】
炭素数が16〜22アルキル基を有する塩化アルキルトリメチルアンモニウム、炭素数が16〜22アルキル基を有する2鎖型の塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、カチオン化セルロース系ポリマー、重合性カチオン化ポリマー、ポリアミン型ポリマー、ポリアミノアミド型ポリマー、ポリ第4級アンモニウム型ポリマー、高分子変成型カチオン性ポリマー、及び、下記式(I)にて表される第三級アミン化合物
【化2】
[式中、Rは炭素数6〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Aは、アミド基又はエーテル基であり、Aの数を表すmは0若しくは1であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐鎖のヒドロキシアルキレン基又はヒドロキシアルキレニル基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。]
、からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカチオン性化合物を含有する第1剤、並びに、下記の成分(1)及び(2)を含有する第2剤、からなり、毛髪への適用は、第1剤、第2剤の順序で行われることを特徴とする、2剤式毛髪処理剤組成物。
(1)25℃において、0.2質量%の中性領域水溶液として1時間放置した場合の粘度は12000〜35000mPa・sであるカルボキシビニルポリマー、及び、同粘度が2000〜7500mPa・sであるカルボキシビニルポリマー;
(2)液状ジメチルポリシロキサンとゴム状ポリシロキサンを含むシリコーン油。
【請求項5】
第1剤は、さらに高級アルコールを含有することを特徴とする、請求項4に記載の2剤式毛髪処理剤組成物。
【請求項6】
第2剤のゴム状ポリシロキサンは、ゴム状ジメチルポリシロキサン、及び、ゴム状ジヒドロキシポリシロキサンの双方であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の2剤式毛髪処理剤組成物。
【請求項7】
第2剤は、さらにアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有することを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載された2剤式毛髪処理剤組成物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載された第1剤、及び、請求項4〜7のいずれかに記載された第2剤、並びに、当該第1剤と同一の第3剤、からなり、毛髪への適用は、第1剤、第2剤、第3剤の順番で行われることを特徴とする、3剤式毛髪処理剤組成物。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれかに記載された第1剤を塗布した毛髪に、請求項4〜7のいずれかに記載された第2剤を塗布することを特徴とする、毛髪処理方法。
【請求項10】
第1剤を毛髪に塗布した後、第2剤を毛髪に塗布する前に、中間すすぎを行うか又は行わず、第2剤を毛髪に塗布した後にすすぎを行うことを特徴とする、請求項9に記載の毛髪処理方法。
【請求項11】
第1剤を塗布した後、若しくは、第1剤の塗布後の中間すすぎの後、第2剤を塗布する前の毛髪に、ヘアカラー処理及び/又はパーマネント処理を行うことを特徴とする、請求項9又は10に記載の毛髪処理方法。
【請求項12】
請求項4〜7のいずれかに記載された第1剤を塗布した毛髪に、請求項4〜7のいずれかに記載された第2剤を塗布し、さらに、当該第1剤と同一の第3剤を塗布することを特徴とする、毛髪処理方法。
【請求項13】
第1剤を毛髪に塗布した後、第2剤を毛髪に塗布する前に、中間すすぎを行うか又は行わず、第3剤を毛髪に塗布した後に、すすぎを行うことを特徴とする、請求項12に記載の毛髪処理方法。
【請求項14】
第1剤を塗布した後、若しくは、第1剤の塗布後の中間すすぎの後、第2剤を塗布する前の毛髪に、ヘアカラー処理及び/又はパーマネント処理を行うことを特徴とする、請求項12又は13に記載の毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤組成物とこれを用いる毛髪処理方法に関する発明であり、より詳細には、事前に毛髪に施したカチオンベースの基剤と接触させることにより、新たな複合体を毛髪上に形成させてトリートメント効果を充実させることが可能な毛髪処理剤組成物、及び、当該毛髪処理剤組成物を用いることによる、毛髪上における複合体形成を伴う毛髪処理方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
通常の毛髪の手入れは、シャンプー、リンス等を行うことで十分であり、これらの製品に適用するための種々の技術が提供されている。しかしながら、近年、毛髪のカラーリングや、太陽の紫外線の影響、さらには大気汚染等により、毛髪が過度に損傷する機会が増えつつある。これに伴い、毛髪の手入れについての関心や要望が高まりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、特に、損傷した毛髪の手入れを行うことが可能な手段を提供することを課題とする発明である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を受けて完成された発明であり、毛髪処理剤組成物、2剤式毛髪処理剤組成物、3剤式毛髪処理剤組成物、及び、これらの毛髪処理剤組成物を用いる毛髪処理方法、に関する発明である。以下、本発明の概要について説明する。
【0005】
第1に、本発明は、カチオン性化合物を含む毛髪処理剤組成物を塗布した後の毛髪に塗布するための、後処理剤組成物であって、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有することを特徴とする、毛髪処理剤組成物(本発明の毛髪処理剤組成物ともいう)を提供する発明である。
【0006】
第2に、本発明は、カチオン性化合物を含有する第1剤、並びに、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有する第2剤、からなり、毛髪への適用は、第1剤、第2剤の順序で行われることを特徴とする、2剤式毛髪処理剤組成物(以下、本発明の2剤式組成物ともいう)を提供する発明である。
【0007】
第3に、本発明は、カチオン性化合物を含有する第1剤、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有する第2剤、及び、カチオン性化合物を含有する第3剤、からなり、毛髪への適用は、第1剤、第2剤、第3剤の順番で行われることを特徴とする、3剤式毛髪処理剤組成物(以下、本発明の3剤式毛髪処理剤組成物(以下、本発明の3剤式組成物ともいう)を提供する発明である。
【0008】
第4に、本発明は、カチオン性化合物を含有する第1の毛髪処理剤組成物を塗布した毛髪に、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有する第2の毛髪処理剤組成物を塗布することを特徴とする毛髪処理方法、並びに、カチオン性化合物を含む第1の毛髪処理剤組成物を塗布した毛髪に、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有する第2の毛髪処理剤組成物を塗布し、さらに、カチオン性化合物を含有する第3の毛髪処理剤組成物を塗布することを特徴とする毛髪処理方法(以下、本発明の毛髪処理方法ともいう)を提供する発明である。
【0009】
本発明を毛髪に適用すると、毛髪上でカチオン活性剤とアニオン性増粘剤との複合体が形成されることにより、毛髪損傷等に対する、いっそう充実した手入れを行うことを可能とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、事前に毛髪に施したカチオンベースの基剤と接触させることにより、新たな複合体を毛髪上に形成させてトリートメント効果を充実させることが可能な毛髪処理剤組成物、及び、これを用いる毛髪処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪処理剤組成物](第2剤)
本発明の毛髪処理剤組成物は、本発明の2剤式組成物と3剤式組成物の第2剤に相当する組成物であり、本発明の毛髪処理方法における第2の毛髪処理剤組成物に相当する組成物である。ここの説明では、これらを代表して、本発明の毛髪処理剤組成物として説明を行う。
【0012】
<必須配合成分>
(1)アニオン性増粘剤
本発明の毛髪処理剤組成物に配合する増粘剤は、「カチオン活性剤と接触することによって複合体を形成する増粘剤」である。このような増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、架橋型N,N−ジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体、ポリアクリル酸・ポリアクリル酸アルキルブロック共重合体等が挙げられる。
【0013】
これらの増粘剤は、単独又は2種以上を組み合わせて、本発明の毛髪処理剤組成物に配合することができる。これらの増粘剤の本発明の毛髪処理剤組成物における配合量は、選択される増粘剤の種類によっても異なるが、概ね当該増粘剤の総量として、組成物の0.01〜3質量%程度が好適であるが、厳密にこれに限定されるものではない。上記の列挙された増粘剤の中でも、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは好適であり、特にカルボキシビニルポリマーは好適である。
【0014】
(a)カルボキシビニルポリマー(ポリアクリル酸架橋重合体)
本発明の毛髪処理剤組成物には、高粘度のカルボキシビニルポリマーと低粘度のカルボキシビニルポリマーの両者を配合することが可能である。これらの配合はいずれかが単独であっても、双方を組み合わせることも可能である。
【0015】
高粘度のカルボキシビニルポリマーとは、25℃において、0.2質量%の中性領域水溶液として1時間放置した場合の粘度は12000〜35000mPa・s、より好ましくは、15000〜25000mPa・sであるカルボキシビニルポリマーである。市販品としては、シンタレンK(和光純薬工業(株)販売)、ハイビスワコー104(和光純薬工業(株)製)、カーボポール5984(ノベオン社製)等が挙げられる。
【0016】
低粘度のカルボキシビニルポリマーとは、25℃において、0.2質量%の中性領域水溶液の粘度は2000〜7500mPa・s、より好ましくは4000〜6000mPa・sであるカルボキシビニルポリマーである。市販品としては、シンタレンL(和光純薬工業(株)販売)、ハイビスワコー105(和光純薬工業(株)製)、カーボポール1382(ノベオン社製)等が挙げられる。
【0017】
両カルボキシビニルピリマーの総量は、毛髪化粧料の0.01〜2質量%、好適には0.1〜1質量%である。この両カルボキシビニルポリマーの配合量が毛髪化粧料の0.01質量%未満であると、製剤の増粘が少なく安定性に問題を生じ、2質量%を超えると粘度が大きく過ぎて髪への広がりに問題を生ずる。
【0018】
(b)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
本発明の毛髪処理剤組成物には、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを配合して、高分子乳化を行うことにより、使用者が本発明の毛髪処理剤組成物を用いる際に、乳化粒子が破壊されるときの「転相感」を与えることが可能となる。
【0019】
本発明において、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体であり、例えば、PEMULEN TR-1、PEMULEN TR-2(日光ケミカルズ社)として市販提供されている。
【0020】
上記のように、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを、本発明の毛髪処理剤組成物に配合することにより、高分子乳化、さらには毛髪における複合体形成のいっそうの促進を行うことが可能である。当該高分子乳化により、本発明の毛髪処理剤組成物において、下記のシリコーン油分を、比較的多量に配合することも容易となる。当該高分子乳化の手法については後述する。
【0021】
本発明の毛髪処理剤組成物にアルキル変性カルボキシビニルポリマーを配合する場合の配合量は、好適には、組成物の0.01〜4質量%、特に好適には0.02〜2質量%である。当該配合量が組成物の0.01質量%未満であれば、十分に高分子乳化を行うことが困難であり、4質量%を超えれば増粘剤のべたつきが感じられるようになり、使用性上好ましくない。
【0022】
(2)シリコーン油
本発明の毛髪処理剤組成物に配合可能なシリコーン油としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂のうちから、適切なものを選択して用いることができる。シリコーンゴムとシリコーン樹脂は、適宜揮発性シリコーン等の相溶性が認められる溶媒に溶解した形態で用いることが好適である。シリコーン油分の中でも、好適なものとして、液状ジメチルポリシロキサン、ゴム状ジメチルポリシロキサン、及び、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0023】
(a)液状ジメチルポリシロキサン
本発明において、液状ジメチルポリシロキサンとは、液状のシリコーン油であり、二官能性(D)単位数の平均が4〜30の低重合の液状ジメチルポリシロキサンである。当該液状ジメチルポリシロキサンは、一般的に化粧料分野において用いられており、製造は常法により可能であり、市販品も容易に入手可能である。市販品としては、例えば、KF−96A−6cs(信越化学工業(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の毛髪処理剤組成物における液状ジメチルポリシロキサンの配合量は、組成物の0.1〜20質量%、好適には1〜15質量%である。当該配合量が組成物の0.1質量%未満であれば仕上がりの毛髪感触になめらかさが感じられず、20質量%を超えれば毛髪感触に油ぎしみやハリが感じられる傾向が強く、好ましくない。
【0025】
(b)ゴム状ポリシロキサン
本発明の毛髪処理剤組成物には、重合度が3000〜10000である高重合のゴム状ポリシロキサンを配合することができる。具体的には、(b−1)ジメチルポリシロキサンの両末端がメチル基であるゴム状ジメチルポリシロキサン、(b−2)両末端がヒドロキシル基に置換されたゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンを用いることができる。
【0026】
(b−1)ゴム状ジメチルポリシロキサン
本発明において、ゴム状ジメチルポリシロキサンは、常法、例えば、直鎖状のシリコーンポリマー、充填剤、分散剤等の熱処理混合物に対して、架橋剤と触媒等を作用させて製造することができる。これらの製造諸条件を当業者の自明な範囲において調整を行うことで、上記の粘度範囲のシリコーンゴムを調製することが可能である。市販品としては、例えば、シリコーンG−20−DMS、シリコーンG−30−IP(共に、信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。市販品のゴム状ジメチルポリシロキサンは、通常、適切な溶媒、例えば、低粘度ジメチルポリシロキサン、イソパラフィン等に溶解させた粘性液体として提供されている。
【0027】
(b−2)ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサン
本発明において、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンは、室温における粘度が2000〜10000mPa・sのガム状のジヒドロキシポリジメチルシロキサンである。当該ジヒドロキシポリジメチルシロキサンは、上記粘度となるように、二官能性(D)単位数の重合度を調整して、常法により製造することが可能である。また、市販品を用いることも可能であるが、市販品においては、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンは、溶媒中に溶解された状態で供給されることが一般的である。例えば、本発明において用いることが可能な市販品である、シリコーンXF49−C2070(GE東芝シリコーン社製)は、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサン20質量部が水添ポリブテン80質量部に溶解した状態で提供されている。
【0028】
本発明の毛髪処理剤組成物におけるゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンを配合する場合の配合量(純分)は、組成物の0.1〜10質量%、好適には0.2〜8質量%である。当該配合量が組成物の0.1質量%未満であれば毛髪感触に十分なしなやかさを付与出来ず、10質量%を超えれば毛髪感触にべたつきや重さを伴い、好ましくない。
【0029】
本発明の毛髪処理剤組成物にゴム状ジメチルポリシロキサンを配合する場合の配合量(純分)は、好適には、組成物の0.1〜10質量%、特に好適には0.2〜8質量%である。当該配合量が組成物の0.1質量%未満であれば、つるつる感を十分に製品に付与することが困難であり、10質量%を超えれば毛髪感触にべたつきや重さを伴い、好ましくない。
【0030】
また、上述のように、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとゴム状ジメチルポリシロキサン(純分)は、それぞれ単独で配合することが可能であるが、双方を組み合わせて配合することも可能である。この場合、特に好適な配合比は、質量比で、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサン:ゴム状ジメチルポリシロキサン=1:2〜2:1の範囲である。当該質量比が1:2よりもゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンが少ないと、当該ジヒドロキシポリジメチルシロキサンの積極配合による、毛髪のしなやかさが潜在化する傾向があり、2:1よりも当該ジヒドロキシポリジメチルシロキサンが多いと、ゴム状ジメチルポリシロキサンの配合による、毛髪感触のなめらかさが潜在化する傾向がある。
【0031】
(c)その他のシリコーン油
その他のシリコーン油分としては、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシクロシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサンメチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、環状シリコン樹脂、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、テトラデカメチルヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体等を挙げることができる。
【0032】
<選択的配合成分>
(1)水
本発明の毛髪処理剤組成物には、水を配合することができる。
【0033】
水は、精製水、イオン交換水、水道水、自然水等を用いることが可能であり、配合量は、本発明の毛髪処理剤組成物の必須配合成分である、上記の必須配合成分、及び、必要に応じて配合された選択的配合成分の全てが、適切な濃度となる量であり、概ね組成物全量に対して1〜99質量%の範囲であるが、これに限定されるものではない。水の配合量が過剰であれば、各配合成分の組成物における濃度が薄くなり過ぎ、本発明の効果を発揮し難くなり、過少であれば各配合成分の組成物における濃度が高くなり過ぎ、配合障害や原材料の無駄を招く傾向が強くなる。
【0034】
(2)その他の成分
本発明の毛髪処理剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲、例えば、配合成分中のアニオン性増粘剤が系中にて複合体を自発的に形成しない限り、において、他の添加成分を任意に配合し得る。このような成分としては、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、エステル油、各種界面活性剤、保湿剤、上記必須成分と選択成分以外の水溶性高分子又は増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤(アルカリ剤である、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等)、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、植物の抽出物等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0035】
<本発明の毛髪処理剤組成物の製造>
本発明の毛髪処理剤組成物は、例えば、水に水溶性成分を溶解し、油性成分を活性剤と添加しホモミキサー等で乳化処理を行い、必要であれば、アルカリ剤で増粘剤を中和して製造することができる。また、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いて高分子乳化を行う際は、水にアルキル変性カルボキシビニルポリマー、水溶性成分、他の増粘剤を溶解し、油性成分と必要に応じて活性剤を添加してホモミキサー等で乳化処理をし、アルカリで増粘剤とアルキル変性カルボキシビニルポリマーを中和して製造することができる。
【0036】
カチオン性化合物を含有する第1剤](第1剤)
カチオン性化合物を含有する第1剤は、本発明の2剤式組成物と3剤式組成物の第1剤に相当する組成物であり、本発明の毛髪処理方法における第1の毛髪処理剤組成物に相当する組成物である。ここの説明では、これらを代表して、第1剤として説明を行う。
【0037】
<第1剤の必須配合成分>
(1)カチオン性化合物
カチオン性化合物としては、例えば、炭素数が16〜22アルキル基を有する、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、同様の炭素数のアルキル基を有する、2鎖型の塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム等を挙げることができる。また、下記式(I)にて表される第三級アミン化合物を配合することも可能である。
【0038】
【化1】
【0039】
[式中、Rは炭素数6〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Aは、アミド基又はエーテル基であり、Aの数を表すmは0若しくは1であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、炭素数2〜4の直鎖若しくは分岐鎖のヒドロキシアルキレン基又はヒドロキシアルキレニル基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。]
【0040】
この第三級アミン化合物の典型的化合物(I)は、Rがステアリル基(オクタデシル基)であり、Aがエーテル基であり(m=0)、Rが2−ヒドロキシプロピル基(2価基)であり、R及びRが、共にメチル基である、N−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル)−N,N−ジメチルアミンである(製造方法は、特開2006−347996号公報を参照のこと)。
【0041】
また、カチオン性高分子としては、カチオン化メチルセルロース、カチオン化エチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化カルボキシメチルセルロース、カチオン化メチルヒドロキシプロピルセルロース等のカチオン化セルロース系ポリマー;アクリル酸やメタクリル酸のアミノアルキルエステルタイプ等の重合性カチオン化ポリマー;ポリアミン、ポリアミノアミド及びポリ第4級アンモニウム型のポリマー;キトサン等の高分子変成型カチオン性ポリマー、等が例示される。
【0042】
これらのカチオン性化合物の第1剤における配合量は、その剤形等に応じて変更可能であり、特に限定されないが、組成物に対して0.01〜10質量%、好適には0.1〜5質量%である。
【0043】
また、第1剤は、高級アルコール及び/または高級アルコール誘導体を含有することが好ましい。当該高級アルコール及び/または高級アルコール誘導体は、通常化粧品や医薬品等に使用されるものを用いることができる。高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、硬化ナタネ油アルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。これらの高級アルコール及び/または高級アルコール誘導体の第1剤における配合量は、その剤形等に応じて変更可能であり、特に限定されないが、組成物に対して0.1〜10質量%、好適には0.3〜8質量%である。
【0044】
なお、第1剤において、積極的に毛髪に対する栄養成分を配合することも、カラーリング等により損傷が激しい毛髪の手入れを行うには好適な態様である。当該栄養成分としては、例えば、各種加水分解タンパク液や、レシチン、各種アミノ酸やその誘導体等が挙げられる。
【0045】
第1剤は、本発明の毛髪処理剤組成物を塗布する前に、毛髪に施し、そのまま、又は、中間すすぎを行った後に、本発明の毛髪処理剤組成物を追加塗布することにより、毛髪上に、カチオン性化合物と本発明の毛髪処理剤組成物におけるアニオン性増粘剤の増粘剤との複合体が形成される。当該複合体が毛髪上に存在することにより、キューティクルが剥がれているような損傷の激しい毛髪に対して、十分な手入れを行うことが可能となる。
【0046】
第1剤として代表的な形態は、ヘアリンスである。すなわち、カチオン性化合物と共に、炭化水素油、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等の油分、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の保湿剤を含有するヘアリンスを第1剤とすることができる。
【0047】
このようにして、カチオン性化合物を含有する第1の毛髪処理剤組成物を塗布した毛髪に、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有する第2の毛髪処理剤組成物を塗布することを特徴とする毛髪処理方法、すなわち、本発明の毛髪処理方法が提供される。
【0048】
本発明の毛髪処理方法において、本発明の毛髪処理剤組成物を塗布する際には、毛髪は濡れていることが好ましい。また、後述する第3剤を用いない場合、本発明の毛髪処理剤組成物を塗布した後には、すすぎを行うことが好適である。
【0049】
本発明の毛髪処理方法は、通常の無処理毛髪に対して適用可能であり、さらに、ヘアカラー処理及び/又はパーマネント処理を行った毛髪に対しては、いっそう効果的である。
【0050】
カチオン性化合物を含有する第3剤](第3剤)
カチオン性化合物を含有する第3剤は、本発明の3剤式組成物の第3剤に相当する組成物であり、本発明の毛髪処理方法における第3の毛髪処理剤組成物に相当する組成物である。ここの説明では、これらを代表して、第3剤として説明を行う。
【0051】
上記した第1剤と第2剤を用いる本発明の毛髪処理方法に加えて、本発明は、第3剤を用いる毛髪処理方法、すなわち、カチオン性化合物を含む第1の毛髪処理剤組成物を塗布した毛髪に、アニオン性増粘剤及びシリコーン油を含有する第2の毛髪処理剤組成物を塗布し、さらに、カチオン性化合物を含有する第3の毛髪処理剤組成物を塗布することを特徴とする毛髪処理方法が提供される。この第3剤を用いる態様は、第1剤と第2剤のみを用いる態様の毛髪に対するコンディショニング効果をいっそう向上させ、特にタオルドライ後の毛髪の滑らかさが向上する。また、上記のヘアカラー処理及び/又はパーマネント処理を行い、ダメージを受けた毛髪の養生に最適である。
【0052】
<配合成分>
第3剤は、前述した第1剤と同様の形態・剤形とすることができる。例えば、第3剤には、第1剤と同様のカチオン性化合物を必須配合成分として含み、好適は、第1剤と同様の高級アルコール及び/または高級アルコール誘導体を配合し得る。また、第3剤は、ヘアリンス製剤として提供され得る毛髪処理剤組成物である。
【0053】
第3剤を用いた後は、すすぎを行うことが好適である。ただし、この場合、第2剤におけるすすぎは、必ずしも必要ではない。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明の実施例を記載するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。特に断らない限り、配合量は、配合対象に対する質量%であり、※付き番号を付した各種の市販品は、以下の処方において共通である。
【0055】
[A]シリコーン油分を配合しない毛髪処理剤組成物における検討
黒髪ストランドに、下記表1の処方のカチオン活性剤含有基剤1gを塗布して、下記表2−1と2に示した処方で、配合成分を混合することにより調製した各試験品を1g塗布した。なお、各種の市販品は、表1−1と表1−2において同じものを用いた。表中の「−」は「配合なし」を意味している。このような状況下、毛髪上における複合体の形成についての評価を加えて、実使用試験を行った。実使用試験は、上記パネルにおける「コンプレックス感」と「すすぎ感触」を、下記基準にて評価した。その結果を、併せて表2−1と2に示す。
【0056】
(コンプレックス感の評価)
◎+:コンプッレックスの生成量が多く、凝集を非常に感じる。
◎:コンプレックスの生成量が多く、凝集、ダマ感を十分に感じる。
○+:コンプッレックスの生成が見られ、凝集、ダマ感をさらに感じる。
○:コンプッレックスの生成が見られ、凝集、ダマ感を感じる。
○△:コンプレックスの生成は僅かに見られるが、凝集、ダマ感をやや感じる。
△:コンプレックスの生成は僅かに見られるが、凝集、ダマ感を感じない。
×:コンプレックスの生成がない。
【0057】
(すすぎ感触の評価)
◎+:全くきしまず、ツルツル感が強く感じられ指通りがとても良い。
◎:全くきしまず、つるつる感があり指通りが良い。
○+:きしまず、指通りが良い。
○:きしまず、指通りは問題ない。
○△:ややきしみ、指通りがあまり良くない。
△:ややきしみ、指通りが悪い。
×:きしみ、指通りが悪い。
【0058】
【表1】
【0059】
<製造方法>
水を80℃に加温し、カチオン活性剤、セタノールを添加溶解した後、その他成分を順次添加してホモミキサー処理を行い、室温まで冷却する方法で製造した。
【0060】
<本発明関連処方>
【0061】
【表2-1】
【0062】
【表2-2】
【0063】
本発明における第1剤と第2剤の重ね塗りにより、複合体が形成されて、いっそうの毛髪の保護に貢献することが可能であり、かつ、すすぎ感触にも優れていた。
【0064】
[B]シリコーン油分を配合した毛髪化粧料に関する検討
パーマネント施術を行ったパネル8名、及び、染毛施術を行ったパネル8名に対して、まず、カチオン活性剤を含む、上記表1の処方のカチオン活性剤含有基剤を塗布して、軽く洗い流した後、下記表3−1と2に示した処方の試験品を塗布して、複合体量の評価を含む実使用試験(a)とコーミングテスタによる試験(b)を行った。
【0065】
(a)実使用試験
各試験品を毛髪に塗布し、お湯ですすいで、(a−1)毛髪上における複合体の形成についての評価(複合体量の評価)、(a−2)その際の毛髪感触(すすぎ感触)、(a−3)その後10分程度のタオルドライ後の毛髪感触(タオルドライ感触)、(a−4)その後のドライヤーにより熱風風乾を行った後の毛髪感触(ドライ後感触)についての、実使用試験を行った。評価は、下記基準により行った。
【0066】
(a−1)毛髪上における複合体の形成についての評価
毛髪における複合体形成は、複合体が白色粒状で現れるため、毛髪の上での目視判定で行った。−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0067】
(a−2)すすぎ感触
水ですすいだ際の毛髪感触の評価について比較例2を基準として、−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0068】
(a−3)タオルドライ後感触
タオルドライ後の毛髪感触の評価について比較例2を基準として、−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0069】
(a−4)ドライ後感触
ドライ後の毛髪感触の評価について比較例2を基準として、−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0070】
<本発明の毛髪処理剤組成物に関連する処方>
下記の処方の試験品を、イオン交換水に増粘剤と水溶性成分を溶解し、油性成分を活性剤と添加しホモミキサーで乳化処理を行った後、アルカリ剤で増粘剤を中和することにより製造して、後述する各種の試験において用いた。
【0071】
【表3-1】
【0072】
【表3-2】
【0073】
【表3-3】
【0074】
(2)試験手法と試験結果
(a)実使用試験1
男女パネル12名に対して、通常のシャンプー(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム:10%)後、簡単に洗い流して、各試験品を毛髪に塗布し、お湯ですすいで、(a−1)その際の毛髪感触(すすぎ感触)、(a−2)その後10分程度のタオルドライ後の毛髪感触(タオルドライ感触)、(a−3)その後のドライヤーにより熱風風乾を行った後の毛髪感触(ドライ後感触)についての、実使用試験を行った。評価は、下記基準により行った。
【0075】
(a−1)すすぎ感触
水ですすいだ際の毛髪感触の評価について−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0076】
(a−2)タオルドライ後感触
タオルドライ後の毛髪感触の評価について−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0077】
(a−3)ドライ後感触
ドライ後の毛髪感触の評価について−3〜3までの7段階で評点を付け、パネルの平均値を−3〜−2:E、−2〜−1:D、−1〜1:C、1〜2:B、2〜3:Aとして結果を記載した。
【0078】
(b)コーミングテスタによる試験
200本の毛髪を束にした毛髪専用ストランドを用い、市販ハイブリーチ剤(ウーノファイバーインEXブリーチ(株式会社 資生堂製))でヘアダメージ処理をした後、上記の処方のカチオン活性剤含有基剤1gを塗布して、上記表3−1と2に示した処方で、配合成分を混合することにより調製した各試験品を1g塗布した。各サンプルを塗布してすすぎ〜ドライ後までの櫛通し荷重を、コーミングテスタを用いて測定した。結果を、表4−3において示す。
【0079】
【表4-1】
【0080】
実施例10〜13においては、コンプレックスを形成することですすぎ時〜ドライ後の感触を向上させることが出来、また高粘度と低粘度のカルボキシビニルポリマーを併用することで、タオルドライ〜ドライ後の感触をしなやか、なめらかに改善することが出来た。
【0081】
【表4-2】
【0082】
実施例14〜16では、コンプレックスを形成することで、すすぎ時の感触を向上させることが出来、また、ゴム状ジヒドロキシポリジメチルシロキサンを配合することで、特に、タオルドライ後の感触をしなやかに改善することが出来た。
【0083】
【表4-3】
【0084】
実施例17〜20において、カチオン性の基剤と併用することですすぎ時〜ドライ後までの櫛通り荷重を改善することが出来た。また、低粘度と高粘度のカルボキシビニルポリマーの併用ですすぎ時の櫛通り荷重が改善できた。
【0085】
以下、本発明に関連する処方例を、実施例と参考例として開示する。
【0086】
(1)本発明の毛髪処理剤組成物
[実施例21] ヘアートリートメント
【0087】
【表5】
【0088】
<製造方法>
イオン交換水に水溶性成分を溶解し、油性成分を活性剤と添加しホモミキサーで乳化処理を行った後、アルカリ剤で増粘剤を中和し製造した。
【0089】
[実施例22] ヘアートリートメント
【0090】
【表6】
【0091】
<製造方法>
精製水に水溶性成分を溶解し、油性成分を活性剤と添加しホモミキサーで乳化処理を行った後、アルカリ剤で増粘剤を中和し製造した。
【0092】
[実施例23] ヘアートリートメント
【0093】
【表7】
【0094】
<製造方法>
精製水に水溶性成分を溶解し、油性成分を活性剤と添加しホモミキサーで乳化処理を行った後、アルカリ剤で増粘剤を中和し製造した。
【0095】
[実施例24] トリートメントジェル
【0096】
【表8】
【0097】
<製造方法>
イオン交換水に水溶性成分を溶解し、油性成分を活性剤と添加しホモミキサーで乳化処理を行った後、アルカリ剤で増粘剤を中和し製造した。
【0098】
[実施例25] トリートメントジェル
【0099】
【表9】
【0100】
<製造方法>
実施例24に準じて、トリートメントジェルを調製した。
【0101】
(2)カチオン基剤(第1剤及び/又は第3剤として用いることができる)
上述のように、本発明におけるカチオン基剤は、第1剤として用いる場合には、事前に毛髪に施して、後に、本発明の毛髪処理剤組成物と接触させることにより、新たな複合体を形成し、これにより、いっそうのトリートメント効果を毛髪に与えることが可能である。第3剤として用いる場合には、第2剤により毛髪において新たに形成された複合体の上に、さらに保護層が形成されることにより、毛髪の保護を充実させることができる。
【0102】
[参考例1] カチオン基剤(1)
【0103】
【表10】
【0104】
<製造方法>
水を80℃に加温し、カチオン活性剤、セタノールを添加溶解した後、その他成分を順次添加してホモミキサー処理を行い、室温まで冷却する方法で製造した。
【0105】
[参考例2] カチオン基剤(2)
【0106】
【表11】
【0107】
<製造方法>
水を80℃に加温し、カチオン活性剤、セタノールを添加溶解した後、その他成分を順次添加してホモミキサー処理を行い、室温まで冷却する方法で製造した。
【0108】
[参考例3] カチオン基剤(3)
【0109】
【表12】
【0110】
<製造方法>
水を80℃に加温し、カチオン活性剤、セタノールを添加溶解した後、その他成分を順次添加してホモミキサー処理を行い、室温まで冷却する方法で製造した。
【0111】
[参考例4] カチオン基剤(4)(本基剤は、第3剤として用いることが好適である)
【0112】
【表13】
【0113】
<製造方法>
水を80℃に加温し、カチオン活性剤、セタノールを添加溶解した後、その他成分を順次添加してホモミキサー処理を行い、室温まで冷却する方法で製造した。
【0114】
なお、本剤は、第3剤として用いた。具体的には、毛髪に第1剤を塗布して洗い流し、第2剤を塗布して洗い流し、本剤を塗布してすすいで、タオルドライを行ったところ、コーミング試験において、毛髪のなめらかさが向上した。