【実施例1】
【0028】
1.全体構成
本発明に係る流体分配及び液体注出システムの一実施形態である流体分配及びビール注出システム(「ビール注出システム」という。)の構成について
図1を用いて説明する。
図1に係るビール注出システムは、ディスペンサ11、注出口12、ビール貯蔵樽21、炭酸ガスボンベ22、ビール貯蔵樽接続管27、炭酸ガス供給管29を有している。ビール貯蔵樽接続管27は後述する供給管
23の一部であるが、ディスペンサ外にあってビール貯蔵樽と接続されている。なお、本発明はビール以外の液体にも適用可能である。
【0029】
ビール貯蔵樽21はビールを貯蔵し、保存しており、ビール貯蔵樽接続管27を介してディスペンサ11と接続している。ディスペンサ11は、ビール貯蔵樽21が貯蔵するビールを、泡等を除去した後に注出口12から外部に配置されるビアジョッキ等に供給する。
また、ビール貯蔵樽21は、炭酸ガスボンベ22と炭酸ガス供給管29を介して接続している。ビール貯蔵樽21に貯蔵されているビールは、炭酸ガスボンベ22からの圧力によってディスペンサ11に供給される。炭酸ガスボンベ22は、ボンベ22a、圧力調整弁22b、及びハンドル22cを有している。ボンベ22a内に高圧縮され蓄積されている炭酸ガスは、ハンドル22cを操作することによって、炭酸ガス供給管29に供給される。ボンベ22aから炭酸ガス供給管29に供給される炭酸ガスは、ディスペンサ11から適切にビールが供給できるように、圧力調整弁22bによって適切な圧力に調整される。
【0030】
ディスペンサ11の内部構造について、
図2に示す模式図に基づいて説明する。
図2は、ディスペンサ11、ビール貯蔵樽21、注出口12を有しており、ビール貯蔵樽はビール貯蔵樽接続管27を介してディスペンサ11内の供給管23と接続している。なお、炭酸ボンベ22は供給管29を介してビール貯蔵樽と接続しているが、記載を省略している。ディスペンサ11内部は、供給管23、排出管25、流体ストッパ装置31、排出管開閉弁33、流体検知センサ35、ジョイント37、制御部41を有する。供給管23は、途中でループ状に湾曲したループ部を有している。
流体ストッパ装置31はかかるループ部を含む供給管路開閉装置である(後述)。流体ストッパ装置31によって、供給管23を介して注出口からジョッキ等にビールを供給することができる供給可能状態と、供給管23を介してビールを供給することができない供給不可能状態とを切り換える。排出管25は、ジョイント37を介して供給管23と分岐する。排出管は開閉弁33を有している。
【0031】
ビール貯蔵樽21はディスペンサの下に配置され、流体検知センサ35(後述)は、ビール貯蔵樽21の直近上部に配置されている。このように流体検知センサ35がビール貯蔵樽21からごく近い位置に供給されることによって、発生する泡等ビールの状態をいち早く検知することができる。
【0032】
流体ストッパ装置31、排出弁33及び流体検知センサ35は、制御コンピュータ41(後述)と接続されている。制御コンピュータ41は、流体検知センサ35の値を用いて、流体ストッパ装置31の動作等を制御する。
【0033】
2.流体ストッパ装置
流体ストッパ装置31、31−1、31−2の構造の概要について
図4を用いて説明する。なお、以下においては、流体ストッパ装置31について説明し、他の流体ストッパ装置については、流体ストッパ装置31と同様であるため、詳細な記載を省略する。
【0034】
図4では、流体ストッパ装置31のユニットケースV9の上蓋を取り外した状態を示している。流体ストッパ装置31が動作していない状態を
図4Aに示し、動作している状態を
図4Bに示す。
図4Aに示すように、流体ストッパ装置31は、ユニットケースV9−1内に、チューブ支持部V5−1、可動部V4−1、電動モータV6−1、継ぎ手V20−1、接合部V21−1、及び可動ステージV22−1を有している。
【0035】
可動部V4−1は、供給管
23のループ部V3−1の外形を圧接する。チューブ支持部V5−1は、可動部V4−1と対向する位置において供給管を支持し、可動部V4−1の動きに合わせて、ループ状の外形を維持したままループ部V3−1が移動してしまうことを防止する。電動モータV6−1は、可動部V4−1を駆動する。継ぎ手V20−1は、電動モータV6−1と可動ステージV22−1を接続する。接合部V21−1は、継ぎ手V20−1と可動ステージV22−1とを接合する。電動モータV6−1の動作は、制御コンピュータ41によって制御される。
【0036】
図4Bに示すように、電動モータV6−1は、制御コンピュータ41からの指示に従い、継ぎ手V20−1を矢印a3方向へ動作させる。これにより、接合部V21−1を介して可動ステージV22−1も矢印a3方向、つまりチューブ支持部V5−1側に向かって動作する。その結果、可動部V4−1がチューブ支持部V5−1側に近づき、供給管23のループ部V3−1を圧接する。これにより、供給管23を屈曲させた屈曲部V2−1を生じさせる。
【0037】
このように、流体ストーパー装置31は、可動部V4−1が供給管23のループ部V3−1を矢印a3方向へ押し付けることにより、供給管23に屈曲部V2−1を生じさせ、その結果、供給管23内をビールが流れることを遮断する。また、流体ストッパ装置31は、可動部V4−1を矢印a5方向へ引き戻すことにより、屈曲部V2−1を解消し、供給管23に元のループ部V3−1を形成して、再び供給管23内をビールが流れるようにする。なお、流体ストッパ装置31、31−1、31−2は、特開2008−256096の技術を用いたものである。
【0038】
流体ストッパ装置31を用いることによって、ビールに直接的に接触する構成要素を有する電磁弁等の従来の弁を、供給管23の途中に配置する必要がなくなる。したがって、スポンジ等の洗浄部材が弁に引っかかることがないので、供給管23の内壁を洗浄部材を用いて洗浄することができるようになる。これにより、ビール等の飲料物を提供するにあたり衛生管理を容易に行うことができるようになる。
【0039】
また、流体ストッパ装置31は、直接的にビールに接触する構成要素を有していない。よって、構成要素にビール等の成分が付着することによる動作の不具合が生ずるということがない。つまり、従来の弁のような分解洗浄等のように構成要素の定期的な洗浄作業を行う必要がなくなる。さらに、構成要素の動作にともなう摩擦や破損等による異物の混入を避けることができる。したがって、ビール等の飲料物を提供するにあたり衛生管理を容易に行うことができるようになる。また、構成要素にビール等の成分が付着することがないので、そのことによる雑菌等の繁殖は生じない。このため、ストッパ装置31を用いることによって、ビール供給システムの衛生状態を容易に良好に保つことができる。要するに、ビール供給システムの衛生管理及び動作保証を容易に行うことができる。なお、流体ストッパ装置31−1、31−2についても、同様である。
【0040】
3.ビール検知センサ
ビール検知センサ35、35−1、35−2の概要について
図5、
図6を用いて説明する。以下においては、ビール検知センサ35について説明し、他のビール検知センサについての説明は省略する。
【0041】
ビール検知センサ35の斜視図を
図5に示す。
図5Aは、筐体D9が閉じられて
供給管23に装着された状態を示し、
図5Bは、筐体D9が開かれた状態を示す。
図5Aに示すように、筐体D9の外面には表示部D10とスイッチD11が組み込まれている。
図5Bに示すように、筐体D9の内部には、投光素子D3と受光素子D4が組み込まれている。投光素子D3及び受光素子D4は、筐体D9が閉じられたときに、供給管23を挟んで対向するように配置されている。投光素子D3は赤外光を照射し、受光素子D4は赤外光を受光する。
【0042】
投光素子D3が照射する赤外光と
供給管23の内部の状態との相関関係を
図6を用いて説明する。
図6Aは
供給管23の内部空間ISが空気等の気体の状態(状態イ)を示し、
図6Bは
供給管23の内部空間ISが水等の液体の状態(状態ロ)を示す。
図6A、Bに示すように、状態イの場合、状態ロの場合と比べて、投光素子D3から照射された赤外光は拡散する。よって、状態イにおいて受光素子D4が受光する赤外光の受光量は、状態ロにおいて受光素子D4が受光する赤外光の受光量に比べて、相対的に小さくなる。これは、気体と液体との屈折率の差によるものである。
【0043】
また、
供給管23の内部を通過するビール等の液体内に気泡が発生している状態では、
供給管23の内部が液体の状態と気体の状態とが混合し、かつ、激しく入れ替わる。そのため、受光素子D4で受光する受光量が激しく変化する。この受光量の変化を分析することにより、気泡の発生状態をより確実に把握することが可能になる。
【0044】
このような受光素子D4における受光量の変化は、制御コンピュータ41において受光素子D4の受光信号を取得し、データ処理によって判断する。
なお、ビール検知センサ35、35−1、35−2は、特開2008−180643の技術を用いたものである。
【0045】
4.制御コンピュータ41
4.1.ハードウェア構成
制御コンピュータ41のハードウェア構成を
図7に示す。制御コンピュータ41は、CPU411、メモリ412、及び通信回路418を有している。
【0046】
CPU411は、メモリ412に記録されているビール供給プログラムに基づいた処理を行う。メモリ412は、CPU411に対して作業領域を提供する。また、メモリ412は、ビール供給プログラム、その他のデータを記録保持する。
【0047】
通信回路418は、ネットワークに接続する通信回路を有しており、流体ストッパ装置31、31−1、31−2、排出管開閉弁33及び流体検知センサ35、35−1、35−2と接続され、所定のデータの送受信を行う。
【0048】
4.3.制御コンピュータ41の動作
制御コンピュータ41は、流体検知センサ35から得られるデータに基づき判断するビール供給システムにおけるビールの供給状態に従って、流体ストッパ装置31の動作及び排出管開閉弁33を制御することによって、注出口から泡等のないビールを供給することを可能とする。
【0049】
前述の制御コンピュータ41の動作を実現する、制御コンピュータ41のCPU411の動作を
図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0050】
CPU411は、ビール検知センサ35から赤外線の受光量を示す受光データを取得する(S101)。CPU411は、取得した受光データに基づき、ビール検知センサが設けられている
供給管23の内部状態を判断する(S103)。
【0051】
CPU411は、流体検知センサ35からの受光データに基づき、ビール貯蔵樽21から泡が出だしたと判断すると、ビール貯蔵樽21からのビールの供給が終了すると判断し、流体ストッパ装置31を動作させ、供給不可状態とする(S105)。
【0052】
ここで、ビール供給システム1のユーザは、ビール貯蔵樽接続管27に接続されているビール貯蔵樽21を取り外し、新しく用意したビール貯蔵樽21−1とビール貯蔵樽接続管27とを接続し、ビール貯蔵樽21の交換を完了する(S107)。ユーザは、ビール貯蔵樽21の交換が完了すると、ビール貯蔵樽交換ボタンを操作する。
【0053】
CPU411は、ビール貯蔵樽交換ボタンからの交換完了情報を取得すると(S107)、排出管開閉弁33を動作させ、排出可能状態とする。(S109)これにより、ビール貯蔵樽21から発生した供給終了時の泡とビール貯蔵樽交換後の初期段階においてビール貯蔵樽21−1から供給される泡を併せて排出管25から排出することが可能となる。CPU411は、流体検知センサ35からの受光データに基づき、当該流体検知センサ35が配置されている位置において、泡でなくビールが流れていると判断すると、流体ストッパ装置31を開動作、排出管開閉弁33を閉動作させ、ビールを供給管に供給可能状態とする(S113)。これにより、ビールは注出管からジョッキ等に供給される。
【実施例2】
【0054】
1.全体構成
次に、別のビール注出システムについて
図2、
図9に基づいて説明する。実施例1と同様の態様については説明を省略する。
図2では、流体ストッパ装置が排出管との分岐点
直近(31−1)及び注出口12
直近(31−2)に計2基配設されている。また、流体検知センサも、ビール貯蔵樽21の直近上部(35−1)と排出管の分岐点近傍(35−2)に計2基配設されている。
【0055】
2.制御コンピュータ41の動作
制御コンピュータ41は、流体検知センサ35−1、35−2から得られるデータに基づき判断するビール供給システムにおけるビールの供給状態に従って、流体ストッパ装置31−1、31−2の動作及び排出管開閉弁33を制御することによって、注出口から泡等のないビールを供給することを可能とする。
【0056】
前述の制御コンピュータ41の動作を実現する、制御コンピュータ41のCPU411の動作を
図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0057】
CPU411は、ビール検知センサ35−1から赤外線の受光量を示す受光データを取得し(S201)。取得した受光データに基づき、流体検知センサが設けられている
供給管23の内部状態を判断する(S203)。
【0058】
CPU411は、流体検知センサ35からの受光データに基づき、ビール貯蔵樽21から泡が出だしたと判断すると、ビール貯蔵樽21からのビールの供給が終了すると判断し、流体ストッパ装置31−1及び31−2の双方を動作させ、閉状態としてビール供給不可状態とする(S205)。制御コンピュータの動作により供給管内のビールの供給がなされない状態となっても、注出口のコックは開いたままとなっているので供給管内のビールは注出口から一定量漏出し空気が供給管内に侵入するおそれがあるが、本実施例の態様では、注出口
直近の流体ストッパが他方の流体ストッパに連動して閉状態となっているので、両ストッパ間のビールが漏出するおそれはない。つまり、注出口
直近の流体ストッパが閉状態となることにより、注出口のコックが閉じられたのと同様の効果をもたらすこととなる。
【0059】
ビール貯蔵樽21の交換の完了(S207)後、CPU411は、ビール貯蔵樽交換ボタンからの交換完了情報を取得すると(S207)、排出管開閉弁33を動作させることにより(S209)、供給終了時の泡とビール貯蔵樽交換後の初期段階においてビール貯蔵樽
21から供給される泡を併せて排出管25から排出することが可能となる。CPU411は、流体検知センサ35−1及び35−2からの受光データに基づき、泡でなくビールが貯蔵樽から流れ出し、かつ当該ビールが排出管に到達して泡が完全に排出できていると判断(S211)すると、流体ストッパ装置33−1及び33−2を開動作、排出管開閉弁を閉動作させ、ビールを供給管に供給可能状態とする(S213)。排出管に配設された流体ストッパ33−2の情報も加えて総合的に流体の状態を判断することにより正確な判断を行うことができる。
【0060】
また、ビール貯蔵樽21を新しいものと交換し、ビール貯蔵樽接続管27と接続する際の接続操作に、ビール貯蔵樽21に接続するディスペンサヘッドのレバーを押し下げ操作に合わせて、接続開始情報を送信するようにしてもよい。レバーを押し下げるとビール貯蔵樽接続管27とビール貯蔵樽21とが完全に接続され、ビール貯蔵樽21から初期段階の泡が流れ始める。一方、レバーを押し下げ始めた段階では、ビール貯蔵樽接続管27とビール貯蔵樽21とは完全には接続されておらず、泡も流れでない。従って、この段階で接続開始情報を送信し、排出管開閉弁33を動作させることによって、ビール貯蔵樽21との完全な接続と同時に流れ出す泡を確実に排出管25へ導き、排出することが可能となる。
【0061】
図10に示すように、排出管の分岐点側口を供給管23の上部に位置させることにより、流体中の泡を排出管に誘導し易くすることも可能である。流体中の排出すべき泡や気体はビール等の注出すべき液体よりも比重が軽いため、
図10に示す構成により泡や気体の排出が確実に行われる。
【0062】
流体検知センサを1か所に複数基配設することも可能である。投光素子の光の屈折率を検知し、液体の種類等流体の状況をより正確に判断することができる。さらに、炭酸ガスボンベ供給管29に制御コンピュータにより制御される調節弁を設け、ビール貯蔵樽交換時にガス圧を低下させて炭酸ガスを効率的に使用したり、貯蔵樽内のビールの温度に対応した適切なガス圧に調整したりすることが可能となる。また、CPU411によって、圧力調整弁22bの動作制御を行うようにしてもよい。例えば、ジョイント37に温度センサを設け、温度センサの値によって、ボンベ22aから供給する炭酸の圧力を調整するようにする。これにより、季節や空調による温度変化に対応した圧力供給が可能になる。よって、ディスペンサ11から適切な圧力でビールを供給することができる。