【0016】
上記水性溶媒と水との混合液における水性溶媒とは、水との混和性を有する溶媒であればいずれでもよい。また、2種以上の水性触媒を用いてもよい。本発明において好ましい水性溶媒としては、炭素原子数1〜3の低級アルコール、炭素原子数3または4のジアルキルケトン、R
1−CN(式中、R
1はメチル基またはエチル基である)で表されるニトリル、R
2−C(=O)−NR
3R
4(式中、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)で表されるアミド、R
5−S(=O)−R
6(式中、R
5およびR
6はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表す。)で表されるジアルキルスルホキシド、ジオキサン、および、テトラヒドロフランを挙げることができる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0028】
(実施例1)
[低温晶析操作]
粗ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)をメタノール(32mL)と精製水(48mL)の混合液に加え、攪拌下で45℃に加温して溶解した。得られた溶液を3℃に冷却し、攪拌しながらアセトン(300mL)を注入し、晶析を行った。析出した結晶を濾取し乾燥することによりナファモスタットメシル酸塩(8.9g)を得た。回収率は89%であった。
【0029】
(実施例2)
[40℃晶析操作]
粗ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)をメタノール(32mL)と精製水(48mL)の混合液に加え、攪拌下で45℃に加温して溶解した。得られた溶液を40℃に維持しながら、アセトン(300mL)を注入し、晶析を行った。析出した結晶を濾取し乾燥することによりナファモスタットメシル酸塩(8.8g)を得た。回収率は88%であった。
【0030】
(実施例3〜実施例10)
粗ナファモスタットメシル酸塩を35〜50℃で溶解させ、水性溶媒、および、低温晶析におけるアセトンを加える時の温度を下記表1に記載のものに変更した以外は、実施例1または実施例2と同様にしてナファモスタットメシル酸塩の低温晶析、40℃晶析を行った。結果を下記表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例11)
粗ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)をジメチルホルムアミド(32mL)と精製水(48mL)の混合液に加え、攪拌下で40℃に加温して溶解した。得られた溶液を−5℃に冷却し、攪拌しながらアセトン(300mL)を注入した。3時間同温度で晶析をし、析出した結晶を濾取し乾燥することによりナファモスタットメシル酸塩(8.3g)を得た。回収率は83%であった。
【0033】
(実施例12)
粗ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)をエタノール(56mL)と精製水(24mL)の混合液に加え、攪拌下で60℃に加温して溶解した。得られた溶液を3℃に冷却し、攪拌しながらアセトン(300mL)を注入し、晶析を行った。析出した結晶を濾取し乾燥することによりナファモスタットメシル酸塩(9.7g)を得た。回収率は97%であった。
【0034】
(比較例1)
粗ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)を精製水(80mL)に加え、攪拌下で40℃に加温して溶解した。得られた水溶液を冷却すると、15℃付近でゲル化してしまい、低温での晶析ができなかった。
【0035】
(比較例2)
粗ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)を、非水溶性有機溶媒である酢酸エチル(32mL)と精製水(48mL)との混合液に加え、攪拌下で40℃に加温して溶解した。得られた水溶液を冷却すると、14℃付近でゲル化してしまい、低温での晶析ができなかった。
【0036】
(参考例1〜参考例3)
[ナファモスタットメシル酸塩の安定性]
ナファモスタットメシル酸塩(10.0g)をエタノール(80mL)と精製水(120mL)の混合液に加え、攪拌下で40℃に加温して溶解した。得られた溶液を10℃(参考例1)、40℃(参考例2)または60℃(参考例3)に維持しながら攪拌し、経時的にサンプリングを行いHPLCで解析した。HPLCは、日本薬局方のナファモスタットメシル酸塩の純度試験の試験条件に準じて行った。測定機器としてLC−2010AHT(株式会社島津製作所製)、カラムとしてInertsil−ODS3(5μm、4.6×250mm。ジーエルサイエンス株式会社製)を用い、移動相は0.1M酢酸(0.03M 1−ヘプタスルホン酸ナトリウム含有)/アセトニトリル(7:3)、流速は1.5mL/min、検出波長は260nmであった。
それぞれの温度について、所定の温度にしてから0時間後、3時間後、6時間後、12時間後のHPLCでの解析結果を下記表2〜表4および
図1、
図2に示す。なお、表中の数値は、各ピークのピーク面積(Area)の割合(%)を表す。
図1および
図2はそれぞれ、表2〜表4中のGBA(p−グアニジノ安息香酸)およびANM(6−アミジノ−2−ナフトール)に対応するピーク面積の数値をグラフにしたものである。
また、溶解12時間後にナファモスタットメシル酸塩溶液(15mL)にアセトン(55mL)を加えて析出した結晶を減圧乾燥後、HPLCで解析した。得られた結果を下記表5に示す。
【0037】
(参考例1)
[10℃で維持]
【表2】
※1:p−グアニジノ安息香酸
※2:6−アミジノ−2−ナフトール
※3:ナファモスタットメシル酸塩
【0038】
上記表2から明らかなように、ナファモスタットメシル酸塩溶液を10℃に維持した場合、ナファモスタットメシル酸塩の分解産物であるp−グアニジノ安息香酸および6−アミジノ−2−ナフトールは、時間毎の増加が見られず、ナファモスタットメシル酸塩の減少も見られなかった。
【0039】
(参考例2)
[40℃で維持]
【表3】
【0040】
上記表3から明らかなように、ナファモスタットメシル酸塩溶液を40℃に維持した場合、1時間あたり、p−グアニジノ安息香酸が0.002%増加し、6−アミジノ−2−ナフトールは0.006%増加した。一方、ナファモスタットメシル酸塩は1時間毎におよそ0.009%減少した。
【0041】
(参考例3)
[60℃で維持]
【表4】
【0042】
上記表4から明らかなように、ナファモスタットメシル酸塩溶液を60℃に維持した場合、1時間あたり、p−グアニジノ安息香酸が0.014%増加し、6−アミジノ−2−ナフトールは0.037%増加した。また、15minのピークが1時間毎に0.006%増加した。一方、ナファモスタットメシル酸塩は1時間毎におよそ0.059%減少した。
【0043】
[溶解12時間後にアセトン晶析によって得られた結晶]
【表5】
【0044】
上記表5から明らかなように、晶析を行うと高純度のナファモスタットメシル酸塩が得られるものの、60℃で維持した場合のように溶液中にナファモスタットメシル酸塩の分解に起因すると考えられる不純物が多く含まれると、晶析により得られるナファモスタットメシル酸塩中にその不純物が含まれてしまうことが確認できた。
【0045】
上記表2〜表4の結果から明らかなように、10℃ではナファモスタットメシル酸塩は12時間安定であったが、60℃でのp−グアニジノ安息香酸の増加量は、40℃の場合の7倍であり、60℃での6−アミジノ−2−ナフトールの増加量は、40℃の場合の6.2倍であった。一方、60℃でのナファモスタットメシル酸塩の減少量は、40℃の場合の6.6倍であった。これらの結果から、高温になるほどナファモスタットメシル酸塩の分解が促進されることが分かる。従って、より低温で晶析することが、分解を抑えつつ高純度のナファモスタットメシル酸塩を得る為には好ましいといえる。