(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649822
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】N−アリル立体障害性第三アミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20141211BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
C07D401/14
!C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-537603(P2009-537603)
(86)(22)【出願日】2007年11月14日
(65)【公表番号】特表2010-510280(P2010-510280A)
(43)【公表日】2010年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2007062321
(87)【国際公開番号】WO2008061923
(87)【国際公開日】20080529
【審査請求日】2010年11月12日
(31)【優先権主張番号】06124615.3
(32)【優先日】2006年11月23日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】396023948
【氏名又は名称】チバ ホールディング インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】サラ,マッシミリアーノ
【審査官】
深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−315067(JP,A)
【文献】
特開昭59−049214(JP,A)
【文献】
特開平01−165555(JP,A)
【文献】
特開昭50−005434(JP,A)
【文献】
特開昭51−139841(JP,A)
【文献】
特表2000−501062(JP,A)
【文献】
特開2005−075728(JP,A)
【文献】
特開平04−208233(JP,A)
【文献】
特表2005−521631(JP,A)
【文献】
K. E. Atkins 他,Palladium Catalyzed Transfer of Allylic Groups,Tetrahedron Letters,1970年,43,3821-3824
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、
Rが
【化2】
を表し、
R1、R2、R3及びR4がメチル基を表し、
R5、R6、R7、R8及びR9が水素原子を表し、
R11がトリアジン環に結合する窒素原子を表す。)
で表される化合物の製造方法であって、
該方法は、
式II
【化3】
(式中、R、R
1、R
2、R
3及びR
4は先に定義されたものを表す。)で表される化合物を、触媒
であるパラジウム(テトラキストリフェニルホスフィン)、及び二酸化炭素の存在下で、式III
【化4】
(式中、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は先に定義されたものを表す。)で表される化合物と反応させることを含む、方法。
【請求項2】
式Iで表される化合物が、モノマーの、オリゴマーの、ポリマーの立体障害性アミン光安定剤の一部である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式IIIで表される化合物が、式IIで表される立体障害性第二アミンの各ユニットに対して等モル乃至100倍超過で使用される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
触媒であるパラジウム(テトラキストリフェニルホスフィン)が、式IIで表される立体障害性第二アミンの各ユニットに対して0.01乃至30モル%の量で使用される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
さらに溶媒が存在している、請求項1記載の方法。
【請求項6】
さらに塩基が存在している、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化、熱は光誘発分解に対して有機材料を安定化するために好適な、N−アリル立体障害性第三アミンの製造のための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アリル置換された立体障害性アミン光安定剤は、対応する立体障害性第二アミンから、塩基の存在下で高温にて、ハロゲン化アリルを用いてアルキル化することによって製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ハロゲン化アリルの価格は徐々に値上がりし、そしてこれらN−アリル安定剤の製造コストに大きな影響を与えている。ハロゲン化アリルの使用の更なる不利点は、この合成経路は、環境的に危険であり、除去が必要となる塩を副生成物として生成するという事実である。
【0004】
N−アリル立体障害性第三アミンを対応する立体障害性第二アミンから製造するためのハロゲン化物を使用しない方法は、従って高く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
触媒及び活性化因子としての二酸化炭素の存在下で、立体障害性アミンはアリルアルコールと反応して、所望のN−アリル立体障害性アミンを形成し得ることをがいまや見出されている。
【0006】
本発明は、従って、
式I
【化1】
(式中、
結合基Rは、それが直接結合する炭素原子及び窒素原子と一緒になって、置換された5−、6−、又は7員の環式環構造を形成し、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、夫々互いに独立して、炭素原子数1乃至8のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基を表し、
又はR
1とR
2はそれらが結合する炭素原子と一緒になって炭素原子数5乃至12のシクロアルキル基を表し、
又はR
3とR
4はそれらが結合する炭素原子と一緒になって炭素原子数5乃至12のシクロアルキル基を表し、
R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は、夫々互いに独立して、水素原子、炭素原子数1乃至8の
アルキル基、炭素原子数2乃至8のアルケニル基、非置換の又は炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換された炭素原子数5乃至12のアリール基;炭素原子数1乃至4のハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又は−COOR
10を表し;
そしてR
7とR
8は一緒になって化学結合をも形成し得、
R
10は炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数5乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数7乃至9のフェニルアルキル基又はフェニル基を表す。)
で表される化合物の製造のための改善された方法であって、
該方法は、
式II
【化2】
(式中、R、R
1、R
2、R
3及びR
4は先に定義されたものを表す。)で表される化合物を、触媒の存在下で、式III
【化3】
(式中、R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9は先に定義されたものを表す。)で表される化合物
と反応させることを含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
12以下の炭素原子を有するアルキル基は、枝分かれ又は非枝分かれの基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、2−エチルブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、1,3−ジメチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、1−メチルウンデシル基、ドデシル基又は1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル基である。
【0008】
5以下の炭素原子数を有するヒドロキシアルキル基は、好ましくは1乃至3の、特に1又は2のヒドロキシ基を有する枝分かれ又は非枝分かれの基であり、例えば、1−ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシプロピル基又は3−ヒドロキシブチル基である。
【0009】
炭素原子数5乃至12のシクロアルキル基は、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基又はシクロドデシル基である。
【0010】
2乃至8の炭素原子を有するアルケニル基は、枝分かれ又は非枝分かれの基であり、例えば、ビニル基、プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソブテニル基、n−2,4−ペンタジエニル基、3−メチル−2−ブテニル基又はn−2−オクテニル基である。
【0011】
アリール基はデバイ−ヒュッケル理論に従う基を表し;炭素原子5乃至12のアリール基として好ましいものはフェニル基及びナフチル基である。
【0012】
ハロゲン原子は例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0013】
炭素原子数7乃至9のフェニルアルキル基は、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α−ジメチルベンジル基又は2−フェニルエチル基である。ベンジル基及びα、α−ジメチルベンジル基が優先される。
【0014】
4以下の炭素原子を有するアルコキシ基としては枝分かれ又は非枝分かれの基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基又はイソブトキシ基である。
【0015】
R
1、R
2、R
3及びR
4がメチル基である式Iで表される化合物の製造方法は興味がある。
【0016】
R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9が水素原子である式Iで表される化合物の製造方法もまた
興味がある。
【0017】
式中、Rが
【化4】
であり、そして
R
11がトリアジン環に結合する窒素原子である、式Iで表される化合物の製造方法に特に興味がある。
【0018】
式中、
Rが
【化5】
であり、
R
1、R
2、R
3及びR
4がメチル基であり、
R
5、R
6、R
7、R
8及びR
9が水素原子であり、そして、
R
11がトリアジン環に結合する窒素原子である、
式Iで表される化合物の製造方法が好ましい。
【0019】
式Iで表される化合物がモノマーの、オリゴマーの又はポリマーの立体障害性アミン光安定剤の一部である、式Iで表される化合物の製造方法もまた好ましい。
【0020】
好ましくは、式IIIで表される化合物は、式IIで表される立体障害性第二アミンの各ユニットに対して、等モル乃至100倍過剰で、例えば1乃至50倍過剰で、好ましくは1乃至20倍過剰で、一般的には1乃至4倍過剰で使用する。
【0021】
好ましい触媒は金属触媒である。
パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、ニッケル、マンガン、鉄及びコバルト触媒からなる群から選択される金属触媒は興味がある。
【0022】
好ましくは、式Iで表される化合物の製造方法において、触媒は、式IIで表される立
体障害性第二アミンの各ユニットに対して、0.01乃至30モル%、好ましくは0.01乃至20モル%、一般的には0.1乃至10モル%の量で使用される。
【0023】
触媒がホスフィン配位子を含む金属触媒である、式Iで表される化合物の製造方法もまた興味がある。
【0024】
ホスフィンの例は式IV
P(Q)
3 (IV)
(式中、Qは同じもの又は異なるものであって、例えば1乃至10の炭素原子を有するアルキル基、4乃至10の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び/又は6乃至10の炭素原子を有するアリール基であり、例えばメチル基、ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基である。)で表される化合物である。好ましくは、少なくとも一つがアリール基であり、最も好ましくは、配位子がトリアリール基である。
【0025】
上記構造を有する適当な配位子の例は次の通りである:トリメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(m−スルホナトフェニル)ホスフィン(TPPTS)、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン(BINAP)。好ましい配位子はトリフェニルホスフィンである。
【0026】
好ましくは、配位子の量は金属原子あたり1乃至10モルである。特に好ましい配位子/金属原子の比率は2乃至6である。
【0027】
触媒がパラジウム(テトラキストリフェニルホスフィン)である式Iで表される化合物の製造方法は特に興味がある。
【0028】
式Iで表される化合物の製造方法は、さらに溶媒及び/又は塩基を含み得る。
【0029】
本方法において有用な溶媒は、例えば飽和及び芳香族炭化水素、ケトン、エステル、水又はアルコール、又はそれらの混合物である。好ましくは、溶媒は式III(アリルアルコール)で表される化合物であり得る。特に好ましい有機溶媒の例は、トルエン、キシレン、アセトン、メタノール又は酢酸エチルである。
【0030】
塩基は天然の無機物又は有機物である。特に興味ある塩基は、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン又はピリジンである。
【0031】
式Iで表される化合物を製造する本方法における反応温度は、例えば10乃至180℃であり、好ましくは20乃至140℃であり、そして圧力は1乃至30の絶対気圧であり、好ましくは1乃至15の絶対気圧である。
【0032】
更なる二酸化炭素又は別の不活性ガス又はそれらの混合物が存在する、式Iで表される化合物の製造方法もまた非常に特に興味がある。不活性ガスの例は、例えば窒素又はアルゴンである。好ましくは、不活性ガスの混合物は、二酸化炭素及び窒素を含みて使用される。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は本発明をさらに説明する。部又はパーセンテージは質量に関する。
【0034】
例1:化合物Aから出発する化合物101の製造
【化6】
【化7】
【0035】
メカニカルスターラー、コンデンサー及びCO
2を含むゴムバルーンが備え付けられた
丸底フラスコにおいて、7.0g(Mw 3889、ピペリジンユニット 23.27mmol)の化合物A[米国特許第6,117,995号明細書、実施例1に従って製造される]、2.7g(46.9mmol)のアリルアルコール、0.46g(0.4mmol)のパラジウム(テトラキストリフェニルホスフィン)及び2.37g(22.8mmol)のトリエチルアミンを、25mlのトルエンに加えた。混合物を50℃で22時間撹拌した。そして、粗反応物を
1H−NMRにて分析し、化合物Aの2,2,6,6−テ
トラメチルピペリジンユニットのN−H基の47%が対応するN−アリル基に変換され、したがって化合物101を形成したことも明らかにした。
【0036】
例2:化合物102の製造
【化8】
【0037】
メカニカルスターラーが備え付けられたオートクレーブにおいて、7.12g(10.0mmol)の2,4,6−トリス(N−n−ブチル−N−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−1,3,5−トリアジン、3.45g(60mmol)のアリルアルコール、0.57g(0.5mmol)のパラジウム(テトラキストリフェニルホスフィン)を、30mlのアセトンに加えた。そして、雰囲気をCO
2で飽和し、反応
混合物を30℃で60時間、勢いよく撹拌する状態を維持した。そして、粗反応物を
1H
−NMRにて分析し、2,4,6−トリス(N−n−ブチル−N−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−1,3,5−トリアジンの2,2,6,6−テトラメチルピペリジンユニエットのN−H基の70%が、対応するN−アリル基に変換され、したがって化合物102を形成したことも明らかにした。
【0038】
例3:化合物102の製造(実施例2の式参照)
メカニカルスターラーが備え付けられたオートクレーブにおいて、5.00g(7.0mmol)の2,4,6−トリス(N−n−ブチル−N−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−1,3,5−トリアジン、4.89g(84.2mmol)のアリルアルコールをトルエン25mlに加えた。そして0.16g(0.7mmol)の酢酸パラジウム、及び0.37g(1.4mmol)のトリフェニルホスフィンを窒素雰囲気下で維持された溶液に引き続いて加えた。反応混合物を80℃で16時間、勢いよい撹拌下で反応させた。そして、粗反応物を
1H−NMRにて分析し、2,4,6−トリス
(N−n−ブチル−N−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−1,3,5−トリアジンの2,2,6,6−テトラメチルピペリジンユニエットのN−H基の19%が、対応するN−アリル基に変換され、したがって化合物102を形成していることも明らかにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】米国特許第6,117,995号明細書