(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649819
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】炉内での不活性ブランケットの製造
(51)【国際特許分類】
F27D 7/06 20060101AFI20141211BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
F27D7/06 B
F27D11/06 A
【請求項の数】28
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-529786(P2009-529786)
(86)(22)【出願日】2007年9月20日
(65)【公表番号】特表2010-505084(P2010-505084A)
(43)【公表日】2010年2月18日
(86)【国際出願番号】IB2007002738
(87)【国際公開番号】WO2008038087
(87)【国際公開日】20080403
【審査請求日】2010年9月16日
(31)【優先権主張番号】60/827,122
(32)【優先日】2006年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/829,114
(32)【優先日】2007年7月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ラ・ソーダ、テレンス・デー.
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−174516(JP,A)
【文献】
米国特許第03868987(US,A)
【文献】
英国特許第02004784(GB,B)
【文献】
英国特許第00900869(GB,B)
【文献】
独国特許出願公開第19518554(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/06
F27D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の溶融金属上に流体を運ぶシステムであって、
容器に固定されるために構成されたハウジングを具備し、
前記ハウジングは、その上端と下端との間に延びる中央開口を有するつばと、底近傍のつばの内側で画定され、環状またはC形状に形成され、冷却液体として不活性流体を収容し保持する溝と、をさらに含み、
前記つばの下端は、前記つばの上端に向けて上向きに広がる内側表面を有し、つばの上端と下端との間で終端する端を有する縁を形成し、
前記縁は、前記溝の一部を画定し、
前記溝は、前記中央開口との間で流体が流通する状態であり、
前記中央開口は、前記溝と前記容器の内側との間で流体が流通する状態であり、溝内での液体の蒸発から形成された不活性ガスの容器の内側への流れを行わせるシステム。
【請求項2】
入り口は、つばの外壁部部分から横切って広がる引き伸ばされた管を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
入り口に接続されたランス管をさらに具備し、前記管は、前記入り口を通って前記つば内に液体の状態で流体を運ぶために構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ランス管に接続された流体源をさらに具備する請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記流体源は、液体アルゴン、液体窒素および液体二酸化炭素の少なくとも一種を含む請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記流体源は液体アルゴンを含む請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記つばの下端は、前記つばの上端に向けて上向きに広がる内側表面を有し、上端と下端との間で終端する端を有する縁を形成し、前記縁は溝の一部を画定する請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記つばおよび入り口の少なくとも一つは、少なくともステンレススチールを含む1以上の材料から構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記つばは、連続した環状を有し、溝のための対応する連続した環状形状を画定する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記つばは湾曲し、互いに近接した二つの末端を有するC形状を有し、溝のための対応するC形状を画定する請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
上端に開口を有し、容器内に溶融金属生成物を保持するために構成された容器、および請求項1に記載のシステムを具備し、前記ハウジングの前記開口を前記容器の前記上端の開口と流体が流通する状態とし、前記ハウジングが前記容器の上端に配置されるように、前記システムは容器に固定される金属処理システム。
【請求項12】
前記ハウジングは、その上端と下端との間に延びる開口を有するつばと、底近傍のつばの内側で画定された溝とを含み、前記溝は環状またはC形状で前記開口と流体が流通する状態にあり、前記システムは、液体として流体を受け取るために構成され、容器に流体を運ぶ入り口をさらに含む請求項11に記載の金属処理システム。
【請求項13】
前記容器は、固体金属材料を加熱するために構成された誘導炉を含み、炉内で溶融金属生成物を形成する請求項11に記載の金属処理システム。
【請求項14】
前記つばの下端は、前記つばの上端に向けて上向きに広がる内側表面を有し、上端と下端との間で終端する端を有する縁を形成し、前記縁は溝の一部を画定する請求項12に記載の金属処理システム。
【請求項15】
前記入り口に接続されたランス管をさらに具備し、前記管は、前記入り口を通って前記つば内に液体の状態で流体を運ぶために構成される請求項12に記載の金属処理システム。
【請求項16】
前記ランス管に接続された流体源をさらに具備し、前記流体源は、液体アルゴン、液体窒素および液体二酸化炭素の少なくとも一種を収容している請求項15に記載の金属処理システム。
【請求項17】
容器内で処理される溶融金属の上方に蒸気の層を与える方法であって、
容器内の開口に近接して配置されたハウジング内に冷却液体として不活性流体を運ぶ工程であって、前記ハウジングは液体の蒸発を容易にして、ハウジングから容器内に蒸気の連続した流れを形成する工程、および
前記容器内で処理される前記溶融金属に向けて、前記容器内で前記蒸気の下向きの流れを行わせる工程を具備し、
前記ハウジング内で前記流体から形成される前記蒸気は、前記容器内で処理される前記溶融金属に対して不活性であり、
前記ハウジングは、その上端と下端との間に延びる中央開口を有するつばと、底近傍のつばの内側で画定された、環状またはC形状に形成され、液体として不活性流体を収容し保持する溝とを有する、方法。
【請求項18】
前記ハウジングは、前記容器内で環状またはC形状を有する蒸気の形成を容易にするために構成され、前記蒸気は前記容器内で適切な量で与えられ、さらに、前記容器内で前記材料の表面に向けて下向きに蒸気が流れる際に膨張するために構成され、実質的に前記材料の表面を覆う蒸気の層を、前記材料に近接した位置で形成する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ハウジングは、前記容器の上端に設けられたつばであって、その上端と下端との間にわたって延びる開口を有するつばと、前記下端近傍で前記つばの内側で画定された環状またはC形状を有する溝とを具備し、前記溝は前記開口との間で流体が流通する状態にあり、前記溝内への前記流体の移動は、
前記つばに接続された入り口を介して前記容器内に液体として前記流体を注入することを含み、前記流体は蒸発して、環状またはC形状の蒸気を形成し、容器内に流れる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記つばの下端は、前記つばの上端に向けて上向きに広がる内側表面を有し、上端と下端との間で終端する端を有する縁を形成し、前記縁は前記溝の一部を画定し、前記蒸気は前記縁の上方を通過して前記容器内に流れる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記つばは、連続した環状を有し、溝のための対応する連続した環状形状を画定する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記つばは湾曲し、互いに近接した二つの末端を有するC形状を有し、溝のための対応するC形状を画定する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記流体は、前記入り口に接続されたランス管を用いて前記溝内に注入される請求項19に記載の方法。
【請求項24】
流体供給源を介して前記ランス管に液体として前記流体を供給することをさらに具備する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記流体供給源は、液体アルゴン、液体窒素および液体二酸化炭素の少なくとも一種を含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記容器は誘導炉を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記容器は誘導炉を含む請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記流体は、アルゴン、窒素、および二酸化炭素の少なくとも一種を含む請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
背景
技術分野
本発明は、炉内の溶融金属浴の表面における極低温流体の不活性ブランケットの製造に関する。
【0002】
関連技術
鋳造溶融操作において、金属(鉄または非鉄)は、典型的に電気誘導炉内で溶融される。溶融された金属が酸素に曝されて、結果として生じる金属の酸化が金属酸化物を形成するのを低減または避けるために、不活性ガス(アルゴン、窒素または二酸化炭素のような)のカバーの下で金属を溶融することは、しばしば有利である。金属酸化物は、溶融金属から形成されるキャスト金属製品に有害である。また、不活性ガスのカバーは、溶融された金属が雰囲気からガス(例えば、酸素および水素)を吸収する傾向を低減して、それは空孔率のようなガスに関連したキャスティングの欠陥を低減する。溶融表面を不活性化することの他の利点は、低減されたスラグ形成、改善された金属流動性、高められた炉の耐火寿命、および脱酸素のための低減された必要性を含む。
【0003】
電気誘導炉は、一般的に、開口頂部、バッチ溶融ユニットである。全溶融プロセスの間にわたって、不活性ガスは典型的に、この開口頂部から適用される。多くの異なる炉の不活性化技術が利用される。二つの主な技術は、炉の頂部内に不活性ガスを吹き込むこと、および開口頂部において炉の中に不活性液体(極低温の状態で)を滴下または注入することを含む。ある種の液体不活性化技術において、液体アルゴンまたは液体窒素の不活性層は、溶融された金属表面の上方全体にわたって形成され、酸素および他のガスから金属を覆う。
【0004】
液体不活性化は、ガス不活性化よりしばしば好ましい。液体はガスより高い密度を有し、それゆえ、炉内の熱上昇気流に起因して上向きに強いられるより、むしろ、溶融された金属表面またはその近傍に留まりやすいからである。しかしながら、溶融された金属表面全体にわたって全てを覆うこと、または不活性層を与えるために極低温液体を利用することは、プロセスの間じゅうブランケットを維持するためにかなりの量の極低温液体を必要とし、これは、操作コストのかなり過剰の増大につながる。
【0005】
さらに、溶融された金属表面へ直接の極低温液体の直接適用による液体不活性化の使用は、熱い金属表面に冷たい液体が接触した際に、炉からの溶融金属のふきこぼれまたは吹き出しを引き起こす。これは、特に炉内の溶融金属について高いメニスカス形状が形成された炉において、炉操作者に特に危険である。
【0006】
効果的な不活性層を炉内の溶融金属表面の上方に達成でき、一方で必要とされる不活性物質の量を低減し、それによって溶融プロセスに関連した操作コストを削減できるシステムを提供することが望まれる。
【0007】
概要
容器内に流体を運ぶためのシステムがここに述べられる。システムは、容器に固定されるように構成され、流体を液体として受け取って収容する貯液槽を有するハウジングを含む。ハウジングは、貯液槽と容器内の内側との間に流体伝達を与えて容器内部へのガスの流れを促進するための開口をさらに含み、ガスは貯液槽内で液体の蒸発から得られる。
【0008】
典型的な実施形態において、システムハウジングは、その上端と下端との間にわたって広がる開口を有するつばと、その底近傍でつばの内側に画定された溝とを含み、前記溝は、環状または実質的に環状で開口と流体伝達にある。また、入り口が設けられ、これは、液体として流体を受け取り、環状溝内に流体を輸送するために構成される。
【0009】
さらなる具体的な実施形態において、システムは、溶融された金属を処理する炉(例えば、誘導炉)のような容器とともに用いるために構成され、システムは、容器内に流体蒸気を運んで、容器内の溶融金属の上方に不活性ブランケットまたは層を形成する。そのようなシステムにおいて、つばは、容器の開口頂端に固定され、容器内部へのおよび溶融した金属表面へ向かう蒸気の移動を促進する。
【0010】
システムは、限定されることなく、以下の特徴のいずれか一つまたは組み合わせの多数の異なる特徴を含むことができる:
つばの下端は内側表面を含み、それはつばの上端に向かって上向きに広がって、上端と下端との間を終端する単部を有する縁を形成し、縁は環状溝の一部を構成する;
入り口は、つばの外側側壁部から横切って広がる伸ばされた管を含む;
入り口に接続されたランス管、その管は、流体を液体の状態で入り口を通してつばの中に運ぶために構成される;
ランス管に接続された流体源、流体源は、液体アルゴン、液体窒素、および液体二酸化炭素の少なくとも一種を任意に含む;
つばは連続した環状形状を有し、それは、溝のための対応する連続した環状形状を画定する;
つばは湾曲し、互いに近接した二つの末端を有するC形状を有して、溝に対応するC形状を画定する;および
つばおよび入り口の少なくとも一つは、ステンレススチールを含む一またはそれ以上の材料から構成される。
【0011】
他の実施形態において、容器内に流体を輸送するためのシステムは、液体として流体を受け取り、蒸気として流体を容器内に輸送するための手段、および容器内に流体を輸送するための手段に液体として流体を供給するために構成された入り口を含む。
【0012】
具体的な実施形態において、液体として流体を受け取り蒸気として容器内に流体を運ぶための手段は、容器の内側周壁部によって画定される断面形状の主要部分に順応して対応する形状を蒸気が有するように、容器内に蒸気を運ぶために構成される(例えば、主要部分は、容器の内側表面の横切る断面積の少なくとも50%である)。
【0013】
さらなる具体的な実施形態において、液体として流体を受け取るため、および蒸気として容器内に流体を運ぶための手段は、環状または実質的に環状の容器内に蒸気を運ぶために構成される。
【0014】
容器内で処理される材料の上方に蒸気ブランケットを与えるための方法もまた、説明される。方法は、容器内の開口に近接して配置されたハウジング内に液体として流体を運ぶことを含み、ハウジングは、液体の蒸発を促進してハウジングから容器内への蒸気の連続した流れを形成するために構成され、容器内で処理される材料に向かって、容器内での蒸気の下向きの流れを促進する。ハウジング内で流体から形成された蒸気は、容器内で処理される材料に対して不活性である。
【0015】
具体的な実施形態において、方法は、容器に流体を運ぶことをさらに含み、それは蒸発して容器内に蒸気の連続した流れを形成し、蒸気は容器内で環状または実質的に環状を形成し、蒸気は容器内で処理される材料に対して不活性なガスを含む。方法は、容器内で処理される材料に向けて、容器内に蒸気の下向きの流れを促進することをさらに含み、蒸気は、容器内で材料の表面部分に向けて蒸気が流れる際に広がるように構成されて、材料の表面部分を実質的に覆う材料に近接した位置において蒸気の層を形成する。
【0016】
方法は、限定されることなく、以下の特徴のいずれか一つまたは組み合わせの多数の異なる特徴を含むことができる。
【0017】
蒸気の連続した流れは、容器の上端に設けられたつばを用いて容器内に供給され、つばは、つばの上端と下端との間でつばをとおって広がる開口、および、下端近傍でつばの内側に画定された環状または実質的に環状の溝を含み、溝は開口と流体伝達にあり、方法は、流体を液体として、つばに接続された入り口を通して溝内に注入することをさらに具備し、流体は蒸発して環状または実質的に環状の蒸気の流れを形成し、それは容器内に流れる。
【0018】
つばの下端は、つばの上端に向けて上向きに広がる内側表面を含み、上端および下端の間を終端する端部を有する縁を形成し、この縁は環状溝の一部を画定し、蒸気は縁を通過して容器内に流れる;
つばは、連続した環状形状を有し、それは溝のための対応した連続した環状形状を画定する;
つばは湾曲し、互いに近接した二つの末端をともなうC形状を有し、対応する溝のためのC形状を画定する;
流体は、入り口に接続されたランス管で溝内に注入される;
流体供給源を介してランス管に液体として流体を供給すること、ここで、流体供給源は、液体アルゴン、液体窒素、および液体二酸化炭素の少なくとも一種を任意に含む;
容器は、誘導炉を含み、材料は溶融された金属を含む;および
つばおよび入り口の少なくとも一種は、ステンレススチールを含む一種以上の材料により構成される。
【0019】
上述およびさらなる特徴および利点は、特に添付の図面に関連して、それらの具体的な実施形態の以下の詳細な説明を考慮すると明らかになるであろう。図面における同一の参照符号は、同一の成分をさすために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】炉の上端に配置されたつばを含む溶融金属炉の断面図であり、それは、炉内で溶融された金属表面の上部に不活性層の形成を促進する。
【
図2】
図1のつばの斜視図であり、つばの切欠き部を有する。
【
図3】炉の上端に固定されたつばの他の実施形態を含む溶融金属炉の上面図であり、つばは不完全であるものの実質的に環状形状である。
【0021】
詳細な説明
システムは、炉、溶融金属浴および/または溶融金属輸送システム(例えば、取鍋、樋など)のような容器内で溶融金属材料の表面にガスの不活性ブランケットまたは層を与えるために、ここで説明される。システムは、任意の鉄(例えばステンレス)または非鉄(例えばアルミニウム)の溶融プロセスに用いることができる。加えて、システムは、容器内の任意の溶融材料または他の生成物の表面の上方に直接、不活性なカバー、ブランケットまたは層を形成して、容器内で処理される生成物に酸素および/または任意の他のガスが接触すること、反応すること、および/またはその中に吸収されるのを低減するまたは実質的に避けることが要求される任意のプロセスにさらに用いることができる。
【0022】
システム内で不活性またはブランケットの層を形成するために用いられるガスは、炉または容器内の溶融された金属または他の材料に対して不活性、および非反応性である例えば、溶融金属炉または容器内で用いるための不活性ガスは、アルゴン、窒素、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせとすることができる。アルゴンは好ましい不活性ガスである。それは、ガスの状態では液体状態の数倍に膨張し、窒素および二酸化炭素と比較して空気より重いからである。
【0023】
システムは、任意の適切なハウジング、モールド、容器(例えば炉)に固定されるまたは固定可能な入れ物または他の構造を含み、適切な量の液体冷却剤を収容する貯液槽を含み、液体冷却剤は構造内で蒸発して、容器内で用いられる不活性ガスを形成する。構造は、貯液槽と一体になり不活性ガスの出口を与えるための開口をさらに含み、不活性ガスは構造を離れて容器内で処理される材料の表面に向かって容器内に下降し、材料表面をカバーまたは覆う。
【0024】
具体的な実施形態において、システムは、容器内を移動するための不活性ガスの実質的に環状またはリング状の蒸気を発生することが可能な任意の適切な構造を含み、不活性ガスのリングは、容器の内側の周壁部分に沿ってまたはその近傍を、生成物(例えば溶融された金属材料)の表面に向かって移動する。好ましくは、システムは、環状または実質的に環状の部材またはつばを含み、それは、容器の開口頂部の上方にはめ込むのに適切な寸法であり、冷却液体の供給源に接続される。冷却液体は、つばの中で蒸発して環状またはリング状の不活性ガスを実質的に形成し、つばから容器の中に落ちて膨張し、容器内の生成物の表面の上方に不活性ブランケットを形成する。
【0025】
つばは、連続した環状またはリング状を有することができる。あるいは、つばは、一つ以上の不連続で分離された部分であるが実質的な環状(例えば、つばは“C”形状または二つの別個の部分、三つの別個の部分、または後述するように一般的にリング状部材を画定するそれ以上の部分から形成することができる)で形成することができ、それによって、つばから形成されるガスが実質的に環状またはリング状となるようにする。こうして、システムは、環状または実質的に環状の不活性ガスの流れを、容器の頂部から容器内の生成物に向けて運ぶことができる任意の適切な構造を含むことができる。
【0026】
しかしながら、上述したように、システムが環状または実質的に環状のガスの流れを与えるために構成されることは必要ではない。むしろ、システムは、冷却液体の貯液槽またはプールから任意の形状で不活性ガスを与えることができ、冷却液体は、構造内で供給され、構造から蒸発して浮上し、不活性ガスとして容器内で下向きに流れる。
【0027】
システムは、溶融金属が炉または容器内で形成され処理される開口頂部炉での使用に特に適切である。システムが使用され得る具体的な容器は、誘導炉(例えば、ロールオーバー誘導炉またはスモール誘導炉)を含み、それにおいては、金属を収容する坩堝または容器のまわりに加熱コイルが与えられ、容器内で溶融金属生成物を達成するための適切な温度に坩堝を加熱する。
【0028】
溶融金属表面の上方に不活性ガスのブランケットまたは層を与えるためのシステムの具体的な実施形態を、
図1および2を参照して説明する。システム2は、金属生成物を収容して加熱するために構成された開口頂部を有する炉4(例えば通常の誘導炉)の形状の容器を含み、炉
4内で溶融金属材料6を形成する。炉4は、金属生成物を収容して保持するために構成された坩
堝と、炉
4内で断熱および熱の保持のために坩堝を囲むライニン
グを含む。ライニングは、従来の誘導炉の場合のように、操作中に炉の加熱を促進するための加熱コイル(図示せず)をさらに含むことができる。
炉
4の寸法に依存して、メニスカスは、操作中に溶融金属の表面(図中に示されるような溶融金属材料6の湾曲した凸面8)で形成され、炉
4の頂部における開口と溶融金属表面の部分との間に比較的短い距離をもたらす。アルゴンのような冷却液体が炉
4内に供給されて、溶融金属表面の上方に不活性液体ブランケットを形成する場合、炉
4からの溶融金属の“噴出し”またはオーバーフローについてより大きな可能性があり(例えば、熱い金属表面への冷却液体の接触の間)、それにおいては、溶融金属表面の高いメニスカス形状が形成される。
【0029】
溶融金属表面の上方に不活性ブランケットを形成するための装置は、炉の開口上端につば10の形状を備える。つばは、ステンレススチールおよび/または、炉での操作のためさらには冷却液体を受け取って処理するのに適切な任意の他の材料から形成することができる。つば10は、一般的には環状またはリング状の形状を有し、つばの上端と下端との間にわたってつばに広がる中央開口を含み、それはつばの内側壁部により画定される。つばの下側外壁部分は、下端を囲んで上端まで上向きに広がる内側壁部分まで伸び、それは底から選ばれた距離で終端して下端と上端との間で下側の内部縁15を形成する。つばの底における外側および内側の壁部分は、互いに分離されて環状樋または溝12を下端に形成する。溝12は、冷却液体を受け取って保持するための貯液槽として構成され、冷却液体は、後述するようにつばを通して溝の中に注入される。さらに、溝内で液体の蒸発から形成された不活性ガスが縁15の上方を越えてつばの開口を通過して、後述するように炉内に通るように、溝12はつばの開口と流体伝達にある。溝の寸法および断面形状は、任意の適切な寸法および形状とすることができる。例えば、溝の断面は“J”形状を有することができ、それにおいては、“J”形状の垂直部分は、縁で終端して約3インチ(約7.6cm)から約5インチ(約12.7cm)の高さを有し、“J”形状の下側の断面部分は、約1インチ(約2.5cm)から約1.5インチ(約3.8cm)の寸法を有することができる。溝は、実質的に不活性ガス(液体から蒸発した)のみが容器内に流れるように、縁15の高さの下方のレベルで容器内への液体の流れを防止するためにさらに適切な寸法で構成される。
【0030】
つばは、炉4の頂部における開口の方法に適合するための適切な寸法であり、つばの中央開口が炉内の開口と揃った関係(好ましくは同軸的に揃う)のような寸法である。典型的に、通常の誘導炉は、約2インチ(約5cm)から約10インチ(約25cm)の範囲内の内径を有するサイズである。つばは、この範囲内の内径(つばの下端の対向した上向きの湾曲した内側壁により定義されるとき)を有するように適切に設計されるのが好ましい。特に、つばは、つばの下端で縁15を形成する下側の内壁部分が、一般的に炉坩堝5の内壁表面部分と同一面となるように、炉の内径に実質的に対応する内径をもって(例えば、
図1に示されるように)適切に設計することができる。
さらに、つばは、炉の頂部表面でつばの底を載せるように、炉にかみ合わせて構成される。つばは、任意の適切な締め付け構造を用いて炉に固定することができ、着脱可能に炉に固定される。あるいは、つばは、炉に永久的に取り付ける(例えば溶接によって)ことができる。または、炉と一体的に形成することができる(例えば、単一のユニットとして形成される)。
【0031】
つばは、流体供給源(例えば、加圧されたタンクまたは容器)から冷却液体を受け取るために配置された開口または出入り口を含む。開口または出入り口は、任意の適切なタイプおよび形状とすることができ、つばに沿った任意の一つ以上の適切な位置に配置されて、つばの底に配置された環状溝内への冷却液体の注入を促進する。
図1の実施形態において、伸びた管状の入り口16は、つば10の外側表面部分から横切って伸びて、フィッティング20または他の適切な接続構造によりランス管18に接続される。ランス管18は、任意の適切なタイプとすることができ、その縁に配置された任意の適切な相分離装置22(例えば40〜80μm散気装置)をさらに含むことができ、液体冷却剤の実質的に連続した流れが、選択された流量でランス端から現れるのを確実にする。ランス管18は、液体冷却剤供給源26(例えば、加圧された貯蔵容器)に接続される。上述したように、つばは、ステンレススチールまたは他の適切な材料から形成することができる。ランス管および接続構造もまた、同じまたは同様の材料から形成することができる。
【0032】
上述したように、処理される金属材料に対して不活性の任意の冷却液体(例えば、アルゴン、窒素、二酸化炭素等)を、つばの中に注入することができるが、その大きな膨張体積および空気に対する高い密度の点でアルゴンが好ましい。特にアルゴンは、約−302°F(−185℃)の蒸発温度において液体から気体に蒸発する際、その体積の840倍にも増加して膨張することができる。つばの底における環状溝の中での液体アルゴンの蒸発の結果として、炉の中で不活性ガスのブランケットをもたらすために、これは非常に有用である。
【0033】
ランスからつばの溝内への液体冷却剤(例えば液体アルゴン)の流量は、特定の用途についての多くのファクターに基づいて選択することができ、炉の寸法、極低温蒸気で覆われる溶融金増表面の表面積、保護される合金または金属の反応性、炉の周囲に与えられる換気のタイプ(すなわち、酸素および/または他のガスの炉からの引出し)、および炉の中で製造される金属生成物の品質指定などを含むが、限定されない。一般的に、つば内への液体冷却剤の流量は、炉内で露出された金属表面積に基づいて、約0.002 lbs/in
2から0.005 lbs/in
2(約0.14g/cm
2から約0.35g/cm
2)で与えられる溶融金属材料の体積ではなく露出した金属表面積に基づく流量の選択は、通常の実施とは異なることがわかる。さらに、つば内への液体冷却剤の流量は、システム操作の間、つばから発生してつばの中に落ちる蒸気のリングの連続的な形成を促進するために、つばの底における溝の中で冷却剤の液体リングが形成されて維持されるのを確実とするのに十分とすべきである。
【0034】
システム操作の間、つば10は、上述したような手法で炉4の開口頂部に与えられ、ランス管18は、つばの入り口16に固定されて、流体供給源26からつばの底における環状溝14への極低温流体(例えばアルゴン)の流れを促進する。溶融されるべき金属材料は、炉の坩堝5内に与えられ、加熱されて炉内で溶融金属6のプールを形成する。
【0035】
炉の操作の間の選択された時間において、極低温流体は、制御された流量でランス管18に向けられ、溝12内に液体14のリングを形成する。流量は、溝12が極低温液体の環で満たされたままであるように、および液体のレベルがつばの内側縁15の高さの下に保たれるように制御される。極低温液体は、溝12内で蒸発して密な蒸気またはガスの環を形成して縁15を越え、その後、溶融金属の表面8に向けて周壁部に沿って坩堝5内を落ちる(一般的には、
図1中に破線30で示されるような)。
【0036】
密度の高い蒸気は、炉の坩堝の周囲の内壁部分の周りに蒸気のカーテンを形成し、溶融金属の表面8に達するおよび/または向かって落ちる際に、炉の開口中心に向けて外側に膨張する。不活性蒸気は、より密度の低い空気および/または他のガスを溶融金属の表面から追放し、炉の開口頂部をとおしてガスを通過させる(
図1中に線34および矢印36により一般的に示されるように)。さらに、溶融金属の表面に達する際、蒸気は膨張して、表面8全体(
図1中に一般的に線32で示されるように)をカバーして、溶融金属表面を覆う不活性ガスの有効なブランケットまたは層を形成し、炉内で処理される溶融金属材料に酸素および/または他のガスが接触および/または浸透するのを抑制または妨げる。
【0037】
不活性ガスの膨張体積は、つば内に選択された流量で極低温液体が連続的に流れることによって、上述したように炉内で発生して維持される(すなわち、炉の周壁部に沿って落ちる蒸気のリングの連続した栓で)。密度の大きな不活性ガスは、初期的に、酸素および/または他のガスのようなより密度の小さいガスを押し出し、一方で溶融金属表面をカバーする不活性ブランケットまたは層を形成する。つば内への不活性液体の連続的な流れ、および炉の内周側壁部分に沿った不活性ガスの流れを形成する蒸発は、炉内での不活性ガス層の維持をさらに促進し、酸素および/または他のガスが炉の中に流れて溶融金属表面に接触するのを抑制または実質的に妨げる。特に、システムは、溶融金属表面の直上の位置(例えば、不活性ガス層の中)において、酸素濃度を体積で約0.5%〜約3%に低減し、そのような位置において他のガス(例えば水素)の濃度を低減することができる。
【0038】
こうして、上述したようなシステムは、容器内で処理される溶融金属または他の材料の表面のブランケットまたは覆うために、炉または他の容器内への不活性ガスの有効な移動を与える。システムは、他の通常のシステムより不活性度の低い流体をさらに利用することができる(例えば、アルゴンのような極低温流体の液体層が溶融金属層の上に形成されるシステムである。)さらに、システムは、炉からの溶融金属材料の“噴出し”の可能性を低減する点で安全である。それは、不活性化またはブランケットプロセスの間に、不活性液体と溶融金属との間に直接の接触が存在しないからである。
【0039】
本発明は、上述したような
図1および2に示したシステムに限定されないことが理解される。むしろ、システムは、容器内への不活性ガスの一般的に連続した流れを与え得る限り、任意の適切な手法で改良することができる。他のシステムは、環状または実質的に環状(例えば、“C”形状または組み合わせて一般的に環状を画定する別個の部分)の不活性ガスの一般的に連続した容器内への流れを与えるために設計することができ、そのシステムは、容器内で処理される材料に向かって不活性ガスが流れる際、ガス流が容器の内面壁部分に一般的に順応するように行なうことができる。
【0040】
例えば、上述した
図1および2に示したシステムのつばは、単一の連続した部分ではなく、一続きの別個の不連続の部分で構成することができる。別個の部品は、容器の上端に沿って互いに離された位置に配置することができる。そのような実施形態において、それぞれの別個の部分は、容器内への輸送のための不活性流体を受け取るそれぞれの入り口を含むであろう。別個の部品は、炉の頂部に沿って配列されて、実質的に環状の部材または部分的なつばを形成する。それぞれの別個の部品は、容器の内壁部分に一般的に対応する不活性蒸気の部分を生じるように構成することができ、それぞれの部分を組み合わせて容器の中に流れる実質的に環状の蒸気を形成し、それは容器の内壁断面プロファイルに実質的に対応する。別個の部分から形成された蒸気の部分は、内部の周壁に沿って容器内を落ちる際に膨張することができ、容器の内周壁に沿った連続した蒸気のリングを形成または実質的に形成する。
【0041】
あるいは、つばは、“C”形状のような不完全または部分的に開いているが実質的に環状の部材として構成することができ、同一または類似した形状を有するつばの中に対応する溝を有する。 “C”形状のつば10’の具体的な実施形態は
図3に示され、これにおいては、“C”形状のつばは炉4の上端に固定される。そのような実施形態は、例えばロールオーバー誘導炉システムに有用であり、それは、注ぎ口または縁(
図3中の注ぎ口40のような)を含むことができる。あるいは、
図1および2に示されるような連続したまたは閉じた環状またはリング状のつばを炉の頂部表面の上に配置するのが困難または不可能となる他の任意の形状を有することができる。
【0042】
対応する実質的に環状の(例えば“C”形状)の溝は、蒸気のカーテンを与え、それもまた実質的に環状であり、溶融金属表面に向けて容器内を下向きに流れ、下向きに流れる蒸気は、容器内の内側壁面部分に近接してまたは主要部分に沿って位置する(例えば、主要部分は、容器の横切る断面における内側表面積の50%以上である)。
【0043】
つば内(またはつば部分内)で形成された溝(または溝部)の形状について、また本発明のシステムを用いる形成された不活性ガスの対応する形状について、ここで用いられる場合、“環状”という用語は、システムによりその中でガスが形成される任意の形状をさし、容器の内壁面部分と一般的に順応して、それとともにかみ合いのためにシステムが構成される。例えば、環状溝は、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形などとすることができる。システムとともに用いられ得る典型的な容器は、炉または一般的に円筒状の形状を有する溶融金属容器であるが、非円筒状(例えば、長方形または多角形)の形状を有する容器を用いた使用のためにシステムは容易に改良できることに留意される。そのような状況において、溝およびつば内に設けられる対応する樋または溝は、容器の全断面形状の一部または全部として、同一または類似した幾何学形状を有するように構成することができる。一般的に矩形の容器のために“C”形状のつばがその中に与えられる構成において、つば(および対応する溝)は、実質的に連続した湾曲部材とする代わりに、三つの一般的な直線部分(接続直線部分における角部をもって)を有する“C”形状を形成するために構成することができる。
【0044】
環状または実質的に環状の形状は、容器内で処理される材料の表面の上方に不活性なブランケットまたは層を迅速に形成する不活性蒸気の有効な流れを容器内に与える一方で、またシステムは、その中で不活性蒸気が環状または実質的に環状ではなく形成される異なる形状にも有効とすることができる。さらに、蒸気が容器の内壁面部分に沿ってまたはその近傍を流れるような不活性な蒸気またはガスを与えることは、システムにとって必要とはされない。
ここで述べられるシステムに重要な特徴は、極低温液体を受け取って収容するための貯液槽を含む適切なハウジングまたは他の構造を与えること、および、極低温液体から蒸発した蒸気が容器内に流れて、容器内で処理される材料表面の上方に不活性ブランケットを形成するように、貯液槽と構造が取り付けられる容器内壁との間に流体伝達を与える開口をさらに含むことである。貯液槽内に収容された液体が貯液槽を離れず、むしろ、容器内に流入し材料表面に向けて落ちるために、開口を通してシステム内に離れる不活性な蒸気またはガスへの液体の蒸発を促進するためにシステムが設計されることは、さらに重要である。
【0045】
これらの特徴(上述したシステムのような)を達成するための適切な形状を有するシステムを与えることは、極低温液体の効果的な使用を促進し、それは、従来のシステム(炉内の溶融金属表面を不活性ガスで覆う従来のシステム)と比較して相当に少ない量で与えられる。さらに、そのような特徴を与えることは、容器内で材料表面が液体ではなく不活性ガスに接触することを確実にする。炉内で処理される材料が溶融金属の場合、溶融金属表面が液体ではなく不活性ガスに接触することは、炉からの溶融金属材料の“ふき出し”のおそれを制限または低減する。
【0046】
炉内に不活性ブランケットを形成する新規なシステムおよび対応する方法を述べたが、他の修正、変更および変形は、ここに述べた内容に基づいて当業者に示唆されることがわかる。それゆえ、そのような改良、変更および変形は全て、添付した特許請求の範囲内であることが理解される。