【実施例】
【0088】
次に、実施例を示し、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
〔1〕多層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブ集合体の状態は、以下の走査型電子顕微鏡により、倍率1000倍又は10000倍で観察した。MWCNTの平均アスペクト比、平均外径、平均長さ、屈曲度は、画像より測定した。
走査型電子顕微鏡:品名:JEOL JEM 5500LV(日本電子(株))
〔2〕ラマンスペクトルは、以下の装置により測定した。
レーザーラマン分光装置:NRS−3300(日本分光(株))
〔3〕多層カーボンナノチューブの成長量は、「成長後の重量」から、別途測定した「触媒前駆体還元終了時(触媒)の重量」を差し引くことにより算出した。
〔4〕カーボンナノチューブ集合体を乾燥した100mlメスシリンダー(最小目盛単位:1ml)に静かに入れ、粉体層の上面を圧密せずに注意深くならし、体積を測定し嵩体積とする。カーボンナノチューブ集合体を取り出して測定した質量を嵩体積で除する。この測定、計算を3回行い、その平均値を嵩密度とした。
〔5〕MWCNT水性分散液の基板への塗布には、簡易型引張圧縮試験機(商標:“プッシュプルスタンド”、型式:SV−3、メーカー:(株)今田製作所)を利用して、浸漬法により所定の基材へ塗布した。
〔6〕調製したMWCNT水性分散液の状態は、目視により、凝集、沈殿の有無について経時的に観察した。分散液の状態は、凝集、沈殿がない状態が1カ月以上継続するものを○、1〜3週間継続するものを△、分散液を調製した翌日までに凝集、沈殿が発生するものを×と表示した。
基板上に形成したMWCNT分散膜の状態については、目視により観察した。
〔7〕MWCNT分散膜の表面抵抗率は、抵抗率計(商標:“LORESTA−IP”、型式:MCP−T250、メーカー:三菱化学(株))を使用して、4探針法(電極間距離:5mm、温度:25℃、湿度:15%RH)により測定した。
【0090】
MWCNT集合体の製造に用いた反応装置の概略を
図2に示す。反応装置は、原料供給系、石英反応管、電気炉、排気系から構成されている。石英反応管の直径は50mm、長さは900mmであり、電気炉は開閉式抵抗加熱炉であり、長さは600mmである。
図2中、1は石英反応管などの耐熱性反応管を、2は電気炉を、3は石英ボートを、4はMWCNTを、5は触媒(コバルト及び/又は鉄を含む炭素化合物(A)並びにマグネシウム及び/又はアルミニウムを含む炭素化合物(B)からなる混合物の水素還元物)を表す。
【0091】
(実施例1)
酢酸コバルト・4水和物(平均粒径:1μm)と塩基性酢酸アルミニウム水和物(アルミナ含量13質量%;平均粒径:0.5μm)の化学量論比(Co/Al)が4になるように乳鉢を使って混合することにより触媒前駆体を得た。触媒前駆体である混合粉体1gを石英ボート内に設置し、石英ボートを石英反応管中に挿入した。反応管に窒素ガスを300sccmで10分間流して置換し、さらに、水素ガスに切り替えて500sccmで10分間流すことにより、水素ガスに置換した。水素ガスの供給を保持したまま、550℃まで約25℃/分で昇温することにより、触媒前駆体を還元した。750℃に到達後、水素ガスをメタンガスに切り替え、500sccmで流し続けた。30分後、メタンガスを窒素ガス(300sccm)に切り替えて室温まで冷却後、石英反応管から石英ボートを取り出した。
【0092】
CNT集合体の生成量は1.806gであり、嵩密度は0.02g/cm
3であった。
【0093】
得られたCNT集合体のラマンスペクトルを
図14に示した。
図14から明らかなように、単層カーボンナノチューブに特有の200〜600cm
−1にはピークがないので、得られたカーボンナノチューブは単層ではなくMWCNTであった。
【0094】
得られたCNT集合体の倍率10000倍でのSEM画像を
図3に、倍率1000倍でのSEM画像を
図4に示した。MWCNTの平均外径は40nm、平均長さは100μmであり、屈曲度は55°であった。触媒活性金属微粒子が凝集したCNTの外径より大きな二次粒子や、触媒担体に由来する無機酸化物微粒子が凝集した径が10μm以上の二次粒子は観察されなかった。わかり難いが、
図3に見られる粒子状の塊は、カーボンナノチューブが丸まったものであった。
【0095】
以下に従い、得られたMWCNT水性分散液を調製し、ガラス基板上にMWCNT分散膜を形成し、表面抵抗率を測定した。“アルミゾル−10A” (商標;川研ファインケミカル(株)製;アルミナ水和物10質量%)15.5g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.55g、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン0.025g、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)0.025g、メタノール5.6g、及びエタノール13.5gからなる分散液を調製する。この分散液に、2質量%になるように、得られたMWCNT集合体を添加し、家庭用ミキサー(品番:SM−R22、メーカー:三洋電機(株))で5分間攪拌(回転数:11850rpm)することにより、MWCNT水性分散液を調製した。
【0096】
得られたMWCNT水性分散液を室温に放置したが、1カ月経過しても沈澱及び凝集が発生しないことが確認された。
【0097】
このMWCNT水性分散液をガラス基板上にディップコート(引き上げ速度:557mm/min)し、乾燥(空気雰囲気、120℃、15分)、焼成(空気雰囲気、300℃、15分)することにより、MWCNT分散膜を得た。焼成後のMWCNT分散膜の表面抵抗率は、10
2〜10
3Ω/□であった。
【0098】
以上の結果を、表1に示した。
【0099】
(実施例2)
コバルトとマグネシウムの化学量論比(Co/Mg)が4になるように、塩基性酢酸アルミニウム水和物を酢酸マグネシウム・4水和物(平均粒径:1μm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0100】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1にまとめた。
【0101】
(実施例3)
コバルトとマグネシウムの化学量論比(Co/Mg)を1に変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0102】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1にまとめた。
【0103】
(実施例4)
コバルトとマグネシウムの化学量論比(Co/Mg)を10に変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0104】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1にまとめた。
【0105】
(実施例5)
コバルトとマグネシウムの化学量論比(Co/Mg)を0.2に変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0106】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1にまとめた。
【0107】
(実施例6)
鉄とアルミニウムの化学量論比(Fe/Al)が4になるように、酢酸マグネシウム・4水和物を塩基性酢酸アルミニウム水和物に変更した以外は、実施例1と同様にしてCNT集合体を製造した。
【0108】
CNT集合体の生成量は2.202gであり、嵩密度は0.04g/cm
3であった。
【0109】
得られたカーボンナノチューブ集合体のラマンスペクトルを
図15に示す。
図15から明らかなように、単層カーボンナノチューブに特有の200〜600cm
−1にはピークがなかったので、得られたカーボンナノチューブは単層ではなくMWCNTであった。
【0110】
得られたカーボンナノチューブ集合体の倍率10000倍でのSEM画像を
図5に、倍率1000倍でのSEM画像を
図6に示した。
【0111】
外径が異なる2種類のMWCNT(平均外径70nm×平均長さ100μm、平均外径140nm×平均長さ100μm)が得られた。いずれも、屈曲度は50°であった。触媒活性金属微粒子が凝集したCNTの外径より大きな二次粒子や、触媒担体に由来する無機酸化物微粒子が凝集した径が10μm以上の二次粒子は観察されなかった。わかり難いが、
図5に見られる粒子状の塊は、カーボンナノチューブが丸まったものであった。
【0112】
実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を得た。得られたMWCNT水性分散液を室温において放置したが、1カ月経過しても沈澱及び凝集が発生しないことが確認された。焼成後のMWCNT分散膜の表面抵抗率は、10
1〜10
2Ω/□であった。
【0113】
以上の結果を、表1に示した。
【0114】
(実施例7)
酢酸鉄(II)と酢酸マグネシウム・4水和物の化学量論比(Fe/Mg)が4になるように、塩基性酢酸アルミニウム水和物を酢酸マグネシウム・4水和物に変更した以外は、実施例6と同様にしてMWNTs集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0115】
実施例6と同様な、外径が異なる2種類のMWCNTが得られた。MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1に示した。
【0116】
(実施例8)
酢酸鉄(II)と酢酸マグネシウム・4水和物の化学量論比(Fe/Mg)を1.1に変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0117】
実施例6と同様な、外径が異なる2種類のMWCNTが得られた。MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1に示した。
【0118】
(実施例9)
酢酸鉄(II)と酢酸マグネシウム・4水和物の化学量論比(Fe/Mg)を10に変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0119】
実施例6と同様な、外径が異なる2種類のMWCNTが得られた。MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1に示した。
【0120】
(実施例10)
酢酸鉄(II)と酢酸マグネシウム・4水和物の化学量論比(Fe/Mg)を0.2に変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0121】
実施例6と同様な、外径が異なる2種類のMWCNTが得られた。MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1に示した。
【0122】
(実施例11)
触媒前駆体を、鉄、アルミニウム、及びモリブデンの化学量論比(Fe/Al/Mo)が4/1/1になるように調製した酢酸鉄(II)、塩基性酢酸アルミニウム、及びモリブデン酸からなる混合粉体0.5gに変更した以外は、実施例6と同様にしてMWCNT集合体を製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0123】
走査型電子顕微鏡で観察したところ、外径が細いMWCNT(平均外径40nm×平均長さ100μm)のみが得られた。MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1に示した。
【0124】
(実施例12)
触媒前駆体を、鉄、アルミニウム、およびリチウムの化学量論比(Fe/Al/Li)が4/1/0.4になるように調製した酢酸鉄(II)、塩基性酢酸アルミニウム、及び酢酸リチウムからなる混合粉体1.0gに変更した以外は、実施例6と同様にしてMWCNTを製造した。また、実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。
【0125】
走査型電子顕微鏡で観察したところ、外径が細いMWCNT(平均外径70nm×平均長さ200μm)のみが得られた。また、カーボンナノチューブの成長速度が増大した。
【0126】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表1に示した。
【0127】
(比較例1)
触媒前駆体を酢酸コバルト・4水和物に、触媒前駆体と水素ガスとの接触最高温度及びメタンガスとの接触温度を650℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長しておらず、酢酸コバルト・4水和物が還元分解されたコバルト金属粒子の凝集体が観察された。
【0128】
(比較例2)
触媒前駆体を酢酸コバルト・4水和物に、水素ガスをメタンガスに、メタンガスとの接触温度を650℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長しておらず、酢酸コバルト・4水和物が還元分解されたコバルト金属粒子の凝集体が観察された。
【0129】
(比較例3)
酢酸マグネシウム・4水和物を酸化マグネシウムに変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長していなかった。
【0130】
(比較例4)
酢酸コバルト・4水和物を酸化コバルト(II)に変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長していなかった。
【0131】
(比較例5)
酢酸コバルト・4水和物を酸化コバルト(II)に、酢酸マグネシウム・4水和物を酸化マグネシウムに変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長していなかった。
【0132】
(比較例6)
触媒前駆体を酢酸鉄(II)に変更した以外は、実施例6と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長しておらず、酢酸鉄(II)が還元分解された鉄金属粒子の凝集体が観察された。
【0133】
(比較例7)
触媒前駆体を酢酸鉄(II)に、水素ガスをメタンガスに変更した以外は、実施例6と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長しておらず、酢酸鉄(II)が還元分解された鉄金属粒子の凝集体が観察された。
【0134】
(比較例8)
酢酸マグネシウム・4水和物を酸化マグネシウムに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT集合体を製造した。
【0135】
CNT集合体の生成量は0.489gであり、嵩密度は0.565g/cm
3であった。
【0136】
ラマンスペクトルの測定から、得られたカーボンナノチューブはMWCNTであった。
【0137】
得られたCNT集合体の倍率10000倍で観察したSEM画像を
図7に、1000倍でのSEM画像を
図8に示した。外径が異なる2種類のMWCNT(平均外径70nm×平均長さ5μm、平均外径140nm×平均長さ5μm)が得られた。いずれも、屈曲度は15°であった。径が10μm以上の酸化マグネシウムに由来する粒子が観察された。
【0138】
実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。得られたMWNTs水性分散液を室温に放置したが、翌日には凝集して沈殿物が生成していた。
比較例8で得られたMWCNTは媒体への分散性が悪く、作成したMWCNT分散膜の表面抵抗値も、やや高いものであった。
【0139】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表2に示した。
【0140】
(比較例9)
酢酸鉄(II)をα−酸化鉄(III)に変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長していなかった。
【0141】
(比較例10)
酢酸コバルト・4水和物を酢酸ニッケル・4水和物(平均粒径:3μm)に変更した以外は、実施例1と同様にしてMWCNT集合体を製造した。
【0142】
得られたCNT集合体の嵩密度は0.41g/cm
3であり、成長量は0.158gであった。
【0143】
ラマンスペクトルの測定から、得られたカーボンナノチューブはMWCNTであった。
【0144】
得られたCNT集合体の倍率10000倍で観察したSEM画像を
図9に、1000倍でのSEM画像を
図10に示した。
図9から、MWCNTの平均外径は70nm、平均長さは5μmであり、屈曲度は20°であった。径が10μm以上の触媒担体に由来する粒子が存在し、その上からカーボンナノチューブが成長していることがわかる。
【0145】
実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を調製した。得られたMWNTs水性分散液を室温に放置したが、翌日には凝集して沈殿物が生成していた。
比較例10で得られたMWCNTは媒体への分散性が悪く、作成したMWCNT分散膜の表面抵抗値も、やや高いものであった。
【0146】
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表2に示した。
【0147】
(比較例11)
水素キャリアガスを用いてフェロセン(2.5質量%)/トルエン溶液をスプレーで供給し、MWCNT集合体を製造した。まず、スプレー気化器および石英反応管中に窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換した。引き続き、電気炉により石英反応管全体を1100℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。その後、水素キャリアガスを1000sccmでスプレー気化器に供給した。スプレー気化器により液滴化したフェロセン(2.5質量%)/トルエン溶液を1100℃に加熱された反応管に供給した。30分間成長を行い、成長終了後石英反応管へのフェロセン/トルエン溶液の供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却後、反応管内の触媒を含むMWCNT集合体を回収した。
【0148】
得られたCNT集合体の嵩密度は0.2g/cm
3であり、成長量は50gであった。
【0149】
ラマンスペクトルの測定から、得られたカーボンナノチューブはMWCNTであった。
【0150】
得られたCNT集合体の倍率10000倍で観察したSEM画像を
図11に、1000倍でのSEM画像を
図12に示した。MWCNTの平均外径は100nm、平均長さは30μmであり、ほぼ直線状に成長していた。なお、
図11、12に見られる白い塊は、無定形炭素である。
【0151】
実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を得た。得られたMWCNT水性分散液を室温において放置したが、1週間後には凝集して沈澱物が生成していた。比較例11で得られたMWCNTは媒体への分散性に劣るものであった。
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表2に示した。
【0152】
(比較例12)
酢酸鉄を硝酸鉄・9水和物、酢酸マクネシウム・4水和物を硝酸マグネシウム・4水和物に変更した以外は、実施例2と同様にしてMWCNT集合体を製造した。カーボンナノチューブは成長していなかった。
【0153】
(比較例13)
触媒前駆体を、鉄、マグネシウム、無水クエン酸、蒸留水の化学量論比(Fe/Mg/無水クエン酸/水)が0.56/1/1/111になるようにして硝酸鉄9水和物、硝酸マグネシウム6水和物、無水クエン酸、および蒸留水を混合し、完全に溶解させた。この水溶液を120℃で8時間乾燥し固体粉末化した。この粉末を大気中700℃で5時間焼成することにより、触媒前駆体とした。この触媒前駆体の数量を0.3gに変更した以外は、実施例7と同様にしてMWCNTを製造した。なお、Feの化学量論比を0.56以上にすると、カーボンナノチューブは、ほとんど成長しなかった。
【0154】
得られたCNT集合体の嵩密度は0.4g/cm
3であり、成長量は0.493gであった。
【0155】
ラマンスペクトルの測定から、得られたカーボンナノチューブはMWCNTであった。
【0156】
得られたCNT集合体の倍率1000倍でのSEM画像を
図13に示した。MWCNTの平均外径は70nm、平均長さは5μmであり、屈曲度は20°であった。径が10μm以上の触媒担体に由来する粒子が観察され、その上からCNTが成長していることがわかる。
【0157】
実施例1と同様にして、MWCNT水性分散液、及び分散膜を得た。得られたMWCNT水性分散液を室温において放置したが、1週間後には凝集して沈澱物が生成していた。
【0158】
比較例13で得られたMWCNTは媒体への分散性に劣るものであった。
MWCNTの平均外径、平均長さ、屈曲度、成長量、MWCNT集合体の成長量、嵩密度、分散液の状態、分散膜の表面抵抗率などを表2に示した。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】