特許第5649875号(P5649875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649875
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】ショーケースの集中制御装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20141211BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   F25D11/00 101E
   F25B1/00 396D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-189833(P2010-189833)
(22)【出願日】2010年8月26日
(65)【公開番号】特開2012-47395(P2012-47395A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】菊池 晋平
(72)【発明者】
【氏名】中島 真一
(72)【発明者】
【氏名】中里 剛志
(72)【発明者】
【氏名】只野 昌也
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3666180(JP,B2)
【文献】 特開2003−191804(JP,A)
【文献】 特開2000−146328(JP,A)
【文献】 特開平05−280850(JP,A)
【文献】 特開平07−075179(JP,A)
【文献】 特開2004−257639(JP,A)
【文献】 特開2008−224156(JP,A)
【文献】 特開2006−046812(JP,A)
【文献】 特開平09−139986(JP,A)
【文献】 特開2004−308942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00−16/00
F25D 27/00−31/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のショーケースにそれぞれ設けられ、各ショーケースの運転を制御するショーケースコントローラと、各ショーケースの蒸発器と冷媒回路を構成するコンプレッサを備えて当該コンプレッサから前記各蒸発器に冷媒を分配供給する冷凍機に設けられ、該冷凍機の運転を制御する冷凍機コントローラと、前記各ショーケースコントローラ及び冷凍機コントローラとの間で通信線を介してデータの授受を行うことにより前記各ショーケース及び冷凍機の運転を集中して制御する統合コントローラとから構築されたショーケースの集中制御装置において、
前記冷凍機コントローラから前記各ショーケースコントローラに渡って設けられた信号線を備え、
前記冷凍機コントローラは、前記統合コントローラによる集中制御が不能と判断した場合、前記信号線を用いて前記ショーケースコントローラと連携運転を行い、前記コンプレッサを起動する際に前記冷凍機側の所定の運転準備を行い、該運転準備が完了した場合、前記ショーケースコントローラに前記信号線を介して冷凍機運転信号を送信し、前記ショーケースコントローラからケース運転信号を受信した場合、前記コンプレッサを起動すると共に、
前記ショーケースコントローラは、前記冷凍機コントローラから前記冷凍機運転信号を受信した場合、前記ショーケース側の所定の運転準備を行い、該運転準備が完了した場合、前記信号線を介して前記冷凍機コントローラに前記ケース運転信号を送信することを特徴とするショーケースの集中制御装置。
【請求項2】
前記冷凍機コントローラ及びショーケースコントローラによる前記運転準備は、前記コンプレッサの起動負荷を軽減するための動作、及び、前記冷媒回路の高圧側圧力の異常上昇を回避するための動作のうちの何れか、又は、双方を含むことを特徴とする請求項1に記載のショーケースの集中制御装置。
【請求項3】
前記信号線は前記冷凍機運転信号用と前記ケース運転信号用に少なくとも2系統設けられると共に、前記冷凍機運転信号及びケース運転信号は、接点のオン/オフ信号であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のショーケースの集中制御装置。
【請求項4】
前記冷凍機コントローラは、前記ショーケースコントローラに冷凍機運転信号を送信した後、前記ショーケースコントローラから前記ケース運転信号を受信しない場合、所定の警報動作を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のショーケースの集中制御装置。
【請求項5】
前記冷媒として二酸化炭素を用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載のショーケースの集中制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のショーケースの運転を一括して制御するショーケースの集中制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗には、複数台のショーケースが設置され、冷凍機のコンプレッサから各ショーケースの蒸発器に冷媒を分配供給することにより、各ショーケースの陳列室を冷却している。そして、各ショーケースにはそれぞれコントローラが設けられ、陳列室の温度制御や霜取が個々のショーケースにおいて行われていたため、全てのショーケースの設定や異常等の運転状態の管理を行うことが極めて面倒であった。
【0003】
そこで、近年では統合コントローラを店舗に設置し、各ショーケースや冷凍機のコントローラを通信線により統合コントローラに接続して、各ショーケースや冷凍機を集中して制御する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3666180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、統合コントローラと各ショーケースや冷凍機間のデータの授受ができなくなった場合、集中制御は不能となる。特に、冷媒回路の冷媒として二酸化炭素を用いた場合、高圧側が超臨界状態で運転され、非常に高い圧力となるため、冷凍機のコンプレッサが停止した状態からそのまま起動された場合、各ショーケースの電動膨張弁や液管電磁弁の状態によっては高低圧差からコンプレッサが起動できなくなり、或いは、起動後も高圧側が異常に高くなってコンプレッサが強制停止されてしまうことになる。
【0006】
そのため、このような冷媒を使用する場合には、コンプレッサを起動する以前にショーケースや冷凍機に運転準備を行わせ、コンプレッサの起動負荷を軽減し、或いは、起動しても異常高圧とならないような状態に各電動膨張弁や液管電磁弁、その他の均圧用の電磁弁等を制御する必要があるが、前述した如く統合コントローラによる集中制御が不能となった場合、係る準備動作も行うことができなくなってしまう問題があった。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり統合コントローラにてショーケースや冷凍機を集中制御する装置において、統合コントローラによる集中制御が不能となった場合にも、支障無くショーケースと冷凍機を連携運転することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のショーケースの集中制御装置は、複数台のショーケースにそれぞれ設けられ、各ショーケースの運転を制御するショーケースコントローラと、各ショーケースの蒸発器と冷媒回路を構成するコンプレッサを備えて当該コンプレッサから各蒸発器に冷媒を分配供給する冷凍機に設けられ、この冷凍機の運転を制御する冷凍機コントローラと、各ショーケースコントローラ及び冷凍機コントローラとの間で通信線を介してデータの授受を行うことにより各ショーケース及び冷凍機の運転を集中して制御する統合コントローラとから構築されたものであって、冷凍機コントローラから各ショーケースコントローラに渡って設けられた信号線を備え、冷凍機コントローラは、統合コントローラによる集中制御が不能と判断した場合、信号線を用いてショーケースコントローラと連携運転を行い、コンプレッサを起動する際に冷凍機側の所定の運転準備を行い、この運転準備が完了した場合、ショーケースコントローラに信号線を介して冷凍機運転信号を送信し、ショーケースコントローラからケース運転信号を受信した場合、コンプレッサを起動すると共に、ショーケースコントローラは、冷凍機コントローラから冷凍機運転信号を受信した場合、ショーケース側の所定の運転準備を行い、この運転準備が完了した場合、信号線を介して冷凍機コントローラにケース運転信号を送信することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明のショーケースの集中制御装置は、上記において冷凍機コントローラ及びショーケースコントローラによる運転準備は、コンプレッサの起動負荷を軽減するための動作、及び、冷媒回路の高圧側圧力の異常上昇を回避するための動作のうちの何れか、又は、双方を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明のショーケースの集中制御装置は、上記各発明において信号線は冷凍機運転信号用とケース運転信号用に少なくとも2系統設けられると共に、冷凍機運転信号及びケース運転信号は、接点のオン/オフ信号であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明のショーケースの集中制御装置は、上記各発明のうちの何れかにおいて冷凍機コントローラは、ショーケースコントローラに冷凍機運転信号を送信した後、ショーケースコントローラからケース運転信号を受信しない場合、所定の警報動作を実行することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明のショーケースの集中制御装置は、上記各発明5のうちの何れかにおいて冷媒として二酸化炭素を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数台のショーケースにそれぞれ設けられ、各ショーケースの運転を制御するショーケースコントローラと、各ショーケースの蒸発器と冷媒回路を構成するコンプレッサを備えて当該コンプレッサから各蒸発器に冷媒を分配供給する冷凍機に設けられ、この冷凍機の運転を制御する冷凍機コントローラと、各ショーケースコントローラ及び冷凍機コントローラとの間で通信線を介してデータの授受を行うことにより各ショーケース及び冷凍機の運転を集中して制御する統合コントローラとから構築されたショーケースの集中制御装置において、冷凍機コントローラから各ショーケースコントローラに渡って設けられた信号線を設け、冷凍機コントローラが、統合コントローラによる集中制御が不能と判断した場合、信号線を用いてショーケースコントローラと連携運転を行うようにしたので、統合コントローラ自体が故障した場合、又は、統合コントローラとの間の通信が不能となった場合にも、冷凍機コントローラとショーケースコントローラとの間で信号線を用い、信号の授受等を行い、支障無くショーケースと冷凍機の連携運転を実現することが可能となる。
【0014】
この場合、請求項5の如く冷媒として二酸化炭素を用いた場合には、コンプレッサを起動する以前に、請求項2の如くコンプレッサの起動負荷を軽減し、或いは、冷媒回路の高圧側圧力の異常上昇を回避するための運転準備を冷凍機及び各ショーケース双方において行わなければならないが、統合コントローラによる集中制御が不能となると、これら運転準備ができなくなる。
【0015】
そこで冷凍機コントローラが、コンプレッサを起動する際に冷凍機側の所定の運転準備を行い、この運転準備が完了した場合、ショーケースコントローラに信号線を介して冷凍機運転信号を送信し、ショーケースコントローラが、冷凍機コントローラから冷凍機運転信号を受信した場合、ショーケース側の所定の運転準備を行い、この運転準備が完了した場合、信号線を介して冷凍機コントローラにケース運転信号を送信すると共に、冷凍機コントローラが、ショーケースコントローラからケース運転信号を受信した場合、コンプレッサを起動するので、係る統合コントローラによる集中制御が不能な場合にも、信号線を用いて冷凍機コントローラとショーケースコントローラが連携し、支障無く冷凍機側の運転準備とショーケース側の運転準備を行うことが可能となるものである。
【0016】
また、請求項3の発明の如く信号線を、冷凍機運転信号用とケース運転信号用に少なくとも2系統設けると共に、冷凍機運転信号及びケース運転信号を、接点のオン/オフ信号とすることで、冷凍機コントローラとショーケースコントローラの最小限の入出力ポートを用い、極めて簡単な構成で冷凍機コントローラとショーケースコントローラの連携運転を実現することが可能となる。
【0017】
また、請求項4の発明の如く冷凍機コントローラが、ショーケースコントローラに冷凍機運転信号を送信した後、ショーケースコントローラからケース運転信号を受信しない場合、所定の警報動作を実行するようにすれば、統合コントローラによる集中制御に加えて、信号線を用いた冷凍機コントローラとショーケースコントローラの連携運転も不能な場合に、迅速に使用者に異常を通報することができるようになる。これにより、ショーケースに陳列された商品の損害を未然に、若しくは、最小限に抑えることができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例のショーケースの集中制御装置の電気的配線図である。
図2図1の集中制御装置が制御を行う冷凍機とショーケースの冷媒回路図である。
図3図1の集中制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図4】同じく図1の集中制御装置の動作を説明するフローチャート(図3の続き)である。
図5図1の統合コントローラ、冷凍機コントローラ、及びショーケースコントローラの間のデータの送受信を説明するシーケンス図である。
図6図1の冷凍機コントローラとショーケースコントローラの間の信号の授受を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の集中制御装置1の電気的配線図、図2は集中制御装置1が制御を行う冷凍機RとショーケースSC1、SC2・・の冷媒回路図である。先ず、図2においてSC1、SC2・・は例えばスーパーマーケット等の店舗の売り場内に複数台(図では2台のみ示す)設置されたショーケース(冷凍及び/又は冷蔵ショーケース)であり、Rは店舗の屋外若しくは機械室等に設置された冷凍機である。
【0020】
ショーケースSC1、SC2は図示しない断熱壁と、この断熱壁内に構成された図示しない陳列室と、蒸発器2と、この蒸発器2の入口に接続された電動膨張弁(減圧手段)3と、この電動膨張弁3の入口に接続された液管電磁弁4等を備えており、蒸発器2と熱交換した冷気を図示しない冷気循環用送風機によって陳列室内に循環し、当該陳列室内に陳列された商品を所定の温度(上限温度と下限温度の間の設定温度)に冷却するものである。
【0021】
冷凍機Rはコンプレッサ6(1台、若しくは、複数台が並列接続される。図2では1台のみ示す)と、このコンプレッサ6の吐出配管6Dに入口が接続された放熱器(ガスクーラ)7と、この放熱器7の出口側の配管9が通過する内部熱交換器8等を備えており、この内部熱交換器8を通過した配管9に各ショーケースSC1、SC2の液管電磁弁4、4が並列に接続され、各ショーケースSC1、SC2の蒸発器2の出口が、配管10により、冷凍機Rのコンプレッサ6の吸込配管6Sに並列に接続されたかたちとされている。
【0022】
この場合、コンプレッサ6は密閉容器内に電動要素と共に低段側の第1の回転圧縮要素31と、高段側の第2の回転圧縮要素32とを備えた2段圧縮式のロータリコンプレッサであり、第1の回転圧縮要素31の吸込側が前記吸込配管6Sに接続されている。そして、この第1の回転圧縮要素31の吐出側は中間冷却回路33に接続されている。中間冷却回路33はインタークーラ34を経て第2の回転圧縮要素32の吸込側に接続されている。
【0023】
放熱器7の出口側の配管9には分岐配管36が分岐して接続されており、この分岐配管36は中間冷却回路33と合流して第2の回転圧縮要素32の吸込側に接続されている。この分岐配管36には補助電動膨張弁37が設けられ、この補助電動膨張弁37から出た分岐配管36は内部熱交換器8を通過して第2の回転圧縮要素32の吸込側に至る。これにより、内部熱交換器8では放熱器7を出た冷媒と補助電動膨張弁37を出た冷媒とが熱交換する構成とされている。
【0024】
また、コンプレッサ6の吸込配管6Sと第2の回転圧縮要素32の吸込側との間には均圧配管38が接続され、均圧配管38には均圧用電磁弁39が接続されている。また、41は放熱器7とインタークーラ34を空冷する放熱器用送風機である。そして、実施例では冷媒としては二酸化炭素(CO2)が封入される。
【0025】
そして、冷凍機Rのコンプレッサ6の第1の回転圧縮要素31により吸込配管6Sから吸引された低圧冷媒(蒸発器2を出た冷媒)は、第1の回転圧縮要素31により圧縮(1段目の圧縮)されて中間圧となり、中間冷却回路33を経てインタークーラ34に至り、そこで空冷された後、第2の回転圧縮要素32に吸引される。そこで、2段目の圧縮が行われ、極めて高圧となった冷媒は、吐出配管6Dに吐出され、放熱器7で放熱した後、配管9を通り、内部熱交換器8を経て各ショーケースSC1、SC2に分配供給される。即ち、単一の冷凍機Rに対して複数台のショーケースSC1、SC2が配管接続され、冷媒が分配供給される。
【0026】
尚、放熱器7を出た冷媒の一部は分岐配管36に分流され、補助電動膨張弁37で減圧された後、内部熱交換器8を通過する過程で蒸発して、配管9を通過する放熱器7を出た冷媒を冷却する。内部熱交換器8を経た分岐配管36の冷媒は、インタークーラ34を経た中間冷却回路33の冷媒と共に第2の回転圧縮要素32に吸引される。
【0027】
一方、各ショーケースSC1、SC2に供給された冷媒は、液管電磁弁4が開いている状態で、電動膨張弁3に至り、そこで減圧された後、蒸発器2に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で陳列室内に循環される空気を冷却する。また、各ショーケースSC1、SC2の蒸発器2、2を出た冷媒は吸込配管6Sより冷凍機Rのコンプレッサ6の第1の回転圧縮要素31に吸引される。
【0028】
実施例の如く二酸化炭素を用いた冷媒回路では、高圧側が極めて高圧となり、超臨界状態で運転される。そこで、コンプレッサ6の保護のために吐出配管6Dには高圧センサ11が取り付けられ、また、吸込配管6Sには低圧センサ15が取り付けられて冷媒回路の高圧側の圧力及び低圧側の圧力をそれぞれ検出する構成とされている。また、第2の回転圧縮要素32に至る分岐配管36にはコンプレッサ6の中間圧力を検出する中圧センサ42も設けられる。
【0029】
一方、図1において冷凍機Rにはコンプレッサ6や補助電動膨張弁37、均圧用電磁弁39や放熱器用送風機41の運転を制御するための冷凍機コントローラ12が設けられ、各ショーケースSC1、SC2(ショーケース1、2)にもそれぞれの電動膨張弁3、液管電磁弁4、前記冷気循環用送風機の運転を制御するためのショーケースコントローラ13、3が設けられている。冷凍機コントローラ12には前述した高圧センサ11、低圧センサ15及び中圧センサ42が接続されており、各ショーケースコントローラ13、13にはそれぞれのショーケースSC1、SC2の陳列室内の温度等を検出する図示しない温度センサも接続されている。
【0030】
また、店舗の管理室等には統合コントローラ14が設けられている。各コントローラ12〜14は何れもマイクロコンピュータ(冷凍機コントローラ13では制御基板17を示す)により構成され、統合コントローラ14と、冷凍機Rの冷凍機コントローラ12と、各ショーケースSC1、SC2のショーケースコントローラ13、13は、通信線16により順次接続されている。この通信線16を介して統合コントローラ14と冷凍機コントローラ12、及び、各ショーケースコントローラ13、13はデータの送受信が可能とされており、これによって、統合コントローラ14により、冷凍機R(冷凍機コントローラ12)、及び、各ショーケースSC1、SC2(ショーケースコントローラ13、13)を集中制御(管理)可能とされている。
【0031】
更に、本発明では冷凍機コントローラ12と各ショーケースコントローラ13、13に渡って二系統の信号線18、19が設けられ、各コントローラ12、13、13に接続されている。このうち、信号線18は二本の配線18A、18Bから構成され、各配線18A、18Bの始端が冷凍機コントローラ12の制御基板17に設けられた接点(スイッチ)21に接続されている。また、信号線18の各配線18A、18Bには各ショーケースコントローラ13、13の入力ポート20が接続されている。
【0032】
また、信号線19も二本の配線19A、19Bから構成され、各配線19A、19Bには各ショーケースコントローラ13、13に設けられた接点(スイッチ)22がそれぞれ並列に接続されている。そして、信号線19の各配線19A、19Bの始端が冷凍機コントローラ12の制御基板17に設けられた入力ポート23に接続されている。
【0033】
以上の構成で動作を説明する。先ず、統合コントローラ14によるショーケースSC1、SC2及び冷凍機Rの集中制御の概要について説明する。統合コントローラ14は各ショーケースSC1、SC2や冷凍機Rを識別する個別のIDを保有しており、通信線16を介したデータ通信に異常が生じていなければ、統合コントローラ14はこのIDを用い、通信線16を介して各ショーケースSC1、SC2、冷凍機Rに設定温度や霜取設定等に関する設定データを送信する。各ショーケースSC1、SC2は、受信したデータに基づいて前述した冷気循環用送風機、電動膨張弁3や液管電磁弁4を制御し、冷凍機Rも受信したデータに基づいてコンプレッサ6や補助電動膨張弁37、均圧用電磁弁39、放熱器用送風機41の運転を制御する。
【0034】
一方、各ショーケースSC1、SC2や冷凍機Rからは通信線16を介して現在の運転状態や異常に関する運転状況データが前述したIDと共に統合コントローラ14に送信される。統合コントローラ14は受信した運転状況データを保有し、出力するので、これにより、集中制御装置1では統合コントローラ14によるショーケースSC1、SC2、冷凍機Rの集中制御(管理)が可能となる。
【0035】
次に、冷凍機コントローラ12及び各ショーケースコントローラ13、13が行う冷凍機R及び各ショーケースSC1、SC2の具体的な制御動作について図3乃至図6に基づき説明する。今、全てのショーケースSC1、SC2の液管電磁弁4が閉じており、冷凍機Rのコンプレッサ6(複数台の場合には全てのコンプレッサ)が停止している状態で、何れかのショーケースSC1、又は、SC2の陳列室内の温度が前述した上限温度に上昇すると、当該ショーケースSC1、又は、SC2のショーケースコントローラ13は液管電磁弁4を開く。
【0036】
液管電磁弁4が開くと、冷媒回路の低圧側の圧力が上昇する。そして、所定値まで上昇したことを低圧センサ15が検出すると、各コントローラ12〜14は図3図4のフローチャートに示す動作を開始する。先ず、冷凍機コントローラ12は図3のステップS1でコンプレッサ6(複数台の場合には全てのコンプレッサ)が停止しているか否か判断し、この場合には停止しているからステップS2に進み、冷凍機R側の所定の運転準備を行う。
【0037】
この冷凍機R側の運転準備は、専らコンプレッサ6の起動負荷を軽減するための動作であり、具体的には以下の通りである。即ち、コンプレッサ6が停止中であること、高低圧差が小さいこと、低圧側が前記所定値よりも上昇していること、及び、スイッチ入力、警報、前回停止からの経過時間の確認である。このとき、低圧が所定値よりも高い場合には均圧用電磁弁39を開き、バイパス回路38を介してコンプレッサ6の低圧側と中間圧側とを連通させる。また、高圧側が高い場合には放熱器用送風機41を一定速度で運転する。これらにより、高圧側と低圧側の差を小さくしてコンプレッサ6の起動負荷を軽減する。
【0038】
冷凍機コントローラ12はこのような運転準備を実行した後、ステップS3で上記の条件が全て満たされて冷凍機R側の運転準備が完了したか否か判断し、完了していればステップS4に進んで統合コントローラ14との通信設定があるか否か判断する。統合コントローラ14による集中制御を行うことが設定されている場合、冷凍機コントローラ12はステップS5に進み、統合コントローラ14との間の通信に異常があるか否か判断する。
【0039】
そして、異常が無ければステップS6に進み、接点21を閉じる(オン)。冷凍機コントローラ12の接点21は常には開いているが(オフ)、閉じられると各ショーケースコントローラ13の入力ポート20が短絡されるので、このオン信号(短絡信号)が信号線18を介し、冷凍機運転信号として各ショーケースコントローラ13に入力され、各ショーケースコントローラ13に冷凍機Rの運転準備が完了したことが通知されることになる(図6)。
【0040】
次に、冷凍機コントローラ12はステップS7で冷凍機Rの運転準備が完了したこと通知するデータを通信線16を介して統合コントローラ14に送信する(図5)。統合コントローラ14は冷凍機コントローラ12から係る運転準備完了のデータを受信すると、ステップS8で各ショーケースコントローラ13に運転準備を行う指示に関するデータを通信線16を介して送信する(図5)。
【0041】
ショーケースコントローラ13は、統合コントローラ14から係る運転準備指示のデータを受信すると、ステップS9でショーケースSC1、SC2側の所定の運転準備を行う。このショーケースSC1、SC2側の運転準備は、専らコンプレッサ6の起動後における高圧側の異常上昇を回避するための動作であり、具体的には液管電磁弁4が開いていることの確認である。この場合には、冷凍機Rの低圧側の圧力は上昇しており、液管電磁弁4が一つ以上開放している。尚、このとき電動膨張弁3も高圧上昇を回避する所定の開度に制御しても良い。
【0042】
ショーケースコントローラ13はこのような運転準備を実行した後、完了した場合には通信線16を介して統合コントローラ14にショーケースSC1、SC2の運転準備が完了したことを通知するデータを送信する(図5)。統合コントローラ14はショーケースコントローラ13から係る運転準備完了のデータを受信すると、ステップS10で冷凍機コントローラ12に運転許可を通知するデータを通信線16を介して送信する(図5)。
【0043】
冷凍機コントローラ12は図4のステップS17で統合コントローラ14から運転許可に関するデータを受信したか判断しており、受信した場合にはステップS18に進んでコンプレッサ6を起動する(統合コントローラ14を使用した集中制御による起動)。これにより、コンプレッサ6にて圧縮された冷媒が前述した如く放熱器7で放熱した後、液管電磁弁4が開いているショーケースSC1、SC2の蒸発器2に供給され、陳列室内が冷却される。
【0044】
ここで、実施例のように冷媒として二酸化炭素を使用した場合には、高圧側が極めて高くなり、超臨界圧力で運転されるため、コンプレッサ6の起動負荷は極めて大きく、起動後も急激な高圧側の圧力上昇が発生し易い。高圧側が異常に上昇した場合、冷凍機コントローラ12は高圧センサ11の出力に基づいてコンプレッサ6を強制停止するが、上記の如くコンプレッサ6を起動する以前に、冷凍機R側とショーケースSC1、SC2側で運転準備を実行することにより、コンプレッサ6の起動負荷が軽減され、高圧側の急激な圧力上昇も防止される。
【0045】
ここで、図3のステップS4において統合コントローラ14との通信設定が無い場合、及び、ステップS5において統合コントローラ14との間に通信異常がある場合、即ち、統合コントローラ14を用いた集中制御が不能となっているものと冷凍機コントローラ12が判断した場合、冷凍機コントローラ12はステップS11に進んで前述したステップS6同様の動作を実行する。即ち、接点21を閉じて(オン)、信号線18を介して各ショーケースコントローラ13に冷凍機運転信号を送り、各ショーケースコントローラ13に冷凍機Rの運転準備が完了したことを通知する(図6)。
【0046】
各ショーケースコントローラ13は、冷凍機Rから係る冷凍機運転信号を受信すると、ステップS12で前述したショーケースSC1、SC2側の運転準備を行い、運転準備が完了した場合には、接点22を閉じる。ショーケースコントローラ13の接点22は常には開いているが(オフ)、閉じられると冷凍機コントローラ12の入力ポート23が短絡されるので、このオン信号(短絡信号)が信号線19を介し、ケース運転信号として冷凍機コントローラ12に入力され、冷凍機コントローラ12にショーケースSC1、SC2の運転準備が完了したことが通知される(図6)。
【0047】
冷凍機コントローラ12は、ステップS11で冷凍機運転信号を各ショーケースコントローラ13に送信した後、ステップS13でショーケースコントローラ13からケース運転信号が入力されたか判断しており、入力したらステップS14に進んでコンプレッサ6を起動する(統合コントローラ14を使用しない起動)。これにより、統合コントローラ14を用いない場合にも、冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13との連携により、前述同様にコンプレッサ6を起動する以前に、冷凍機R側とショーケースSC1、SC2側で運転準備を実行することができるようになり、コンプレッサ6の起動負荷を軽減し、高圧側の急激な圧力上昇も防止した運転が実行されることになる。
【0048】
また、冷凍機コントローラ12は図3のステップS9で冷凍機R側の運転準備が完了してからの時間をカウントしており、図4のステップS17において統合コントローラ14から運転許可を通知するデータが届かない場合、冷凍機コントローラ12はステップS19に進み、図3のステップS9で冷凍機R側の運転準備が完了してから所定時間(X分)経過したか否か判断している。
【0049】
一方、ショーケースコントローラ13はステップS6で冷凍機コントローラ12から送信された冷凍機運転信号を受信した後、前述同様にショーケースSC1、SC2側の運転準備を行っており、完了した場合には前述同様に冷凍機コントローラ12にケース運転信号を送っている(ステップS20)。
【0050】
冷凍機コントローラ12は冷凍機R側の運転準備を完了してから所定時間(X分)経過しても統合コントローラ14から運転許可の通知が来ない場合、ステップS21に進んでショーケースコントローラ13からケース運転信号が入力されたか判断する。そして、入力したらステップS22に進んでコンプレッサ6を起動する(統合コントローラ14を使用しない起動)。これにより、同様に統合コントローラ14を用いない場合にも、冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13との連携により、コンプレッサ6を起動する以前に、冷凍機R側とショーケースSC1、SC2側で運転準備を実行し、コンプレッサ6の起動負荷を軽減し、高圧側の急激な圧力上昇も防止した運転を実行する。
【0051】
また、ステップS13及びステップS21でショーケースコントローラ13からケース運転信号を送られて来ない場合、冷凍機コントローラ12はステップS15及びステップS23に進み、ステップS6及びステップS11で冷凍機運転信号を送信してからの時間が所定時間(Y分)経過したか否か判断しており、所定時間(Y分)経過してもケース運転信号を受信しない場合には、信号線18及び/又は19の断線、接点21、22の故障等が発生して冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13による連携運転も不能となっていると判断し、ステップS16及びステップS24に進んで所定の警報動作(冷凍機コントローラ12に設けられたLEDを点灯、及び/又は、ブザーを鳴動等)を実行する。
【0052】
尚、上述の如く各ショーケースSC1、SC2の陳列室の冷却が行われ、陳列室の温度が前述した下限温度まで低下すると、当該ショーケースSC1、SC2のショーケースコントローラ13は液管電磁弁4を閉じる。そして、全てのショーケースSC1、SC2の液管電磁弁4が閉じられると、冷媒回路の低圧側の圧力が低下する。そして、所定値まで低下したことを低圧センサ15が検出した場合、冷凍機コントローラ12はコンプレッサ6を停止する。
【0053】
このように、冷凍機コントローラ12から各ショーケースコントローラ13、13に渡って設けられた信号線18、19を設け、冷凍機コントローラ12が、統合コントローラ14による集中制御が不能と判断した場合、信号線18、19を用いてショーケースコントローラ13と連携運転を行うので、統合コントローラ14自体が故障した場合、又は、統合コントローラ14との間の通信が不能となった場合にも、冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13との間で信号線18、19を用い、冷凍機運転信号及びケース運転信号の授受等を行い、支障無くショーケースSC1、SC2と冷凍機Rの連携運転を実現することができる。
【0054】
特に、冷媒として二酸化炭素を用いた場合にも、冷凍機コントローラ12が、コンプレッサ6を起動する際に冷凍機R側の所定の運転準備を行い、この運転準備が完了した場合、ショーケースコントローラ13に信号線18を介して冷凍機運転信号を送信し、ショーケースコントローラ13が、冷凍機コントローラ12から冷凍機運転信号を受信した場合、ショーケースSC1、SC2側の所定の運転準備を行い、この運転準備が完了した場合、信号線19を介して冷凍機コントローラ12にケース運転信号を送信すると共に、冷凍機コントローラ12が、ショーケースコントローラ13からケース運転信号を受信した場合、コンプレッサ6を起動するので、係る統合コントローラ14による集中制御が不能な場合にも、信号線18、19を用いて冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13が連携し、支障無く冷凍機R側の運転準備とショーケースSC1、SC2側の運転準備を行うことができる。
【0055】
また、信号線18、19を、冷凍機運転信号用(18)とケース運転信号用(19)に少なくとも2系統設け、冷凍機運転信号及びケース運転信号を、接点21、22のオン/オフ信号としているので、冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13の最小限の入出力ポートを用い、極めて簡単な構成で冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13の連携運転を実現することができると共に、そのためのソフトウエアの変更も最小限で済む。
【0056】
また、冷凍機コントローラ12が、ショーケースコントローラ13に冷凍機運転信号を送信した後、所定時間経過してもショーケースコントローラ13からケース運転信号を受信しない場合、所定の警報動作を実行するので、統合コントローラ14による集中制御に加えて、信号線18、19を用いた冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13の連携運転も不能な場合に、迅速に使用者に異常を通報することができるようになる。これにより、ショーケースSC1、SC2に陳列された商品の損害を未然に、若しくは、最小限に抑えることができるようになる。
【0057】
尚、上記実施例に示した冷媒回路やコンプレッサ6の構成等はそれに限られるものでは無く、単一の冷凍機Rから複数台のショーケースSC1、SC2に冷媒を分配供給し、その運転を集中して制御する装置において本発明は有効である。特に、請求項1乃至請求項3では冷凍機コントローラ12とショーケースコントローラ13との間の信号の授受や冷媒の種類等はそれに限られず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
R 冷凍機
SC1、SC2 ショーケース
1 集中制御装置
2 蒸発器
3 電動膨張弁
4 液管電磁弁
6 コンプレッサ
7 放熱器
11 高圧センサ
12 冷凍機コントローラ
13 ショーケースコントローラ
14 統合コントローラ
15 低圧センサ
16 通信線
18、19 信号線
21、22 接点
41 放熱器用送風機
42 中間圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6