(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649917
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20141211BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20141211BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
B41J29/12 A
G03G15/00 550
H05K5/03 B
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-252235(P2010-252235)
(22)【出願日】2010年11月10日
(65)【公開番号】特開2012-101456(P2012-101456A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健史
【審査官】
下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−068765(JP,A)
【文献】
実開平05−071382(JP,U)
【文献】
特開2003−255649(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0170047(US,A1)
【文献】
特開2008−145785(JP,A)
【文献】
特開2005−076243(JP,A)
【文献】
特開平10−173362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J29/00−29/70
G03G15/00
G03G21/16
H05K5/00−5/06
E05D1/00−9/00
G11B33/00−33/08
G11B33/12−33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の開口部を閉じることが可能な開閉カバーと、
第1の軸を中心として前記装置本体に対して回動可能に構成されるとともに、第2の軸を中心として前記開閉カバーを回動可能とするように連結される連結部材と、
前記連結部材に設けられ、前記開閉カバーが開閉されることにともない前記第1の軸に近づく方向及び前記第1の軸から離れる方向に前記第2の軸をガイドするガイド部と、
前記ガイド部に沿って前記第2の軸がガイドされることにより移動する前記開閉カバーを支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、該移動により前記開閉カバーがスライドするスライド面を有していることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記連結部材は、前記装置本体に対する前記連結部材の回動角度が所定の角度になるまでは、前記開閉カバーとともに回動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記連結部材が前記所定の角度に回動した状態から、前記開閉カバーが更に前記開口部を開く方向に回動させられることにより、前記ガイド部は、前記第2の軸を前記第1の軸に近づく方向にガイドすることを特徴とする請求項2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記装置本体に対する前記連結部材の回動角度を所定の角度の範囲内に規制する規制手段を備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記開閉カバーは、前記装置本体に対する前記連結部材の回動角度が前記所定の角度の範囲内では、前記支持部と当接した当接部を中心に開く方向に回動することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記所定の角度は90°であることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記装置本体に対する前記連結部材の回動角度が前記所定の角度に到達した後、前記開閉カバーは、前記スライド面上を滑ることで、前記装置本体に対する角度を増加させることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項8】
前記第2の軸は、前記連結部材に対して付勢部材によって付勢されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項9】
前記連結部材および前記カバー部材は、樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項10】
前記第2の軸はステンレスによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項11】
前記ガイド部は、前記第2の軸が挿通される長穴によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録する記録装置等の外装カバーを開閉する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなど記録媒体上に画像を記録する記録装置がある。これら記録装置は、一般的に、比較的薄い厚さの樹脂で形成された複数のカバー部材(外装カバー)を備えている。そのカバー部材のうち、記録装置の上方を覆うベースカバー(固定カバー)と開閉カバーがある。
【0003】
このベースカバーは記録装置に固定されている構成である。開閉カバーは、軸部を介してベースカバーと接続され、軸支点で回動可能な構成となっている。又、ベースカバー又は開閉カバーの下方には、記録媒体搬送機構あるいは画像形成機構などの各種機構が配置されている。尚、開閉カバーを開くことで、装置本体の開口部から記録媒体給紙部あるいは画像形成機構にアクセスすることが可能となる。例えば、記録媒体の補充を行う際、あるいは画像形成機構のトナーやインクの交換を行う際に、開閉カバーを開くことで形成される前記開口部から記録媒体給紙部あるいは画像形成機構にアクセスすることで記録媒体の補充あるいはトナーやインクの交換をおこなう。
【0004】
又、記録装置を小型化するために記録装置の高さ方向を小さくする必要があり、これを達成するために、軸を記録装置外側に配置せずに内側に配置した構成について、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−006040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成を用いた場合、開閉カバーが固定カバーに接触して支持される構成でないため、軸部への負荷を懸念して負荷に耐えられる複雑な構成を軸部に用いる必要があった。
【0007】
よって本発明は、記録装置を大型化せず、且つ軸に負荷をかけずに開閉カバーを支持する構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため本発明の開閉装置は、装置本体の開口部を閉じることが可能な開閉カバーと、第1の軸を中心として前記装置本体に対して回動可能に構成されるとともに、第2の軸を中心として前記開閉カバー
を回動可能
とするように連結される連結部材と、前記連結部
材に設けられ、前記開閉カバーが開閉されることにともない前記第1の軸に近づく方向及び前記第1の軸から離れる方向に前記第2の軸をガイドするガイド部と、前記ガイド部に
沿って前記第2の軸がガイドされることにより移動する前記開閉カバーを支持する支持部と、を備え、前記支持部は、該移動により前記開閉カバーがスライドするスライド面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば開閉装置は、
装置本体の開口部を閉じることが可能な開閉カバーと、
第1の軸を中心として前記装置本体に対して回動可能に構成されるとともに、第2の軸を中心として前記開閉カバーに回動可能に連結される連結部材と、前記連結部に設けられ、前記開閉カバーが開閉されることにともない前記第1の軸に近づく方向及び前記第1の軸から離れる方向に前記第2の軸をガイドするガイド部と、前記ガイド部により前記第2の軸がガイドされることにより移動する前記開閉カバーを支持する支持部と、を備え、前記支持部は、該移動により前記開閉カバーがスライドするスライド面を有している。これによって、記録装置を大型化せず、且つ軸部に大きな負荷をかけずに開閉カバーを支持することが可能な、記録装置等に用いる開閉装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)から(c)は、本実施形態を適用可能な記録装置を示した斜視図である。
【
図4】開閉カバーの開閉機構を示した斜視図である。
【
図5】開閉カバーの開閉機構を拡大して示した斜視図である。
【
図6】(a)から(e)は、開閉カバーが閉じた状態から、完全に開くまでの様子を模式的に示した図である。
【
図7】(a)は、第1の実施形態の開閉カバーの連結機構を示した図であり、(b)は、本実施形態の開閉カバーの開閉機構を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
先ず、
図2を用いてインクジェット方式の記録装置について説明する。
【0012】
図2の記録装置10は、記録媒体であるロールシート102と、ロールシート102が収納される記録媒体給紙部4と、ロールシート102を搬送する搬送機構103と、搬送機構103によって搬送された記録媒体上に画像をインクジェット方式で記録する記録ヘッド104と、画像が記録された記録媒体が排出される排出口105と、を備えている。又、記録装置10は、記録装置本体上部を覆う開閉可能な開閉カバー1と、記録装置本体上部を覆う記録装置本体に固定されたベースカバー(固定カバー)2と、記録装置本体下部を覆う記録装置本体に固定された本体カバー3と、を備えている。
【0013】
記録装置10は、ロール状に巻かれたロールシート102のシートを搬送機構103により記録ヘッド104の下方に搬送し、シート上に所定の画像を記録した後、記録装置正面に配置された排出口105からシートを排出する構成となっている。
【0014】
上記ロールシート102は記録媒体給紙部4に装着される構成となっており、ロールシート102が無くなった場合は、ユーザが開閉カバー1を開蓋し開口部からロールシート102を交換する。
【0015】
この開閉カバー1の開閉動作の詳細について説明する。
【0016】
図1(a)から(c)は、本実施形態を適用可能な記録装置を示した斜視図である。(a)は、開閉カバー1を閉じた状態の記録装置10であり、(b)は、開閉カバー1を90°開いた状態、(c)は開閉カバー1を180°開いた状態をそれぞれ示している。開閉カバー1は、記録媒体給紙部4へのアクセスを可能にする開口部の開閉カバーであり、樹脂材料で構成されている。又、開閉カバー1には、閉蓋時にも記録媒体給紙部4の記録媒体の残量が確認できるようにするために、透明なアクリルで形成された窓部21を備えている。記録装置10に記録媒体を補充する際には、開閉カバー1を開蓋してロールシート102を記録媒体給紙部4に補充する。その際、開閉カバー1は、記録媒体の補充等を行うユーザの作業を妨げることが無いように、180°回動させた状態で固定カバーに開閉カバーを支持させることができるように構成されている。この開閉カバー1の動作の詳細は後述する。
【0017】
図3は、ベースカバー2を示した斜視図である。ベースカバー2は、記録装置における記録ヘッド、制御部およびヘッド回復部をカバーするカバー部材である。そしてベースカバー2は、後述する連結カバー11を支持するための樹脂で形成された第1の回転軸7と、開閉カバー1が回動する際の支点となる端部12(
図1(c)参照)を支持するスライド面を有したスライド部6と、を備えている。また本体カバー3(
図1参照)は、記録装置における廃液タンク(不図示)をカバーするカバー部材であり、記録装置の下部を覆っている。
【0018】
図4は、開閉カバー1の開閉機構を示した斜視図である。
図5は、開閉カバー1の開閉機構を拡大して示した斜視図である。
図4と
図5に記載されている開閉カバー1の開閉機構の構造について説明する。開閉カバー1とベースカバー2は、連結カバー(連結部材)11を介して連結されている。また、連結カバー11は、ベースカバー2に設けられた第1の回転軸7によってベースカバー2に対して回動可能に取り付けられている。連結カバー11の側端面には移動手段である長穴8が設けられており、開閉カバー1の開閉動作に伴って開閉カバー1に設けられた第2の回転軸5が、長穴8に沿って移動可能な構成となっている。
【0019】
なお、本実施形態では移動手段として長穴を用いているが、これに限定するものではなく、単に第2の回転軸5をガイドする溝等でもよい。
【0020】
本実施形態では第2の回転軸5は第1の回転軸と平行に設けられた、ステンレス材によって形成された軸であるが、材質はステンレスに限定されるものではなく、開閉カバーの開閉が可能となる程度の強度を備えたものであればよい(例えば、JIS規格で規定されているSUM等でもよい)。そして第2の回転軸5と、連結カバー11の第1の回転軸(第1の軸)7との係止部近傍に設けられたフックとは、バネ9によって連結されており、常時フック側に付勢されている。
【0021】
尚、本実施形態では第2の回転軸(第2の軸)5とフックとの連結にバネを用いているが、これに限定するものではなく、付勢することが可能な弾性部材(付勢部材)であればよい。そして、第2の回転軸5が、開閉カバー1の開閉動作に伴って、長穴8を移動することでバネ9が伸縮する構成となっている。このバネ9があることによって、開閉カバー1と連結カバー11とが安定した状態を維持しながら、協働して回転することができる。
【0022】
次に、開閉カバー1の開閉動作について
図6を参照して説明する。
【0023】
図6(a)から(e)は、開閉カバーが閉じた状態から、完全に開くまでの様子を模式的に示した図である。(a)は、開閉カバー1が完全に閉じた状態であり、開閉カバー1の外装面と、連結カバー11の外装面と、固定カバー2の外装面とが同一平面を形成している。(b)は、開閉カバーを開く方向に回動角度約45°まで開閉カバー11を開いた状態である。連結カバー11は、開度0°から90°の範囲内では、第1の回転軸7を回転中心として回転し、開閉カバー1は、ベースカバー2のスライド部(第2の規制手段)6に開閉カバー1の端部(当接部)12を当接させて、その端部12を回転中心として回動する。連結カバー11と開閉カバー1とで、回転中心が異なっているため、開閉カバー1の角度がベースカバー2に対して垂直状態に近付いていく。そして、開閉カバー1の角度がベースカバー2に対して垂直状態近付くにつれて、第2の回転軸5は第1の回転軸7から離れる方向に移動するため、バネ9は伸長される。このような、第2の回転軸5の移動に伴うバネ9の伸長は、開閉カバー1がベースカバー2に対してほぼ垂直になるまで続く。
【0024】
(c)は、開閉カバー1がベースカバー2に対してほぼ垂直をなす位置まで、回転させた様子を示している。この時、第2の回転軸5は、第1の回転軸7から最も離れる位置となり、長穴8のほぼ上端部に位置している。その際、バネ9は最も伸長された状態となっている。また、第1の回転軸を回転中心として回転してきた連結カバー11は、ほぼ90°(所定の角度、又は第1の角度)回転した状態でベースカバー2の端部(第1の規制手段)と当接するため、連結カバー11はこれ以上の回転ができなくなっている。(d)は、開閉カバー1が(c)の状態の開度90°に到達した後に更に回転した状態である。(c)の状態以降は、開閉カバー1が第2の回転軸5を回転中心として回転する。その際、開閉カバー1の端部12が、ベースカバー2のスライド部6のスライド面上を滑りながら開閉カバー1は回動する。第2の回転軸は、長穴に沿って回転しながら第1の回転軸7に近付く方向(固定カバーの方向)に移動するため、バネ9は縮むことになる。尚、この段階では連結カバー11は、ベースカバー2に当接した状態となり、動くことができない。また、スライド面は滑らかな面で形成されているため、開閉カバー1の端部12がスライドしても開閉カバー1に振動等は生じない。(e)は、開閉カバー1が完全に開いた状態を示した図である。図からも分かるように、開閉カバー1の天面13(外装面)とベースカバー2の天面14(外装面)とが面接触することで当接しており、開閉カバー1はベースカバー2に支持された状態で、開度180°(第2の角度)に開いた状態となっている。この時、第2の回転軸5は長穴8の最下端に位置しており、第2の回転軸5と第1の回転軸7との距離は、
図5(a)と同じ距離となっている。また、開閉カバー1が完全に開いた状態で、ヒンジ部15には大きな力がかかっている部分は無いため、薄厚の部材を用いた低コストの構成が可能であり、部材の損傷が懸念されることも無い。また開閉カバー1が180°完全に開いていることから、開閉カバー1がユーザの記録媒体補充等の作業の邪魔になることも無く、開閉カバーへの不用意な接触などを防止することができる。
【0025】
このように、連結カバーによって開閉カバーとベースカバーとを連結し、開蓋時には、ベースカバーに設けられた第1の回転軸を中心に連結カバーが回動し、開閉カバーと同一平面を形成しながら所定の角度である90°まで開く。その後、第2の回転軸を中心に開閉カバーが連結カバーに対して回動を開始して、開閉カバーはベースカバーに対する角度を増加させて180°まで開く。これによって、低コストで簡易的な構成で開閉カバーが固定カバーに面接触して支持されることが可能となるため、軸に大きな力がかからずに開蓋状態を保持することが可能である、記録装置等に用いる開閉装置を実現することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0027】
図7(a)は、第1の実施形態の開閉カバー1の連結機構を示した図であり、
図7(b)は、本実施形態の開閉カバー50の開閉機構を示した図である。
【0028】
本実施形態の連結カバー50の構成は、第1の実施形態と逆の構成となっている。つまり、第1の実施形態では、第2の回転軸5は開閉カバー1に固定され、長穴8が連結カバー11に設けられていたが、第2の実施形態では、連結カバー51に第2の回転軸55が固定され、開閉カバー50に長穴58が設けられた構成となっている。当然のことながら、バネ59も開閉カバー50側に設けられている。
【0029】
このような構成でも、開閉カバー50は第1の実施形態と同様の動作をすることが可能であり、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 開閉カバー
2 固定カバー(ベースカバー)
3 本体カバー
5 第2の回転軸
7 第1の回転軸
9 バネ
11 連結カバー