特許第5649852号(P5649852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5649852金属加工油循環機構および金属加工油循環方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649852
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】金属加工油循環機構および金属加工油循環方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/06 20060101AFI20141211BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20141211BHJP
   B21C 37/20 20060101ALI20141211BHJP
   B03C 1/00 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
   B01D35/06 A
   B03C1/02 Z
   B21C37/20
   !B03C1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-118441(P2010-118441)
(22)【出願日】2010年5月24日
(65)【公開番号】特開2011-245366(P2011-245366A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2012年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英史郎
(72)【発明者】
【氏名】二村 和義
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−243605(JP,A)
【文献】 特開平08−173923(JP,A)
【文献】 特開平09−273881(JP,A)
【文献】 特開昭56−084611(JP,A)
【文献】 特開昭63−258659(JP,A)
【文献】 特開平06−020541(JP,A)
【文献】 特開平06−280070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/06、43/00、57/00−57/02、
B03C 1/00− 1/30、
B21C 37/00−43/04、
B23Q 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管のステンレス管にコルゲートリングを押圧して周面に波形状のコルゲート加工を施しステンレスコルゲート管を製造する際に、コルゲートリングに金属加工油を供給し、コルゲータから回収した金属加工油をコルゲートリングに再び供給する金属加工油循環機構において、
前記コルゲータから回収した金属加工油から磁力によってステンレスの金属粉を除去するマグネットフィルターを設けると共に、
コルゲータから回収した金属加工油を一旦収容する加工油タンクを設け、加工油タンク内に複数の仕切り壁で隔てて複数の油室を設け、
前記マグネットフィルターに油室内の金属加工油を通してその金属加工油から金属粉を除去すると共に、前記加工油タンク内で金属加工油が複数の油室を順番に通過することによって当該金属加工油内の金属粉が沈殿によって除去されるようにし、前記マグネットフィルターおよび沈殿によって金属粉が除去された金属加工油を混合してコルゲータに供給するようにしたことを特徴とする金属加工油循環機構。
【請求項2】
ステンレス管はオーステナイト系ステンレスからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の金属加工油循環機構。
【請求項3】
前記コルゲータに供給する金属加工油の一部を最初の油室内に噴出して当該最初の油室内の金属加工油を攪拌し、攪拌された金属加工油は、当該最初の油室と次の油室との仕切り壁をオーバーフローして次の油室に入るようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属加工油循環機構。
【請求項4】
前記複数の油室の内で、コルゲータから回収した金属加工油を最初に収容する油室内の加工油を前記マグネットフィルターに送油すると共に、当該マグネットフィルターからの戻り油をコルゲータに供給する金属加工油が収容される最後の油室内に送油して、金属加工油に混合すること特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の金属加工油循環機構。
【請求項5】
直管のステンレス管にコルゲートリングを押圧して周面に波形状のコルゲート加工を施しステンレスコルゲート管を製造する際に、コルゲートリングに金属加工油を供給し、コルゲータから回収した金属加工油をコルゲートリングに再び供給する金属加工油循環方法において、
コルゲータ入側でステンレス管に金属加工油を供給する第1の工程と、
ステンレス管に押圧している状態のコルゲートリングに金属加工油を供給する第2の工程と、
コルゲータ入側で供給された金属加工油と共にコルゲートリングに供給された金属加工油を回収して、加工油タンクに送油する第3の工程と、
前記第3の工程で送油された金属加工油を前記加工油タンク内部に複数の仕切り壁で隔て設けられた複数の油室を順番に通過するようにして、当該金属加工油内の金属粉を、前記加工油タンクで沈殿によって除去する第4の工程と、
前記加工油タンクの最初の油室内の金属加工油をマグネットフィルターに送油する第5の工程と、
前記第5の工程で送油された金属加工油からマグネットフィルターが磁力の作用でステンレスの金属粉を除去する第6の工程と、
前記第6の工程でマグネットフィルターによって金属粉を除去した金属加工油を、前記第4の工程で金属粉を沈殿によって除去した前記加工油タンクの最後の油室内の金属加工油に混合する第7の工程と、
前記第7の工程で金属粉除去後に混合された加工油タンクの最後の油室内の金属加工油を前記第1の工程および第2の工程の金属加工油としてポンプによって供給する第8の工程と、
前記第7の工程で金属粉除去後に混合された加工油タンクの最後の油室内の金属加工油を最初の油室内に噴射して当該油室内の金属加工油を攪拌する第9の工程と、
を含むことを特徴とする金属加工油循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス(SUS)フレキシブル管等のステンレスコルゲート管の製造に関するもので、その製造工程であるコルゲート成形工程で使用する製造設備のコルゲータにおける機能向上が図れる金属加工油循環機構および金属加工油循環方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅製の波付き管製造用のコルゲータに関しては、特開平6−20541号公報(特許文献1)が開示されている。この特許文献1における波付き管の製造ラインでは、コルゲータに金属加工油を供給しながら銅管にコルゲート加工(波付き加工)を施す。その際、コルゲータの下流側で使用後の金属加工油を回収してフィルター等のオイルクリーナによって金属加工油から金属粉を除去して清浄化し、その清浄化した金属加工油を再びコルゲータに供給する。
【0003】
また、ステンレス管にコルゲート加工を施すステンレスコルゲート管(ステンレスフレキシブル管)製造ラインでもコルゲータに金属加工油を用いる。この金属加工油の管理方法としては、その製造方法上、多くの鉄粉(微鉄粉)が金属加工油内に混ざる。金属加工油内に混ざる鉄粉の量が大量であるため、上記特許文献1のように、鉄粉を濾過・除去にフィルターを用いてもフィルターは短期間で目詰まりを起こし易い。したがって、頻繁に濾過フィルターを新しいものに交換する必要があり、コスト・手間が掛る。
【0004】
一方、目詰まりの間隔を伸ばそうとして、フィルターの目を荒くしたり、フィルターを設けない循環機構とすることも考えられる。しかしながら、その場合、当然多くの微鉄粉が金属加工油内に混ざることとなり、製品の品質およびコルゲートリングの寿命に大きく影響してしまい、コルゲータによるコルゲート管製造の際に、コルゲートリングが大量に必要になってしまう。また、そのコルゲートリングは比較的高価であることから、コルゲートリングの寿命が短くなることはコルゲート管の製造において生産性やコストの点から致命的なものになる。
【0005】
また、コルゲート加工時には、熱が発生するため、この金属加工油の柔な関係等には、オイル冷却機構が入れてあることが多い。フィルターが目詰まりを起こすと、オイル冷却系統に油が流れなくなり、高温の加工油でコルゲート加工を行なったり、そもそも循環系統内で十分な油が流れなくなったりするなどのトラブルとなる問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−20541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、コルゲータによるステンレスコルゲート管の製造に際して、加工油からステンレスの微粉体を確実に除去して、加工油の十分な循環を確保でき、製造の安定化による製品の品質安定化および、コルゲートリングの長寿命化によるコスト削減を図ることができる金属加工油循環機構および金属加工油循環方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、直管のステンレス管にコルゲートリングを押圧して周面に波形状のコルゲート加工を施しステンレスコルゲート管を製造する際に、コルゲートリングに金属加工油を供給し、コルゲータから回収した金属加工油をコルゲートリングに再び供給する金属加工油循環機構において、
前記コルゲータから回収した金属加工油から磁力によってステンレスの金属粉を除去するマグネットフィルターを設けると共に、
コルゲータから回収した金属加工油を一旦収容する加工油タンクを設け、加工油タンク内に複数の仕切り壁で隔てて複数の油室を設け、
前記マグネットフィルターに油室内の金属加工油を通してその金属加工油から金属粉を除去すると共に、前記加工油タンク内で金属加工油が複数の油室を順番に通過することによって当該金属加工油内の金属粉が沈殿によって除去されるようにし、前記マグネットフィルターおよび沈殿によって金属粉が除去された金属加工油を混合してコルゲータに供給するようにしたことを特徴とする金属加工油循環機構である。
【0009】
本発明において、ステンレス管はオーステナイト系ステンレスからなるものであることが好適である。
【0010】
本発明において、前記コルゲータに供給する金属加工油の一部を最初の油室内に噴出して当該最初の油室内の金属加工油を攪拌し、攪拌された金属加工油は、当該最初の油室と次の油室との仕切り壁をオーバーフローして次の油室に入るようにしたことが好適である。
【0011】
また、本発明において、前記複数の油室の内で、コルゲータから回収した金属加工油を最初に収容する油室内の加工油を前記マグネットフィルターに送油すると共に、当該マグネットフィルターからの戻り油をコルゲータに供給する金属加工油が収容される最後の油室内に送油して、金属加工油に混合することが好適である。
【0012】
本発明は、直管のステンレス管にコルゲートリングを押圧して周面に波形状のコルゲート加工を施しステンレスコルゲート管を製造する際に、コルゲートリングに金属加工油を供給し、コルゲータから回収した金属加工油をコルゲートリングに再び供給する金属加工油循環方法において、
コルゲータ入側でステンレス管に金属加工油を供給する第1の工程と、
ステンレス管に押圧している状態のコルゲートリングに金属加工油を供給する第2の工程と、
コルゲータ入側で供給された金属加工油と共にコルゲートリングに供給された金属加工油を回収して、加工油タンクに送油する第3の工程と、
前記第3の工程で送油された金属加工油を前記加工油タンク内部に複数の仕切り壁で隔て設けられた複数の油室を順番に通過するようにして、当該金属加工油内の金属粉を、前記加工油タンクで沈殿によって除去する第4の工程と、
前記加工油タンクの最初の油室内の金属加工油をマグネットフィルターに送油する第5の工程と、
前記第5の工程で送油された金属加工油からマグネットフィルターが磁力の作用でステンレスの金属粉を除去する第6の工程と、
前記第6の工程でマグネットフィルターによって金属粉を除去した金属加工油を、前記第4の工程で金属粉を沈殿によって除去した前記加工油タンクの最後の油室内の金属加工油に混合する第7の工程と、
前記第7の工程で金属粉除去後に混合された加工油タンクの最後の油室内の金属加工油を前記第1の工程および第2の工程の金属加工油としてポンプによって供給する第8の工程と、
前記第7の工程で金属粉除去後に混合された加工油タンクの最後の油室内の金属加工油を最初の油室内に噴射して当該油室内の金属加工油を攪拌する第9の工程と、
を含むことを特徴とする金属加工油循環方法である。
【0013】
本発明の原理を説明する。
一般に、SUSフレキシブル管の材料としてよく用いられるオーステナイト系ステンレス(304、316等)は、非磁性であることが知られている。
【0014】
加工前のステンレス管は変性しておらず、磁性を帯びていない。コルゲート加工を施す際には、強い押圧力を直管のステンレス管に加えて塑性変形させてコルゲート(波形状の形成)を形成するという強加工になるため、常温でマルテンサイト組織が生じて、磁化される(例えば特開2004−209369号参照)。
【0015】
本発明者はこの点に着目してマルテンサイト変成したステンレスの粉体をマグネットフィルターで磁気的に捕集するため、金属加工油循環機構にマグネットフィルターを設ける点を案出して、本発明を構成したものである。
【0016】
加工時にステンレスパイブにマルテンサイト変成が起こり鉄粉が磁性を帯びるので、その鉄粉が混じった状態で回収される金属加工油からマグネットフィルターに通すことによって、当該鉄粉特に微鉄粉を確実に除去できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の金属加工油循環機構によれば、マグネットフィルターによって金属加工油中の鉄粉特に微鉄粉を確実に除去できる。また、加工中に安定して加工油が供給できるためコルゲートリングの寿命が延びる。また、フィルターは鉄粉を除去すれば繰り返し利用できるためコスト削減に繋がる。また、鉄粉の確実な除去からオイル冷却機構などが確実に機能する。このため、コルゲータ(コルゲート装置)を高速化できる。また、安定した量で加工油を流すことができる。また、鉄粉の混じらない加工油を供給できるためコルゲータの加工が安定することから、ステンレスコルゲート管の外観向上を図れる等の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る金属加工油循環機構の概略説明図である。
図2図1の金属加工油循環機構が設けられて加工油が循環供給されるコルゲータの構成説明図である。
図3図1の金属加工油循環機構に設けるマグネットフィルターの構成説明図であり、(a)はマグネットフィルター内部の鉄粉補修ユニットを説明する斜視図、(b)マグネットフィルターの外観図である。
図4図3のマグネットフィルターにおける微鉄粉捕集ユニットの機能説明図であって、(a)は当該ユニットにおけるマグネットおよび円盤状プレートの説明図、(b)は(a)を一部拡大する鉄粉捕集状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面の図1図4を参照して説明する。
【0020】
本実施形態は、図1に示すように、金属加工油循環機構に係り、コルゲータ10において、直管のステンレス管12にコルゲートリング14(凹凸形成工具)を押圧して周面に波形状のコルゲート加工を施しステンレスコルゲート管16を製造する際に、コルゲートリング14に金属加工油を供給し、加工後にコルゲータ10から回収した金属加工油をコルゲートリング14に再び供給する金属加工油循環機構に関するものである。
【0021】
詳しくは、コルゲータ10がコルゲート加工する直管のステンレス管12は、前工程においてステンレス帯体をその幅方向端部同士を当接させて溶接することによって管状に形成したものであって、連続的にコルゲータ10に搬送されるものである。なお、直管のステンレス管12は、ステンレス帯体を螺旋状に巻き上げて製造したステンレス管や内部孔をボーリングしたり、鍛造によって製造したステンレス管を用いることも可能である。
【0022】
コルゲータ10は、管状のステンレス管12にコルゲートリング14の内周面を押し当てて、コルゲートリング14を遊星状回転させることによって、前記ステンレス管12の周面に波形状のコルゲート加工を施して、ステンレスコルゲート管16を連続的に形成し、そのステンレスコルゲート管16を下流側に搬送するものである。
【0023】
コルゲータ10では、図2に示すように、躯体フレーム18にベアリング20を介して中空筒状の主軸22が回動可能に支持されており、この主軸22内に加工する管状のステンレス管12を内部に通してそのステンレス管12の位置決めするホローシャフト24が配設されている。主軸22の下流側端部に前記コルゲートリング14が配置される円盤状の加工ヘッド26が設けられる。また、ホローシャフト24におけるステンレス管12の出側であってコルゲートリング14を挟んで反対側には、コルゲート加工直後のステンレスコルゲート管16を内装して誘導する誘導シャフト28が設けられている。
【0024】
前記主軸22に設けられた加工ヘッド26は、円盤状であってその出側面にコルゲートリング14が回転自在かつ加工ヘッド26に対して偏心して設けられる。詳しくは、加工ヘッド26には、ベアリング30aを介してコルゲートリング14を支持する支持部材30がコルゲートリング14の偏芯量調整可能に取り付けられている。また、加工ヘッド26が図示しない回転駆動手段によって回転することによって、コルゲートリング14は、連続搬送されるステンレス管12の周面に当接した状態で回転する。これにより、ステンレス管12は周面にコルゲート形状が形成されてステンレスコルゲート管16になる。
【0025】
上記のコルゲートリング14が当接してコルゲート加工する際に、ステンレス管12が順次送込まれ、ノズル32から噴出する金属加工油がコルゲートリング14およびステンレス管12に向けて当てられて、コルゲートリング14の押圧および回転によるコルゲート加工がスムーズに行えるようにしている。
【0026】
上記のコルゲータ10に設けた金属加工油循環機構においては、コルゲータ10入側のステンレス管12に向けてノズル34から(図1参照)、および、前記コルゲータ10のコルゲートリング14に向けて上記のノズル32から金属加工油を供給している。
【0027】
これらノズル34,32へはポンプ36から管体の供給流路38を介して加工対象に供給された金属加工油はコルゲータ10のオイルパン18aから回収されて、回収流路40を通して、加工油タンク42に戻される。加工油タンク42(の最初の油室50a)からマグネットフィルター44に向けて送油管46aを通って送り、当該マグネットフィルター44で微粉体を除去されて濾過された金属加工油は戻り油管46bを通って加工油タンク42(の最後の油室50c)に戻される。
【0028】
なお、前記加工油タンク42には、加工油内に含まれる鉄粉を沈殿させて除去したり、回収流路40から回収された鉄粉混じりの加工油が供給使用とする加工油に混じるのを防止するため、複数の仕切り壁48が設けられて、複数の油室50a〜50cを順番に金属加工油が通過することによって鉄粉の沈殿を分離を促している。また、ポンプ36から出た供給流路38には、一部の加工油を加工油タンク42に直接戻すバイパス流路52が設けられ、このバイパス流路52は前記回収流路40から戻された鉄粉混じりの加工油の入る油室50a内に濾過後の加工油を噴出して加工油を撹拌するようにしている。この油室50aの加工油は仕切り壁48からオーバーフローして中央の油室50bに入り、さらに、他の油室50cに仕切り壁48の下方の隙間から入る。この他の油室50c(最後の油室)には、各油室50a〜50cを順番に通って沈殿によって鉄粉が分離された状態の加工油になり、その加工油に前記マグネットフィルター44で鉄粉を除去された加工油が戻り油管46bを通って送り込まれて混合する。この最後の油室50c内の鉄粉の除去された加工油が前記ポンプ36によって供給流路38に向け、さらにはノズル32,34に向けて送込まれる。
【0029】
図3図4はマグネットフィルター44の説明図である。
【0030】
マグネットフィルター44は前記コルゲータ10から回収した金属加工油から磁力によってステンレスの金属粉を除去するものである。マグネットフィルター44は、図3に示すように、短筒状のマグネット(永久磁石)54aの軸方向両端部に概略歯車形状をした円盤状プレート54bをそれぞれ設けた鉄粉捕集ユニット54を複数軸方向に配列して、透明樹脂製のケース56内に納めたものである。
【0031】
前記マグネット54aは、中空筒状であって、軸方向長さよりも外周径が大きく形成される。円盤状プレート54bは、周囲にU字形状やスリット状の凹所54b1が複数切り欠き形成されて、中央に孔のある概略歯車状を呈した磁性体金属からなり、2枚が対で前記マグネット54aの軸方向前端部および後端部に固定されている。各円盤状プレート54b、54b(それぞれN極(54b(N))およびS極(54b(S))になる)は径方向周辺に行くほど互いに近づくように緩やかに反るように曲がっており、それらを対向して配設して各組の鉄粉捕集ユニット54を形成したものである。そして、各組の鉄粉捕集ユニット54が軸方向に連ねて柱状に配列して前記ケース56内に納めたものがマグネットフィルター44である。
【0032】
前記各組鉄粉捕集ユニット54の円盤状プレート54b、54bが対向した間隙および周囲に磁力線が延びて磁界が形成される。また、前記凹所54b1は各円盤状プレート54b、54b毎に形成されていて、円盤状プレート54b、54bとマグネット54aを複数重ねて前記ケース56内に納めてマグネットフィルター44を構成する。各組マグネット54aを重ねてマグネットフィルター44を構成するときには、軸方向に見て同位置に凹所54b1が形成されていて、その凹所54b1の空間の面積は、送油管46aおよび戻り油管46bの横断面積より大きく形成されおり、この構成によって、加工油が流れるときにそれへの流路抵抗にならず、圧力損失も生じないようにしている。
【0033】
また、前記鉄粉捕集ユニット54において、対向する円盤状プレート54b、54b同士の磁力線が生み出す集積ゾーン54c(:円盤状プレート56b、54b間の間隙)に鉄粉が捕集され、金属加工油内の鉄粉を除去できる。このように鉄粉は集積ゾーン54cに溜まり、金属加工油は凹所54b1を通るので、捕捉された蓄積物によって液体の流れが妨げられることがないだけでなく、凝集した鉄粉が剥離して再循環することをも防げる。
【0034】
そして、コルゲート加工対象のステンレス管はオーステナイト系ステンレスからなるものである。一般に、SUSフレキシブル管の材料としてよく用いられるオーステナイト系ステンレス(304、316等)は、非磁性であり、ステンレス管12は加工前は変性しておらず、磁性を帯びていない。コルゲート加工を施す際に強い押圧力を直管のステンレス管12に加えて塑性変形させるコルゲート(波形状の形成)を形成するという強加工になるため、ステンレスコルゲート管16は常温でマルテンサイト組織が生じて、磁化される。そこで、コルゲート加工時にマルテンサイト変成したステンレスの粉体をマグネットフィルター44で磁気的に捕集するため金属加工油循環機構にマグネットフィルター44を設けている。
【0035】
実施形態に係る金属加工油循環機構による循環方法は、図1に示すように、直管のステンレス管12にコルゲートリング14を押圧して周面に波形状のコルゲート加工を施しステンレスコルゲート管16を製造する際に、コルゲートリング14に金属加工油を供給し、コルゲータ10から回収した金属加工油をコルゲートリング14に再び供給する金属加工油循環方法においてはつぎの各工程1〜9によって金属加工油から鉄粉を除去して循環させる。
【0036】
第1の工程:コルゲータ10入側でステンレス管12に供給流路38を経由してノズル34から金属加工油を噴出して供給する。
【0037】
第2の工程:ステンレス管12に押圧している状態のコルゲートリング14に供給流路38を経由してノズル32から金属加工油を噴出して供給する。
【0038】
第3の工程:コルゲータ10入側で供給された金属加工油と共にコルゲートリング14に供給された金属加工油を回収して、回収流路40を経由して加工油タンク42に戻り送油する。
【0039】
第4の工程:前記第3の工程で戻り送油された金属加工油内の金属粉を前記加工油タンク42で沈殿によって除去する。
【0040】
第5の工程:加工油タンク42の金属加工油をマグネットフィルター44に送油管46aを経由して送油する。
【0041】
第6の工程:前記第5の工程で送油された金属加工油からマグネットフィルター44が磁力の作用でステンレスの金属粉を除去する。
【0042】
第7の工程:前記第6の工程でマグネットフィルター44によって金属粉を除去した金属加工油を、前記第4の工程で金属粉を沈殿によって除去した前記加工油タンク42内の金属加工油に混合する。
【0043】
第8の工程:前記第7の工程で金属粉除去後に混合された加工油タンク42内の金属加工油を前記第1の工程および第2の工程の金属加工油としてポンプ36によって供給する。
【0044】
第9の工程:ポンプ36からの送油された金属加工油をバイパス流路52を介して最初の油室50a内に供給して油室内の金属加工油を撹拌する。
【0045】
上記のような金属加工油の循環により、上記のステンレス管12にマルテンサイト変成が起こって加工時に生じて鉄粉がオーステナイト変成して磁性を帯びるので、その鉄粉が混じった状態で回収される金属加工油からマグネットフィルター44によって当該鉄粉特に微鉄粉を確実に除去できる。
【0046】
加工油中の微鉄粉を確実に除去できる。また、加工中に安定して加工油が供給できるためコルゲートリング14の寿命が延びる。また、フィルターは鉄粉を除去すれば繰り返し利用できるためコスト削減に繋がる。また、鉄粉の確実な除去からオイル冷却機構などが確実に機能する。このため、コルゲータ10(コルゲート装置)を高速化できる。また、安定した量で加工油を流すことができる。また、加工が安定するため、ステンレスコルゲート管16の外観向上を図れる等の優れた効果を奏し得る。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の金属加工油循環機構および金属加工油循環方法は、オーステナイト系ステンレス管にコルゲータによってコルゲート加工する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 コルゲータ
12 ステンレス管
14 コルゲートリング
16 ステンレスコルゲート管
18 躯体フレーム
20 ベアリング
22 主軸
24 ホローシャフト
26 加工ヘッド
28 誘導シャフト
30 支持部材
30a コルゲートリング支持用のベアリング
32,34 加工油が噴出するノズル
36 ポンプ
38 供給流路
40 回収流路
42 加工油タンク
44 マグネットフィルター
46a 送油管
46b 戻り油管
48 仕切り壁
50a,50b,50c 油室
52 バイパス流路
54 鉄粉捕集ユニット
54a マグネット
54a マグネット
54b 円盤状プレート
54b1 円盤状プレートの凹所
54c 集積ゾーン
56 ケース
図1
図2
図3
図4