特許第5649824号(P5649824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649824
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】新規浸透移行性殺虫剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/90 20060101AFI20141211BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20141211BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20141211BHJP
   A01N 57/28 20060101ALI20141211BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20141211BHJP
   A01N 47/40 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   A01N43/90 101
   A01N25/00 102
   A01P7/04
   A01N57/28 F
   A01N51/00
   A01N47/40 Z
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2009-547072(P2009-547072)
(86)(22)【出願日】2008年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2008073165
(87)【国際公開番号】WO2009081851
(87)【国際公開日】20090702
【審査請求日】2011年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2007-329998(P2007-329998)
(32)【優先日】2007年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006091
【氏名又は名称】Meiji Seikaファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】堀越 亮
(72)【発明者】
【氏名】薮崎 光之
(72)【発明者】
【氏名】桜井 慎司
(72)【発明者】
【氏名】尾山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三冨 正明
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/129714(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/066153(WO,A1)
【文献】 特表2006−513233(JP,A)
【文献】 Applied and Environmental Microbiology,1995年,Vol.61, No.12,p.4429-4435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00−65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される化合物またはその塩の1種、もしくは2種以上の浸透移行のための有効量を、植物の種子、根、塊茎、球根、および根茎からなる群から選択される対象に適用し、
式(1)で表される化合物を植物内に浸透移行させること
を含んでなる、農園芸上の害虫の防除方法:
【化1】
[式中、
R1が、水酸基、または置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基を表し、
R2が、置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基を表し、
R3が、水素原子、
水酸基、
置換されていてもよいメチルカルボニルオキシ基、
または7位の水素原子が存在せずにオキソ基を表す]。
【請求項2】
R1およびR2が、置換されていてもよいC3-4環状アルキルカルボニルオキシ基である、請求項1に記載の方法
【請求項3】
R3が水酸基である、請求項2に記載の方法
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはその塩の一種、もしくは、2種以上の有効量を、植物の種子、根、塊茎、球根または根茎に、浸漬法、粉衣法、塗沫法、吹き付け、ペレット法または皮膜法により適用する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が植物の種子であり、請求項1に記載の化合物またはその塩を、種子100kg当たり1g〜10kg適用する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、土壌中または土壌上にある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物またはその塩を、耕地10アール当たり0.1g〜10kg適用する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物またはその塩の一種、もしくは、2種以上を水中に乳化または溶解した溶液を、土壌に潅注することにより適用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2007年12月21日に出願された日本国特許出願2007−329998号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【発明の背景】
【0002】
発明の分野
本発明は、新規な浸透移行性殺虫剤として用いられる農園芸用組成物およびそれを用いた防除方法に関する。
【0003】
背景技術
近年、残留農薬等のポジティブリスト制が施行され、飛散防止対策に大きな関心が寄せられている。浸透移行性を有する薬剤は、害虫防除のため、土壌、苗箱等に施用して通常用いることから、従来の茎葉散布技術と比較して、薬剤の周辺環境へ飛散を低減できる。また、農薬施用の省力化および安全性確保の観点からも、浸透移行性殺虫剤は、従来の茎葉散布技術と比較して優れる。例えば、浸透移行性を有する殺虫剤を植物の苗箱に処理するだけで殺虫効果を得ることができるため、農業従事者が薬剤処理に費やす労力を抑えることができる。また、浸透移行性殺虫剤は作物へ的確に処理できることから、農薬施用者への薬剤被爆を防ぐことができ、安全性確保の観点からも優れる。さらに、薬効面においても、浸透移行性殺虫剤を含む製剤に、例えば、放出制御能を加えることにより、茎葉散布処理製剤より長期残効性を有する製剤を提供できる。このような有用性から、近年、水稲および野菜市場を中心に、従来の茎葉散布技術等とは異なる農園芸用技術として、浸透移行性殺虫剤の開発が期待されている。
【0004】
一方、WO2004/060065号公報、Applied and Environmental Microbiology(1995), 61(12), 4429-35には、ピリピロペンA物質が、コナガ、チャイロコメノゴミムシダマシ、オオタバコガに対して殺虫効果を示すことが記載されている。
【0005】
また、WO2006/129714号公報には、下記の式(1)の化合物を含むピリピロペン系化合物群が、モモアカアブラムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、コナガ、オオタバコガに対して殺虫活性を示すことが記載されている。さらに、特開平4−360895号公報、Journal of Antibiotics (1993), 46(7), 1168-69、有機合成化学協会誌(1998), 56巻6号,478-488頁、WO94/09147号公報、特開平8−259569号公報、特開平8−269062号公報には、天然物またはその誘導体であるピリピロペン類と、それらのACAT(アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ)阻害活性について記載されている。
【0006】
このようにピリピロペン関連化合物の殺虫活性は、複数の文献が報告している。しかしながら、ピリピロペン関連化合物の内の特定の化合物群が浸透移行性を示すことや、それら化合物群の浸透移行性殺虫剤としての使用方法については、何ら記載されていない。
【0007】
また、これまでに多くの浸透移行性を有する殺虫剤が報告されているが、いずれも薬剤抵抗性虫種や難防除虫種が認められ、優れた浸透移行性の防除効果を奏する新規殺虫剤が依然として望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、今般、下記の式(1)で表される化合物またはその塩が、優れた浸透移行性の防除効果を示すことを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、農園芸用上有効かつ安全に使用することができ、優れた浸透移行性を有する薬剤およびそれを用いた防除方法の提供をその目的としている。
【0009】
そして、本発明による、浸透移行性殺虫剤は、下記の式(1)で表される化合物またはその塩の1種、もしくは2種以上を有効成分として含有するものである:
【化1】
[式中、
R1が、水酸基、
置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基、
置換されていてもよいC2−6アルケニルカルボニルオキシ基、
置換されていてもよいC2−6アルキニルカルボニルオキシ基を表し、
R2が、水素原子、
水酸基、
置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基、
置換されていてもよいC2−6アルケニルカルボニルオキシ基、
置換されていてもよいC2−6アルキニルカルボニルオキシ基を表し、
R3が、水素原子、
水酸基、
置換されていてもよいメチルカルボニルオキシ基、
または7位の水素原子が存在せずにオキソ基を表す]。
【0010】
また、本発明による農園芸上の害虫の防除方法は、式(1)で表される化合物またはその塩の1種、もしくは、2種以上の有効量を、土壌、養液栽培における養液、養液栽培における固形培地、植物の種子、根、塊茎、球根、および根茎からなる群から選択される対象に適用し、
式(1)で表される化合物を植物内に浸透移行させること
を含んでなる方法である。
【発明の具体的説明】
【0011】
定義
本明細書において、浸透移行性を有する薬剤(「浸透性殺虫剤」ともいう)とは、植物内に薬剤を浸透移行させ、これを吸汁・摂食する害虫を中毒死させる薬剤を意味する(新版「農薬の科学」(文永堂出版、山下恭平ら著)の第14頁参照)。
【0012】
また、本明細書において、基または基の一部としての「アルキル」、「アルケニル」、または「アルキニル」という語はそれぞれ、特に定義されていない限り、基が直鎖状、分岐鎖状、環状あるいはそれらの組み合わせのアルキル、アルケニルまたはアルキニルを意味する。また例えば、基または基の一部としての「C1−6アルキル」という場合の「C1−6」とは、該アルキル基の炭素数1〜6個であることを意味する。さらに環状のアルキルの場合はその炭素数は少なくとも3個であることを意味する。
【0013】
また、本明細書において、アルキル基が「置換されていてもよい」とは、アルキル基上の1またはそれ以上の水素原子が1またはそれ以上の置換基(同一または異なっていてもよい)により置換されていてもよいことを意味する。置換基の最大数はアルキル上の置換可能な水素原子の数に依存して決定できることは当業者に明らかであろう。これらはアルケニル基および、アルキニル基についても同様である。
【0014】
式(1)で表される化合物またはその塩
本発明による浸透移行性殺虫剤は、式(1)の化合物またはその塩を有効成分とするものである。式(1)の化合物が、優れた浸透移行性の殺虫活性を有することは意外な事実である。
【0015】
式(1)において、R1、および、R2が表す「C1-6アルキルカルボニルオキシ基」は、好ましくはC1-4アルキルカルボニルオキシ基であり、より好ましくは、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基またはC3-4環状アルキルカルボニルオキシ基である。このC1-6アルキルカルボニルオキシ基は、置換されていてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、C3-5シクロアルキル、トリフルオロメチルオキシ基またはトリフルオロメチルチオ基等が挙げられるが、好ましくはハロゲン原子またはC3-5シクロアルキルである。
【0016】
Rが表す「メチルカルボニルオキシ基」は、置換されていてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基またはトリフルオロメトキシ基等が挙げられるが、好ましくはハロゲン原子またはシアノ基である。
【0017】
R1および、R2が表す「C2-6アルケニルカルボニルオキシ基」は、好ましくはC2-4アルケニルカルボニルオキシ基である。このC2-6アルケニルカルボニルオキシ基は置換されていてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチルオキシ基またはトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0018】
R1および、R2が表す「C2-6アルキニルカルボニルオキシ基」は、好ましくはC2-4アルキニルカルボニルオキシ基である。このC2-6アルキニルカルボニルオキシ基は、置換されていてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチルオキシ基またはトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0019】
また、式(1)の化合物において、R1は、好ましくは水酸基または置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、より好ましくは水酸基または置換されていてもよいC3-4環状アルキルカルボニルオキシ基である。
また、式(1)の化合物において、R2は、好ましくは置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、より好ましくは置換されていてもよいC3-4環状アルキルカルボニルオキシ基である。
また、式(1)の化合物において、R3は、好ましくは水酸基、置換されていてもよいメチルカルボニルオキシ基、または7位の水素原子が存在せずにオキソ基であり、より好ましくは水酸基である。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、式(1)の化合物において、R1が、水酸基または置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、R2が、置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基である。
【0021】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、式(1)の化合物において、R1が、水酸基または置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、R3が、好ましくは水酸基、置換されていてもよいメチルカルボニルオキシ基、または7位の水素原子が存在せずにオキソ基である。
【0022】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、式(1)の化合物において、R2が、置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、R3が、水酸基、置換されていてもよいメチルカルボニルオキシ基、または7位の水素原子が存在せずにオキソ基である。
【0023】
また、本発明のより好ましい態様によれば、式(1)の化合物において、R1が、水酸基または置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、R2が、置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基であり、R3が、水酸基、置換されていてもよいメチルカルボニルオキシ基、または、7位の水素原子が存在せずにオキソ基である。
【0024】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、式(1)の化合物において、R1およびR2が、置換されていてもよいC3-4環状アルキルカルボニルオキシ基である。また、本発明の別のより好ましい態様によれば、上記式(1)の化合物において、R3が、水酸基である。上記態様における式(1)の化合物は、顕著な浸透移行性を有し、害虫防除において特に有利に利用しうる。
【0025】
より具体的には、好ましい式(1)の化合物としては、次の表1に示される化合物1〜7が挙げられる。なお、表1において各置換基R1、R2、R3はそれぞれ式(1)の置換基R1、R2、R3に対応する。
【表1】
【0026】
また、本発明にあっては、式(1)の化合物の塩も利用可能であり、その例としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩または酢酸塩などの農園芸上許容可能な酸付加塩が挙げられる。
【0027】
表1をはじめとする式(1)の化合物、および比較試験例で用いられる表6に示される化合物は、特許第2993767号(特開平4−360895号)公報、特開平8−259569号公報、WO2006/129714号公報、特許4015182号に記載の方法かそれに準じた方法で製造することができる。
【0028】
浸透移行性殺虫剤
式(1)の化合物またはその塩は、上述の通り、優れた浸透移行性の殺虫活性を有し、植物を吸汁・摂食する害虫の防除等において有利に利用することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、浸透移行性殺虫剤としての、式(1)で表される化合物またはその塩の使用が提供される。
【0029】
本発明の浸透移行性殺虫剤が、防除効果を示す農園芸上の害虫としては、鱗翅目害虫(例えば、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ、タマナヤガ、トリコプルシア属、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属等のヤガ類、ニカメイガ、コブノメイガ、ヨーロピアンコーンボーラー、ハイマダラノメイガ、シバツトガ、ワタノメイガ、ノシメマダラノメイガ等のメイガ類、モンシロチョウ等のシロチョウ類、アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ、コドリンガ等のハマキガ類、モモシンクイガ等のシンクイガ類、リオネティア属等のハモグリガ類、リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類、コナガ等のスガ類、ワタアカミムシ等のキバガ類、アメリカシロヒトリ等のヒトリガ類、イガ、コイガ等のヒロズコガ類等)、半翅目害虫(例えば、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ等のアブラムシ類、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ、チャノミドリヒメヨコバイ等のヨコバイ類、アカヒゲホソミドリカスミカメ、チャバネアオカメムシ、ミナミアオカメムシ、ホソヘリカメムシ等のカメムシ類、オンシツコナジラミ、タバココナジラミ等のコナジラミ類、クワシロカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、アカマルカイガラムシ等のカイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等が挙げられ、好ましくはアブラムシ類、カイガラムシ類、コナジラミ類、ヨコバイ類が選択される)、鞘翅目害虫(例えば、メイズウィービル、イネミズゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ等のゴミムシダマシ類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、キスジノミハムシ、ウリハムシ、コロラドポテトハムシ、ウェスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のハムシ類、イネドロオイムシ、アオバアリガタハネカクシ、シンクイムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ類、カミキリムシ類等)、ダニ目(例えば、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、オリゴニカス属等のハダニ類、トマトサビダニ、ミカンサビダニ、チャノサビダニ等のフシダニ類、チャノホコリダニ等のホコリダニ類、コナダニ類等)、膜翅目害虫(例えば、カブラハバチ等のハバチ類等)、直翅目害虫(例えば、バッタ類等)、双翅目害虫(例えばイエバエ類、イエカ類、ハマダラカ類、ユスリカ類、クロバエ類、ニクバエ類、ヒメイエバエ類、ハナバエ類、マメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、ナスハモグリバエ等のハモグリバエ類、ミバエ類、ノミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類等)、アザミウマ目害虫(例えば、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、カキクダアザミウマ等)、植物寄生性線虫(例えば、ネコブセンチュウ類、ネグサレセンチュウ類、シストセンチュウ類、イネシンガレセンチュウ等のアフェレンコイデス類、マツノザイセンチュウ等)などが挙げられ、これらの中で好ましい適用害虫は、半翅目害虫である。
【0030】
式(1)の化合物またはその塩を、浸透移行性殺虫剤の有効成分として用いる場合は、そのまま用いても良いが、通常は適当な固体担体、液体担体、ガス状担体、界面活性剤、分散剤その他の製剤用補助剤と混合して水和剤、顆粒水和剤、懸濁剤、フロアブル剤、粒剤、微粒剤F、粉剤、乳剤、EW剤、液剤、錠剤、油剤、エアゾール等の任意の剤型にして、組成物として使用する。
【0031】
固体担体としては、例えばタルク、ベンナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、バーミキュライト、ゼオライト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、酸性白土、軽石、アタパルジャイト、酸化チタン等が挙げられる。
【0032】
液体担体としては、例えばメタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、n−ヘキサン、ケロシン、灯油等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、ダイズ油、綿実油等の植物油類、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。
【0033】
また、ガス担体としてはLPG、空気、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル等が挙げられる。
【0034】
乳化、分散、展着等のための界面活性剤、分散剤としては、例えばアルキル硫酸エステル類、アルキル(アリール)スルホン酸塩類、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル類、多価アルコールエステル類、ジオクチルスルホコハク酸Na、アルキルマレイン共重合物、アルキルナフタレンスルホン酸Na、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のNa塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩または燐酸塩等が用いられる。
【0035】
さらに、製剤の性状を改善するための補助剤としては、例えばα化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、エポキシ化植物油等が用いられる。
【0036】
上記の担体、界面活性剤、分散剤、および補助剤は、必要に応じて各々単独で、あるいは組み合わせて用いられる。
【0037】
これらの製剤中の有効成分の含有量は、乳剤で通常1−75重量%、粉剤では通常0.3−25重量%、水和剤では通常1−90重量%、粒剤では通常0.5−10重量%が適当である。
【0038】
また、本発明の浸透移行性殺虫剤は、好ましくは植物の種子、根、塊茎、球根または根茎、より好ましくは種子に適用される。これら植物を適用対象とすることは、式(1)の化合物を植物内に効率的に吸収、浸透させ、浸透移行性殺虫効果を奏する上で有利である。
【0039】
植物
また、式(1)の化合物を浸透移行した植物は、それ自体が殺虫活性を有し、その植物を吸汁・摂食する害虫の防除において有利に利用することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、本発明の浸透移行性殺虫剤で処理された、種子、根、塊茎、球根および根茎から選択される植物が提供される。また、好ましい態様によれば、上記処理は、式(1)の化合物を植物内に浸透移行させることを含んでなる。
【0040】
防除方法
また、本発明の別の態様によれば、式(1)の化合物またはその塩の1種、もしくは、2種以上の有効量を、土壌、養液栽培における養液、養液栽培における固形培地、植物の種子、根、塊茎、球根、および根茎からなる群から選択される対象に適用し、式(1)の化合物を植物内に浸透移行させることを含んでなる方法が提供される。
【0041】
上記適用対象が、植物の種子、根、塊茎、球根または根茎である場合、適用方法の好適な例としては、式(1)の化合物の浸透移行を妨げない限り特に限定されないが、浸漬法、粉衣法、塗沫法、吹き付け法、ペレット法、皮膜法等である。
【0042】
また、本発明の好ましい態様によれば、上記適用対象は種子である。種子の場合、適用法としては、例えば、浸漬法、粉衣法、塗沫法、吹き付け法、ペレット法、皮膜法、くん蒸法が挙げられる。浸漬法は、液状の薬剤液の中へ種子を浸漬する方法であり、粉衣法には、乾燥状の種子へ粉状の薬剤を付着させる乾粉衣法と、軽く水に浸した種子を粉状の薬剤を付着させる湿粉衣法がある。また、懸濁状の薬剤を、ミキサー内で種子の表面へ塗布する塗沫法、種子表面へ吹き付ける吹き付け法がある。さらに、種子を充填剤と共に一定の大きさ・形へペレット化する際に、充填物に薬剤を混ぜて処理するペレット法や、薬剤を含んだフィルムを種子にコーティングする皮膜法、密閉容器内でガス化した薬剤により種子を消毒するくん蒸法が挙げられる。
【0043】
また、種子以外に、発芽後、または、土壌からの出芽後に移植される、発芽した植物、および、幼植物に施用することもできる。浸漬による全体または1部の処理によって、移植の前にこれらの植物を保護することができる。
【0044】
また、式(1)の化合物またはその塩を、植物の植栽等に用いる土壌に適用することも好ましい。土壌への適用方法としては、式(1)の化合物の浸透移行を妨げない限り特に限定されないが、好ましくは以下の方法が挙げられる。
【0045】
例えば、式(1)の化合物またはその塩を含む粒剤を土壌中また土壌上に適用することが挙げられる。好ましい土壌施用方法としては、散布、帯、溝、および植付け穴適用法である。ここで、散布処理は、処理しようとする面積全体にわたる表面処理、および、それに後続する土壌中への機械的な導入を包含する。
【0046】
また、式(1)の化合物またはその塩を水中で乳化または溶解した溶液を土壌に潅注することによって適用することも有利な土壌施用方法である。
【0047】
これら以外にも、好ましい適用例として、野菜、および、花き類の生産のための、水耕栽培および、砂耕、NFT(Nutrient Film Technique)、ロックウール耕などの固形培地耕栽培のような養液栽培システムにおける養液への適用がある。式(1)の化合物を、バーミキュライトを含む人工培土、および、育苗用人工マットを含む固形培地に直接適用できることも明らかである。
【0048】
また、上記適用工程において、式(1)の化合物またはその塩の有効量は、後続する浸透移行工程において、式(1)の化合物が植物内に浸透移行するのに十分な量が好ましい。
上記有効量は、化合物の性質、適用対象の種類および量、後続する浸透移行工程の長さ、温度等を勘案して適宜決定することができるが、例えば、種子の場合、式(1)の化合物またはその塩の量は、種子100kg当たり、好ましくは1g〜10kgであり、より好ましくは100g〜1kg適用される。 また、土壌に適用する場合、式(1)の化合物またはその塩の量は、耕地10アール当たり、好ましくは0.1g〜10kgであり、より好ましくは1g〜1kgである。
【0049】
また、本発明による防除方法にあっては、式(1)の化合物またはその塩を上記対象に適用した後、式(1)の化合物を植物内に浸透移行させる。
【0050】
上記浸透移行方法としては、特に限定されないが、例えば、式(1)の化合物が適用された土壌や培地、あるいは式(1)の化合物を含む薬液中で、種子、根、塊茎、球根、または根茎等の植物を、薬剤が植物内に浸透移行するのに十分な時間、植栽または浸漬することが挙げられる。また、浸透移行に十分な、薬剤適用量および期間を選択した場合には、式(1)の化合物を直接植物に適用し、この植物を静置することにより浸透移行工程を行うこともでき、本発明にはかかる態様も包含される。
【0051】
また、上記浸透移行における時間および温度は、適用対象、薬物の種類および量等に応じて、当業者によって適宜決定される。そして、浸透移行時間としては、特に限定されないが、例えば、1時間以上である。また、浸透移行における温度としては、例えば、5〜45℃である。
【0052】
なお、式(1)の化合物は他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して用いることもできる。混合可能な他の薬剤としては、具体的には、例えば、ペスティサイド マニュアル(The Pesticide Manual、第13版 The British Crop Protection Council 発行)およびシブヤインデックス(SHIBUYA INDEX 第10版、2005年、SHIBUYA INDEX RESEARCH GROUP 発行)に記載のものが挙げられる。
【0053】
より具体的には、殺虫剤では、アセフェート(acephate)、ジクロルボス(dichlorvos)、EPN、フェニトロチオン(fenitothion)、フェナミホス(fenamifos)、プロチオホス(prothiofos)、プロフェノホス(profenofos)、ピラクロホス(pyraclofos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos-methyl)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、デメトン(demeton)、エチオン(ethion)、マラチオン(malathion)、クマホス(coumaphos)、イソキサチオン(isoxathion)、フェンチオン(fenthion)、ダイアジノン(diazinon)、チオジカルブ(thiodicarb)、アルジカルブ(aldicarb)、オキサミル(oxamyl)、プロポキスル(propoxur)、カルバリル(carbaryl)、フェノブカルブ(fenobucarb)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、ピリミカーブ(pirimicarb)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、フラチオカルブ(furathiocarb)、ヒキンカルブ(hyquincarb)、アラニカルブ(alanycarb)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)、ベンスルタップ(bensultap)、ジコホル(dicofol)、テトラジホン(tetradifon)、シロマジン(cyromazine)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、ジシクラニル(dicyclanil)、ブプロフェジン(buprofezin)、フルベンジアミド(flubendiamide)、エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、イミダクロプリド(imidacloprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、クロチアニジン(c1othianidin)、アセタミプリド(acetamiprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、チアクロプリド(thiacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ピメトロジン(pymetrozine)、フロニカミド(flonicamid)、スピノサド(spinosad)、アベルメクチン(avermectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、ニコチン(nicotine)、エマメクチン安息香酸塩(emamectinbenzoate)、スピネトラム(spinetoram)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、クロルアントラニリプロール(chlorantraniliprole)、スピロテトラマット(spirotetramat)、レピメクチン(lepimectin)、メタフルミゾン(metaflumizone)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、トリアザメート(triazamate)である。より好ましい例としては、アセフェート、エチプロール、フィプロニル、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アベルメクチン、ミルベマイシンが挙げられ、より好ましい例としてはアセフェート、イミダクロプリドが挙げられる。
【0054】
混合可能な殺菌剤の望ましい例としては、例えば、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxym-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、オリザストロビン(orysastrobin)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、フロキサストロビン(fuoxastrobin)などのストロビルリン系化合物、トリアジメホン(triadimefon)、ビテルタノール(bitertanol)、トリフルミゾール(triflumizole)、エタコナゾール(etaconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、シプロコナゾール(cyproconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、シメコナゾール(simeconazole)のようなアゾール系化合物、ベノミル(benomyl)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、カーベンダジム(carbendazole)のようなベンズイミダゾール系化合物メタラキシル(metalaxyl)、オキサジキシル(oxadixyl)、オフラセ(ofurase)、ベナラキシル(benalaxyl)、フララキシル(furalaxyl)、シプロフラン(cyprofuram)のようなフェニルアミド系化合物、ヒドロキシイソキサゾール(hydroxyisoxazole)のようなイソキサゾール系化合物、フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)のようなベンズアニリド系化合物、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、ジメトモルフ(dimethomorph)のようなモルフォリン系化合物、フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)のようなシアノピロール系化合物、プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラルSメチル(acibenzolar-S-methyl)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、フェリムゾン(ferimzone)、フルアジナム(fluazinam)、シモキサニル(cymoxanil)、トリホリン(triforine)、 ピリフェノックス(pyrifenox)、フェナリモル(fenarimol)、フェンプロピディン(fenpropidin)、ペンシクロン(pencycuron)、シアゾファミド(cyazofamid)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、ボスカリド(boscalid)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、プロキナジド(proquinazid)、キノキシフェン(quinoxyfen)、ファモキサドン(famoxadone)、フェナミドン(fenamidone)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、フルオピコリド(fluopicolide)、ピリベンカルブ(pyribencarb)、カスガマイシン(kasugamycin)、またはバリダマイシン(validamycin)が挙げられる。特に望ましい例としては、ストロビルリン系化合物、アゾール系化合物、フェニルアミド系化合物が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において化合物4は、WO2006/129714号に記載されている方法により合成したものを用いた。
【0056】
合成例
合成例1:化合物5
特開平8−259569に記載されている方法により合成したPR-3(20 mg)とシクロプロパンカルボン酸(19 mg)を無水N, N−ジメチルホルムアミド(1 ml)に溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド 塩酸塩(84 mg)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(5 mg)を加えた。室温で6時間撹拌後、反応溶液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、化合物5の粗生成物を得た。これを分取薄層カラムクロマトグラフィー(Merck シリカゲル60F254 0.5 mm、クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製して、化合物5(9.0 mg)を得た。
【0057】
合成例2 化合物6
【化2】
化合物4 (20 mg)をジクロロメタン(1 ml)に溶解し、0℃でデスマーチンペルヨージナン(Dess-Martin Periodinane)(21 mg)を加え、そのまま2時間40分撹拌した。反応溶液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、得られた粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(Merckシリカゲル60F254 0.5 mm、アセトン:ヘキサン=1:1)にて精製することで、化合物6(5.4 mg)を得た。
【0058】
合成例3:化合物7
【化3】
【0059】
化合物4(50 mg)をトルエン(3 ml)に溶解し、室温で1,1’−チオカルボニルジイミダゾール(90 mg)を加え、2時間半加熱還流した。室温まで冷却した反応液に、水を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、得られた粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(Merckシリカゲル60F254 0.5 mm、アセトン:ヘキサン=1:1)にて精製することで、化合物a(41.1 mg)を得た。
【0060】
【化4】
【0061】
化合物a(41 mg)を、トルエン(2 ml)に溶解し、室温でトリノルマルブチル水素化スズ(20 mg)を加え、2時間半加熱還流した。室温まで冷却した反応液に、水を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、得られた粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(Merckシリカゲル60F254 0.5 mm、アセトン:ヘキサン=1:1)にて精製することで、化合物7 (3.5 mg)を得た。
【0062】
化合物5、6および7のH−NMRデータおよび質量分析データは、表2に示されるとおりであった。
【0063】
【表2】
【0064】
製剤例
製剤例1〔粒剤〕
化合物4 0.5重量%
アルキル硫酸塩 0.2重量%
α化デンプン 5重量%
クレー 94.3重量%
上記成分を均一に粉砕混合し、水を加えてよく練合した後、造粒乾燥して0.5%粒剤を得た。
【0065】
製剤例2〔水和剤〕
化合物4 5重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1重量%
ホワイトカーボン 5重量%
クレー 80重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 9重量%
上記成分を均一に混合し、粉砕して5%水和剤を得た。
【0066】
製剤例3〔顆粒水和剤〕
化合物4 20重量%
アルキル硫酸塩 0.5重量%
クレー 68.5重量%
デキストリン 5重量%
アルキルマレイン酸共重合物 6重量%
上記成分を均一に粉砕混合し、水を加えてよく練合した後、造粒乾燥して20%顆粒水和剤を得た
【0067】
製剤例4〔フロアブル剤〕
化合物4 5重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 6重量%
プロピレングリコール 7重量%
ベントナイト 1.5重量%
キサンタンガム1%水溶液 1重量%
シリコーン消泡剤KM―98 0.05重量%
水 加えて100重量%
上記配合からキサンタンガム1%水溶液と適当量の水を除いた全量を予備混合した後、湿式粉砕機にて粉砕した。その後、キサンタンガム1%水溶液と残りの水を加え100重量%としてフロアブル剤を得た。
【0068】
製剤例5〔乳剤〕
化合物4 1重量%
ソルベッソ150(エクソンモービル有限会社) 82.5重量%
テイカパワーBC2070M 8.25重量%
ソルポールCA―42 8.25重量%
上記成分を均一に混合、溶解して乳剤を得た。
【0069】
試験例
<土壌灌注処理試験>
試験例1 ワタアブラムシ防除試験
キュウリ苗に、水にて所定濃度に調製した製剤希釈液を土壌潅注により処理した。6日間、薬剤を根から吸収させた後、苗にワタアブラムシ成虫を5頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室に放置した。放飼6日後に葉上の寄生虫数を観察し、次式に従って密度指数を算出した。
密度指数=(処理区の寄生虫数/無処理区の寄生虫数)×100
【0070】
表3に示される通り、それぞれ製剤例2、製剤例3または製剤例1に記載の方法に準じて製造した、化合物4を含む5%水和剤、20%顆粒水和剤、0.5%粒剤は、ワタアブラムシに対して、浸透移行的に高い密度抑制効果を示した。
【0071】
【表3】
【0072】
試験例2 モモアカアブラムシ防除試験
ナス苗に、水にて所定濃度に調製した製剤希釈液を土壌潅注により処理した。5日間、薬剤を根から吸収させた後、これにモモアカアブラムシ成虫を3頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室に放置した。放飼5日後に葉上の寄生虫数を観察し、試験1と同様の式に従って密度指数を算出した。2反復。
表4に示される通り、製剤例2に記載の方法に準じて製造した化合物4を含む水和剤は、モモアカアブラムシに対して、浸透移行的に高い密度抑制効果を示した。
【0073】
【表4】
【0074】
<浸根処理試験>
試験例3 ムギクビレアブラムシ防除試験
播種後48時間後のコムギ苗根部を、10%アセトン水となる様に調製した薬剤液(100ppm)に72時間浸漬処理した。薬剤処理72時間後に、この苗に、ムギクビレアブラムシ幼虫を10頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室に放置した。放飼6日後に茎葉上の寄生虫数を観察し、試験例1と同様の式に従って密度指数を算出した。2反復。
その結果、表5に示したとおり、表1に記載の化合物1、2、3、4、5、6および7は、ムギクビレアブラムシに対して、浸透移行的に高い密度抑制効果を示した。
【0075】
【表5】
【0076】
比較試験 ムギクビレアブラムシ防除試験
表6に記載の化合物8、9について、試験例3と同様に、ムギクビレアブラムシ防除試験を実施した所、表7に示したとおり、化合物8、9は、密度抑制効果を示さなかった。
なお、表6において各置換基R1、R2、R3はそれぞれ式(1)の置換基R1、R2、R3に対応する。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
参考試験 モモアカアブラムシ防除試験
ポット栽培したキャベツから直径2.8cmのリーフディスクを切り抜き、5.0cmシャーレに入れた。これにアブラムシ成虫を4頭放飼した。その1日後、成虫を取り除いた。リーフディスクに産下された1令幼虫の数を10頭に調整し、これに50%アセトン水(0.05%Tween20加用)となる様に調製した20ppmの薬液を散布した。風乾後、シャーレに蓋をして、25℃の恒温室に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って、死虫率を算出した。
死虫率(%)={死亡虫数/(生存虫数+死亡虫数)}×100
その結果、表1または表6に記載の化合物1、2、3、4、5、6、7、8および9は、散布処理により全て死虫率100%の高い殺虫効果を示した。
【0080】
<種子消毒試験>
試験例4 ムギクビレアブラムシ防除試験
コムギ種子を、水にて所定濃度に調製した製剤希釈液に6時間浸漬処理した。この種子を、3日間恒温室内にて、芽出しさせた後、この苗を土壌へ移植した。移植2日後、これにムギクビレアブラムシ幼虫を10頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室に放置した。放飼6日後に茎葉上の寄生虫数を観察し、試験例1と同様の式に従って密度指数を算出した。3反復。
表8に示されるとおり、化合物4を含む5%水和剤は、ムギクビレアブラムシに対して、高い密度抑制効果を示した。
【0081】
【表8】
【0082】
<土壌潅注処理試験>
試験例5 オンシツコナジラミ防除試験
ポット栽培のキュウリ苗に、オンシツコナジラミ成虫を放飼して、2日間産卵させた。産卵開始から10日後に、産下卵から幼虫が孵化していることを確認した後、このキュウリポットにおいて、10%アセトン水にて所定濃度に調製した薬液5mLを土壌に潅注した。25℃の恒温室(16時間明期−8時間暗期)に、このキュウリポットを放置した。土壌潅注処理9日後に生存虫数を計測し、次式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
死虫率(%)={(処理前幼虫数−生存虫数)/処理前幼虫数}×100
表9に示すように、化合物4は、オンシツコナジラミに対して、高い浸透移行的な殺虫活性を示した。
【0083】
試験例6 ヒメトビウンカ防除試験
ポット栽培のイネ苗に、10%アセトン水にて所定濃度に調製した薬液を土壌潅注処理した。3日間放置した後、これに2令幼虫10頭を放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期−8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、上記参考試験と同様の式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
表9に示すように、化合物4は、ヒメトビウンカに対して、高い浸透移行的な殺虫活性を示した。
【0084】
試験例7 ツマグロヨコバイ防除試験
ポット栽培のイネ苗に、10%アセトン水にて所定濃度に調製した薬液を土壌潅注処理した。3日間放置した後、これに2令幼虫10頭を放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期一8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、上記参考試験と同様の式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
表9に示すように、化合物4は、ツマグロヨコバイに対して、高い浸透移行的な殺虫活性を示した。
【0085】
【表9】
【0086】
<殺虫混合剤を用いた土壌灌注処理試験例>
試験例8 ワタアブラムシ防除試験
水にて所定濃度に調製した単剤および混合剤を用いた土壌潅注により、キュウリ苗を処理した。2日間、薬剤を根から吸収させた後、苗にワタアブラムシ成虫を4頭ずつ放飼した。その後、苗を25℃の恒温室に放置した。放飼2日後に葉上の寄生虫数を観察した。無処理の密度を100として、各処理区の密度指数を求め、次式により防除価を算出した。
防除価=100−密度指数
結果は表10に示される通りであった。なお、密度指数が100を超えた場合は、防除価を0とした。
【0087】
また、以下のコルビーの式によって相乗効果がない場合の理論値を算出し、結果を表11に示した。
コルビーの式:理論値=A+B−(A×B)/ 100
A:化合物4のみを処理した場合の防除価、
B:各々アセフェート、イミダクロプリドのみを処理した場合の防除価
【0088】
相乗効果判定方法
表10における混合剤の場合の数値が、表11におけるコルビーの式による理論値を越えた場合、相乗効果があると判断した。
試験した混合剤はいずれも理論値を越えた防除価を示しており、相乗効果があることが確認された。
【0089】
【表10】
【0090】
【表11】
【0091】
試験例9 ムギクビレアブラムシ防除試験
播種後48時間後のコムギ苗根部を、10%アセトン水となるように所定濃度に調製した混合剤薬液に72時間浸漬処理した。薬剤処理72時間後に、この苗に、ムギクビレアブラムシ幼虫を10頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室に放置した。放飼6日後に茎葉上の寄生虫数を観察した。無処理の密度を100として、各処理区の密度指数を求め、試験例8と同様の式により防除価を算出した。
結果を表12に示した。なお、密度指数が100を超えた場合は、防除価を0とした。
【0092】
また、以下に示すコルビーの式によって相乗効果がない場合の理論値を算出し、結果を表13に示した。
コルビーの式:理論値=A+B−(A×B)/ 100
A:化合物4のみを処理した場合の防除価、
B:各々アセタミプリド、アセフェート、イミダクロプリドのみを処理した場合の防除価
【0093】
相乗効果判定方法
混合した場合のムギクビレアブラムシに対する防除価(表12)が表13で示されるコルビーの式による理論値を越えた場合、相乗効果があると判断した。試験した混合剤はいずれも理論値を越えた防除価を示しており、相乗効果があることが確認された。
【0094】
【表12】
【0095】
【表13】
【0096】
試験例10 ヒメトビウンカ防除試験
水にて所定濃度に調製した単剤または混合剤を用いた土壌潅注により、ポット栽培のイネ苗を処理した。2日間放置した後、これに2令幼虫を10頭放飼した。その後、イネ苗を25℃の恒温室(16時間明期−8時間暗期)に放置した。放飼4日後に虫の生死を観察し、上記参考試験と同様の式により死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
結果は表14に示される通りであった。
【0097】
また、以下に示すコルビーの式によって、相乗効果がない場合の理論値を算出し、結果を表15に示した。
コルビーの式:理論値(%)=100−(A×B)/ 100
A:100−(化合物4のみを処理した場合の死虫率)、
B:100−(イミダクロプリドのみを処理した場合の死虫率)
【0098】
相乗効果判定方法
表14における混合剤の場合の数値が、表15で示されるコルビーの式による理論値を越えた場合、相乗効果があると判断した。
試験した混合剤は理論値を越えた死虫率を示しており、相乗効果があることが確認された。
【0099】
【表14】
【0100】
【表15】